説明

表示素子

【課題】簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、表示コントラスト、白表示反射率が高い表示素子を提供する。
【解決手段】対向電極間に、下記一般式(A)で表される化合物または一般式(B)で表される化合物を含有した電解質と、白色散乱物とを有し、かつ少なくとも一方の対向電極が、ビスターピリジン誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンとを含む高分子化合物を固定化している表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な電気化学的な表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化等に伴い、従来、紙等の印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT(ブラウン管)、また近年では、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は必ずしも人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等の課題が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない電力を消費しない、いわゆるメモリー性を有する反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
例えば、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低く白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は電圧高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。これらの方法で、カラー表示を行う方法として、カラーフィルターを用いる方法が知られている。原理的に、カラーフィルターの着色のため明るい白表示が得られない。
【0006】
また、低電圧で駆動可能なフルカラー表示が可能な方式としては、エレクトロクロミック方式が知られている。エレクトロクロミック方式は、3V以下の低電圧で駆動が可能であるが、フルカラーを表示しようとした場合、異なる色を3層積層する必要があり、複雑な素子構成によるコスト高が懸念され、また、平地混合によるフルカラーエレクトロクロミック素子(例えば、特許文献1参照。)が知られているが、この方式では、平地混合のため、カラー表示のコントラストが十分ではなく、単層で多色表示を行う方法が望まれている。
【特許文献1】特開2003−270670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、表示コントラスト、白表示反射率が高い表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0009】
1.対向電極間に、下記一般式(A)で表される化合物または一般式(B)で表される化合物を含有した電解質と、白色散乱物とを有し、かつ少なくとも一方の対向電極が、下記一般式(1)で表される高分子材料を固定化していることを特徴とする表示素子。
【0010】
【化1】

【0011】
〔式中、Ra1、Ra2、Rb1、Rb2は各々独立に置換基を有しても良い、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または脂肪族炭化水素基を表す。Ra1及びRa2、Rb1及びRb2は互いに連結して環状構造を形成しても良い。〕
【0012】
【化2】

【0013】
〔一般式(1)で表される高分子化合物は、ビスターピリジン誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンとを含む高分子化合物であって、式中、Mは金属イオンを表し、Xはカウンターアニオンを表し、Rは、炭素原子および水素原子を含む、または、ターピリジル基を直接接続するスペーサを表し、R1、R2、R3およびR4は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基を表し、nは重合度を表す2以上の整数である。〕
2.前記一般式(1)における金属イオンMは、鉄イオン、コバルトイオン、ルテニウムイオン、ニッケルイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【0014】
3.前記一般式(1)におけるカウンターアニオンは、酢酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ポリオキシメタレートおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記1または2に記載の表示素子。
【0015】
4.前記一般式(1)におけるスペーサは、アリール基またはアルキル基であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の表示素子。
【0016】
5.前記アリール基またはアルキル基が、酸素原子または硫黄原子をさらに含むことを特徴とする前記4に記載の表示素子。
【0017】
6.前記アリール基が、下記式[1]〜[4]からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記4または5に記載の表示素子。
【0018】
【化3】

【0019】
7.前記一般式(1)で表される高分子材料が、下記一般式(2)に表されるビスターピリジン誘導体と金属塩とを、酢酸およびメタノール中で還流させる工程を包含する方法で製造されていることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の表示素子。
【0020】
【化4】

【0021】
〔式中、Rは、炭素原子および水素原子を含む、または、ターピリジル基を直接接続するスペーサを表し、R1、R2、R3およびR4は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基を表し、nは重合度を表す2以上の整数である。〕
8.前記対向電極の駆動操作により、白表示と2色以上の着色表示を行うことを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の表示素子。
【0022】
9.対向電極間に、下記一般式(A)で表される化合物または一般式(B)で表される化合物を含有した電解質と白色散乱物とを有し、かつ少なくとも一方の対向電極が、下記一般式(3)で表される高分子材料を固定化していることを特徴とする表示素子。
【0023】
【化5】

【0024】
〔式中、Ra1、Ra2、Rb1、Rb2は各々独立に置換基を有しても良い、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または脂肪族炭化水素基を表す。Ra1及びRa2、Rb1及びRb2は互いに連結して環状構造を形成しても良い。〕
【0025】
【化6】

【0026】
〔一般式(3)で表される高分子化合物は、第1〜第N(Nは、2以上の整数)のビスターピリジン誘導体と、第1〜第N(Nは、2以上の整数)の金属イオンと、第1〜第N(Nは2以上の整数)のカウンターアニオンとを含む高分子材料であって、式中、M1、・・・、MN(Nは、2以上の整数)は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の第1〜第Nの金属イオンを表し、X1、・・・、XN(Nは、2以上の整数)は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の第1〜第Nのカウンターアニオンを表し、R1、・・・、RN(Nは、2以上の整数)は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の、炭素原子および水素原子を含む、または、ターピリジル基を直接接続するスペーサを表し、R11、・・・、R1N、R21、・・・、R2N、R31、・・・、R3N、R41、・・・、R4N(Nは、2以上の整数)は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基を表し、n1、・・・、nNはそれぞれ重合度を表す2以上の整数を表す。〕
10.前記一般式(3)における第1〜第Nの金属イオンは、それぞれ、鉄イオン、コバルトイオン、ルテニウムイオン、ニッケルイオンおよび亜鉛イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記9に記載の表示素子。
【0027】
11.前記一般式(3)における第1〜第Nのカウンターアニオンは、それぞれ、酢酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ポリオキシメタレートおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記9または10に記載の表示素子。
【0028】
12.前記一般式(3)におけるR1、・・・、RNで表されるスペーサは、それぞれ、アリール基またはアルキル基であることを特徴とする前記9〜11のいずれか1項に記載の表示素子。
【0029】
13.前記アリール基またはアルキル基が、酸素原子または硫黄原子をさらに含むことを特徴とする前記12に記載の表示素子。
【0030】
14.前記アリール基が、下記式[1]〜式[4]からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記12または13に記載の表示素子。
【0031】
【化7】

【0032】
15.前記一般式(3)で表される高分子材料が、下記一般式(4)で表される第1〜第N(Nは2以上の整数)のビスターピリジン誘導体のそれぞれと、第1〜第N(Nは2以上の整数)の金属塩のそれぞれとを、酢酸およびメタノール中でそれぞれ還流させる工程と、前記それぞれ還流させる工程で得られた第1〜第N(Nは2以上の整数)の反応物を混合する工程とを包含する方法で製造されていることを特徴とする前記9〜14のいずれか1項に記載の表示素子。
【0033】
【化8】

【0034】
〔式中、R1、・・・、RN(Nは、2以上の整数)は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の、炭素原子および水素原子を含む、または、ターピリジル基を直接接続するスペーサを表し、R11、・・・、R1N、R21、・・・、R2N、R31、・・・、R3N、R41、・・・、R4N(Nは、2以上の整数)は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基を表し、n1、・・・、nNはそれぞれ重合度を表す2以上の整数である。〕
16.前記対向電極の駆動操作により、白表示と2色以上の着色表示を行うことを特徴とする前記9〜15のいずれか1項に記載の表示素子。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、表示コントラスト、白表示反射率が高い表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0037】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、対向電極間に、前記一般式(A)で表される化合物または前記一般式(B)で表される化合物を少なくとも1種含有した電解質を有し、かつ少なくとも一方の対向電極が、前記一般式(1)で表される高分子材料を固定化していることを特徴とする表示素子により、簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、表示コントラスト、白表示反射率が高い表示素子を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0038】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0039】
〔表示素子の基本構成〕
本発明の表示素子においては、表示部には、対応する1つの対向電極が設けられている。表示部に近い対向電極の1つである電極1にはITO電極等の透明電極、他方の電極2には導電性電極が設けられている。電極1と電極2との間に、本発明に係る前記一般式(A)で表される化合物または一般式(B)で表される化合物を含有した電解質を有し、かつ電極1に本発明に係る一般式(1)で表される高分子材料が固定化されており、対向電極間に正負両極性の電圧を印加することにより、本発明に係る一般式(1)で表される高分子材料の酸化還元反応が行われ、白表示と2色以上の着色表示を可逆的に切り替えることができる。
【0040】
〔一般式(A)、一般式(B)で表される化合物〕
一般式(A)及び一般式(B)において、Ra1、Ra2、Rb1、Rb2は各々独立に置換基を有しても良い、芳香族基、芳香族複素環基、脂肪族基を表す。Ra1及びRa2、Rb1及びRb2は互いに連結して環状構造を形成しても良い。
【0041】
芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、芳香族複素環基としては、例えばピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基、モルフォリノ基等が挙げられる。また脂肪族炭化水素基には、鎖状及び環状のものが包含され、鎖状のものには直鎖状のもの及び分岐状のものが包含される。このような脂肪族炭化水素基には、メチル、エチル、ビニル、プロピル、イソプロピル、プロペニル、ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、iso−ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、オクチル、iso−オクチル、シクロオクチル、2,3−ジメチル−2−ブチル等が挙げられる。
【0042】
これら置換基は更に置換基を有していても良い。それらの置換基としては、特に制限は無く例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基等)、シクロアルケニル基(例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基、エチニル基、トリメチルシリルエチニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基、モルフォリノ基等)、複素環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基、ピリジルオキシ基、チアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、イミダゾリルオキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、2−ナフチルオキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基等)、複素環チオ基(例えば、ピリジルチオ基、チアゾリルチオ基、オキサゾリルチオ基、イミダゾリルチオ基、フリルチオ基、ピロリルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基、モルフォリノスルホニル基、ピロリジノスルホニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ホルミルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基、モルフォリノカルボニル基、ピペラジノカルボニル基等)、アルカンスルフィニル基またはアリールスルフィニル基(例えば、メタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基、ブタンスルフィニル基、シクロヘキサンスルフィニル基、2−エチルヘキサンスルフィニル基、ドデカンスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルカンスルホニル基またはアリールスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基、2−エチルヘキサンスルホニル基、ドデカンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、N−メチルアニリノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基等)、アミノカルボニルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等)、アルコキシカルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等)、アリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等)、スルファモイルアミノ基(例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アリールアゾ基(例えば、フェニルアゾ基、ナフチルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基等)、複素環アゾ基(例えば、ピリジルアゾ基、チアゾリルアゾ基、オキサゾリルアゾ基、イミダゾリルアゾ基、フリルアゾ基、ピロリルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基等)、イミノ基(例えば、N−スクシンイミド−1−イル基、N−フタルイミド−1−イル基等)、ホスフィノ基(例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等)、ホスフィニル基(例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等)、ホスフィニルオキシ基(例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等)、ホスフィニルアミノ基(例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基等)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、スルホ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0043】
一般式(A)または一般式(B)で表される化合物は、これら置換基で連結された二量体、三量体等の多量体であっても良く、また重合体で有ってもよい。
【0044】
前記一般式(A)、一般式(B)において、Ra1、Ra2、Rb1、Rb2は芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましく、特に、電子吸引性基の置換した芳香族炭化水素基、若しくは電子欠乏性の芳香族複素環基が好ましい。電子吸引性基としては、ハメットの置換基定数σp値が0以上の電子吸引性基である。好ましくは、σp値が0.2以上の電子吸引性基である。上限としては好ましくは1.0以下の電子吸引性基である。更に好ましくは0.75以下の電子吸引性基である。ハメット則はベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年にL.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則によりもとめられた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に記載があるが、例えば、J.A.Dean編「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(McGraw−Hill)や「化学の領域増刊」、122号、96〜103頁、1979年(南江堂)に詳しい。但しこれらの成書に記載の文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなくその値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に含まれる限り包含されることは勿論である。
【0045】
σp値が0.20以上の電子吸引性基の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.20以上の他の電子吸引性基で置換されたアリール基、複素環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。
【0046】
電子欠乏性の芳香族複素環基としては、例えばピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環等の含窒素6員環から誘導される基が好ましい。
【0047】
以下、一般式(A)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

【0050】
【化11】

【0051】
【化12】

【0052】
【化13】

【0053】
【化14】

【0054】
以下に、一般式(B)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0055】
【化15】

【0056】
【化16】

【0057】
【化17】

【0058】
【化18】

【0059】
【化19】

【0060】
【化20】

【0061】
〔一般式(1)で表される高分子材料〕
本発明に係る前記一般式(1)で表される化合物は、ビスターピリジン誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンとを含む高分子材料であって、Mは金属イオンを表し、Xはカウンターアニオンを表し、Rは、炭素原子および水素原子を含む、または、ターピリジル基を直接接続するスペーサを表し、R1、R2、R3およびR4は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基を表し、nは重合度を表す2以上の整数である。
【0062】
本発明に係る一般式(1)を構成するビスターピリジン誘導体の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0063】
【化21】

【0064】
【化22】

【0065】
【化23】

【0066】
【化24】

【0067】
【化25】

【0068】
本発明に係る一般式(1)において、金属イオンMとしては、特に制限はないが、鉄イオン、コバルトイオン、ルテニウムイオン、ニッケルイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0069】
また、本発明に係る一般式(1)において、カウンターアニオンとしては、酢酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ポリオキシメタレートおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0070】
また、本発明に係る一般式(1)において、スペーサとしては、アリール基またはアルキル基であることが好ましく、更には、アリール基またはアルキル基が、酸素原子または硫黄原子を含むことが好ましく、特には、アリール基が、前記式[1]〜[4]からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0071】
本発明に係る一般式(1)で表される高分子材料の製造方法としては、ビスターピリジン誘導体と金属塩とを、酢酸またはメタノール中で還流させる方法で製造することが好ましい。酢酸およびメタノールは、それぞれ、ビスターピリジン誘導体および金属塩の溶媒として機能し得る。還流は、例えば、150℃の温度で24時間行うが、これに限定されない。還流条件は、選択されるスペーサ、金属塩によって異なるが、当業者であれば容易に最適の条件を選択することができる。ポリマー形成後、還流によって得られた混合物を加熱してもよい。加熱によって溶媒を蒸発させ、粉末とする。粉末は、例えば、紫色等の発色を有し、還元状態にある。このような粉末は容易にメタノールに溶解するため、取り扱いが簡便である。
【0072】
〔一般式(3)で表される高分子材料〕
一般式(3)で表される高分子化合物は、第1〜第N(Nは、2以上の整数)のビスターピリジン誘導体と、第1〜第N(Nは、2以上の整数)の金属イオンと、第1〜第N(Nは2以上の整数)のカウンターアニオンとを含む高分子材料であって、式中、M1、・・・、MN(Nは、2以上の整数)は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の第1〜第Nの金属イオンを表し、X1、・・・、XN(Nは、2以上の整数)は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の第1〜第Nのカウンターアニオンを表し、R1、・・・、RN(Nは、2以上の整数)は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の、炭素原子および水素原子を含む、または、ターピリジル基を直接接続するスペーサを表し、R11、・・・、R1N、R21、・・・、R2N、R31、・・・、R3N、R41、・・・、R4N(Nは、2以上の整数)は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基を表し、n1、・・・、nNはそれぞれ重合度を表す2以上の整数を表す。
【0073】
本発明に係る一般式(3)を構成するビスターピリジン誘導体の具体例としては、上記一般式(1)に適用可能なビスターピリジン誘導体と同様のものを挙げることができる。
【0074】
本発明に係る一般式(3)においては、第1〜第Nの金属イオンが、それぞれ、鉄イオン、コバルトイオン、ルテニウムイオン、ニッケルイオンおよび亜鉛イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0075】
また、本発明に係る一般式(3)においては、第1〜第Nのカウンターアニオンが、それぞれ、酢酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ポリオキシメタレートおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0076】
また、本発明に係る一般式(3)においては、R1、・・・、RNで表されるスペーサが、それぞれ、アリール基またはアルキル基であることが好ましく、更にはアリール基またはアルキル基が、酸素原子または硫黄原子をさらに含むことが好ましく、特には、アリール基が、前記式[1]〜式[4]からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0077】
本発明に係る一般式(3)で表される高分子材料を製造する方法としては、例えば、前記一般式(4)で表される第1〜第N(Nは2以上の整数)のビスターピリジン誘導体のそれぞれと、第1〜第N(Nは2以上の整数)の金属塩のそれぞれとを、酢酸およびメタノール中でそれぞれ還流させる工程と、前記それぞれ還流させる工程で得られた第1〜第N(Nは2以上の整数)の反応物を混合する工程とを包含する方法で製造する方法が好ましい。
【0078】
〔電解質〕
本発明でいう「電解質」とは、一般に、水などの溶媒に溶けて溶液がイオン伝導性を示す物質(以下、「狭義の電解質」という。)をいうが、本発明の説明においては、狭義の電解質に電解質、非電解質を問わず他の金属、化合物等を含有させた混合物を電解質(「広義の電解質」)という。
【0079】
〔電解質の溶媒〕
本発明に係る電解質で適用可能な有機溶媒としては、電解質を形成した後、揮発を起こさず電解質に留まることができる沸点が120〜300℃の範囲にある有機溶媒であれば特に制限はなく、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,Nジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリクレジルホスフェート、2エチルヘキシルホスフェート、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケート等をあげることができる。
【0080】
上記有機溶媒の中でも、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン等の環状カルボン酸エステル系化合物を用いることが好ましい。
【0081】
本発明で用いることのできるその他の溶媒として、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,“Organic Solvents”,4th ed.,John Wiley & Sons(1986)、Y.Marcus,“Ion Solvation”,John Wiley & Sons(1985)、C.Reichardt,“Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,“Nonaqueous Electorlytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる。
【0082】
〔イオン性液体〕
本発明の表示素子にはイオン性液体を適用することができる。本発明でいうイオン液体とは、常温溶融塩とも言われ、融点が100℃以下の塩である。この塩は同数のカチオンとアニオンから構成されており、分子構造によって融点が室温以下の物質も数多く存在し、これらは溶媒をまったく加えなくても室温で液体状態である。イオン性液体は、強い静電的な相互作用をもっているため蒸気圧がほとんどないことが大きな特徴であり、高温でも蒸発がなく揮発しない。
【0083】
本発明に用いるイオン性液体としては、一般的に研究・報告されている物質ならばどのようなものでも構わない。特に有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造がある。
【0084】
本発明で好適に用いることができるイオン性液体は、式Q+-で表され、20〜100℃、好ましくは20〜80℃、より好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは20〜40℃、特に20℃で液体として存在する塩のことを指し、粘度(25℃)は、常温で融体である限り特に制限されないが、好ましくは1〜200mPa・sである。さらに、式中Q+で表されるカチオン成分はオニウムカチオンが好ましく、さらに好ましくはアンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、スルホニウムカチオン及びホスホニウムカチオンである。
【0085】
上述のイオン性流体について具体的に詳述すると、上式中のQ+としては、R1234+、R123+、R1234+P、R12+=CR34、R12+=CR34[ここで、R1からR4は、互いに独立して、水素、飽和または不飽和の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基、R5−X−(R6−Y−)n−(式中、R5は炭素数4以下のアルキル基、R6は炭素数4以下のアルキレン基、XおよびYは酸素原子または硫黄原子、nは0〜10の整数を示す)を表し、これらの基は置換基を有していても良い]から成る群から選択されるアンモニウムおよび/またはホスホニウムイオン、R12+=CR3−R7−R3C=N+12、R12+−R7−S+12、R12+=CR3−R7−R3C=P+12(ここで、R1、R2およびR3は、前記で定義したものと同じであり、そしてR7は、炭素数1〜6のアルキレンまたはフェニレン基を表し、これらの基は置換基を有していても良い)から成る群から選択される第四級アンモニウムおよび/またはホスホニウムイオン、さらには下記一般式で表される窒素、硫黄および燐原子から選ばれる原子を1、2または3個含む窒素、硫黄および燐原子含有複素環から誘導されるアンモニウムイオン、スルホニウムイオンまたはホスホニウムイオンなどを挙げることができる。
【0086】
【化26】

【0087】
式中R1およびR2はこの上で定義した通りであり、Zは、N+、N+=C、S+、P+あるいはP+=Cを含む4〜10員環を構成しうる原子を指し、この構成する原子には置換基を有していても良い。
【0088】
上述の中でR1からR4の具体的な例はとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどの直鎖又は分枝を有するアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどのシクロアルキル基、無置換あるいはハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、水酸基、低級アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ)、カルボキシル基、アセチル基、プロパノイル基、チオール基、低級アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ)、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基などの置換基を1〜3個有するフェニル、ナフチル、トルイル、キシリル等のアリール基、ベンジルなどのアラルキル基などを挙げることができる。また、R5の具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル基などのアルキル基などが挙げられ、R6としてはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン基などのアルキレン基などを挙げることができる。さらにR7の具体的な例はとしては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのアルキレン基、フェニレンなどのフェニレン基などを挙げることができる。
【0089】
また、式中のA-で表される対アニオンとしては、ヘキサフルオロ燐酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、ヘキサフルオロヒ酸塩、フルオロスルホン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、硝酸塩、アルキルスルホン酸塩、フッ化アルキルスルホン酸塩または水素硫酸塩を表す。
【0090】
さらに、WO95/18456号、特開平8−259543号、特開2001−243995、電気化学第65巻11号923頁(1997年)、EP−718288号、J.Electrochem.Soc.,Vol.143,No.10,3099(1996)、Inorg.Chem.1996,35,1168〜1178等に記載されているピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩なども本発明に応じては適時選択して用いることができる。
【0091】
〔固体電解質、ゲル電解質〕
本発明に係る電解質には、溶媒やイオン性液体から成る溶液状の電解質以外にも、実質的に溶媒を含まない固体電解質や高分子化合物を含有した高粘度な電解質やゲル状の電解質(以下、ゲル電解質)を用いることができる。
【0092】
〔白色散乱物〕
本発明の表示素子においては、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から、白色散乱物を含有することが好ましく、多孔質白色散乱層を形成させて存在させてもよい。
【0093】
本発明に適用可能な多孔質白色散乱層は、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
【0094】
本発明で適用可能な白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0095】
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛が好ましく用いられる。また、無機酸化物(Al23、AlO(OH)、SiO2等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えて、トリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンを用いることができる。
【0096】
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0097】
本発明において、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子としては、水溶性高分子、水系溶媒に分散した高分子を挙げることができる。
【0098】
水溶性化合物としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。更に、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SO3M(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えば、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダーは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0099】
本発明においては、ゼラチン及びゼラチン誘導体、または、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体を好ましく用いることができる。
【0100】
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの高分子のうち、特開平10−76621号に記載の水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0101】
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kgあたりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、質量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0102】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水系化合物/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
【0103】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物を塗布する媒体は、表示素子の対向電極間の構成要素上であればいずれの位置でもよいが、対向電極の少なくとも1方の電極面上に付与することが好ましい。媒体への付与の方法としては、例えば、塗布方式、液噴霧方式、気相を介する噴霧方式として、圧電素子の振動を利用して液滴を飛翔させる方式、例えば、ピエゾ方式のインクジェットヘッドや、突沸を利用したサーマルヘッドを用いて液滴を飛翔させるバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットヘッド、また空気圧や液圧により液を噴霧するスプレー方式等が挙げられる。
【0104】
塗布方式としては、公知の塗布方式より適宜選択することができ、例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースローラーコーター、トランスファーローラーコーター、カーテンコーター、ダブルローラーコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ビードコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カレンダーコーター、押し出しコーター等が挙げられる。
【0105】
媒体上に付与した水系化合物と白色顔料との水混和物の乾燥は、水を蒸発できる方法であればいかなる方法であってもよい。例えば、熱源からの加熱、赤外光を用いた加熱法、電磁誘導による加熱法等が挙げられる。また、水蒸発は減圧下で行ってもよい。
【0106】
本発明でいう多孔質とは、前記水系化合物と白色顔料との水混和物を電極上に塗布乾燥して多孔質の白色散乱物を形成した後、該散乱物上に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質液を与えた後に対向電極で挟み込み、対向電極間に電位差を与え、銀の溶解析出反応を生じさせることが可能で、イオン種が電極間で移動可能な貫通状態のことを言う。
【0107】
本発明の表示素子では、上記説明した水混和物を塗布乾燥中または乾燥後に、硬化剤により水系化合物の硬化反応を行うことが望ましい。
【0108】
本発明で用いられる硬膜剤の例としては、例えば、米国特許第4,678,739号の第41欄、同第4,791,042号、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、同61−249054号、同61−245153号、特開平4−218044号等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド等)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン等)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素等)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号等に記載の化合物)が挙げられる。水系化合物としてゼラチンを用いる場合は、硬膜剤の中で、ビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。また、ポリビニルアルコールを用いる場合はホウ酸やメタホウ酸等の含ホウ素化合物の使用が好ましい。
【0109】
これらの硬膜剤は、水系化合物1g当たり0.001〜1g、好ましくは0.005〜0.5gが用いられる。また、膜強度を上げるため熱処理や、硬化反応時の湿度調整を行うことも可能である。
【0110】
〔電子絶縁層〕
本発明の表示素子においては、電気絶縁層を設けることができる。
【0111】
本発明に適用可能な電子絶縁層は、イオン電導性、電子絶縁性を合わせて有する層であればよく、例えば、極性基を有する高分子や塩をフィルム状にした固体電解質膜、電子絶縁性の高い多孔質膜とその空隙に電解質を担持する擬固体電解質膜、空隙を有する高分子多孔質膜、含ケイ素化合物の様な比誘電率が低い無機材料の多孔質体、等が挙げられる。
【0112】
多孔質膜の形成方法としては、燒結法(融着法)(高分子微粒子や無機粒子をバインダ等に添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させ細孔を得る)、高分子重合体等を加熱や脱気するなどして発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の公知の形成方法を用いることができる。具体的には、特開平10−30181号、特開2003−107626号、特公平7−95403号、特許第2635715号、同第2849523号、同第2987474号、同第3066426号、同第3464513号、同第3483644号、同第3535942号、同第3062203号等に記載の電子絶縁層を挙げることができる。
【0113】
〔電解質添加の増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解質に増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0114】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0115】
〔その他の添加剤〕
本発明の表示素子の構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
【0116】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0117】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0118】
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜26 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7 XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
〔基板〕
本発明で用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。更に、ステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。これらの支持体には、米国特許第4,141,735号のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行っても良い。本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。更に公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。更にRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板や、ガラスを練り込んだエポキシ樹脂を用いることができる。
【0119】
〔電極〕
本発明の表示素子においては、対向電極の少なくとも1種が金属電極であることが好ましい。金属電極としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス、及びそれらの合金等の公知の金属種を用いることができる。金属電極は、電解質中の銀の酸化還元電位に近い仕事関数を有する金属が好ましく、中でも銀または銀含有率80%以上の銀電極が、銀の還元状態維持の為に有利であり、また電極汚れ防止にも優れる。電極の作製方法は、蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、CVD法等の既存の方法を用いることができる。
【0120】
また、本発明の表示素子は、対向電極の少なくとも1種が透明電極であることが好ましい。透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0121】
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0122】
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0123】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0124】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサが設けられていてもよい。このスペーサとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサ及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0125】
〔表示素子駆動方法〕
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0126】
〔商品適用〕
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェーカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0128】
実施例1
《高分子材料の合成》
(高分子材料1の合成)
本発明に係る高分子材料1の模式構造を以下に示す。本発明に係る高分子材料1は、配位子であるビスターピリジン誘導体110と、金属イオンMと、カウンターアニオンとを含む構成からなる。下記に示す高分子材料1の複数の繰り返し単位は110である。
【0129】
次に、本発明に係る高分子材料1の製造方法を工程ごとに説明する。
【0130】
工程S110:例示化合物1で表されるビスターピリジン誘導体と、鉄塩とを酢酸およびメタノール中で還流して、高分子材料1を得た。
【0131】
工程S110においては、酢酸およびメタノールは、それぞれ、ビスターピリジン誘導体110および金属塩M(鉄塩)の溶媒として機能する。還流は、150℃の温度で24時間行った。
【0132】
【化27】

【0133】
(高分子材料2の合成)
本発明に係る高分子材料2の模式構造を以下に示す。本発明に係る高分子材料2は、配位子であるビスターピリジン誘導体210、220と、第1〜第Nの金属イオンと、第1〜第Nのカウンターアニオンとを含む構成からなる。ここで、Nは、2以上の整数である。
【0134】
次に、本発明に係る高分子材料2の製造方法を工程ごとに説明する。
【0135】
工程S210:例示化合物1で表されるビスターピリジン誘導体と鉄塩とを、酢酸およびメタノール中でそれぞれ還流させて、高分子化合物2aを得た。次に、例示化合物1で表されるビスターピリジン誘導体とルテニウム塩とを、酢酸およびメタノール中でそれぞれ還流させて、高分子化合物2bを得た。
【0136】
工程S210において、上記工程S110と同様に、酢酸およびメタノールは、ビスターピリジン誘導体および金属塩の溶媒として機能する。還流は、150℃の温度で、24時間かけて行った。
【0137】
工程S220:工程S210でそれぞれ得られた高分子化合物2aと高分子化合物2bを混合した。混合は、室温にて、2時間攪拌して行って、自己整合的に、下記に示すような複数の要素210と複数の要素220とが結合した高分子材料2を得た。
【0138】
工程S220の後に、得られた混合物を加熱を行うことでも得ることができる。加熱によって溶媒を蒸発させ、粉末とする。この時、粉末は、複数の発色が混合した色を有し、含有される金属イオンは、還元状態にある。
【0139】
【化28】

【0140】
(高分子材料3の合成)
上記高分子材料1の合成において、ビスターピリジン誘導体を例示化合物1から例示化合物8に変更した以外は同様にして、高分子材料3を得た。
【0141】
(高分子材料4の合成)
上記高分子材料1の合成において、ビスターピリジン誘導体を例示化合物1から例示化合物6に変更した以外は同様にして、高分子材料4を得た。
【0142】
《電解液の調整》
(電解液1の調製)
アセトニトリル2.5g中に、過塩素酸テトラブチルアンモニウム0.05gを溶解させて電解液1を得た。
【0143】
(電解液2の調製)
アセトニトリル2.5g中に、例示化合物(A)−24を0.05と過塩素酸テトラブチルアンモニウム0.05gを溶解させて電解液2を得た。
【0144】
(電解液3〜7の調製)
上記電解液2の調製において、例示化合物(A)−24を表1に示す各例示化合物に変更した以外は同様にして、電解液3〜7を得た。
【0145】
《電極の作製》
(電極1の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、ITO(Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)膜を公知の方法に従って形成して、透明電極(電極1)を得た。
【0146】
(電極2の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、公知の方法を用いて、電極厚み0.1μmのニッケル電極を形成し、得られた電極をさらに置換金メッキ浴に浸漬し、電極表面から深さ0.05μmが金で置換された金−ニッケル電極(電極2)を得た。
【0147】
(電極3の作製)
エタノール中に上記で得られた高分子材料1を溶解させた液をブレード法で電極1上に塗布し、85℃で1分間加熱してエタノールを蒸発させて、電極1上に高分子膜を形成し、電極3を得た。
【0148】
(電極4〜6の作製)
上記電極3の作製において、高分子材料1を表1に示す各高分子材料に変更した以外は同様にして、電極4〜6を作製した。
【0149】
《表示素子の作製》
(表示素子1の作製)
電極2の周辺部を、平均粒径40μmのガラス製球形ビーズを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした後に、電極3と電極2が直交するように貼り合わせ、さらに加熱押圧して空セルを作製した。該空セルに電解液1を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子1を作製した。
【0150】
(表示素子2〜7の作製)
上記表示素子1の作製において、電解液1を電解液2〜7に変更した以外は同様にして、表示素子2〜7を作製した。
【0151】
(表示素子8の作製)
電極2の周辺部を、平均粒径40μmのガラス製球形ビーズを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした後に、電極4と電極2が直交するように貼り合わせ、さらに加熱押圧して空セルを作製した。該空セルに電解液1を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子8を作製した。
【0152】
(表示素子9、10の作製)
上記表示素子8の作製において、電解液1を電解液3、5にそれぞれ変更した以外は同様にして、表示素子9、10を作製した。
【0153】
(表示素子11の作製)
電極2の周辺部を、平均粒径40μmのガラス製球形ビーズを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした後に、電極5と電極2が直交するように貼り合わせ、さらに加熱押圧して空セルを作製した。該空セルに電解液1を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子11を作製した。
【0154】
(表示素子12、13の作製)
上記表示素子11の作製において、電解液1を電解液3、5にそれぞれ変更した以外は同様にして、表示素子12、13を作製した。
【0155】
(表示素子14の作製)
電極2の周辺部を、平均粒径40μmのガラス製球形ビーズを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした後に、電極6と電極2が直交するように貼り合わせ、さらに加熱押圧して空セルを作製した。該空セルに電解液1を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子14を作製した。
【0156】
(表示素子15、16の作製)
上記表示素子14の作製において、電解液1を電解液3、5にそれぞれ変更した以外は同様にして、表示素子15、16を作製した。
【0157】
《表示素子の評価》
〔色調変化の観察〕
各表示素子の未駆動の状態と、印加後の色調を目視観察した。
【0158】
〔コントラストの評価〕
(表示素子1〜7の評価)
未駆動の状態の表示素子の反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定して、得られた反射率が極小値を取る波長での反射率の値をR0とした。次に、定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、+1.8Vの電圧を3秒間印加した後の反射率を同様にして、R0を求めた波長での反射率をR18とした。CR=R18/R0とし、CRを表示素子のコントラストの指標とした。ここでは、CRの値が大きいほど、コントラストが高いことになる。得られた結果を表1に示す。
【0159】
(表示素子8〜10の評価)
表示素子1〜7と同様にしてコントラストを評価した。得られた結果を表1に示す。
【0160】
(表示素子11〜13の評価)
印加電圧を+1.6Vに変更した以外は表示素子1〜7と同様にして、コントラストを評価した。得られた結果を表1に示す。
【0161】
(表示素子14〜16の評価)
表示素子11〜13と同様にしてコントラストを評価した。得られた結果を表1に示す。
【0162】
【表1】

【0163】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明に係る表示素子は比較表示素子に比べて、同じ電圧を印加したときのコントラストが高いことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向電極間に、下記一般式(A)で表される化合物または一般式(B)で表される化合物を含有した電解質と、白色散乱物とを有し、かつ少なくとも一方の対向電極が、下記一般式(1)で表される高分子材料を固定化していることを特徴とする表示素子。
【化1】

〔式中、Ra1、Ra2、Rb1、Rb2は各々独立に置換基を有しても良い、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または脂肪族炭化水素基を表す。Ra1及びRa2、Rb1及びRb2は互いに連結して環状構造を形成しても良い。〕
【化2】

〔一般式(1)で表される高分子化合物は、ビスターピリジン誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンとを含む高分子化合物であって、式中、Mは金属イオンを表し、Xはカウンターアニオンを表し、Rは、炭素原子および水素原子を含む、または、ターピリジル基を直接接続するスペーサを表し、R1、R2、R3およびR4は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基を表し、nは重合度を表す2以上の整数である。〕
【請求項2】
前記一般式(1)における金属イオンMは、鉄イオン、コバルトイオン、ルテニウムイオン、ニッケルイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記一般式(1)におけるカウンターアニオンは、酢酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ポリオキシメタレートおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示素子。
【請求項4】
前記一般式(1)におけるスペーサは、アリール基またはアルキル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項5】
前記アリール基またはアルキル基が、酸素原子または硫黄原子をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の表示素子。
【請求項6】
前記アリール基が、下記式[1]〜[4]からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4または5に記載の表示素子。
【化3】

【請求項7】
前記一般式(1)で表される高分子材料が、下記一般式(2)に表されるビスターピリジン誘導体と金属塩とを、酢酸およびメタノール中で還流させる工程を包含する方法で製造されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の表示素子。
【化4】

〔式中、Rは、炭素原子および水素原子を含む、または、ターピリジル基を直接接続するスペーサを表し、R1、R2、R3およびR4は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基を表し、nは重合度を表す2以上の整数である。〕
【請求項8】
前記対向電極の駆動操作により、白表示と2色以上の着色表示を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項9】
対向電極間に、下記一般式(A)で表される化合物または一般式(B)で表される化合物を含有した電解質と白色散乱物とを有し、かつ少なくとも一方の対向電極が、下記一般式(3)で表される高分子材料を固定化していることを特徴とする表示素子。
【化5】

〔式中、Ra1、Ra2、Rb1、Rb2は各々独立に置換基を有しても良い、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または脂肪族炭化水素基を表す。Ra1及びRa2、Rb1及びRb2は互いに連結して環状構造を形成しても良い。〕
【化6】

〔一般式(3)で表される高分子化合物は、第1〜第N(Nは、2以上の整数)のビスターピリジン誘導体と、第1〜第N(Nは、2以上の整数)の金属イオンと、第1〜第N(Nは2以上の整数)のカウンターアニオンとを含む高分子材料であって、式中、M1、・・・、MN(Nは、2以上の整数)は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の第1〜第Nの金属イオンを表し、X1、・・・、XN(Nは、2以上の整数)は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の第1〜第Nのカウンターアニオンを表し、R1、・・・、RN(Nは、2以上の整数)は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の、炭素原子および水素原子を含む、または、ターピリジル基を直接接続するスペーサを表し、R11、・・・、R1N、R21、・・・、R2N、R31、・・・、R3N、R41、・・・、R4N(Nは、2以上の整数)は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基を表し、n1、・・・、nNはそれぞれ重合度を表す2以上の整数を表す。〕
【請求項10】
前記一般式(3)における第1〜第Nの金属イオンは、それぞれ、鉄イオン、コバルトイオン、ルテニウムイオン、ニッケルイオンおよび亜鉛イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項9に記載の表示素子。
【請求項11】
前記一般式(3)における第1〜第Nのカウンターアニオンは、それぞれ、酢酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ポリオキシメタレートおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項9または10に記載の表示素子。
【請求項12】
前記一般式(3)におけるR1、・・・、RNで表されるスペーサは、それぞれ、アリール基またはアルキル基であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項13】
前記アリール基またはアルキル基が、酸素原子または硫黄原子をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の表示素子。
【請求項14】
前記アリール基が、下記式[1]〜式[4]からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項12または13に記載の表示素子。
【化7】

【請求項15】
前記一般式(3)で表される高分子材料が、下記一般式(4)で表される第1〜第N(Nは2以上の整数)のビスターピリジン誘導体のそれぞれと、第1〜第N(Nは2以上の整数)の金属塩のそれぞれとを、酢酸およびメタノール中でそれぞれ還流させる工程と、前記それぞれ還流させる工程で得られた第1〜第N(Nは2以上の整数)の反応物を混合する工程とを包含する方法で製造されていることを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載の表示素子。
【化8】

〔式中、R1、・・・、RN(Nは、2以上の整数)は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の、炭素原子および水素原子を含む、または、ターピリジル基を直接接続するスペーサを表し、R11、・・・、R1N、R21、・・・、R2N、R31、・・・、R3N、R41、・・・、R4N(Nは、2以上の整数)は、すべて同一、すべて異なる、または、一部同一の水素原子、アリール基またはアルキル基を表し、n1、・・・、nNはそれぞれ重合度を表す2以上の整数である。〕
【請求項16】
前記対向電極の駆動操作により、白表示と2色以上の着色表示を行うことを特徴とする請求項9〜15のいずれか1項に記載の表示素子。

【公開番号】特開2009−223159(P2009−223159A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69447(P2008−69447)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】