説明

衣類用放射線測定システム

【課題】衣類用放射線測定システムにおいて、作業員の作業負担を軽減するとともに、必要な被曝を軽減できるようにする。汚染衣類の確実な仕分けを行う。
【解決手段】メイン搬送路100に沿って複数の枠体34が設けられており、各枠体34により、各袋36が吊り下げ保持されている。投入位置14において袋の中に複数の衣類54が投入される。検出位置16において袋を対象として放射線の測定が実施される。第1の落下位置18においては放射性汚染有りと判定された袋に対して、その袋それ自体を下方へ落下させて排出する工程が実施される。第2の落下位置20においては放射性汚染無しの判定がなされた袋についてその下部を開放させて内容物である衣類をベルトコンベア18へ落下させる工程が実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衣類用放射線測定システムに関し、特に、放射性汚染の有無に基づいて衣類を仕分けするシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所、核燃料処理施設等の放射性物質取扱い施設においては、衣類用放射線測定設備としてのランドリー前モニタ、衣類の洗濯除染を行う洗濯設備、洗濯後(乾燥後)の衣類について放射性汚染が生じていないことを確認するランドリー後モニタ、等が設置されている。もし高レベル汚染が生じている衣類を他の衣類と一緒に洗濯してしまうと、汚染を拡大させてしまう可能性がある。そのような問題を未然に防止するために、衣類用放射線測定システムとして、ランドリー前モニタが利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−51428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のランドリー前モニタは測定機能しか有しておらず、汚染衣類の仕分け、汚染衣類の搬送、等をすべて手作業で行わなければならない。このため作業者の負担が大きく、また不必要に被曝してしまうおそれもある。なお、特許文献1にはランドリー後モニタが開示されている。そのようなランドリー後モニタにおいても、作業員の作業負担及び不必要な被曝を軽減することが要請される。
【0005】
本発明の目的は、作業員の作業負担及び不必要な被曝を軽減できるシステムを提供することにある。あるいは、本発明の目的は、汚染衣類が含まれている場合において汚染の拡大を防止できるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るシステムは、メイン搬送路上に整列した複数の衣類袋からなる衣類袋列を搬送する搬送機構と、前記メイン搬送路上の検出位置において対象衣類袋に対して放射線の検出を行う検出部と、前記検出部による検出結果に基づいて放射性汚染の有無を判定する判定部と、前記判定部が放射性汚染有りと判定した場合に対象衣類袋それ全部を第1サブ搬送路へ移送する第1移送機構と、前記判定部が放射性汚染無しと判定した場合に対象衣類袋内の衣類を第2サブ搬送路へ移送する第2移送機構と、を含む。
【0007】
上記構成によれば、衣類袋内に衣類が入れられ、それを単位として、衣類の搬送や放射線の検出、搬送先の制御が実施される。詳しくは、メイン搬送路上には固定的に又は適応的に検出位置が設定され、そこで衣類袋に対して放射線検出が実施される。放射性汚染衣類が含まれている場合、そこに付着した放射性物質から出た放射線(例えばγ線)が衣類袋を突き抜けて検出部で検出される。衣類袋それ自体に(例えば何らかの事情でその内面に)放射性物質が付着していた場合も同様である。検出部での検出結果から放射性汚染の有無が判定される。放射線汚染の判定基準は任意に定めることが可能である。判定時に汚染度が判定されてもよい。その場合、汚染度の高低によって衣類が仕分けられることになる。放射性汚染有りと判定された場合、既に衣類袋の内面にも放射性汚染が及んでいることが想定され得るので、衣類袋ごと(つまり中身を出さずに)汚染衣類袋が第1サブ搬送路へ移送される。その場合、第1移送機構によって汚染衣類袋に対してメイン搬送路上から取り外す等の措置が適用される。放射性汚染無しと判定された場合、衣類袋内の衣類が取り出されてそれが第2サブ搬送路へ移送される。その後、望ましくはその非汚染衣類袋が再利用される。
【0008】
衣類袋を利用するので、放射線汚染衣類が発覚した場合であっても、衣類袋それ全部を処分(移送)することが容易であり、汚染範囲を限定して、汚染物を速やかに所定設備へ送り込むことが可能となる。衣類袋は、通常、柔軟性を有する堅牢な材料で構成され、それは布地であるのが望ましいが他の部材で構成されてもよい。変形容易な衣類袋の場合、他の部材(検出部を含む)との不用意な衝突、あるいは、接触を避けるために、つまり外形状を制限するために、衣類袋を硬質の枠体で包み込むのが望ましい。枠体内に衣類袋を入れ、枠体内に限って変形を許容するものである。その場合、放射線を通過可能な部材又は構造によって枠体を構成するのが望ましい。但し、水平方向の周囲を枠体で囲み、上方や下方から放射線の検出を行う場合には枠体を遮蔽部材で構成することも可能である。なお衣類袋が変形困難な部材あるいは硬質部材で構成されてもよい。
【0009】
衣類袋の搬送方式としては吊り下げ方式(懸下方式)を採用するのが特に望ましい。この場合には重力作用を使ってつまり落下作用を使って移送を行えるから移送機構として大掛かりなものを設ける必要がなくなる。衣類袋を落下させる他、衣類については上部から取り出すようにしてもよい。吊り下げ方式以外の方式、例えばコンベアを利用した載置方式を採用することも可能である。その場合、マニピュレータやロボット等によって衣類袋や衣類を持ち上げて移送するようにしてもよい。衣類袋を再利用あるいは循環的に利用する場合、メイン搬送路をループ形状にするのが望ましい。メイン搬送路を直線経路(非ループ経路)として構成することも可能であるが、その場合、下流端に到達した衣類袋を上流端へ戻す作業が必要となる。例えば衣類袋の測定時間が区々となる場合、途中に分岐点、合流点を設けるようにしてもよい。望ましくは、メイン搬送路上に、検出位置(検出セクション)、衣類袋の移送位置(移送セクション)、衣類の移送位置(移送セクション)が順番に設定される。衣類袋ごと移送が行われる場合、衣類袋の補充は手作業によりあるいは自動的に行うことが可能である。衣類袋への衣類の投入も手作業によりあるいは自動的に行うことが可能である。
【0010】
上記構成によれば、検出後において汚染物とそうでないものを自動的に仕分けることができるから、また、汚染衣類を別の処理プロセスへ速やかに送ることが可能であるから、作業者の負担が大幅に軽減され、また作業者の被曝も低減される。メイン搬送路には少なくとも1つの衣類袋が設置されるが、通常、複数の衣類袋が同時に設置されてそれらが列を構成し、複数の工程が並列的に実施される。これにより処理効率を高められる。
【0011】
望ましくは、前記第1移送機構は、前記対象衣類袋を前記メイン搬送路から前記第1サブ搬送路上へ落下させる機構である。落下を利用するので第1移送機構の構成が簡易化される。単純に落下させてもよいし、滑り台のようなシューターを利用してもよい。
【0012】
望ましくは、前記搬送機構は、前記複数の衣類袋を吊り下げ保持する複数のキャリアを有し、前記各キャリアには第1係合部材が設けられ、前記各衣類袋には前記第1係合部材に引っ掛けられる第2係合部材が設けられ、前記第1移送機構は前記第1係合部材から前記第2係合部材を脱落させる機構である。各キャリアは、各衣類袋をメイン搬送路上に沿って運動させるため中継体であり、その形態としては各種のものが考えられる。単なるスライダのようなものであってもよいし、上記枠体及びスライド運動機構として構成されてもよい。搬送レールあるいは搬送ベルトに対して衣類袋が直接的に引っ掛けられるように構成してもよい。
【0013】
望ましくは、前記第2移送機構は、前記対象衣類袋の下部から前記対象衣類袋内の衣類を前記第2サブ搬送路上へ落下させる機構である。望ましくは、前記第2移送機構は、前記対象衣類袋の下部を開放させる機構である。下部を閉じていた作用を消失させ下部を開放させれば衣類の自重によって下部開口が広がり、衣類が下方へ落下する。下部開口をより積極的に開閉する機構を衣類袋に取り付けるようにしてもよい。
【0014】
望ましくは、前記メイン搬送路上には、前記第1移送機構が動作する第1移送位置と、前記第2移送機構が動作する第2移送位置と、が設定され、前記メイン搬送路上において、前記検出位置の下流側に前記第1移送位置と前記第2移送位置の内の一方が設定され、その下流側に前記第1移送位置と前記第2移送位置の内の他方が設定される。汚染物をできるだけ早く専用施設へ送り込むという観点からは、検出位置の直後に第1移送位置を設定し、その後に第2移送位置を設定するのが望ましい。
【0015】
望ましくは、前記検出部は、前記対象衣類袋を挟んで一方側及び他方側に設けられた第1検出器及び第2検出器を含む。望ましくは、前記第1検出器及び前記第2検出器は、前記対象衣類袋の搬送方向である水平方向及び垂直方向に広がった平面型の検出器である。メイン搬送パスの一方側又は両側に検出器を設置すれば検出器が衣類袋の進路を妨害することはないから検出器を可動式にする必要がなくなる。衣類袋の変形による検出器への衝突を避けるためには衣類袋の外側に枠体を設けるか、検出器の前面に規制部材を設けるのが望ましい。対象衣類袋に対して上下左右前後の6面を定義した場合、その内で前後に検出器を設けるためには衣類袋と検出器の相対的な位置決め機構が必要となる。よって、上下左右のいずれか1つ又は複数に検出器を設けるのが望ましい。なお、検出位置を移送位置に兼ねさせる場合、落下のために下方を開放させておく必要がある。
【0016】
本発明に係る方法は、衣類を衣類袋内に入れる収容工程と、前記衣類が収容された衣類袋に対して放射線の測定を行う測定工程と、前記放射線の測定結果に基づいて放射性汚染の有無を判定する判定工程と、前記判定工程で放射線汚染有りと判定された場合には当該衣類袋それ全部を汚染処理設備へ移送し、前記判定工程で放射線汚染無しと判定された場合に当該衣類袋から衣類を取り出す仕分け工程と、を含む。衣類袋への衣類のセットは手作業によりあるいは自動的に行える。測定工程及び判定工程は基本的に自動的に実行され、その後の仕分け工程において汚染衣類袋の移送も基本的に自動的に実行される。非汚染衣類の取り出しは手作業で又は自動的に行うことが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業員の作業負担及び不必要な被曝を軽減できる。あるいは、汚染衣類が含まれている場合において汚染の拡大を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る衣類用放射線測定システムの好適な実施形態を示す上面図である。
【図2】衣類用放射線測定システムの要部構成を示す図である。
【図3】第1の落下機構の動作を示す図である。
【図4】第2の落下機構の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1には、本発明に係る衣類用放射線測定システムの好適な実施形態が示されている。この衣類用放射線測定システムは、いわゆる衣類モニタであり、特にランドリー前の衣類に対して放射線測定及び仕分けを行うランドリー前モニタである。この衣類モニタは例えば原子力発電所、放射性同位元素取扱い施設等において用いられるものである。
【0021】
図1において、衣類モニタ10はメイン搬送路を構成する搬送機構12を備えている。メイン搬送路は図示されるようにループ状の形態を有しており、搬送対象物がメイン搬送路に沿って循環的に搬送される。メイン搬送路上には、投入位置(投入ポジション)14、検出位置(検出ポジション)16、第1落下位置(落下ポジション)18、第2落下位置(落下ポジション)20等が設定されている。搬送機構12によって搬送される対象は袋(衣類袋)36であり、それはキャリアを構成する枠体34とともに被搬送物つまりパケット22を構成している。衣類袋36は、例えば布によって構成される袋状の部材であり、本実施形態において、袋36は上部に開口を有し、また下部に開口を有している。下部の開口については以下に説明する機構によって通常閉じられており、必要に応じてそれが開放される。上部開口は枠体34の保持作用によって水平方向に広げられている。図1に示されるように、メイン搬送路に沿って、複数の被搬送物22が一定の間隔をもって並べられており、それらが被搬送物の列を構成している。それらは一定の間隔を維持したまま主搬送路に沿って循環運動を行っている。ただし本実施形態においては、被搬送物の搬送は間欠的に行われており、すなわち1ピッチづつ搬送が行われている。もっとも被搬送物の間隔すなわちパケット間隔は必ずしも固定にする必要はなく、必要に応じて必要なパケットを停止させるようにしてもよい。複数のパケットは複数の袋36の列に相当する。
【0022】
搬送機構12について詳述する。搬送機構12は、輪状に形成された搬送レール24及び搬送ベルト26を備えている。図示されるように内側に搬送ベルト26が回転可能に設けられており、それに対して一定間隔を隔てて外側に搬送レール24が設けられている。搬送レール24は非可動の部材である。搬送ベルト26と搬送レール24とが各パケット22の上部を搬送する。搬送機構12は、各パケットの下方に設けられたレールユニット32を備えている。そのレールユニット32は、内側のレール及び外側のレールから成り、それらの間隔は所定値となっている。各袋36の下部がそれらのレールの間に差し込まれ、これによって各袋36の下部が実質的に閉じられている。ただし、レールユニット32は一部において切り欠かれており、すなわち第1の落下位置18及び第2の落下位置20においてはレールユニット32は設けられておらず、それに代えて第1及び第2の落下機構48,50が設けられている。
【0023】
パケット22は上述したように、袋36と、その周囲を取り囲む水平断面が四角形を有する枠体34と、を含むものである。袋36は、上述したように上下に開口を有する筒状の部材であり、それは例えば布地で構成されている。丈夫で変形自在な部材で構成されるのが望ましい。ただし、袋36を樹脂等の硬質部材で形成することも可能である。その場合においては透明部材で構成してもよい。袋36それ自体が変形性を有していても、その周囲に枠体34が設けられているため、袋36の外側への変形は枠体34によって規制される。これにより袋36が極度に変形して他の部材と衝突してしまうといった問題を未然に回避することが可能である。
【0024】
枠体34の上部には連結部38及び40が設けられている。連結部38によって搬送ベルト26に対して枠体34の上端部が固定連結されている。搬送ベルト26は大型のプーリ28と同じく大型のプーリ30とに掛け渡されており、ここにおいてプーリ28が駆動プーリである。よって、プーリ28が回転運動を行うと、それが搬送ベルト26の回転運動となり、その運動が連結部38を介して各パケット22へ伝達される。連結部40は、走行用のローラを有しており、そのローラが搬送レール24上において回転運動する。すなわち連結部40が搬送レール24上を走行する。もちろん、このような構成は一例であって、いずれにおいてもメイン搬送路に沿ってパケット22が自在に運動でき、さらにそれに駆動力が伝達されるように構成するのが望ましい。
【0025】
枠体34は本実施形態において多数の開口を有する金網のような金属部材で構成されている。これによって形状保持性及び放射線通過性の両者が達成されている。もちろん枠体34を樹脂などの部材で構成してもよい。枠体34は箱状の形態を有しており、その上部及び下部は開口となっている。枠体34の上辺と袋36の上辺との間に本実施形態において4つの係合機構が設けられており、それらを介して枠体34によって袋36が保持されている。ただし、所定の場合においては枠体34から袋36を下方へ落下させることが可能である。すなわち枠体34に対して袋36は着脱自在である。
【0026】
以下に各ポジションについて説明する。投入位置14は他の位置よりも上流側に設定されており、そこには投入口42が設けられている。投入口42を介して作業者によって衣類が落とし込まれ、それが投入口42の直下に位置している袋内に収容される。通常複数の(例えば20個の)衣類が袋内に投入されることになる。衣類を収納した袋は次に検出位置16に送られる。検出位置16には、メイン搬送路の一方側及び他方側に設けられた一対の検出器44,46を有する。各検出器44,46は、その検出面を袋側に向けており、各検出面は袋の搬送方向とそれに直交する垂直方向とに広がっている。大面積型かつ平面型の検出器を利用することにより検出感度を高めることができる。2つの検出器44,46を利用して同時計数や非同時計数を行うことも可能である。袋を基準として6面を定義した場合、可動式の検出器を用いない場合には前後の面に検出器を設けるのは困難であり、残りの4面に1または複数の検出器が設けられる。もちろん、前後の面に検出器を配置する機構を採用するようにしてもよい。検出位置16において袋の落下等を行わない場合には、下方に同様の検出器を設けるようにしてもよい。また、検出ポジション全体を鉛等の部材で覆って外来放射線を遮断するように構成してもよい。検出器44,46としては各種のものを利用することができ、例えば半導体型検出器、シンチレータ型検出器等を利用することが可能である。本実施形態においてはγ線が測定されているが、さらにβ線やα線を検出するための機構を設けるようにしてもよい。検出後の袋が第1の落下位置18へ送り込まれる。
【0027】
2つの検出器44,46によって検出された結果は図示されていない判定部において評価される。すなわち、検出結果に基づいて放射性汚染有りまたは放射性汚染無しが判定される。この場合において、放射線汚染度合いが判定されるようにしてもよい。放射性汚染有りと判定された場合、第1落下位置18に送り込まれた袋に対して、それを袋ごと下方へ落とし込む処理が実施される。この場合においては第1の落下機構48が利用される。その詳細については後に図3を用いて説明する。放射性汚染が生じている場合、速やかにその衣類を所定の設備へ送り込む必要があり、このため本実施形態では、検出位置16の直後に第1落下位置18が設定されており、またその第1落下位置においては中身だけではなく、袋までもがキャリアから切り離されている。すなわち袋ごと排出されることになる。
【0028】
一方、放射性汚染無しと判定された場合、第2落下位置20に送り込まれた袋に対して下部を開放させる処理が実施され、これによって中身すなわち衣類だけが下方に落とし込まれる。その際において、複数のパケット22が固定のピッチで並んでいる場合において、放射性汚染無しと判定された場合には、その判定に関わる衣類は第1落下位置18を経由して第2落下位置20に到達し、そこで別の搬送ラインへ引き渡されることになるが、その場合においては放射性汚染が生じていないから作業者の被曝等の問題は生じない。もちろん可変ピッチの構成を採用すれば、放射線検出の後、速やかにパケットを第2落下位置20へ送り込んで、直ちに衣類を落下させるように制御することも可能である。ちなみに、図1においては上述した判定部及び図1の各構成の動作を制御している制御部が図示省略されている。
【0029】
第2落下位置において処理が終わった後の袋はメイン搬送路に沿って下流側へさらに送られる。この場合において、袋ごとの落下が適用された場合には袋の欠落が生じているため所定のポジションにおいて、作業者によりあるいは自動的に新しい袋が補充される。すなわちキャリアに対して袋が新しく装着される。上記構成においては、投入位置14を最上流とした場合、上流から下流にかけて複数の位置が設定され、各位置において作業が並行して実施されることになる。それによって、処理効率を高められる。図1においてはループ状のメイン搬送路が示されていたが、非ループ状のメイン搬送路を利用するようにしてもよい。ただし、その場合においては、下流端から上流端まで枠体や袋を戻す作業が発生する。
【0030】
図2には、図1に示した衣類モニタの要部構成が示されている。紙面水平方向が搬送方向であり、紙面垂直方向が上下方向である。衣類モニタ10は上述したようにメイン搬送路100を有している。その下部には、図に概念的に示されるように、第1のサブ搬送路102及び第2のサブ搬送路104が設けられている。第1のサブ搬送路102は放射性汚染有りが判定された場合において、衣類を収容した袋それ自体を他の設備へ搬送するためのラインである。第2のサブ搬送ライン104は放射性汚染無しが判定された場合において、袋からの落下により取り出された衣類を下流側のランドリー設備へ送り込むためのラインである。
【0031】
メイン搬送路100において、上流から下流にかけて既に説明したように投入位置14、検出位置16、落下位置18,20が設定されている。また、メイン搬送路100においてはその上部に搬送レール及び搬送ベルトから成る上部機構27が設けられており、またその下部においてはレールユニット(下部レールユニット)32が設けられている。
【0032】
被搬送物であるパケット22は、上記の通り、袋36と枠体34とを備えており、袋36の中には複数の衣類52が収容されている。袋36の下部36Aはレールユニット32を構成する2つのレールの間に差し込まれており、事実上下部が閉止された状態となっている。袋36内に収容された衣類は通常下部の開口から下方へ落下することはない。小さなゴミや塵の落下までを確実に防止するように下部の挟み込みを行うのが望ましく、また下部にチャック機構等を設けるようにしてもよい。
【0033】
メイン搬送路100に設定された各位置について説明する。投入位置14においては、作業者の手作業によって複数の衣類54が投入口42の中へ投入され、その衣類は投入位置14に位置決められた袋の内部に落とし込まれる。ここで、衣類は放射性物質取扱い施設において作業する各作業者が身に着けていたものであり、例えばシャツ、ズボン、下着類、帽子、手袋等である。検出位置16においては、上述したように複数の検出器を利用して袋に対して放射線の測定が実施される。汚染衣類が含まれている場合、そこで生じた放射線すなわちγ線が袋36及び枠体34を通過して検出器にて検出される。図示されるように、袋36の縦方向の長さに比べて、枠体34の縦方向の長さは短くなっている。これは下部36Aを一対のレールによって挟み込むためである。枠体34の上部には本実施形態において4つの可動式フックが設けられており、一方、袋36の上部には4つのフックに引っ掛かる4つのループが設けられている、各フックと各ループとが引っ掛かり合うことにより、枠体34によって袋36が吊り下げ保持されている。各フックが所定の下方運動を行うと、引っ掛かり関係が解消し、その結果、袋36を落下させることが可能となる。
【0034】
第1落下位置18においては、放射性汚染有りと判定された袋に対して、袋ごとそれを落下させる処理が適用される。具体的には、第1の落下機構48により、本実施形態においては袋の下部が下方に強制的に引き下げられ、これによって各フックと各ループとの係合関係が解消し、すなわち複数のループが脱落して袋が下方に落とし込まれている。その袋が第1のサブ搬送路102を構成するベルトコンベア56上に落下し、それは所定の処理設備へ搬送される。搬送途中にある袋が符号106で示されている。横倒し状態においても内容物が出ないように、上部の開口を閉じるように構成してもよい。また、袋が落下した際に正立するように構成することも可能である。さらに、落下にあたって、単純な落下ではなく、上下方向のレールに沿った落下を行わせるようにしてもよい。落下後の袋については、制御部においてその汚染度合いが管理され、それは外部の装置へ引き渡される。必要に応じて袋に対してスタンプ処理を施すようにしてもよい。
【0035】
第2落下位置20においては、放射性汚染無しと判定された袋に対してその内容物である衣類を取り出す処理が適用される。具体的には第2の落下機構50によって、袋の下部の開口が広げられる。具体的には、一対のレールの作用によって袋の下部が閉じられていたその作用を消失されることにより、内容物の自重によって袋の下部が自然に開くように構成されている。そこで、落下する衣料が符号108で示されており、それは第2のサブ搬送路104を構成するベルトコンベア58上に落下している。そして、それらの衣類108は後段に設けられているランドリー設備へ送り込まれ、そこで洗濯等の処理が実施される。図2に示した構成では、放射線検出結果に基づいて、放射線の有無が判定されていたが、放射線の汚染度合いを判定し、2つ以上の仕分けを行うようにしてもよい。例えば汚染度大の物、汚染度小の物、汚染されていない物、といったように衣類あるいは袋を仕分けるようにしてもよい。また、上記の例においては衣類の投入が作業者によって行われていたが、それを自動化することももちろん可能である。第1のサブ搬送路102と第2のサブ搬送路104との間には遮蔽用の隔壁を設けるようにするのが望ましい。あるいは放射性物質の舞い上がりを防止するための構成を適用するのが望ましい。汚染の拡大を防止するためである。
【0036】
次に図3を用いて上述した第1の落下機構の構成及び動作を説明する。図3において(A)で示すように、袋36は枠体34に吊り下げられている。具体的には、4つの係合機構60が設けられている。各係合機構60は枠体34に設けられた可動フック62と、袋36に設けられたループ64とから成るものである。可動フック62は、内側やや上方に向けて、伸長したレバー状の部材を含み、それはバネの作用により起き上がり方向に付勢されている。その起き上がり上昇端は図示されるように上方に若干持ち上がったところである。それに対して袋の上部に設けられたリング状のループ64が引っ掛けられている。具体的にはループ64の中にフック62が差し込まれている。各係合機構60は所定の荷重がかかるまで引っ掛かり状態を維持するように構成されている。したがって、通常の場合、内容物が最大に収容されても、自然に吊り下げ状態が解消されてしまうことはない。
【0037】
第1の落下機構48は図示されるように、一対のアーム66を有している。各アーム66は軸68を中心として回転運動するものである。(A)には通常姿勢にある一対のアーム66が示されており、各アーム66の端部66Aは上昇端に位置している。具体的には各アーム66はその端部66Aをやや上方に持ち上げた姿勢で維持されている。この場合において、2つのアーム66が有する2つの端部66Aの間の隙間つまりスリットの幅Dは所定に定められており、そのスリットに袋36の下部36Aが差し込まれている。実質的に開口が0の状態となっており、袋36の内容物が下方へ落ちることはない。
【0038】
(B)で示すように、判定部において放射性汚染有りが判定された場合、2つのアーム66が垂れ下がり運動を行う。すると、2つのアーム66の2つの端部66Aの間隔が狭まり、下部36Aが強く挟み込まれた状態となり、同時にその挟み込みポイントが下方に引き下げられるので、袋36に対して下方への大きな荷重つまり引き下げ力が生じることになる。その結果、4つの係合機構による保持力が消失する。具体的には、各フック62が垂れ下がり運動を行い、それが所定のところまで到達すると、各フック62から各ループ64が脱落してその結果(B)に示すように袋36が落下運動する。(C)に示すように、落下運動が開始した後、2つのアーム66は完全に下方に垂れ下がり、これによって袋36の落下経路が確保される。これにより、袋36は上述したように第1のサブ搬送路102へ落とし込まれる。
【0039】
その後、一対のアームは(A)に示した原姿勢に復帰し、次の袋を差し込み可能な状態が形成される。袋が落下した後、各フックは上方へ起き上がり、新しい袋を装着可能な状態となる。図3に示した落下を生じさせる機構は一例であって、これ以外にも各種の機構を採用することが可能である。いずれにしても袋それ全部を下方に引き落とすための構造を採用するのが望ましい。本実施形態においては落下した袋の下部開口を閉じる仕組みは設けられていないが、そこにファスナーやクリップ構造を設けるようにしてもよい。すなわち自然状態において開口が閉じるようにしてもよい。
【0040】
次に図4を用いて第2の落下機構の構成及び動作について説明する。(A)に示すように、また上述したように、複数の係合機構66によって、袋36が枠体34に対して吊り下げ保持されている。各係合機構66は上述したように、可動フック62とループ64とにより構成される。第2落下位置において、その下部には第2の落下機構50が設けられている。第2の落下機構50は一対のアーム70を有し、その各アーム70は水平方向に前後運動を行うものである。ちなみに符号70Aはアーム70の先端部を示しており、符号72はアーム70の運動を案内するブロックを示しており、符号74はアーム70の後端部を示しており、そこに前後運動力が伝達される。ただし、そのための機構は図示省略されている。(A)に示す状態では、各2つのアーム70が前進端にあり、その結果、2つの先端部70Aが互いに一定間隔Dをもって対向している。その隙間すなわちスリットに袋36の下部36Aが差し込まれる。したがって、その状態においては、下部36Aは実質的に閉じられており、そこから内容物が下方へ落ちることはない。
【0041】
第2落下位置においては、このような(A)に示す状態において袋を受け入れた上で、(B)に示す動作が実行される。すなわち2つのアーム70が後退運動をする。これに2つの先端部70Aが互いに離れる方向へ運動をする。その結果、下部36Aにある開口が内容物の自重によって自然に広がり(符号36B参照)、内容物である衣類が下方へ落ちることになる。それらは上述したように第2のサブ搬送路104を構成するベルトコンベア上に落下する。このように下部の挟持力を消失させることにより、自然に下部の開口が広がるように構成されている。もちろん、より積極的に下部開口を広げる機構を採用してもよい。例えば下部開口が自然状態において常に閉じるように規定しておき、第2落下位置においてその下部開口を強制的に広げるように構成することも可能である。
【0042】
この第2落下位置においては、袋がそのまま枠体34に保持されており、袋36は再利用されることになる。広がった状態にある下部開口は、レールユニットを構成する一対の下部レールの間に挟み込まれ、その結果、下部開口が再び閉じた状態になる。全ての内容物の落下を確認するためにセンサ等を設けるようにしてもよい。また、落下後において、確認的に放射線検出を行うようにしてもよい。
【0043】
上述した実施形態に係る衣類モニタはいわゆるランドリー前モニタであったが、上述した特徴的構成をランドリー後モニタに適用することももちろん可能であり、また他のシステムへ応用することも可能である。上述した実施形態においては、吊り下げ方式が採用されていたが、載置方式を採用することも可能である。例えばパケット等を利用してその中に衣類が収容されるにし、パケット単位で放射性汚染衣類とそうでない衣類等を仕分けるようにすることも可能である。ただし、その場合においては、放射性汚染が生じた衣類を収容したパケットそれ自体が排出されるように構成するのが望ましい。上述した第1の落下機構及び第2の落下機構はいずれも例示であり、既に説明した機構以外の機構を採用するようにしてもよい。いずれにしても第1落下位置において袋それ自体が確実に落下されるようにし、また第2落下位置において袋の中身だけが確実に落下するように構成するのが望ましい。上述した実施形態においては第2落下位置において衣類を落下させることにより衣類の取り出しが行われていたが、その位置において手作業により上方から衣類を取り出すようにしてもよいし、またその衣類をロボットにより上方から取り出すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 衣類モニタ、12 メイン搬送路(搬送機構)、14 投入位置、16 検出位置、18 第1落下位置、20 第2落下位置、22 被搬送物(パケット)、24 搬送レール、26 搬送ベルト、34 枠体、36 袋(衣類袋)、44,46 検出器、48 第1の落下機構、50 第2の落下機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイン搬送路上に整列した複数の衣類袋からなる衣類袋列を搬送する搬送機構と、
前記メイン搬送路上の検出位置において対象衣類袋に対して放射線の検出を行う検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて放射性汚染の有無を判定する判定部と、
前記判定部が放射性汚染有りと判定した場合に対象衣類袋それ全部を第1サブ搬送路へ移送する第1移送機構と、
前記判定部が放射性汚染無しと判定した場合に対象衣類袋内の衣類を第2サブ搬送路へ移送する第2移送機構と、
を含むことを特徴とする衣類用放射線測定システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記第1移送機構は、前記対象衣類袋を前記メイン搬送路から前記第1サブ搬送路上へ落下させる機構である、ことを特徴とする衣類用放射線測定システム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、
前記搬送機構は、前記複数の衣類袋を吊り下げ保持する複数のキャリアを有し、
前記各キャリアには第1係合部材が設けられ、
前記各衣類袋には前記第1係合部材に引っ掛けられる第2係合部材が設けられ、
前記第1移送機構は前記第1係合部材から前記第2係合部材を脱落させる機構である、
ことを特徴とする衣類用放射線測定システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記第2移送機構は、前記対象衣類袋の下部から前記対象衣類袋内の衣類を前記第2サブ搬送路上へ落下させる機構である、ことを特徴とする衣類用放射線測定システム。
【請求項5】
請求項4記載のシステムにおいて、
前記第2移送機構は、前記対象衣類袋の下部を開放させる機構である、ことを特徴とする衣類用放射線測定システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記メイン搬送路上には、前記第1移送機構が動作する第1移送位置と、前記第2移送機構が動作する第2移送位置と、が設定され、
前記メイン搬送路上において、前記検出位置の下流側に前記第1移送位置と前記第2移送位置の内の一方が設定され、その下流側に前記第1移送位置と前記第2移送位置の内の他方が設定された、ことを特徴とする衣類用放射線測定システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記検出部は、前記対象衣類袋を挟んで一方側及び他方側に設けられた第1検出器及び第2検出器を含む、ことを特徴とする衣類用放射線測定システム。
【請求項8】
請求項7記載のシステムにおいて、
前記第1検出器及び前記第2検出器は、前記対象衣類袋の搬送方向である水平方向及び垂直方向に広がった平面型の検出器である、ことを特徴とする衣類用放射線測定システム。
【請求項9】
衣類を衣類袋内に入れる収容工程と、
前記衣類が収容された衣類袋に対して放射線の測定を行う測定工程と、
前記放射線の測定結果に基づいて放射性汚染の有無を判定する判定工程と、
前記判定工程で放射線汚染有りと判定された場合には当該衣類袋それ全部を汚染処理設備へ移送し、前記判定工程で放射線汚染無しと判定された場合に当該衣類袋から衣類を取り出す仕分け工程と、
を含むことを特徴とする衣類仕分け方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−50311(P2013−50311A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186838(P2011−186838)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】