説明

表示システムおよび表示制御方法

【課題】所定の領域内にいる各人が自分の周囲にいる他の人物の認証状態等の属性情報について容易に知ることができるようにすること。
【解決手段】本願の開示する表示システムは、色や模様を部分的に変更できる床面2を有する。そして、例えば、床面2の上に人物1a〜1iがおり、そのうち人物1dおよび1hが未認証で他の人物が認証済みである場合、本願の開示する表示システムは、人物1dの足元の領域2aと人物1hの足元の領域2bの色や模様を他の部分と変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の領域内にいる各人が自分の周囲にいる他の人物の認証状態等の属性情報について容易に知ることができる表示システムおよび表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、認証を行うとドアが開く入退室管理システムのように、個人認証の結果に応じてサービスを提供するシステムが増えてきている。また、認証した人を追跡し、認証済者と未認証者の位置を把握することで、利便性やセキュリティを高めたシステムが提案されている。例えば、特許文献1では、認証を行った人を追跡し、認証した人のみがサービス利用圏内にいるときにはサービスを提供するシステムが提案されている。このシステムは、認証をしていない人がサービス利用圏内に侵入した場合、その人がサービス利用圏内から出るまでサービスの提供を中断することで、サービスの不正利用を防止する。
【0003】
上記の特許文献1にて提案されているシステムでは、認証していない人がサービス利用圏内にいる限り、認証した人もサービスを受けることができない。このため、認証した人はサービスを受けるために、認証していない人をサービス利用圏から遠ざけるなどの行動をとる必要がある。このように、認証した人を追跡してサービスを提供するシステムでは、サービス利用圏内にいる人物が現在どのような認証状況であるか一目でわかる仕組みが必要である。
【0004】
サービス利用圏内にいる人の認証状態を表示する技術は、特許文献2や特許文献3によって開示されている。特許文献2では、指定した人の動きをカメラの映像を用いて追跡し、撮影映像内にその人を囲うような色付の矩形などを重畳させることによって、指定した人を視認しやすいように表示する方法が開示されている。また、特許文献3では、映像を用いて人物の追跡を行い、その人物を特徴付ける顔などの画像を記録し、指定された人物の特徴画像をライブ映像に重畳させることで、その人物の特定を容易にする方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−297735号公報
【特許文献2】特開2005−347905号公報
【特許文献3】特開2006−93955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来技術は、認証していない人を、監視者に対してわかりやすく表示することはできたが、サービス利用圏内にいる利用者に対して周囲の人の認証状態を知らせるために適したものではなかった。すなわち、従来技術は、認証状態に関する情報をモニタに表示するものであったため、モニタ付近にいる人しか周囲の人の認証状態を知ることができなかった。
【0007】
開示の技術は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、所定の領域内にいる各人が自分の周囲にいる他の人物の認証状態等の属性情報について容易に知ることができる表示システムおよび表示制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本願の開示する表示システムは、一つの態様において、所定の領域内に所在する各人物の現在位置を検出し、各人物を追跡する人物追跡手段と、各人物に関する属性情報を記憶する記憶手段と、前記人物追跡手段によって取得された各人物の現在位置に対応する床面の所定範囲の外観を、前記記憶手段に記憶されているそれぞれの人物の属性情報に応じて変化させる床面制御手段とを備える。
【0009】
この態様によれば、人物がいる位置の床面の外観がそれぞれの人物の属性によって異なるように制御可能であり、所定の領域内にいる各人が自分の周囲にいる他の人物の認証状態等の属性情報について容易に知ることができる。
【0010】
なお、本願の開示する表示システムの構成要素、表現または構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、記録媒体、データ構造などに適用したものも上述した課題を解決するために有効である。
【発明の効果】
【0011】
本願の開示する表示システムおよび表示制御方法の一つの態様によれば、所定の領域内にいる各人が自分の周囲にいる他の人物の認証状態等の属性情報について容易に知ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本願の開示する表示システムおよび表示制御方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、図1を参照しながら、本実施例に係る表示システムの概要について説明する。図1に示すように、本実施例に係る表示システムは、色や模様を部分的に変更できる床面2を有する。そして、例えば、床面2の上に人物1a〜1iがおり、そのうち人物1dおよび1hが未認証で他の人物が認証済みである場合、本実施例に係る表示システムは、人物1dの足元の領域2aと人物1hの足元の領域2bの色や模様を他の部分と変化させる。
【0014】
このように、未認証の人物の足元の領域の色や模様が、認証済みの人物の足元の領域と異なるように制御することにより、床面2の上にいる全ての人物が、誰が認証済であり誰が未認証であるかを容易に判別することができる。
【0015】
次に、本実施例に係る表示システムの構成について説明する。図2は、本実施例に係る表示システムの全体構成を示す図である。図2に示すように、本実施例に係る表示システムは、床面2と、撮像装置3a〜3cと、認証装置4と、制御装置5とを有する。
【0016】
床面2は、制御装置5から送信される制御信号に基づいて、色や模様を部分的に変更する。床面2は、例えば、単一の色、または、複数の色のいずれか1つを発光する発光パネルを組み合わせて形成されていてもよいし、液晶パネルやLED(Light Emitting Diode)パネルのように素子単位で色やオン/オフを個別に切り換えることのできるパネルを組み合わせて形成されていてもよい。
【0017】
撮像装置3a〜3cは、監視範囲内の映像を撮影する。なお、撮像装置3の数は、3個に限らない。認証装置4は、認証情報の入力を受け付ける。認証装置4が入力を受け付ける認証情報は、例えば、指紋情報の等のバイオメトリックス情報であってもよいし、ICカード等の媒体に記憶されたパスワードであってもよい。
【0018】
制御装置5は、撮像装置3a〜3cによって撮影された映像に基づいて、監視範囲内を移動する各人物を追跡し、それらの人物の現在位置を把握する。また、制御装置5は、認証装置4によって認証が行われた場合に、認証装置4の設置位置と、撮像装置3a〜3cによって撮影された映像に基づいて把握している各人物の現在位置とを比較し、どの人物が認証を受けたかを判定する。
【0019】
そして、制御装置5は、追跡中の人物毎に、認証が済んでいるか否かを所定の記憶手段に記憶しておき、この情報と各人物の現在位置とに基づいて床面2を制御して、認証が済んでいるか否かが判別可能なように各人物の足元の外観を変化させる。例えば、制御装置5は、認証が済んでいない人物の足元だけが光るように床面2を制御する。
【0020】
ここで、床面2の一部が発光するとともに、発光する部分が人物の移動にともなって変化すると、撮像装置3a〜3cによって撮影された映像に基づいて、監視範囲内を移動する各人物を追跡することが困難になることがある。そこで、制御装置5は、人物追跡用の映像を撮影する期間だけ、床面2全体を初期状態に変化させる。ここでいう初期状態とは、人物の検出と追跡に影響が少ない状態を意味し、例えば、全ての発光を停止させた状態である。
【0021】
図3は、図2に示した制御装置5の構成を示すブロック図である。図3に示すように、制御装置5は、認証情報データベース51と、追跡対象データベース52と、認証制御部53と、人物追跡部54と、対応付け部55と、床面設定部56と、タイミング制御部57と、床面制御部58と、撮影制御部59とを有する。
【0022】
認証情報データベース51は、認証対象の人物を認証するための情報が予め登録されたデータベースである。認証情報データベース51の一例を図4に示す。図4に示すように、認証情報データベース51は、利用者ID、名前、認証情報といった項目を有する。利用者IDは、認証対象の人物を識別するための識別番号である。名前は、認証対象の人物の名前である。認証情報は、認証対象の人物の認証のために用いられる情報であり、例えば、パスワードや、指紋情報等のバイオメトリクス情報である。
【0023】
追跡対象データベース52は、撮像装置3a〜3cによって撮影された映像に基づいて追跡される各人物に関する情報が登録されるデータベースである。追跡対象データベース52の一例を図5に示す。図5に示すように、追跡対象データベース52は、追跡対象ID、現在位置、移動軌跡、利用者ID、認証状態といった項目を有する。
【0024】
追跡対象IDは、追跡中の人物を識別するための識別番号である。現在位置は、追跡対象IDで識別される人物が現在いる位置の座標である。移動軌跡は、追跡対象IDで識別される人物の位置していた座標が所定の単位時間毎に記録された履歴情報である。利用者IDは、追跡対象IDで識別される人物の認証情報データベース51における識別番号である。認証状態は、追跡対象IDで識別される人物の認証が完了しているか否かを示すフラグである。ここでは、追跡対象IDで識別される人物の認証が完了している場合には、認証状態に「Y」が設定され、認証が完了していない場合には、認証状態に「N」が設定されるものとする。
【0025】
認証制御部53は、認証装置4において入力された認証情報と、認証情報データベース51に登録されている情報とを比較して、認証処理を実行する。なお、認証制御部53における認証処理は、利用者IDの入力も認証装置4において受け付けて、利用者IDを検索キーとして1対1認証方式で行ってもよいし、利用者IDの入力を受け付けずに1対N認証方式で行ってもよい。
【0026】
人物追跡部54は、撮像装置3a〜3cによって撮影された映像に基づいて、監視範囲内にいる人物を検出するとともに追跡し、各人物の現在位置と移動軌跡を追跡対象データベース52に記録する。具体的には、人物追跡部54は、新たな人物を検出すると、新たな追跡対象IDを発行し、その人物用の行を追跡対象データベース52に追加して、現在位置の項目にその人物を検出した位置の座標を格納する。この段階では、新たに認識した人物が誰であるか不明であり、認証も完了していないので、利用者IDの項目は空欄となり、認証状態の項目には「N」が設定される。
【0027】
また、人物追跡部54は、定期的に、検出済の各人物の現在位置の項目の値を最新の位置に更新するとともに、移動軌跡の各項目の値をシフトさせる。そして、人物追跡部54は、現在位置の項目に設定されていた値を、移動軌跡の最新の項目に格納する。
【0028】
なお、人物の追跡は、例えば、下記の参考文献1に記載されているように、逆投影法とカルマンフィルタを用いる手法によって実現できる。
参考文献1:早坂光晴,富永英義,小宮一三:”逆投影法とカルマンフィルタを用いた複数移動物体位置認識とその追跡”,PRMU2001−132,pp.133−138,Nov,2001.
【0029】
対応付け部55は、認証情報データベース51に格納されている人物と、追跡対象データベース52に格納されている人物とを対応付ける。具体的には、対応付け部55は、認証制御部53における認証処理が成功した場合に、認証された人物の利用者IDと、認証情報が入力された認証装置4の識別番号を認証制御部53から取得する。そして、対応付け部55は、認証装置4の識別番号に基づいて、認証情報が入力された認証装置4の位置を取得する。なお、認証装置4の識別番号と位置の対応は、対応付け部55に登録されていてもよいし、対応付け部55の外部に登録されていてもよい。
【0030】
続いて、対応付け部55は、認証情報が入力された認証装置4の位置と追跡対象データベース52に格納されている各人物の現在位置とを照合して、認証装置4の位置に最も近い位置にいる人物を認証された人物として特定し、その人物の追跡対象IDを取得する。そして、対応付け部55は、取得した追跡対象IDに対応する追跡対象データベース52の行の利用者IDの項目に認証制御部53から取得した利用者IDを設定し、同行の認証状態の項目に「Y」を設定する。このように、認証装置4の位置と、追跡中の各人物の認証処理時における位置とを照合することにより、認証された人物が、追跡中の人物の中のどの人物なのかを特定することができる。
【0031】
床面設定部56は、床面2の各部の外観を決定する。具体的には、床面設定部56は、追跡対象データベース52を参照して、認証済みの人物の現在位置に相当する部分を第1の態様にし、未認証の人物の現在位置に相当する部分を第2の態様にすることを決定する。ここで、第1の態様と第2の態様は、両者が区別できるものであればよく、一方の態様が、床面2の初期状態の態様であってもよい。
【0032】
また、第1の態様は、認証された人物の権限によって異なっていてもよい。例えば、プレミア会員と通常会員の現在位置に相当する部分の外観を異ならせることにより、プレミア会員のみが利用できるサービスを通常会員が不正利用することを防止し易くなる。このようにするには、例えば、認証情報データベース51に権限を登録しておき、対応付け部55が、利用者IDとともに権限を追跡対象データベース52に設定することとすればよい。
【0033】
また、第2の態様は、追跡を開始してからの時間に応じて異なっていてもよい。例えば、色を黄色から赤に次第に変化させていくというように、未認証の時間が長いほど目立ち易い態様とすることで、認証の実施や退出を促すことができる。このようにするには、例えば、追跡を開始してからの時間を追跡対象データベース52に設定することとすればよい。
【0034】
タイミング制御部57は、人物追跡部54による人物の検出と追跡に影響が生じないように、撮像装置3a〜3cが映像を撮影するタイミングと、床面2の外観を変化させるタイミングを調整する。タイミング制御部57によるタイミングの調整の一例を図6に示す。図6に示すように、タイミング制御部57は、床面2の外観が初期状態となり、追跡中の人物がいる位置の態様が変化していない期間を定期的に設けて、その期間に撮像装置3a〜3cが映像を撮影するようにタイミングを調整する。タイミング制御部57は、床面2の外観を初期状態に戻す期間を短くすることにより、床面2の外観が初期状態になっていることを人に気付かせないようにする。
【0035】
床面制御部58は、床面設定部56によって決定された各部の態様と、タイミング制御部57によって決定されたタイミングに従って、床面2の外観を変化させる。撮影制御部59は、タイミング制御部57によって決定されたタイミングに従って、撮像装置3a〜3cに映像を撮影させる。
【0036】
次に、図3に示した制御装置5の動作について説明する。図7は、制御装置5の動作を示すフローチャートである。図7に示すように、人物追跡部54は、撮像装置3a〜3cによって撮影された映像に基づいて、監視範囲内にいる人物を検出するとともに追跡し、その結果を追跡対象データベース52に格納する(ステップS101)。
【0037】
そして、認証制御部53によって誰かが認証された場合は(ステップS102肯定)、対応付け部55によって、認証された人物と追跡中の人物の対応付けが行われる(ステップS103)。なお、認証制御部53によって誰も認証されていなければ(ステップS102否定)、対応付け部55による対応付けは行われない。
【0038】
続いて、床面設定部56が、追跡対象データベース52から情報を読み出して床面2の各部の外観をどのように変化させるかを決定する(ステップS104)。また、タイミング制御部57は、床面2の各部の外観を変化させるタイミングと、撮像装置3a〜3cが映像を撮影するタイミングとを決定する(ステップS105)。
【0039】
そして、床面制御部58が、床面設定部56によって決定された各部の態様と、タイミング制御部57によって決定されたタイミングに従って、床面2の外観を変化させる(ステップS106)。その後、床面制御部58は、タイミング制御部57によって決定されたタイミングに従って、床面2の外観を初期状態に戻し(ステップS107)、撮影制御部59が、その間に、撮像装置3a〜3cに映像を撮影させる(ステップS108)。
【0040】
撮影終了後、床面制御部58は、再び、床面設定部56によって決定された各部の態様と、タイミング制御部57によって決定されたタイミングに従って、床面2の外観を変化させる(ステップS109)。以降、ステップS101〜S109が繰り返して実行される。
【0041】
上述してきたように、本実施例では、認証済の人物がいる位置と未認証の人物がいる位置の床面の外観が異なるように制御することとしたので、認証済の人物と未認証の人物をその場にいる人が容易に判別することができる。また、本実施例では、人物の検出と追跡のための映像が撮影されるタイミングでは、床面の外観を初期状態に戻すこととしたので、床面の外観の変化によって、人物の検出と追跡の精度が低下することを防止することができる。
【実施例2】
【0042】
実施例1では、認証済の人物がいる位置と未認証の人物がいる位置の床面の外観が異なるように制御することとしたが、外光の影響等で床面の外観の区別が難しくなる場合がある。実施例2では、このような場合に対応するための例について説明する。
【0043】
まず、本実施例に係る表示システムの構成について説明する。本実施例に係る表示システムは、制御装置5が制御装置6に置き換わっていることを除いて、実施例1に係る表示システムと同様の構成を有する。そこで、ここでは、制御装置6の構成について説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付して、説明を省略することとする。
【0044】
図8は、制御装置6の構成を示すブロック図である。図8に示すように、制御装置6は、認証情報データベース51と、追跡対象データベース52と、床面設定データベース61と、認証制御部53と、人物追跡部54と、対応付け部55と、床面設定部62と、タイミング制御部63と、床面設定修正部64と、床面制御部65と、撮影制御部59とを有する。
【0045】
床面設定データベース61は、床面設定部62によって決定された床面2の各部の外観の態様が追跡中の人物毎に登録されるデータベースである。床面設定データベース61の一例を図9に示す。図9に示すように、床面設定データベース61は、追跡対象ID、表示位置、表示色、模様、表示サイズといった項目を有する。
【0046】
追跡対象IDは、追跡中の人物を識別するための識別番号であり、追跡対象データベース52の追跡対象IDと対応する。表示位置は、追跡対象IDに対応する人物の現在位置に対応する部分として、態様を変化させる部分の座標である。表示色、模様、表示サイズは、表示位置に対応する部分の態様の詳細を示す情報であり、それぞれ、色と、模様の有無と、色や模様を表示する面積の大きさを表す。
【0047】
床面設定部62は、床面設定部56と同様にして、床面2の各部の外観を決定し、その結果を追跡中の人物毎に床面設定データベース61に設定する。床面設定部62は、少なくとも、新たに検出された人物の現在位置に対応する部分の態様を床面設定データベース61に登録し、新たに認証された人物の現在位置に対応する部分の態様を認証済みであることを示すものに変更する。
【0048】
タイミング制御部63は、撮像装置3a〜3cが映像を撮影するタイミングと、床面2の外観を変化させるタイミングを調整する。タイミング制御部63によるタイミングの調整の一例を図10に示す。図10に示すように、タイミング制御部63は、床面2の外観が初期状態となり、追跡中の人物がいる位置の態様が変化していない期間を定期的に設けて、その期間に撮像装置3a〜3cが映像を撮影するようにタイミングを調整する。さらに、タイミング制御部63は、床面2の外観が変化しているときにも、撮像装置3a〜3cに映像を撮影させる。
【0049】
床面2の外観が初期状態となっている期間に撮像装置3a〜3cによって撮影された映像は、人物追跡部54による人物の検出と追跡に用いられる。この期間の映像は、映像毎に床面2の外観が異ならないため、人物の検出と追跡に適している。タイミング制御部63は、床面2の外観を初期状態に戻す期間を短くすることにより、床面2の外観が初期状態になっていることを人に気付かせないようにする。
【0050】
一方、床面2の外観が変化している期間に撮像装置3a〜3cによって撮影された映像は、床面設定修正部64によって用いられる。床面設定修正部64は、この期間に撮影された映像に基づいて、追跡中の人物の現在位置に対応する各部分の外観の視認し易さを評価する。そして、視認しにくい部分があれば、床面設定修正部64は、その部分に対応する床面設定データベース61の行を更新してその部分の態様を視認しやすいように変化させる。
【0051】
追跡中のある人物の現在位置に対応する部分の外観の視認し易さは、例えば、床面設定データベース61の設定内容に基づいてその部分で撮影されるべき映像を生成し、生成された映像と実際に撮影された映像とを比較することによって評価することができる。なお、追跡中の人物の現在位置に対応する部分で撮影されるべき映像については、予め用意されたものを所定の記憶手段から取得してもよい。
【0052】
また、視認しにくい部分の視認性向上は、例えば、表示サイズを大きくしたり、所定のルールに基づいて表示色を変更したりすることによって実現される。ここでいうルールは、例えば、未認証の人物の現在位置に対応する部分の表示色を、「赤」→「青」→「緑」→「赤」→「青」→「緑」・・・というように循環させるというものである。
【0053】
床面制御部65は、床面設定データベース61の設定内容と、タイミング制御部63によって決定されたタイミングに従って、床面2の外観を変化させる。
【0054】
次に、図8に示した制御装置6の動作について説明する。図11は、制御装置6の動作を示すフローチャートである。図11に示すように、人物追跡部54は、撮像装置3a〜3cによって撮影された映像に基づいて、監視範囲内にいる人物を検出するとともに追跡し、その結果を追跡対象データベース52に格納する(ステップS201)。
【0055】
そして、認証制御部53によって誰かが認証された場合は(ステップS202肯定)、対応付け部55によって、認証された人物と追跡中の人物の対応付けが行われる(ステップS203)。なお、認証制御部53によって誰も認証されていなければ(ステップS202否定)、対応付け部55による対応付けは行われない。
【0056】
続いて、床面設定部62が、追跡対象データベース52から情報を読み出して床面2の各部の外観をどのように変化させるかを決定し、その結果を床面設定データベース61に設定する(ステップS204)。また、タイミング制御部63は、床面2の各部の外観を変化させるタイミングと、撮像装置3a〜3cが映像を撮影するタイミングとを決定する(ステップS205)。
【0057】
そして、床面制御部65が、床面設定データベース61の設定内容と、タイミング制御部63によって決定されたタイミングに従って、床面2の外観を変化させる(ステップS206)。その後、床面制御部65は、タイミング制御部63によって決定されたタイミングに従って、床面2の外観を初期状態に戻し(ステップS207)、撮影制御部59が、その間に、撮像装置3a〜3cに映像を撮影させる(ステップS208)。
【0058】
撮影終了後、床面制御部65は、再び、床面設定データベース61の設定内容と、タイミング制御部63によって決定されたタイミングに従って、床面2の外観を変化させる(ステップS209)。そして、撮影制御部59が、撮像装置3a〜3cに映像を撮影させる(ステップS210)。その映像に基づいて、床面設定修正部64が、床面設定データベース61の設定内容を修正し(ステップS211)、床面制御部65が、修正後の床面設定データベース61の設定内容に従って、床面2の外観を変化させる(ステップS212)。以降、ステップS201〜S212が繰り返して実行される。
【0059】
上述してきたように、本実施例では、床面設定修正部64が、床面2の外観が変化しているときに撮影された映像に基づいて、床面2の外観の設定を修正することとしたので、外光の影響等で床面の外観の区別が難しい場合にその状態を改善することができる。
【0060】
なお、上記の各実施例において説明した各装置の構成は、要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができる。例えば、制御装置5や制御装置6の機能をソフトウェアとして実装し、これをコンピュータで実行することにより、制御装置5や制御装置6と同等の機能を実現することもできる。以下に、制御装置5の機能をソフトウェアとして実装した表示制御プログラム1071を実行するコンピュータの一例を示す。
【0061】
図12は、表示制御プログラム1071を実行するコンピュータ1000を示す機能ブロック図である。このコンピュータ1000は、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)1010と、ユーザからのデータの入力を受け付ける入力装置1020と、各種情報を表示するモニタ1030と、記録媒体からプログラム等を読み取る媒体読取り装置1040と、ネットワークを介して認証装置4との間でデータの授受を行うネットワークインターフェース装置1050と、各種情報を一時記憶するRAM(Random Access Memory)1060と、ハードディスク装置1070とをバス1080で接続して構成される。
【0062】
そして、ハードディスク装置1070には、図3に示した制御装置5の各処理部と同様の機能を有する表示制御プログラム1071と、図3に示した制御装置5の各データベースに記憶される各種データに対応する表示制御用データ1072とが記憶される。なお、表示制御用データ1072を、適宜分散させ、ネットワークを介して接続された他のコンピュータに記憶させておくこともできる。
【0063】
そして、CPU1010が表示制御プログラム1071をハードディスク装置1070から読み出してRAM1060に展開することにより、表示制御プログラム1071は、表示制御プロセス1061として機能するようになる。そして、表示制御プロセス1061は、表示制御用データ1072から読み出した情報等を適宜RAM1060上の自身に割り当てられた領域に展開し、この展開したデータ等に基づいて各種データ処理を実行する。
【0064】
なお、上記の表示制御プログラム1071は、必ずしもハードディスク装置1070に格納されている必要はなく、CD−ROM等の記憶媒体に記憶されたこのプログラムを、コンピュータ1000が読み出して実行するようにしてもよい。また、公衆回線、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等を介してコンピュータ1000に接続される他のコンピュータ(またはサーバ)等にこのプログラムを記憶させておき、コンピュータ1000がこれらからプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
【0065】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0066】
(付記1)所定の領域内に所在する各人物の現在位置を検出し、各人物を追跡する人物追跡手段と、
各人物に関する属性情報を記憶する記憶手段と、
前記人物追跡手段によって取得された各人物の現在位置に対応する床面の所定範囲の外観を、前記記憶手段に記憶されているそれぞれの人物の属性情報に応じて変化させる床面制御手段と
を備えたことを特徴とする表示システム。
【0067】
(付記2)各人物の認証を制御する認証制御手段をさらに備え、
前記記憶手段は、各人物に関する属性情報として、前記認証制御手段によって認証されたか否かを記憶することを特徴とする付記1に記載の表示システム。
【0068】
(付記3)前記床面制御手段は、前記認証制御手段によって認証されていない人物の現在位置に対応する床面の所定範囲の外観を、前記人物追跡手段によって検出されてから経過した時間に応じて変化させることを特徴とする付記2に記載の表示システム。
【0069】
(付記4)前記床面制御手段は、前記認証制御手段によって認証された人物の現在位置に対応する床面の所定範囲の外観を、前記認証制御手段による認証時に取得された該人物の権限に応じて変化させることを特徴とする付記2または3に記載の表示システム。
【0070】
(付記5)前記認証制御手段による認証のための情報の入力を受け付ける装置の設置位置と、前記認証制御手段による認証が行われたときに前記人物追跡手段が取得した各人物の現在位置とに基づいて、前記認証制御手段によって認証された人物と、前記人物追跡手段が追跡している人物を対応付ける対応付け手段をさらに備えたことを特徴とする付記2〜4のいずれか1つに記載の表示システム。
【0071】
(付記6)前記人物追跡手段は、撮像手段によって撮影された映像に基づいて、各人物の現在位置の検出と追跡を行い、
前記床面制御手段は、前記撮像手段によって映像が撮影されている間は、前記床面の外観を初期状態に戻すことを特徴とする付記1〜5のいずれか1つに記載の表示システム。
【0072】
(付記7)所定の領域内の映像を撮影する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮影された映像に基づいて、前記床面制御手段によって変化された床面の所定範囲の外観の視認性を評価し、該所定範囲の外観を修正する床面設定修正手段とをさらに備えたことを特徴とする付記1〜5のいずれか1つに記載の表示システム。
【0073】
(付記8)前記人物追跡手段は、撮像手段によって撮影された映像に基づいて、各人物の現在位置の検出と追跡を行い、
前記床面制御手段は、前記撮像手段によって前記人物追跡手段のための映像が撮影されている間は、前記床面の外観を初期状態に戻すことを特徴とする付記7に記載の表示システム。
【0074】
(付記9)所定の領域内に所在する各人物の現在位置を検出し、各人物を追跡する人物追跡工程と、
前記人物追跡工程において取得された各人物の現在位置に対応する床面の所定範囲の外観を、記憶手段に予め記憶されているそれぞれの人物の属性情報に応じて変化させる床面制御工程と
を含んだことを特徴とする表示制御方法。
【0075】
(付記10)各人物の認証を制御する認証制御工程をさらに含み、
前記記憶手段は、各人物に関する属性情報として、前記認証制御工程において認証されたか否かを記憶することを特徴とする付記9に記載の表示制御方法。
【0076】
(付記11)前記床面制御工程は、前記認証制御工程において認証されていない人物の現在位置に対応する床面の所定範囲の外観を、前記人物追跡工程において検出されてから経過した時間に応じて変化させることを特徴とする付記10に記載の表示制御方法。
【0077】
(付記12)前記床面制御工程は、前記認証制御工程において認証された人物の現在位置に対応する床面の所定範囲の外観を、前記認証制御工程による認証時に取得された該人物の権限に応じて変化させることを特徴とする付記10または11に記載の表示制御方法。
【0078】
(付記13)前記認証制御工程による認証のための情報の入力を受け付ける装置の設置位置と、前記認証制御工程による認証が行われたときに前記人物追跡工程が取得した各人物の現在位置とに基づいて、前記認証制御工程において認証された人物と、前記人物追跡工程が追跡している人物を対応付ける対応付け工程をさらに含んだことを特徴とする付記10〜12のいずれか1つに記載の表示制御方法。
【0079】
(付記14)前記人物追跡工程は、撮像工程において撮影された映像に基づいて、各人物の現在位置の検出と追跡を行い、
前記床面制御工程は、前記撮像工程において映像が撮影されている間は、前記床面の外観を初期状態に戻すことを特徴とする付記9〜13のいずれか1つに記載の表示制御方法。
【0080】
(付記15)所定の領域内の映像を撮影する撮像工程と、
前記撮像工程において撮影された映像に基づいて、前記床面制御工程において変化された床面の所定範囲の外観の視認性を評価し、該所定範囲の外観を修正する床面設定修正工程とをさらに含んだことを特徴とする付記9〜13のいずれか1つに記載の表示制御方法。
【0081】
(付記16)前記人物追跡工程は、撮像工程において撮影された映像に基づいて、各人物の現在位置の検出と追跡を行い、
前記床面制御工程は、前記撮像工程において前記人物追跡工程のための映像が撮影されている間は、前記床面の外観を初期状態に戻すことを特徴とする付記15に記載の表示制御方法。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施例1に係る表示システムの概要を示す図である。
【図2】実施例1に係る表示システムの全体構成を示す図である。
【図3】実施例1に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】認証情報データベースの一例を示す図である。
【図5】追跡対象データベースの一例を示す図である。
【図6】タイミング制御部によるタイミングの調整の一例を示す図である。
【図7】実施例1に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】実施例2に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図9】床面設定データベースの一例を示す図である。
【図10】タイミング制御部によるタイミングの調整の一例を示す図である。
【図11】実施例2に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】表示制御プログラムを実行するコンピュータを示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0083】
1a〜1i 人物
2 床面
2a、2b 領域
3a〜3c 撮像装置
4 認証装置
5、6 制御装置
51 認証情報データベース
52 追跡対象データベース
53 認証制御部
54 人物追跡部
55 対応付け部
56、62 床面設定部
57、63 タイミング制御部
58、65 床面制御部
59 撮影制御部
61 床面設定データベース
64 床面設定修正部
1000 コンピュータ
1010 CPU
1020 入力装置
1030 モニタ
1040 媒体読取り装置
1050 ネットワークインターフェース装置
1060 RAM
1061 表示制御プロセス
1070 ハードディスク装置
1071 表示制御プログラム
1072 表示制御用データ
1080 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の領域内に所在する各人物の現在位置を検出し、各人物を追跡する人物追跡手段と、
各人物に関する属性情報を記憶する記憶手段と、
前記人物追跡手段によって取得された各人物の現在位置に対応する床面の所定範囲の外観を、前記記憶手段に記憶されているそれぞれの人物の属性情報に応じて変化させる床面制御手段と
を備えたことを特徴とする表示システム。
【請求項2】
各人物の認証を制御する認証制御手段をさらに備え、
前記記憶手段は、各人物に関する属性情報として、前記認証制御手段によって認証されたか否かを記憶することを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記床面制御手段は、前記認証制御手段によって認証されていない人物の現在位置に対応する床面の所定範囲の外観を、前記人物追跡手段によって検出されてから経過した時間に応じて変化させることを特徴とする請求項2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記床面制御手段は、前記認証制御手段によって認証された人物の現在位置に対応する床面の所定範囲の外観を、前記認証制御手段による認証時に取得された該人物の権限に応じて変化させることを特徴とする請求項2または3に記載の表示システム。
【請求項5】
前記認証制御手段による認証のための情報の入力を受け付ける装置の設置位置と、前記認証制御手段による認証が行われたときに前記人物追跡手段が取得した各人物の現在位置とに基づいて、前記認証制御手段によって認証された人物と、前記人物追跡手段が追跡している人物を対応付ける対応付け手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の表示システム。
【請求項6】
前記人物追跡手段は、撮像手段によって撮影された映像に基づいて、各人物の現在位置の検出と追跡を行い、
前記床面制御手段は、前記撮像手段によって映像が撮影されている間は、前記床面の外観を初期状態に戻すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の表示システム。
【請求項7】
所定の領域内の映像を撮影する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮影された映像に基づいて、前記床面制御手段によって変化された床面の所定範囲の外観の視認性を評価し、該所定範囲の外観を修正する床面設定修正手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の表示システム。
【請求項8】
前記人物追跡手段は、撮像手段によって撮影された映像に基づいて、各人物の現在位置の検出と追跡を行い、
前記床面制御手段は、前記撮像手段によって前記人物追跡手段のための映像が撮影されている間は、前記床面の外観を初期状態に戻すことを特徴とする請求項7に記載の表示システム。
【請求項9】
所定の領域内に所在する各人物の現在位置を検出し、各人物を追跡する人物追跡工程と、
前記人物追跡工程において取得された各人物の現在位置に対応する床面の所定範囲の外観を、記憶手段に予め記憶されているそれぞれの人物の属性情報に応じて変化させる床面制御工程と
を含んだことを特徴とする表示制御方法。
【請求項10】
各人物の認証を制御する認証制御工程をさらに含み、
前記記憶手段は、各人物に関する属性情報として、前記認証制御工程において認証されたか否かを記憶することを特徴とする請求項9に記載の表示制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−86323(P2010−86323A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255311(P2008−255311)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】