説明

表土緑化方法

【課題】種子自体を損傷することなく刺状構造物を確実に除去することができ、種子と基盤材とを混合させた土壌基盤材により表土を確実に緑化させることができる表土緑化方法を提供する。
【解決手段】
表土緑化方法は、周囲に刺状構造物が存在する殻に覆われた種子に対して、少なくとも該刺状構造物を硬化させる第1処理工程(STEP10)と、第1処理工程により得られた第1状態の種子から、刺状構造物を除去する第2処理工程(STEP20)とを備え、こうして得られた加工種子を基盤材と混合して表土吹付用の土壌基盤材にする混合工程(STEP60)と、混合工程により得られた土壌基盤材を表土に吹き付ける吹き付け工程(STEP70)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲に刺状構造物が存在する殻に覆われた種子と基盤材とを混合した土壌基盤材を表土に吹き付けて該表土を緑化する表土緑化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の種子の加工方法としては、メッシュ状の内周面を備えた回転ドラム内で、該内周面に圧接可能な弾性部材が回転可能に構成された種子毛除去装置内に、種子を収容し、種子をドラムの内周面と弾性部材との間に擦り合わせて、種子表面の野毛などの刺状構造物を除去する方法が知られている(特許文献1 段落0016,0017,0022)。
【0003】
また、この種の種子の加工方法としては、種子とこの種子より粒径が小さい川砂とを布袋に入れて、布袋を揉みながら摩擦力を加えることにより、種子表面の毛茸などの刺状構造物を除去する方法が知られている(特許文献2 段落0010)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−278880号公報
【特許文献2】特開平6−245602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の種子毛除去装置による種子の加工方法をチカラシバ等の種子に適用した場合、以下の問題があるため種子から刺状構造物を除去することが困難であった。
【0006】
すなわち、柔軟で種子の全長の数倍の長さがある刺状構造物を種子の周囲に有するチカラシバ等の種子は見かけの嵩密度が非常に低く嵩張るため取扱い性が悪く、種子毛除去装置で除去処理することが困難であった。例えば、ドラム式の種子毛除去装置では、ドラムに詰めて収納しても刺状構造物同士が絡まるだけで嵩密度がそれほど高くならないこと、チカラシバ等の種子を充填したドラムを回転させても柔軟性のある刺状構造物が変形と復元を繰り返すだけでドラムの回転に種子が追従しにくいこと等からドラムの内周面と弾性部材との間で種子を擦り合わせることが困難であった。これは、ドラム型の種子毛除去装置に限らず、回転するスクリュー羽により種子毛を除去するスクリュー式の種子毛除去装置などでも同様である。
【0007】
また、上記特許文献2記載の種子の加工方法では、種子と川砂との摩擦力により、刺状構造物のみならず、種子自体が損傷してしまい、発芽に影響を与えることが懸念される。
【0008】
以上の事情に鑑みて、本発明は、種子自体を損傷することなく刺状構造物を確実に除去することができ、種子と基盤材とを混合させた土壌基盤材により表土を確実に緑化させることができる表土緑化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の表土緑化方法は、周囲に刺状構造物が存在する殻に覆われた種子と基盤材とを混合した土壌基盤材を表土に吹き付けて該表土を緑化する表土緑化方法であって、
前記種子に対して、少なくとも該刺状構造物を硬化させる第1処理工程と、
前記第1処理工程により得られた第1状態の種子から、硬化した該刺状構造物を除去する第2処理工程と、
前記第2処理工程により得られた第2状態の種子と基盤材とを混合して表土吹付用の土壌基盤材にする混合工程と、
前記混合工程により得られた土壌基盤材を表土に吹き付ける吹き付け工程と
を備えることを特徴とする。
【0010】
かかる第1発明の表土緑化方法によれば、第1処理工程により刺状構造物を予め硬化させる。これにより、刺状構造物自体の柔軟性が損なわれ、硬化した刺状構造物の1つ1つが破壊可能となる。次いで、第2処理工程により、刺状構造物を硬化させた第1状態の種子から、刺状構造物を破壊して除去することで、種子自体を損傷することなく刺状構造物を確実に除去することができる。そして、刺状構造物が除去された加工種子は、取り扱いを容易として、混合工程で、基盤材と確実に混合させて土壌基盤材とすることができ、これを表土に吹き付けて確実に表土を緑化させることができる。
【0011】
第2発明の表土緑化方法は、周囲に刺状構造物が存在する殻に覆われた種子と基盤材とを混合した土壌基盤材を表土に吹き付けて該表土を緑化する表土緑化方法であって、
前記種子に対して、少なくとも該刺状構造物を硬化させる第1処理工程と、
前記第1処理工程により得られた第1状態の種子から、硬化した該刺状構造物を除去する第2処理工程と、
前記第2処理工程により得られた第2状態の種子から、前記殻を除去する第3処理工程と、
前記第3処理工程により得られた第3状態の種子と基盤材とを混合して表土吹付用の土壌基盤材にする混合工程と、
前記混合工程により得られた土壌基盤材を表土に吹き付ける吹き付け工程と
を備えることを特徴とする。
【0012】
かかる第2発明の表土緑化方法によれば、第1処理工程により刺状構造物を予め硬化させる。これにより、刺状構造物自体の柔軟性が損なわれ、硬化した刺状構造物の1つ1つが破壊可能となる。次いで、第2処理工程により、刺状構造物を硬化させた第1状態の種子から、刺状構造物を破壊して除去することで、種子自体を損傷することなく刺状構造物を確実に除去することができる。さらに、第3処理工程で用いられる第2状態の種子は刺状構造物が除去されているため、この第3処理工程では、刺状構造物が障害となることなく殻のみを除去することできる。そして、混合工程により、殻が除去された加工種子を基盤材と確実に混合させて土壌基盤材とすることができ、これを表土に吹き付けて確実に表土を緑化させることができる。
【0013】
例えば、第3処理は、前記第2状態の種子を籾摺り処理する。これにより、籾摺り機による籾摺り処理により、殻を除去するができる。
【0014】
第3発明の表土緑化方法は、第1発明または第2発明において、
前記種子は、前記刺状構造物が芒であり、前記殻が小穂であることを特徴とする。
【0015】
かかる第3発明の表土緑化方法によれば、刺状構造物が芒であって殻が小穂である、例えば、チカラシバなどの種子に対して好適である。すなわち、チカラシバ等の種子は、刺状構造物である芒が体積の多くを占めて嵩密度が小さいが、第1処理により芒を予め硬化させることで、硬化した芒が破壊可能となる。そして、芒を硬化させた第1状態の種子に対して、第2処理を施して芒を破壊して除去することにより、種子自体を損傷することなく芒を確実に除去することができる。そして、混合工程により、殻が除去された加工種子を基盤材と混合させて土壌基盤材とすることができ、これを表土に吹き付けて確実に表土を緑化させることができる。
【0016】
第4発明の表土緑化方法は、第1〜第3発明のいずれかにおいて、
前記第1処理工程は、前記刺状構造物の一部または全部を硬化剤で被覆することにより、該刺状構造物を硬化させることを特徴とする。
【0017】
かかる第4発明の表土緑化方法によれば、刺状構造物の一部または全部を硬化剤で被覆することにより、刺状構造物の一部または全部を硬化させて刺状構造物を破壊可能とすることができる。加えて、刺状構造物に被覆した硬化剤により刺状構造物同士が結合する。これにより、第2処理により刺状構造物を破壊して除去し易くすることができる。
【0018】
ここで、刺状構造物が芒であって殻が小穂であるチカラシバ等の種子の場合に、前記第2処理は、前記第1状態の種子の脱芒処理である。そのため、芒の一部または全部を硬化剤で被覆することにより、芒の一部または全部を硬化させて芒を破壊可能とすることができる。さらに、芒に被覆した硬化剤により種子の嵩密度が大きくなると共に芒が結合した状態となる。これにより、脱芒処理機に硬化状態の刺状構造物を有する種子を収納して、硬化した刺状構造物を破壊することができる。すなわち、第2処理として、脱芒処理機等による脱芒処理により芒を破壊して除去することができる。
【0019】
なお、前記第1処理は、前記硬化剤による被覆を吹き付けにより行ってもよい。硬化剤による被覆を吹き付けにより行うことにより、刺状構造物の一部または全部を硬化剤で被覆することを簡易に実現することができる。加えて、硬化剤による吹き付けを行うことにより、刺状構造物の全部が硬化剤で被覆されていない場合でも、刺状構造物の一部分を被覆して、その被覆部分を破壊可能とすることができる。
【0020】
第5発明の表土緑化方法は、第4発明において、
前記第1処理工程は、複数の種子の前記刺状構造物が互いに当接した状態で、該刺状構造物の一部または全部を硬化剤で被覆することにより、塊状態の種子体とさせることを特徴とする。
【0021】
かかる第5発明の表土緑化方法によれば、第1処理は、1個体の種子の刺状構造物を硬化剤で被覆することにより硬化させてもよいが、複数の種子が集合した状態で硬化させることが好ましい。すなわち、複数の種子の刺状構造物同士が当接して適宜絡まった状態で刺状構造物を硬化剤で被覆すると、硬化剤により複数の種子を塊状態の種子体とすることができる。
【0022】
そして、かかる塊状態の種子体は、刺状構造物同士が確実に結合していると共に、嵩密度を大きくすることができるため、脱芒処理機等による脱芒処理により芒を破壊して除去するのに好適である。さらに、塊状態の種子体を、例えば、箱型や平板状に成型した場合には、取扱い性をさらに向上させることができると共に、保管・数量管理を容易とすることができる。
【0023】
第6発明の表土緑化方法は、第1〜第5発明のいずれかにおいて、
前記混合工程は、前記種子の処理工程により得られた加工種子の表面をさらにコーティング剤によりコーティングした上で、基盤材と混合して表土吹付用の土壌基盤材にすることを特徴とする。
【0024】
かかる第6発明の表土緑化方法によれば、第2〜第3状態の加工種子はいずれも刺状構造物が除去されているため、その表面を発芽改良剤等のコーティング剤をコーティングすることができる。これにより、所望のコーティングを施した加工種子を、混合工程で、基盤材と混合させて土壌基盤材とすることができ、これを表土に吹き付けて確実に表土を緑化させることができる。
【0025】
第7発明の表土緑化方法は、第1〜第5発明のいずれかにおいて、
前記混合工程は、前記種子の処理工程により得られた加工種子をさらに造粒剤と共に塊状にした上で、基盤材と混合して表土吹付用の土壌基盤材にすることを特徴とする。
【0026】
第7発明の表土緑化方法によれば、上述の加工種子(第2状態または第3状態の加工種子、コーティング種子)はいずれも刺状構造物が除去されているため、造粒剤と共に塊状にすることができる。これにより、所望の造粒剤をバインダーとした加工種子を、混合工程で、基盤材と混合させて土壌基盤材とすることができ、これを表土に吹き付けて確実に表土を緑化させることができる。
【0027】
第8発明の表土緑化方法では、第1〜第7発明のいずれかにおいて、
前記第1処理工程と前記第2処理工程とのいずれか一方または両方を施した状態で得られた加工種子を保存し、前記表土の緑化に合わせてその後の工程を行ってもよい。
【0028】
第9発明の表土緑化方法では、第1〜第8発明のいずれかの表土緑化方法において、前記種子がチカラシバの種子である場合が好適である。
【0029】
第10発明の表土緑化方法では、第1〜第9発明のいずれかの表土緑化方法において、前記表土が法面である場合にも有効に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態の表土緑化方法における処理工程を示すフローチャート。
【図2】図1の表土緑化方法における種子の加工処理の内容を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に示す本実施形態の表土緑化方法は、周囲に刺状構造物が存在する殻に覆われた種子と基盤材とを混合した土壌基盤材を表土に吹き付けて該表土を緑化する表土緑化方法であって、第1処理工程(図1/STEP10)と、第2処理工程(図1/STEP20)と、第3処理工程(図1/STEP30)と、コーティング処理工程(図1/STEP40)と、造粒化処理工程(図1/STEP50)と、混合工程(図1/STEP60)と、吹き付け工程(図1/STEP70)とを備える。
【0032】
周囲に刺状構造物が存在する殻に覆われた種子としては、主としてイネ科植物の種子であって、刺状構造物に相当する芒、殻に相当する小穂を有する。
【0033】
なお、周囲に刺状構造物が存在する殻に覆われた種子は、イネ科の植物の種子に限定されるものではなく、殻または殻の周囲に刺状構造物が存在する種子であれば、トマトのようなナス科の植物や人参のようなセリ科植物の種子であってもよい。
【0034】
以下、本実施形態では、イネ科植物の一種であるチカラシバを例に挙げて説明する。
【0035】
図1において、チカラシバの種子は、耕作放棄地を活用するために組織された組合である生産組合により収穫され、種子の加工処理を行う種子加工場1へと供給される。
【0036】
種子加工場1へ供給された収穫種子は、図2(a)に示すように、茎の周りに実が複数並んだ穂からそれぞれの実をむしり取った状態となっている。この状態では、柔軟性のある刺状構造物である芒(チカラシバでは総苞毛ともいう)が種子の体積の多くを占め、嵩密度が小さい。
【0037】
そのため、この状態では、芒や小穂の部分に水分等が付着し易く、保存性の観点から種子を良好な状態に保つことが困難であると共に、後述するように種子にコーティング処理等を施したり、種子を植生シート等に用いることも困難となる。
【0038】
そこで、本願発明者らは、芒を除去するために種々の試験と研究により、予め刺状構造物である芒を硬化させることで、芒を破壊可能として除去することができることを知見した。
【0039】
本実施形態の表土緑化方法は、チカラシバの収穫種子に対して、まず、第1処理工程において、少なくとも刺状構造物である芒を硬化させる第1処理を施す(図1/STEP10)。
【0040】
具体的に、第1処理工程では、芒の一部または全部を硬化剤で被覆することにより、芒を硬化させる。硬化剤としては、アクリル樹脂や塩化ビニル樹脂などの有機系の樹脂剤のほか、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなど生分解性の樹脂剤であってもよい。また、硬化剤としては、植物性の肥料コーティング剤、天然系接着剤、有機系結合剤、天然有機系粘結剤であり、具体的には、デンプン系接着剤、セルロース系接着剤、リグニン系接着剤などである。
【0041】
本実施形態では、硬化剤としてアクリル樹脂を用いて、収穫種子をある程度の大きさの集合にして当接させた上で、その集合全体に硬化剤を吹き付け処理する。これにより、図2(b)に示すように、芒全体またはその一部分を硬化剤で被覆することができる。
【0042】
その結果、かかる第1処理により得られた第1状態の種子は、芒自体の柔軟性が損なわれ、硬化した芒の1つ1つが破壊可能となる。このとき、硬化剤による吹き付けを行うことにより、芒の全部が硬化剤で被覆されていない場合でも、被覆された部分を破壊可能とすることができる。さらに、芒同士が硬化剤で結合した塊状態となる。
【0043】
なお、本実施形態では硬化剤を収穫種子に対して吹き付け処理したが、これに代えて、硬化剤を芒に塗布等するようにしてもよい。さらに、硬化剤により、芒の全部を被覆してもよいが、その根本部分など芒が破壊可能となればその一部のみを被覆してもよい。
【0044】
また、本実施形態では、芒の硬化方法として、硬化剤を用いる方法を説明したが、これ以外の方法であってもよい。例えば、収穫種子を凍結させることにより、芒を硬化させてもよい。
【0045】
次に、第1処理工程により第1処理が施された第1状態の種子に対して、刺状構造物である芒を除去する第2処理を施す(図1/STEP20)。
【0046】
第1処理が施された第1状態の種子は、上述のように、硬化剤により芒同士が硬化剤で結合した塊状態の種子体となっている。そのため、かかる第2処理では、種々の脱芒処理機(例えば、前記特許文献1記載の装置など)による脱芒処理で刺状構造物である芒を除去することができる。
【0047】
さらに、第2処理工程では、図2(c)に示すように、殻である小穂を残して、刺状構造物である芒を除去することができるため、種子自体を損傷することもない。
【0048】
次に、第2処理工程により第2処理が施された第2状態の種子に対して、殻である小穂を除去する第3処理を施す(図1/STEP30)。
【0049】
第2処理が施された第2状態の種子は、刺状構造物である芒が除去されている。そのため、かかる第3処理では、種々の籾摺り機による籾摺り処理により、小穂を除去することができる。
【0050】
なお、第3処理に用いる籾摺り機は、種子の潰れを防止するため、一対のゴムロール間に種子を供給して脱ぷするゴムロール式の籾摺り機ではなく、衝撃作用により脱ぷする衝撃式の籾摺り機を用いることが好ましい。
【0051】
かかる第3処理により、図2(d)に示すように、種子自体を損傷することなく、殻である小穂が除去された第3状態の種子を取り出すことができる。
【0052】
さらに、コーティング処理工程では、第2処理が施された第2状態の種子または、第3処理が施された第3状態の種子をコーティング剤によりコーティングする(図1/STEP40)。
【0053】
かかるコーティング処理では、第2または第3状態の種子の表面の発芽改良剤等のコーティング剤をコーティングする。このとき、第2または第3状態の種子はいずれも刺状構造物である芒が除去されているため、種子の表面に直接コーティングを施すことができる。
【0054】
さらに、造粒化処理工程では、第2状態の種子、第3状態の種子、コーティング処理が施されたコーティング種子のいずれかを造粒剤と共に塊状にしてなる(図1/STEP50)。
【0055】
かかる造粒化処理では、例えば、酸素剤、肥料や保水剤などの所望の造粒剤をバインダーとした造粒化種子からなる加工種子とすることができる。
【0056】
以上が、種子加工場1などにより収穫種子が加工処理される工程の詳細である。このようにして処理された第2状態の種子、第3状態の種子、さらにコーティング種子、造粒化種子のいずれの加工種子においても、それぞれの加工種子と基盤材とが混合されて表土吹付用の土壌基盤材となる(図1/STEP60)。
【0057】
このとき、第2状態の種子、第3状態の種子、さらにコーティング種子、造粒化種子は、いずれの加工種子も刺状構造物に相当する芒が除去されているため、取り扱いを容易として、混合工程では、基盤材と確実に混合させて土壌基盤材とすることができる。
【0058】
このようにして得られた土壌基盤材として表土に吹き付けて表土の緑化に用いられる((図1/STEP70))。
【0059】
これらの加工種子を表土の緑化に用いる場合には、加工種子と用土、肥料等の基盤材とを混合してスラリー状とした土壌基盤材を表土に吹き付けるものであれば、施工地域の植物や表土を混合するもの(例えば、特開平9−279590号公報など)であってもよい。なお、チカラシバの種子は、施工後早い段階で表土全体を覆う先駆植物としての特性から、特に、法面緑化に用いる加工種子として好適である。
【0060】
以上、詳しく説明したように本実施形態の表土緑化方法によれば、種子自体を損傷することなく刺状構造物を確実に除去することができ、種子と基盤材とを混合させた土壌基盤材により表土を確実に緑化させることができる。
【0061】
なお、本実施形態では、収穫種子をある程度の大きさの集合にした上で、その集合全体に硬化剤を吹き付け処理したが、これに限定されるものではない。例えば、収穫種子を筐体に収納した状態で、硬化剤をその種子全体に吹き付けして、第1状態の種子を箱型や平板状に成型してもよい。さらに、筐体を格子状にすることで、硬化剤を吹き付けする代わりに、収穫種子が収納された筐体自体を硬化剤に漬け込むようにしてもよい。このように、塊状態の種子体を箱型や平板状に成型することで、取扱い性を向上させることができると共に、保管・数量管理を容易とすることができる。
【0062】
また、本実施形態では、第1〜第3処理工程を連続して行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第1処理または第2処理を施した状態で得られた加工種子を保存し、表土の緑化に合わせてその後の工程を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…種子加工場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲に刺状構造物が存在する殻に覆われた種子と基盤材とを混合した土壌基盤材を表土に吹き付けて該表土を緑化する表土緑化方法であって、
前記種子に対して、少なくとも該刺状構造物を硬化させる第1処理工程と、
前記第1処理工程により得られた第1状態の種子から、硬化した該刺状構造物を除去する第2処理工程と、
前記第2処理工程により得られた第2状態の種子と基盤材とを混合して表土吹付用の土壌基盤材にする混合工程と、
前記混合工程により得られた土壌基盤材を表土に吹き付ける吹き付け工程と
を備えることを特徴とする表土緑化方法。
【請求項2】
周囲に刺状構造物が存在する殻に覆われた種子と基盤材とを混合した土壌基盤材を表土に吹き付けて該表土を緑化する表土緑化方法であって、
前記種子に対して、少なくとも該刺状構造物を硬化させる第1処理工程と、
前記第1処理工程により得られた第1状態の種子から、硬化した該刺状構造物を除去する第2処理工程と、
前記第2処理工程により得られた第2状態の種子から、前記殻を除去する第3処理工程と、
前記第3処理工程により得られた第3状態の種子と基盤材とを混合して表土吹付用の土壌基盤材にする混合工程と、
前記混合工程により得られた土壌基盤材を表土に吹き付ける吹き付け工程と
を備えることを特徴とする表土緑化方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の表土緑化方法において、
前記種子は、前記刺状構造物が芒であり、前記殻が小穂であることを特徴とする表土緑化方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の表土緑化方法において、
前記第1処理工程は、前記刺状構造物の一部または全部を硬化剤で被覆することにより、該刺状構造物を硬化させることを特徴とする表土緑化方法。
【請求項5】
請求項4記載の表土緑化方法において、
前記第1処理工程は、複数の種子の前記刺状構造物が互いに当接した状態で、該刺状構造物の一部または全部を硬化剤で被覆することにより、塊状態の種子体とさせることを特徴とする表土緑化方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか1項記載の表土緑化方法において、
前記混合工程は、前記種子の処理工程により得られた加工種子の表面をさらにコーティング剤によりコーティングした上で、基盤材と混合して表土吹付用の土壌基盤材にすることを特徴とする表土緑化方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1項記載の表土緑化方法において、
前記混合工程は、前記種子の処理工程により得られた加工種子をさらに造粒剤と共に塊状にした上で、基盤材と混合して表土吹付用の土壌基盤材にすることを特徴とする表土緑化方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか1項記載の表土緑化方法において、
前記第1処理工程または該第1処理工程と前記第2処理工程との両方を施した状態で得られた加工種子を保存し、前記表土の緑化に合わせてその後の工程を行うことを特徴とする表土緑化方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちいずれか1項記載の表土緑化方法において、前記種子がチカラシバの種子であることを特徴とする表土緑化方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちいずれか1項記載の表土緑化方法において、前記表土が法面であることを特徴とする表土緑化方法。


【図1】
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【図2】
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