説明

衣類乾燥機

【課題】衣類の容量を正確に検知し、衣類容量に応じた最適な遅延時間を設定する。
【解決手段】ドラム1の前面側に設けた開口部8と、開口部に対向して筐体2の前方部に設けた内周部10と、ドラム内の被乾燥物と接触するように内周部に設けた第1の電極センサ11と、第1の電極センサに接触した被乾燥物の抵抗値を検出する抵抗検知手段21と、抵抗検知手段の出力により運転時間を制御する制御手段20とを備え、第1の電極センサは、ドラムの回転軸1aを通る垂線に対して、回転軸の上方で、かつ、ドラムの回転方向と逆方向に所定角度に偏位した位置に設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の乾燥をおこなう衣類乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の衣類乾燥機は、図12および図13に示すように、本体51内に回転ドラム52を回転自在に設け、送風ファン53の回転によりヒータ54を通って加熱された温風を吹き出し口55から回転ドラム52内へ導入し、衣類等の被乾燥物を乾燥させるものであり、回転ドラム52内で撹拌される衣類等が接触するように電極56を設け、乾燥運転中に衣類等の抵抗値を検知して乾燥状態を検知することが考えられている。電極56に設けられた一対の導電部材間の抵抗値rが、所定時間T1連続して設定値aよりも大きくなった時刻t2より、一定の遅延時間T3経過した時刻t4において、運転を終了するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、電極によって投入された衣類等の被乾燥物の量と、乾燥運転の進行による乾燥状態を検知することが考えられている。衣類等の容量検知は、電極の信号の単位時間当たりの接触頻度により衣類の量を検出するようにしている。衣類量検出信号のカウント数Nが大きい(被乾燥衣類の量が多い)と、残り乾燥運転時間Tを長くし、逆に、カウント数Nが小さい(被乾燥衣類の量が少ない)と、残り乾燥運転時間Tを短くしている(例えば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−253397号公報
【特許文献2】特開平6−54996号公報
【特許文献3】特開2001−793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、投入された衣類の容量を正確に検知することが難しく、衣類の容量に応じて遅延時間を最適に設定することが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ドラム内に投入された衣類等の被乾燥物の容量を正確に検知し、衣類容量に応じて最適な遅延時間を設定することができる衣類乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の衣類乾燥機は、ドラムの前面側に設けた開口部と、前記開口部に対向して筐体の前方部に設けた内周部と、前記ドラム内の被乾燥物と接触するように前記内周部に設けた電極センサと、前記電極センサに接触した被乾燥物の抵抗値を検出する抵抗検知手段と、前記抵抗検知手段の出力により運転時間を制御する制御手段とを備え、前記電極センサは、前記ドラムの回転軸を通る垂線に対して、前記回転軸の上方で、かつ、前記ドラムの回転方向と逆方向に所定角度に偏位した位置に設けたものである。
【0008】
これによって、電極センサの位置を最適化することができ、ドラム内に投入された被乾燥物の電極センサへの運転初期の接触頻度から、被乾燥物の量を正確に検知することがで
き、乾燥後の遅延時間を被乾燥物の量に応じて最適に設定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の衣類乾燥機は、ドラム内に投入された被乾燥物の容量を正確に検知することができ、乾燥後の遅延時間を被乾燥物の量に応じて最適に設定し、効率よく乾燥をおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における衣類乾燥機の要部断面図
【図2】同衣類乾燥機の図1のE−E矢視図
【図3】同衣類乾燥機の動作を示すフローチャート
【図4】同衣類乾燥機の電極センサから得られる出力と衣類容量との関係を示すグラフ
【図5】本発明の実施の形態2における衣類乾燥機の図1のE−E矢視図
【図6】同衣類乾燥機の動作を示すフローチャート
【図7】同衣類乾燥機の電極センサから得られる出力と衣類容量との関係を示すグラフ
【図8】同衣類乾燥機の電極センサから得られる出力と衣類の容量、質との関係を示すグラフ
【図9】本発明の実施の形態3における衣類乾燥機の図1のE−E矢視図
【図10】同衣類乾燥機の図9のH−H断面図
【図11】本発明の実施の形態4における衣類乾燥機の動作を示すフローチャート
【図12】従来の衣類乾燥機の要部断面図
【図13】同衣類乾燥機の電極の検出抵抗値と時間変化との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、筐体内に回転可能に設けられたドラムと、前記ドラムを回転駆動するモータと、前記ドラムの前面側に設けた開口部と、前記開口部に対向して前記筐体の前方部に設けた内周部と、前記ドラム内の被乾燥物と接触するように前記内周部に設けた電極センサと、前記電極センサに接触した被乾燥物の抵抗値を検出する抵抗検知手段と、前記抵抗検知手段の出力により運転時間を制御する制御手段とを備え、前記電極センサは、前記ドラムの回転軸を通る垂線に対して、前記回転軸の上方で、かつ、前記ドラムの回転方向と逆方向に所定角度に偏位した位置に設けたことにより、ドラム内に投入された被乾燥物の量を電極センサによって少量から多量までリニアに検知することができ、電極センサの設置位置を最適化することができる。したがって、被乾燥物の量と乾燥状態を精度よく検知し、乾燥後に被乾燥物の量に応じた最適な遅延時間を設定することができ、効率よく衣類の乾燥をおこなうことができる。
【0012】
第2の発明は、特に、第1の発明の内周部に第2の電極センサを設け、前記第2の電極センサは、ドラムの回転軸を中心として電極センサと対角線の方向に設けて前記ドラム内の被乾燥物と接触するようにしたことにより、ドラム内に投入された被乾燥物の電極センサへの運転初期の接触頻度から、衣類容量と質を精度よく検知することができるとともに、乾燥状態を検知することができ、乾燥後に衣類容量に応じて遅延時間を最適に設定することができ、効率よく乾燥をおこなうことができる。
【0013】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の電極センサおよび第2の電極センサは、ドラムの回転軸からの距離が略同等になるように前記ドラムの周方向に一対の電極部を対向して配置し、かつ、前記ドラム内で回動する被乾燥物が先に接触する一方の電極部の高さを他方の電極部の高さより低くしたことにより、ドラム内で回動する被乾燥物を的確に電極センサに接触させることができ、衣類容量と質を精度よく検知することができる。
【0014】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明の制御手段は、抵抗検知手段から得られる情報をもとに、運転初期の抵抗値の状態よりドラム内に投入した非乾燥状態の被乾燥物の容量を検知し、次に前記抵抗検知手段から得られる情報をもとに乾燥状態の検知を行い、乾燥後の遅延時間を設定するようにしたことにより、抵抗検知手段の出力変動を認識し判定することによって、衣類の容量、衣類の質、乾燥状態を正確に検知することができ、衣類の容量や質に応じて最適な遅延時間の設定を行い、効率よく衣類の乾燥をおこなうことができる。
【0015】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明の制御手段は、抵抗検知手段より得られる運転初期の抵抗値の情報を2つ以上の閾値で比較し、3つ以上の衣類容量の状態に分けるようにしたことにより、抵抗検知手段の出力変動を認識し判定することによって、衣類の容量を正確に検知することができ、衣類の容量に応じて最適な遅延時間の設定を行い、効率よく衣類の乾燥をおこなうことができる。
【0016】
第6の発明は、特に、第2〜第5のいずれか1つの発明の制御手段は、電極センサおよび第2の電極センサによって抵抗値を検知し、前記電極センサおよび第2の電極センサからの出力の差と絶対値とから被乾燥物の容量および質の判定を行うようにしたことにより、複数の抵抗検知手段の情報を取り込んで、これらの出力変動を認識し判定することによって、衣類の容量、衣類の質を正確に検知することができ、衣類の容量や質に応じて最適な遅延時間の設定を行い、効率よく衣類の乾燥をおこなうことができる。
【0017】
第7の発明は、特に、第2〜第6のいずれか1つの発明の制御手段は、抵抗検知手段から得られる情報が所定の閾値以上となり、前記抵抗変化が所定の挙動を示した時に最終乾燥と判定し、前記得られた被乾燥物の容量および質をもとに乾燥後の最終遅延時間を被乾燥物の容量および質の関数として設定するようにしたことにより、抵抗検知手段の情報を取り込んで、これらの出力変動を認識し判定することによって、衣類の容量、衣類の質、乾燥状態を正確に検知することができ、乾燥の終了を正確に判定することができ、衣類の容量や質に応じて最適な遅延時間の設定を行い、効率よく衣類の乾燥をおこなうことができる。
【0018】
第8の発明は、特に、第2〜第7のいずれか1つの発明の制御手段は、乾燥レベルの設定値を変えた場合でも、抵抗検知手段から得られる情報に対する閾値が変動しないようにしたことにより、抵抗検知手段の情報を取り込んで、これらの変動を認識し判定することによって、衣類の容量、衣類の質、乾燥状態を正確に検知することができ、衣類の容量や質に応じて最適な遅延時間の設定を行い、効率よく衣類の乾燥をおこなうことができる。
【0019】
第9の発明は、特に、第2〜第8のいずれか1つの発明において、乾燥用空気の温度を検知する温度検知手段を設け、制御手段は、前記温度検知手段が所定の温度になるまで定期的に衣類容量および質の判定を行い、その判定結果をもとに残時間表示にフィードバックし、電極センサおよび第2の電極センサによって検知した抵抗値の変化が所定の挙動を示した後、衣類容量および質に合った遅延時間を表示するようにしたことにより、制御手段に温度検知手段および抵抗検知手段の情報を取り込んで、これらの出力変動を認識し判定することによって、衣類の容量、衣類の質、乾燥状態を正確に検知することができ、それに合った残時間表示を行うことができるとともに、乾燥の終了を正確に判定することができるので、衣類の容量や質に応じて最適な遅延時間の設定を行い、効率良く衣類の乾燥を行うことができ、衣類乾燥に対する省エネ性、正確性、信頼性を確実に向上させることができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の
形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における衣類乾燥機の要部断面図、図2は、図1のE−E矢視図、図3は、同衣類乾燥機の動作を示すフローチャート、図4は、同衣類乾燥機の電極センサから得られる出力と衣類容量との関係を示すグラフである。
【0022】
図1〜図4において、衣類イ等の被乾燥物を入れて乾燥させるドラム1は、衣類乾燥機の筐体2内に回転自在に設けられている。ドラム1を駆動するモータ3を設け、モータ3の駆動によりドラム用ベルト4を介してドラム1を回転させるようにしている。ドラム1は、略有底円筒状に形成され、その回転軸1aは水平方向に設けられている。送風ファン5は、モータ3の駆動によりファン用ベルト6を介して回転し、衣類イを入れた乾燥室を構成するドラム1内へ循環風路7を通して乾燥用空気を導入するようにしている。
【0023】
ドラム1の前面側に衣類イ等の被乾燥物を出し入れする開口部8が設けてあり、開閉自在な扉9によって開閉する。筐体2内の前部には、ドラム1の前面側に設けた円形の開口部8と対向するように内周部10が環状に配設され、開口部8の縁部に沿ってその外側にドーナツ状に形成されている。内周部10のドラム1側の表面には、第1の電極センサ(電極センサ)11が形成され、ドラム1内で撹拌される衣類イ等と接触するように設けられている。
【0024】
第1の電極センサ11は、ドラム1の回転方向が向かって時計方向、すなわち、矢印ロ方向の右回りであると、ドラム1の断面における回転軸1aを通る垂線ハに対して、ドラム1の回転方向(矢印ロ方向)と逆方向に、所定角度θ1(例えば、30〜45度)偏位した位置に設置している。
【0025】
第1の電極センサ11は、ドラム1の回転によって撹拌される衣類等が、一対の電極部11a、11b間に跨って接触した衣類イ等の抵抗値を検知することによって、投入された衣類等の量を検知する容量検知用であり、乾燥運転を開始する電源が入り、ドラム1が回転してから1分から5分程度の初期の間に、ドラム1内に投入された衣類容量を検知するものである。
【0026】
第1の電極センサ11をこの位置に設置することによって、第1の電極センサ11からの出力と衣類容量とがほぼリニアな関係で検知することができるようになっており、第1の電極センサ11からの出力が大きいと衣類容量が多く、出力が中くらいであると衣類容量は中程度であり、出力が小さいと衣類容量が少ないと判定することができる。
【0027】
乾燥検知用電極センサ12は、ドラム1の前面側に設けた開口部8の下部と対向する位置に設置し、ドラム1の回転によって撹拌される衣類イ等が常に接触するように設けられており、一対の電極部12a、12bで構成している。
【0028】
第1の電極センサ11と乾燥検知用電極センサ12は、ドラム1の回転により、ドラム1内で撹拌されて回動している衣類イ等が接触したときの衣類の表面抵抗を検知し、衣類の湿度が高いと抵抗が小さく、湿度が低くなると抵抗が大きくなる。
【0029】
第1の電極センサ11の一対の電極部11a、11bと、乾燥検知用電極センサ12の一対の電極部12a、12bは、導電性を有する金属製で、長さが2〜10cm程度に形成した棒状体で構成し、電気的に絶縁する絶縁部材(図示せず)により相互に絶縁された状態として、所定の間隔で近接して対向配置している。
【0030】
電極部11a、11bと、電極部12a、12bは、ドラム1の回転軸1aからの距離が異なるように設置され、電極部11a(L1)は電極部11b(L2)より回転軸1aに近く、また、電極部12aも電極部12bより回転軸1aに近くなるように構成している。
【0031】
送風ファン5によって循環風路7に送風される乾燥用空気は、ヒートポンプ装置13により除湿および加熱されてドラム1内に送風され、循環風路7を通ってドラム1内に循環し、衣類等の乾燥が進行する。
【0032】
ヒートポンプ装置13は、圧縮機14、および圧縮された冷媒の熱を放熱する放熱器15、および高圧の冷媒の圧力を減圧するための絞り弁や毛細管等からなる絞り手段16、および減圧されて低圧となった冷媒が周囲から熱を奪う吸熱器17とを冷媒が循環するように管路18で連結されており、冷媒は、図1の矢印Fの方向に流れて循環し、ヒートポンプサイクルを実現する。
【0033】
ドラム1内で湿った衣類イ等と接触し多湿となった乾燥用空気は、循環風路7に入り、吸熱器17で冷却除湿されて低温の乾いた空気となった後、放熱器15で加熱され、高温の乾いた空気となって吹き出し口19からドラム1内に供給される。図1の矢印Gは乾燥用空気の流れを示している。
【0034】
吹き出し口19は、ドラム1の回転軸1aより下方で、かつ、乾燥検知用電極センサ12からドラム1の回転方向(矢印ロ方向)にずれた位置で、内周部10に設けてあり、ドラム1内で撹拌されている衣類イ等が、乾燥検知用電極センサ12に接触した後に、吹き出し口19から吹き出す乾燥用空気と接触するようにしてあり、乾燥検知用電極センサ12への接触による乾燥検知と、乾燥用空気との接触による乾燥の促進を両立させることができる構成としている。
【0035】
制御手段20は、モータ3、ヒートポンプ装置13等を制御し、乾燥運転を制御する。第1の電極センサ11と乾燥検知用電極センサ12は、抵抗検知手段21に接続されており、これらの情報は制御手段20に入力される。抵抗検知手段21によって抵抗値が閾値以上であるかどうかを判定し、閾値以上である回数をカウントすることが可能である。
【0036】
例えば、1秒間に10回カウントできるとすると、閾値以上の値は1分間で最大600回ということになる。この最大値をカウントすることによって衣類容量を判定することができる。また、容量検知用の第1の電極センサ11と、乾燥検知用電極センサ12を用いて、例えば、閾値以上のカウントが0になった状態が3分継続したら乾燥終了を検知することができる。
【0037】
ドラム1から出てくる温風の温度は、循環風路7に設けたサーミスタからなる温度検知手段22により検知され、制御手段20に入力される。ドラム1内の衣類の乾燥が進行すると、循環風路7を流れる乾燥用空気の温度が上昇し、温度検知手段22によって検知することができる。
【0038】
以上のように構成された衣類乾燥機について、以下その動作、作用を説明する。まず、衣類イ等の被乾燥物をドア9を開閉してドラム1内に投入し、乾燥運転を開始すると、モータ3が駆動し、ドラム1および送風ファン5が回転して循環風路7に乾燥用空気の流れ(矢印G)が生じる。乾燥用空気は、ドラム1内で撹拌される衣類イから水分を奪って多湿となった後、循環風路7内を通ってヒートポンプ装置13の吸熱器17へ導かれる。
【0039】
吸熱器17で低温の冷媒に熱を奪われた乾燥用空気は、冷却除湿されて乾いた低温の空
気となって放熱器15へ運ばれる。吸熱器17で吸熱された熱量に、圧縮機14からの熱量が加わって高温となった冷媒からの放熱で加熱され、吹き出し口19から再びドラム1内へと循環される。以上の繰り返しで衣類イの乾燥が進行する。
【0040】
ここで、図3のフローチャートにより、乾燥運転開始時のフローを詳細に説明する。まず、ドラム1内に乾燥をおこなう非乾燥状態の衣類を投入する(ステップS0)。次に、衣類乾燥機のドライレベルや様々の設定を行い、運転ボタンの操作により、乾燥運転を開始する(ステップS1)。乾燥運転がスタートすると、モータ3の駆動によりドラム1が回転を始め、ヒートポンプ装置13によって暖められた乾燥用空気が、送風ファン5によってドラム1内に導入され、衣類イと接触した乾燥用空気がドラム1から吹き出される。
【0041】
乾燥運転を開始してから最初の5分程度の間、第1の電極センサ11に接触する衣類イの抵抗を計測する(ステップS2)。この容量検知用の第1の電極センサ11で検知した抵抗は、抵抗検知手段21により抵抗値の逆数が閾値以上であるかどうかを判定し、閾値以上である回数をカウントする。1秒間に10回カウントできるとすると、閾値以上の値は1分間で最大600回ということになり、衣類乾燥機の最大容量が8kgの場合はほぼ550回から600回程度となる。
【0042】
この最大値をカウントすることによって衣類容量を判定することができる。この最大カウント数は衣類イの容量が多いと大きく、衣類の容量が少ないと小さくなる。この関係により、ドラム1の上方に設けた第1の電極センサ11、すなわち、ドラム1の回転軸1aを通る垂線ハに対して、回転軸1aの上方で、かつ、ドラム1の回転方向と逆方向に所定角度θ1に偏位した位置に設けた第1の電極センサ(電極センサ)11によって衣類等の抵抗を検知し、乾燥運転を開始した最初の所定期間におけるこの閾値以上の数をカウントすることにより、ドラム1内に投入された衣類容量を判定することができる(ステップS3)。
【0043】
次に、第1の電極センサ11と、乾燥検知用電極センサ12を用いて、これらの抵抗を計測する。これらの抵抗値の逆数が閾値以上であるかどうかを判定し、閾値以上である回数をカウントする。このカウント数がある一定期間閾値以下であるかどうかをチェックする(ステップS4)。例えば、このカウント数が3分間0を継続するかどうかを判定し、継続すれば乾燥したと判断することができる(ステップS5)。この乾燥運転の初期に検知した衣類の容量をもとに乾燥と判定した後の遅延時間を、衣類の容量の関数として設定することができる(ステップS6)。
【0044】
通常、乾燥と判定した後の遅延時間は、衣類容量に関係なく5分程度に設定されているが、衣類容量が検知でき、その値を遅延時間にフィードバックさせることにより、検知した衣類容量に応じて1分から5分の自動設定が可能となり、衣類容量が中くらいの時、例えば、4kgの時は遅延時間を3分として運転することが可能となる。このように衣類容量に最適な遅延時間を用いることによって、エネルギー消費の少ない最適な乾燥を終了させることができる(ステップS7)。
【0045】
また、コットンコースでタオルやシーツ等の衣類6kgを乾燥させると、最初の1分程度で第1の電極センサ11への接触頻度から抵抗を計測し、この抵抗から閾値以上の回数をカウントすることによって衣類の容量を検知することができる。その後、ドラム1の上部に設置された第1の電極センサ11、およびドラム1の下部に設置された乾燥検知用電極センサ12の抵抗から3分間閾値以上であれば乾燥と判定し、これらより乾燥後の遅延時間を衣類容量6kgに合わせた時間、約4分に自動設定することができる。
【0046】
このように、第1の電極センサ11の設置位置を最適化し、ドラム1内に投入された被
乾燥物の第1の電極センサ11への運転初期の接触頻度から、衣類容量を正確に検知することができる。なお、容量検知用の第1の電極センサ11によって衣類の乾燥状態を検知することも可能である。
【0047】
以上のように、乾燥運転初期の衣類容量の検知と、乾燥終了の検知を精度をよく検知することにより、その後の遅延時間を衣類容量に合わせて最適に設定することができるようになる。衣類容量が精度よく検知でき、その値を遅延時間にフィードバックさせることによって、遅延時間(例えば、1分から5分)の自動設定が可能となり、衣類容量が小さい時、例えば1kgの時は遅延時間を1分として運転することが可能となる。
【0048】
次に、乾燥運転の初期におけるドラム1の上部に設置された第1の電極センサ11から得られる出力と、衣類容量との関係を図4に示す。第1の電極センサ11は抵抗検知手段21に接続されており、制御手段20に入力されて処理される。この抵抗検知手段21によって抵抗値の逆数が閾値以上であるかどうかを制御手段20で判定し、閾値以上である回数をカウントしている。
【0049】
例えば、1秒間に10回カウントできるとすると、閾値以上の値は1分間で最大600回ということになり、衣類乾燥機の最大容量8kgの場合は、ほぼ550回から600回程度となる。図4の縦軸は1分間の内の10秒間での最大カウント数を取っているので、最大値は100となる。この最大カウント数を検知することによって衣類容量を判定することができる。
【0050】
すなわち、この最大カウント数は衣類の容量が多いと大きく、衣類の容量が少ないと小さくなる。この関係により、ドラム1の上方にある第1の電極センサ11によって抵抗を検知し、ある期間におけるこの閾値以上の数をカウントすることによって、ドラム1内に投入した衣類の容量を判定することができる。今、最大カウント数の閾値をα、βの2つ設けると、衣類容量を多、中、少の3段階のレベルの状態に分けることができる。これによって、乾燥終了検知をした後の遅延時間を衣類容量のレベルに合わせて自動設定することができ、省エネ性の高い衣類乾燥機を実現することができる。
【0051】
まず、スタートボタンが操作されると、設定ファイルやマトリックステーブル等の初期ファイルを読み込み、その後、第1の電極センサ11からの出力を取得する。この出力を用いて容量判定処理を行う。第1の電極センサ11において0.1sec毎に1データを取得し、60sec間に600データを連続取得する。このデータのうち閾値以上のデータをカウントする。10秒間の最大カウント数を検知するためには、運転初期の1分間を6分割しその中から最大カウント数を検知し、2つ以上設けた閾値より衣類容量を以下のように判定する。
【0052】
【数1】

【0053】
これを運転初期の5分間で繰り返し、各1分間で判定を行う。各1分間で同じ判定結果であればOKであるが、違う判定結果が出れば次の判定を同じように行い、さらに10分間定期的に繰り返し、判定容量値を残時間にフィードバックする。さらに、乾燥が終了した後の遅延時間を判定容量値に合った時間に自動設定することができる。
【0054】
このように、第1の電極センサ11より乾燥初期の接触抵抗の逆数が閾値より高いデータ数が多いと、投入衣類の容量が多いと判定されるので、乾燥後の最終の遅延時間を設定
値より少し長くすることができる。逆に、乾燥初期において第1の電極センサ11からの接触抵抗の逆数が閾値より高いデータ数が少ないと、投入衣類の容量が少ないと判定されるので、乾燥後の最終の遅延時間を設定値より短くすることができる。
【0055】
すなわち、非乾燥状態の衣類イをドラム1内に入れ、乾燥運転が開始されると、初期の抵抗値を検知し、この抵抗値の逆数のデータ数が少ないか多いかによって、ドラム1内に投入された衣類の容量を判定することができる。また、第1の電極センサ11からのこれらのデータ数が全くなくなることによって、乾燥がほぼ終了したと判定できる。これより、この衣類の容量に応じて乾燥後の遅延時間を設定することができる。
【0056】
以上のように、制御手段20に抵抗検知手段21の情報を取り込んで、これらの出力変動を認識し判定することによって、衣類の容量、乾燥状態を正確に検知することができ、乾燥終了後に衣類の容量に応じて最適な遅延時間の自動設定を行うことができるので、効率よく衣類の乾燥をおこなうことができ、衣類乾燥に対する省エネ性、正確性、信頼性を確実に向上させることができる。
【0057】
特に、衣類乾燥機においては、衣類に熱を加えて乾燥させるためエネルギー消費量が大きく、このエネルギー消費をできるだけ少なくする必要がある。また、温度が高いので、時間が長いと衣類を傷める恐れがあるので、乾燥時間もできるだけ短い方がいい。したがって、衣類の容量を精度よく検知することによって、乾燥後の遅延時間を最適にすることは、乾燥に対して非常に効率がよく、省エネ性、信頼性の優れた衣類の乾燥をおこなうことができる。
【0058】
以上のように、本実施の形態においては、ドラム1内の被乾燥物と接触するように内周部10に設けた第1の電極センサ(電極センサ)11と、第1の電極センサ11に接触した被乾燥物の抵抗値を検出する抵抗検知手段21と、抵抗検知手段21の出力により運転時間を制御する制御手段20とを備え、第1の電極センサ11は、ドラム1の回転軸1aを通る垂線ハに対して、回転軸1aの上方で、かつ、ドラム1の回転方向と逆方向に所定角度に偏位した位置に設けたものであり、第1の電極センサ11によって少量から多量までドラム1内に投入された被乾燥物の量をリニアに検知することができ、第1の電極センサ11の設置位置を最適化することができる。したがって、被乾燥物の量と乾燥状態を精度よく検知し、乾燥後に被乾燥物の量に応じた最適な遅延時間を設定することができ、効率よく衣類の乾燥をおこなうことができるので、衣類乾燥に対する省エネ性、正確性、信頼性を向上させることができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、乾燥用空気の吹き出し口19をドラム1の前面側に設けてドラム1内へ導入するようにしているが、ドラム1の後面側から前面側へ乾燥用空気を吹き出すように構成することができる。この場合は、ドラム1の後面側から吹き出す乾燥用空気によって、ドラム1内で撹拌されている衣類等が内周部10に設けた第1の電極センサ11側へ移動させることができ、第1の電極センサ11への接触を良好にすることができる。特に、ドラム1の回転軸1aを前上がりに傾斜させた場合は、ドラム1内で撹拌されている衣類がドラム1の後面側に偏りが生じやすいことから、ドラム1の後面側から送風することによって、衣類を前面側へ押圧することができ、衣類をドラム1内で分散させて第1の電極センサ11への接触を良好にすることができる。
【0060】
また、乾燥用空気の除湿と加熱にヒートポンプ装置13を用いたが、一般的な空冷式または水冷式の熱交換器と、ヒータの組み合わせによって行うことができる。
【0061】
また、衣類等の乾燥のみを行う衣類乾燥機のほか、洗濯機能を有し、洗濯した衣類等を続けて乾燥させることが可能な洗濯乾燥機としても実施可能である。
【0062】
(実施の形態2)
図5は、本発明の第2の実施の形態における衣類乾燥機の図1のE−E矢視図、図6は、同衣類乾燥機の動作を示すフローチャート、図7は、同衣類乾燥機の電極センサから得られる出力と衣類容量との関係を示すグラフ、図8は、同衣類乾燥機の電極センサから得られる出力と衣類容量、質との関係を示すグラフである。本実施の形態の特徴は、ドラム1の回転軸1aを中心として第1の電極センサ11と対角線ニの方向に、容量検知用の第2の電極センサ23を設けたものである。他の構成は実施の形態1と同じであり、同一の構成に同一の符号を付して、詳細な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0063】
第1の電極センサ11は、ドラム1の回転軸1aを通る垂線ハに対して、回転軸1aの上方で、かつ、ドラム1の回転方向(矢印ロ方向)と逆方向に所定角度θ1(例えば、30〜45度)に偏位した位置に設けている。第2の電極センサ23は、第1の電極センサ11と回転軸1aを通る対角線ニの方向に設けてあり、より具体的には、対角線上より上方近傍、すなわち、ドラム1の回転方向(矢印ロ方向)と逆方向に所定角度θ2(例えば、15〜30度)に偏位した位置に設けている。
【0064】
第2の電極センサ23は、第1の電極センサ11と同様に、一対の電極部23a、23bで構成され、導電性を有する金属製で、長さが2〜10cm程度に形成した棒状体を所定の間隔で電気的に絶縁された状態として近接して対向配置している。電極部23a、23bは、ドラム1の回転軸1aからの距離が異なるように設置してあり、電極部23a(L3)は電極部23b(L4)より回転軸1aに近くなるように構成している。
【0065】
また、ドラム1の前面側に設けた開口部8の下部と対向する位置に乾燥検知用電極センサ12を設置している。第1の電極センサ11と第2の電極センサ23および乾燥検知用電極センサ12は、内周部10のドラム1側の表面にドラム1内で撹拌される被乾燥物である衣類イ等と接触するように設けられている。
【0066】
第1の電極センサ11と第2の電極センサ23は、乾燥運転を開始し、ドラム1が回転を開始してから1分から5分程度の初期の間に、ドラム1内に投入された衣類容量を検知するものである。この位置に設置することによって、第1の電極センサ11と第2の電極センサ23からの出力と衣類容量との相関関係を用いて、これらの出力が大きいと衣類容量が多く、出力が小さいと衣類容量は少ないと判定することができる。
【0067】
第1の電極センサ11と第2の電極センサ23および乾燥検知用電極センサ12は、抵抗検知手段21に接続されており、これらの情報は制御手段20に入力されている。この抵抗検知手段21によって抵抗値が閾値以上であるかどうかを判定し、閾値以上である回数をカウントすることが可能である。例えば、1秒間に100回カウントできるとすると、閾値以上の値は1分間で最大6000回ということになる。この最大値をカウントすることによって衣類容量を判定することができる。
【0068】
また、乾燥検知用電極センサ12と、容量検知用の第1の電極センサ11および第2の電極センサ23を用いて、例えば、閾値以上のカウントが0になった状態が5分継続したら乾燥終了を検知することができる。
【0069】
以上のように、運転開始初期に衣類容量を検知し、乾燥終了を正確に検知することができると、その後の遅延時間を衣類容量に合わせて最適に設定することができる。衣類容量を検知し、その値を遅延時間にフィードバックさせると、例えば、1分から10分の自動設定が可能となり、衣類容量が小さい時、例えば、2kgの時は遅延時間を2分として運転することが可能となる。
【0070】
次に、図6のフローチャートにより、本実施の形態におけるフローを説明する。まず、ドラム1内に乾燥をおこなう非乾燥状態の衣類を投入する(ステップS0)。次に、衣類乾燥機のドライレベルや様々の設定を行い、運転ボタンを操作して乾燥運転を開始する(ステップS1)。乾燥運転がスタートすると、ドラム1が回転を始め、ヒートポンプ装置13によって暖められた乾燥用空気が送風ファン5によって吹き出し口19からドラム1内に導入され、この乾燥用空気が衣類と接触した後、ドラム1から吹き出される。
【0071】
この乾燥運転が開始された最初の5分程度の間、第1の電極センサ11と第2の電極センサ23に接触する衣類の抵抗を計測する(ステップS12)。この容量検知用の第1の電極センサ11と第2の電極センサ23で検知した抵抗は、抵抗検知手段21によって抵抗値の逆数が閾値以上であるかどうかを判定し、閾値以上である回数をカウントする。
【0072】
1秒間に10回カウントできるとすると、閾値以上の値は1分間で最大600回ということになり、衣類乾燥機の最大容量が8kgの場合は、ほぼ550回から600回程度となる。
【0073】
この最大値をカウントし、第1の電極センサ11および第2の電極センサ23の出力と衣類容量との相関関係より、衣類容量および質を判定することができる(ステップS13)。この最大カウント数は衣類容量が多いと大きく、衣類の容量が少ないと小さくなる。
【0074】
この関係により、第1の電極センサ11および第2の電極センサ23を用いて抵抗を検知し、ある期間におけるこの閾値以上の数を定期的に10分間カウントすることによって、ドラム1内に投入した衣類等の容量や、衣類等の質を判定することができる(ステップS14)。
【0075】
次に、乾燥検知用電極センサ12と、容量検知用の第1の電極センサ11および第2の電極センサ23を用いて抵抗を計測する。これらの抵抗値の逆数が閾値以上であるかどうかを判定し、閾値以上である回数をカウントする。このカウント数がある一定期間閾値以下であるかどうかをチェックする(ステップS15)。
【0076】
例えば、このカウント数が5分間0を継続するかどうかを判定し、継続すれば乾燥したと判断することができる(ステップS5)。乾燥初期に検知した衣類の容量をもとに、乾燥と判定した後の遅延時間を、衣類の容量や質の関数として設定することができる(ステップS6)。以降は、実施の形態1と同様である。
【0077】
例えば、コットンコースでタオルやシーツ等の衣類5kgを乾燥させると、最初の1分程度で第1の電極センサ11と第2の電極センサ23への接触頻度から抵抗を計測し、この抵抗から閾値以上の回数をカウントすることによって、衣類等の容量を検知することができる。この後、第1の電極センサ11と第2の電極センサ23の抵抗から、5分間閾値以上であれば乾燥と判定し、これらより乾燥後の遅延時間を衣類容量5kgに合わせた時間、例えば、約6分に自動設定することができる。
【0078】
このように、第1の電極センサ11と第2の電極センサ23の設置位置を最適化し、ドラム1内に投入された被乾燥物の運転初期の第1の電極センサ11と第2の電極センサ23への接触頻度から、衣類容量を正確に検知することができ、また、投入された衣類の質も判定することができる。なお、容量検知用の第1の電極センサ11と第2の電極センサ23を、乾燥検知用として共用すれば、常に乾燥状態も検知することができる。
【0079】
図7は、乾燥運転の初期における第1の電極センサ11と第2の電極センサ23から得
られる出力と衣類容量との関係を示したものである。第1の電極センサ11と第2の電極センサ23は抵抗検知手段21に接続されており、さらに制御手段20に入力されてデータ処理される。
【0080】
この抵抗検知手段21によって抵抗値の逆数が閾値以上であるかどうかを制御手段20で判定し、閾値以上である回数をカウントしている。例えば、1秒間に10回カウントできるとすると、閾値以上の値は1分間で最大600回ということになり、衣類乾燥機の最大容量8kgの場合は、ほぼ550回から600回程度となる。図7の縦軸は、1分間の内の10秒間での最大カウント数を取っているので、最大値は100となる。この最大カウント数を検知することによって衣類容量を判定することができる。
【0081】
すなわち、この最大カウント数は衣類の容量が多いと大きく、衣類の容量が少ないと小さくなる。この関係は第1の電極センサ11の場合、衣類容量が少から中の時に最大カウント数が急激に大きくなり、それ以上の衣類容量ではほぼ同じ程度の大きさとなっており、第2の電極センサ23の場合は、衣類容量が中から多の時に最大カウント数が急激に大きくなり、それ以下の衣類容量ではほぼ同じ程度の少なさとなっている。
【0082】
この関係により、ドラム1の上部にある第1の電極センサ11と、ドラム1の横部にある第2の電極センサ23を用いて抵抗を検知し、ある期間におけるこの閾値以上の数をカウントすることによって、ドラム1内に投入した衣類の容量を判定することができる。
【0083】
今、最大カウント数の閾値をA、Bの2つ設け、さらに、第1の電極センサ11と第2の電極センサ23からの出力の差の閾値をC、Dの2つ設けることによって、衣類容量を多、中、少の3段階のレベルの状態に分けることができる。これによって、乾燥終了検知をした後の遅延時間を衣類容量のレベルに合わせて自動設定することができ、省エネ性の高い衣類乾燥機を実現することができる。
【0084】
これらの第1の電極センサ11と第2の電極センサ23からの出力を用いて容量判定処理を行う方法としては以下のようなものがある。ドラム1の上部にある第1の電極センサ11と、ドラム1の横部にある第2の電極センサ23において、0.1sec毎に1データを取得し、60sec間に600データを連続取得する。
【0085】
このデータのうち閾値以上のデータをカウントする。10秒間の最大カウント数を検知するためには、運転初期の1分間を6分割しその中から最大カウント数を検知し、2つ以上設けた閾値より衣類容量を以下のように判定する。
【0086】
【数2】

【0087】
これを運転初期の5分間で繰り返し、各1分間で判定を行う。各1分間で同じ判定結果であればOKであるが、もし違う判定結果が出れば次の判定を同じように行い、さらに10分間定期的に繰り返し、判定容量値を残時間にフィードバックする。さらに、乾燥が終了した後の遅延時間を判定容量値に合った時間に自動設定することができる。
【0088】
このように、運転開始時に複数の容量検知センサを用いることによって、効率的に低コストで衣類容量の検知精度を向上させることができ、さらに、乾燥運転継続中に容量検知センサを乾燥検知センサとして使用することによって、乾燥終了の検知精度も効率的に向上させることができる。
【0089】
特に、ドラム1の上部と横部に設置した電極センサを用いて乾燥運転の初期の接触抵抗の逆数が閾値より高いデータ数が多いと、投入衣類の容量が多いと判定されるので、乾燥後の最終の遅延時間を設定値より少し長くすることができる。逆に、乾燥運転の初期において、電極センサからの接触抵抗の逆数が閾値より高いデータ数が少ないと、投入衣類の容量が少ないと判定されるので、乾燥後の最終の遅延時間を設定値より短くすることができる。
【0090】
すなわち、非乾燥状態の衣類イをドラム1内に入れ、乾燥運転が開始されると、初期の抵抗値を検知し、この抵抗値の逆数のデータ数が少ないか多いか、またそれらデータの絶対値の差でドラム1内に投入された衣類イの容量を判定することができる。また、電極センサからのこれらのデータ数が全くなくなったりすることによって、乾燥がほぼ終了したと判定できる。これらより、この衣類の容量に応じて乾燥後の遅延時間を設定することができる。
【0091】
次に、第1の電極センサ11と第2の電極センサ23から得られた出力と、衣類容量、質との関係を図8に示す。左上から右下方向は衣類の容量に相当し、左下から右上の方向は衣類の質に相当する。衣類の容量は左上から右下方向に多くなっており、衣類の質に関しては左下から右上の方向に軽い衣類が相当する。
【0092】
すなわち、aの領域は綿衣類を示しており、bの領域はジャージ等の合繊衣類を示している。また、cの領域は最も軽いシルク衣類を示している。このようにして、2組の第1の電極センサ11と第2の電極センサ23からの出力を比較することによって、投入された衣類の質を検知することができる。また、このようにして判定された衣類の質から、乾燥後の遅延時間を設定することができ、例えばシルクと判定された場合は、通常の遅延時間より短く設定することが可能である。
【0093】
以上のように、本実施の形態においては、ドラム1内の被乾燥物と接触するように内周部10に第2の電極センサ21を設け、第2の電極センサ21は、ドラム1の回転軸1aを中心として第1の電極センサ11と対角線の方向に設けてドラム1内の被乾燥物と接触するようにしたものであり、複数の電極センサの出力変動を認識し判定することによって、衣類容量と質を精度よく検知することができるとともに、乾燥状態を検知することができ、乾燥後に衣類容量に応じて遅延時間を最適に設定することができ、効率よく乾燥をおこなうことができる。
【0094】
また、本実施の形態においては、ドラム1の前面側に設けた開口部8と、開口部8に対向して筐体2の前方部に設けた内周部10と、ドラム1内の被乾燥物と接触するように内周部10に設けた第1の電極センサ11および第2の電極センサ23と、第1の電極センサ11および第2の電極センサ23に接触した被乾燥物の抵抗値を検出する抵抗検知手段21と、抵抗検知手段21の出力により運転時間を制御する制御手段20とを備え、第1の電極センサ11は、ドラム1の回転軸1aを通る垂線に対して、回転軸1aの上方で、かつ、ドラム1の回転方向と逆方向に所定角度に偏位した位置に設け、第2の電極センサ23は、ドラム1の回転軸1aを中心として第1の電極センサ11と対角線の方向に設け、制御手段20は、抵抗検知手段21から得られる情報が所定の閾値以上となり、抵抗変化が所定の挙動を示した時に最終乾燥と判定し、得られた被乾燥物の容量および質をもとに乾燥後の最終遅延時間を被乾燥物の容量および質の関数として設定するようにしたもの
であり、抵抗検知手段の情報を取り込んで、これらの出力変動を認識し判定することによって、衣類の容量、衣類の質、乾燥状態を正確に検知することができ、乾燥の終了を正確に判定することができ、衣類の容量や質に応じて最適な遅延時間の設定を行い、効率よく衣類の乾燥をおこなうことができる。
【0095】
(実施の形態3)
図9は、本発明の第3の実施の形態における衣類乾燥機の図1のE−E矢視図、図10は、図9のH−H断面図である。本実施の形態の特徴は、第1の電極センサ11と第2の電極センサ23を、ドラム1の回転軸1aからの距離が略同等になるようにドラム1の周方向に一対の電極部を対向して配置し、ドラム1内で回動する被乾燥物が先に接触する一方の電極部の高さを、他方の電極部の高さより低くしたものである。他の構成は実施の形態1、2と同じであり、同一の構成に同一の符号を付して、詳細な説明は実施の形態1、2のものを援用する。
【0096】
第1の電極センサ11の電極部11aと11b、および第2の電極センサ23の電極部23aと23bは、それぞれドラム1の回転軸1aからの距離(L5)が略同等になるように、ドラム1の周方向、すなわち、回転方向に所定の間隔を有して対向配置し、ドラム1内で回動する被乾燥物が先に接触する一方の電極部11aおよび23aの高さh1を、他方の電極部11b、23bの高さh2より低くしている。
【0097】
すなわち、第1の電極センサ11の下方に位置する電極部11aは、内周部10の表面からドラム1側へ突出する高さh1を、その上方に位置する電極部11bの高さh2より低くしている。また、第2の電極センサ23の上方に位置する電極部23aは、内周部10の表面からドラム1側へ突出する高さh1を、その下方に位置する電極部23bの高さh2より低くしている。
【0098】
乾燥運転時にドラム1が矢印ロ方向へ回転すると、ドラム1内の被乾燥物である衣類イ等も同方向に回動し、第1の電極センサ11に対しては、下方に位置する電極部11aに被乾燥物が先に接触し、電極部11aに近接してその上方に対向配置した電極部11bは電極部11aより高く、被乾燥物は電極部11a、11bに跨って確実に接触させることができる。
【0099】
同様に、第2の電極センサ23に対しても、上方に位置する電極部23aに被乾燥物が先に接触し、電極部23aに近接してその下方に対向配置した電極部23bは電極部23aより高く、被乾燥物は電極部23a、23bに跨って確実に接触させることができる。
【0100】
以上のように、第1の電極センサ11および第2の電極センサ23は、ドラム1の回転軸1aからの距離が略同等になるように、ドラム1の周方向に一対の電極部11aと11bおよび23aと23bを対向して配置し、ドラム1内で回動する被乾燥物が先に接触する一方の電極部11a、23aの高さを、他方の電極部11b、23bの高さより低くしたものであり、ドラム1内で回動する被乾燥物を的確に電極センサに接触させることができ、衣類容量と質を精度よく検知することができるとともに、乾燥状態を検知することができる。
【0101】
なお、乾燥検知用電極センサ12も、第1の電極センサ11および第2の電極センサ23と同様の構成とすることにより、乾燥状態を精度よく検知することができる。
【0102】
(実施の形態4)
図11は、本発明の第4の実施の形態における衣類乾燥機の動作を示すフローチャートである。本実施の形態の特徴は、定期的に衣類容量および質の判定を行い、その判定結果
をもとに残時間表示にフィードバックし、第1の電極センサ11および第2の電極センサ23によって検知した抵抗値の変化が所定の挙動を示した後、衣類容量および質に合った遅延時間を表示させるようにしたものである。他の構成は実施の形態2と同じであり、同一の構成に同一の符号を付して、詳細な説明は実施の形態2のものを援用する。
【0103】
次に、図11のフローチャートにより、本実施の形態におけるフローを説明する。まず、ドラム1内に乾燥をおこなう非乾燥状態の衣類を投入する(ステップS0)。次に、衣類乾燥機のドライレベルや様々の設定をおこない、運転ボタンの操作により乾燥運転を開始する(ステップS1)。乾燥運転がスタートすると、ドラム1が回転を始め、ヒートポンプ装置13によって暖められた乾燥用空気が送風ファン5によってドラム1内に導入され、この乾燥用空気が衣類イと接触した後、ドラム1から循環風路7に吹き出される。
【0104】
乾燥運転を開始した最初の5分程度の間、第1の電極センサ11と第2の電極センサ23で、接触する衣類の抵抗を計測する(ステップS22)。この容量検知用の第1の電極センサ11と第2の電極センサ23で検知した抵抗は、抵抗検知手段21によって抵抗値の逆数が閾値以上であるかどうかを判定し、閾値以上である回数をカウントする。
【0105】
1秒間に10回カウントできるとすると、閾値以上の値は1分間で最大600回ということになり、衣類乾燥機の最大容量8kgの場合は、ほぼ550回から600回程度となる。
【0106】
この最大値をカウントし、第1の電極センサ11および第2の電極センサ23の出力と、衣類容量との相関関係より衣類容量や質を判定することができる(ステップS23)。この求めた衣類容量をもとに乾燥の残時間表示にフィードバックし、残時間表示を更新する(ステップS24)。次に、所定時間が経過したがどうかを判定し、過ぎていなければ再度容量判定を行う(ステップS25)。この最大カウント数は衣類の容量が多いと大きく、衣類の容量が少ないと小さくなる。
【0107】
この関係により、第1の電極センサ11および第2の電極センサ23を用いて抵抗を検知し、ある期間におけるこの閾値以上の数を定期的に10分間カウントすることによって、ドラム1内に投入した衣類等の容量や、衣類等の質を判定することができる。
【0108】
次に、乾燥検知用電極センサ12と、第1の電極センサ11および第2の電極センサ23を用いて、抵抗を計測する。これらの抵抗値の逆数が閾値以上であるかどうかを判定し、閾値以上である回数をカウントする。このカウント数がある一定期間閾値以下であるかどうかをチェックする(ステップS26)。
【0109】
例えば、このカウント数が5分間0を継続するかどうかを判定し、継続すれば乾燥したと判断することができる(ステップS5)。この乾燥初期に検知した衣類の容量をもとに乾燥と判定した後の遅延時間を、衣類の容量や質の関数として設定することができる(ステップS6)。以降は、実施の形態1と同様である。
【0110】
例えば、コットンコースでタオルやシーツ等の綿衣類3kgを乾燥させると、最初の1分程度で第1の電極センサ11と第2の電極センサ23への接触頻度から抵抗を計測し、この抵抗から閾値以上の回数をカウントすることによって衣類等の容量を検知することができる。この後、第1の電極センサ11と第2の電極センサ23の抵抗から、5分間閾値以上であれば乾燥と判定し、これらより乾燥後の遅延時間を衣類容量3kgに合わせた時間、約4分に自動設定することができる。
【0111】
このように、第1の電極センサ11および第2の電極センサ23の、設置位置と方向を
最適化し、ドラム1内に投入された被乾燥物の運転初期の第1の電極センサ11と第2の電極センサ23への接触頻度から、衣類容量を正確に検知することができ、また、投入された衣類の質も判定することができる。なお、第1の電極センサ11と第2の電極センサ23を乾燥検知用として共用すれば、常に乾燥状態も検知することができる。
【0112】
また、乾燥初期に衣類容量判定を行い、その結果に基づいて液晶画面に表示を行うとともに、衣類容量判定を行った後の残時間表示の更新は、以下のようなものが考えられる。
【0113】
【数3】

【0114】
なお、通常初期残時間は2h程度である。
【0115】
乾燥運転の初期における第1の電極センサ11と第2の電極センサ23から得られる出力と衣類容量との関係は、図7に示した通りである。
【0116】
以上のように、乾燥用空気の温度を検知する温度検知手段22を設け、制御手段20は、温度検知手段22が所定の温度になるまで定期的に衣類容量および質の判定を行い、その判定結果をもとに残時間表示にフィードバックし、第1の電極センサ11および第2の電極センサ23によって検知した抵抗値の変化が所定の挙動を示した後、衣類容量および質に合った遅延時間を表示させるようにしたものであり、制御手段20に温度検知手段22および抵抗検知手段21の情報を取り込んで、これらの出力変動を認識し判定することによって、衣類の容量、衣類の質、乾燥状態を正確に検知することができ、それに合った残時間表示を行うことができるとともに、乾燥の終了を正確に判定することができるので、衣類の容量や質に応じて最適な遅延時間の設定を行い、効率良く衣類の乾燥を行うことができ、衣類乾燥に対する省エネ性、正確性、信頼性を確実に向上させることができるものである。
【0117】
なお、本発明の衣類乾燥機の運転方法において、衣類の容量や衣類の質を検知する検知工程、および、前記検知工程の後、乾燥状態を判定する判定工程と、前記検知結果と判定結果をフィードバックさせて前記衣類乾燥機の乾燥後の遅延時間を制御する乾燥工程とを、少なくとも一部をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供するものである。
【0118】
そして、これら制御方法はプログラムであるので、電気、情報機器、コンピュータ、サーバ等のハードリソースを協働させて本発明の衣類乾燥機の運転方法の少なくとも一部を容易に実現することができる。また、記録媒体に記録したり通信回線を用いてプログラムを配信したりすることにより、プログラムの配布、更新や、そのインストール作業を簡単におこなうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
以上のように、本発明にかかる衣類乾燥機は、ドラム内に投入された被乾燥物の容量を正確に検知することができ、乾燥後の遅延時間を被乾燥物の量に応じて最適に設定し、効率よく乾燥をおこなうことができるので、衣類乾燥機として有用である。
【符号の説明】
【0120】
1 ドラム
1a 回転軸
2 筐体
3 モータ
8 開口部
10 内周部
11 第1の電極センサ(電極センサ)
20 制御手段
21 抵抗検知手段
23 第2の電極センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に回転可能に設けられたドラムと、前記ドラムを回転駆動するモータと、前記ドラムの前面側に設けた開口部と、前記開口部に対向して前記筐体の前方部に設けた内周部と、前記ドラム内の被乾燥物と接触するように前記内周部に設けた電極センサと、前記電極センサに接触した被乾燥物の抵抗値を検出する抵抗検知手段と、前記抵抗検知手段の出力により運転時間を制御する制御手段とを備え、前記電極センサは、前記ドラムの回転軸を通る垂線に対して、前記回転軸の上方で、かつ、前記ドラムの回転方向と逆方向に所定角度に偏位した位置に設けた衣類乾燥機。
【請求項2】
内周部に第2の電極センサを設け、前記第2の電極センサは、ドラムの回転軸を中心として電極センサと対角線の方向に設けて前記ドラム内の被乾燥物と接触するようにした請求項1記載の衣類乾燥機。
【請求項3】
電極センサおよび第2の電極センサは、ドラムの回転軸からの距離が略同等になるように前記ドラムの周方向に一対の電極部を対向して配置し、かつ、前記ドラム内で回動する被乾燥物が先に接触する一方の電極部の高さを他方の電極部の高さより低くした請求項1または2記載の衣類乾燥機。
【請求項4】
制御手段は、抵抗検知手段から得られる情報をもとに、運転初期の抵抗値の状態よりドラム内に投入した非乾燥状態の被乾燥物の容量を検知し、次に前記抵抗検知手段から得られる情報をもとに乾燥状態の検知を行い、乾燥後の遅延時間を設定するようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の衣類乾燥機。
【請求項5】
制御手段は、抵抗検知手段より得られる運転初期の抵抗値の情報を2つ以上の閾値で比較し、3つ以上の衣類容量の状態に分けるようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の衣類乾燥機。
【請求項6】
制御手段は、電極センサおよび第2の電極センサによって抵抗値を検知し、前記電極センサおよび第2の電極センサからの出力の差と絶対値とから被乾燥物の容量および質の判定を行うようにした請求項2〜5のいずれか1項に記載の衣類乾燥機。
【請求項7】
制御手段は、抵抗検知手段から得られる情報が所定の閾値以上となり、前記抵抗変化が所定の挙動を示した時に最終乾燥と判定し、前記得られた被乾燥物の容量および質をもとに乾燥後の最終遅延時間を被乾燥物の容量および質の関数として設定するようにした請求項2〜6のいずれか1項に記載の衣類乾燥機。
【請求項8】
制御手段は、乾燥レベルの設定値を変えた場合でも、抵抗検知手段から得られる情報に対する閾値が変動しないようにした請求項2〜7のいずれか1項に記載の衣類乾燥機。
【請求項9】
乾燥用空気の温度を検知する温度検知手段を設け、制御手段は、前記温度検知手段が所定の温度になるまで定期的に衣類容量および質の判定を行い、その判定結果をもとに残時間表示にフィードバックし、電極センサおよび第2の電極センサによって検知した抵抗値の変化が所定の挙動を示した後、衣類容量および質に合った遅延時間を表示するようにした請求項2〜8のいずれか1項に記載の衣類乾燥機。

【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−85790(P2013−85790A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230481(P2011−230481)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】