説明

表示制御装置および表示装置

【課題】表示の停止状態からの復帰がホストからの制御コマンドにより行われるようになっている表示装置の表示駆動装置に対して、ESDにより生じた異常表示状態からホスト側に大きな負担をかけないで表示の自動復帰を行わせる表示制御装置を実現する。
【解決手段】ホストから受信した制御コマンドに従って、制御コマンドに関連してバスを介して受信した表示データを用いた表示駆動を行う表示駆動装置に対し、リセットによる表示の停止状態時(S2〜S6)に停止状態開始時(S2)から一定時間内にバスに表示データが流れていることを検出すると、表示駆動装置による制御コマンドの受信の有無に関わらず、表示駆動装置に通常表示の駆動を行う状態(S7)に移行させる一方、一定時間が経過した後は、表示駆動装置が制御コマンドを受信しない限り、表示駆動装置に停止状態(S6)の表示の駆動を行うことを継続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置における表示の復帰機能に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置における表示データの伝送のインタフェースは、信号線数の多いパラレル伝送方式のデジタルRGB方式から、信号線数の少ない高速シリアル伝送方式へと移行しつつある。特に、携帯電話などのモバイル機器では、配線数を減少させて、配線の設置スペースの省略および配線の断線防止を図る目的があるために、シリアル伝送方式は重要な技術となっている。また、差動伝送を行うことで、高速および低消費電力の伝送が達成できる。このようなシリアル伝送では表示データと制御コマンドとは同一バス上を伝送されることとなる。
【0003】
例えば、モバイル機器のアプリケーションプロセッサと周辺装置とのインタフェースに関して共通仕様を定めたMIPI(Mobile Industry Processor Interface)スタンダードなどでは、アプリケーションプロセッサをホスト側として周辺装置の動作を制御する。制御信号を用いる表示駆動装置では、通常表示動作の開始をコマンド制御による指定で行うようになっており、電源起動後にホスト側より表示駆動装置に起動コマンドが送られると、これに沿って画面の表示が開始される。
【特許文献1】特開平5−158598号公報(1993年6月25日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、電子機器にはESD(Electro Static Discharge:静電破壊)による誤動作が起こり得るが、ESDにより前記の表示駆動装置にリセットが発生した場合には、表示はオフ状態となってしまう。表示の開始にはコマンドが必要であるので、ホスト側が表示装置にリセットが発生したことを検出しない限り、表示は復帰しないこととなる。
【0005】
このことを、MIPI仕様の表示装置について、図8を用いて説明する。
【0006】
図8に、MIPI仕様の表示装置におけるパワー制御のシーケンス例を示す。
【0007】
MIPIスタンダードでは、S101で示す電源ONやハードウェア(HW)/ソフトウェア(SW)リセットなどの、リセットが発生した後は、装置がS102で示すスリープモードに移行する(enter sleep mode)ことが規定されている。そして、このスリープモードから、S103で示す通常の表示状態、つまりスリープモードオフに移行する(exit sleep mode)にはホスト側から表示駆動装置にexit_sleep_modeコマンドが送信される必要がある。
【0008】
この規定に完全に従った場合には、ESDの事象によってリセットが発生すると、電源ONシーケンスのステートに移行した後、スリープモードON状態が保持され、ディスプレイ上の画面表示は行われない状態となる。つまり、ユーザーから見れば異常表示状態が発生したと認識されることとなる。
【0009】
これを回避する手段として、ホスト側で周期的に、表示停止状態から抜ける指示を行うコマンドを発生する手法や、周期的に表示装置の状態を読み出して、動作が停止していると判断すると初期化コマンドを発生するといった、ホスト側のソフトウェアに通常の処理とは関係のない負担をかける方法が一般的である。しかしながら、このようなソフトウェアによる手法はホスト側の負担が大きく、望ましい手法ではない。
【0010】
このように、従来は、表示の停止状態からの復帰がホストからの制御コマンドにより行われるようになっている表示装置の表示駆動装置に対して、ESDにより生じた異常表示状態からホスト側に大きな負担をかけないで表示の自動復帰を行わせることができないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、表示の停止状態からの復帰がホストからの制御コマンドにより行われるようになっている表示装置の表示駆動装置に対して、ESDにより生じた異常表示状態からホスト側に大きな負担をかけないで表示の自動復帰を行わせることができる表示制御装置および表示装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の表示制御装置は、上記課題を解決するために、ホストから受信した制御コマンドに従って、前記制御コマンドに関連してバスを介して受信した表示データを用いた表示駆動を行う表示駆動装置に対し、リセットによる表示の停止状態時に前記停止状態開始時から一定時間内に前記バスに前記表示データが流れていることを検出すると、前記表示駆動装置による前記制御コマンドの受信の有無に関わらず、前記表示駆動装置に通常表示の駆動を行う状態に移行させる信号を出力する一方、前記一定時間が経過した後は、前記表示駆動装置が前記制御コマンドを受信しない限り、前記表示駆動装置に前記停止状態の表示の駆動を行うことを継続させる信号を出力することを特徴としている。
【0013】
上記の発明によれば、リセットにより表示が停止状態になった場合に、一定時間内にバスに表示データが流れていることを検出すると、ESDによる異常表示状態であると判定して、ホストからの制御コマンドの有無に関わらず通常の表示状態に復帰させることができ、一定時間が経過した後は、バスに表示データが流れていてもホストから制御コマンドを受信しない限り、通常の表示状態に復帰させないので、すぐに表示が立ち上がると問題が生じる場合の表示復帰を避けることとなる。また、この表示制御装置はロジックなどのハードウェアで構成することができるので、ホストに負担のかかるソフトウェア処理を行わせる必要がない。
【0014】
以上により、表示の停止状態からの復帰がホストからの制御コマンドにより行われるようになっている表示装置の表示駆動装置に対して、ESDにより生じた異常表示状態からホスト側に大きな負担をかけないで表示の自動復帰を行わせることができる表示制御装置を実現することができるという効果を奏する。
【0015】
本発明の表示制御装置は、上記課題を解決するために、ホストから受信した制御コマンドに従って、前記制御コマンドに関連してバスを介して受信した表示データを用いた表示駆動を行う表示駆動装置に対して動作の制御を行う表示制御装置であって、リセットによる表示の停止状態時に前記停止状態開始時から時間をカウントするタイマと、前記タイマのカウント出力が一定時間に達しているか否かの比較を行う比較手段と、前記バスに前記表示データが流れているか否かを検出する検出手段とを備え、前記検出手段は、前記比較手段による前記カウント出力が一定時間に達していないことを示す結果が入力されているときに、前記バスに前記表示データが流れていることを検出すると、前記表示駆動装置に通常表示の駆動を行う状態に移行させる信号を出力する一方、前記比較手段による前記カウント出力が一定時間に達していることを示す結果が入力されているときに、前記バスに前記表示データが流れていることを検出すると、前記表示駆動装置が前記制御コマンドを受信しない限り、前記表示駆動装置に前記停止状態の表示の駆動を行うことを継続させる信号を出力することを特徴としている。
【0016】
上記の発明によれば、リセットにより表示が停止状態になった場合に、一定時間内にバスに表示データが流れていることを検出すると、ESDによる異常表示状態であると判定して、ホストからの制御コマンドの有無に関わらず通常の表示状態に復帰させることができ、一定時間が経過した後は、バスに表示データが流れていてもホストから制御コマンドを受信しない限り、通常の表示状態に復帰させないので、すぐに表示が立ち上がると問題が生じる場合の表示復帰を避けることとなる。また、この表示制御装置はロジックなどのハードウェアで構成することができるので、ホストに負担のかかるソフトウェア処理を行わせる必要がない。
【0017】
以上により、表示の停止状態からの復帰がホストからの制御コマンドにより行われるようになっている表示装置の表示駆動装置に対して、ESDにより生じた異常表示状態からホスト側に大きな負担をかけないで表示の自動復帰を行わせることができる表示制御装置を実現することができるという効果を奏する。
【0018】
本発明の表示制御装置は、上記課題を解決するために、ホストから受信した制御コマンドに従って、前記制御コマンドに関連して内部のメモリに書き込まれた表示データを用いた表示駆動を行う表示駆動装置に対し、リセットによる表示の停止状態時に前記停止状態開始時から一定時間内に前記メモリに前記表示データが書き込まれていることを検出すると、前記表示駆動装置による前記制御コマンドの受信の有無に関わらず、前記表示駆動装置に通常表示の駆動を行う状態に移行させる信号を出力する一方、前記一定時間が経過した後は、前記表示駆動装置が前記制御コマンドを受信しない限り、前記表示駆動装置に前記停止状態の表示の駆動を行うことを継続させる信号を出力することを特徴としている。
【0019】
上記の発明によれば、リセットにより表示が停止状態になった場合に、一定時間内にメモリに表示データが書き込まれていることを検出すると、ESDによる異常表示状態であると判定して、ホストからの制御コマンドの有無に関わらず通常の表示状態に復帰させることができ、一定時間が経過した後は、メモリに表示データが書き込まれていてもホストから制御コマンドを受信しない限り、通常の表示状態に復帰させないので、すぐに表示が立ち上がると問題が生じる場合の表示復帰を避けることとなる。また、この表示制御装置はロジックなどのハードウェアで構成することができるので、ホストに負担のかかるソフトウェア処理を行わせる必要がない。
【0020】
以上により、表示の停止状態からの復帰がホストからの制御コマンドにより行われるようになっている表示装置の表示駆動装置に対して、ESDにより生じた異常表示状態からホスト側に大きな負担をかけないで表示の自動復帰を行わせることができる表示制御装置を実現することができるという効果を奏する。
【0021】
本発明の表示制御装置は、上記課題を解決するために、ホストから受信した制御コマンドに従って、前記制御コマンドに関連して内部のメモリに書き込まれた表示データを用いた表示駆動を行う表示駆動装置に対して動作の制御を行う表示制御装置であって、リセットによる表示の停止状態時に前記停止状態開始時から時間をカウントするタイマと、前記タイマのカウント出力が一定時間に達しているか否かの比較を行う比較手段と、前記メモリに前記表示データが書き込まれているか否かを検出する検出手段とを備え、前記検出手段は、前記比較手段による前記カウント出力が一定時間に達していないことを示す結果が入力されているときに、前記メモリに前記表示データが書き込まれていることを検出すると、前記表示駆動装置に通常表示の駆動を行う状態に移行させる信号を出力する一方、前記比較手段による前記カウント出力が一定時間に達していることを示す結果が入力されているときに、前記メモリに前記表示データが書き込まれていることを検出すると、前記表示駆動装置が前記制御コマンドを受信しない限り、前記表示駆動装置に前記停止状態の表示の駆動を行うことを継続させる信号を出力することを特徴としている。
【0022】
上記の発明によれば、表示が停止状態になった場合に、一定時間内にメモリに表示データが書き込まれていることを検出すると、ESDによる異常表示状態であると判定して、ホストからの制御コマンドの有無に関わらず通常の表示状態に復帰させることができ、一定時間が経過した後は、メモリに表示データが書き込まれていてもホストから制御コマンドを受信しない限り、通常の表示状態に復帰させないので、すぐに表示が立ち上がると問題が生じる場合の表示復帰を避けることとなる。また、この表示制御装置はロジックなどのハードウェアで構成することができるので、ホストに負担のかかるソフトウェア処理を行わせる必要がない。
【0023】
以上により、表示の停止状態からの復帰がホストからの制御コマンドにより行われるようになっている表示装置の表示駆動装置に対して、ESDにより生じた異常表示状態からホスト側に大きな負担をかけないで表示の自動復帰を行わせることができる表示制御装置を実現することができるという効果を奏する。
【0024】
本発明の表示制御装置は、上記課題を解決するために、前記バスはMIPIインタフェースのバスであることを特徴としている。
【0025】
上記の発明によれば、MIPI仕様の装置においてスリープモードへの移行に対するその後の処理を適切に選択することができるという効果を奏する。
【0026】
本発明の表示制御装置は、上記課題を解決するために、前記バスは、前記表示データとしてのデジタルRGB信号をパラレル伝送するバスであることを特徴としている。
【0027】
上記の発明によれば、デジタルRGBをパラレル伝送する仕様の装置において表示の停止状態への移行に対するその後の処理を適切に選択することができるという効果を奏する。
【0028】
本発明の表示制御装置は、上記課題を解決するために、前記バスはMDDIインタフェースのバスであることを特徴としている。
【0029】
上記の発明によれば、MDDI仕様の装置において表示の停止状態への移行に対するその後の処理を適切に選択することができるという効果を奏する。
【0030】
本発明の表示装置は、上記課題を解決するために、前記表示制御装置を備えていることを特徴としている。
【0031】
上記の発明によれば、表示の停止状態からの復帰がホストからの制御コマンドにより行われるようになっている表示装置であって、ESDにより生じた異常表示状態からホスト側に大きな負担をかけないで表示の自動復帰を行わせることができる表示装置を実現することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の表示制御装置は、以上のように、ホストから受信した制御コマンドに従って、前記制御コマンドに関連してバスを介して受信した表示データを用いた表示駆動を行う表示駆動装置に対し、リセットによる表示の停止状態時に前記停止状態開始時から一定時間内に前記バスに前記表示データが流れていることを検出すると、前記表示駆動装置による前記制御コマンドの受信の有無に関わらず、前記表示駆動装置に通常表示の駆動を行う状態に移行させる信号を出力する一方、前記一定時間が経過した後は、前記表示駆動装置が前記制御コマンドを受信しない限り、前記表示駆動装置に前記停止状態の表示の駆動を行うことを継続させる信号を出力する。
【0033】
また、本発明の表示制御装置は、以上のように、ホストから受信した制御コマンドに従って、前記制御コマンドに関連して内部のメモリに書き込まれた表示データを用いた表示駆動を行う表示駆動装置に対し、リセットによる表示の停止状態時に前記停止状態開始時から一定時間内に前記メモリに前記表示データが書き込まれていることを検出すると、前記表示駆動装置による前記制御コマンドの受信の有無に関わらず、前記表示駆動装置に通常表示の駆動を行う状態に移行させる信号を出力する一方、前記一定時間が経過した後は、前記表示駆動装置が前記制御コマンドを受信しない限り、前記表示駆動装置に前記停止状態の表示の駆動を行うことを継続させる信号を出力する。
【0034】
以上により、表示の停止状態からの復帰がホストからの制御コマンドにより行われるようになっている表示装置の表示駆動装置に対して、ESDにより生じた異常表示状態からホスト側に大きな負担をかけないで表示の自動復帰を行わせることができる表示制御装置を実現することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の一実施形態について図1ないし図7に基づいて説明すると以下の通りである。
【0036】
図6に、本実施形態に係る液晶表示装置(表示装置)1の構成を示す。
【0037】
液晶表示装置1は携帯電話の形態をなしており、表示部2、液晶ドライバ3、アンテナ4、RF回路5、ベースバンドプロセッサ6、アプリケーションプロセッサ7、および、表示制御回路8を備えている。表示制御回路8は、ここでは液晶ドライバ3の中に組み込まれているが、液晶ドライバ3の外部に設けられていてもよい。
【0038】
表示部2は画素PIXがマトリクス状に配置されたものである。画素PIXは選択素子であるTFT11、液晶容量CL、および、補助容量Csを備えている。対向電極には対向電圧Vcomが、また、補助容量配線には補助容量電圧Vcsが、それぞれ印加される。画素PIXにはソースバスラインSL1〜SLnを介してデータ信号が書き込まれる。ソースバスラインSL1〜SLnは液晶ドライバ3からデータ信号を供給される。また、画素PIXにデータ信号を書き込むために、複数の画素PIXからなる各行を選択する走査信号が、液晶ドライバ3からゲートバスラインGL1〜GLnに順次供給される。
【0039】
液晶ドライバ(表示駆動装置、表示制御装置)3は、1チップまたは複数チップからなる、表示部2の表示を駆動する回路であり、タイミングジェネレータや、ソースドライバ、ゲートドライバ、電源回路、メモリといった表示動作に関する各回路部を含んでいる。また、液晶ドライバ3は、ここではアプリケーションプロセッサ7をホストとして制御されるようになっており、そのインタフェースも内部に含んでいる。後述の実施例によっては、液晶ドライバ3はベースバンドプロセッサ6を含むベースバンドLSIをホストとして制御されることも可能である。
【0040】
アンテナ4は携帯電話の送受信用のアンテナである。RF回路5は、送受信に伴う高周波信号を処理する。ベースバンドプロセッサ6はRF回路5で復調されたベースバンド信号を処理し、図示しない通話信号処理回路やデータ通信処理回路の動作を制御する。アプリケーションプロセッサ7は、前記液晶ドライバ3や、図示しない動画・音楽・ゲームなどの処理を行う周辺装置を制御する。
【0041】
表示制御回路8はICまたはICの一部として構成され、アプリケーションプロセッサ7と液晶ドライバ3との間を結ぶバスI/F BUSにビデオストリームが存在するか否か、すなわち、表示データが流れているか否かを監視して、表示データの有無により液晶ドライバ3に出力する制御信号APSの内容を変更する。この処理の詳細については後述する。なお、ここでは表示制御回路8が液晶ドライバ3内に組み込まれているため、液晶ドライバ3を表示駆動装置として扱うと同時に本発明の表示制御装置としても扱うが、表示制御回路8が単独でICを構成していてもいなくても、表示制御回路8のみで前記表示制御装置として扱うことは可能である。
【0042】
表示制御回路8の動作としては、図7に示すものがまず考えられる。
【0043】
S201で示す電源ONやハードウェア(HW)/ソフトウェア(SW)リセットなどの、リセットが発生した後は、液晶ドライバ3による表示駆動がS202で示すスリープモード、すなわち表示の停止状態に移行する(enter sleep mode)。また、ホストであるアプリケーションプロセッサ7から液晶ドライバ3にexit_sleep_modeコマンドが送信されると、液晶ドライバ3の駆動は、スリープモードから、S203で示すスリープモードオフ、すなわち通常の表示状態に移行する(exit sleep mode)。ここまでは、図8で説明した動作と同じであり、アプリケーションプロセッサ7と液晶ドライバ3との間だけで決まる動作である。そして、S202において表示制御回路8がバスI/F BUSにビデオストリームが存在していることを検出すると、表示制御回路8は液晶ドライバ3に自動電源ONシーケンスを行わせる内容の制御信号APSを出力して、液晶ドライバ3の表示駆動はスリープモードオフに移行する。
【0044】
この方式に従うと、正規の電源オン時はもちろんのこと、ESDにより、液晶ドライバ3に異常リセットが発生して表示が停止状態になっても、表示制御回路8がバスI/F BUS上のビデオストリームを検出することにより、液晶ドライバ3は起動する。従って、表示部2の表示は一瞬消えたとしてもすぐに復帰し、ユーザーが異常と認識することを抑えることができることとなる。
【0045】
しかしながら、このビデオストリーム検出での立ち上がりを無制限に許容すると、アプリケーションプロセッサ7やベースバンドプロセッサ6などのホストと液晶ドライバ3などの周辺装置とのインタフェース規格からの逸脱を招くばかりでなく、ビデオストリームが存在するだけで表示が立ち上がるという弊害を生じることとなる。
【0046】
このような弊害を生じる例を以下に列挙する。
【0047】
表示データは、例えば一般的に、バスの仕様にもよるが、複数の表示デバイスに共通のバスを流れている場合がある。このような場合には、図7の動作を行うことにより、他の表示デバイスへのビデオストリームに反応して、総ての表示デバイスが表示の停止状態から起動してしまうことが考えられる。
【0048】
また、送受信デバイス間が一対一の接続であっても、どのタイミングで表示データの送出を始めるかはホスト側に依存しており、本来の表示装置の立ち上げよりも以前から、表示データが流れ出すと本来の表示開始以前に表示が行われ、不要な画面が現れるといった状態や、電源ONのシーケンス途中にビデオストリーム検出による自動起動が発生し、コマンドによる起動処理と交錯することで、レジスタ設定の組み合わせ状況が一時的に入れ替わるなどの状態が考えられ、表示装置が不正常な状態に陥る可能性がある。これは、避けなければならない事態である。
【0049】
以上が、ビデオストリームが存在するだけで表示が立ち上がるという弊害を生じる例である。
【0050】
しかし、このような弊害を生じる例では表示のリセット解除直後からビデオストリームが存在することはない一方、ESDに起因する異常表示状態の場合には表示のリセット解除直後からビデオストリームが存在しているので、表示のリセット解除直後から、ある制限された時間内に、バスにビデオストリームが存在するか否かによって、通常の表示状態に復帰させるべきかどうかを区別することが可能である。
【0051】
そこで、本実施形態では、表示制御回路8を図2の構成とし、表示制御回路8を用いて図1の動作を行うことによって、ESDに起因する異常表示状態の場合にのみ、ホストからの制御コマンドが無くても自動的に通常の表示状態に復帰させるようにする。
【0052】
図2に示すように、表示制御回路8はロジックなどのハードウェアのみで構成されており、発振回路8a、タイマ8b、比較部(比較手段)8c、Dフリップフロップ8d、および、ビデオストリーム検出部(検出手段)8eを備えている。
【0053】
S1で電源ONやハードウェア(HW)/ソフトウェア(SW)リセットによって、表示のリセットが生じると、タイマ8bがリセット信号RESETによってリセットされる(Timer=0)とともに、Dフリップフロップ8dのD端子に入力される値を”H”とすることによりDフリップフロップ8dの出力であるフラグVSINHを0とする。これにより、タイマ8bは発振回路8aから出力されるクロックのカウントを開始する。そして、液晶ドライバ3はS2に示すスリープモード、すなわち表示の停止状態に移行する。
【0054】
S3でビデオストリーム検出部8eはバスI/F BUSの値を取得し、当該バスI/F BUSにビデオストリームが存在するか否かを検出する。ビデオストリーム検出部8eにはDフリップフロップ8dの出力VSINHが入力されており、S3でビデオストリームが存在すれば、同時にフラグVSINH=0であることから、直ちにS7のスリープモードオフすなわち通常の表示状態へ移行する。このとき、ビデオストリーム検出部8eは制御信号APSとして、自動電源ONシーケンスを指示する内容の信号を出力して、液晶ドライバ3に入力する。液晶ドライバ3は、これに従って表示の通常動作を行う。自動電源ONシーケンスは一般的に知られている技術であり、ここではその詳細を省略する。S3でビデオストリームが存在しない場合には、S4でタイマ8bのカウント出力が1つ増加するのを待つ。タイマ8bのカウント出力は、発振回路OSCからの出力を分周した結果を出力するなどすればよい。
【0055】
S5で比較部8cはタイマ8bのカウント出力(Value)を上限値(limit)と比較し、カウント出力が上限値よりも小さければ0を出力し、カウント出力が上限値よりも大きければ1を出力する。比較部8cの出力はDフリップフロップ8dのクロック入力端子に入力される。このとき、比較部8cが0を出力すればDフリップフロップ8dはフラグVSINH=0を出力し続け、比較部8cが1を出力すればDフリップフロップ8eはフラグVSINH=1を出力するようになる。S6では、S5でフラグVSINH=0であったならばS3へ戻り、S5でフラグVSINH=1となったならばそこでアプリケーションプロセッサ7から制御コマンドが送信されてくるのを待つ動作を行う。フラグVSINH=1の場合には、ビデオストリーム検出部8eが出力する制御信号APSは、液晶ドライバ3をアプリケーションプロセッサ7からの制御コマンドの送信を待つ状態に保たせる内容の信号となる。
【0056】
こうして、表示の停止状態開始時から、タイマのカウント出力が上限値に達するまでの時間である一定時間内はビデオストリームが存在するか否かの検出を行い、タイマのカウント出力が上限値に達した後である一定時間が経過した後はビデオストリームが存在するか否かの検出を行わない。上記一定時間内にビデオストリームが検出されれば、表示は通常状態に復帰する。上記一定時間が経過した後は、ビデオストリームの存在による自動電源ONシーケンスの開始は禁止される。
【0057】
なお、図1の例では、アプリケーションプロセッサ7からの制御コマンドの受信はS6のステートでのみチェックしているが、制御コマンドの受信はどのステートで行ってもよく、液晶ドライバ3は制御コマンドを受信したならば、現在のステート位置とは関係なくスリープモードオフに移行することが可能であることはいうまでもない。また、表示制御回路8を構成する図2のロジックはあくまでも概念的なものであり、実際にロジックを形成する場合には、同期化を図る構成などロジック動作に付随する構成を初めとする種々の回路が追加され得るのは当然である。
【0058】
次に、図3〜図5に、ホストと液晶ドライバとのインタフェースの種類による、表示制御回路8と液晶ドライバ3との構成関係の違いを説明する。
【0059】
図3に、前述の図6に示した液晶ドライバ3の構成例として、インタフェースにMIPIを採用した場合の構成を示す。表示制御回路8はMIPIインタフェース31に含まれている。液晶ドライバ3内では、シリアル伝送のバスI/F BUSから制御コマンドおよび表示データをMIPIインタフェース31で受信し、制御コマンドがレジスタ32に書き込まれる。また、その受信タイミングに基づいてタイミングジェネレータ35がタイミング信号を生成する。当該タイミング信号に基づいて、MIPIインタフェース31からシフトレジスタ33、ソース駆動回路34へと順に表示データが送られ、ソースバスラインSLにデータ信号が供給される。このとき、表示制御回路8は、バスI/F BUSからビデオストリームとしてビデオパケットを検出することができる。また、表示制御回路8は、制御信号APSをタイミングジェネレータ35に出力する。
【0060】
図4に、制御インタフェースとしてシリアル通信のSPI(Serial Peripheral Interface)を用い、表示データとしてデジタルRGB信号をホストの制御によりパラレル伝送で供給する液晶ドライバ31の構成を示す。この場合には、ベースバンドプロセッサを含むベースバンドLSIと液晶ドライバ31との間に設けられるバスが一般的な構成となるが、図3と同様にアプリケーションプロセッサをホストとしてもよい。液晶ドライバ31内では、SPIバスからレジスタ311に制御コマンドが書き込まれ、この受信タイミングに基づいてタイミングジェネレータ314がタイミング信号を生成する。当該タイミング信号に基づいて、デジタルRGB信号がシフトレジスタ312、ソース駆動回路313へと順に送られ、ソースバスラインSLにデータ信号が供給される。このとき、表示制御回路8は、デジタルRGB信号のバスからデジタルRGBのビデオストリームを、垂直同期タイミングや水平同期タイミングを検出することにより検出することができる。また、表示制御回路8は、制御信号APSをタイミングジェネレータ314に出力する。
【0061】
図5に、インタフェースにMDDI(Mobile Display Digital Interface)を採用した場合の液晶ドライバ32の構成を示す。この場合には、ベースバンドプロセッサを含むベースバンドLSIと液晶ドライバ31との間に設けられるバスが一般的な構成となるが、図3と同様にアプリケーションプロセッサをホストとしてもよい。表示制御回路8はMDDIインタフェース321に含まれている。液晶ドライバ32内では、シリアル伝送のバスI/F BUSから制御コマンドをMDDIインタフェース321で受信し、制御コマンドがレジスタ322に書き込まれる。また、レジスタ322に書き込まれた制御コマンドに基づいてタイミングジェネレータ325がタイミング信号を生成する。当該タイミング信号により、表示用RAM323に表示データが書き込まれる。表示用RAM323の表示データはタイミングジェネレータ325のタイミング信号に基づいてソース駆動回路324に送られ、ソースバスラインSLにデータ信号が供給される。表示制御回路8は、タイミングジェネレータ325から表示用RAM323に書き込まれる表示データをビデオストリームとして検出することができる。また、表示制御回路8は、制御信号APSをタイミングジェネレータ325に出力する。
【0062】
なお、図4および図5の場合には、図1および図2においてはスリープモードの代わりに表示の停止状態という表現を用いればよい。
【0063】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。例えばEL表示装置にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、携帯端末に特に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、表示制御・駆動状態の状態を示す遷移図である。
【図2】本発明の実施形態を示すものであり、表示制御回路の構成を示す回路ブロック図である。
【図3】第1のインタフェースを用いる場合の液晶ドライバの構成を示すブロック図である。
【図4】第2のインタフェースを用いる場合の液晶ドライバの構成を示すブロック図である。
【図5】第3のインタフェースを用いる場合の液晶ドライバの構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施形態を示すものであり、表示装置の構成を示すブロック図である。
【図7】その他の表示制御・駆動状態の状態を示す遷移図である。
【図8】従来技術を示すものであり、表示制御・駆動状態の状態を示す遷移図である。
【符号の説明】
【0066】
1 液晶表示装置(表示装置)
3 液晶ドライバ(表示駆動装置、表示制御装置)
7 アプリケーションプロセッサ(ホスト)
8 表示制御回路(表示制御装置)
8c 比較部(比較手段)
8e ビデオストリーム検出部(検出手段)
I/F BUS バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストから受信した制御コマンドに従って、前記制御コマンドに関連してバスを介して受信した表示データを用いた表示駆動を行う表示駆動装置に対し、リセットによる表示の停止状態時に前記停止状態開始時から一定時間内に前記バスに前記表示データが流れていることを検出すると、前記表示駆動装置による前記制御コマンドの受信の有無に関わらず、前記表示駆動装置に通常表示の駆動を行う状態に移行させる信号を出力する一方、前記一定時間が経過した後は、前記表示駆動装置が前記制御コマンドを受信しない限り、前記表示駆動装置に前記停止状態の表示の駆動を行うことを継続させる信号を出力することを特徴とする表示制御装置。
【請求項2】
ホストから受信した制御コマンドに従って、前記制御コマンドに関連してバスを介して受信した表示データを用いた表示駆動を行う表示駆動装置に対して動作の制御を行う表示制御装置であって、
リセットによる表示の停止状態時に前記停止状態開始時から時間をカウントするタイマと、前記タイマのカウント出力が一定時間に達しているか否かの比較を行う比較手段と、前記バスに前記表示データが流れているか否かを検出する検出手段とを備え、
前記検出手段は、前記比較手段による前記カウント出力が一定時間に達していないことを示す結果が入力されているときに、前記バスに前記表示データが流れていることを検出すると、前記表示駆動装置に通常表示の駆動を行う状態に移行させる信号を出力する一方、前記比較手段による前記カウント出力が一定時間に達していることを示す結果が入力されているときに、前記バスに前記表示データが流れていることを検出すると、前記表示駆動装置が前記制御コマンドを受信しない限り、前記表示駆動装置に前記停止状態の表示の駆動を行うことを継続させる信号を出力することを特徴とする表示制御装置。
【請求項3】
ホストから受信した制御コマンドに従って、前記制御コマンドに関連して内部のメモリに書き込まれた表示データを用いた表示駆動を行う表示駆動装置に対し、リセットによる表示の停止状態時に前記停止状態開始時から一定時間内に前記メモリに前記表示データが書き込まれていることを検出すると、前記表示駆動装置による前記制御コマンドの受信の有無に関わらず、前記表示駆動装置に通常表示の駆動を行う状態に移行させる信号を出力する一方、前記一定時間が経過した後は、前記表示駆動装置が前記制御コマンドを受信しない限り、前記表示駆動装置に前記停止状態の表示の駆動を行うことを継続させる信号を出力することを特徴とする表示制御装置。
【請求項4】
ホストから受信した制御コマンドに従って、前記制御コマンドに関連して内部のメモリに書き込まれた表示データを用いた表示駆動を行う表示駆動装置に対して動作の制御を行う表示制御装置であって、
リセットによる表示の停止状態時に前記停止状態開始時から時間をカウントするタイマと、前記タイマのカウント出力が一定時間に達しているか否かの比較を行う比較手段と、前記メモリに前記表示データが書き込まれているか否かを検出する検出手段とを備え、
前記検出手段は、前記比較手段による前記カウント出力が一定時間に達していないことを示す結果が入力されているときに、前記メモリに前記表示データが書き込まれていることを検出すると、前記表示駆動装置に通常表示の駆動を行う状態に移行させる信号を出力する一方、前記比較手段による前記カウント出力が一定時間に達していることを示す結果が入力されているときに、前記メモリに前記表示データが書き込まれていることを検出すると、前記表示駆動装置が前記制御コマンドを受信しない限り、前記表示駆動装置に前記停止状態の表示の駆動を行うことを継続させる信号を出力することを特徴とする表示制御装置。
【請求項5】
前記バスはMIPIインタフェースのバスであることを特徴とする請求項1または2に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記バスは、前記表示データとしてのデジタルRGB信号をパラレル伝送するバスであることを特徴とする請求項1または2に記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記バスはMDDIインタフェースのバスであることを特徴とする請求項3または4に記載の表示制御装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の表示制御装置を備えていることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−134185(P2009−134185A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311628(P2007−311628)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】