説明

表示方法、表示装置、光学ユニット、及び電子機器

【課題】焦点が容易に合う表示方法とそれを利用した表示装置、光学ユニット、及びその表示装置を搭載した電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の表示方法は、複数の画素を用いて画像を表示する方法であって、
複数の前記画素からの光束を観察者の眼の瞳に投影する工程と、
前記画素に対応する光射出領域の投影像を観察者の瞳の位置近傍で互いに重ねる工程とを有し、
前記瞳に入射する前記光束の径は、前記瞳の径よりも小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示方法、表示装置、光学ユニット、及びその表示装置を搭載した電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
映像や文字を表示する表示装置(ディスプレイ)として、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイがある。ここで、これらの表示装置は視度の調節が出来ない。ところで、高齢化社会の進展に伴って老眼(老視)の高齢者が増えている。このような老眼(老視)の高齢者でも、表示装置を容易に見るようにできることが望ましい。このため、視度調節が可能な表示装置、特にフラットパネルディスプレイ(適宜、「FPD」という)が望まれている。
【0003】
特に、携帯電話の普及やデジタルカメラの普及により、屋外でFPDによる表示を見る機会が増えている。携帯電話やデジタルカメラのFPDを見る時、その都度、老眼鏡を掛けるのは非常に煩わしい。
【0004】
また、デジタル一眼レフカメラには、ライブビューモニターとしてFPDが用いられている。デジタル一眼レフカメラにおいて、遠方の被写体を見つつ、ライブビューモニターを見るために、その都度、老眼鏡を掛けたり外したりするのは、実際的ではない。
【0005】
また、カーナビゲーションシステムのモニターを見るときは、観察者は運転中である。このため、老眼鏡を掛け外しするのは危険であり、事実上不可能である。さらに、この他にも、パソコン(PC)の液晶画面を観察するときも、観察者が、その都度、老眼鏡を掛けるのは煩わしい。そこで、老眼鏡を掛け外しすることなく、モニターを見ることができる電子機器が望まれている。
【0006】
すなわち、従来、老眼鏡を掛けなくても焦点の合った画像を見ることの出来るFPDは存在していなかった。また、そのような電子機器は存在していなかった。老眼鏡等、メガネの掛け外しが必要であった。最近ではこのような問題は指摘されつつある。例えば、特許文献1には、エッジ強調をした補正画像を表示する方法が提案されている。また、特許文献2にはテプリッツ行列の逆行列で生成した事前補正画像を用いる方法が提案されている。更に特許文献3にはルーペを用いる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3552413号公報
【特許文献2】特開2007−128355号公報
【特許文献3】特開2009−63624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1によるエッジ強調の手法では、表示情報を多少見易くはするものの、デフォーカス像を回復することは不可能である。像がボケる原因はデフォーカスによるものであるが、特許文献1における補正はデフォーカスの情報を用いた補正ではないので、デフォーカス像を回復できないのは当然である。
【0009】
また、特許文献2では、眼の焦点調節不足による点広がり関数からなるテプリッツ行列を用いて画像を補正している。補正画像データに複素数は生じないものの、その結果、特許文献1と同じエッジ強調程度の補正に留まり、実際の効果は少なく実用には至っていない。
【0010】
更に、特許文献3では、フレネルレンズをデジタルカメラのモニターであるFPDの手前に取り付け、ルーペのようにFPDを覗く構成例が示されている。しかしながら、老眼の補正をする為には、フレネルレンズをFPDから数cm程度の距離まではなす必要があり、実用的ではない。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、焦点が容易に合う表示方法とそれを利用した表示装置、光学ユニット、及びその表示装置を搭載した電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、第1の側面において本発明にしたがう表示方法は、
複数の画素を用いて画像を表示する方法であって、
複数の画素からの光束を観察者の眼の瞳に投影する工程と、
画素に対応する光射出領域の投影像を観察者の瞳の位置近傍で互いに重ねる工程とを有し、
瞳に入射する前記光束の径は、瞳の径よりも小さいことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、光射出領域に画像の情報を与えるのは情報画素であることが望ましい。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、情報画素の配列は光射出領域の配列と同じであることが望ましい。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、情報画素が光射出領域であることが望ましい。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、各光射出点の投影像が、観察者の眼の瞳径に一つ以上、且つ四つ以下入るように光射出点を配置することが望ましい。
【0017】
また、本発明の好ましい態様によれば、光射出領域の投影像を、観察者の眼の位置近傍で互いに重ねる工程において、レンズを用いて投影像を重ねることが望ましい。
【0018】
また、本発明の好ましい態様によれば、各光射出点の投影像の大きさが0.5mmから2.8mmであることが望ましい。
【0019】
また、第2の側面において本発明にしたがう表示装置は、複数の画素を用いて画像を表示する表示装置において、
各画素に相当するレンズを有するマイクロレンズアレイと、
マイクロレンズアレイに対応する光射出領域に少なくとも一つ設けられている光射出点と、
光射出領域の投影像を重ね合わせるフィールドレンズと、
を有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の好ましい態様によれば、光射出領域に画像の情報を与える情報画素を有することが望ましい。
【0021】
また、本発明の好ましい態様によれば、光射出点の配置が、各光射出領域において同じであり、
マイクロレンズは光射出点を含む光射出領域を観察者の眼の位置近傍に投影し、
マイクロレンズによって投影された光射出点の大きさが観察者の眼の瞳径より小さいことが望ましい。
【0022】
また、本発明の好ましい態様によれば、マイクロレンズにより投影される光射出点を、観察者の瞳に入射させることによりマイクロレンズの投影像を観察者の眼の網膜上に生じせしめることが望ましい。
【0023】
また、本発明の好ましい態様によれば、光射出点の配置が六方格子状であることが望ましい。
【0024】
また、本発明の好ましい態様によれば、情報画素の配列が光射出領域の配列と同じであることが望ましい。
【0025】
また、本発明の好ましい態様によれば、情報画素が光射出領域であることが望ましい。
【0026】
また、本発明の好ましい態様によれば、マイクロレンズがマイクロレンズアレイ状に構成されることが望ましい。
【0027】
また、本発明の好ましい態様によれば、フィールドレンズがフレネルレンズであることが望ましい。
【0028】
また、本発明の好ましい態様によれば、フィールドレンズとマイクロレンズアレイが一体となったことが望ましい。
【0029】
また、本発明の好ましい態様によれば、マイクロレンズアレイにフィールドレンズ機能を持たせた複合機能マイクロレンズアレイを用いたことが望ましい。
【0030】
また、本発明の好ましい態様によれば、投影される光射出点が観察者の眼の瞳に入射する際に、観察者の眼の瞳の大きさよりも小さくなるように構成されたことが望ましい。
【0031】
また、本発明の好ましい態様によれば、投影される光射出点が一つ以上、且つ四つ以下観察者の瞳に入射するよう光射出点を配置したことが望ましい。
【0032】
また、本発明の好ましい態様によれば、観察者の瞳に入射する光射出点の投影される大きさを0.5mmから2.8mmとしたことが望ましい。
【0033】
また、本発明の好ましい態様によれば、フィールドレンズの焦点距離が1000mm以下であることが望ましい。
【0034】
また、本発明の好ましい態様によれば、マイクロレンズの大きさが50〜500μmであることが望ましい。
【0035】
また、本発明の好ましい態様によれば、複数の光射出点が開口であることが望ましい。
【0036】
また、本発明の好ましい態様によれば、開口がマスク上に設けられたことが望ましい。
【0037】
また、本発明の好ましい態様によれば、マスクが情報画素よりもマイクロレンズ側に設けられていることが望ましい。
【0038】
また、本発明の好ましい態様によれば、情報画素が液晶で構成されていることが望ましい。
【0039】
また、本発明の好ましい態様によれば、マスクが液晶よりも導光板側に配置されていることが望ましい。
【0040】
また、本発明の好ましい態様によれば、マスクの導光板側の面が反射面で構成されていることが望ましい。
【0041】
また、本発明の好ましい態様によれば、情報画素が有機ELデバイスで構成されたことが望ましい。
【0042】
また、第3の側面において本発明にしたがう光学ユニットによれば、
マイクロレンズアレイと、
マイクロレンズアレイの各マイクロレンズの範囲に少なくとも一つの開口を有するマスクと、
各マイクロレンズの範囲毎に同じ配置をした開口と、
マイクロレンズアレイの全面を覆うフィールドレンズと、
を有することを特徴とする。
【0043】
また、本発明の好ましい態様によれば、マスクがマイクロレンズアレイと一体に形成されていることが望ましい。
【0044】
また、本発明の好ましい態様によれば、フィールドレンズがフレネルレンズであることが望ましい。
【0045】
また、本発明の好ましい態様によれば、マイクロレンズアレイとフィールドレンズが一体で形成されていることが望ましい。
【0046】
また、本発明の好ましい態様によれば、マイクロレンズアレイにフィールドレンズ機能を持たせた複合機能マイクロレンズアレイを用いたことが望ましい。
【0047】
また、本発明の好ましい態様によれば、投影される開口が観察者の眼の瞳に入射する際に、観察者の眼の瞳の大きさよりも小さくなるように構成されたことが望ましい。
【0048】
また、本発明の好ましい態様によれば、投影される開口が一つ以上、且つ四つ以下観察者の瞳に入射するよう開口を配置したことが望ましい。
【0049】
また、本発明の好ましい態様によれば、開口の配置が六方格子状であることが望ましい。
【0050】
また、本発明の好ましい態様によれば、フィールドレンズの焦点距離が1000mm以下であることが望ましい。
【0051】
また、本発明の好ましい態様によれば、マイクロレンズの大きさが50〜500μmであることが望ましい。
【0052】
また、本発明の好ましい態様によれば、マイクロレンズアレイは柔軟性を有する材料で構成されていることが望ましい。
【0053】
また、本発明の好ましい態様によれば、印刷物の上に形成されてなることが望ましい。
【0054】
また、第4の側面において本発明にしたがう電子機器によれば、上述の表示装置を備えることを特徴とする。
【0055】
また、第5の側面において本発明にしたがう携帯用電子機器によれば、上述の表示装置を備えることを特徴とする。
【0056】
また、第6の側面において本発明にしたがう携帯電話によれば、上述の表示装置を備えることを特徴とする。
【0057】
また、本発明の好ましい態様によれば、メール機能を備えることが望ましい。
【0058】
また、本発明の好ましい態様によれば、カメラ機能を備えることが望ましい。
【0059】
また、第7の側面において本発明にしたがう撮像装置によれば、上述の表示装置を備えることを特徴とする。
【0060】
また、本発明の好ましい態様によれば、撮影条件を設定するスイッチが設けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0061】
本発明は、焦点が容易に合う表示方法とそれを利用した表示装置、光学ユニット、及び表示装置の製造方法、及びその表示装置を搭載した電子機器を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】被写界深度を示す図である。
【図2】被写界深度を示す他の図である。
【図3】被写界深度を示す別の図である。
【図4】被写界深度を示すさらに別の図である。
【図5】第1実施形態に係る表示方法の基本概念と表示装置の基本概念を示す図である。
【図6】瞳より小さい光射出点像が瞳を絞ることと同等の効果があることを説明する図である。
【図7】複数の光射出点が観察者の瞳に投影されている様子を示す図である。
【図8】一つのレンズによる光射出領域像の形成について説明する図である。
【図9】マイクロレンズアレイの効果を説明する図である。
【図10】フィールドレンズを用いて光射出領域のズレを補正することを説明する図である。
【図11】表示を観察できる原理を説明する図である。
【図12】光射出点の配置を説明する図である。
【図13】表示装置の詳細を示す図である。
【図14】別の画素構成の表示装置の詳細を示す図である。
【図15】第2の実施形態に係る表示装置の概略構成を示す図である。
【図16】マイクロレンズアレイとフィールドレンズ機能を一体化した例を示す図である。
【図17】第3の実施形態に係る光学ユニットの概略構造を示す図である。
【図18】第4の実施形態に係る光学ユニットの概略構成を示す図である。
【図19】第5の実施形態に係る被写界深度の深い印刷物とその作り方を示す図である。
【図20】第6実施形態のデジタルカメラの外観構成を示す図である。
【図21】第7実施形態の携帯電話の外観構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。なお、以下の説明において、「径」とは直径を意味する。
【0064】
(第1実施形態)
カメラでは、レンズの絞りを絞ると被写界深度が拡大し、手前から奥まで焦点の合った写真を撮ることが出来ることが知られている。従って、観察者の眼の瞳を人為的に絞ることにより被写界深度を拡大して、老眼では焦点の合わせにくい近点にも焦点を合わせることが出来る。
【0065】
図1、図2、図3、図4は、瞳径が4mmから0.5mmに変化した時の被写界深度の変化を示している。通常明るい時の人間の瞳径は3mm程度である。そして、暗くなると5〜7mmに拡大する。
【0066】
図1は、瞳径が4mmのときの被写界深度を示している。例えば2mに焦点を合わせているとき(図1における視距離2m)には、1.7mから2.4mに焦点が合っていることを示している。図2は、瞳径が2mmの場合である。2mに焦点を合わせているときに、1.2mから4mの範囲で焦点があっていることが分かる。1mに焦点を合わせているときは、0.7mから1.5mの範囲で焦点があっている。図3は、瞳径を1mmに絞った時の被写界深度を示している。同じく2mに焦点を合わせている場合、0.5mから無限遠(∞)まで焦点が合っている様子が分かる。従って、眼の瞳を1mmまで絞ることにより、2mまでしか焦点の合わない老眼の人でも0.5mの表示に焦点を合わせることが出来る。図4は、瞳径を0.5mmまで絞った場合の被写界深度を示している。0.2m以遠のどこに焦点を合わせても、0.2mから無限遠(∞)まで焦点が合っていることを示している。このように、眼の瞳径が小さい場合には、大きな被写界深度となる。しかし、一方で瞳径が小さくなると眼の解像力が悪化する。
【0067】
眼の角解像力θは、次式(1)で求められる。
θ=λ/φ (1)
ここで、瞳径をφ、波長をλとする。
【0068】
従って、瞳径2mmの解像力(回折限界)は、ほぼ視力1.0に相当する(波長を0.55μmとした)。瞳を1mmに絞ると視力は0.5に低下する。しかしながら、300
mm先で0.17mm程度の解像力があるので通常は問題が無い。
【0069】
瞳径を0.5mmにまで絞ると視力が0.25相当まで低下する。この場合、300mm先での解像力は0.33mm程度にまで低下する。この程度なら3mm程度の文字は何とか見ることが出来る。しかし、瞳径を0.2mmにまで絞ると視力は0.1相当にまで低下し、300mm先での解像力は0.9mmに低下する。従って、瞳径を0.5mm程度に絞るのが下限である。
【0070】
図5は、本実施形態に係る表示方法の基本概念と表示装置の基本概念を示す。液晶や有機ELなどの情報表示デバイスの画素を、本実施形態における画素と区別する為に「情報画素」と言う。情報画素0は光射出領域1に画像の情報を与える。光射出領域1と、光射出領域1に存在する複数の光射出点2を、画素に相当するマイクロレンズ3によって観察者側に投影する。
【0071】
この投影により、観察者側の瞳近傍の空間に、光射出領域1の像1’と光射出点2の像2’が形成される。画素であるマイクロレンズ3は、眼のレンズによって網膜6に結像される。老眼の場合、マイクロレンズ3の像3’は網膜6上でボケた像になっていることになる。
本実施形態の表示方法では、焦点の合ったマイクロレンズ3の像3’(画素の像)を得ることができる。図6を用いてこのことを説明する。
なお、光射出点2とは有機ELのような自発光型ディスプレイの場合は発光点そのものである。すなわち、この場合は、情報画素0が光射出領域となる。また、液晶パネルのようにバックライトによる透過型の場合は、光射出点は、開口部を複数有したマスクによって制限された光透過点である。この場合、情報画素0が光透過点に設けられていることになる。
光射出点が観察者の瞳に投影された時、その像2’の大きさ(光束径)は、観察者の瞳4よりも小さく設定されているので、瞳を絞ったときと同じ効果が生じ、眼の焦点深度は深くなる。そして、画素であるマイクロレンズ3を見たときの被写界深度も深くなる。その結果、ボケが少なくなり、画像が解像する。なお、ここで言う光射出点及び光透過点は、必ずしも点ではなく、有限の面積を有している場合も含む。また、必ずしも図5で示すような円形でなくても良い。
【0072】
瞳より小さい光射出点像2’を瞳位置に形成することが瞳を絞ることと同等の効果があることを、図6(a)、(b)、(c)を用いて説明する。観察者が点A、点Bを観察する場合を考える。老眼の場合、眼のレンズ5の屈折力が弱いので、網膜6上に焦点を結ぶことができない。従って、眼のレンズ5の瞳一杯に透過してきた光束7、8によって形成される点Aと点Bの像は、それぞれ網膜6上でA’、B’のように広がるので、焦点の合った像を見ることができない。しかも、A’とB’は一部が重なっているので、観察者はA’とB’を分離して認識することはできない。従って、観察者は解像された像を見ることができない。
【0073】
一方、瞳より小さい光束9、10によって形成される点Aと点Bの像は、それぞれ網膜6上でA”、B”のように小さくなるので、A’とB’に比べると焦点の合った像を見ることができる。さらに、A”とB”は全く重なっていないので、観察者はA”とB”を分離して認識することができる。すなわち、観察者は解像された像を見ることができる。本実施形態の表示方法は、瞳より細い光束を瞳に入射させることにより、等価的に瞳を絞った状態にすることで、被写界深度を増大させる方法である。
【0074】
図7は、複数の光射出点が観察者の瞳に投影されて、像11が形成されている様子を示す。図7(a)に示すように、観察者の瞳に形成された光射出点の像11の大きさが、観察者の眼の瞳12に対して適切な大きさの場合は、瞳に一つの光射出点の像(瞳よりも小さい大きさの像)が形成される。この場合、瞳よりも小さい光束が瞳に入るので、被写界深度の拡大効果が生じる。図7(a)では、光射出点の瞳上での像11が、図6(a)における瞳上での光束9、10の大きさに相当すると共に、網膜6上での広がりに相当する。
【0075】
一方、投影された光射出点11の大きさと配置が適切でない場合は、複数の光射出点の像が同時に瞳12に入り、被写界深度の拡大効果が阻害される。図7(b)では、瞳に入射する光束(瞳に形成される光射出点の像)の数は四つであるが、完全に入射している光束は一つであり、被写界深度の拡大効果は阻害されない。従って、瞳に入射する光束(瞳に形成される光射出点の像)の数は四つ以下であることが望ましい。
【0076】
光射出点の配列も適切であることが好ましい。六方格子配列では、ある1つの光射出点は周りにある他の光射出点から等しく離れ、且つできるだけ離れている。このような六方格子配列は、被写界深度を深くしやすく、また瞳を光射出点の像に一致させ易い。このため、六方格子配置が望ましい。
【0077】
また、光束の断面(光束の中心に対して垂直な面)における強度分布が均一の場合、光束の境界がはっきりしている。このような光束を用いても良いが、強度分布は均一でなくても良い。すなわち、光束の境界が必ずしもはっきりしていない光束を用いても良い。
【0078】
例えば、光束の光強度分布をレーザーのようなガウス分布とすることも出来る。ガウス分布の場合でも中心強度が強いので、通常の光束と同じ効果がある。ガウス分布の場合の光束径は、等価的に半値全幅と考えることが出来る。また、ガウス分布のような場合(ガウス分布と類似の分布の場合を含む)も、半値全幅、即ち強度が半分になるところの径、有限形状の場合は、平均的大きさを光束の径としても良い。
【0079】
このように、本実施形態の表示方法は、各光射出領域の光射出点をマイクロレンズ(画素に相当)によって投影することにより、光射出点からの光を瞳より小さい光束として観察者の瞳に投影(投射)する。そして、この光束を観察者の眼の瞳に入射させることにより等価的に瞳を絞った状態にすることで、被写界深度を拡大させている。
【0080】
光射出点を投影する時、少なくとも一つの光射出点が瞳12の中に投影される。被写界深度を拡大する為には、観察者の瞳12に入射する光束の径、すなわち光射出点のマイクロレンズによる投影像の大きさ11は瞳径より小さい径が望ましい。マイクロレンズによる光射出点の投影像が瞳径より小さければ、被写界深度を拡大する効果がある。通常の明るさ時の瞳径は3mm程度であるから、被写界深度を拡大するには、光束径(光射出点の像の径、大きさ)は、2.8mm以下が好ましい。
【0081】
図8を用いて、一つのマイクロレンズによる光射出領域の投影像の形成について、より詳細に説明する。光射出領域13a、13b、13cは、マイクロレンズ14によって投影されて投影像15a、15b、15cとなる。光射出領域13a、13b、13cに設けられた光射出点16もマイクロレンズ14によって投影像17となっている。
【0082】
なお、当然のことながら光射出領域や光射出点は空間に投影されているので、図のように投影像が見えているわけではない。図8では、一つのマイクロレンズによって、各光射出領域と各光射出点が投影される様子が分かる。観察者の眼の瞳18が図示された位置にあるとき、観察者は光射出領域13cを観察できる。
【0083】
この時、観察者の眼の瞳径より瞳に入射する光束(投影像)が小さいので、前述したように被写界深度が深くなっている。このため、表示装置の位置に焦点の合わない人でも焦点の合った表示を見ることができる。
【0084】
なお、図8において、光射出領域は3つしか示されていないが、実際には多数の光射出領域が存在する。有機ELのような自発光デバイスを情報画素に用いる場合、情報画素を光射出領域とすることができる。また、液晶デバイスを情報画素として用いる場合は、液晶は光射出領域(光射出点の開口を持つマスクとなる)のマイクロレンズ3と反対側に設けられる。
【0085】
また、マイクロレンズによって多くの光射出領域が観察者側に投影されるので、観察者は広い領域で、表示を見ることが出来る。もちろん通常のFPDと同様に、複数の人で観察できる。なお、図中各光射出領域の間に隙間があるように描かれているが、これは説明を分かり易くする為であり、実際に隙間があるわけではない。以下の図も同様である。
【0086】
図9を用いてマイクロレンズアレイの効果を説明する。簡単の為に光射出領域は13a、13bの2個のみを示している。画素であるマイクロレンズも14a、14bの2個のみを示している。実際には多数のマイクロレンズが存在して、マイクロレンズアレイを構成している。光射出領域はマイクロレンズに対応して設けられている。
【0087】
図8で説明したように、マイクロレンズ14aによって光射出領域13a、13bは観察者に向かって投影され、光射出領域の投影像15a、15bとなっている。マイクロレンズ14bによっても同様に、光射出領域13a、13bは観察者に向かって投影され、光射出領域の投影像15a’、15b’となっている。
【0088】
各光射出領域に設けられた光射出点16’、16”は投影されて像(光束)17’、17”を形成する。各光射出領域の同じ配置の同じ位置にある光射出点16’、16”は、投影されて17’、17”となりほぼ重なっている。
【0089】
観察者の瞳18が図示された位置にあるとき、光射出点の像17’によってマイクロレンズ14aを、観察することができる。同様に、光射出点の像17”によってマイクロレンズ14bを観察することができる。
【0090】
このように、マイクロレンズアレイの各マイクロレンズを介して、マイクロレンズの瞳径より小さい光束(光射出点の投影像)が瞳に投影されるので、観察者は、マイクロレンズによって形成される焦点の合った画像を見ることが出来る。ここで、図中では光束17’(光射出点16’のマイクロレンズ14aによる像)と光束17”(光射出点16“のマイクロレンズ14bによる像)はほとんど重なっているが、実際には19で示す距離だけ光射出領域の投影像がずれている。従って、表示装置の端と端では、光射出領域の投影像が大きくずれることになり、観察像を劣化させる。すなわち表示装置の表示の周辺の像が見づらくなる。
【0091】
従って、図10に示すようにフィールドレンズ20を用いて光射出領域の投影像のズレを補正することが必要である。フィールドレンズ20の焦点距離は、表示装置から観察者の瞳までの距離により選択される。光射出領域13a、13bから出た光線21は、観察者の位置で一つに重なる。また、光射出領域像のズレが補正されて光射出領域の投影像が重なったとき、光射出点像も重なることが望ましい。従って、各光射出領域の光射出点の配置は同一であることが望ましい。
【0092】
マイクロレンズによって投影された光射出点をフィールドレンズ20によって一致させて重ねることができる。従って、全ての光射出領域の同じ位置にある光射出点からの光束が瞳を通過し、全てのマイクロレンズの像が網膜に投影される。この結果、大きな表示でも周辺まで焦点の合った表示を見ることができる。なお、フィールドレンズ20はマイクロレンズアレイに近接して配置されている。
【0093】
図11を用いて、表示が見える原理を更に説明する。光射出領域13a、13bの光射出点16から射出した光線は、図10で説明したように、観察者の瞳で一つに重なって瞳に入射する。すなわち、光射出点はマイクロレンズで観察者の瞳に投影される。そして、光線は網膜22に到達する。
【0094】
一方、画素に相当するマイクロレンズ14a、14bは眼のレンズによって網膜22上に投影される。このとき、図6で説明したように、光射出点とマイクロレンズで作られる光束は観察者の瞳径よりも小さい。このため、眼のレンズで網膜22上に投影されるマイクロレンズ像のボケの量は少ない。すなわち、マイクロレンズの像がほとんどボケることなく網膜22上に投影される。すなわち、画素であるマイクロレンズ14a、14bの像14a’、14b’が網膜22上に形成される。従って、焦点の合った表示を見ることができる。
【0095】
ここで、瞳18側に直径1mmの光射出点投影像群を作る場合を考える。そのために、直径1μm程度の光射出点16を設ける。この場合、マイクロレンズ14の投射(投影)倍率は1000倍と言うことになる。光射出点はおおよそ2.5μmピッチで配置する。最蜜充填など、並べ方は適宜選択する。
【0096】
しかし、実際には回折の影響があるので並べ方には考慮が必要になる。光射出領域13の大きさが100μm×100μmの場合、投影像の面積は100mm×100mmとなる。観察距離を300mmとすると、マイクロレンズ20の焦点距離は約0.3mm程度となる。フィールドレンズ20の焦点距離も300mmが適当である。
【0097】
老眼の人が物を見難い距離は、近距離が多い。このため、300mm程度の距離が見やすくなるように、観察者までの距離を300mmと考えて、光射出点の像を300mm先に投影するのが好ましい。応用によっては200mm程度の距離も考えられる。被写界深度拡大効果を得るには、光射出点の投影された大きさは、瞳径以下が望ましい。通常の明るさの時の瞳径は3mm程度であるので、光射出点の像の大きさ(光束径は)それよりも小さい2.8mm以下が望ましい。
【0098】
また、マイクロレンズの大きさは、一つ一つが画素の大きさに相当するので、高精細の表示を行うには500μm以下が好ましい。更に、視力1.0の人が300mm離れた物体を見るときの解像力は約0.1mmであり、マイクロレンズの大きさ(直径、あるいは一辺の長さ)は、その半分の0.05mm、すなわち50μm程度が好ましい。しかし、一方で回折による光束の広がりも考慮する必要がある。
【0099】
回折による広がり角ψは次式(2)で示される。
ψ=λ/D (2)
ここで、
λは波長、
Dは開口の大きさ(直径或いは一辺の長さ)、
である。
【0100】
従って、距離Zで観察すると光束の大きさφは、
φ=λZ/D (3)
と広がることになる。
【0101】
D=50μmの場合、φ=3.3mmとなり、瞳を光束で等価的に絞る効果がほとんどなくなることが分かる。従って、マイクロレンズの大きさは50μm以上であることが好ましい。
【0102】
また、光束の大きさを瞳上で1mmに保つ為のマイクロレンズの大きさは観察距離300mmの時、165μmである。以上より、マイクロレンズの大きさは50〜500μmであることが望ましい。
【0103】
情報表示デバイスが液晶パネルやプラズマパネル、電子ペーパー(マイクロ粒子を電気泳動法で反転させるものなど)などの電子デバイスの場合は画素(本実施形態で言う「情報画素」に相当)が存在するが、例えば写真プリントの様に明確な画素が存在しない場合もある。この場合は、ある任意の微小範囲を画素と見なすことが出来る。この微小範囲も本実施形態では情報画素と言う。従って、情報画素の無い写真プリントでも、本実施形態は応用され、同様な表示を行うことが出来る。
【0104】
なお、図8から図11では、液晶パネルやプラズマパネル等情報表示デバイス自体とその情報画素を省略してある。以下の図では、情報画素は示すが、実際に情報画素に情報(ON、OFFや濃淡等)を表示する為の構造は省略してある。
【0105】
図12(a)、(b)は、それぞれ一つの光射出領域における光射出点の配置を示す例である。これらは、自発光型の情報表示デバイスにおける発光点23a、23bの一例である。24a、24bは、例えば発光点23a、23bを保持する基材である。一方、非自発光型の情報表示デバイスの場合、図12(a)、(b)に示す構成はマスクの構成に相当する。図12(a)、(b)の構成をマスクと見なした場合、マスク24a、24bには、瞳に入射する光束(光射出点の像)の大きさを決める開口23a、23bが設けられている。
【0106】
これらの例では、発光点或いは開口23a、23bは整列して設けられているが、ランダムでもかまわない。但し、各光射出領域において、光射出点は同じ配置(同じ配列パターン)でなければならない。また、光射出領域は、画素であるマイクロレンズの配列ピッチと同じピッチで、繰り返されて配置されなければならない。
【0107】
図13は、表示装置の構成の詳細を示している。簡単の為に3×3の画素(マイクロレンズ)を示している。情報表示デバイスの情報画素25、光射出領域26、マイクロレンズアレイ27、フィールドレンズ28の順に配置されている。
【0108】
光射出領域26は画素であるマイクロレンズに対応して設けられ、同じ並びとなっている。また、各光射出領域の光射出点の配列は同一であることが望ましい。情報表示デバイスの情報画素は、必ずしも光射出領域と同じ並びにする必要はない。一つの光射出領域に情報画素を複数対応させても良い。自発光型でも発光点の形状を任意に設定できる有機EL表示デバイスの場合は、光射出領域26を省略できる。
【0109】
また、情報画素25は液晶ディスプレイパネルを用いても良い。その場合には、光射出領域26は開口(光射出点)のあるマスクとなり、図示しない光源29が存在する。なお、情報画素25、光射出領域26、マイクロレンズアレイ27、フィールドレンズ28の間に空間があるように図示されているが、必ずしも必要ではない。画素25、マスク26、マイクロレンズアレイ27、フィールドレンズ28を一体的に構成しても良い。
【0110】
図14は、別の画素構成の例を示している。情報表示デバイスとして、液晶パネル(通常LCDと呼ばれている)のような非自発光型で背面に光源を必要とするディスプレイを用いる場合は、光源29、光射出領域であるマスク26、情報画素25、マイクロレンズアレイ27、フィールドレンズ28の順に配置しても良い。光源29は導光板の場合もある。
【0111】
マスク26の光源(導光板)29側の面を反射面とすることにより、マスクで遮られた光を導光板に戻すことができる。これにより、光を有効に使うことが出来る。マスク25の導光板側の面は反射面であることが好ましい。
【0112】
なお、光源29、マスク26、情報画素25、マイクロレンズアレイ27、フィールドレンズ28の間に空間があるように図示されているが、必ずしも必要ではない。一体的に構成しても良い。また、図13、14において、画素であるマイクロレンズ及びそれに光射出領域は、縦横の行列の配置が記載されているが、配置はこれに限らない。画素であるマイクロレンズの配列は、情報表示デバイスの情報画素の配列に合わせる必要は必ずしも無い。
【0113】
しかしながら、解像力の最適化を考えると、マイクロレンズ27の配列は情報表示デバイスの情報画素の配列に合わせるのが望ましい。また、フィールドレンズ28をフレネルレンズにすると全体の光学系を薄くできるので、そのようにするのが望ましい。また、情報画素25は液晶パネルの画素が好ましい。なお、マイクロレンズに対応した光射出領域の並びはマイクロレンズと同じであることが望ましいが、横へのシフトは可能である。すなわちマイクロレンズの真下に対応する光射出領域がある必要はない。
【0114】
フィールドレンズに通常のレンズを用いると表示装置が厚くなるという課題がある。そこで、フィールドレンズにフレネルレンズを用いることが望ましい。
赤(R)、緑(G)、青(B)などを用いたカラー表示の場合、画素をR、G、Bに割り振るか、時間を区切って切り替え(カラーシーケンシャル)を行う。
【0115】
(第2実施形態)
図15は、第2の実施形態に係る表示装置の概略構成を示している。図15は、マイクロレンズアレイ27とフィールドレンズ28を一体化したものである。これにより光学系の薄型化、低コスト化が可能となる。この図のように、画素であるマイクロレンズ27の配列は、情報表示デバイスの情報画素25の配列に合わせる必要は必ずしも無い。
【0116】
ここで、解像力の最適化を考えると、マイクロレンズ27の配列は情報表示デバイスの情報画素の配列に合わせるのが望ましい。また、マイクロレンズに対応した光射出領域26の並びはマイクロレンズと同じであることが望ましいが、横へのシフトは可能である。すなわちマイクロレンズの真下に対応する光射出領域がある必要はない。
【0117】
マイクロレンズアレイとフィールドレンズを組み合わせて一体化しても、レンズの両側に曲率があるため、光射出領域や情報画素と一体化しにくいという課題が残っている。
図16は、マイクロレンズアレイとフィールドレンズ機能を一体化し、マイクロレンズアレイ自体にフィールドレンズの機能を持たせた例である。すなわち、複合機能マイクロレンズアレイ30は、光射出領域を観察者方向に投影するマイクロレンズの機能と、投影された位置での投影像のズレを解消するフィールドレンズの機能を合わせ持つ。
【0118】
通常のフレネルレンズは、レンズを円環状の複数の領域に分け、屈折作用はそのままにレンズの厚さを薄くしたものである。複合機能マイクロレンズアレイ30では、フィールドレンズをマイクロレンズの大きさ毎に複数の領域に分け、各領域において屈折作用をそのままに厚さを薄くするものである。すなわち、フィールドレンズにおける各領域の曲率をマイクロレンズの曲率に加えて、複合機能マイクロレンズアレイ30を構成する。
【0119】
このことによって複合機能マイクロレンズアレイの一面を平面にすることができるので、光射出領域、或いは情報画素との一体化が可能となる。
【0120】
(第3実施形態)
図17は第3の実施形態に係る光学ユニットの概略構造を示している。通常マイクロレンズは多数形成されているが、ここではそのうちの3×3個を示している。図17の光学ユニットは板状であって、複合機能マイクロレンズアレイ30と光射出領域であるマスク26とで構成されている。
【0121】
図17では、光学ユニットを表と裏から見た図を示してある、複合機能マイクロレンズアレイ30とマスク26の構成要件は、上述した実施例と同様である。すなわち一つのマイクロレンズに少なくとも一つの開口が存在する。マイクロレンズは、その開口を有するマスク26の像を前方(観察者側)に投影する。そして、観察者の瞳に一つ以上の開口が投影されるように、マイクロレンズの焦点距離、マイクロレンズとマスクの距離、マスクの大きさ及び密度が設定される。
【0122】
開口の配列は、隣どうしの開口が等しく離れ、且つ密度が高い六方格子状配列が望ましい。マスク26のマイクロレンズによる投影距離は、観察者が観察する距離にあわせることが好ましい。すなわち、マイクロレンズによる投影距離は、フィールドレンズ効果の焦点距離と等しく設定する。ここで、フィールドレンズ効果の焦点距離とは、フィールドレンズが存在する場合、そのフィールドレンズの焦点距離のことである。なお、複合機能マイクロレンズアレイの代わりに、通常のマイクロレンズアレイとフィールドレンズを重ね合わせる構造としても良い。
【0123】
複合機能マイクロレンズアレイ30とマスク26で構成される光学ユニットを、情報表示デバイスに載せることで、観察者の眼の被写界深度を拡大できるので、老眼の人でも焦点の合った画像を見ることができる。情報表示デバイスとは、液晶パネルなどの電子デバイスの他、写真プリントや新聞などの紙媒体などを含む。
【0124】
マスク26は複合機能マイクロレンズアレイ30の平面側に直接一体的に設けるのが好ましい。例えば、複合機能マイクロレンズアレイ30にクロムコートをしてエッチングで開口をあけることが考えられる。また、この表示ユニットは、プラスチックなどのやわらかい素材で作ることも可能である。フレキシブルディスプレイに適用できる。
【0125】
以下、数値例を掲げる。
観察者までの距離をL、マイクロレンズによる投影倍率をmとするとマイクロレンズの後側焦点位置Fbは、Fb=L/mとなる。マイクロレンズの焦点距離Fは、FbL/(L+Fb)となる。
【0126】
マスクの開口を2μmとして、観察者の瞳に1mmの光束を入射させるには、マイクロレンズの投射倍率は500倍となる。観察者までの距離を300mmとすると、マイクロレンズの焦点距離は0.599mmとなる。
【0127】
マスクはマイクロレンズの後側焦点位置0.6mmに置かれる。レンズの焦点距離が小さいので300mm先に投影する場合、無限投影とほぼ同じになる。互いに最も近接する開口の間隔を6μmとすると、観察者の位置では3mm間隔となる。瞳を3mm移動すると隣の開口で生成された光束を見ることになる。
【0128】
マスクの開口を5μmとして、観察者の瞳に1.5mmの光束を入射させるには、マイクロレンズの投射倍率は300倍となる。観察者までの距離を300mmとすると、マイクロレンズの焦点距離は0.997mmとなる。マスクはマイクロレンズの後側焦点位置1.0mmに置かれる。互いに最も近接する開口の間隔を10μmとすると、観察者の位置では3mm間隔となる。瞳を3mm移動すると隣の開口で生成された光束を見ることになる。
【0129】
マスクの開口が10μmとして、観察者の瞳に2mmの光束を入射させるには、マイクロレンズの投射倍率は200倍となる。観察者までの距離を300mmとすると、マイクロレンズの焦点距離は1.49mmとなる。マスクはマイクロレンズの後側焦点位置1.5mmに置かれる。互いに最も近接する開口の間隔を15μmとすると、観察者の位置では3mm間隔となる。瞳を3mm移動すると隣の開口で生成された光束を見ることになる。
【0130】
マスクの開口が15μmとして、観察者の瞳に1.5mmの光束を入射させるには、マイクロレンズの投射倍率は100倍となる。観察者までの距離を300mmとすると、マイクロレンズの焦点距離は2.97mmとなる。マスクはマイクロレンズの後側焦点位置3.0mmに置かれる。互いに最も近接する開口の間隔を30μmとすると、観察者の位置では3mm間隔となる。瞳を3mm移動すると隣の開口で生成された光束を見ることになる。
【0131】
(第4実施形態)
図18(a)に第4の実施形態に係る表示装置の概略構成を示す。通常マイクロレンズは多数あるが、ここでは簡単の為にそのうちの3×3個を示している。図18(b)に有機ELデバイスで作られた情報画素31を示す。有機ELは自発光素子であり、情報画素の中に複数の発光点(光射出点)を設けてある。
【0132】
この発光点と図18(a)に示す複合機能マイクロレンズアレイ30のマイクロレンズにより、光束径が高い制限された光束を多数発生することができる。すなわち、観察者側に、大きさが制限された発光点の像を投影する。その様子は図5で示された光射出点の投影像と同様であって、制限された光束が観察者の瞳に入射することで、等価的に観察者の瞳が絞られた状態となり、その結果被写界深度が拡大される。
【0133】
このように有機ELの場合は、マスクを使用することなく簡単な構成で観察者の被写界深度を増大できる。なお、有機ELの発光点の大きさによっては、マスクで制限しても良いのは当然である。また、図のように発光点の配列は、各情報画素とも同一であり、情報画素は同じピッチで繰り返して配置されている。
以下、数値例を掲げる。
有機ELデバイスの発光点の大きさを10μmとした場合、観察者の瞳に1.25mmの光束を入射させようとすると、マイクロレンズの投射倍率は125倍となる。観察者までの距離を250mmとすると、マイクロレンズの焦点距離は1.98mmとなる。有機ELデバイスはマイクロレンズの後側焦点位置2.0mmに置かれる。
【0134】
有機ELデバイスの発光点の大きさを20μmとした場合、観察者の瞳に1mmの光束を入射させようとすると、マイクロレンズの投射倍率は50倍となる。観察者までの距離を300mmとすると、マイクロレンズの焦点距離は5.88mmとなる。有機ELデバイスは、マイクロレンズの後側焦点位置6.0mmに置かれる。
【0135】
(第5実施形態)
図19は、被写界深度の深い印刷物とその作り方を示している。簡単の為に3×3の画素相当分のみを示している。まず、各画素に相当する範囲32に細かいドット33で情報の値(濃淡・色など)を印刷等で紙などの媒体上に表示する。これが光射出領域に相当する。
【0136】
従って、それ以外のところは黒が望ましい。その上に、薄いレンズ材料34を塗布する。その後でナノインプリント等の技術によって複合機能マイクロレンズアレイ35を形成する。先に複合機能マイクロレンズアレイ35を形成した後で印刷物上に貼り付けても良い。また、透明材料を、情報を表示した媒体の上に転写する際にマイクロレンズを形成しても良い。
【0137】
細かいドット33は光射出点に相当し、表面からの光を反射する。あるいは、背面からの光を透過する。作用、効果は前述の実施例と同様である。
このように、印刷と同程度のコストで被写界深度の深い印刷物を提供できる。すなわち、老眼の人や近視の人が見やすい印刷物を提供できる。
【0138】
(第6実施形態)
図20には撮像装置の一例であるデジタルカメラを示している。デジタルカメラ36は、その前面に図示しない撮像レンズを備えている。レリースボタン37、モードボタン38、表示装置39が設けられている。使用者は撮像レンズを通して撮像された像を表示装置39で確認しながらレリースボタン37を押して撮影を行う。
【0139】
本実施例では、表示装置39に図15、16等で示したフィールドレンズとマイクロレンズアレイと光射出領域を有する画素構成を有する表示装置を用いる。従って、老眼の人でも老眼鏡を掛けることなく表示された像を確認することができる。具体的には、撮影者が老眼の人でも老眼鏡を掛けることなく、ピントや構図を容易に確認することができる。
【0140】
また、焦点の合った像を確認できるので、GUI(グラフィカルユーザインターフェイス)を確認することができ、モードボタン38で好みの撮影モードを選択して撮影することも可能となる。モードボタンとは、撮影感度や風景モード、夜景モードなど、撮影条件を設定するスイッチ類のことであり、図示しないズームレバー(ズームの操作用スイッチ)も含む。ここでは、一つしか示していないが、複数設けられている場合もある。
【0141】
(第7実施形態)
図21に携帯電子機器の一例として携帯電話を示している。携帯電話40は、通話スイッチや文字入力用のテンキー42や表示装置41を備えている。携帯電話は、電話だけでなく、メールやインターネット接続による情報取得のため表示装置を備えている。
【0142】
本実施例の携帯電話40は、表示装置41として図15、16等に示したフィールドレンズと、マイクロレンズアレイと、有機ELデバイスを備えており、老眼の人でも老眼鏡を掛けることなく表示装置に表示した情報を焦点の合った状態で見ることが出来る。従って、通話だけでなくメールをすることができる。なお、有機ELデバイスは、一情報画素に複数の発光領域を有する情報画素構成となっている。
【0143】
また、携帯電話40には、図示しないカメラが一体的に設けられている。よって、カメラモードスイッチ43を押すことによって、カメラによって写真を撮影することも可能である。老眼の人でも老眼鏡を掛けることなく、構図やピントを確認して写真を撮影することができる。なお、表示装置41として図15、16等に記載の液晶デバイスを使っても良い。
【0144】
本発明に係る表示方法及びそれを利用した表示装置、表示ユニットは、観察者の瞳に入射する光束を瞳径より小さくすることにより、眼の焦点深度を拡大する効果がある。その結果、被写界深度が拡大して、表示位置に焦点の合わない人でも焦点の合った表示を見ることが可能な表示方法及び表示装置を提供することが出来る、という効果を奏する。
【0145】
本発明の表示方法及び表示装置を用いれば、老眼の人でも老眼鏡を掛ける(外す)ことなく、焦点の合った表示を見ることが出来る。さらに、本発明の表示方法及び表示装置は、老眼の観察者の眼の負担を軽減し、老眼鏡その他の光学部材を追加することなく観察することができる。
【0146】
従って、本発明になる携帯電話やデジタルカメラ、電子ブック等のモバイル機器やカーナビゲーションシステム、PCのモニター画面等は、老眼鏡の掛け外しすることなく、老眼の人でも焦点が合った状態でその表示を見ることが出来る。更に、遠視や近視の人でもメガネを用いることなく、焦点の合った画像(絵だけでなく文字など、表示される全ての情報のこと)を見ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0147】
以上のように、本発明は、フラットパネルディスプレイのような表示装置、及びそのような表示装置を搭載した電子機器に有用である。
【符号の説明】
【0148】
0 情報画素
1 光射出領域
2 光射出点
3 マイクロレンズ
4 瞳
5 レンズ
6 網膜
7、8、9、10 光束
8a、8b マスク
9a、9b 開口(光射出点)
11 光射出点
12 瞳
13a、13b、13c 光射出領域
14、14a、14b マイクロレンズ
15a、15b、15c 投影像
16、16’ 光射出点
17、17’ 像
20 フィールドレンズ
36 デジタルカメラ
37 レリースボタン
38 モードボタン
39 表示装置
40 携帯電話
41 表示装置
42 テンキー
43 カメラモードスイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を用いて画像を表示する方法であって、
複数の前記画素からの光束を観察者の眼の瞳に投影する工程と、
前記画素に対応する光射出領域の投影像を観察者の瞳の位置近傍で互いに重ねる工程と、を有し、
前記瞳に入射する前記光束の径は、前記瞳の径よりも小さいことを特徴とする表示方法。
【請求項2】
前記光射出領域に画像の情報を与えるのは情報画素であることを特徴とする請求項1に記載の表示方法。
【請求項3】
前記情報画素の配列は前記光射出領域の配列と同じであることを特徴とする請求項1に記載の表示方法。
【請求項4】
前記情報画素が光射出領域であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示方法。
【請求項5】
各光射出点の投影像が、前記観察者の眼の瞳径に一つ以上、且つ四つ以下入るように光射出点を配置すること特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示方法。
【請求項6】
前記光射出領域の投影像を、観察者の眼の位置近傍で互いに重ねる工程において、レンズを用いて前記投影像を重ねることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示方法。
【請求項7】
各光射出点の投影像の大きさが0.5mmから2.8mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の表示方法。
【請求項8】
複数の画素を用いて画像を表示する表示装置において、
前記各画素に相当するレンズを有するマイクロレンズアレイと、
前記マイクロレンズアレイに対応する光射出領域に少なくとも一つ設けられている光射出点と、
前記光射出領域の投影像を重ね合わせるフィールドレンズと、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項9】
前記光射出領域に画像の情報を与える情報画素を有することを特徴とする請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記光射出点の配置が、各光射出領域において同じであり、
前記マイクロレンズは前記光射出点を含む光射出領域を観察者の眼の位置近傍に投影し、
前記マイクロレンズによって投影された光射出点の大きさが観察者の眼の瞳径より小さいことを特徴とする請求項8または9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記マイクロレンズにより投影される前記光射出点を、観察者の瞳に入射させることにより前記マイクロレンズの投影像を観察者の眼の網膜上に生じせしめることを特徴とする請求項8または9に記載の表示装置。
【請求項12】
前記光射出点の配置が六方格子状であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項13】
前記情報画素の配列が前記光射出領域の配列と同じであることを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項14】
前記情報画素が光射出領域であることを特徴とする請求項8〜13のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項15】
前記マイクロレンズがマイクロレンズアレイ状に構成されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項16】
前記フィールドレンズがフレネルレンズであることを特徴とする請求項8〜15のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項17】
前記フィールドレンズと前記マイクロレンズアレイが一体となったことを特徴とする請求項15または16に記載の表示装置。
【請求項18】
前記マイクロレンズアレイにフィールドレンズ機能を持たせた複合機能マイクロレンズアレイを用いたことを特徴とする請求項15または16に記載の表示装置。
【請求項19】
前記投影される光射出点が観察者の眼の瞳に入射する際に、観察者の眼の瞳の大きさよりも小さくなるように構成されたことを特徴とする請求項10〜18のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項20】
前記投影される光射出点が一つ以上、且つ四つ以下観察者の瞳に入射するよう前記光射出点を配置したことを特徴とする請求項10〜19のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項21】
観察者の瞳に入射する前記光射出点の投影される大きさを0.5mmから2.8mmとしたことを特徴とする請求項10〜18、及び20のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項22】
前記フィールドレンズの焦点距離が1000mm以下であることを特徴とする請求項9〜21のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項23】
前記マイクロレンズの大きさが50〜500μmであることを特徴とする請求項9〜22のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項24】
前記複数の光射出点が開口であることを特徴とする請求項9〜23のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項25】
前記開口がマスク上に設けられたことを特徴とする請求項24に記載の表示装置。
【請求項26】
前記マスクが前記情報画素よりもマイクロレンズ側に設けられていることを特徴とする請求項25に記載の表示装置。
【請求項27】
前記情報画素が液晶で構成されていることを特徴とする請求項9〜26のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項28】
前記マスクが前記液晶よりも導光板側に配置されていることを特徴とする請求項27に記載の表示装置。
【請求項29】
前記マスクの前記導光板側の面が反射面で構成されていることを特徴とする請求項28に記載の表示装置。
【請求項30】
前記情報画素が有機ELデバイスで構成されたことを特徴とする請求項9〜23のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項31】
マイクロレンズアレイと、
前記マイクロレンズアレイの各マイクロレンズの範囲に少なくとも一つの開口を有するマスクと、
各マイクロレンズの範囲毎に同じ配置をした開口と、
マイクロレンズアレイの全面を覆うフィールドレンズと、
を有することを特徴とする光学ユニット。
【請求項32】
前記マスクが前記マイクロレンズアレイと一体に形成されていることを特徴とする請求項31に記載の光学ユニット。
【請求項33】
前記フィールドレンズがフレネルレンズであることを特徴とする請求項31または32に記載の光学ユニット。
【請求項34】
前記マイクロレンズアレイと前記フィールドレンズが一体で形成されていることを特徴とする請求項29〜32のいずれか一項に記載の光学ユニット。
【請求項35】
前記マイクロレンズアレイにフィールドレンズ機能を持たせた複合機能マイクロレンズアレイを用いたことを特徴とする請求項31または32に記載の光学ユニット。
【請求項36】
前記投影される前記開口が観察者の眼の瞳に入射する際に、観察者の眼の瞳の大きさよりも小さくなるように構成されたことを特徴とする請求項31〜35のいずれか一項に記載の光学ユニット。
【請求項37】
前記投影される開口が一つ以上、且つ四つ以下観察者の瞳に入射するよう前記開口を配置したことを特徴とする請求項31〜36のいずれか一項に記載の光学ユニット。
【請求項38】
前記開口の配置が六方格子状であることを特徴とする請求項31〜37のいずれか一項に記載の光学ユニット。
【請求項39】
前記フィールドレンズの焦点距離が1000mm以下であることを特徴とする請求項31〜37のいずれか一項に記載の光学ユニット。
【請求項40】
前記マイクロレンズの大きさが50〜500μmであることを特徴とする請求項31〜39のいずれか一項に記載の光学ユニット。
【請求項41】
マイクロレンズアレイは柔軟性を有する材料で構成されていることを特徴とする請求項31〜36のいずれか一項に記載の光学ユニット。
【請求項42】
印刷物の上に形成されてなることを特徴とする請求項31〜41のいずれか一項に記載の光学ユニット。
【請求項43】
請求項8〜30のいずれか一項に記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項44】
請求項8〜30のいずれか一項に記載の表示装置を備えることを特徴とする携帯用電子機器。
【請求項45】
請求項8〜30のいずれか一項に記載の表示装置を備えることを特徴とする携帯電話。
【請求項46】
メール機能を備えることを特徴とする請求項45に記載の携帯電話。
【請求項47】
カメラ機能を備えることを特徴とする請求項45に記載の携帯電話。
【請求項48】
請求項8〜30のいずれか一項に記載の表示装置を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項49】
撮影条件を設定するスイッチが設けられていることを特徴とする請求項48に記載の撮像装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2011−170277(P2011−170277A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36432(P2010−36432)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】