説明

衣類仕立用テープ

【課題】 外力が作用しなくなっても元の形状に戻らないという器械力塑性を有する合成樹脂製の線条芯材を長手方向に沿う線上個所に織編された、新規の衣類仕立用テープを提供する。
【解決手段】 経糸及び緯糸に繊維を用い、器械力塑性を有する合成樹脂材料からなる一本以上の線条芯材を経糸方向に織編され、上記合成樹脂材料は、ポリエチレン、当該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体から選択したものであり、線条芯材の器械力塑性は、90度曲げによる戻り角が30度以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類の形状保持用もしくは体型補正用として使用する衣類仕立用テープに関する。具体的には、外力が作用しなくなっても元の形状に戻らないという器械力塑性を有する合成樹脂製の線条芯材を長手方向に沿う線上個所に織編された衣類仕立用テープに関する。
【0002】
本文中、「器械力塑性」とは、人力(じんりき)や、単純で小規模な道具を介して受けた外力を取り去っても歪(ひずみ)が残って変形する性質をいい、例えばある種の合成樹脂材料が有している、手指の力で90度曲げてから手放したときの戻り角が30度以下であるというような性質をいう。
【背景技術】
【0003】
従来、手指で容易に折り曲げたり、捻じったりでき、その上、折り曲げたり、捻じったりした後は、外力が作用しなくなっても元の形状に戻らないという器械力塑性を有する軟銅やアルミなどの金属線材を芯材として長手方向に沿う線上個所に織込んだ構成の衣類仕立用テープは提供されている。
【0004】
しかしながら、上記金属線材を用いた衣類仕立用テープは、軽量化が難しいという問題や、錆が発生し易いという問題や、金属探知器による検査で反応するという問題がある上、廃棄時の焼却処理において残灰が生じるという問題がある。又、近年は、これらが用済み後に廃棄されるときには、分別収集し難いという問題がある。
【0005】
【特許文献1】なお、本願出願人は、「器械力塑性を備えた非金属芯材を用いた衣類仕立用テープ」について先行技術を調査したが、関連する先行技術文献を見出すことができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような諸問題点を解消するために案出したものであって、軟銅やアルミなどの金属線材を芯材として用いていない、新規の衣類仕立用テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る衣類仕立用テープにあっては、経糸及び緯糸に繊維を用い、器械力塑性を有する合成樹脂材料からなる一本以上の線条芯材を経糸方向に織編されたことを特徴とする。
【0008】
したがって、請求項1に係る衣類仕立用テープは、線条芯材が合成樹脂材料製であるので、軽量化ができ、発錆の危惧がないのみならず、分別せずに焼却することができる。また、金属探知器による検査では検知されない。
【0009】
請求項2に係る衣類仕立用テープにあっては、請求項1記載の衣類仕立用テープに関し、複数本の線条芯材が、所定の距離をおいた配置で設けられたことを特徴とする。
【0010】
したがって、請求項2に係る衣類仕立用テープによれば、充分に機能する広幅な製品の提供が可能になる。
【0011】
請求項3に係る衣類仕立用テープにあっては、請求項1又は2記載の衣類仕立用テープに関し、線条芯材の器械力塑性が、90度曲げによる戻り角が30度以下であることを特徴とする。
【0012】
したがって、請求項3に係る衣類仕立用テープによれば、効率よく良品を提供できる。
【0013】
請求項4に係る衣類仕立用テープにあっては、請求項1、2又は3記載の衣類仕立用テープに関し、合成樹脂材料が、ポリエチレン、当該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体から選択したものであることを特徴とする。
【0014】
したがって、請求項4に係る衣類仕立用テープによれば、効率よく良品を提供できる。
【0015】
請求項5に係る衣類仕立用テープにあっては、請求項1,2又は3記載の衣類仕立用テープに関し、合成樹脂材料が、生分解性樹脂材料であることを特徴とする。
【0016】
したがって、請求項5に係る衣類仕立用テープによれば、地球環境汚染の改善が可能になる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る衣類仕立用テープは、経糸及び緯糸に繊維を用い、器械力塑性を有する合成樹脂材料からなる一本以上の線条芯材を経糸方向に織編された構成であるので、、軽量化ができ、発錆の問題を解消できる。その上、金属探知器による検査で反応するという問題、焼却廃棄処理時の残灰に金属が残るという問題が解消できるのみならず用済み後には分別処理をせずに廃棄できる。
【0018】
請求項2に係る衣類仕立用テープは、複数本の線条芯材が、所定の距離をおいた配置で設けられたので、充分に機能する広幅な製品の提供ができる。
【0019】
請求項3に係る衣類仕立用テープは、線条芯材の器械力塑性が、90度曲げによる戻り角が30度以下であることを特徴とするので、適度な剛性を有し、形態復元性に優れている完成品を比較的容易に効率よく提供できる。
【0020】
請求項4に係る衣類仕立用テープは、合成樹脂材料が、ポリエチレン、当該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体から選択したものであるので、器械力塑性に優れている完成品の提供が効率よく比較的容易にできる。
【0021】
請求項5に係る衣類仕立用テープは、合成樹脂材料が、生分解性樹脂材料であることを特徴とするので、地球環境汚染の改善ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る衣類仕立用テープの一つを示す。
【0023】
この実施の形態に係る衣類仕立用テープ1は、伸縮性を有しない繊維製の経糸2及び伸縮性を有しない繊維製の緯糸3を用い、器械力塑性を有する合成樹脂材料からなる二本の線条芯材4a、4bを経糸方向に所定の距離(間隔)をおいて織り込むことにより構成したものである。なお、経糸2及び緯糸3の一方若しくは両方は、伸縮性を有する繊維にすることができる。
【0024】
なお、ここでは2本の線条芯材4a、4bを用いている例を示したが何等これのみに限定されるものではなく、1本若しくは3本以上を用いて実施することができる。因みに線条芯材を用いる本数は、衣類仕立用テープの使用目的、使用部位、線条芯材太さや、線条芯材の材質の種類等によって異なる。一般に太い線条芯材を用いるほどその使用割合は少なくてもよく、また、剛性の大きい線条芯材ほどその使用割合は少なくてもよいという傾向にある。
【0025】
線条芯材は、一般的には単線とするが、用途や要求される強度などに合わせて、複数の線材からなる撚線や、複数の線材を平行に配列して用いること(請求項2対応)ができる。また、線条芯材は、保護被膜として保護被膜を被せた複合体であってもよい。
【0026】
この複合体系の線条芯材は、線条芯材と保護被膜が同一のポリオレフィンで構成されていてもよく、保護被膜を他のポリマーで構成してもよく、又はこれら線条芯材、保護被膜の組み合わせからなる複合延伸物によって構成されていてもよい。さらに、好ましくは線条芯材は、ポリエチレン又は当該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物又はエチレン単独重合体又はエチレン・α−オレフィン共重合体からなり(請求項4対応)、保護被膜は、熱可塑性樹脂を実質的主成分とした材料からなる構成にすることができる。
【0027】
また、線条芯材単独は、その断面形状が円形、長円形、楕円、矩形、星形、その他の形状若しくは表面に突起が点在して設けられたもであってもよく、これらを複数並べたものであってもよい。また、太さは用途により適宜選択できるが、通常は断面積が0.5〜5mmであることが望ましい。勿論、それ以上であってもよい。
【0028】
衣類仕立用テープ1の組織は、平織り、綾織、朱子織、絡み織、平編み、ガータ編み、レース編みなどや、JIS L 0206及びJIS L 0202に記載される編織法によるものが挙げられる。また経糸2、緯糸3には、天然繊維、合成繊維、半合成繊維及び再生繊維などの有機高分子化合物の繊維などから選ばれた繊維を用いることができる。
【0029】
上記天然繊維としては、綿、絹、麻、羊毛などを例示することができる。また上記半合成繊維は、有機天然高分子化合物の誘導体よりなる繊維であって、アセテート人絹を代表例として挙げることができる。
【0030】
上記合成繊維としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセタール(ビニロン)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリエステルエラストマーなどの繊維を例示することができる。
【0031】
上記ポリオレフィンの繊維としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなど炭素数2〜14程度のオレフィンの単独重合体、又はこれらオレフィン同士の共重合体、オレフィンと少割合の極性モノマーの共重合体などの繊維を挙げることができる。これらの中では、プロピレンの単独重合体又はプロピレンと10重量%以下のエチレンとのランダム共重合体であるポリプロピレンの使用が、軽量で耐薬品性に優れているところから好ましい。
【0032】
上記ポリエステルの繊維として具体的には、強度、剛性等が優れた芳香族ポリエステルや生分解性に優れた脂肪族ポリエステルの繊維を例示することができる。芳香族ポリエステルとして、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレートなどを挙げることができる。また、脂肪族ポリエステルとしては、マロン酸、こはく酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン酸、りんご酸、酒石酸、クエン酸などの多価カルボン酸などとエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールとの重縮合物、ラクチドやカプロラクトンなどの開環重合物、乳酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸などのヒドロキシ酸の重縮合物などを例示することができる。これらの中では、乳酸の単独重合体あるいは乳酸を主成分とする共重合ポリエステルから選ばれるポリ乳酸を挙げることができる。
【0033】
上記ポリアミドの繊維としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66などの繊維を例示することができる。
【0034】
上記ポリアクリロニトリル繊維としては、アクリロニトリルの単独重合体あるいはアクリロニトリルと他の極性ビニルモノマー、例えばアクリル酸メチル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、ビニルピリジンなどとの共重合体の繊維を例示することができる。
【0035】
さらに、上記再生繊維としては、ビスコースレーヨンや銅アンモニアレーヨンなどのレーヨンを例示することができる。
【0036】
また、器械力塑性を有する合成樹脂材料からなる線条芯材の素材としては、ポリエチレン、当該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体から選択した合成樹脂製素材が使用できる。なお、ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、汎用ポリエチレンのどちらでもよい。また、線条芯材には生分解樹脂材料を使用できる。
【0037】
たとえば、上記ポリエチレンは、延伸されると、引張応力に比例して弾性変形し、それに応じて伸びが増大し降伏点を越えると、引張応力は一旦低下したのち、ポリエチレンは、塑性変形性を発現し始める。降伏点以降は、延びが一旦低下したのち、内部歪みの極限に達してポリエチレンは徐々に延び、遂には白化して破断する。
【0038】
このポリエチレンの白化は、各種無機充填材を添加することにより誘発され、これによって剪断破壊を誘発し、塑性変形を容易にする。
【0039】
切断寸前まで延伸した糸は、完全に白化され、極めて優れた塑性変形性を示す。従って、同じ太さの延伸糸でも、太い原糸から作ったものの方が細い原糸から作ったものよりも塑性変形性は優れている。あまり細い原糸を最大限の延伸比で延伸、白化させても延伸糸が細過ぎる場合には、腰が弱く、ワイヤーのような物性は発現できない。
【0040】
上記線条芯材の器械力塑性は、90度曲げによる戻り角が30度以下であるが、当該戻り角が20度以下であるものが好ましく、15度以下であものがより好ましい。
【0041】
上記無機充填材としては、ガラス繊維、タルク、マイカ、炭酸カルシュウム、水酸化マグネシュウム、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシュウム、水酸化アルミニウム、シリカアルミナ、酸化チタン、酸化カルシュウム、珪酸カルシュウム、塩基性炭酸マグネシュウム、炭素繊維、カーボンブラック等を用いることができる。
【0042】
尚、本発明に係る衣類仕立用テープの幅は、使用目的や使用部位、テープ素材の種類などによって異なる。特に限定するものではないが、通常5〜30mm程度のものが用いられる。例えば、肩部分若しくは襟部分には、やや細めの8〜18mm程度のものが好ましく用いられ、その他の部位の衣類の形状保持や体形補正用のテープとしては部位にもよるが8〜15mm程度のものが一般に用いられる。
【0043】
また、衣類の襟部には、襟の内側から襟芯を挿入する襟芯収容部が備えることができる。前身ごろ部の襟部には、襟芯を挿入する襟芯収容部(たとえば襟芯を挿入するスリット状の穴やポケット等)が備えることができる。襟芯を襟芯収容部に入れて装着すれば、衣類としての使用時にはびしっとした襟始末にすることができる。衣類には、上記襟や前身ごろ部の襟部以外の個所例えば、肩部分、胸部分、ウエスト部分、袖口、ポケットの口、ウエスト部分に入れることができる。この場合も上記襟や前身ごろ部の襟部と同様にその収容部を設けて挿入することができる。
【0044】
本発明に係る衣類仕立用テープは、その織編の後に各種色彩による後染め処理をしたり、異なる色彩の糸条で織編したりすることにより色が異なる完成品を得ることができる。
【0045】
本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の精神を逸脱しない範囲において、種々の態様で実施することが可能であり、そして本発明はこれ等実施されたものにも及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態を示す概念図である。
【図2】図1A−A線に沿う拡大断面略図である。
【符号の説明】
【0047】
1 実施の形態に係る衣類仕立用テープ
2 伸縮性を有しない繊維製の経糸
3 伸縮性を有しない繊維製の緯糸
4a、4b 合成樹脂材料からなる線条芯材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸及び緯糸に繊維を用い、器械力塑性を有する合成樹脂材料からなる一本以上の線条芯材を経糸方向に織編されたことを特徴とする衣類仕立用テープ。
【請求項2】
複数本の線条芯材は、所定の寸法をおいて離れた配置で設けられたことを特徴とする請求項1記載の衣類仕立用テープ。
【請求項3】
器械力塑性は、90度曲げによる戻り角が30度以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の衣類仕立用テープ。
【請求項4】
合成樹脂材料は、ポリエチレン、当該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体から選択したものであることを特徴とする請求項1,2又は3記載の衣類仕立用テープ。
【請求項5】
合成樹脂材料は、生分解性樹脂材料であることを特徴とする請求項1,2又は3記載の衣類仕立用テープ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−265805(P2006−265805A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120279(P2005−120279)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(505143477)丸徳繊商株式会社 (2)
【Fターム(参考)】