説明

衣類収納装置

【課題】倉庫の保管スペース及びトラックの荷台スペースを大幅に節減できると共に、引っ越し現場となる家屋内における階段の上り下り等の労力を半減でき、しかも衣類が置かれた室内を無駄に占有することがない。
【解決手段】段ボール紙等の厚手の紙基材で製作された外箱と、同様な紙基材で製作されかつ外箱に収納可能な内箱と、ハンガーを吊すための外箱用及び内箱用の懸吊バーとを含む。外箱及び内箱は、底面、背面、及び左右の側面が閉塞され、かつ上面及び前面が開閉可能な縦型角筒状に形成されると共に、ハンガーに掛けられた衣類の肩幅に対応する前後方向長と、ハンガーに掛けられた衣類の着数に対応する左右方向長と、ハンガーに掛けられた衣類の背丈に対応する高さ方向長とを有する。外箱及び内箱の左右側面板上縁部の互いに対向する内面には、懸吊バーの両端部を係止する係止部を有する棚部材が突設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、引っ越し作業等に好適な衣類収納装置に係り、特に、ハンガーに掛けた衣類を吊り下げ状態のままで収納可能とした段ボール紙製等の簡易衣類箱を備えた衣類収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンガーに掛けた衣類を吊り下げ状態のままで収納可能とした段ボール紙製の簡易衣類箱を備えた衣類収納装置は、従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の衣類収納装置は、住居の引っ越し作業等に広く採用されている。
【0003】
この衣類収納装置は、段ボール紙等の厚手の紙基材で製作された簡易衣類箱と、この簡易衣類箱の上部に横架されるボール紙製の懸吊部材とを有する。この懸吊部材には、衣類が掛けられたハンガーが多数吊り下げされる。
【0004】
簡易衣類箱は、底面、背面、及び左右の側面が閉塞され、かつ上面及び前面が開閉可能な縦型角筒状に形成されると共に、ハンガーに掛けられた衣類の肩幅に対応する前後方向長(奥行き)と、ハンガーに掛けられた衣類の着数に対応する左右方向長(間口)と、ハンガーに掛けられた衣類の背丈に対応する高さ方向長(丈)とを有する。外箱及び内箱の左右側面板上縁部の互いに対向する内面には、懸吊バーの両端部を係止する係止部を有する棚部材が突設される。
【特許文献1】特開平10−175688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の簡易衣類箱は、ハンガーに掛けられた衣類を吊り下げた状態のままで収納するものであるから、固形物を密に詰め込む一般の段ボール箱とは異なり、完成状態においてはかなりの剛性を要する構造体となり、展開状態の段ボール紙の状態から、これを組み立てて簡易衣類箱を作り上げるには、縁部同士をステープル加工で止着する等かなりの手間が掛かる。
【0006】
そのため、引っ越し業者は、倉庫への保管、引っ越し現場へのトラック輸送、現場における家屋内への搬入は、いずれも組立完成状態の簡易衣類箱のままで行なうのが通例であり、これにより倉庫の保管スペース及びトラックの荷台スペースの増大、引っ越し家屋への搬入作業における運び込み工数の増大が問題とされている。
【0007】
殊に、通常の引っ越し1件あたりでは、少なくとも数個の簡易衣類箱が必要であることに加えて、一般民家の階段は比較的に狭く急坂であるのが通例であるから、幅50cm及び高さ1m数十cm程度の簡易衣類箱を担いで何度も上り下りする作業はなかなか骨の折れる作業であり、加えて、2階に担ぎ上げられた簡易衣類箱は室内を一杯に占有してしまうから、作業スペースの確保にも苦慮する結果となる。
【0008】
なお、サイズの異なる2種類の簡易衣類箱を用意して、大きい方の簡易衣類箱内に小さい方の簡易衣類箱を収容するためには、大きい方の簡易衣類箱よりも小さい方の簡易衣類箱の方が、全ての寸法(奥行き、間口、高さ)を小さめに設計しなければならない。
【0009】
前述のように、簡易衣類箱の左右方向長(間口)はハンガーに掛けられた衣類の着数に、高さ方向長はハンガーに掛けられた衣類の丈に、それぞれ対応するものであるから、間口及び高さについては想定される衣類の収納着数並びに丈に応じて、様々な寸法に設計される。しかしながら、簡易衣類箱の前後方向長(奥行き)はハンガーに掛けられた衣類の肩幅に対応するものであるから、通常の用途を想定する限り、これを変更する利益は考えにくい。
【0010】
この発明は、従来の衣類収納装置における上述の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、引っ越し業者等における倉庫への保管及び引っ越し現場へのトラック輸送に際して、倉庫の保管スペース及びトラックの荷台スペースを大幅に節減することができると共に、引っ越し現場となる家屋内における階段の上り下り等の労力を半減することができ、しかも衣類が置かれた室内を無駄に占有することがないようにした衣類収納装置を提供することにある。
【0011】
この発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の技術的課題を解決するために、本発明に係る衣類収納装置は、次のように構成されている。
【0013】
すなわち、本発明の衣類収納装置は、段ボール紙等の厚手の紙基材で製作された外箱と、同様な紙基材で製作されかつ外箱に収納可能な内箱と、ハンガーを吊すための外箱用及び内箱用の懸吊バーとを含んでいる。ここで、外箱及び内箱は、いずれも、底面、背面、及び左右の側面が閉塞され、かつ上面及び前面が開閉可能な縦型角筒状に形成されると共に、ハンガーに掛けられた衣類の肩幅に対応する前後方向長(奥行き)と、ハンガーに掛けられた衣類の着数に対応する左右方向長(間口)と、ハンガーに掛けられた衣類の背丈に対応する高さ方向長(丈)とを有する。外箱及び内箱の左右側面板上縁部の互いに対向する内面には、懸吊バーの両端部を係止する係止部を有する棚部材が突設されている。
【0014】
このような構成によれば、例えば、外箱よりも内箱の方が一回り小さくなるように両者のサイズ関係を決めておけば、外箱に内箱を収納した状態では、従前の簡易衣類箱ほぼ1個分のスペースに実質的に2個の簡易衣装箱を納めることができ、引っ越し業者等における倉庫への保管及び引っ越し現場へのトラック輸送に際して、倉庫の保管スペース及びトラックの荷台スペースを大幅に節減するすることができる。
【0015】
また、引っ越し現場となる住居内においては、外箱に内箱を収容したままで室内を移動するようにすれば、簡易衣類箱を運び込むための階段の上り下りの労力も半減することに加えて、実際に衣類を収納する段になるまで、外箱に内箱を収容したままにしておけば、引っ越し作業中の室内を無駄に占有することもなくなり、その分だけ作業スペースが確保される。
【0016】
本発明の好ましい実施の態様にあっては、外箱の前面を構成する前面板は、その頂部から足下に至るまで、外箱前面と左右側面とが交わる左右稜線のいずれかに沿う垂直ヒンジ線を軸として手前に回動させつつ開放可能となるように構成してもよい。
【0017】
このような構成によれば、前面板を開放することにより、外箱から内箱を水平方向手前に引きずり出すことが可能となるから、女性等の比較的に身長の低い作業者であっても、引っ越し現場において外箱から内箱を容易に取り出すことができる。すなわち、ハンガーに掛けた衣類の出し入れだけを考慮した従前の簡易衣類箱は、前面板の上半分程度しか手前に開かないため、このような構造の外箱に内箱を収納しようとすると、内箱を一旦持ち上げないと、外箱に収容乃至外箱から取り出すことが困難となる。
【0018】
本発明の好ましい実施態様にあっては、内箱の前面を構成する前面板は、左右の稜線間を斜めに横断する斜めヒンジ線を軸として斜め手前に回動させつつ開放可能となるように構成してもよい。
【0019】
このような構成によれば、前面板を開放することにより、衣類が掛けられたハンガーを手前上部から取出及び挿入可能となるから、特に、比較的ややに背丈の低い内箱における衣類収納作業が容易となる。
【0020】
本発明の好ましい実施態様にあっては、外箱の左右の棚部材に設けられた左右の係止部同士の間隔と内箱の左右の棚部材に設けられた左右の係止部同士の間隔とはほぼ同一となるように構成してもよい。
【0021】
このような構成によれば、外箱と内箱とで同一規格(例えば、長さ)の懸吊バーを使用可能となるから、製造業者乃至販売業者において懸吊バーの在庫管理が容易となり、外箱と内箱とで異なる規格の懸吊バーを必要とする場合に比べて、在庫の無駄を回避できる。
【0022】
本発明の好ましい実施態様にあっては、外箱及び内箱の棚部材は、左右の側面板の上縁部に形成された舌片を、左右の側面板に沿って内側に折り畳みつつ巻き込むことにより形成され、かつ折り畳み線に跨って形成した開口が折り畳み後に凹状係止部となるように構成してもよい。
【0023】
このような構成によれば、棚部材となる舌片と左右の側面板とが同一の段ボール紙から一体的に形成されるため、棚部材と左右の側面板とを別部品とする場合のように、棚部材を左右の側面板の上縁部内面に固着するための作業(接着作業やステープル作業)が不要となると共に、別部品を固着する場合に比べ懸吊バーの支持強度も向上する。加えて、折り畳み線に跨って形成した開口が折り畳み後にそのまま凹状係止部となるため、懸吊バーの両端部を安定的に支持することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る衣類収納装置によれば、例えば、外箱よりも内箱の方が一回り小さくなるように両者のサイズ関係を決めておけば、外箱に内箱を収納した状態では、従前の簡易衣類箱ほぼ1個分のスペースに実質的に2個の簡易衣類箱を納めることができ、引っ越し業者等における倉庫への保管及び引っ越し現場へのトラック輸送に際して、倉庫の保管スペース及びトラックの荷台スペースを大幅に節減することができる。
【0025】
また、引っ越し現場となる住居内においては、外箱に内箱を収納したままで室内を移動するようにすれば、簡易衣類箱を運び込むための階段の上り下りの労力も半減することに加えて、実際に衣類を収納する段になるまで、外箱に内箱を収納したままにしておけば、引っ越し作業中の室内を無駄に占有することもなくなり、その分だけ作業スペースが確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、この発明に係る衣類収納装置の好適な実施の一形態を添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0027】
本発明に係る衣類収納装置の分解斜視図が図1に示されている。同図に示されるように、この衣類収納装置は、断ボール紙などの厚手の紙基材で製作された外箱1と、同様な紙基材で製作されかつ外箱1に収納可能な内箱2と、ハンガーを吊るすための外箱用懸吊バー3(図2参照)と、同様にハンガーを吊るすための内箱用の懸吊バー4(図3参照)とを含んで構成される。
【0028】
外箱1及び内箱2は、いづれも、底面、背面、および左右の側面が閉塞され、かつ上面及び前面が開閉可能な縦型角筒上に形成されると共に、ハンガーに掛けられた衣類の肩幅に対応する前後方向長(奥行き)と、ハンガーに掛けられた衣類の着数に対応する左右方向長(間口)と、ハンガーに掛けられた衣類の背丈に対応する高さ方向長(丈)とを有する。
【0029】
そして、外箱1及び内箱2の左右側面板上縁部の互いに対向する内面には、のちに詳細に説明するように、懸吊バーの両端部を係止する係止部をそれぞれ有する棚部材が突設されている。
【0030】
外箱の開放状態を示す斜視図が図2に示されている。同図に示されるように、外箱1の前面板は足元近くの高さに設定された水平切断線101を境にして、その下部に位置する固定領域102と上部に位置する可動領域103とに2分割されている。固定領域102は、その左右両側縁部を左右の側面板111,119としっかりと結合され、開閉不能とされている。これに対して、可動領域103は、その右側縁部において側面版111と切り離されると共に、前面板と左側面板119とが交わる左側稜線に沿う垂直ヒンジ線104を軸として、手前に回動させつつ開閉可能となされている。可動領域103の右側縁部には、差込片105が一体に形成されると共に、その基部にはスリット106が形成されている。
【0031】
前面板の可動領域103の上部には水平ヒンジ線107を介して上面板108が連設されている。この上面板108の自由端縁部には差し込み片109が、またその基部にはスリット110が形成されている。
【0032】
右側面板111の中央部には指掛け孔112が形成されると共に、その前縁部には前部右フラップ115が形成されている。また、右側面版111の上部の前側には、上部右フラップ116が、また上部後側の内面には、係止部118を有する右棚部材117が突設されている。
【0033】
同様にして、左側面版119の中央部には指掛け孔120が形成されると共に、その上部前側には上部左フラップ121が、上部後側には係止部123を有する左棚部材122が突設されている。なお、左側面板119と背面板125とは結合代124を介してステープル加工で結合されている。
【0034】
右側面板111の上部内面から突設された右棚部材117と左側面板119の上部内面から突設された左棚部材122とは互いに対向するように位置決めおり、それぞれの係止部118,123には、後に詳細に説明するように、外箱用懸吊バー3の両端部が差し込み片を介して係止される。
【0035】
外箱用懸吊バー3は、最大吊り下げハンガー数に対応した長さを有する金属製パイプ301と、この金属製パイプ301の両端部に溶接されたL字金具302,303とを有する。これらのL字金具302,303の垂直部が、右差込片304及び左差込片305として機能する。これらの差込片304,305は、のちに詳細に説明するよう、右棚部材117及び左棚部材122の係止部118,123に差込み固定される。
【0036】
外箱1を閉じた状態にするためには、まず、前部右フラップ115を内側へ折り曲げ、その上から、同様に内側へ折り曲げた前面板の可動領域103を重ね、差込片105をスリット114に差し込み、さらに差込片113をスリット106に差し込むことによって、外箱の前面側を閉じる。次いで、上部右フラップ116、上部左フラップ121、上部後フラップ126をそれぞれ内側へ折り曲げ、その上から上面板108を折り重ね、しかるのち、差込片109をスリット128に差し込み、差込片127をスリット110に差し込むことによって、外箱1の上面を閉じる。外箱1を移動するには、両手の指を指掛け穴112,120に掛けることによって、外箱全体を両手で持ち上げることとなる。
【0037】
次に、内箱の開放状態を示す斜視図が図3に示されている。同図に示されるように、内箱2の前面板は、左右の稜線間を斜めに横断する斜めヒンジ線201を境として、その下部に位置する固定領域202とその上部に位置する可動領域203とに分割されている。また、前面板の可動領域203の上部には、水平ヒンジ線204を介して上面版205が連設されている。この上面板205の自由端縁部には、差込片206が、その基部にはスリット207が形成されている。
【0038】
右側面板208の中央部には指掛け孔209が形成されると共に、上部の前側には上部右フラップ211が、上部の後側の内面には係止部213を有する右棚部材212が突設されている。同様にして、左側面版214の中央部には指掛け孔215が形成されると共に、その上部前側には上部左フラップ216が、上部の後側の内面には係止部218を有する左棚部材217が突設されている。
【0039】
右側面板208の内面に突設された右棚部材212と左側面板214の内面に突設された左棚部材217とは互いに対向する関係に設定されている。内箱2の背面を閉塞する背面板219の上部には、上部後フラップ220が連設されるとともに、その基部には差込片221及びスリット222が形成されている。
【0040】
内箱用懸吊バー4は、最大吊り下げハンガー数に対応する長さを有する金属製パイプ401と、このパイプ401の両端に溶接された左右のL字金具402,403とを有している。これらのL字金具402,403の垂直部が右差込片404及び左差込片405として機能する。これらの差込片404,405は、のちに詳細に説明するように、右棚部材212の係止部213及び左棚部材217の係止部218に差し込み固定される。 内箱2を閉じた状態とするには、まず、上部右フラップ211、上部左フラップ216、および上部後フラップ220をそれぞれ内側へ折り曲げ、前面板の可動領域203を斜めヒンジ線201を軸として回動させつつ内側へ閉じさせ、上面板205を水平ヒンジ線204を軸として内側へ折り曲げ、内箱2の上面開口を塞ぐ。しかるのち、差込片206をスリット222へ差込と共に、差込片221をスリット207に差し込むことによって、上面板205をしっかりとロックする。内箱2を移動するには、指掛け孔209,215に両手の指を掛け、これを両手で持ち上げまたは持ち運ぶこととなる。
【0041】
外箱に内箱を収納した状態を示す一部破断斜視図が図4に示されている。同図に示されるように、内箱2は外箱1に比べて一回り小さく設計されている。この例にあっては、外箱1の寸法は、540(前後方向長)×450(左右方向長)×1300(高さ方向長)となっており、特に、底面から水平切断線101までの高さは250とされている。これに対して、内箱2の寸法は、500(前後方向長)×410(左右方向長)×1000(高さ方向長)とされている。なお、いずれも単位はミリメートルである。
【0042】
そのため、図4に示されるように、内箱2は外箱1にすっぽりと収納される。その結果、この衣類収納装置によれば、外箱1に内箱2を収納した状態では、従前の簡易衣類箱ほぼ1個分のスペースに実質的に2個の簡易衣類箱を収めることができ、引越し業者などにおける倉庫への保管及び引越し現場へのトラック輸送に際して、倉庫の保管スペース及びトラックの荷台スペースを大幅に節減することが出来る。
【0043】
また、引越し現場となる住居内においては、外箱1に内箱2を収容したままで室内を移動するようにすれば、簡易衣類箱を運ぶための階段の上り下りの労力も半減することに加えて、実際に衣類を収納する段になるまで、外箱1に内箱2を収納したままにしておけば、引越し作業中の室内を無駄に占領することもなくなり、その分だけ作業スペースが確保される。
【0044】
また、この実施形態においては、図5に示されるように、前面版の可動領域103は、前面版の上部から足元に至るまで、垂直ヒンジ線104を軸として手前に回動させつつ開放可能であるため、この可動領域103を開放することにより、外箱1から内箱2を水平方向手前に引き擦り出すことが可能となるから、女性などの比較的に身長の低い作業者であっても、引越し現場において外箱から内箱を容易に取り出すことが出来る。すなわち、ハンガーに掛けた衣類の出し入れだけを考慮した従前の簡易衣類箱は、前面版の上半分程度しか手前に開かないため、この様な構造の外箱に内箱を収納しようとすると、内箱を一旦持ち上げないと、外箱に収納ないし外箱から取り出すことが困難となる。
【0045】
加えて、外箱1にくらべ比較的背が低くなる内箱2についても、図3に示されるように、斜めヒンジ線201を軸として手前に大きく開くから、ハンガーに掛けた衣類の収納乃至取り出しが容易となる利点もある。
【0046】
次に、左右の側面板の上縁部内面に突設される棚部材及びそれに設けられた係止部の構造を詳細に説明する。
【0047】
外箱側の左棚部材の構造を説明するための展開図が図6に示されている。展開状態にある段ボール紙においては、上部左フラップ121に隣接して、棚用舌片131が存在する。この棚用舌片131には、癖付け加工を行うことによって、4本の山折れ線a1,a2,a3,a4が形成されている。そして、山折れ線a2から山折れ線a3へ至る区間が折り畳領域131aとなり、棚用舌片131の自由端から山折れ線a1に至る区間が折込み領域131bとなる。
【0048】
また、展開状態にある段ボール紙とは別部品としてスペーサ板132及び補強版133が同様な段ボール基材で別に用意される。スペーサ板132は、後に詳細に説明するように、図中右下がりのハッチングで示されるスペーサ板領域132aに挿入される。同様に、補強版133は、図中左下がりのハッチングで示される補強版領域133aに接着固定される。切り抜き孔134,135は、山折れ線に沿う折り曲げ加工を容易とするための手段である。切り抜き孔136は、本発明の要部であり、この切り抜き孔136が山折れ線a3に掛かって形成されることによって、折り曲げ加工の後に、後述する凹部137(凹状係止部)が出現することとなる。
【0049】
底箱の左右側面版の上縁部に形成された係止部118,123の説明図が図8に示されている。図6に示された展開状態にある段ボール紙を山折れ線a1〜a4に沿って折り曲げると、図8に示されるように、折り畳領域131aは左右の側面板の内面に露出する一方、折込み領域131bは内部に織り込まれる。さらに折込み領域131bと左右の側面板との間にはスペーサ板132が挟み込まれる。
【0050】
また、左右の側面板の上縁部には、山折れ線a3にまたがって形成された切り抜き孔136に対応して凹部137が出現すると共に、この凹部の底には、スリット138が形成される。このスリット138を有する凹部137が本発明の係止部(凹状係止部)118,123に相当する。こうして得られた左右のスリット138,138には、懸吊バー3の左右の差込片304,305が差し込まれ、これにより懸吊バー3は左右の側面板111,119間にしっかりと掛け渡される。また、この凹部137に沿う内面側には、さらに段ボール製のコの字型補強版133が接着固定される。そのため、これらの補強版133の作用とも相まって、係止部118,123(凹状係止部)は、懸吊バー3を構成するパイプ301を介して受ける吊り下げ衣類の荷重をしっかりと支えることが出来る。
【0051】
また、凹部137の存在によって、パイプ301の上面は、左右の側面板111,119の上縁部と面一となり、衣類を収納した状態で、上面板108をしっかりと閉じることができる。
【0052】
次に、内箱側の棚部材の構造を説明するための展開図が図7に示されている。同図に示されるように、展開状態にある段ボール紙において、上部左フラップ216の隣には、棚用舌片221bが存在する。この棚用舌片221bには、2本の山折れ線a5,a6が形成されている。棚用舌片221bの自由端から山折れ線a5に至る区間が折り畳領域221aとなる。また、切り抜き孔222aは山折れ加工を容易とするためのものであり、切り抜き孔223は山折れ線a5に跨って形成され、これを折り曲げた際に、先と同様にして係止部213,218を構成するとなる凹部を形成するためのものである。なお、符号216aは水平ヒンジ線である。この例にあっても、補強版219b及びスペーサ板220bが別部品として設けられており、補強板219bは図中左下がりのハッチングで示される補強板領域219aに接着され、スペーサ板220は図中右下がりのハッチングで示されるスペーサ板領域220aに挟み込まれる。
【0053】
内箱の左右上縁部に形成された係止部の説明図が図9に示されている。同図示されるように、図7に示される展開状態にある棚用舌片221bを山折れ線a5,a6に沿って折り曲げると折り畳み領域221aが左右の側面板の内面側へ露出すると共に、折り畳み領域221aと左右の側面板との間にはスペーサ板220bが挟み込まれる。また、切り抜き孔223に対応する部分には、凹部224が出現すると共に、この凹部224の底にはスリット225が形成される。このスリット225を有する凹部224が本発明の係止部(凹状係止部)213,218に相当する。
【0054】
こうして得られた左右のスリット225,225には懸吊部材4の左右の差込片404,405が差し込まれ、これにより、懸吊部材4は左右の側面板208,214間にしっかり掛け渡されることとなる。なお、この例にあっても、凹部324の内側には補強版219が接着固定され、支持強度を増大させることとなる。
【0055】
次に、左右スリット間の距離を外箱の場合(L1)と内箱の場合(L2)とで比較して示す説明図が図10に示されている。同図に示されるように、外箱1と内箱2とではサイズはひと回り異なることから、外箱の左側面板119の位置と内箱の左側面板214との位置とは異なるが、左右の棚部材の側面板からの突出量が外箱1と内箱2とでは異なることから、外箱の左スリット138の位置と内箱側の左スリット225の位置は同一とされている。なお、右側の側面板においてもそれぞれ同様である。
【0056】
そのため、この実施形態においては、外箱側における左右スリット138,138間の距離L1と内箱側における左右スリット225,225間の距離L2とはほぼ同一とされており、その結果、外箱用懸吊部材3と内箱用懸吊部材4として同一の長さ(同一規格)のものを採用可能となり、製造業者及び販売業者において、外箱と内箱とで異なる規格の懸吊バーを必要とする場合に比べて、在庫の無駄を回避することが出来る。
【0057】
以上説明した実施形態の衣類収納装置によれば、衣類吊り下げ着数に対応する左右方向長(間口)や衣類の背丈に対応する高さ方向長(丈)のみならず、衣類の肩幅に対応する前後方向長(奥行き)についても外箱1よりも内箱2のほうがひと回り小さくなるように両者のサイズの関係が決められているため、外箱1に内箱2をすっぽりと収容することができる。
【0058】
そのため、従前の簡易衣類箱ほぼ1個分のスペースに実質的に2個の簡易衣類箱を収めることができ、引越し業者などにおける倉庫への保管及び引越し現場へのトラック輸送に際して、倉庫の保管スペース及びトラックの荷台スペースを大幅に節減することが可能となる。
【0059】
また、引越し現場となる住居内においては、外箱1に内箱2を収容したままで室内を移動するようにすれば、簡易衣類箱を運び込むための階段の上り下りの労力も半減することに加えて、実際に衣類を収納する段になるまで、外箱1に内箱2に収納したままにしておけば、引越し作業中の室内を無題占有することもなくなり、その分だけ作業スペースが確保されるなどの利点を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の衣類収納装置によれば、例えば、外箱よりも内箱の方が一回り小さくなるように両者のサイズ関係を決めておけば、外箱に内箱を収納した状態では、従前の簡易衣類箱ほぼ1個分のスペースに実質的に2個の簡易衣類箱を納めることができ、引っ越し業者等における倉庫への保管及び引っ越し現場へのトラック輸送に際して、倉庫の保管スペース及びトラックの荷台スペースを大幅に節減するすることができる。
【0061】
また、引っ越し現場となる住居内においては、外箱に内箱を収容したままで室内を移動するようにすれば、簡易衣類箱を運び込むための階段の上り下りの労力も半減することに加えて、実際に衣類を収納する段になるまで、外箱に内箱を収容したままにしておけば、引っ越し作業中の室内を無駄に占有することもなくなり、その分だけ作業スペースが確保される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】衣類収納装置の分解斜視図である。
【図2】外箱の開放状態を示す斜視図である。
【図3】内箱の開放状態を示す斜視図である。
【図4】外箱に内箱を収納した状態を示す一部破断斜視図である。
【図5】外箱から内箱を取り出す状態を示す説明図である。
【図6】外箱側の左棚部材の構造を説明するための展開図である。
【図7】内箱側の棚部材の構造を説明するための展開図である。
【図8】外箱の左右側面板の上縁部に形成された係止部の説明図である。
【図9】内箱の左右側面板の上縁部に形成された係止部の説明図である。
【図10】左右スリット間の距離を外箱の場合(L1)と内箱の場合(L2)とで比較して示す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 外箱
2 内箱
3 外箱用懸吊バー
4 内箱用懸吊バー
5 作業者
101 水平切断線
102 前面板の固定領域
103 前面板の可動領域
104 垂直ヒンジ線
105 差込み片
106 スリット
107 水平ヒンジ線
108 上面板
109 差込み片
110 スリット
111 右側面板
112 指掛け孔
113 差込み片
114 スリット
115 前部右フラップ
116 上部右フラップ
117 右棚部材
118 係止部
119 左側面板
120 指掛け孔
121 上部左フラップ
121a 水平ヒンジ線
122 左棚部材
123 係止部
124 結合代
125 背面板
126 上部後フラップ
127 差込片
128 スリット
129 底板
131 棚用舌片
131a 折り畳み領域
131b 折込み領域
132 スペーサ板
132a スペーサ領域
133 補強版
133a 補強版領域
134,135,136,137 切り抜き孔
137 凹部
138 スリット
201 斜ヒンジ線
202 前面板の固定領域
203 前面板の可動領域
204 水平ヒンジ線
205 上面板
206 差込み片
207 スリット
208 右側面板
209 指掛け孔
210 前部右フラップ
211 上部右フラップ
212 右棚部材
213 係止部
214 左側面板
215 指掛け孔
216 上部左フラップ
216a 水平ヒンジ線
217 左棚部材
218 係止部
218a 結合代
219 背面板
219a 補強板領域
219b 補強板
220 上部後フラップ
220a スペーサ領域
220b スペーサ板
221 差込み片
221a 折り畳領域
221b 棚用舌片
222 スリット
222a 切り抜き孔
223 切り抜き孔
224 凹部
225 スリット
301 パイプ
302,303 L字金具
304 右差込み片
305 左差込み片
401 パイプ
402,403 L字金具
404 右差込み片
405 左差込み片
a1,a2,a3,a4,a5,a6 山折れ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボール紙等の厚手の紙基材で製作された外箱と、同様な紙基材で製作されかつ外箱に収容可能な内箱と、ハンガーを吊すための外箱用及び内箱用の懸吊バーとを含み、
外箱及び内箱は、いずれも、底面、背面、及び左右の側面が閉塞され、かつ上面及び前面が開閉可能な縦型角筒状に形成されると共に、ハンガーに掛けられた衣類の肩幅に対応する前後方向長と、ハンガーに掛けられた衣類の着数に対応する左右方向長と、ハンガーに掛けられた衣類の背丈に対応する高さ方向長とを有し、
外箱及び内箱の左右側面板上縁部の互いに対向する内面には、懸吊バーの両端部を係止する係止部を有する棚部材が突設されている、ことを特徴とする衣類収納装置。
【請求項2】
外箱の前面を構成する前面板は、その頂部から足下に至るまで、外箱前面と左右側面とが交わる左右稜線のいずれかに沿う垂直ヒンジ線を軸として手前に回動させつつ開放可能とされている、ことを特徴とする請求項1に記載の衣類収納装置。
【請求項3】
内箱の前面を構成する前面板は、左右の稜線間を斜めに横断する斜めヒンジ線を軸として斜め手前に回動させつつ開放可能とされている、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の衣類収納装置。
【請求項4】
外箱の左右の棚部材に設けられた左右の係止部同士の間隔と内箱の左右の棚部材に設けられた左右の係止部同士の間隔とはほぼ同一とされている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の衣類収納装置。
【請求項5】
外箱及び内箱の棚部材は、左右の側面板の上縁部に形成された舌片を、左右の側面板に沿って内側に折り畳みつつ巻き込むことにより形成され、かつ折り畳み線に跨って形成した開口が折り畳み後に凹状係止部となる、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の衣類収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−118976(P2007−118976A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311590(P2005−311590)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(592075079)株式会社アサヒ (6)
【Fターム(参考)】