説明

表示体、粘着ラベル、ラベル付き物品及び真偽判定装置

【課題】貼着したり紙などに漉き込んでも問題のない薄さであり、紫外光による回折光のみを射出させることで、より高い偽造防止効果を実現し得る表示体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の表示体10は、一次元的又は二次元的に配列した複数の凹部又は凸部が150nm乃至200nmの中心間距離で設けられている界面部を一方の主面が含んだ光透過層と、前記界面部の少なくとも一部を被覆した無機薄膜層とを具備し、紫外光を回折することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば偽造防止効果を提供する表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証物品並びに商品券及び株券などの有価証券には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、従来から、そのような物品には、その偽造を抑止すべく、偽造又は模造が困難であると共に、偽造品や模造品との区別が容易なラベルが貼り付けられている。そのようなラベルは、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
また、近年では、認証物品及び有価証券以外の物品についても、偽造品の流通が問題視されている。そのため、このような物品に、認証物品及び有価証券に関して上述した偽造防止技術を適用する機会が増えている。
【0004】
ところで、偽造防止用のラベルとして使用する表示体の多くには、偽造防止技術が適用されていることが観察者によって比較的悟られ易いという問題がある。偽造防止技術の適用が悟られると、表示体が不正に複製又は変造される可能性が高くなる。即ち、優れた偽造防止効果を達成できない。なお、ここでは、偽造又は模造が困難であること、偽造品や模造品との区別が容易であることを偽造防止効果と呼ぶ。
【0005】
このような問題を解決するために、赤外光あるいは紫外光を回折するピッチの干渉縞が記録されたホログラムが提案されている。(非特許文献1)
しかしながら、非特許文献1で提案されているものはリップマンホログラムであるため、表示体自体が厚くなってしまう。そしてこれを粘着ラベルにした場合、厚みによってその存在を認識することができ、偽造防止技術が施されていることが悟られやすい。またその厚みのために、紙などに漉き込むことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−91699号公報
【特許文献2】特開平06−110382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、貼着したり紙などに漉き込んでも問題のない薄さであり、紫外光による回折光のみを射出させることで、より高い偽造防止効果を実現し得る表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の発明は、一次元的又は二次元的に配列した複数の凹部又は凸部が150nm乃至200nmの中心間距離で設けられている界面部を一方の主面が含んだ光透過層と、前記光透過層の界面部の少なくとも一部を被覆した無機薄膜層とを具備する表示体であって、前記一次元的又は二次元的に配列した複数の凹部又は凸部が紫外光を回折することを特徴とする表示体である。
【0009】
本発明の請求項2に記載の発明は、前記無機薄膜層が金属からなることを特徴とする請求項1に記載の表示体である。
【0010】
本発明の請求項3に記載の発明は、前記無機薄膜層が金属化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の表示体である。
【0011】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示体と、前記表示体上に設けられた粘着層とを具備したことを特徴とする粘着ラベルである。
【0012】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示体と、前記表示体を剥離可能に支持した支持体層とを具備したことを特徴とする転写箔である。
【0013】
本発明の請求項6に記載の発明は、 請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示体とこれを支持した物品とを具備したことを特徴とするラベル付き物品である。
【0014】
本発明の請求項7に記載の発明は、判別対象物を真正品と非真正品との間で判別するための判別装置であって、紫外光を放射する光源と、検出器と、前記判別対象物の判別情報を出力する出力部とを具備し、前記判別対象物から射出される紫外光の回折光の像を観察できるようにした認証装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、可視光を用いる従来の表示体と比較してより高い偽造防止効果を実現することが可能となった。また、リップマンホログラムと比較して厚みの薄い表示体を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図。
【図3】図1及び図2に示す表示体の凹凸構造領域に採用可能な構造の一例を拡大して示す斜視図。
【図4】図1及び図2に示す光学素子の凹凸構造領域に採用可能な構造の他の例を拡大して示す斜視図。
【図5】凹凸構造領域が回折光を射出する様子を概略的に示す図。
【図6】本発明の一態様に係る粘着ラベルを概略的に示す断面図。
【図7】ラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【図8】図7に示す表示体のIII−III線に沿った断面図。
【図9】ラベル付き物品のほかの一例を概略的に示す平面図。
【図10】真正さが不明な物品を真正品と非真正品との間で判別するための判別装置の一例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明の一態様に関わる表示体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図である。なお、図1に記載の表示体10では光透過層11側から観察した様子を示している
【0019】
この表示体10は、光透過層11と、無機薄膜層13との積層体を含んでいる。図2に示す例では、光透過層11の一方の主面には、凹凸構造領域12aと非凹凸構造領域12bとを含んでいる。後述するように、凹凸構造領域12aは、複数の凹部又は凸部が設けられている。これら複数の凹部又は凸部は、紫外光が照射されると、特定方向に回折光を射出する。また、非構造領域12bは、平坦面である。
さらに、凹凸構造領域12aを備える光透過層11の主面に、凹凸構造領域12aの少なくとも一部を被覆するように無機薄膜層13が形成されている。以下、光透過層11側を「前面」、無機薄膜層13側を「背面」と記す。
【0020】
次に、凹凸構造領域12aに採用可能な構造について説明する。先に述べた通り、凹凸構造領域12aには、複数の凹部または凸部が設けられている。
なお、先に述べた通り、非凹凸構造領域12bは、平坦面である。また、非凹凸構造領域12bは、省略することができる。
【0021】
また、用語「無機薄膜層」は、金属もしくは金属化合物からなる層を意味するものとする。表示体10の凹凸構造領域に色をつけたい場合は無機薄膜層として金属を用い、表示体10を透明なまま使用したい場合は無機薄膜層として金属化合物を使用する。
【0022】
図3は、図1及び図2に示す表示体10の凹凸構造領域12aに採用可能な構造の一例を拡大して示す斜視図である。図3に示す例では、凹部または凸部RPは、二次元的に配列している。
凹凸構造領域12aに配列される凹部または凸部RPは、中心間距離が150nm乃至200nmの範囲内で規則的に配列されている。そのため、後に詳しく説明するように、凹凸構造領域12aは、紫外光を照射した際に特定の方向及び角度にのみ回折光を射出することができる。
【0023】
複数の凹部または凸部RPの配列は、例えば、正方格子、矩形格子または三角格子をなしている。これら凹部または凸部RPの配列を制御することにより、凹凸構造領域12aから射出される回折光の射出角度及び射出方向などを任意に調整することができる。図3には、一例として、複数の凸部が互いに直行するX方向及びY方向に二次元的に配列して正方格子をなしている場合を描いている。
【0024】
また、凹部または凸部RPの各々は、種々の形状でありうる。
凹部または凸部RPの各々は、角錐、円錐および半紡錘形状などの順テーパ形状を有していることが好ましい。順テーパ形状を有していることにより、凹凸構造領域12aを法線方向から観察した場合に、凹凸構造領域12aの正反射光の反射率をより小さくすることができる。
【0025】
図4は、図1及び図2に示す表示体の凹凸構造領域12aに採用可能な構造のほかの例を拡大して示す斜視図である。図4に示す例では、凹部又は凸部RPは、複数の溝が一次元的に配列したレリーフ型回折格子である。
この場合には、これら複数の溝の格子定数、方位、及び深さなどを制御することにより、凹凸構造領域12aから射出される回折光の射出角及び射出方向などを任意に調整することができる。
【0026】
凹部または凸部RPは、150nm乃至200nmの中心間距離で配置されている。この場合、後述するように、凹凸構造領域12aから射出される回折光を検出することによる真正品と非真正品との判別が比較的容易となる。
【0027】
また、凹部または凸部RPの深さ又は高さは、光散乱を抑制するため、ほぼ一定とする。凹部または凸部RPの深さ又は高さは、典型的には50nm以上とする。
【0028】
凹部または凸部RPは、例えば、微細な凸部又は凹部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。例えば、凹部又は凸部RPは、基材上に設けられた熱可塑性樹脂層に、凸部または凹部が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当てる方法、すなわち、熱エンボス加工法により得られる。或いは、凹部または凸部RPは、基材上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら基材側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成することも可能である。
【0029】
この原版は、例えば、電子線描画装置を用いて製造する。なお、通常は、原版の凹凸構造を転写して反転版を製造し、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を製造する。そして、必要に応じ、複製版を原版として用いて反転版の製造と、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を更に製造する。実際の製造では、通常、このようにして得られる複製版を使用する。
【0030】
上記のような方法で凹凸構造を得ることで、表示体10は典型的には50μm以下の薄さにすることが可能である。
【0031】
光透過層11の材料としては、例えば透明材料を使用することができる。
例えば、先の熱可塑性樹脂又は紫外線硬化樹脂として、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル/スチレン共重合体系樹脂を使用することができる。或いは、珪酸塩を含んだ無機材料を使用してもよい
【0032】
無機薄膜層13は、光透過層11の凹構造及び/または凸構造が設けられた主面の全体又は一部を被覆している。無機薄膜層13は金属から成る、もしくは、金属化合物からなる層である。
【0033】
金属からなる無機薄膜層13としては、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、鉄、クロム、亜鉛及びそれらの合金などの金属材料からなる層を使用することができる。なお、上記括弧内の数字は各金属材料の屈折率を示すものである。
【0034】
金属からなる無機薄膜層13は、例えば気相堆積法により形成することができる。例えば、蒸着又はスパッタリングにより形成することができる。
なお、反射層13を凹凸構造領域12aの一部のみに被覆させることにより、全体に被覆させた場合とは異なる意匠性を付与することができる。
【0035】
金属化合物からなる無機薄膜層13としては、例えば、合金、酸化チタン及びアルミナなどの金属酸化物、硫化亜鉛などの金属硫化物、又は金属窒化物を使用することができる。
【0036】
金属化合物からなる無機薄膜層13は、例えば、上記無機物の蒸着により形成することができる。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法又はイオンブレーティング法を使用することができる。
【0037】
表示体10は、無機薄膜層13を金属からなる層として、その全面を白色光で照明した場合、例えば、以下に説明する画像を表示する。
【0038】
凹凸構造領域12aにおいては、光透過層11と金属からなる無機薄膜層13の界面は二次元的に配列した微細な凹部または凸部RPを含んでいる。そのため、凹凸構造領域12aに入射した光の多くは、光透過層11と金属からなる無機薄膜層13の界面で複数回反射される。その結果、入射光の多くは吸収され、凹凸構造領域12aでは、表示面に垂直な方向に反射光を射出しないか又は弱い反射光を射出する。
【0039】
そして、凹部または凸部RPの中心間距離は、150nm乃至200nmの範囲内であるため、表示面に垂直な方向に回折光が射出されることはない。したがって、凹凸構造領域12aでは、着色して表示される。非凹凸構造領域12bでは、光透過層11と金属からなる無機薄膜層13の界面は平坦である。それゆえ、正反射光を観察可能な場合には、非凹凸構造領域12bは光源色である白色を表示する。
【0040】
したがって、表示面に垂直な方向から観察した場合、表示体10は、無機薄膜層13を金属からなる層とした場合、凹凸構造領域12aが着色インキを用いて形成した印刷パターンのごとく見え、非凹凸構造領域12bが白色に見える。
【0041】
また、表示体10は、無機薄膜層13を金属化合物からなる層として、その全面を白色光で照明した場合、透明又はほぼ透明である。
【0042】
凹凸構造領域12aにおいては、光透過層11と金属化合物からなる無機薄膜層13の界面は、150nm乃至200nmの中心間距離で規則的に配列されている。そのため、凹凸構造領域12aは、紫外光を照射した時にのみ回折光を射出し、それ以外では回折光を射出しない。したがって、上記の回折光が検出されない条件下では、凹凸構造領域12aは、光透過層11と金属化合物からなる無機薄膜層13の界面が平坦面である非凹凸構造領域とほぼ同様に観察される。すなわち、この条件下では、凹凸構造領域12aと非凹凸構造領域12bを互いから区別することは困難である。よって、この条件下では、表示体10は、透明な保護層等の偽造防止以外の目的で設けられていること、すなわち、表示体10に偽造防止技術が適用されていることは悟られ難い。
【0043】
なお、表示体10は、印刷層を更に含んでいても良い。無機薄膜層13が金属からなる層である場合、当該印刷層は、例えば、光透過層11の前面側に形成する。無機薄膜層13が金属化合物からなる層である場合、当該印刷層は、例えば、光透過層11の前面側、光透過層11と金属化合物からなる無機薄膜層13との間、又は金属化合物からなる無機薄膜層13の背面側に形成する。
【0044】
これらの場合、表示体10は、上述した回折光が検出されない条件下では、通常の印刷物と同様に見える。したがって、表示体10に印刷層を設けることにより、表示体10に偽造防止技術が適用されていることを、より悟られ難くすることが可能となる。
【0045】
また、表示体10は、透明のホログラム層を更に含んでいても良い。無機薄膜層13が金属からなる層で或る場合、当該透明ホログラム層は、例えば、光透過層11の前面側に形成する。無機薄膜層13が金属化合物からなる層で或る場合、当該透明ホログラム層は、例えば、光透過層11の前面側、光透過層11と金属化合物からなる無機薄膜層13との間、又は金属化合物からなる無機薄膜層の背面側に形成する。
【0046】
また、表示体10は、蒸着が施されたホログラム層を更に含んでいても良い。この場合、無機薄膜層13は金属化合物からなる層であり、当該蒸着ホログラム層は、金属化合物からなる無機薄膜層の背面側に形成する。
【0047】
これらの場合、表示体10は、その前面を白色光で照射した条件下では、ある特定の方向及び角度でホログラムの回折光を射出するため、通常のホログラムと同様に見える。したがって、表示体10にホログラム層を設けることにより、表示体10にホログラム以外の偽造防止技術が適用されていることを悟られ難くすることが可能となる。
【0048】
次に、凹凸構造領域12aに起因した表示体10の視覚効果について、さらに説明する。
【0049】
図5は、凹凸構造領域12aが回折光を射出する様子を概略的に示す図である。図5において、L1は照明光を示し、L2は正反射光又は0次回折光を示し、L3は一次回折光を示している。
【0050】
凹凸構造領域12aでは、凹部又は凸部RPが規則的に配列している。そのため、凹凸構造領域12aを照射すると、入射光である照明光の進行方向に対して特定の方向に強い回折光が射出される。
【0051】
もっとも代表的な回折光は、一次回折光である。2次以上の高次の回折光は、一次回折光と比較して強度が著しく小さい。そのため、高次の回折光が検出に与える影響は、無視できる程度に軽微である。
【0052】
一次回折光の射出角βは、凹凸構造領域12aの法線Nに平行な面内で光が進行する場合、数式1から算出することができる。
この数式1において、dは凹部又は凸部RPの中心間距離を表し、λは入射光及び回折光の波長を表している。また、αは、0次回折光、すなわち透過光または正反射光の射出角を表している。
【数1】

【0053】
角度α及びβは、法線Nから時計周りの方向を正方向として定める。そして、法線Nを基準として−90°乃至0°の角度範囲を「負の角度範囲」と呼び、0゜乃至90゜の角
度範囲を「正の角度範囲」と呼ぶ。また、射出角αは、正の角度範囲に属するとする。即
ち、0゜<α<90゜であるとする。
【0054】
数式1から明らかなように、1次回折光の射出角βは、波長λに応じて変化する。また、数式から分かるように、中心間距離dを入射光の波長λより小さくすると、任意の入射角−αに対して、射出角βを負の値とすることができる。すなわちこの場合、入射光L1が負の角度範囲に属するときには、一次回折光L3も負の角度範囲に属する。
【0055】
本発明の表示体10は、紫外光の下で検出するものであり、「紫外光」とは、波長約300nmから380nmの波長を有する近紫外光を指すものとする。
【0056】
上で規定する「紫外光」について、例えば波長300nmにピークを持つ紫外光で表示体10を照射した場合、凹凸構造領域12aの凹部又は凸部の中心間距離が153nm以上とすることで回折光が射出される。これは数式1から明らかである。
また、上記「紫外光」が波長380nmにピークを持つ紫外光である場合、表示体10の凹凸構造領域12aの凹部又は凸部の中心間距離が203nm以下であれば、表示体10に可視光域の光が入射しても回折光が射出されることはなく、紫外光に対してのみ回折光が射出される。それゆえ、表示体10の凹凸構造領域12aの凹部又は凸部の中心間距離は150nm乃至200nmの範囲内とする。
【0057】
このように、表示体10の凹凸構造領域12aは、凹部又は凸部の中心間距離が150nm乃至200nmの範囲内にあるため、法線方向から観察した際、無機薄膜層が金属からなる層である場合は、着色インキを用いて形成した印刷パターンの如く見え、無機薄膜層が金属化合物からなる層である場合は、透明またはほぼ透明に見える。そして、或る斜め方向から紫外線を照射した場合には、回折光が検出される。
【0058】
図6は、本発明の一態様に係る粘着ラベルを概略的に示す断面図である。
粘着ラベル20は、表示体10と、表示体10上に設けられた接着層21とを備えている。
図6には、一例として図2に示す表示体100の背面上(無機薄膜層13面上)に接着層21が設けられている場合を示している。
【0059】
接着層21を設けると、無機薄膜層13の表面が露出しないようにできる。そのため、表示体10を粘着ラベル20の一部として使用することにより、先の界面の凹部又は凸部の複製をより一層困難とすることができる。
なお、表示体10において、光透過層11側を背面側とし且つ無機薄膜層13側を前面側とする場合、接着層21は、光透過層11上に形成する。
【0060】
この粘着ラベル20は、例えば、真正さが確認されるべき物品に貼り付けるか、或いは、そのような物品に取り付けられるべきタグの基材などの他の物品に貼り付ける。これにより、当該物品に偽造防止効果を付与することができる。
【0061】
図7は、ラベル付き物品の一例として、印刷物30の平面図を描いている。図8は、図7に示す表示体10の断面図である。
この印刷物30は、ID(identification)カードであって、基材31を含んでいる。基材31は、例えば、プラスチックからなる。基材31上には、印刷層40が形成されている。基材31の印刷層40が形成された面には、上述した表示体10が例えば粘着層を介して固定されている。表示体10は、例えば、粘着ステッカとして又は転写箔として準備しておき、これを印刷層40に貼り付けることにより、基材31に固定する。
【0062】
この印刷物30は、上述した表示体10を含んでいる。表示体10は、本発明の一態様としてホログラム層を含んでいる。それゆえ、この印刷物30を白色光で照射した場合、ホログラムからの回折光のみが視認される。また、この印刷物30を紫外光で照射した場合、凹凸構造領域12からの回折光によって秘匿の情報が検出される。
【0063】
なお、図7には、表示体10を含んだ印刷物としてIDカードを例示しているが、表示体10を含んだ印刷物は、これに限られない。例えば、表示体10を含んだ印刷物は、磁気カード、無線カード及びIC(integrated circuit)カードなどの他のカードであっても良い。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、図9に示すような商品券及び株券などの有価証券であってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるタグであってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部であってもよい。
【0064】
また、図7に示す印刷物30では、表示体10を基材31に貼り付けているが、表示体10は、他の方法で基材に支持させることができる。例えば、基材として紙を使用した場合、表示体10を紙に漉き込み、表示体10に対応した位置で紙を開口させてもよい。或いは、基材として光透過性の材料を使用する場合、その内部に表示体10を埋め込んでもよく、基材の裏面、すなわち表示面とは反対側の面に表示体10を固定してもよい。
【0065】
表示体10は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体10は、玩具、学習教材又は装飾品等としても利用することができる。
【0066】
図10は、真正さが不明な物品を真正品と非真正品との間で判別するための判別装置の一例を示す概略図である。
【0067】
この判別装置40は、図示しない支持台と、紫外光源42と、遮光部43と、検出器44と、出力部45とを含んでいる。なお、図10には、真正さを判別すべき物品として、光学素子10を含んだラベル付き物品41を描いている。
【0068】
支持台は、ラベル付き物品41を所定の位置に固定する役割を担っている。ラベル付き物品41の表示体10の位置と紫外光源42が放射する紫外光の照射位置との位置あわせを行なうための機構を更に備えていてもよい。この場合、真正品と非真正品との判別をより高い精度で行なうことができる。
【0069】
紫外光源51は、ラベル付き物品41のうち、真正品であれば表示体10が設けられているべき部分に紫外光を放射する役割を担っている。紫外光源41としては、例えば、水銀ランプやメタルハライドランプのような紫外線照射装置や、ブラックライトを使用することができる。
【0070】
検出器44は、表示体10から射出された回折光を検出する役割を担っている。すなわち、この検出器44は、紫外光源42からラベル付き物品41に対して紫外光を照射した際に、回折光が検出されたか否かの情報を出力部45に出力する役割を担っている。
【0071】
検出器44としては、例えば、高感度冷却CCDカメラを使用することができる。また、画素に蛍光材を塗布したCCDカメラを使用してもよい。
【0072】
遮光部43は、紫外光源42と検出器44との間における光の漏れを遮る役割を担っている。遮光部43を設けることにより、検出器44におけるノイズが減少し、ラベル付き物品41の真正さの判別精度が向上する。なお、遮光部43は省略してもよい。
【0073】
出力部45は、検出器44の出力に応じた判別情報を出力する役割を担っている。出力部45は、例えば、検出器44が表示体10からの回折光を検出しなかった場合に、ラベル付き物品41が非真正品であることを示す判別情報を出力する。或いは、検出器44が表示体10からの回折光を検出した場合に、ラベル付き物品41が真正品であることを示す判別情報を出力する。この判別情報は、例えば、視覚的に、聴覚的に、又は振動等の触覚により、ユーザに伝達される。

【実施例】
【0074】
<例1:表示体D1の製造>
以下のようにして、表示体10を製造した。
まず、厚さが25μmであるポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム)上に、紫外線硬化樹脂を塗布した。
次いで、反面に複数の凸部が設けられた原版を先の塗膜に押し当てながら、PETフィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させた。
その後、原版を取り除くことにより、複数の凹部構造のついた光透過層11を得た。ここでは、凹部の深さは凹部の深さは400nmとし、凹部の中心間距離は200nmとした。
次に、光透過層11の凹部構造側の主面に、真空蒸着法によりアルミニウムを堆積させて、無機薄膜層13を形成した。この無機薄膜層の厚みは、約40nmとした。
【0075】
以上のようにして、表示体10を得た。以下、この表示体を「表示体D1」とする。
【0076】
<例2:表示体D2の製造>
凹部の中心間距離を200nmとする代わりに、当該距離を160nmとしたこと以外は表示体D1について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D2」と呼ぶ
【0077】
<例3:表示体D3の製造>
凹部の中心間距離を200nmとする代わりに、当該距離を240nmとしたこと以外は表示体D1について述べたのと同様にして、表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D3」と呼ぶ
【0078】
以上のようにして製造した表示体D1乃至D3について、法線Nに対して60度の角度で紫外光源(365nmにピークをもつもの)及び白色光源を照射し、回折光の検出を行なった。この結果を表1に示す。
【表1】

【0079】
表1に示すように、表示体D1に関しては紫外光の回折光は法線Nに対して75度付近の角度で検出されたが、白色光源の照射による回折光は視認されなかった。また、D2に関しては、紫外光の回折光は検出されず、また、白色光源の照射による回折光も視認されなかった。さらに、D3に関しては、紫外光の回折光は法線Nに対して40度の角度で検出されたが、白色光源の照射による回折光も視認された。
【符号の説明】
【0080】
10…表示体、11…光透過層、12a…凹凸構造領域、12b…非凹凸構造領域、13…無機薄膜層、
L1…照明光、L2…正反射光又は0次回折光、L3…1次回折光、N…法線
20…粘着ラベル、21…接着層、22…ホログラム層、22a…ホログラム領域
30…印刷物、31…基材、32…印刷層、33…磁気記録層
40…判別装置、41…ラベル付き物品、42…紫外光源、43…遮光部、44…検出器、45…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次元的又は二次元的に配列した複数の凹部又は凸部が150nm乃至200nmの中心間距離で設けられている界面部を一方の主面が含んだ光透過層と、前記光透過層の界面部の少なくとも一部を被覆した無機薄膜層とを具備する表示体であって、前記一次元的又は二次元的に配列した複数の凹部又は凸部が紫外光を回折することを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記無機薄膜層は、金属からなることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記無機薄膜層は、金属化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の表示体
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示体と、前記表示体上に設けられた粘着層とを具備したことを特徴とする粘着ラベル。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示体と、前記表示体を剥離可能に支持した支持体層とを具備したことを特徴とする転写箔。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示体と、これを支持した物品とを具備したことを特徴とするラベル付き物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−286579(P2010−286579A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138959(P2009−138959)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】