表示体及び表示体付き物品
【課題】より高い偽造防止効果を実現し得る表示体を提供する。
【解決手段】本発明の表示体10は、光透過層の一方の主面に、二次元的に配列した複数の凹部又は凸部又はその両方を含む凹凸構造領域を備え、
前記一方の主面に支持され、前記凹凸構造領域の少なくとも一部を被覆する反射層と、前記光透過層の前記凹凸構造領域と反対の面及び前記反射層の上の何れか一方に形成された規則的に配列した回折光屈折層と、を具備しており、前記複数の凹部又は凸部又はその両方の中心間距離が200nm乃至500nmの範囲内にあり、前記回折光屈折層のレンズ成形面は前記光透過層の面に背を向けた状態で具備されていることを特徴とする。
【解決手段】本発明の表示体10は、光透過層の一方の主面に、二次元的に配列した複数の凹部又は凸部又はその両方を含む凹凸構造領域を備え、
前記一方の主面に支持され、前記凹凸構造領域の少なくとも一部を被覆する反射層と、前記光透過層の前記凹凸構造領域と反対の面及び前記反射層の上の何れか一方に形成された規則的に配列した回折光屈折層と、を具備しており、前記複数の凹部又は凸部又はその両方の中心間距離が200nm乃至500nmの範囲内にあり、前記回折光屈折層のレンズ成形面は前記光透過層の面に背を向けた状態で具備されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止性能を付与した表示体及び表体付き物品の技術に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証物品並びに商品券及び株券などの有価証券には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、従来から、そのような物品には、その偽造を抑止すべく、偽造又は模造が困難であると共に偽造品や模造品との区別が容易なラベルが貼り付けられている。そのようなラベルは、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
また、近年では、認証物品及び有価証券以外の物品についても、偽造品の流通が問題視されている。そのため、このような物品に、認証物品及び有価証券に関して上述した偽造防止技術を適用する機会が増えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−91699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、偽造防止用のラベルとして使用する光学素子の多くには、偽造防止技術が適用されていることが観察者によって比較的悟られ易いという問題がある。偽造防止技術の適用が悟られると、光学素子が不正に複製又は変造される可能性が高くなる。即ち、優れた偽造防止効果を達成できない。
【0006】
そこで、本発明は、より優れた偽造防止効果を実現する表示体、及び表示体付き物品を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における第1の発明は、
回折光を射出する表示体において、
一方の主面に、入射光を特定の方向に回折する凹部又は凸部又はその両方を、互いに交差する第1方向及び第2方向に複数配列した凹凸構造領域を複数備えた光透過層と、
前記凹凸構造層の表面の少なくとも一部を被覆する反射層と、
前記光透過層の他方の主面又は前記反射層の表面の何れか一方に、前記光透過層と屈折率が異なる回折光屈折部を、互いに交差する第1及び第2方向に複数配列した回折光屈折領域を複数備えた回折光屈折層と、
を具備することを特徴とする表示体
である。
また、第2の発明は、
前記凹凸構造領域が、前記光透過層の一方の主面に複数配列されており、少なくとも1つの凹凸構造領域における複数の凹部又は凸部が、他の凹凸構造領域における複数の凹部又は凸部と比較して、少なくとも形状又は深さ又は高さ又は中心間距離又は配置パターンのうち少なくとも一つが異なることを特徴とする請求項1に記載の表示体
である。
また、第3の発明は、
前記回折光屈折領域が、前記光透過層の他方の主面又は前記反射層の表面の何れか一方に、複数配列されており、少なくとも一つの回折光屈折領域における複数の回折光屈折部が、他の回折光屈折領域における複数の回折光屈折部と比較して、少なくとも形状又は高さ又は中心間距離又は配置パターンのうち少なくとも一つが異なることを特徴とする請求項1に記載の表示体
である。
また、第4の発明は、
前記凹凸構造領域が、前記光透過層の一方の主面に複数配列されており、少なくとも1つの凹凸構造領域における複数の凹部又は凸部が、他の凹凸構造領域における複数の凹部又は凸部と比較して、少なくとも形状又は深さ又は高さ又は中心間距離又は配置パターンのうち少なくとも一つが異なり、
かつ、前記回折光屈折領域が、前記光透過層の他方の主面又は前記反射層の表面の何れか一方に、複数配列されており、少なくとも一つの回折光屈折領域における複数の回折光屈折部が、他の回折光屈折領域における複数の回折光屈折部と比較して、少なくとも形状又は高さ又は中心間距離又は配置パターンのうち少なくとも一つが異なることを特徴とする請求項1に記載の表示体
である。
また、第5の発明は、
前記表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合、前記回折光屈折領域単位で射出された回折光の方向が異なることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表示体
である。
また、第6の発明は、
前記凹凸構造領域に含まれ、隣接する凹部又は凸部又はその両方の中心間距離が200nm乃至500nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表示体
である。
また、第7の発明は、
前記回折光屈折部が、三角プリズム構造又は四角錐構造又はレンチキュラーレンズ構造のうち少なくとも一つから選ばれた構造を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の表示体
である。
また、第8の発明は、
前記回折光屈折層の少なくとも一部に、平坦領域を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の表示体
である。
また、第9の発明は、
前記平坦領域が、前記回折光屈折領域の回折光屈折部をエネルギービーム照射によって少なくとも部分的に破壊して形成されることを特徴とする請求項8に記載の表示体
である。
また、第10の発明は、
請求項1乃至9のいずれかに記載の表示を体物品に支持したことを特徴とする表示体付き物品
である。
【発明の効果】
【0008】
本願の第1の発明によると、本発明の表示体は、表示体に光が入射し、光透過層の凹凸構造領域で回折光が斜出され、さらに光透過層と屈折率が異なる回折光屈折層で回折光が屈折させて観察光が射出される。その観察光を観察者は確認することができる。
本発明では、凹凸構造領域が持つ回折光の射出方向と回折光屈折領域が持つ回折光の屈折方向を組み合わせることによって、表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合に、観察光が確認できる方向を回折光屈折領域単位で制御することが可能であるし、またある方向からは観察光が射出されない方向を作成することも可能である。
観察光が確認できる方向から確認する場合、表示体に直交する法線方向から、表示体を傾けて観察する角度を変化させると、角度によって観察者が確認できる回折光の射出量が変化する。例えば表示体の凹凸構造領域及び回折光屈折層が積層された箇所を観察すると黒色に表示されるが、観察角度を変えていくと、黒色に表示されていた箇所が突然光って見えるような特殊な視覚効果をもたせることができる。
たとえば、光透過層の凹凸構造領域表面に反射層を積層させたのみの構成は一般的であり、この場合は、表示体をほぼ垂直の深い角度に傾けなければ、上述の視覚効果を確認することができない。
しかしながら、上述の構成にさらに回折光屈折層を加えることによって、従来の構成よりも表示体を傾ける角度が小さくても上述の視覚効果を再現することが可能になるという効果を有する。
また、光透過層の凹凸構造領域表面に反射層を積層させた構成に、さらに回折光屈折層を加えて積層することによって、構造を複雑にすることもできる。
このように、構造を複雑にできるだけでなく、セキュリティ性を構造させることができるため、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
また、第2の発明によると、
光透過層の凹凸構造領域が持つ凹部又は凸部の形状や高さなどを凹凸構造領域単位で調整することによって、回折光の射出方向を凹凸構造領域単位で制御することが可能となる。
これにより、結果的には観察光の方向を制御することとなるため、表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合に、観察光が確認できる方向を回折光屈折領域単位で制御することが可能であるし、またある方向からは観察光が射出されない方向を作成することも可能である。
このように、構造を複雑にできるだけでなく、セキュリティ性を向上させることができるため、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
また、第3の発明によると、
回折光屈折領域が持つ回折光屈折部の形状や高さなどを凹凸構造領域単位で調整することによって、回折光の屈折方向を回折光屈折領域単位で制御することが可能となる。
これにより、結果的には観察光の方向を制御することとなるため、表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合に、観察光が確認できる方向を回折光屈折領域単位で制御することが可能であるし、またある方向からは観察光が射出されない方向を作成することも可能である。
このように、構造を複雑にできるだけでなく、セキュリティ性を向上させることができるため、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
また、第4の発明によると、
光透過層の凹凸構造領域が持つ凹部又は凸部の形状や高さなどを凹凸構造領域単位で調整し、かつ、回折光屈折領域が持つ回折光屈折部の形状や高さなどを回折光屈折領域単位で制御することによって、回折光の射出方向を凹凸構造領域単位で制御することが可能となるだけでなく、回折光の屈折方向を回折光屈折領域単位で制御することが可能となる。
つまり、凹凸構造領域と回折光屈折領域を組み合わせることによって観察光の方向を更に細かく制御することが可能となる。表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合に、観察光が確認できる方向を回折光屈折領域単位で制御することが可能であるし、またある方向からは観察光が射出されない方向を作成することも可能である。
このように、構造をさらに複雑にできるだけでなく、セキュリティ性を向上させることができるため、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
また、第5の発明によると、
凹凸構造領域と回折光屈折領域を積層して組み合わせると、回折光屈折領域単位で観察光の方向を制御することが可能となる。
また、第6の発明によると、
本発明の表示体を法線方向から観察した時に、可視光線領域のあらゆる照明条件下で回折光が法線方向に発生することを抑えることができるだけでなく、深い角度に深い角度の照明光に対して、同様に深い角度から回折光を観察することができる。また、それ以外の条件では、回折光が発生せず、一般的な観察条件下では回折光が認識されないという特殊な視覚効果を供えることができ、セキュリティ性を向上させることができるだけでなく、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
本発明の第7の発明によると、
表示体に直交する法線を回転軸として表示体を回転させ、特定の方向から表示体を観察した場合にのみ、凹凸構造領域から斜出された回折光を観察することができるため、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
本発明の第8の発明によると、
凹凸構造領域から射出された回折光が、直接観察者に確認される箇所と前記回折光が回折光屈折層を介して直接観察者に確認される箇所とを組み合わせることによって、表示体に直交する法線を回転軸として、回折光が射出される方向や角度を凹凸構造領域毎に変化させることが可能となるため、セキュリティ性を向上させることができるだけでなく、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
本発明の第9の発明によると、
任意のデザインを表示体に表現することができるため、セキュリティ性を向上させることができるだけでなく、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
本発明の第10の発明によると、
物品自体にセキュリティ性を向上させることができるだけでなく、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体付き物品とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す表示体のI−I線に沿った断面図。
【図3】本発明の一態様に関わる表示体の他の例を示す断面図。
【図4】本発明の表示体の凹凸構造領域に採用可能な構造の一例を拡大して示す斜視図。
【図5】本発明の表示体の凹凸構造領域に採用可能な構造の他の例を拡大して示す斜視図。
【図6】本発明の表示体の回折光屈折層構造の一例を拡大して示す斜視図。
【図7】本発明の表示体の回折光屈折層構造の他の一例を拡大して示す斜視図。
【図8】凹凸構造領域が回折光を射出する様子を概略的に示す図。
【図9】凹凸構造領域が回折光屈折層を通して回折光を射出する様子の一例を概略的に示す図。
【図10】凹凸構造領域が回折光屈折層を通して回折光を射出する様子の他の例を概略的に示す図。
【図11】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す概要図。
【図12】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す概要図。
【図13】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す概要図。
【図14】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す概要図。
【図15】表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の一態様に関わる表示体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す表示体のI−I線に沿った断面図である。なお、図1に記載の表示体10では回折光屈折層側から観察した様子を示している。
【0012】
この表示体10は、回折光屈折層14と、光透過層11と、反射層13との積層体を含んでいる。図2に示す例では、光透過層11の一方の主面には、凹凸構造領域12aと非凹凸構造領域12bとを含んでいる。後述するように、凹凸構造領域12aは、複数の凹部又は凸部が設けられている。これら複数の凹部又は凸部は、照明光が照射されると、特定方向に回折光を射出する。また、非凹凸構造領域12bは、平坦面である。
【0013】
さらに、凹凸構造領域12aを備える光透過層11の主面に、凹凸構造領域12aの少なくとも一部を被覆するように反射層13が形成されている。以下、光透過層11側を「前面」、反射層13側を「背面」と記す。
【0014】
図1では、凹凸構造領域12aには四角錐構造の凹凸部が複数配列されており、回折光屈折層14は三角プリズム構造がI−I線に対して直交した方向に複数配列された構造となっている。表示体の長辺方向から表示体を観察すると、凹凸構造領域12aの一部の側面と回折光屈折層14の一部の側面が表示体の長辺に対してほぼ同じ方向を向いている。
【0015】
図2において回折光屈折領域14aは、光透過層11の前面側に形成されている。表示体10に照明光が照射されると、回折光屈折領域14aによって屈折されて入射した光が複数の凹部又は凸部に回折され、再び回折光屈折領域14aによって屈折されて射出する。
【0016】
ここでは図示しないが、反射層13の表面に接着層21を設けることで、反射層13の表面が露出しないようにできる。接着層21に用いる材料は、公知の接着材料を用いればよく、さらに反射層13を保護して破損や汚れを防ぐことが可能となる。
【0017】
図3は、本発明の一態様に関わる表示体の他の例を示す断面図である。ここでは、回折光屈折領域14aは光透過層の背面側に形成され、照射光は回折光屈折領域14a側から照射される。反射層13と回折光屈折領域14aの間に、接着層21を設けることで、反射層13の表面が露出しないようにできる。
【0018】
図2と同様に、表示体10に照明光が照射されると、回折光屈折領域14aによって屈折されて入射した光が複数の凹部又は凸部に回折され、再び回折光屈折領域14aによって屈折されて射出する。
【0019】
なお、回折光屈折層14の表面に保護層を設けて破損や汚れを防止しても良い。用いる材料は公知の材料を用いれば良いが、入射光及び回折光を透過する材料を用いることが好ましい。厚みや積層方法については公知の技術を用い、目的や用途によって適宜選択すれば良い。
【0020】
次に、凹凸構造領域12aに採用可能な構造について説明する。先に述べた通り、凹凸構造領域12aには、複数の凹部または凸部が設けられている。
なお、先に述べた通り、非凹凸構造領域12bは、平坦面である。また、非凹凸構造領域12bは、省略することができる。
【0021】
図4は、図1乃至図3に示す表示体10の凹凸構造領域12aに採用可能な構造の一例を拡大して示す斜視図である。図4に示す例では、凹部または凸部RPは、二次元的に配列している。
凹凸構造領域12aに配列される凹部または凸部RPは、中心間距離が200nm乃至500nmの範囲内で規則的に配列されている。そのため、後に詳しく説明するように、凹凸構造領域12aは、照明光を照射した際に特定の方向及び角度にのみ回折光を射出することができる。
【0022】
複数の凹部または凸部RPの配列は、例えば、正方格子、矩形格子または三角格子をなしている。これら凹部または凸部RPの配列を制御することにより、凹凸構造領域12aから射出される回折光の射出角度及び射出方向などを任意に調整することができる。図4には、一例として、複数の凸部が互いに直行するX方向及びY方向に二次元的に配列して正方格子をなしている場合を描いている。
【0023】
また、凹部または凸部RPの各々は、種々の形状でありうる。凹部または凸部RPの各々は、角錐、円錐および半紡錘形状などの順テーパ形状を有していることが好ましい。順テーパ形状を有していることにより、凹凸構造領域12aを法線方向から観察した場合に、凹凸構造領域12aの正反射光の反射率をより小さくすることができる。
【0024】
図5は、本発明の表示体の凹凸構造領域12aに採用可能な構造の他の例を拡大して示す斜視図である。図5に示す例では、凹部又は凸部RPは、複数の溝が一次元的に配列したレリーフ型回折格子である。
【0025】
この場合には、これら複数の溝の格子定数、方位、及び深さなどを制御することにより、凹凸構造領域12aから射出される回折光の射出角及び射出方向などを任意に調整することができる。
【0026】
凹部または凸部RPは、200nm乃至500nmの中心間距離で配置されている。この場合、後述するように、凹凸構造領域12aから射出される回折光を検出することによる真正品と非真正品との判別が比較的容易となる。
【0027】
また、凹部または凸部RPの深さ又は高さは、光散乱を抑制するため、ほぼ一定とする。凹部または凸部PPの深さ又は高さは、典型的には100nm以上とする。
【0028】
凹部または凸部RPは、例えば、微細な凸部又は凹部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。例えば、凹部又は凸部RPは、基材上に設けられた熱可塑性樹脂層に、凸部または凹部が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当てる方法、すなわち、熱エンボス加工法により得られる。或いは、凹部または凸部RPは、基材上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら基材側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成することも可能である。
【0029】
この原版は、例えば、電子線描画装置を用いて製造する。なお、通常は、原版の凹凸構造を転写して反転版を製造し、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を製造する。そして、必要に応じ、複製版を原版として用いて反転版の製造と、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を更に製造する。実際の製造では、通常、このようにして得られる複製版を使用する。
【0030】
光透過層11の材料としては、例えば透明材料を使用することができる。例えば、先の熱可塑性樹脂又は紫外線硬化樹脂として、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル/スチレン共重合体系樹脂を使用することができる。或いは、珪酸塩を含んだ無機材料を使用してもよい
【0031】
反射層13は、光透過層11の凹構造及び/または凸構造が設けられた主面の全体又は一部を被覆している。
【0032】
反射層13としては、例えば、アルミニウム(1.48)、銀(0.17)、金(0.34)、白金(2.9)、鉄(2.35)、クロム(2.4)、亜鉛(2.4)及びそれらの合金などの金属材料からなる層を使用することができる。なお、上記括弧内の数字は各金属材料の屈折率を示すものである。
【0033】
反射層13は、例えば、気相堆積法により形成することができる。例えば、蒸着又はスパッタリングにより形成することができる。なお、反射層13を凹凸構造領域12aの一部のみに被覆させることにより、全体に被覆させた場合とは異なる意匠性を付与することができる。
【0034】
次に、回折光屈折領域14aに採用可能な構造について説明する。回折光屈折領域14aは、先に述べた通り、光透過層11の前面側に配置されており、光透過層11の主面の全体又は一部を被覆している。
【0035】
図6は、本発明の表示体10の回折光屈折部15aが複数配列された回折光屈折領域15に採用可能な構造の一例を拡大して示す斜視図である。図6に示す例では、回折光屈折部15aが三角プリズム構造を有しており、1次元的に規則的に配列されている。そのため、後に詳しく説明するように、回折光屈折領域15は、表示体10に照明光を照射した際に、凹凸構造領域12aによって回折された光を特定の方向及び角度に屈折させて射出することができる。
【0036】
図7は、本発明の表示体10の回折光屈折領域16に採用可能な構造の他の例を拡大して示す斜視図である。図7に示す例では、回折光屈折部16aが四角錐構造を有しており、2次元的に規則的に配列されている。この場合も、図6の場合と同様に、表示体10に照明光を照射した際に、回折光屈折領域16は、凹凸構造領域12aによって回折された光を任意の方向及び角度に屈折させて射出することができる。
【0037】
回折光屈折領域は、例えば、微細な凸部又は凹部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより回折光屈折部を複数形成することによって作成することができる。例えば、三角プリズム構造や四角錐構造は、基材上に設けられた熱可塑性樹脂層に、三角プリズム構造や逆四角錐構造が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当てる方法、すなわち、熱エンボス加工法により得られる。或いは、基材上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら基材側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成することも可能である。
【0038】
この原版は、例えば、金型切削装置を用いて製造する。必要に応じ、原版のレンズ構造を転写して反転版を製造し、この反転版のレンズ構造を転写して複製版を製造してもよい。
【0039】
回折光屈折層14の材料としては、例えば透明材料を使用することができる。例えば、先の熱可塑性樹脂又は紫外線硬化樹脂として、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル/スチレン共重合体系樹脂を使用することができる。或いは、珪酸塩を含んだ無機材料を使用してもよい
【0040】
なお、回折光屈折領域14aを光透過層11の一部のみに被覆させることにより、全体に被覆させた場合とは異なる意匠性を付与することができる。
【0041】
また、光透過層11の一部を平坦領域17とすることによって、回折光屈折領域14aと平坦領域を組み合わせて意匠性を付与することも可能である。
【0042】
平坦領域17は、上記の金型に回折光屈折領域に加え平坦領域を形成して作成しても良いし、上記の金型を用いて形成された回折光屈折領域の回折光屈折部をエネルギービーム照射によって少なくとも部分的に破壊して形成しても良い。
【0043】
なお、エネルギービームに用いられるビームの種類としては、レーザビームを用いても良い。例えば、CO2レーザ、LD励起YAGレーザ又はLD励起YVO4レーザを使用する。レーザは、パルスレーザ及び連続発振レーザの何れであってもよい。レーザビームとしては、例えば、波長が1062nmの赤外光線又は波長が532nmの可視光線を使用する。波長が1062nmのレーザビームを使用する場合には、この波長の光を吸収する赤外線吸収剤を回折光屈折層14に添加しておくと、レーザビームの照射による情報の書き込みを、効率的に且つ高速に行うことが可能となる。
【0044】
レーザビーム照射によって形成する代わりに、電子ビームなどの荷電粒子ビームを照射することによって形成してもよい。電子ビーム描画装置によると、レーザと比較して、より小さなビーム径を達成できる。従って、例えばセルの寸法が小さい場合、電子ビーム照射を利用すると、レーザビームを利用した場合と比較して、より高い画質を達成できる。
【0045】
また、回折光屈折部は、三角プリズム構造や四角錐構造、レンチキュラーレンズ構造に限ったものではなく、表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合にのみ、凹凸構造領域から斜出された回折光を観察することができる構造であれば足りる。例えば三角錐や五角錐などの多角錐でも良いし、半紡錘構造や断面が台形形状の直方体を回折光屈折部として上辺側が最表面になるように複数配列しても良い。前記直方体形状を用いると、本発明の回折光屈折領域に平坦領域の特徴を付与することが可能となる。
【0046】
次に、凹凸構造領域12aに起因した表示体10の特殊な視覚効果について説明する。なおここではまず、表示体10に回折光屈折領域14aが含まれない場合を考える。
【0047】
図8は、凹凸構造領域12aが回折光を射出する様子を概略的に示す図である。図8において、L1は照明光を示し、L2は正反射光又は0次回折光を示し、L3は1次回折光を示している。
【0048】
本発明の凹凸構造領域において、凹部又は凸部又はその両方の中心間距離が一定の周期を有しているとき、凹凸構造領域を照明すると、凹凸構造領域は、入射光である照明光の進行方向に対して特定の方向に回折光を射出する。
【0049】
最も代表的な回折光は、1次回折光である。1次回折光の射出角βは、数式1から算出することができる。この数式1において、dは凹部又は凸部の中心間距離を表し、λは入射光及び回折光の波長を表している。また、αは、0次回折光、すなわち、透過光又は正反射光、の射出角を表している。換言すれば、αの絶対値は、照明光の入射角と等しく、入射角とは表示体10の法線Nに対して対称な関係である(反射型回折格子の場合)。なお、α、βは、表示体10の法線Nから時計回りの方向を正方向とする。
d=λ/(sinα−sinβ) (数式1)
【0050】
数式1から明らかなように、1次回折光の射出角βは、波長λに応じて変化する。すなわち、凹凸構造領域は、分光器としての機能を有している。したがって、照明光が白色光である場合、凹凸構造領域の観察角度を変化させると、観察者が知覚する色が変化する。
【0051】
また、或る観察条件のもとで観察者が知覚する色は、中心間距離dに応じて変化する。一例として、凹凸構造領域は、その法線方向に1次回折光を射出するとする。すなわち、1次回折光の射出角βは、0°であるとする。そして、観察者は、この1次回折光を知覚するとする。このときの0次回折光の射出角をαNとすると、数式1は、下記数式2へと簡略化することができる。
d=λ/sinαN (数式2)
【0052】
数式2から明らかなように、観察者に特定の色を知覚させるには、その色に対応した波長λと照明光の入射角|αN|と中心間距離dとを、それらが数式2に示す関係を満足するように設定すればよい。
【0053】
本発明における、凹凸構造領域12aに設けられた複数の凹部又は凸部またはその両方の中心間距離は500nm以下であり、典型的には400nm以下である。この場合、可視波長範囲400nm〜700nmにおいて、凹部又は凸部またはその両方からの回折光成分が法線方向へ発生することを避けることができる。数式2において、89度の照明光であっても400nmの光がようやく法線方向へ向う事になるので、実質的に可視波長のすべてについてあらゆる照明条件下で十分な強度の回折光が凹部又は凸部又はその両方から法線方向に発生することが無くなる。
【0054】
したがって、例えば、表示体10をその法線方向から観察した場合、凹凸構造領域12aは黒色に見える。なお、ここで、「黒色」は、例えば、表示体10に法線方向から光を照射し、正反射光の強度を測定したときに、波長が400nm乃至700nmの範囲内にある全ての光成分について反射率が10%以下であることを意味する。それゆえ、凹凸構造領域12aは、あたかも黒色印刷層の如く見える。
【0055】
また、凹部又は凸部またはその両方の中心間距離は200nm以上であり、例えば200nmの中心間距離では89度の照明光の場合に400nmの光が89度方向へ回折することになるので、青色光が回折される下限であることが分かる。したがって、凹部又は凸部またはその両方の配置間隔が200nm以上とすることにより、深い角度の照明光に対して、同様に深い角度から回折光を観察することができる。また、それ以外の条件では、回折光が発生せず、一般的な観察条件下では回折光が認識されない。それゆえ、通常は黒色に表示された画像が観察角度を変えていくことによって突然光って見えるような特殊な視覚効果をもたせることができる。
【0056】
次に、凹凸構造領域12aが形成されている光透過層の前面に回折光屈折領域14aが配置されている場合の、表示体10の特殊な視覚効果について説明する。
【0057】
図9は、照明光が三角プリズム構造を有する回折光屈折領域14aと凹凸構造領域12aを経て射出する様子を概略的に示す図である。図9において、L1は照明光を示し、L4は射出光を示している。
【0058】
図9に示す三角プリズム構造の回折光屈折領域14aにおいて、表示体10を照明すると、回折光屈折領域14aで光の屈折が起こり、その後凹凸領域12aで回折された光が再び回折光屈折領域14aで屈折されて射出する。回折光屈折領域14aで屈折する角度θは数式3で示される。数式3において、nAは回折光屈折層樹脂の屈折率を、nBは空気の屈折率を、角度θAは入射光のレンズ面の法線に対する入射光の角度を表している。
nA×sinθA=nB×sinθB (数式3)
【0059】
レンズ面の法線に対する入射光の角度θAの絶対値は、L1の法線Nに対する照明光の入射角αとレンズの頂角γによって数式4で示される。上記θAと数式3よりθBが算出され、更に、回折光屈折領域14aに入射した照明光L1の、凹凸構造領域12aへの入射角度α1は数式5で示される。
sinθA=(90−γ/2)+α (数式4)
α1=(90−γ/2)−θB (数式5)
【0060】
よって、凹凸構造領域12aによって回折される光の射出角度β1を数式1より求め、数式3及び数式4、数式5と同様な幾何光学式によって回折光屈折領域14aからの射出光L4の法線Nに対する射出角度βを算出することができる。
【0061】
上記の通り、回折光屈折層の頂角を任意に設定することで、凹凸構造領域12aからの回折光の射出角度を自在に設定することができる。
【0062】
上記の通り、回折光屈折層の頂角及び凹凸構造領域12aに設けられた複数の凹部又は凸部又はその両方の中心間距離を任意に設定することで、照明光L1の入射角度によって可視光の一次回折光L3を射出光L4として特定方向に発生させることができる。このとき、射出光L4は、照明光の入射角度α及び凹凸構造領域12aの中心間距離dによって観察者に特定の色を知覚させる。
【0063】
図10は、凹凸構造領域が回折光屈折層を通して回折光を射出する様子の一例を概略的に示す図であり、照明光がレンチキュラー構造の回折光屈折領域14aと凹凸構造領域12aを経て射出する様子を示している。図10において、図9と同様に、L1は照明光を示し、L4は射出光を示している。
【0064】
図10に示すレンチキュラー構造において、表示体10を照明すると、図9の時と同様に回折光屈折領域14aで光の屈折が起こり、その後凹凸領域12aで回折された光が再び回折光屈折領域14aで屈折されて射出する。レンチキュラーは表面が丸みを帯びているため、1ピッチ内で照明光の入射角度が変化する。また、凹凸構造領域12aを経て射出される回折光が回折光屈折領域14aを射出する際の射出角度も1ピッチ内で違う。
【0065】
そこで、照明光L1の入射角度とレンチキュラーレンズの曲率に対応させて数式1乃至5および同様な幾何光学式を用いて、凹凸構造領域12aに設けるべき凹部又は凸部又はその両方の中心間距離を算出し、配置する。これにより、1ピッチ内の回折光屈折領域14aからの射出光L4の射出角度が同一となり、観察者に特定の色を知覚させる。
【0066】
なお、図示はしていないが、図10に示す回折光屈折領域14aのレンズがマイクロレンズになった場合も同様に、凹凸構造領域12aに設けるべき凹部又は凸部又はその両方の中心間距離を、照明光L1の入射角度およびマイクロレンズの曲率より算出することができる。
【0067】
表示体10にマイクロレンズを使用した場合、表示体10に直交した法線を回転軸として、表示体を回転させてどの方向から観察しても、観察者に凹凸構造領域から射出された回折光を知覚させることができる。
【0068】
図11は、本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す概要図であり、図11(a)は表示体を概略的に示す平面図である。また、図11(b)は、図11(a)のII−II線に沿った断面図を示している。表示体20は、回折光屈折層14が、光透過層11の凹凸構造領域22aを有する面と反対の面に積層されており、さらに反射層13の表面に接着層21が積層された構造となっている。また、凹凸構造領域22aは、2次元的に「ZOPPAN」と表示されるように文字部にのみ形成されており、文字部以外は、非凹凸構造領域12bとなっている。凹凸構造領域22aは、その中心間距離d及び凹部又は凸部RPの深さや形状を変えて観察者に複数の色を知覚させるように設定されている。凹凸構造領域22aは四角錐構造を有し、文字列に対して垂直および平行に複数配列されている。
【0069】
また、本例の回折光屈折層14は、回折光屈折部24aが四角錐構造を有し、文字列に対して凹凸溝が垂直及び平行になるように複数配列した回折光屈折領域24と、回折光屈折部34aが三角プリズム構造を有し、文字列に対して凹凸溝が平行になるように複数配列した回折光屈折領域34が配列されている。回折光屈折領域24は、文字列の左から順に、1文字目の「Z」及び左から4文字目の「P」の上に形成されており、回折光屈折領域34は、文字列の左から順に、2,3文字目の「OP」及び左から5,6文字目の「AN」は、三角プリズム構造を有し、凹凸溝が文字列に対して垂直になるように配列された凹凸構造領域52aから構成されている。
【0070】
なお、本図では、回折格子層14が表示体20の文字列に対して直交した方向にシフトしているが、本図を理解しやすくするためであり、実際は直交方向にシフトさせて全面を覆う構造となっている。
【0071】
回折光屈折層14が光透過層の凹凸構造領域22aと反対の面にある場合、接着層21を設けることで、反射層13の表面が露出しないようにすることも可能である。そのため、表示体10を表示体20の一部として使用することにより、凹凸構造領域22aの凹部又は凸部の複製をより一層困難とすることができる。
【0072】
表示体20を直交した法線方向から観察した場合、今回図示しないが、背景が背面の蒸着層の色に観察され、「ZOPPAN」の文字が黒色に視認される。
【0073】
図11(c)は、図11(a)の表示体20を法線方向からA方向を手前にして傾けて観察した場合の模式図である。三角プリズム構造及び四角錐構造の側面に照明光L1が入射すると、回折光屈折層背面の凹凸構造領域22aからの回折光が観察方向A側に射出され、「ZOPPAN」の文字が着色されて観察者に知覚される。この場合、反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。なお、A方向を奥にして傾けた場合でも、文字が逆さに見える以外は同様の視覚効果を得ることができる。
【0074】
また、図11(d)は、図11(a)の表示体20を法線方向からB方向を手前にして傾けて観察した場合の模式図である。回折光屈折領域24の側面にのみ照明光L1が入射し、観察者には「Z」と「P」の文字のみ着色されて観察者に知覚される。この場合、反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。なお、B方向を奥にして傾けた場合でも、文字が逆さに見える以外は同様の視覚効果を得ることができる。
【0075】
上記のように、一種類の凹凸構造領域を形成し、さらに複数の回折光屈折領域を被覆させることで、一種類の凹凸構造領域のみの構造に比べ、表示体に直交した法線を回転軸としたときの、観察者が観察する方向の違いによって、表示体の視認性が変化する。さらに反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。そのため通常の表示体よりも高い偽造防止効果と意匠性を付与することができる。
【0076】
図12は、本発明の一態様に関わる他の表示体を概略的に示す概要図であり、図12(a)は表示体20を概略的に示す平面図である。また、図12(b)は、図12(a)のIII−III線に沿った断面図を示している。表示体20は、回折光屈折領域44と、回折光屈折領域44の回折光屈折部44aを「ZOPPAN」の文字列に平坦にした平坦領域17とが配列された回折光屈折層14が、表示体10の光透過層11の凹凸構造領域32aと反対の面に積層されており、さらに反射層13の表面に接着層21が積層された構造となっている。凹凸構造領域32aは表示体20の全体にあり、その中心間距離d及び凹部又は凸部RPの深さや形状を変えて観察者に複数の色を知覚させるように設定されている。
【0077】
また、本図において回折光屈折領域44は、「ZOPPAN」の文字列に対して平行な凹凸溝を有するレリーフ構造を有し、凹凸構造領域32aは、四角錐構造の底面の各辺が、「ZOPPAN」の文字列に対して垂直および平行になるように複数配列されている。
【0078】
なお、平坦領域17は、回折光屈折層14を形成する際に、回折光屈折領域44と同時に作成しても良いし、全面に回折光屈折領域44を形成した後に、レーザビームや電子ビームなどのエネルギービームを用いて、「ZOPPAN」の文字列に削って平坦領域17としても良い。
【0079】
回折光屈折領域44が光透過層の凹凸構造領域32aと反対の面にある場合、接着層21を設けることで、反射層13の表面が露出しないようにできる。そのため、表示体10を表示体20の一部として使用することにより、凹凸構造領域32aの凹部又は凸部の複製をより一層困難とすることができる。
【0080】
なお、本図では、回折格子層14が表示体20の文字列に対して直交した方向にシフトしているが、本図を理解しやすくするためであり、実際は直交方向にシフトさせて全面を覆う構造となっている。
【0081】
図12(a)の表示体20に直交する法線方向から見た場合、今回図示しないが、全面が黒色に観察され、「ZOPPAN」の文字を認識するのは困難である。
【0082】
図12(c)は、図12(a)の表示体20に直交する法線方向から表示体20を傾けてA方向から観察した場合の模式図である。この場合、回折光屈折領域44が具備されている部分のみ特定の色柄が知覚され、回折光屈折層の具備されていない部分は黒色印刷層の如く観察される。この場合、反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。
【0083】
一方、図12(d)は、図12(a)の表示体20を、図12(c)で観察した角度よりも更に観察角度を深くして、A方向から観察した場合の模式図である。この場合、上記とは逆に、回折光屈折層14の具備されていない部分のみ特定の色柄が知覚される。このとき、回折光屈折領域44の具備されている部分では、凹凸構造領域32aへの入射光角度が深くなり、回折光L3が照明光の入射側面とは反対側の側面に出るため、観察者には着色が知覚されず黒色のみが観察される。反射層13と光透過層11のみの構成となっている箇所からの回折光を確認することができる。
【0084】
また、B方向から表示体20を観察し、法線に対してどの角度に傾けて表示体20を観察すると、図12(c)で像を確認できた程度に傾けたときに観察状態を示した模式図を図12(e)に示す。その結果、全面が黒色に見えて像を確認することができない。さらに表示体を図12(d)において,像を確認できた程度に傾けたときの観察状態を示した模式図を図12(f)に示す。この場合、平坦領域17が積層された箇所で、凹凸構造領域32aから射出された回折光を確認することができる。
【0085】
上記のように、一種類の凹凸構造領域を形成し、さらに平坦領域を含んだ回折光屈折領域を被覆させることで、一種類の凹凸構造領域のみの構造に比べ、表示体に直交した法線を回転軸としたときの、観察者が観察する方向の違いによって、表示体の視認性が変化する。さらに反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。そのため通常の表示体よりも高い偽造防止効果と意匠性を付与することができる。
【0086】
さらに、回折光屈折層の一部が削られた平坦領域を具備させることで、表示体の傾け角度の違いによっても像の表示状態を変化させることができ、回折光屈折層を全体に被覆させた場合よりもさらに高い意匠性を付与することができる。
【0087】
なお、表示体10において、回折光屈折領域44が反射層13の面にある場合は、回折光屈折層14によって反射層13の表面の露出を防ぐことができる。そのため、表示体10を表示体20の一部として使用すれば、回折光屈折領域44がどちらの面にあっても、凹凸構造領域32aの凹部又は凸部の複製を困難とすることができる。
【0088】
図13は、本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す概要図であり、図13(a)は表示体を概略的に示す平面図である。また、図13(b)は、図31(a)のIV−IV線に沿った断面図を示している。表示体20は、回折光屈折領域54が、光透過層11の凹凸構造領域を有する面と反対の面に積層されており、さらに反射層13の表面に接着層21が積層された構造となっている。凹凸構造領域は、2次元的に「ZOPPAN」と表示されるように文字部にのみ形成されており、文字部以外は、非凹凸構造領域12bとなっている。凹凸構造領域は、その中心間距離d及び凹部又は凸部RPの深さや形状を変えて観察者に複数の色を知覚させるように設定されている。なお、本例における回折光屈折層14は、回折光屈折部54aが三角プリズム構造を有し、凹凸溝が文字列に対して垂直になるように配列されている。
【0089】
また、本例の凹凸構造領域は、文字列の左から順に、1文字目の「Z」及び左から4文字目の「P」は、三角プリズム構造を有した凹凸構造領域42aとなっており、文字列の左から順に、2,3文字目の「OP」及び左から5,6文字目の「AN」は、三角プリズム構造を有し凹凸溝の高さ(または中心間距離)が42aとは異なる凹凸構造領域52aから構成されている。
【0090】
なお、本図では、回折格子層14が表示体20の文字列に対して直交した方向にシフトしているが、本図を理解しやすくするためにシフトさせたためであり、実際は直交方向にシフトさせて全面を覆う構造となっている。
【0091】
回折光屈折領域が光透過層の凹凸構造領域と反対の面にある場合、接着層21を設けることで、反射層13の表面が露出しないようにすることも可能である。そのため、表示体10を表示体20の一部として使用することにより、凹凸構造領域の凹部又は凸部の複製をより一層困難とすることができる。
【0092】
表示体20を直交した法線方向から観察した場合、今回図示しないが、背景が(背面の蒸着層の色)に観察され、「ZOPPAN」の文字が黒色に視認される。
【0093】
図13(c)は、図13(a)の表示体20を法線方向からA方向を手前にして傾けて観察した場合の模式図である。その結果は、どれだけ傾けても背景が(背面の蒸着層の色)に観察され、「ZOPPAN」の文字が黒色に視認される。上述の視覚効果を確認することができない。これは回折光屈折層14が観察者の視線に対して平行に配列されているためである。
【0094】
一方、図13(d)は、図13(a)の表示体20を法線方向からB方向を手前にして傾けて観察した場合の模式図を示したものである。回折光屈折領域54の側面にのみ照明光L1が入射し、観察者には「Z」及び左から4番目の「P」の文字と、「OP」及び「AN」の文字とがそれぞれ別の色に着色されて観察者に知覚される。この場合、反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。なお、B方向を奥にして傾けた場合でも、文字が逆さに見える以外は同様の視覚効果を得ることができる。
【0095】
上記のように、複数の凹凸構造領域を形成し、さらに一種類の回折光屈折領域を被覆させることで、一種類の凹凸構造領域のみの構造に比べ、表示体に直交した法線を回転軸としたときの、観察者が観察する方向の違いによって、表示体の視認性が変化する。さらに反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。そのため通常の表示体よりも高い偽造防止効果と意匠性を付与することができる。
【0096】
図14は、本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す概要図であり、図14(a)は表示体を概略的に示す平面図である。また、図14(b)は、図14(a)のV−V線に沿った断面図を示している。表示体20は、回折光屈折層14が、光透過層11の凹凸構造領域22aを有する面と反対の面に積層されており、さらに反射層13の表面に接着層21が積層された構造となっている。また、凹凸構造領域は、2次元的に「ZOPPAN」と表示されるように文字部にのみ形成されており、文字部以外は、非凹凸構造領域12bとなっている。凹凸構造領域は、その中心間距離d及び凹部又は凸部RPの深さや形状を変えて観察者に複数の色を知覚させるように設定されている。
【0097】
また、本例の凹凸構造領域は、文字列の左から順に、1文字目の「Z」及び左から4文字目の「P」は、三角プリズム構造を有した凹凸構造領域62aとなっており、文字列の左から順に、2,3文字目の「OP」及び左から5,6文字目の「AN」は、三角プリズム構造を有し、凹凸溝の高さ(または中心間距離)が42aとは異なる凹凸構造領域72aから構成されている。
【0098】
また、本例の回折光屈折層14は、回折光屈折部64aが四角錐構造を有し、文字列に対して凹凸溝が垂直及び平行になるように複数配列した回折光屈折領域64と、回折光屈折部74aが三角プリズム構造を有し、文字列に対して凹凸溝が垂直になるように複数配列した回折光屈折領域74と、回折光屈折部84aが三角プリズム構造を有し、文字列に対して凹凸溝が平行になるように複数配列した回折光屈折領域84とが配列されている。回折光屈折領域64は、文字列の左から順に、1文字目の「Z」及び左から4、5文字目の「PA」の上に形成されており、回折光屈折領域74は、文字列の左から順に、2,3文字目の「OP」の上に形成されている。そして、回折光屈折領域84は、文字列の左から5,6文字目の「AN」の上に形成されている。
【0099】
なお、本図では、回折格子層14が表示体20の文字列に対して直交した方向にシフトしているが、本図を理解しやすくするためであり、実際は直交方向にシフトさせて全面を覆う構造となっている。
【0100】
図14(a)の表示体20に直交する法線方向から見た場合、表示体20を直交した法線方向から観察した場合、今回図示しないが、背景が背面の蒸着層の色に観察され、「ZOPPAN」の文字が黒色に視認される。
【0101】
図14(c)は、図14(a)の表示体20に直交する法線方向から表示体20を傾けてA方向から観察した場合の模式図である。この場合、観察者には「Z」及び左から4番目の「P」の文字と、「AN」の文字とがそれぞれ別の色に着色されて観察者に知覚され、その他の部分は背面の状着想の色で観察される。この場合、観察者側に屈折光を射出する回折光屈折領域64及び回折光屈折領域84が積層している箇所で像を観察することができる。また、この場合、反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。
【0102】
一方、図14(d)は、図14(a)の表示体20を法線方向からB方向を手前にして傾けて観察した場合の模式図を示したものである。観察者には観察者には「Z」及び左から4番目の「P」の文字と、「OP」及び「A」の文字とがそれぞれ別の色に着色されて観察者に知覚される。この場合、観察者側に屈折光を射出する回折光屈折領域64及び回折光屈折領域74が積層している箇所で像を観察することができる。また、この場合、反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。
【0103】
上記のように、複数の凹凸構造領域を形成し、さらに複数の回折光屈折領域を被覆させることで、一種類の凹凸構造領域のみの構造に比べ、表示体に直交した法線を回転軸としたときの、観察者が観察する方向の違いによって、表示体の視認性が変化する。さらに反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。そのため通常の表示体よりも高い偽造防止効果と意匠性を付与することができる。
【0104】
また、上述の態様を複数見合わせて表示体を形成しても良く、複数の凹凸構造領域及び複数の回折光屈折領域及び平坦領域を組み合わせても、さらに高い偽造防止効果と意匠性を付与することができる。
【0105】
また、凹凸構造領域は文字列を例に挙げたが、文字列に限定するものではなく、数字や記号、デザイン、図柄等、又はそれらの組み合わせ等、目的や構成によって定義変更すれば良い。
【0106】
また、回折光屈折領域の形状については、複数の四角形を組み合わせた例に挙げたが、四角形に限定するものではなく、回折光屈折領域に数字や記号、デザイン、図柄等を付与しても良い。又はそれらを組み合わせて用いても良い。構造が複雑になるだけでなく、回折光屈折領域に意匠性を持たせることによって、様々な視覚効果を得ることができる。さらに高い偽造防止効果と意匠性を付与することができる。
なお、回折光屈折領域のレイアウトについては、目的や構成によって定義変更すれば良い。
【0107】
また、上述の表示体は、例えば申請者が確認されるべき物品に貼り付けるか、或いは、そのような物品に取り付けられるべきタグの素材などの他の物品に貼り付ける。これにより、当該物品に偽造防止効果を付与することができる。
【0108】
図15は、表示体付き物品の一例として印刷物30の平面図を描いている。この印刷物30は、ID(identification)カードであって、基材31を含んでいる。基材31は、例えば、プラスチックからなる。基材31上には、印刷層33が形成されている。基材31の印刷層33が形成された面には、例えば上述した表示体10が例えば粘着層を介して固定されている、表示体10は、例えば、粘着ステッカとして準備しておき、これを印刷層33に貼り付けることにより、基材31に固定する。
【0109】
なお、図15には、表示体10を含んだ印刷物としてIDカードを零時しているが、表示体10を含んだ印刷物は、これに限られない。例えば、表示体10を含んだ印刷物は、磁気記録層35を備えた磁気カード、無線カード及びIC(integrated circuit)カードなどの他のカードであっても良い。或いは、本やパンフレットなどの冊子であってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、商品券及び株券などの有価証券であってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるタグであってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部であってもよい。
【0110】
また、図15に示す印刷物30では、表示体10を基材31に貼り付けているが、表示体10は、他の方法で基材に支持させることができる。例えば、基材として紙を使用した場合、表示体10を紙に漉き込み、表示体10に対応した位置で紙を開口させてもよい。ある胃は、基材として光透過性の材料を使用する場合、その内部に表示体10を埋め込んでもよく、基材の裏面、すなわち表示面とは反対側の面に表示体10を固定してもよい。
【0111】
表示体10は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体10は、玩具、学習教材又は装飾品等としても利用することができる。
【実施例】
【0112】
<実施例1>
以下のようにして、表示体10を製造した。
まず、厚さが25μmであるポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム)上に、紫外線硬化樹脂を塗布した。
次いで、反面に複数の凸部が設けられた原版を先の塗膜に押し当てながら、PETフィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させた。
その後、原版を取り除くことにより、複数の凹凸構造のついた光透過層を得た。ここでは、凹部の深さは凹部の深さは400nmとし、凹部の中心間距離は380nmとした。
次に、光透過層の凹凸構造領域側の主面に、真空蒸着法によりアルミニウムを堆積させて、反射層13を形成した。この反射層の厚みは、約40nmとした。
また、厚さが150μmであるPETフィルム上に、紫外線硬化樹脂を塗布し、この塗膜に頂角90度の三角プリズム構造が規則的に配列して切削されている金属金型を押し当てながら、PETフィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、回折光屈折領域を作製した。
その後、原版を取り除くことにより、三角プリズム構造の回折光屈折領域が配列している回折光屈折層を得た。
【0113】
そして、上記回折光屈折層を、前記光透過層の凹凸構造領域側とは反対側の面に接着層を介して貼着し、表示体を得た。
以下、この表示体を「表示体D1」とする。
【0114】
<実施例2>
三角プリズム構造が切削されている金属金型の代わりに、四角錐構造が規則的に配列して切削されている金属金型を使用したこと以外は表示体D1について述べたのと同様にして、四角錐構造を有する回折光屈折部が複数配列された回折光屈折層を備えた表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D2」と呼ぶ。
【0115】
<実施例3>
表示体D1について述べたのと同様にして製造した三角プリズム構造を有するレンズシートを部分的に切り取り、表示体D1について述べたのと同様にして製造した光透過層の凹凸構造側とは反対側の面に接着層を介して貼着し、表示体10を得た。
以下、この表示体を「表示体D3」と呼ぶ。
【0116】
以上のようにして製造した表示体D1乃至D3について、表示体10を照明する白色光源と表示体10を観察するカメラの位置との角度を20度に固定し、表示体に直交した法線方向を示す法線Nに対する白色光源の入射角度を変化させて観察した。
【0117】
この結果、表示体D1に関しては回折光屈折層の三角プリズム構造の側面方向から観察した場合に、白色光源の入射角度を表示体D1の法線Nに対して-35度及び35度(±2度)付近とした時に凹凸構造領域から射出するGreen光(λ=540nm)の回折光を検出した。
また、白色光源の入射角度を表示体D1の法線Nに対して−55度及び55度(±2度)付近とした時には、三角プリズム構造の側面による照明光の反射が起こり、結果として白色が知覚された。
また、上記以外の角度においては、黒色が知覚された。
【0118】
表示体D2に関しては、表示体10の法線Nを回転軸として、表示体を回転させて観察し、四角錘構造の各辺に直交した0、90、180、270度の方向から観察した場合に、白色光源の入射角度を表示体D2の法線Nに対して-35度及び35度(±2度)付近とした時に凹凸構造領域から射出するGreen光(λ=540nm)の回折光を検出した。
また、白色光源の入射角度を表示体D2の法線Nに対して-55度及び55度(±2度)付近とした時には、三角プリズム構造の側面による照明光の反射が起こり、結果として白色が知覚された。
また、上記以外の角度においては、黒色が知覚された。
【0119】
表示体D3に関しては、 表示体D3に関しては、三角プリズム構造を有する回折光屈折部が複数配列された回折光屈折層の側面方向から観察した場合、白色光源の入射角度を表示体D3の法線Nに対して-35度及び35度(±2度)とした時に、回折光屈折領域のみで、凹凸構造領域から射出するGreen光(λ=540nm)の回折光を検出した。このとき、非回折光屈折領域においては黒色が知覚された。
また、白色光源の入射角度を表示体D3の法線Nに対して-55度及び55度(±2度)付近とした時には、回折光屈折領域のみで、三角プリズム構造の側面による照明光の反射が起こり、結果として白色が知覚された。このとき、非回折光屈折領域においては黒色が知覚された。
また、白色光源の入射角度を表示体D3の法線Nに対して-65度及び65度(±2度)とした時には、非回折光屈折領域のみで、凹凸構造領域から射出するGreen光(λ=540nm)の回折光を検出した。このとき、回折光屈折領域においては黒色が知覚された。
【符号の説明】
【0120】
10…表示体、11…光透過層、12a…凹凸構造領域、12b…非凹凸構造領域、13…反射層、14…回折光屈折層、14a…回折光屈折領域、15…回折光屈折領域、15a…回折光屈折部、16…回折光屈折領域、16a…回折光屈折部、17…平坦領域、20…表示体、21…接着層、22a…凹凸構造領域、24…回折光屈折領域、30…印刷物、31…基材、32a…凹凸構造領域、33…印刷層、34…回折光屈折領域、35…磁気記録層、42a…凹凸構造領域、44…回折光屈折領域、52a…凹凸構造領域、54…回折光屈折領域、62a…凹凸構造領域、64…回折光屈折領域、72a…凹凸構造領域、74…回折光屈折領域、84…回折光屈折領域、L1…照明光、L2…正反射光又は0次回折光、L3…1次回折光、L4…射出光、N…法線
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止性能を付与した表示体及び表体付き物品の技術に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証物品並びに商品券及び株券などの有価証券には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、従来から、そのような物品には、その偽造を抑止すべく、偽造又は模造が困難であると共に偽造品や模造品との区別が容易なラベルが貼り付けられている。そのようなラベルは、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
また、近年では、認証物品及び有価証券以外の物品についても、偽造品の流通が問題視されている。そのため、このような物品に、認証物品及び有価証券に関して上述した偽造防止技術を適用する機会が増えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−91699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、偽造防止用のラベルとして使用する光学素子の多くには、偽造防止技術が適用されていることが観察者によって比較的悟られ易いという問題がある。偽造防止技術の適用が悟られると、光学素子が不正に複製又は変造される可能性が高くなる。即ち、優れた偽造防止効果を達成できない。
【0006】
そこで、本発明は、より優れた偽造防止効果を実現する表示体、及び表示体付き物品を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における第1の発明は、
回折光を射出する表示体において、
一方の主面に、入射光を特定の方向に回折する凹部又は凸部又はその両方を、互いに交差する第1方向及び第2方向に複数配列した凹凸構造領域を複数備えた光透過層と、
前記凹凸構造層の表面の少なくとも一部を被覆する反射層と、
前記光透過層の他方の主面又は前記反射層の表面の何れか一方に、前記光透過層と屈折率が異なる回折光屈折部を、互いに交差する第1及び第2方向に複数配列した回折光屈折領域を複数備えた回折光屈折層と、
を具備することを特徴とする表示体
である。
また、第2の発明は、
前記凹凸構造領域が、前記光透過層の一方の主面に複数配列されており、少なくとも1つの凹凸構造領域における複数の凹部又は凸部が、他の凹凸構造領域における複数の凹部又は凸部と比較して、少なくとも形状又は深さ又は高さ又は中心間距離又は配置パターンのうち少なくとも一つが異なることを特徴とする請求項1に記載の表示体
である。
また、第3の発明は、
前記回折光屈折領域が、前記光透過層の他方の主面又は前記反射層の表面の何れか一方に、複数配列されており、少なくとも一つの回折光屈折領域における複数の回折光屈折部が、他の回折光屈折領域における複数の回折光屈折部と比較して、少なくとも形状又は高さ又は中心間距離又は配置パターンのうち少なくとも一つが異なることを特徴とする請求項1に記載の表示体
である。
また、第4の発明は、
前記凹凸構造領域が、前記光透過層の一方の主面に複数配列されており、少なくとも1つの凹凸構造領域における複数の凹部又は凸部が、他の凹凸構造領域における複数の凹部又は凸部と比較して、少なくとも形状又は深さ又は高さ又は中心間距離又は配置パターンのうち少なくとも一つが異なり、
かつ、前記回折光屈折領域が、前記光透過層の他方の主面又は前記反射層の表面の何れか一方に、複数配列されており、少なくとも一つの回折光屈折領域における複数の回折光屈折部が、他の回折光屈折領域における複数の回折光屈折部と比較して、少なくとも形状又は高さ又は中心間距離又は配置パターンのうち少なくとも一つが異なることを特徴とする請求項1に記載の表示体
である。
また、第5の発明は、
前記表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合、前記回折光屈折領域単位で射出された回折光の方向が異なることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表示体
である。
また、第6の発明は、
前記凹凸構造領域に含まれ、隣接する凹部又は凸部又はその両方の中心間距離が200nm乃至500nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表示体
である。
また、第7の発明は、
前記回折光屈折部が、三角プリズム構造又は四角錐構造又はレンチキュラーレンズ構造のうち少なくとも一つから選ばれた構造を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の表示体
である。
また、第8の発明は、
前記回折光屈折層の少なくとも一部に、平坦領域を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の表示体
である。
また、第9の発明は、
前記平坦領域が、前記回折光屈折領域の回折光屈折部をエネルギービーム照射によって少なくとも部分的に破壊して形成されることを特徴とする請求項8に記載の表示体
である。
また、第10の発明は、
請求項1乃至9のいずれかに記載の表示を体物品に支持したことを特徴とする表示体付き物品
である。
【発明の効果】
【0008】
本願の第1の発明によると、本発明の表示体は、表示体に光が入射し、光透過層の凹凸構造領域で回折光が斜出され、さらに光透過層と屈折率が異なる回折光屈折層で回折光が屈折させて観察光が射出される。その観察光を観察者は確認することができる。
本発明では、凹凸構造領域が持つ回折光の射出方向と回折光屈折領域が持つ回折光の屈折方向を組み合わせることによって、表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合に、観察光が確認できる方向を回折光屈折領域単位で制御することが可能であるし、またある方向からは観察光が射出されない方向を作成することも可能である。
観察光が確認できる方向から確認する場合、表示体に直交する法線方向から、表示体を傾けて観察する角度を変化させると、角度によって観察者が確認できる回折光の射出量が変化する。例えば表示体の凹凸構造領域及び回折光屈折層が積層された箇所を観察すると黒色に表示されるが、観察角度を変えていくと、黒色に表示されていた箇所が突然光って見えるような特殊な視覚効果をもたせることができる。
たとえば、光透過層の凹凸構造領域表面に反射層を積層させたのみの構成は一般的であり、この場合は、表示体をほぼ垂直の深い角度に傾けなければ、上述の視覚効果を確認することができない。
しかしながら、上述の構成にさらに回折光屈折層を加えることによって、従来の構成よりも表示体を傾ける角度が小さくても上述の視覚効果を再現することが可能になるという効果を有する。
また、光透過層の凹凸構造領域表面に反射層を積層させた構成に、さらに回折光屈折層を加えて積層することによって、構造を複雑にすることもできる。
このように、構造を複雑にできるだけでなく、セキュリティ性を構造させることができるため、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
また、第2の発明によると、
光透過層の凹凸構造領域が持つ凹部又は凸部の形状や高さなどを凹凸構造領域単位で調整することによって、回折光の射出方向を凹凸構造領域単位で制御することが可能となる。
これにより、結果的には観察光の方向を制御することとなるため、表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合に、観察光が確認できる方向を回折光屈折領域単位で制御することが可能であるし、またある方向からは観察光が射出されない方向を作成することも可能である。
このように、構造を複雑にできるだけでなく、セキュリティ性を向上させることができるため、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
また、第3の発明によると、
回折光屈折領域が持つ回折光屈折部の形状や高さなどを凹凸構造領域単位で調整することによって、回折光の屈折方向を回折光屈折領域単位で制御することが可能となる。
これにより、結果的には観察光の方向を制御することとなるため、表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合に、観察光が確認できる方向を回折光屈折領域単位で制御することが可能であるし、またある方向からは観察光が射出されない方向を作成することも可能である。
このように、構造を複雑にできるだけでなく、セキュリティ性を向上させることができるため、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
また、第4の発明によると、
光透過層の凹凸構造領域が持つ凹部又は凸部の形状や高さなどを凹凸構造領域単位で調整し、かつ、回折光屈折領域が持つ回折光屈折部の形状や高さなどを回折光屈折領域単位で制御することによって、回折光の射出方向を凹凸構造領域単位で制御することが可能となるだけでなく、回折光の屈折方向を回折光屈折領域単位で制御することが可能となる。
つまり、凹凸構造領域と回折光屈折領域を組み合わせることによって観察光の方向を更に細かく制御することが可能となる。表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合に、観察光が確認できる方向を回折光屈折領域単位で制御することが可能であるし、またある方向からは観察光が射出されない方向を作成することも可能である。
このように、構造をさらに複雑にできるだけでなく、セキュリティ性を向上させることができるため、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
また、第5の発明によると、
凹凸構造領域と回折光屈折領域を積層して組み合わせると、回折光屈折領域単位で観察光の方向を制御することが可能となる。
また、第6の発明によると、
本発明の表示体を法線方向から観察した時に、可視光線領域のあらゆる照明条件下で回折光が法線方向に発生することを抑えることができるだけでなく、深い角度に深い角度の照明光に対して、同様に深い角度から回折光を観察することができる。また、それ以外の条件では、回折光が発生せず、一般的な観察条件下では回折光が認識されないという特殊な視覚効果を供えることができ、セキュリティ性を向上させることができるだけでなく、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
本発明の第7の発明によると、
表示体に直交する法線を回転軸として表示体を回転させ、特定の方向から表示体を観察した場合にのみ、凹凸構造領域から斜出された回折光を観察することができるため、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
本発明の第8の発明によると、
凹凸構造領域から射出された回折光が、直接観察者に確認される箇所と前記回折光が回折光屈折層を介して直接観察者に確認される箇所とを組み合わせることによって、表示体に直交する法線を回転軸として、回折光が射出される方向や角度を凹凸構造領域毎に変化させることが可能となるため、セキュリティ性を向上させることができるだけでなく、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
本発明の第9の発明によると、
任意のデザインを表示体に表現することができるため、セキュリティ性を向上させることができるだけでなく、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
本発明の第10の発明によると、
物品自体にセキュリティ性を向上させることができるだけでなく、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体付き物品とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す表示体のI−I線に沿った断面図。
【図3】本発明の一態様に関わる表示体の他の例を示す断面図。
【図4】本発明の表示体の凹凸構造領域に採用可能な構造の一例を拡大して示す斜視図。
【図5】本発明の表示体の凹凸構造領域に採用可能な構造の他の例を拡大して示す斜視図。
【図6】本発明の表示体の回折光屈折層構造の一例を拡大して示す斜視図。
【図7】本発明の表示体の回折光屈折層構造の他の一例を拡大して示す斜視図。
【図8】凹凸構造領域が回折光を射出する様子を概略的に示す図。
【図9】凹凸構造領域が回折光屈折層を通して回折光を射出する様子の一例を概略的に示す図。
【図10】凹凸構造領域が回折光屈折層を通して回折光を射出する様子の他の例を概略的に示す図。
【図11】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す概要図。
【図12】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す概要図。
【図13】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す概要図。
【図14】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す概要図。
【図15】表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の一態様に関わる表示体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す表示体のI−I線に沿った断面図である。なお、図1に記載の表示体10では回折光屈折層側から観察した様子を示している。
【0012】
この表示体10は、回折光屈折層14と、光透過層11と、反射層13との積層体を含んでいる。図2に示す例では、光透過層11の一方の主面には、凹凸構造領域12aと非凹凸構造領域12bとを含んでいる。後述するように、凹凸構造領域12aは、複数の凹部又は凸部が設けられている。これら複数の凹部又は凸部は、照明光が照射されると、特定方向に回折光を射出する。また、非凹凸構造領域12bは、平坦面である。
【0013】
さらに、凹凸構造領域12aを備える光透過層11の主面に、凹凸構造領域12aの少なくとも一部を被覆するように反射層13が形成されている。以下、光透過層11側を「前面」、反射層13側を「背面」と記す。
【0014】
図1では、凹凸構造領域12aには四角錐構造の凹凸部が複数配列されており、回折光屈折層14は三角プリズム構造がI−I線に対して直交した方向に複数配列された構造となっている。表示体の長辺方向から表示体を観察すると、凹凸構造領域12aの一部の側面と回折光屈折層14の一部の側面が表示体の長辺に対してほぼ同じ方向を向いている。
【0015】
図2において回折光屈折領域14aは、光透過層11の前面側に形成されている。表示体10に照明光が照射されると、回折光屈折領域14aによって屈折されて入射した光が複数の凹部又は凸部に回折され、再び回折光屈折領域14aによって屈折されて射出する。
【0016】
ここでは図示しないが、反射層13の表面に接着層21を設けることで、反射層13の表面が露出しないようにできる。接着層21に用いる材料は、公知の接着材料を用いればよく、さらに反射層13を保護して破損や汚れを防ぐことが可能となる。
【0017】
図3は、本発明の一態様に関わる表示体の他の例を示す断面図である。ここでは、回折光屈折領域14aは光透過層の背面側に形成され、照射光は回折光屈折領域14a側から照射される。反射層13と回折光屈折領域14aの間に、接着層21を設けることで、反射層13の表面が露出しないようにできる。
【0018】
図2と同様に、表示体10に照明光が照射されると、回折光屈折領域14aによって屈折されて入射した光が複数の凹部又は凸部に回折され、再び回折光屈折領域14aによって屈折されて射出する。
【0019】
なお、回折光屈折層14の表面に保護層を設けて破損や汚れを防止しても良い。用いる材料は公知の材料を用いれば良いが、入射光及び回折光を透過する材料を用いることが好ましい。厚みや積層方法については公知の技術を用い、目的や用途によって適宜選択すれば良い。
【0020】
次に、凹凸構造領域12aに採用可能な構造について説明する。先に述べた通り、凹凸構造領域12aには、複数の凹部または凸部が設けられている。
なお、先に述べた通り、非凹凸構造領域12bは、平坦面である。また、非凹凸構造領域12bは、省略することができる。
【0021】
図4は、図1乃至図3に示す表示体10の凹凸構造領域12aに採用可能な構造の一例を拡大して示す斜視図である。図4に示す例では、凹部または凸部RPは、二次元的に配列している。
凹凸構造領域12aに配列される凹部または凸部RPは、中心間距離が200nm乃至500nmの範囲内で規則的に配列されている。そのため、後に詳しく説明するように、凹凸構造領域12aは、照明光を照射した際に特定の方向及び角度にのみ回折光を射出することができる。
【0022】
複数の凹部または凸部RPの配列は、例えば、正方格子、矩形格子または三角格子をなしている。これら凹部または凸部RPの配列を制御することにより、凹凸構造領域12aから射出される回折光の射出角度及び射出方向などを任意に調整することができる。図4には、一例として、複数の凸部が互いに直行するX方向及びY方向に二次元的に配列して正方格子をなしている場合を描いている。
【0023】
また、凹部または凸部RPの各々は、種々の形状でありうる。凹部または凸部RPの各々は、角錐、円錐および半紡錘形状などの順テーパ形状を有していることが好ましい。順テーパ形状を有していることにより、凹凸構造領域12aを法線方向から観察した場合に、凹凸構造領域12aの正反射光の反射率をより小さくすることができる。
【0024】
図5は、本発明の表示体の凹凸構造領域12aに採用可能な構造の他の例を拡大して示す斜視図である。図5に示す例では、凹部又は凸部RPは、複数の溝が一次元的に配列したレリーフ型回折格子である。
【0025】
この場合には、これら複数の溝の格子定数、方位、及び深さなどを制御することにより、凹凸構造領域12aから射出される回折光の射出角及び射出方向などを任意に調整することができる。
【0026】
凹部または凸部RPは、200nm乃至500nmの中心間距離で配置されている。この場合、後述するように、凹凸構造領域12aから射出される回折光を検出することによる真正品と非真正品との判別が比較的容易となる。
【0027】
また、凹部または凸部RPの深さ又は高さは、光散乱を抑制するため、ほぼ一定とする。凹部または凸部PPの深さ又は高さは、典型的には100nm以上とする。
【0028】
凹部または凸部RPは、例えば、微細な凸部又は凹部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。例えば、凹部又は凸部RPは、基材上に設けられた熱可塑性樹脂層に、凸部または凹部が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当てる方法、すなわち、熱エンボス加工法により得られる。或いは、凹部または凸部RPは、基材上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら基材側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成することも可能である。
【0029】
この原版は、例えば、電子線描画装置を用いて製造する。なお、通常は、原版の凹凸構造を転写して反転版を製造し、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を製造する。そして、必要に応じ、複製版を原版として用いて反転版の製造と、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を更に製造する。実際の製造では、通常、このようにして得られる複製版を使用する。
【0030】
光透過層11の材料としては、例えば透明材料を使用することができる。例えば、先の熱可塑性樹脂又は紫外線硬化樹脂として、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル/スチレン共重合体系樹脂を使用することができる。或いは、珪酸塩を含んだ無機材料を使用してもよい
【0031】
反射層13は、光透過層11の凹構造及び/または凸構造が設けられた主面の全体又は一部を被覆している。
【0032】
反射層13としては、例えば、アルミニウム(1.48)、銀(0.17)、金(0.34)、白金(2.9)、鉄(2.35)、クロム(2.4)、亜鉛(2.4)及びそれらの合金などの金属材料からなる層を使用することができる。なお、上記括弧内の数字は各金属材料の屈折率を示すものである。
【0033】
反射層13は、例えば、気相堆積法により形成することができる。例えば、蒸着又はスパッタリングにより形成することができる。なお、反射層13を凹凸構造領域12aの一部のみに被覆させることにより、全体に被覆させた場合とは異なる意匠性を付与することができる。
【0034】
次に、回折光屈折領域14aに採用可能な構造について説明する。回折光屈折領域14aは、先に述べた通り、光透過層11の前面側に配置されており、光透過層11の主面の全体又は一部を被覆している。
【0035】
図6は、本発明の表示体10の回折光屈折部15aが複数配列された回折光屈折領域15に採用可能な構造の一例を拡大して示す斜視図である。図6に示す例では、回折光屈折部15aが三角プリズム構造を有しており、1次元的に規則的に配列されている。そのため、後に詳しく説明するように、回折光屈折領域15は、表示体10に照明光を照射した際に、凹凸構造領域12aによって回折された光を特定の方向及び角度に屈折させて射出することができる。
【0036】
図7は、本発明の表示体10の回折光屈折領域16に採用可能な構造の他の例を拡大して示す斜視図である。図7に示す例では、回折光屈折部16aが四角錐構造を有しており、2次元的に規則的に配列されている。この場合も、図6の場合と同様に、表示体10に照明光を照射した際に、回折光屈折領域16は、凹凸構造領域12aによって回折された光を任意の方向及び角度に屈折させて射出することができる。
【0037】
回折光屈折領域は、例えば、微細な凸部又は凹部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより回折光屈折部を複数形成することによって作成することができる。例えば、三角プリズム構造や四角錐構造は、基材上に設けられた熱可塑性樹脂層に、三角プリズム構造や逆四角錐構造が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当てる方法、すなわち、熱エンボス加工法により得られる。或いは、基材上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら基材側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成することも可能である。
【0038】
この原版は、例えば、金型切削装置を用いて製造する。必要に応じ、原版のレンズ構造を転写して反転版を製造し、この反転版のレンズ構造を転写して複製版を製造してもよい。
【0039】
回折光屈折層14の材料としては、例えば透明材料を使用することができる。例えば、先の熱可塑性樹脂又は紫外線硬化樹脂として、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル/スチレン共重合体系樹脂を使用することができる。或いは、珪酸塩を含んだ無機材料を使用してもよい
【0040】
なお、回折光屈折領域14aを光透過層11の一部のみに被覆させることにより、全体に被覆させた場合とは異なる意匠性を付与することができる。
【0041】
また、光透過層11の一部を平坦領域17とすることによって、回折光屈折領域14aと平坦領域を組み合わせて意匠性を付与することも可能である。
【0042】
平坦領域17は、上記の金型に回折光屈折領域に加え平坦領域を形成して作成しても良いし、上記の金型を用いて形成された回折光屈折領域の回折光屈折部をエネルギービーム照射によって少なくとも部分的に破壊して形成しても良い。
【0043】
なお、エネルギービームに用いられるビームの種類としては、レーザビームを用いても良い。例えば、CO2レーザ、LD励起YAGレーザ又はLD励起YVO4レーザを使用する。レーザは、パルスレーザ及び連続発振レーザの何れであってもよい。レーザビームとしては、例えば、波長が1062nmの赤外光線又は波長が532nmの可視光線を使用する。波長が1062nmのレーザビームを使用する場合には、この波長の光を吸収する赤外線吸収剤を回折光屈折層14に添加しておくと、レーザビームの照射による情報の書き込みを、効率的に且つ高速に行うことが可能となる。
【0044】
レーザビーム照射によって形成する代わりに、電子ビームなどの荷電粒子ビームを照射することによって形成してもよい。電子ビーム描画装置によると、レーザと比較して、より小さなビーム径を達成できる。従って、例えばセルの寸法が小さい場合、電子ビーム照射を利用すると、レーザビームを利用した場合と比較して、より高い画質を達成できる。
【0045】
また、回折光屈折部は、三角プリズム構造や四角錐構造、レンチキュラーレンズ構造に限ったものではなく、表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合にのみ、凹凸構造領域から斜出された回折光を観察することができる構造であれば足りる。例えば三角錐や五角錐などの多角錐でも良いし、半紡錘構造や断面が台形形状の直方体を回折光屈折部として上辺側が最表面になるように複数配列しても良い。前記直方体形状を用いると、本発明の回折光屈折領域に平坦領域の特徴を付与することが可能となる。
【0046】
次に、凹凸構造領域12aに起因した表示体10の特殊な視覚効果について説明する。なおここではまず、表示体10に回折光屈折領域14aが含まれない場合を考える。
【0047】
図8は、凹凸構造領域12aが回折光を射出する様子を概略的に示す図である。図8において、L1は照明光を示し、L2は正反射光又は0次回折光を示し、L3は1次回折光を示している。
【0048】
本発明の凹凸構造領域において、凹部又は凸部又はその両方の中心間距離が一定の周期を有しているとき、凹凸構造領域を照明すると、凹凸構造領域は、入射光である照明光の進行方向に対して特定の方向に回折光を射出する。
【0049】
最も代表的な回折光は、1次回折光である。1次回折光の射出角βは、数式1から算出することができる。この数式1において、dは凹部又は凸部の中心間距離を表し、λは入射光及び回折光の波長を表している。また、αは、0次回折光、すなわち、透過光又は正反射光、の射出角を表している。換言すれば、αの絶対値は、照明光の入射角と等しく、入射角とは表示体10の法線Nに対して対称な関係である(反射型回折格子の場合)。なお、α、βは、表示体10の法線Nから時計回りの方向を正方向とする。
d=λ/(sinα−sinβ) (数式1)
【0050】
数式1から明らかなように、1次回折光の射出角βは、波長λに応じて変化する。すなわち、凹凸構造領域は、分光器としての機能を有している。したがって、照明光が白色光である場合、凹凸構造領域の観察角度を変化させると、観察者が知覚する色が変化する。
【0051】
また、或る観察条件のもとで観察者が知覚する色は、中心間距離dに応じて変化する。一例として、凹凸構造領域は、その法線方向に1次回折光を射出するとする。すなわち、1次回折光の射出角βは、0°であるとする。そして、観察者は、この1次回折光を知覚するとする。このときの0次回折光の射出角をαNとすると、数式1は、下記数式2へと簡略化することができる。
d=λ/sinαN (数式2)
【0052】
数式2から明らかなように、観察者に特定の色を知覚させるには、その色に対応した波長λと照明光の入射角|αN|と中心間距離dとを、それらが数式2に示す関係を満足するように設定すればよい。
【0053】
本発明における、凹凸構造領域12aに設けられた複数の凹部又は凸部またはその両方の中心間距離は500nm以下であり、典型的には400nm以下である。この場合、可視波長範囲400nm〜700nmにおいて、凹部又は凸部またはその両方からの回折光成分が法線方向へ発生することを避けることができる。数式2において、89度の照明光であっても400nmの光がようやく法線方向へ向う事になるので、実質的に可視波長のすべてについてあらゆる照明条件下で十分な強度の回折光が凹部又は凸部又はその両方から法線方向に発生することが無くなる。
【0054】
したがって、例えば、表示体10をその法線方向から観察した場合、凹凸構造領域12aは黒色に見える。なお、ここで、「黒色」は、例えば、表示体10に法線方向から光を照射し、正反射光の強度を測定したときに、波長が400nm乃至700nmの範囲内にある全ての光成分について反射率が10%以下であることを意味する。それゆえ、凹凸構造領域12aは、あたかも黒色印刷層の如く見える。
【0055】
また、凹部又は凸部またはその両方の中心間距離は200nm以上であり、例えば200nmの中心間距離では89度の照明光の場合に400nmの光が89度方向へ回折することになるので、青色光が回折される下限であることが分かる。したがって、凹部又は凸部またはその両方の配置間隔が200nm以上とすることにより、深い角度の照明光に対して、同様に深い角度から回折光を観察することができる。また、それ以外の条件では、回折光が発生せず、一般的な観察条件下では回折光が認識されない。それゆえ、通常は黒色に表示された画像が観察角度を変えていくことによって突然光って見えるような特殊な視覚効果をもたせることができる。
【0056】
次に、凹凸構造領域12aが形成されている光透過層の前面に回折光屈折領域14aが配置されている場合の、表示体10の特殊な視覚効果について説明する。
【0057】
図9は、照明光が三角プリズム構造を有する回折光屈折領域14aと凹凸構造領域12aを経て射出する様子を概略的に示す図である。図9において、L1は照明光を示し、L4は射出光を示している。
【0058】
図9に示す三角プリズム構造の回折光屈折領域14aにおいて、表示体10を照明すると、回折光屈折領域14aで光の屈折が起こり、その後凹凸領域12aで回折された光が再び回折光屈折領域14aで屈折されて射出する。回折光屈折領域14aで屈折する角度θは数式3で示される。数式3において、nAは回折光屈折層樹脂の屈折率を、nBは空気の屈折率を、角度θAは入射光のレンズ面の法線に対する入射光の角度を表している。
nA×sinθA=nB×sinθB (数式3)
【0059】
レンズ面の法線に対する入射光の角度θAの絶対値は、L1の法線Nに対する照明光の入射角αとレンズの頂角γによって数式4で示される。上記θAと数式3よりθBが算出され、更に、回折光屈折領域14aに入射した照明光L1の、凹凸構造領域12aへの入射角度α1は数式5で示される。
sinθA=(90−γ/2)+α (数式4)
α1=(90−γ/2)−θB (数式5)
【0060】
よって、凹凸構造領域12aによって回折される光の射出角度β1を数式1より求め、数式3及び数式4、数式5と同様な幾何光学式によって回折光屈折領域14aからの射出光L4の法線Nに対する射出角度βを算出することができる。
【0061】
上記の通り、回折光屈折層の頂角を任意に設定することで、凹凸構造領域12aからの回折光の射出角度を自在に設定することができる。
【0062】
上記の通り、回折光屈折層の頂角及び凹凸構造領域12aに設けられた複数の凹部又は凸部又はその両方の中心間距離を任意に設定することで、照明光L1の入射角度によって可視光の一次回折光L3を射出光L4として特定方向に発生させることができる。このとき、射出光L4は、照明光の入射角度α及び凹凸構造領域12aの中心間距離dによって観察者に特定の色を知覚させる。
【0063】
図10は、凹凸構造領域が回折光屈折層を通して回折光を射出する様子の一例を概略的に示す図であり、照明光がレンチキュラー構造の回折光屈折領域14aと凹凸構造領域12aを経て射出する様子を示している。図10において、図9と同様に、L1は照明光を示し、L4は射出光を示している。
【0064】
図10に示すレンチキュラー構造において、表示体10を照明すると、図9の時と同様に回折光屈折領域14aで光の屈折が起こり、その後凹凸領域12aで回折された光が再び回折光屈折領域14aで屈折されて射出する。レンチキュラーは表面が丸みを帯びているため、1ピッチ内で照明光の入射角度が変化する。また、凹凸構造領域12aを経て射出される回折光が回折光屈折領域14aを射出する際の射出角度も1ピッチ内で違う。
【0065】
そこで、照明光L1の入射角度とレンチキュラーレンズの曲率に対応させて数式1乃至5および同様な幾何光学式を用いて、凹凸構造領域12aに設けるべき凹部又は凸部又はその両方の中心間距離を算出し、配置する。これにより、1ピッチ内の回折光屈折領域14aからの射出光L4の射出角度が同一となり、観察者に特定の色を知覚させる。
【0066】
なお、図示はしていないが、図10に示す回折光屈折領域14aのレンズがマイクロレンズになった場合も同様に、凹凸構造領域12aに設けるべき凹部又は凸部又はその両方の中心間距離を、照明光L1の入射角度およびマイクロレンズの曲率より算出することができる。
【0067】
表示体10にマイクロレンズを使用した場合、表示体10に直交した法線を回転軸として、表示体を回転させてどの方向から観察しても、観察者に凹凸構造領域から射出された回折光を知覚させることができる。
【0068】
図11は、本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す概要図であり、図11(a)は表示体を概略的に示す平面図である。また、図11(b)は、図11(a)のII−II線に沿った断面図を示している。表示体20は、回折光屈折層14が、光透過層11の凹凸構造領域22aを有する面と反対の面に積層されており、さらに反射層13の表面に接着層21が積層された構造となっている。また、凹凸構造領域22aは、2次元的に「ZOPPAN」と表示されるように文字部にのみ形成されており、文字部以外は、非凹凸構造領域12bとなっている。凹凸構造領域22aは、その中心間距離d及び凹部又は凸部RPの深さや形状を変えて観察者に複数の色を知覚させるように設定されている。凹凸構造領域22aは四角錐構造を有し、文字列に対して垂直および平行に複数配列されている。
【0069】
また、本例の回折光屈折層14は、回折光屈折部24aが四角錐構造を有し、文字列に対して凹凸溝が垂直及び平行になるように複数配列した回折光屈折領域24と、回折光屈折部34aが三角プリズム構造を有し、文字列に対して凹凸溝が平行になるように複数配列した回折光屈折領域34が配列されている。回折光屈折領域24は、文字列の左から順に、1文字目の「Z」及び左から4文字目の「P」の上に形成されており、回折光屈折領域34は、文字列の左から順に、2,3文字目の「OP」及び左から5,6文字目の「AN」は、三角プリズム構造を有し、凹凸溝が文字列に対して垂直になるように配列された凹凸構造領域52aから構成されている。
【0070】
なお、本図では、回折格子層14が表示体20の文字列に対して直交した方向にシフトしているが、本図を理解しやすくするためであり、実際は直交方向にシフトさせて全面を覆う構造となっている。
【0071】
回折光屈折層14が光透過層の凹凸構造領域22aと反対の面にある場合、接着層21を設けることで、反射層13の表面が露出しないようにすることも可能である。そのため、表示体10を表示体20の一部として使用することにより、凹凸構造領域22aの凹部又は凸部の複製をより一層困難とすることができる。
【0072】
表示体20を直交した法線方向から観察した場合、今回図示しないが、背景が背面の蒸着層の色に観察され、「ZOPPAN」の文字が黒色に視認される。
【0073】
図11(c)は、図11(a)の表示体20を法線方向からA方向を手前にして傾けて観察した場合の模式図である。三角プリズム構造及び四角錐構造の側面に照明光L1が入射すると、回折光屈折層背面の凹凸構造領域22aからの回折光が観察方向A側に射出され、「ZOPPAN」の文字が着色されて観察者に知覚される。この場合、反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。なお、A方向を奥にして傾けた場合でも、文字が逆さに見える以外は同様の視覚効果を得ることができる。
【0074】
また、図11(d)は、図11(a)の表示体20を法線方向からB方向を手前にして傾けて観察した場合の模式図である。回折光屈折領域24の側面にのみ照明光L1が入射し、観察者には「Z」と「P」の文字のみ着色されて観察者に知覚される。この場合、反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。なお、B方向を奥にして傾けた場合でも、文字が逆さに見える以外は同様の視覚効果を得ることができる。
【0075】
上記のように、一種類の凹凸構造領域を形成し、さらに複数の回折光屈折領域を被覆させることで、一種類の凹凸構造領域のみの構造に比べ、表示体に直交した法線を回転軸としたときの、観察者が観察する方向の違いによって、表示体の視認性が変化する。さらに反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。そのため通常の表示体よりも高い偽造防止効果と意匠性を付与することができる。
【0076】
図12は、本発明の一態様に関わる他の表示体を概略的に示す概要図であり、図12(a)は表示体20を概略的に示す平面図である。また、図12(b)は、図12(a)のIII−III線に沿った断面図を示している。表示体20は、回折光屈折領域44と、回折光屈折領域44の回折光屈折部44aを「ZOPPAN」の文字列に平坦にした平坦領域17とが配列された回折光屈折層14が、表示体10の光透過層11の凹凸構造領域32aと反対の面に積層されており、さらに反射層13の表面に接着層21が積層された構造となっている。凹凸構造領域32aは表示体20の全体にあり、その中心間距離d及び凹部又は凸部RPの深さや形状を変えて観察者に複数の色を知覚させるように設定されている。
【0077】
また、本図において回折光屈折領域44は、「ZOPPAN」の文字列に対して平行な凹凸溝を有するレリーフ構造を有し、凹凸構造領域32aは、四角錐構造の底面の各辺が、「ZOPPAN」の文字列に対して垂直および平行になるように複数配列されている。
【0078】
なお、平坦領域17は、回折光屈折層14を形成する際に、回折光屈折領域44と同時に作成しても良いし、全面に回折光屈折領域44を形成した後に、レーザビームや電子ビームなどのエネルギービームを用いて、「ZOPPAN」の文字列に削って平坦領域17としても良い。
【0079】
回折光屈折領域44が光透過層の凹凸構造領域32aと反対の面にある場合、接着層21を設けることで、反射層13の表面が露出しないようにできる。そのため、表示体10を表示体20の一部として使用することにより、凹凸構造領域32aの凹部又は凸部の複製をより一層困難とすることができる。
【0080】
なお、本図では、回折格子層14が表示体20の文字列に対して直交した方向にシフトしているが、本図を理解しやすくするためであり、実際は直交方向にシフトさせて全面を覆う構造となっている。
【0081】
図12(a)の表示体20に直交する法線方向から見た場合、今回図示しないが、全面が黒色に観察され、「ZOPPAN」の文字を認識するのは困難である。
【0082】
図12(c)は、図12(a)の表示体20に直交する法線方向から表示体20を傾けてA方向から観察した場合の模式図である。この場合、回折光屈折領域44が具備されている部分のみ特定の色柄が知覚され、回折光屈折層の具備されていない部分は黒色印刷層の如く観察される。この場合、反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。
【0083】
一方、図12(d)は、図12(a)の表示体20を、図12(c)で観察した角度よりも更に観察角度を深くして、A方向から観察した場合の模式図である。この場合、上記とは逆に、回折光屈折層14の具備されていない部分のみ特定の色柄が知覚される。このとき、回折光屈折領域44の具備されている部分では、凹凸構造領域32aへの入射光角度が深くなり、回折光L3が照明光の入射側面とは反対側の側面に出るため、観察者には着色が知覚されず黒色のみが観察される。反射層13と光透過層11のみの構成となっている箇所からの回折光を確認することができる。
【0084】
また、B方向から表示体20を観察し、法線に対してどの角度に傾けて表示体20を観察すると、図12(c)で像を確認できた程度に傾けたときに観察状態を示した模式図を図12(e)に示す。その結果、全面が黒色に見えて像を確認することができない。さらに表示体を図12(d)において,像を確認できた程度に傾けたときの観察状態を示した模式図を図12(f)に示す。この場合、平坦領域17が積層された箇所で、凹凸構造領域32aから射出された回折光を確認することができる。
【0085】
上記のように、一種類の凹凸構造領域を形成し、さらに平坦領域を含んだ回折光屈折領域を被覆させることで、一種類の凹凸構造領域のみの構造に比べ、表示体に直交した法線を回転軸としたときの、観察者が観察する方向の違いによって、表示体の視認性が変化する。さらに反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。そのため通常の表示体よりも高い偽造防止効果と意匠性を付与することができる。
【0086】
さらに、回折光屈折層の一部が削られた平坦領域を具備させることで、表示体の傾け角度の違いによっても像の表示状態を変化させることができ、回折光屈折層を全体に被覆させた場合よりもさらに高い意匠性を付与することができる。
【0087】
なお、表示体10において、回折光屈折領域44が反射層13の面にある場合は、回折光屈折層14によって反射層13の表面の露出を防ぐことができる。そのため、表示体10を表示体20の一部として使用すれば、回折光屈折領域44がどちらの面にあっても、凹凸構造領域32aの凹部又は凸部の複製を困難とすることができる。
【0088】
図13は、本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す概要図であり、図13(a)は表示体を概略的に示す平面図である。また、図13(b)は、図31(a)のIV−IV線に沿った断面図を示している。表示体20は、回折光屈折領域54が、光透過層11の凹凸構造領域を有する面と反対の面に積層されており、さらに反射層13の表面に接着層21が積層された構造となっている。凹凸構造領域は、2次元的に「ZOPPAN」と表示されるように文字部にのみ形成されており、文字部以外は、非凹凸構造領域12bとなっている。凹凸構造領域は、その中心間距離d及び凹部又は凸部RPの深さや形状を変えて観察者に複数の色を知覚させるように設定されている。なお、本例における回折光屈折層14は、回折光屈折部54aが三角プリズム構造を有し、凹凸溝が文字列に対して垂直になるように配列されている。
【0089】
また、本例の凹凸構造領域は、文字列の左から順に、1文字目の「Z」及び左から4文字目の「P」は、三角プリズム構造を有した凹凸構造領域42aとなっており、文字列の左から順に、2,3文字目の「OP」及び左から5,6文字目の「AN」は、三角プリズム構造を有し凹凸溝の高さ(または中心間距離)が42aとは異なる凹凸構造領域52aから構成されている。
【0090】
なお、本図では、回折格子層14が表示体20の文字列に対して直交した方向にシフトしているが、本図を理解しやすくするためにシフトさせたためであり、実際は直交方向にシフトさせて全面を覆う構造となっている。
【0091】
回折光屈折領域が光透過層の凹凸構造領域と反対の面にある場合、接着層21を設けることで、反射層13の表面が露出しないようにすることも可能である。そのため、表示体10を表示体20の一部として使用することにより、凹凸構造領域の凹部又は凸部の複製をより一層困難とすることができる。
【0092】
表示体20を直交した法線方向から観察した場合、今回図示しないが、背景が(背面の蒸着層の色)に観察され、「ZOPPAN」の文字が黒色に視認される。
【0093】
図13(c)は、図13(a)の表示体20を法線方向からA方向を手前にして傾けて観察した場合の模式図である。その結果は、どれだけ傾けても背景が(背面の蒸着層の色)に観察され、「ZOPPAN」の文字が黒色に視認される。上述の視覚効果を確認することができない。これは回折光屈折層14が観察者の視線に対して平行に配列されているためである。
【0094】
一方、図13(d)は、図13(a)の表示体20を法線方向からB方向を手前にして傾けて観察した場合の模式図を示したものである。回折光屈折領域54の側面にのみ照明光L1が入射し、観察者には「Z」及び左から4番目の「P」の文字と、「OP」及び「AN」の文字とがそれぞれ別の色に着色されて観察者に知覚される。この場合、反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。なお、B方向を奥にして傾けた場合でも、文字が逆さに見える以外は同様の視覚効果を得ることができる。
【0095】
上記のように、複数の凹凸構造領域を形成し、さらに一種類の回折光屈折領域を被覆させることで、一種類の凹凸構造領域のみの構造に比べ、表示体に直交した法線を回転軸としたときの、観察者が観察する方向の違いによって、表示体の視認性が変化する。さらに反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。そのため通常の表示体よりも高い偽造防止効果と意匠性を付与することができる。
【0096】
図14は、本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す概要図であり、図14(a)は表示体を概略的に示す平面図である。また、図14(b)は、図14(a)のV−V線に沿った断面図を示している。表示体20は、回折光屈折層14が、光透過層11の凹凸構造領域22aを有する面と反対の面に積層されており、さらに反射層13の表面に接着層21が積層された構造となっている。また、凹凸構造領域は、2次元的に「ZOPPAN」と表示されるように文字部にのみ形成されており、文字部以外は、非凹凸構造領域12bとなっている。凹凸構造領域は、その中心間距離d及び凹部又は凸部RPの深さや形状を変えて観察者に複数の色を知覚させるように設定されている。
【0097】
また、本例の凹凸構造領域は、文字列の左から順に、1文字目の「Z」及び左から4文字目の「P」は、三角プリズム構造を有した凹凸構造領域62aとなっており、文字列の左から順に、2,3文字目の「OP」及び左から5,6文字目の「AN」は、三角プリズム構造を有し、凹凸溝の高さ(または中心間距離)が42aとは異なる凹凸構造領域72aから構成されている。
【0098】
また、本例の回折光屈折層14は、回折光屈折部64aが四角錐構造を有し、文字列に対して凹凸溝が垂直及び平行になるように複数配列した回折光屈折領域64と、回折光屈折部74aが三角プリズム構造を有し、文字列に対して凹凸溝が垂直になるように複数配列した回折光屈折領域74と、回折光屈折部84aが三角プリズム構造を有し、文字列に対して凹凸溝が平行になるように複数配列した回折光屈折領域84とが配列されている。回折光屈折領域64は、文字列の左から順に、1文字目の「Z」及び左から4、5文字目の「PA」の上に形成されており、回折光屈折領域74は、文字列の左から順に、2,3文字目の「OP」の上に形成されている。そして、回折光屈折領域84は、文字列の左から5,6文字目の「AN」の上に形成されている。
【0099】
なお、本図では、回折格子層14が表示体20の文字列に対して直交した方向にシフトしているが、本図を理解しやすくするためであり、実際は直交方向にシフトさせて全面を覆う構造となっている。
【0100】
図14(a)の表示体20に直交する法線方向から見た場合、表示体20を直交した法線方向から観察した場合、今回図示しないが、背景が背面の蒸着層の色に観察され、「ZOPPAN」の文字が黒色に視認される。
【0101】
図14(c)は、図14(a)の表示体20に直交する法線方向から表示体20を傾けてA方向から観察した場合の模式図である。この場合、観察者には「Z」及び左から4番目の「P」の文字と、「AN」の文字とがそれぞれ別の色に着色されて観察者に知覚され、その他の部分は背面の状着想の色で観察される。この場合、観察者側に屈折光を射出する回折光屈折領域64及び回折光屈折領域84が積層している箇所で像を観察することができる。また、この場合、反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。
【0102】
一方、図14(d)は、図14(a)の表示体20を法線方向からB方向を手前にして傾けて観察した場合の模式図を示したものである。観察者には観察者には「Z」及び左から4番目の「P」の文字と、「OP」及び「A」の文字とがそれぞれ別の色に着色されて観察者に知覚される。この場合、観察者側に屈折光を射出する回折光屈折領域64及び回折光屈折領域74が積層している箇所で像を観察することができる。また、この場合、反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。
【0103】
上記のように、複数の凹凸構造領域を形成し、さらに複数の回折光屈折領域を被覆させることで、一種類の凹凸構造領域のみの構造に比べ、表示体に直交した法線を回転軸としたときの、観察者が観察する方向の違いによって、表示体の視認性が変化する。さらに反射層13と光透過層11のみの構成に比べ法線方向からの傾け角度が小さい領域で上述の視覚効果を確認することができる。そのため通常の表示体よりも高い偽造防止効果と意匠性を付与することができる。
【0104】
また、上述の態様を複数見合わせて表示体を形成しても良く、複数の凹凸構造領域及び複数の回折光屈折領域及び平坦領域を組み合わせても、さらに高い偽造防止効果と意匠性を付与することができる。
【0105】
また、凹凸構造領域は文字列を例に挙げたが、文字列に限定するものではなく、数字や記号、デザイン、図柄等、又はそれらの組み合わせ等、目的や構成によって定義変更すれば良い。
【0106】
また、回折光屈折領域の形状については、複数の四角形を組み合わせた例に挙げたが、四角形に限定するものではなく、回折光屈折領域に数字や記号、デザイン、図柄等を付与しても良い。又はそれらを組み合わせて用いても良い。構造が複雑になるだけでなく、回折光屈折領域に意匠性を持たせることによって、様々な視覚効果を得ることができる。さらに高い偽造防止効果と意匠性を付与することができる。
なお、回折光屈折領域のレイアウトについては、目的や構成によって定義変更すれば良い。
【0107】
また、上述の表示体は、例えば申請者が確認されるべき物品に貼り付けるか、或いは、そのような物品に取り付けられるべきタグの素材などの他の物品に貼り付ける。これにより、当該物品に偽造防止効果を付与することができる。
【0108】
図15は、表示体付き物品の一例として印刷物30の平面図を描いている。この印刷物30は、ID(identification)カードであって、基材31を含んでいる。基材31は、例えば、プラスチックからなる。基材31上には、印刷層33が形成されている。基材31の印刷層33が形成された面には、例えば上述した表示体10が例えば粘着層を介して固定されている、表示体10は、例えば、粘着ステッカとして準備しておき、これを印刷層33に貼り付けることにより、基材31に固定する。
【0109】
なお、図15には、表示体10を含んだ印刷物としてIDカードを零時しているが、表示体10を含んだ印刷物は、これに限られない。例えば、表示体10を含んだ印刷物は、磁気記録層35を備えた磁気カード、無線カード及びIC(integrated circuit)カードなどの他のカードであっても良い。或いは、本やパンフレットなどの冊子であってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、商品券及び株券などの有価証券であってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるタグであってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部であってもよい。
【0110】
また、図15に示す印刷物30では、表示体10を基材31に貼り付けているが、表示体10は、他の方法で基材に支持させることができる。例えば、基材として紙を使用した場合、表示体10を紙に漉き込み、表示体10に対応した位置で紙を開口させてもよい。ある胃は、基材として光透過性の材料を使用する場合、その内部に表示体10を埋め込んでもよく、基材の裏面、すなわち表示面とは反対側の面に表示体10を固定してもよい。
【0111】
表示体10は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体10は、玩具、学習教材又は装飾品等としても利用することができる。
【実施例】
【0112】
<実施例1>
以下のようにして、表示体10を製造した。
まず、厚さが25μmであるポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム)上に、紫外線硬化樹脂を塗布した。
次いで、反面に複数の凸部が設けられた原版を先の塗膜に押し当てながら、PETフィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させた。
その後、原版を取り除くことにより、複数の凹凸構造のついた光透過層を得た。ここでは、凹部の深さは凹部の深さは400nmとし、凹部の中心間距離は380nmとした。
次に、光透過層の凹凸構造領域側の主面に、真空蒸着法によりアルミニウムを堆積させて、反射層13を形成した。この反射層の厚みは、約40nmとした。
また、厚さが150μmであるPETフィルム上に、紫外線硬化樹脂を塗布し、この塗膜に頂角90度の三角プリズム構造が規則的に配列して切削されている金属金型を押し当てながら、PETフィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、回折光屈折領域を作製した。
その後、原版を取り除くことにより、三角プリズム構造の回折光屈折領域が配列している回折光屈折層を得た。
【0113】
そして、上記回折光屈折層を、前記光透過層の凹凸構造領域側とは反対側の面に接着層を介して貼着し、表示体を得た。
以下、この表示体を「表示体D1」とする。
【0114】
<実施例2>
三角プリズム構造が切削されている金属金型の代わりに、四角錐構造が規則的に配列して切削されている金属金型を使用したこと以外は表示体D1について述べたのと同様にして、四角錐構造を有する回折光屈折部が複数配列された回折光屈折層を備えた表示体を製造した。以下、この表示体を「表示体D2」と呼ぶ。
【0115】
<実施例3>
表示体D1について述べたのと同様にして製造した三角プリズム構造を有するレンズシートを部分的に切り取り、表示体D1について述べたのと同様にして製造した光透過層の凹凸構造側とは反対側の面に接着層を介して貼着し、表示体10を得た。
以下、この表示体を「表示体D3」と呼ぶ。
【0116】
以上のようにして製造した表示体D1乃至D3について、表示体10を照明する白色光源と表示体10を観察するカメラの位置との角度を20度に固定し、表示体に直交した法線方向を示す法線Nに対する白色光源の入射角度を変化させて観察した。
【0117】
この結果、表示体D1に関しては回折光屈折層の三角プリズム構造の側面方向から観察した場合に、白色光源の入射角度を表示体D1の法線Nに対して-35度及び35度(±2度)付近とした時に凹凸構造領域から射出するGreen光(λ=540nm)の回折光を検出した。
また、白色光源の入射角度を表示体D1の法線Nに対して−55度及び55度(±2度)付近とした時には、三角プリズム構造の側面による照明光の反射が起こり、結果として白色が知覚された。
また、上記以外の角度においては、黒色が知覚された。
【0118】
表示体D2に関しては、表示体10の法線Nを回転軸として、表示体を回転させて観察し、四角錘構造の各辺に直交した0、90、180、270度の方向から観察した場合に、白色光源の入射角度を表示体D2の法線Nに対して-35度及び35度(±2度)付近とした時に凹凸構造領域から射出するGreen光(λ=540nm)の回折光を検出した。
また、白色光源の入射角度を表示体D2の法線Nに対して-55度及び55度(±2度)付近とした時には、三角プリズム構造の側面による照明光の反射が起こり、結果として白色が知覚された。
また、上記以外の角度においては、黒色が知覚された。
【0119】
表示体D3に関しては、 表示体D3に関しては、三角プリズム構造を有する回折光屈折部が複数配列された回折光屈折層の側面方向から観察した場合、白色光源の入射角度を表示体D3の法線Nに対して-35度及び35度(±2度)とした時に、回折光屈折領域のみで、凹凸構造領域から射出するGreen光(λ=540nm)の回折光を検出した。このとき、非回折光屈折領域においては黒色が知覚された。
また、白色光源の入射角度を表示体D3の法線Nに対して-55度及び55度(±2度)付近とした時には、回折光屈折領域のみで、三角プリズム構造の側面による照明光の反射が起こり、結果として白色が知覚された。このとき、非回折光屈折領域においては黒色が知覚された。
また、白色光源の入射角度を表示体D3の法線Nに対して-65度及び65度(±2度)とした時には、非回折光屈折領域のみで、凹凸構造領域から射出するGreen光(λ=540nm)の回折光を検出した。このとき、回折光屈折領域においては黒色が知覚された。
【符号の説明】
【0120】
10…表示体、11…光透過層、12a…凹凸構造領域、12b…非凹凸構造領域、13…反射層、14…回折光屈折層、14a…回折光屈折領域、15…回折光屈折領域、15a…回折光屈折部、16…回折光屈折領域、16a…回折光屈折部、17…平坦領域、20…表示体、21…接着層、22a…凹凸構造領域、24…回折光屈折領域、30…印刷物、31…基材、32a…凹凸構造領域、33…印刷層、34…回折光屈折領域、35…磁気記録層、42a…凹凸構造領域、44…回折光屈折領域、52a…凹凸構造領域、54…回折光屈折領域、62a…凹凸構造領域、64…回折光屈折領域、72a…凹凸構造領域、74…回折光屈折領域、84…回折光屈折領域、L1…照明光、L2…正反射光又は0次回折光、L3…1次回折光、L4…射出光、N…法線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折光を射出する表示体において、
一方の主面に、入射光を特定の方向に回折する凹部又は凸部又はその両方を、互いに交差する第1方向及び第2方向に複数配列した凹凸構造領域を複数備えた光透過層と、
前記凹凸構造層の表面の少なくとも一部を被覆する反射層と、
前記光透過層の他方の主面又は前記反射層の表面の何れか一方に、前記光透過層と屈折率が異なる回折光屈折部を、互いに交差する第1及び第2方向に複数配列した回折光屈折領域を複数備えた回折光屈折層と、
を具備することを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記凹凸構造領域が、前記光透過層の一方の主面に複数配列されており、少なくとも1つの凹凸構造領域における複数の凹部又は凸部が、他の凹凸構造領域における複数の凹部又は凸部と比較して、少なくとも形状又は深さ又は高さ又は中心間距離又は配置パターンのうち少なくとも一つが異なることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記回折光屈折領域が、前記光透過層の他方の主面又は前記反射層の表面の何れか一方に、複数配列されており、少なくとも一つの回折光屈折領域における複数の回折光屈折部が、他の回折光屈折領域における複数の回折光屈折部と比較して、少なくとも形状又は高さ又は中心間距離又は配置パターンのうち少なくとも一つが異なることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項4】
前記凹凸構造領域が、前記光透過層の一方の主面に複数配列されており、少なくとも1つの凹凸構造領域における複数の凹部又は凸部が、他の凹凸構造領域における複数の凹部又は凸部と比較して、少なくとも形状又は深さ又は高さ又は中心間距離又は配置パターンのうち少なくとも一つが異なり、
かつ、前記回折光屈折領域が、前記光透過層の他方の主面又は前記反射層の表面の何れか一方に、複数配列されており、少なくとも一つの回折光屈折領域における複数の回折光屈折部が、他の回折光屈折領域における複数の回折光屈折部と比較して、少なくとも形状又は高さ又は中心間距離又は配置パターンのうち少なくとも一つが異なることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項5】
前記表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合、前記回折光屈折領域単位で射出された回折光の方向が異なることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表示体。
【請求項6】
前記凹凸構造領域に含まれ、隣接する凹部又は凸部又はその両方の中心間距離が200nm乃至500nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表示体。
【請求項7】
前記回折光屈折部が、三角プリズム構造又は四角錐構造又はレンチキュラーレンズ構造のうち少なくとも一つから選ばれた構造を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の表示体。
【請求項8】
前記回折光屈折層の少なくとも一部に、平坦領域を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の表示体。
【請求項9】
前記平坦領域が、前記回折光屈折領域の回折光屈折部をエネルギービーム照射によって少なくとも部分的に破壊して形成されることを特徴とする請求項8に記載の表示体。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の表示体を物品に支持したことを特徴とする表示体付き物品。
【請求項1】
回折光を射出する表示体において、
一方の主面に、入射光を特定の方向に回折する凹部又は凸部又はその両方を、互いに交差する第1方向及び第2方向に複数配列した凹凸構造領域を複数備えた光透過層と、
前記凹凸構造層の表面の少なくとも一部を被覆する反射層と、
前記光透過層の他方の主面又は前記反射層の表面の何れか一方に、前記光透過層と屈折率が異なる回折光屈折部を、互いに交差する第1及び第2方向に複数配列した回折光屈折領域を複数備えた回折光屈折層と、
を具備することを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記凹凸構造領域が、前記光透過層の一方の主面に複数配列されており、少なくとも1つの凹凸構造領域における複数の凹部又は凸部が、他の凹凸構造領域における複数の凹部又は凸部と比較して、少なくとも形状又は深さ又は高さ又は中心間距離又は配置パターンのうち少なくとも一つが異なることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記回折光屈折領域が、前記光透過層の他方の主面又は前記反射層の表面の何れか一方に、複数配列されており、少なくとも一つの回折光屈折領域における複数の回折光屈折部が、他の回折光屈折領域における複数の回折光屈折部と比較して、少なくとも形状又は高さ又は中心間距離又は配置パターンのうち少なくとも一つが異なることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項4】
前記凹凸構造領域が、前記光透過層の一方の主面に複数配列されており、少なくとも1つの凹凸構造領域における複数の凹部又は凸部が、他の凹凸構造領域における複数の凹部又は凸部と比較して、少なくとも形状又は深さ又は高さ又は中心間距離又は配置パターンのうち少なくとも一つが異なり、
かつ、前記回折光屈折領域が、前記光透過層の他方の主面又は前記反射層の表面の何れか一方に、複数配列されており、少なくとも一つの回折光屈折領域における複数の回折光屈折部が、他の回折光屈折領域における複数の回折光屈折部と比較して、少なくとも形状又は高さ又は中心間距離又は配置パターンのうち少なくとも一つが異なることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項5】
前記表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合、前記回折光屈折領域単位で射出された回折光の方向が異なることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表示体。
【請求項6】
前記凹凸構造領域に含まれ、隣接する凹部又は凸部又はその両方の中心間距離が200nm乃至500nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表示体。
【請求項7】
前記回折光屈折部が、三角プリズム構造又は四角錐構造又はレンチキュラーレンズ構造のうち少なくとも一つから選ばれた構造を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の表示体。
【請求項8】
前記回折光屈折層の少なくとも一部に、平坦領域を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の表示体。
【請求項9】
前記平坦領域が、前記回折光屈折領域の回折光屈折部をエネルギービーム照射によって少なくとも部分的に破壊して形成されることを特徴とする請求項8に記載の表示体。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の表示体を物品に支持したことを特徴とする表示体付き物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図15】
【図11】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図15】
【図11】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−123154(P2011−123154A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279229(P2009−279229)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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