説明

表示パネル内蔵型電子黒板

【課題】表示パネル内蔵型電子黒板において、表示パネル上に描かれる線図をスキャナで安定して読み取るための技術を提供する。
【解決手段】 表示パネルと、表示パネルの前面に設置される透光性の筆記シートと、筆記シート上を走行して走査するスキャナとを備える電子黒板において、スキャナによる読み取り開始に関する信号に応答して、表示パネルを所定の色又は/及び輝度で発光させるための信号を出力させる。実施形態によっては、表示パネルと筆記シートとの間に、表示パネルの光からスキャナの読み取り面を隠すためのカバーを設け、スキャナを走行させるとき、表示パネルの光からスキャナの読み取り面が隠され続けるように、スキャナの走行に連携してカバーをも移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルを内蔵した電子黒板において、特に、筆記具で表示パネル上に描かれた線図を読み取る技術及びこれを用いた電子黒板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィスでプレゼンテーションや会議を行う場合に、電子化された文書を表示しつつ、その表示に重ねてコメントを書き込み、メモ、注記や打合せ事項を付せれば便利である。近年、フラットパネルディスプレイが大型化し、価格も低下して、大型ディスプレイが身近になって来た。かかるディスプレイは投影型(プロジェクションタイプ)のものよりも画質が鮮明で明るく、部屋の照明を落とすことなく使用できる。
【0003】
フラットパネルディスプレイを内蔵し、ディスプレイ上に筆記具等で描かれた線図を、スキャナで読み取る機能を有する電子黒板として、特許文献1に記載されたものがある。この文献の実施の形態1には、スキャナにより、ディスプレイ上の線図を走査し、ディスプレイの表示と合わせて、筆記具等で描かれた線図も読み取って、それらのデータを記憶する旨の記載がある(特に0016段落及び0019段落)。
【0004】
しかしながら、実際には、線図の背景に表示パネルのバックライト等の光源が位置するため、この光源からの光が邪魔をして、ディスプレイ上に筆記具等で描かれた線図を読み取ることは困難である。また、ディスプレイの表示自体を読み取ることも困難である。特許文献1には、これらの技術的困難性にも関わらず、読み取りを可能とするための具体的構成は記載されていない。
【0005】
特許文献2には、シートに描かれた付与画像と、シートに投影された像とを、シートを挟んで投影機とは反対側から走査するスキャナを有する電子黒板が記載されている。かかる電子黒板の具体的構成は、同文献の2頁右下17行から同3頁右上18行までに、第2実施例として記載されている。そして、全体の斜視図、スキャナ部分の拡大断面図が、それぞれ同文献の第4図、第5図に示されている。
【0006】
特許文献2では、シート上の像の色彩については触れられておらず、スキャナ出力をカラー化することについては何ら記載がない。また、シートの一部が不透明である場合には、透過光を利用できないため、不透明なシート上の像を読み取ることはできない。更に、透過型のスキャナは一般的でなく、適用製品たる電子黒板その他の機器の製造コストを上昇させる。
【0007】
特許文献3には、文字の部分とその背景の部分の色が、レジスタに登録されていることを前提に、文字の色の部分から文字色マスクを作成し、背景色から文字背景色マスクを作成して、これらと論理をとることで文字の部分を背景と分離して、鮮明に2値記録を行う擬似階調印字装置が記載されている。しかしながら、この文献は、表示パネル上に描かれた線図の読み取りについては何ら記載が無い。
【0008】
特許文献4には、カラーインクの反射濃度差を用いて、複数の筆記具によるマーキングを色分けする電子機器が記載されている。この文献も、表示パネル上に描かれた線図の読み取りについて、何らかの示唆を与える文献ではない。
【0009】
特許文献5には、いわゆるホワイトボードにカラーのインクで描かれた線図を反射型のスキャナで読み取る技術が開示されている。しかしながら、この文献にも、表示パネル上に描かれた線図の読み取りについては何も記載していない。
【特許文献1】特開2000−229498号公報
【特許文献2】特開昭64−056599号公報
【特許文献3】特開2003−163812号公報
【特許文献4】特開平11−334277号公報
【特許文献5】特開2002−218165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
かかる事情に鑑み、本発明は、表示パネル内蔵型電子黒板のために、表示パネル上に描かれる線図をスキャナで安定して読み取るための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決し得る、本明細書において開示される新規な構成の1つは、電子黒板に描かれた線図を走査する際に、スキャナに対面する表示パネルを所定の色又は/及び輝度で発光させるような制御を行うことである。
【0012】
ある実施形態において、この制御は、線図による反射光を、表示パネルからの光と区別して認識するために利用される。すなわち、反射型スキャナは、読み取り光を放射し、読み取り対象によって反射される光を検出することにより読み取りを行うものであるが、従来は、表示パネル上に描かれる線図を読み取ろうとしても、表示パネルから放射される光が邪魔をして、表示パネルからの光と読み取り光の反射光とを区別することができなかった。しかしながら、表示パネルを所定の光で発光することにより、この二つの光を区別することが可能となる。
【0013】
実施形態によっては、この所定の光は緑色である。すなわち好ましくは、表示パネル全体を緑色で発光させる。本願発明者は、このように制御することにより、表示パネル上に描かれた線図をスキャナに認識させることが可能であることを見出した。線図は様々な色で描かれる可能性があるが、本願発明者が見出したところによれば、緑色は、最も対応力の広い色であった。
【0014】
実施形態によっては、線図の色に応じて、様々な色で表示パネルを発光させるように構成してもよい。または、線図の色に応じて、表示パネルの複数の色の輝度を低下させるように構成してもよい。このような構成とすることにより、線図の色がスキャナの感度の閾値を超えるため、線図を安定して読み取ることができる。
【0015】
しかしながら、上記の実施形態においては、線図の明度情報を得ることは可能であるが、表示パネルの光の影響のため、線図の色を特定することまでは困難であった。この課題に対処するため、線図を描くための筆記板と表示パネルとの間に、スキャナに対面して伴走する板状部材を設けるという新規な構成が開示される。
【0016】
この板状部材は、スキャナの読み取り光を反射する反射板として機能すると共に、スキャナの読み取り面に対して表示パネルの光を遮るカバーとしても機能する。この板状部材を設けることにより、表示パネルの光の影響が少なくなるため、スキャナの読み取り部は、スキャナから放射された読み取り光の反射光を容易に判別することが可能となり、線図の色まで特定することが可能となる。
【0017】
しかしながら、この構成にも改良すべき点がある。それは、スキャナから放射された読み取り光の反射が、線図の表面と反射板の表面の少なくとも2カ所で生じてしまうことから、反射光が読み取り部の複数の位置に入射してしまい、読み取り結果に滲みを生じる場合があることである。言葉を変えれば、読み取り光に対して反射板上に形成される線図の陰影が、読み取り結果を滲ませてしまう場合があるのである。
【0018】
この問題に対処するため、反射板を表示パネルの発光の一部を透過させる部材(半透明)とし、透過させた光によって反射板をある程度光らせ、それによって陰影を薄くするという新規な構成が開示される。陰影が薄くなることにより、読み取り結果における滲みを軽減させることができる。
【0019】
本願発明者は、反射板に形成される陰影を薄くするために適当な色は、白色であることを見出した。したがって、上記の構成を利用する場合、スキャナの走査に際し表示パネルを白色で発光させるように制御することが好ましい。
【0020】
表示パネルを白色で発光させるにせよ、前述のように緑色で発光させるにせよ、表示パネルの発光色の変更は、スキャナによる読み取り動作に関する信号に応じて行われるように構成されることが好ましい。例えば、電子黒板の映像信号発生回路は、電子黒板に設けられた読み取りボタンが押されることにより生じた信号を受け取ることに応答して、表示パネルの表示を変更するように構成できる。かかる応答処理は、ハードウェア的に行うように構成してもよいが、CPUとプログラムによるソフトウェア処理によって行うように構成してもよい。
【0021】
反射板は、スキャナを走行させるための駆動部に連結具を介して連結されることが好ましい。このように構成することにより、スキャナに確実に連動させて反射板を移動させることが可能になると共に、反射板を移動させるためのアクチュエータを別途設けることが不要となるという利点がある。
【0022】
この連結具(行程差緩和機構)は、スキャナを走行させるための駆動部に連結される第一の部材と、反射板に連結される第二の部材と、これら第一及び第二の部材を接続する弾性部材であって、第一の部材に伝えられるスキャナ走行方向の力を第二の部材に伝えるように取り付けられる弾性部材とを備えるものであってもよい。この実施形態において、弾性部材は、その弾性力が、反射板が固定されていない場合において反射板を移動させるための力よりも強いものであることが好ましい。また、その弾性力は、反射板が動けない場合においてもなおスキャナを移動させ得るように、スキャナの駆動部の推進力よりは弱いことが好ましい。かかる構成によれば、実装上の問題で反射板の可動範囲がスキャナの可動範囲よりも小さくならざるを得ない場合であっても、反射板の可動範囲を超えてスキャナを移動させることが可能となると共に、反射板が動ける範囲においては、当該弾性部材によってスキャナ駆動部の推進力を反射板へ伝え、反射板をスキャナに連動させて移動させることが可能となる。すなわち上記の連結構成は、スキャナと反射板の行程差を緩和する機構を形成する。
【0023】
実施形態によっては、筆記具のインクの色に対応させて、予め表示パネルの複数の色を選択し、これらの輝度の低下の割合を定めておくこととしてもよい。一つのインク色と複数の色、これらの輝度の低下の割合を一組とする。予め複数の組を定め、一つの線図の走査を複数の組について行う。この結果、線図の色情報を取得でき、線図のカラー表示が可能となる。
【0024】
フルカラーで色情報を特定するには、一つのインク色と選択されるべき複数の色、これらの輝度の低下の割合を一組とするとき、合計三組、必要となる。例えば、インク色として、絵の具の三原色である青緑、マゼンタ(赤紫)、黄、に大別して、これらのうち二つの色彩の輝度を低下させ、残る一つの色彩を対応させ、合計三組を選択する。または光の三原色である赤、緑、青紫、に対応させた三組を選択する。
【0025】
複数の組について行う一つの線図の走査は、線図に対応する電子黒板の一面を、スキャナが一往復半(三面分)、移動することでなされることとしてもよい。
【0026】
本発明の実施形態は、これら一つ以上の特徴を含む電子黒板及び当該電子黒板のための部品、電子黒板の制御方法、並びに電子黒板を制御するためのプログラム及びそのプログラムを格納するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含む。
【0027】
本発明の好適な実施形態のいくつかの例は、添付の特許請求の範囲に定義されている。しかしながら、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示される実施形態にとどまるものではなく、本明細書及び図面に明示的及び暗示的に開示される全ての新規且つ有益な構成及びその組み合わせを含むものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の好適な実施形態の一例として、表示パネルと、前記表示パネルの少なくとも前面に配設された透明部材と、前記透明部材上に描かれた線図を走査するスキャナと、前記表示パネルに信号を送出する映像信号発生部とを有する電子黒板であって、前記映像信号発生部が、前記スキャナによる読み取り動作に関する信号を受け取ることに応答して、前記表示パネルを所定の色又は/及び輝度で発光させるための信号を出力するように構成される、電子黒板がある。
【0029】
本発明の好適な実施形態の別の例として、表示パネルと、前記表示パネルの少なくとも前面に配設された透明部材と、前記透明部材上に描かれた線図を走査するスキャナと、前記表示パネルと前記透明部材との間に設けられる反射板と、前記表示パネルに信号を送出する映像信号発生部とを有する電子黒板であって、 前記スキャナを走行させるとき、前記表示パネルの光から前記スキャナの読み取り面が隠され続けるように、前記スキャナの走行に連携して前記反射板を移動させるように構成され、前記スキャナを走行させるとき、前記映像信号発生部からの信号を受けて、前記表示パネルが所定の色又は/及び輝度で発光するように構成される、電子黒板がある。
【0030】
実施形態によっては、前記所定の色は、前記表示パネルが発光可能な緑系統や白系統の色であることができる。
【0031】
実施形態によっては、前記反射板が、前記スキャナを走行させるための駆動部から連結具を介して力を受けるように構成することができる。
【0032】
実施形態によっては、前記連結具は、前記スキャナを走行させるための駆動部に連結される第一の部材と、前記反射板に連結される第二の部材と、前記第一の部材と前記第二の部材とを接続する弾性部材とを備え、前記弾性部材は、前記第一の部材に伝えられる前記スキャナの走行方向の力を前記第二の部材に伝えるように配設され、前記弾性部材の弾性力は、前記反射板が走行する場合において該反射板を移動させる前記駆動部の推進力よりは強く、且つ、前記反射板が走行を停止する場合において前記反射板を移動させる前記駆動部の推進力よりは弱いという構成にすることができる。
【0033】
本発明の好適な実施形態のさらに別の例として、表示パネルと、前記表示パネルの少なくとも前面に配設された透明部材と、前記透明部材上に描かれた線図を走査するスキャナと、制御部とを有する電子黒板のためのプログラムであって、前記制御部を、前記スキャナによる読み取り開始に関する信号を受け取ることに応答して前記表示パネルを所定の色又は/及び輝度で発光させるための信号を出力するように動作させる、プログラムがある。また、このプログラムを格納するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体や、このプログラムによって動作せしめられる制御部を備える、電子黒板も、本発明の好適な実施形態の例である。
【0034】
本発明の好適な実施形態のさらに別の例として、表示パネルと、前記表示パネルの少なくとも前面に配設された透明部材と、前記透明部材上に描かれた線図を走査するスキャナとを備える電子黒板の制御方法であって、前記スキャナによる読み取り開始に関する信号を受け取ることに応答して、前記表示パネルを所定の色又は/及び輝度で発光させるための信号を出力させることを含む、電子黒板の制御方法がある。
【0035】
実施形態によっては、前記表示パネルと前記透明部材との間に、前記表示パネルの光から前記スキャナの読み取り面を隠すためのカバーを設け、前記スキャナを走行させるとき、前記表示パネルの光から前記スキャナの読み取り面が隠され続けるように、前記スキャナの走行に連携して前記カバーを移動させることとしてもよい。
【0036】
本発明の好適な実施形態のさらに別の例として、表示パネルと、前記表示パネルの少なくとも前面に配設された透明部材と、前記透明部材上に描かれた線図を走査するスキャナと、前記表示パネルと前記透明部材との間に設けられるカバーであって、前記表示パネルの光から前記スキャナの読み取り面を隠すためのカバーとを備え、前記スキャナを走行させるとき、前記表示パネルの光から前記スキャナの読み取り面が隠され続けるように、前記スキャナの走行に連携して前記カバーを移動させるように構成される、電子黒板がある。
【0037】
以下、本発明の好適な実施形態のさらに具体的な例を、添付の図面を参照しながら説明する。ただし、それらの説明は、本発明の実施形態を限定する目的でなされるものではなく、本発明の理解に資する目的でなされるものにすぎないことに留意されたい。
【実施例1】
【0038】
図1は、第1実施例として紹介する電子黒板の概略構成を説明するためのブロック図である。
【0039】
電子黒板の本体1は、外部からインターフェース10を介して画像情報を入力し表示する、表示パネル2(例えば、液晶ディスプレイ)と、表示パネル2に固定され本体1の一部を構成する透明部材3と、透明部材3に描かれた線図を読み取るための移動式のスキャナ4と、スキャナ4が動作する際に、表示パネル2を発色させるための表示色発生部5と、スキャナ4によって読み取った線図のデータをメモリ9に記憶したり、表示パネル2に表示された画像情報を縮小して線図のデータと合成したり、データや情報をインターフェース10を介して外部へ出力したり、プリンタ8による印刷動作を制御する制御部6と、スキャナ4の動作開始を指示したり、表示された画像情報、読み取った線図のデータ、これらの合成結果をプリンタ8又は外部へ出力することを指示する操作部7とを有している。
【0040】
電子黒板の利用者は、筆記具(白板用インクペン)を用いて、直接、透明部材3に文字や絵、指示線などの線図を描くことができる。スキャナ4は、通常の反射型スキャナであり、内蔵する光源から読み取り対象の線図に、単数又は複数の色彩の光を照射して、その反射光を一つのラインセンサやCCDに入力しつつ、線図が描かれた透明部材3の所定範囲を左右に移動する。
【0041】
表示色発生部5は、ソフトウェアにより機能しても良いし、電子回路により機能しても良い。表示パネル2は、インターフェース10を介して外部のパソコンその他の電子機器と接続され、電子黒板1と独立した、表示モニターの機能を有する。
【0042】
以上の構成において、インターフェース10を介して、コンピュータや映像機器から入力された画像情報は、表示パネル2の表示領域に表示される。画像情報は、制御部6の支配下で、メモリ9に記憶されても良い。表示領域に表示されている画像情報に対して、利用者は、透明部材3上にインクペン等で文字や図形などを描く。この後、利用者が操作部7から、使用したインクペンの色、スキャナによる線図の読み取り等を指示すると(単色カラーモード)、表示色発生部5が機能する環境下、制御部6は、スキャナを走査する。このとき表示パネル2の表示色は所定の色彩、輝度となっている。
【0043】
即ち、指定されたインクペンの色に対応して、制御部6は、スキャナが読み取った線図の信号値はスキャナの感度の閾値を十分に越えるように、かつ、スキャナが読み取った表示パネル2の表示色の信号値はスキャナの感度の閾値を越えないように、表示色発生部5を制御する。または表示色発生部5が表示パネル2の発色の設定値を予め有し、スキャナの走査に同期して、制御部6からの信号を受けて、表示パネル2を発色させても良い。
【0044】
かかる制御部6の指示を受け、表示色発生部5は表示パネル2を所定の色彩、輝度で発色させる。そしてスキャナ4により読み取られた線図のデータには、使用したインクペンの色に対応した色情報が付される。
【0045】
利用者が、透明部材3上に複数のインクペンで多色で文字等を描いた後、操作部7からカラー情報の読み取りを指示すると、制御部6は、線図に対応する電子黒板の一面を、スキャナ4が一往復半(三面分)移動するよう駆動する(フルカラーモード)。
【0046】
これに伴い表示色発生部5は、スキャナ4が一面分を走査する間、一組の色彩と輝度で表示パネル2を発色させる。表示パネル2は、スキャナ4の一往復半(三面分)の移動に同期して、一つの線図に対し三組(三面分)の発色を行う。スキャナ4により読み取られたカラーの線図のデータには、使用したインクペンの多色に対応した色情報がそれぞれ付される。
【0047】
透明部材3上の線図をモノクロで読み取る場合(モノクロモード)、表示色発生部5は、表示パネル2を緑色で発光させる。好ましくは表示パネルの全面を緑色で発光させる。そして、モノクロモードの場合、スキャナ4は、透明部材3上を一度だけ走査すれば十分である。すなわち、カラーモードの場合のように、透明部材3上でスキャナ4を一往復半させる必要はなく、片道だけの走査で足りる。
【0048】
読み取られた線図のデータは、制御部6により、メモリ9に記憶される。また制御部6は、線図に重ねて表示パネル2に表示した画像情報を縮小し、読み取られた線図のデータに合成しても良い。この場合、電子黒板に表示された画像と、これに重ねて利用者が描いた線図とを合成し、合成結果全体を所定の用紙、例えばA4版の紙面に印刷可能な大きさに変換して、メモリ9に記憶する。利用者が操作部7により、かかる合成後の線図のデータ(変換画像情報)の出力を指示すると、プリンタ8対して又はインターフェース10を経由して外部に対して、合成後のデータが送出される。
【0049】
かかる合成をしない場合には、線図の読み取りデータが、利用者が操作部7を操作することにより、プリンタ8対して又はインターフェース10を経由して外部に対して、送出される。
【0050】
表示パネル2としては、フラット型のパネルディスプレイが望ましく、例えば、液晶を用いた画像表示装置(LCD)、有機エレクトロルミネセンス現象を用いた有機ELディスプレイ装置などが挙げられる。
【0051】
図2は、本発明の実施例1に適用される電子黒板の外観構造を示す斜視図である。
【0052】
電子黒板の本体11は、図1の本体1に対応している。本体11の前面開口部に固定されている液晶ディスプレイ12は、図1の表示パネル2に対応している。表面を硬化した透明樹脂板13は、図1の透明部材3に対応する。透明樹脂板13には、筆記具(白板用インクペン)を用いて利用者が直接、文字、絵、指示線、注記などを描くことができる。また、透明樹脂板13は、液晶ディスプレイ12の表示面より大きく、表示面以外の領域(余白部分)は白色に形成され、通常のホワイトボードとして機能する。
【0053】
移動式スキャナ14は、図1のスキャナ4に対応し、透明樹脂板13に描かれた線図を読み取る。
【0054】
以上の構成において、インターフェース10を介して接続されているコンピュータ機器や映像機器等から、この電子黒板に入力された画像情報は、LCDを用いた液晶ディスプレイ12の表示領域に表示される。また、画像情報は、制御部6の支配の下に、メモリ9に記憶されても良い。
【0055】
ここで表示される画像情報に重ねて、利用者が、透明樹脂板13上に水性インクを用いたペンやマーカーで、文字・記号や注意書などを描くことができる。
【0056】
利用者の操作部7に対するアクションを契機として、透明樹脂板13上に描かれた線図は、移動式スキャナ14が左又は右に移動しながら読み取って、電子データに変換され、必要な色情報と共に、メモリ9に記憶される。図示しない制御部6は、液晶ディスプレイ12に表示された画像情報を縮小し、読み取った線図のデータと合成しても良い。
【0057】
また図示しない操作部7からの利用者の指示に基づき、制御部6は、合成後の読み取られた線図のデータ(変換された画像情報)を、図示しないプリンタ18に出力(印刷)し、又は、インターフェース10を介して接続されたコンピュータ機器へ送出しても良い。
【0058】
図3は、実施例1の電子黒板の制御部6による処理を示すフローチャートである。この処理を実行する制御プログラムは、制御部6のプログラムメモリに格納されている。
【0059】
制御部6は、インターフェース10を介して接続されているコンピュータ機器等から画像情報が入力されるかを調べ、入力されると(ステップ1)その入力した画像情報を液晶ディスプレイ12に表示する(ステップ2)。この際に、制御部6は、画像情報を縮小処理その他必要な画像処理を行い、その結果をメモリ9又は図示しない制御部6の内部メモリに記憶しても良い。
【0060】
次に、操作部7から移動式スキャナ14を使用した画像の読取り指示が入力されたかを調べ(ステップ3)、指示があれば、移動式スキャナ14の走査を開始して、液晶ディスプレイ12の所定の表示領域に表示されている線図を読み取る(ステップ4)。また制御部6は、読取り指示の入力に応じて発生する信号を受け取ると、表示色発生部5に命令を出し、液晶ディスプレイ12を所定の色で表示させる。例えばモノクロモードの場合、制御部6は、液晶ディスプレイ12を緑色で発光させるための制御を表示色発生部5に対して行う。表示色発生部5は、制御部6の指示に従って液晶ディスプレイ12に所定の画像信号(映像信号)を出力する。読み取られた線図のデータはメモリ9に記憶される(ステップS5)。
【0061】
制御部6は、適宜、メモリ9に記憶された不要な画像情報を消去し、メモリの空き容量を監視し、メモリ9と内部メモリとを使い分ける。制御部6は、適当なタイミングで、読み取った線図のデータと、縮小処理等をした画像情報とを合成し、変換後の画像情報として、メモリ9又は内部メモリに記憶しても良い。
【0062】
次に、操作部7から、インターフェース10を介してデータを出力する出力指示が入力されたかを調べ(ステップ6)、その出力指示があれば、メモリ9に記憶されているデータを、プリンタ8又はインターフェース10を介して接続された外部のコンピュータ機器などに出力する(ステップ7)。
【0063】
以上説明したように実施例1によれば、表示パネルに表示されている画像に、利用者が所望の絵や図形、文字その他の線図をパネルの上から描き入れ、これを安定して容易に読み取ることができる。通常の反射型スキャナを用いて、簡単な操作で、表示パネルに表示した画像情報と、これに描かれた線図とを重ねて合成した画像データを作成することができる。
【0064】
本発明の実施は、前述の実施例の機能を実現するソフトウェア(プログラムコード)をインターフェース10を介して制御部6へインストールすることにより、又は、上記ソフトウェア(プログラムコード)を格納した記憶媒体を制御部6に設けられた図示しない所定のポートへ接続してインストールすることにより、達成されるようにしても良い。
【0065】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現する。換言すればコンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される。
【0066】
なお、上記ソフトウエア(プログラムコード)が、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現されても良い。
【0067】
実施例1によれば、表示パネルに表示されている画像に、利用者が所望の文字、図形その他の線図を描き加え、これを簡単な操作で印刷又は出力できるという効果が提供される。また、容易に表示画像と描き加えた線図との合成を行える効果が提供される。
【実施例2】
【0068】
図4は、第2実施例として本明細書に紹介する電子黒板400を説明するための図であり、(a)は正面斜視図、(b)は背面斜視図である。電子黒板400は、表示パネル(液晶ディスプレイ)402と、液晶ディスプレイ402の前面に設置される透光性の筆記シート404と、筆記シート404上を走行して走査するスキャナ406と、操作パネル408などを備えている。これらはそれぞれ第一実施例として紹介した電子黒板1の液晶ディスプレイ12,透明樹脂板13,移動式スキャナ14,操作部7に対応し、同様の機能を備えている。筆記シート404は、液晶ディスプレイ402に表示される映像を隠すことがないように、できるだけ透明なものであることが望ましい。また利用者は、筆記シート404の上に、マーカーを用いて文字・図などを自在に描くことができる。このような目的のために用いることができる材料として、例えばアクリルがある。スキャナ406は反射型のスキャナ、すなわち読み取りのための光を放射して、その反射光を光検出器で検出することにより、対象の読み取りを行う方式のスキャナである。図4(c)に描かれるように、スキャナ406は、筆記シート404上を、横方向に走行することにより、筆記シート404の全面をスキャンする。スキャナ406を移動させるため、スキャナ406は電動アクチュエータ410(図4(a),(b))に連結されている。電動アクチュエータ410は電子黒板400の上部に設置され、やはり電子黒板400の上部に設けられるレール412の上を移動し得るように構成される。図示されていない制御部は、電動アクチュエータ410を移動させることにより、スキャナ406を走行させる。図4(c)において、スキャナ406は、正面に向かって左から右方向へ走行しているが、スキャン自体は左右どちらの方向へ走行しても行うことが可能である。
【0069】
図5は、図4(c)のA−A'断面図であり、(a)は断面の全体図、(b)は断面の上部の拡大図である。図示されるように、液晶ディスプレイ402の前面に液晶ディスプレイ402の全面を覆うように筆記シート404が配置され、さらにスキャナ406が筆記シート上を移動自在に配置される。また筆記シート404の表面とスキャナ406との間には空隙が有る。そして、電子黒板400が第一実施例の電子黒板1と異なる点は、液晶ディスプレイ402と筆記シート404の間にカバー(反射板)500が設けられているところである。
【0070】
カバー(反射板)500は、液晶ディスプレイ402の光をスキャナ406に対して遮る働きを有する。このため、反射型スキャナであるスキャナ406は、読み取り光の反射光がどの色であっても、それを十分に区別して検出することが可能となり、筆記シート404上の線図をカラーで読み取ることを可能とする。従って電子黒板400に例示される実施形態は、線図をカラーで読み取る場合に好適である。一方、線図を白黒で読み取ることができれば十分な場合は、カバー500の付加は必ずしも必要ではなく、第一実施例の電子黒板1に例示される実施形態で十分である。
【0071】
カバー500が十分な遮光効果を提供するためには、カバー500は、少なくともスキャナ406の読み取り面を覆う程度の形状と大きさを有する必要がある。したがって、カバー500の形状は、例えば長方形であることができ、その横幅は、例えばスキャナの横幅と同じ程度の幅とすることができ、その縦幅は例えば液晶ディスプレイ402の縦幅と同じ程度の幅とすることができる。カバー500の形状・大きさをこのように選択した場合、カバー500はスキャナ406の背面側に隠れてしまうことになり、図4のように電子黒板400を外側から眺めた場合、カバー500を見ることができない。
【0072】
図6は、カバー500及びその取り付け機構(行程差緩和機構)の部分を拡大して描いた図であり、(a)は全体図、(b)は上部の拡大図、(c)は下部の拡大図である。
【0073】
カバー500は、引っ掛け金具(第一の部材)502及び懸垂金具(第二の部材)504を介して、スキャナ406を移動させるための電動アクチュエータ410(図5)と連動する。このため、電動アクチュエータ410がスキャナ406を移動させると、それにつれて、カバー500も移動する。すなわちスキャナ406とカバー500は連携して移動し、スキャナ406がディスプレイ402の上を走査している間、カバー500は常に、ディスプレイ402の光からスキャナ406の読み取り面を隠し続ける。カバー500がスムーズに移動できるように、スライドレール508が設けられ、懸垂金具504はスライドレール508に取り付けられる。
【0074】
このような構成においては、カバー500を移動させるための推進力発生機構が、スキャナ406を移動させるための推進力発生機構(電動アクチュエータ410)と共通であるため、スキャナ406とカバー500を容易に連携させて走行させることができ、また、カバー500を移動させるためのモータやアクチュエータを別途設ける必要がないという利点がある。
【0075】
引っ掛け金具502は電動アクチュエータ410に連結され、懸垂金具504はカバー500に連結される。そして、引っ掛け金具502と懸垂金具504の間には、コプリング(弾性部材)506が設けられる。すなわち電動アクチュエータ410によるスキャナ走行方向の駆動力は、コプリング506を介して引っ掛け金具502から懸垂金具504へと、一定の荷重で伝えられる。コプリング506の役割については、後に詳述する。
【0076】
図6のカバー500は懸垂金具504に取り付けられているが、この例では、その取り付け方法は図示されているようにねじ止めとなっている。無論、これは、本明細書で例示されるその他の各部品の連結・接続・取り付け方法と同様、ただの一例に過ぎず、製造やコストなどの要請に応じて、様々な取り付け方法を用いてもよいことはもちろんである。懸垂金具504はさらに、第1部品504aと第2部品504bに分かれており、これらは螺合せしめられることにより一体化されているが、これもただの例に過ぎず、さらに多くの部品に分けられていても、または単一の部品として形成されていても構わないものである。重要なことは、スキャナ移動用の電動アクチュエータ410との間に、弾性部材506が介在せしめられていることである。
【0077】
本例において、カバー500の上部500cと下部500dは、表面が若干削られている。これは、筆記シート404(図5(b))の裏面とのこすれ防止という目的のためになされている。
【0078】
カバー500は、アクリルプレートなどの透明部材500aの上に、白フィルム500bを貼付することにより形成されている。したがって、カバー500は、ディスプレイ402の光を完全に遮るわけではなく、ある程度の光を通過させる。カバー500にこのような半透光性の性質を持たせたのは、次の理由による。
【0079】
カバー500を完全に遮光性とすれば、確かにスキャナ406は、液晶ディスプレイ402からの光に邪魔されることなく、筆記シート404上の線図を読みとることができる。しかしながら今度は、スキャナ406の読み取り光がカバー500の表面に線図の陰影を形成してしまい、その陰影が読み取られることによって、読み取り結果に滲みが生じてしまうという問題が発生する。この問題を解決するため、発明者は、カバー500を完全に遮光性にせずに、逆にある程度の光量を通し、カバーをある程度光らせることにより、スキャナの読み取り光によって形成される陰影を薄くして、読み取り結果における陰影の影響を軽減できることを見出した。
【0080】
このような理由から、カバー500は完全な遮光性ではなく、半透光性の性質を有することが好ましい。また筆記シート上の線図の色がどのような色であっても陰影を薄くすることができるように、カバー500を透過させる光の色は、白色または液晶ディスプレイ402が発生可能な白系統の色であることが好ましい。そこで、液晶ディスプレイ402は、スキャナ406の走査時において、白色で発行するように制御されることが好ましい。
【0081】
なお、カバー500に形成される陰影の悪影響は、筆記シート404の厚さが薄くなればなるほど小さくなる。また、筆記シート404とカバー500との距離が小さくなればなるほど、その悪影響は小さくなる。したがって、筆記シート404を十分に薄くすることができ、また、筆記シート404とカバー500との距離を十分に小さくすることができれば、カバー500を必ずしも半透光性とする必要はなく、遮光性が強い材質とすることも可能である。したがって本発明の実施形態は、カバー500が半透光性である場合も、完全な遮光性である場合も、いずれの場合もあり得ることに留意されない。
【0082】
さて、図7を参照し、コプリング(弾性部材)506の構成例を詳細に説明する。図7には、カバー500及びその取り付け機構が、図6の視点とは反対側の視点から描かれている。ただし、引っ掛け金具502は省略されていることに注意されたい。本例において、コプリング506は、定荷重ばね506bとフック506c、及びこれらを懸垂金具504に取り付けるためのばね固定金506aとを有する。図示されている通り、定荷重ばね506b及びフック506cは、左右それぞれ1組ずつ設けられる。定荷重ばね506bは、ばねがコイル状に巻かれており、その端部がフック506cに接続されている。したがって、定荷重ばね506bの弾性力を超える力を加えることにより、フック506cは横方向に伸びることができる。
【0083】
引っ掛け金具502は、左右のフック506の間に収まるように配置される。したがって、電動アクチュエータ410から引っ掛け金具502に伝えられる、スキャナ走査方向の推進力は、左右のフック506cのいずれかを介して定荷重ばね506bのいずれかに伝達され、さらに、定荷重ばね506bが取り付けられているばね固定金506aを介して懸垂金具504に伝えられる。
【0084】
電動アクチュエータ410の力でカバー500を移動させるためには、定荷重ばね506bの弾性力が、カバー500を移動させるための力よりも強い必要がある。すなわち、カバー500の移動中において、定荷重ばね506bは余り変形せずに(または全く変形しないで)懸垂金具504を引っ張ることができることが好ましい。したがって、定荷重ばね506bとしては、そのような弾性力を有する部材を選択して用いることが好ましい。
【0085】
しかしながら、実装上の制限から、スキャナ406とカバー500の可動範囲が異なる場合がある。本例では、例えば図4(a)において、スキャナ406は電子黒板400の最端部まで移動することが可能であるが、カバー500は、例えば、ディスプレイ402の余白部分420までしか移動できない。
【0086】
このような制限においてもスキャナ406とカバー500を同じアクチュエータで移動させることを可能とするため、定荷重ばね506bの弾性力は、アクチュエータ410の駆動力よりは弱いものであることが好ましい。定荷重ばね506bをそのように選択することにより、カバー500またはその取付具が、可動範囲の端部に達して電子黒板400の構造部品に当接し、それ以上移動できない状態になっても、定荷重ばね506bが変形してフック506cが伸びることができるので、スキャナ406はさらに移動を続けることが可能となる。
【0087】
この様子が図8に描かれている。図示されるように、引っ掛け金具502は、フック506cに挟まれるように配置されている。図8(a)は、図5(c)に描かれているような、スキャナ406がディスプレイ402上を走行している状態を描いており、フック506cは変形せずに(すなわち伸びることなしに)引っ掛け金具502から加えられる力を懸垂金具504に伝えている。これに対して図8(c)は、図5(a)に描かれているような、スキャナ406が電子黒板400の最端部まで移動している状態を描いており、カバー500がその可動範囲の最端部に達した後も、フック506cが伸びることにより、スキャナ406が移動していることが描かれている。すなわち引っ掛け金具502,懸垂金具504,コプリング506は、スキャナ406とカバー500の行程差緩和機構を提供する。
【0088】
この例では弾性部品506として定荷重ばねを採用しているが、これは単なる例であり、前述した条件を満たすものであれば、定荷重ばね以外のばねを用いることも可能である。しかしながら、定荷重ばねは、伸び量に関わらず弾性力が一定であるという利点を有するため、スキャナ406やカバー500の移動制御が容易であるという利点をもたらす。また上記の例では、アクチュエータに連結される引っ掛け金具502に加えられる力をコプリング506に伝えるために、フック(506c)を利用していたが、これも単なる例に過ぎず、力をうまく伝達できるものであれば、どのような形状・構造の部品を用いても、本発明の範囲を超えるものではないことに留意されたい。
【0089】
なお、図8にはスキャナ406の裏面が描かれている。符号406aは読み取り窓を示し、ここから読み取り用の光が放射され、また、反射して戻ってきた光が入射する。従って、読み取り窓406aの奥には光放射装置と光検出装置が存在する。また、符号406bはスキャナ406に取り付けられているカーテンを表す。カーテン406bは、少なくともスキャナ406が筆記シート404上を走行している間、筆記シート404に接し続けるように取り付けられており、外光が読み取り窓406aに入射することを防止する。
【0090】
図9及び図10を用いて、電子黒板400のさらなる構成及び処理の流れについて説明していく。図9は電子黒板400の構成要素を説明するための図であり、図10は処理の流れを説明するための図である。
【0091】
電子黒板400は、図4にも描かれている液晶ディスプレイ402,スキャナ406,操作パネル408,スキャナ406を移動させるための電動アクチュエータ410などのほかに、制御部430,内部記憶装置432,映像信号発生回路434,プリンタ436などを備えることができる。制御部430は、電子黒板400の全体の制御をつかさどる要素であり、操作パネル408やスキャナ406などの内部要素又は外付けPC452などの外部要素からの信号に応答して、所定の処理を行ったり、他の要素を制御するための信号を発生する。制御部430は、その一部または全部の処理をプログラムによるソフトウェア処理によって行うように構成されることができる。むろん、ハードウェア的に制御が可能なように構成されることもできる。制御部430を動作させるためのプログラムは、内部記憶装置432に格納できる。内部記憶装置432は、フラッシュメモリやハードディスクなど、不揮発性の記憶手段を含むことが好ましい。内部記憶装置432は、1種類の記憶手段のみからなる必要がなく、複数の記憶手段を備えていてもよい。例えば、高速なデータの読み書きのために、読み取り・書き込み速度が速いDRAM,SRAM等のメモリを備えることができ、長期のデータ保存のために、フラッシュメモリやハードディスクなどを備えることができる。さらに、CD−RやDVD−Rなど、持ち運びが便利な記憶手段を備えることもできる。制御部430を動作させるプログラムは、CD−Rなどの記憶手段に格納されて保存することができ、また、これらの記憶手段に格納されて独立の製品として販売することもできる。さらに、ネットワークを通じて販売することも可能である。
【0092】
液晶ディスプレイ402は複数の系統の入力を備えることができる。本例の場合、映像信号発生回路434,外付けPC452,TV/ビデオ454の3つの入力を受け入れるように構成されている。入力系統の切り替えは、制御部430が液晶ディスプレイを制御することによって行われるが、制御部430は、利用者が操作パネル408を操作することに応じて生成される信号に応答して、または処理の必要性に応じて独自の判断によって、その制御を行う。このような制御は、ハードウェア回路によって行うように構成してもよいし、ソフトウェア処理によって行うように構成してもよい。
【0093】
映像信号発生回路434は、液晶ディスプレイ402を、所定の色で表示させるための映像信号を生成する。前述のように、本例では、スキャン実行時に液晶ディスプレイ402を白色するように構成されるが、そのための映像信号は、この映像信号発生回路434によって生成される。
【0094】
このほか電子黒板400は、USBメモリ・SDカードなど携帯用メモリの書き込み装置438を備えることができ、制御部430の制御により、スキャン結果を携帯用メモリに保存するように構成できる。また電子黒板400は、外付けPC452の表示画面をキャプチャし、それをスキャナ406による読み取り結果に合成し得るように構成することができる。また、図示しない構成により、著作権に問題が無いことを条件に、TV/ビデオ454の画面をキャプチャし、それをスキャナ406による読み取り結果に合成できるように構成してもよい。
【0095】
次に、図10を参照して、電子黒板400の典型的な処理の流れの一例を説明する。
【0096】
ステップ100は処理の開始を表す。ステップ102では、利用者が液晶ディスプレイ402に何を表示するのかを選択する。可能な選択肢は、例えば、画面全体を白色で表示させること、外付けPC452の画面を表示させること、TV/ビデオ454の映像表示させること等でありうる。これらのモードの切り替えは、操作パネル408を操作することにより切り替えることができ、制御部430は、切り替え操作に応じて生成された信号に従って、液晶ディスプレイ402の入力系統を切り替える(ステップ104)。画面全体を白色で表示させるモードは、電子黒板400を、あたかも普通のホワイトボードのように用いる場合に便利であろう。外付けPC452の画面を表示させるモードは、PCの画面に重ねて線図を描く場合に便利であろう。制御部430による切り替え動作に応じて、液晶ディスプレイ402には、選択された画像が表示される(ステップ106)。
【0097】
ステップ108は、スキャナ406による読み取りを開始すべき旨の指示がなされる段階を表している。この指示は、例えば、利用者が操作パネル408を操作することによりなされる。この操作に応じて信号が生成され、制御部430は、生成された信号に応答して、続く必要な制御を行う。スキャナ406による読み取り動作に関する信号は、必ずしも操作パネル408の操作によって生成されるものでなくてもよく、外部から供給される制御信号であるように構成してもよい。
【0098】
読み取り動作に関する信号に応答して、制御部430は、次の三つの制御を行うことができる。一つは、液晶ディスプレイ402の入力を切り替え、映像信号発生回路434からの信号を表示させる(ステップ110)。同時に映像信号発生回路434に指示を出し、スキャンに好適な色や輝度の映像信号を生成させる(ステップ112)。前述のように、カラーでの読み取りを行う場合、スキャンに好適な色は白色である。留意すべきは、たとえステップ102〜106における画面表示モード選択において、白色表示がなされるモード(ホワイトボードモード)に設定されていたとしても、なお、輝度の変更がなされなければならない可能性があることである。すなわち、輝度が高過ぎれば、カバー500が明るく光すぎて、スキャナ406が、筆記シート404上の線図からの反射光をカバー500を透過してくるディスプレイの光と区別することが困難となる。輝度が低すぎれば、カバー500上に生じる影の影響を軽減するには不足となる。制御部430及び映像信号発生回路434は、スキャンに好適な色及び輝度の映像信号を生成可能なように構成される。
【0099】
さらに制御部430は、電動アクチュエータ410を始動させ、スキャナ406を筆記シート404上を走行させる(ステップ114)。このとき、既に説明したように、筆記シート404と液晶ディスプレイ402との間において、カバー500がスキャナ406の読み取り面と対面するように、スキャナ406に伴走する。
【0100】
同時に制御部430は、スキャナ406をアクティブ化し、読み取りを開始させる(ステップ116)。読み取られたデータは制御部430に送られる(ステップ118)。スキャナ406は、筆記シート404の全面の走査が終了してから読み取りデータをまとめて制御部430に送ってもよいし、読み取りを行いつつ次々に送ってもよい。読み取り終了後(又は読み取り中に逐次)、制御部430は、送られてきたデータに所定の信号処理を行い、内部記憶装置432に保存する(ステップ120)。
【0101】
ステップ102〜106の画面表示モード選択において、PC452の画面をディスプレイ402に表示することが選択されていた場合、制御部430は、その表示内容をキャプチャし(ステップ122)、内部記憶装置432に保存されていたスキャン画像と合成するように動作することができる(ステップ124)。合成された画像データは再び内部記憶装置432に保存される(ステップ126)。保存を行わず出力の処理(ステップ128)に進んでも良い。
【0102】
続いてステップ128において、制御部430は、スキャン画像(又はPCの画面データと構成されたスキャン画像)を出力する。この出力は様々な形態で行われる可能性があり、例えば、プリンタ436に出力されて紙に印刷される形態、USBメモリ書き込み装置438に挿し込まれたUSBメモリに画像データとして保存される形態、外付けPC452に画像データとして送信される形態、図示されていないが、ネットワークを経由して外部に送信される形態、又は、これらの一つ以上が同時に行われる形態、などがある。
【0103】
電子黒板400の使用を終了する場合はステップ132に進み、さらに使用を継続する場合は、ステップ130に示されるように、ステップ102から改めて操作を行うこととしてもよい。
【0104】
以上、本発明の好適な実施形態の例をいくつか説明してきたが、これらの説明は本発明の理解に資する目的でなされたものであり、本発明を限定する意図でなされたものでないことに留意されたい。本発明は、ここに紹介された実施形態に制限されることはなく、本発明の本質を変えることなく、様々な実施形態を取り得るものであることを最後に申し述べる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】実施例1として紹介する電子黒板の概略構成を説明するための図である。
【図2】実施例1として紹介する電子黒板の外観構造を説明するための斜視図である。
【図3】実施例1の電子黒板の制御部6による処理を説明するためのフローチャートである。
【図4a−b】実施例2として紹介する電子黒板400を説明するための図であり、(a)は正面斜視図、(b)は背面斜視図である。
【図4c】電子黒板400においてスキャナ406が移動している様子を説明するための図である。
【図5】図4(c)のA−A'断面図であり、(a)は断面の全体図、(b)は断面の上部の拡大図である。
【図6】カバー500及びその取り付け機構の部分を拡大して描いた図であり、(a)は全体図、(b)は上部の拡大図、(c)は下部の拡大図である。
【図7】コプリング506の構成例を詳細に説明するための図である。
【図8a−b】コプリング506の機能を説明するための図である。
【図8c−d】コプリング506の機能を説明するための図である。
【図9】電子黒板400のさらなる構成を説明するための図である。
【図10】電子黒板400の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0106】
1 電子黒板
2 表示パネル
3 透明部材
4 スキャナ
5 表示色発生部
6 制御部
7 操作部
8 プリンタ
9 メモリ
10 インターフェース
11 本体
12 液晶ディスプレイ
13 透明樹脂板
14 移動式スキャナ
400 電子黒板
402 液晶ディスプレイ
404 筆記シート
406 スキャナ
408 操作パネル
410 電動アクチュエータ
412 レール
420 余白部分
430 制御部
432 内部記憶装置
434 映像信号発生回路
436 プリンタ
500 カバー
500a 透明部材
500b 白フィルム
502 引っ掛け金具
504 懸垂金具
506 弾性部材
508 スライドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、
前記表示パネルの少なくとも前面に配設された透明部材と、
前記透明部材上に描かれた線図を走査するスキャナと、
前記表示パネルに信号を送出する映像信号発生部と、
を有する電子黒板であって、前記映像信号発生部が、前記スキャナによる読み取り動作に関する信号を受け取ることに応答して、前記表示パネルを所定の色又は/及び輝度で発光させるための信号を出力するように構成される、電子黒板。
【請求項2】
前記所定の色は緑色である、請求項1に記載の電子黒板。
【請求項3】
表示パネルと、
前記表示パネルの少なくとも前面に配設された透明部材と、
前記透明部材上に描かれた線図を走査するスキャナと、
前記表示パネルと前記透明部材との間に設けられる反射板と、
前記表示パネルに信号を送出する映像信号発生部と、
を有する電子黒板であって、
前記スキャナを走行させるとき、前記表示パネルの光から前記スキャナの読み取り面が隠され続けるように、前記スキャナの走行に連携して前記反射板を移動させるように構成され、
前記スキャナを走行させるとき、前記映像信号発生部からの信号を受けて、前記表示パネルが所定の色又は/及び輝度で発光するように構成される、電子黒板。
【請求項4】
前記反射板の材質は半透光性である、請求項3に記載の電子黒板。
【請求項5】
前記所定の色は、前記表示パネルが発光可能な白系統の色である、請求項1または請求項4に記載の電子黒板。
【請求項6】
前記反射板は、前記スキャナを走行させるための駆動部から連結具を介して力を受ける、請求項3から請求項5のいずれかに記載の電子黒板。
【請求項7】
前記連結具は、前記スキャナを走行させるための駆動部に連結される第一の部材と、前記反射板に連結される第二の部材と、前記第一の部材と前記第二の部材とを接続する弾性部材とを備え、
前記弾性部材は、前記第一の部材に伝えられる前記スキャナの走行方向の力を前記第二の部材に伝えるように配設され、
前記弾性部材の弾性力は、前記反射板が走行する場合において該反射板を移動させる前記駆動部の推進力よりは強く且つ、前記反射板が走行を停止する場合において前記反射板を移動させる前記駆動部の推進力よりは弱い、請求項6に記載の電子黒板。
【請求項8】
前記弾性部材は定荷重ばねを有する、請求項7に記載の電子黒板。
【請求項9】
前記映像信号発生部は、前記透明部材上に描かれた線図の色に応じて前記表示パネルの輝度を変更するように構成される、請求項1から請求項8のいずれかに記載の電子黒板。
【請求項10】
前記スキャナが前記透明部材上を一往復半し、前記スキャナが走行方向を変えるたびに前記表示パネルの発光色を変更するように構成される、請求項1から請求項9のいずれかに記載の電子黒板。
【請求項11】
前記スキャナにより読みとられた画像情報と、前記表示パネルに表示する画像情報とを合成する手段をさらに備える請求項1から請求項10のいずれかに記載の電子黒板。
【請求項12】
表示パネルと、
前記表示パネルの少なくとも前面に配設された透明部材と、
前記透明部材上に描かれた線図を走査するスキャナと、
制御部と、
を有する電子黒板のためのプログラムであって、前記制御部を、前記スキャナによる読み取り開始に関する信号を受け取ることに応答して前記表示パネルを所定の色又は/及び輝度で発光させるための信号を出力するように動作させる、プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムを格納するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項14】
表示パネルと、
前記表示パネルの少なくとも前面に配設された透明部材と、
前記透明部材上に描かれた線図を走査するスキャナと、
を備える電子黒板であって、さらに、請求項12に記載のプログラムを格納する記憶部と、該プログラムによって動作せしめられる制御部とを備える、電子黒板。
【請求項15】
表示パネルと、
前記表示パネルの少なくとも前面に配設された透明部材と、
前記透明部材上に描かれた線図を走査するスキャナと、
を備える電子黒板の制御方法であって、前記スキャナによる読み取り開始に関する信号を受け取ることに応答して、前記表示パネルを所定の色又は/及び輝度で発光させるための信号を出力させることを含む、電子黒板の制御方法。
【請求項16】
前記表示パネルと前記透明部材との間に、前記表示パネルの光から前記スキャナの読み取り面を隠すためのカバーを設け、
前記スキャナを走行させるとき、前記表示パネルの光から前記スキャナの読み取り面が隠され続けるように、前記スキャナの走行に連携して前記カバーを移動させることを含む、請求項15に記載の電子黒板の制御方法。
【請求項17】
表示パネルと、
前記表示パネルの少なくとも前面に配設された透明部材と、
前記透明部材上に描かれた線図を走査するスキャナと、
前記表示パネルと前記透明部材との間に設けられるカバーであって、前記表示パネルの光から前記スキャナの読み取り面を隠すためのカバーと、
を備え、前記スキャナを走行させるとき、前記表示パネルの光から前記スキャナの読み取り面が隠され続けるように、前記スキャナの走行に連携して前記カバーを移動させるように構成される、電子黒板。
【請求項18】
前記カバーの材質は半透光性である、請求項17に記載の電子黒板。
【請求項19】
前記カバーは、前記スキャナを走行させるための駆動部から連結具を介して力を受ける、請求項17または請求項18に記載の電子黒板。
【請求項20】
前記連結具は、前記スキャナを走行させるための駆動部に連結される第一の部材と、前記カバーに連結される第二の部材と、前記第一の部材と前記第二の部材とを接続する弾性部材とを備え、
前記弾性部材は、前記第一の部材に伝えられる前記スキャナの走行方向の力を前記第二の部材に伝えるように配設され、
前記弾性部材の弾性力は、前記カバーが走行する場合において該カバーを移動させる前記駆動部の推進力よりは強く且つ、前記カバーが走行を停止する場合において該カバーを移動させる前記駆動部の推進力よりは弱い、請求項19に記載の電子黒板。
【請求項21】
前記弾性部材は定荷重ばねを有する、請求項20に記載の電子黒板。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a−b】
image rotate

【図4c】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8a−b】
image rotate

【図8c−d】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−111073(P2010−111073A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286960(P2008−286960)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000153421)株式会社日立アドバンストシステムズ (9)
【Fターム(参考)】