説明

表示色切替装置

【課題】 表示画面の任意の一点を直接クリックすることで階調の変更を可能にする表示色切替装置。
【解決手段】 熱画像カメラが撮像した測定対象の表面温度分布を表示する表示器において、熱画像表示エリアと、カラーバー表示エリアが設計されている表示画面と、前記カラーバー表示エリアを用いて表示色から表面温度への目視換算を可能にするための階調を定義する、二以上の任意の数の階調テーブルと、前記表示画面の一部がクリックされることで、表示されている前記複数の階調テーブルが変更される手段と、を備えることを特徴とする表示色切替装置であって、更に、前述のクリックされる表示画面はカラーバー表示エリアであることを特徴とし、又はクリックされる前記表示画面の任意の場所に前記複数の階調テーブルに対応するテキスト又は画像を有する表示色切替装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱画像カメラが撮像した測定対象の表面温度分布を表示するための表示画面に関する。
【背景技術】
【0002】
物体から放射される赤外線を検知し、その物体の表面温度分布を画像として表示する熱画像カメラにおいて、従来より、表示画面は、熱画像表示エリアと、カラーバー表示エリアと、文字等による各種情報表示エリアとに画成することが為されてきた。このうち、熱画像表示エリアでは温度分布が色彩の変化により階調表示される。また、カラーバー表示エリアにおいては、熱画像表示エリアに表示された温度分布の色彩から実際の温度値への目視換算を可能にするための、いわゆる色見本たるカラーバーを設置することが広く行われてきた。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
また、実際に熱画像カメラが用いられる現場においては、前述の熱画像表示エリア及びカラーバー表示エリアで表示される階調を、使用者又は使用環境によって変化させる必要があった。この階調の変更方法としては、表面温度分布表示用ソフトのメニューバーのプルダウンメニューから、希望する階調を選択して変化させる方法が採用されてきた。
【0004】
【特許文献1】特開平6−341904号公報(第2頁、第2図―第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、各種処理中において、表示ソフトの狭小な範囲を複数回クリックすることは快適な操作性とは言い難く、操作ミスにもつながりかねない。また当該選択メニューは、メニューバーに直接表示されているわけではなく、直接表示されるメニューの下位に位置している。そのため、階調を変更するにはどのメニューを選択すれば良いかを使用者が瞬時に判断できず、無関係なメニューを徒に選択する場合もある。
【0006】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、表示画面の任意の一点を直接クリックすることで階調の変更を可能にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1記載の表示色切替装置は、熱画像カメラが撮像した測定対象の表面温度分布を表示する表示器において、熱画像表示エリアと、カラーバー表示エリアが設計されている表示画面と、前記カラーバー表示エリアを用いて表示色から表面温度への目視換算を可能にするための階調を定義する、二以上の任意の数の階調テーブルと、前記表示画面の一部がクリックされることで、表示されている前記複数の階調テーブルが変更される手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の表示色切替装置において、請求項2記載の表示色切替装置は、クリックされる前記表示画面はカラーバー表示エリアの任意の一点であることを特徴とする。
【0009】
請求項1又は2記載の表示色切替装置において、請求項3記載の表示色切替装置は、クリックされる前記表示画面の任意の場所に、前記複数の階調テーブルに対応する画像又はテキストを有することを特徴とする、請求項1又は2記載の表示色切替装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、狭小なメニューバーではなく、より広い表示画面の任意の場所をクリックすれば階調を変化させることができる。このため、快適な操作が可能となり、また操作ミスも防ぐことができ、更には、カラーバー表示エリア或いは当該階調を示す画像又はテキストをクリックすれば階調が変化することは使用者にとって一目瞭然であるため、メニューバーから選択するときのように迷いが生ずることもなく、大幅に操作性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本件発明が採用される表示画面の概略図であり、図2は本件発明に係る階調テーブルの一例であり、図3は本件発明において階調テーブルを変更する手順のフロー図であり、図4は本件発明の他の実施例における表示画面の概略図である。
【実施例】
【0012】
まず図1に基づいて、本件発明が採用される表示画面について説明する。この表示画面1は、熱画像表示エリア2、カラーバー表示エリア3、各種情報表示エリア4、上限温度表示エリア5a及び下限温度表示エリア5bを有している。このうち熱画像表示エリア2においては、熱画像カメラによって撮像された測定対象の表面温度分布を示す画像が、使用者が選んだ階調に従って表示される。現在どの階調を選択しているかは、カラーバー表示エリア3に表示される。
【0013】
このカラーバー表示エリア3においては、使用者が任意に設定する表示温度の上限値及び下限値の範囲内で、選択されている階調テーブルに基づいたグラデーションが表示される。このため、使用者は表示色と温度の対応関係を一目で把握することができる。この上限値及び下限値については、上限温度表示エリア5a及び下限温度表示エリア5bにおいてそれぞれ表示される。
なお、本図においては5aを上限温度表示エリアとし、5bを下限温度表示エリアとしたが、そもそも現在の表示温度の上限値と下限値を使用者に知らしめるのが目的なので、これを認識することが可能な位置であれば、本図に示す位置関係には限定されない。
【0014】
次に図2に基づいて、本件発明に係る階調テーブルについて説明する。前述のカラーバー表示エリア3において表示される階調の定義方法は、たとえば以下の方法が常用されている。
まず使用者が任意に表示温度の上限値及び下限値を設定する。次にこの設定された温度域を256に等分し、それぞれ0から255の色番号をカラーバー表示エリア3内に割り当てる。最後に各色番号に対応して表示させる色を規定する。256色の表示色を規定したものが1つの階調テーブルであり、予め必要な数の当該階調テーブルを用意しておく。前述のとおりカラーバー表示エリア3においては色番号が割り当てられているため、使用者が階調テーブルを選択することで、各色番号に該当する表示色がカラーバー表示エリア3上に呼び出される。また、当該色番号は表面温度分布を表示する熱画像表示エリア2においても用いられる。そのため、熱画像表示エリア2及びにカラーバー表示エリア3において表示される温度及び表示色との対応関係が合致するのである。
【0015】
階調テーブルについて、具体例を挙げると以下の通りである。予め用意する階調テーブルを、それぞれ階調テーブル1(アイアン階調)、階調テーブル2(レインボー階調)、階調テーブル3(赤・青階調)、階調テーブル4(白黒階調)とする。色番号に対応する色の指定方法として、ここでは便宜上RGB値による色指定を用いる。
階調テーブル1(アイアン階調)においては、色番号0に対応する色として{0,16,28}を指定する。色番号1に対応する色は{0,13,16}、色番号2は{0,13,39}、以下同様に指定していき、色番号254は{244,255,247}、色番号255は{243,255,253}とする。これにより、アイアン階調は高温から低温にかけて、白に近い黄色、橙、赤、暗い紫へと変化するグラデーションにて表示される。
階調テーブル2(レインボー階調)においては、色番号0は{0,0,0}、色番号1は{7,0,7}、色番号2は{14,0,14}とし、以下同様に色番号254は{253,248,248}、色番号255は{255,255,255}と指定する。この結果、レインボー階調は高温から低温にかけて、白、赤、黄、緑、水色、青、紫、黒、とちょうど虹色となるように色が表示される。
階調テーブル3(赤・青階調)においては、色番号0は{0,0,255}、色番号1は{0,4,255}、色番号2は{0,8,255}とし、以下同様に色番号254は{255,4,0}、色番号255は{255,0,0}と指定する。この結果、赤・青階調は高温から低温にかけて、赤、黄、緑、水色、青、と表示される。
階調テーブル4(白黒階調)においては、色番号0は{0,0,0}、色番号1は{1,1,1}、色番号2は{2,2,2}とし、以下同様に色番号254は{254,254,254}、色番号255は{255,255,255}と指定する。この結果、高温から低温にかけて白から黒のグラデーションとして表示される。
【0016】
なおここでは、設定された表示温度の上限値から下限値にかけての温度域を256に等分し、指定する色数も256色としているが、色と温度の対応関係を適切に把握することが可能であればこの色数には限定されない。
また階調テーブル及び各階調テーブルにおいて色番号に対応する指定色はあくまで例示である。同様に、色の指定方法についてもRGB値で指定する方法を採るが、これに限定されるものではない。
【0017】
次に図3に基づいて、本件発明において階調テーブルを変更する手順のフロー図について説明する。使用者が熱画像表示エリア2の階調を変更したいと考えるときは、まず表示エリア内の任意の一点をマウス等でクリックする(S301)。クリックする箇所は限定されないが、特にカラーバー表示エリア3内であればクリックと階調テーブルの選択との因果関係が明確である。このとき、例えば現在階調テーブル1が選択されていたとすると、当該階調テーブル1の次に格納されている階調テーブル2へ、色番号が呼び出す階調テーブルが変更される(S302)。その結果、熱画像表示エリア2及びカラーバー表示エリア3の階調が変化する(S303)。もし、変化した階調が使用者の希望する階調でないのであれば(S304)、もう一度カラーバー表示エリア3をクリックすれば良い。階調テーブル2の次に格納されている階調テーブル3が呼び出され、熱画像表示エリア2及びカラーバー表示エリア3の階調が再び変化する。これを、希望する階調になるまで繰り返し、希望する階調に変化したらその時点で終了である。
【0018】
以上に述べたように、本件発明によれば、メニューバーに比して広いカラーバー表示エリア3内の任意の1点をクリックするだけで熱画像表示エリア2及びカラーバー表示エリア3に適用される階調テーブルを変更することができる。また階調を変化させることとカラーバー表示エリア3をクリックすることとを関連付けることは使用者にとってごく容易であって、メニューバーのどのメニューをクリックすればその下位にある階調テーブルの設定メニューへたどりつくのかを逡巡するという問題点も解決できる。このように、本発明によれば使用者の利便性が飛躍的に向上するのである。
【0019】
またこのような例のみならず、図4に示すような構造を用いても良い。すなわち、階調の特徴を表すテキスト又は画像である階調テーブル表示エリア6を、格納する階調テーブルの数だけ表示画面1の任意の位置に配置する。これは特に、階調テーブルの数が多く何度もクリックする必要があるときなどに有用である。
【0020】
以上、本願発明における最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本件発明が採用される表示画面の概略図である。
【図2】図2は本件発明に係る階調テーブルである。
【図3】図3は本件発明において階調テーブルを変更する手順のフロー図である。
【図4】図4は本件発明の他の実施例における表示画面の概略図である。
【符号の説明】
【0022】
1.表示画面
2.熱画像表示エリア
3.カラーバー表示エリア
4.各種情報表示エリア
5a.上限温度表示エリア
5b.下限温度表示エリア
6.階調テーブル表示エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱画像カメラが撮像した測定対象の表面温度分布を表示する表示器において、
熱画像表示エリアと、カラーバー表示エリアが設計されている表示画面と、
表示色から表面温度への目視換算を可能にする前記カラーバー表示エリアのための階調を定義する、二以上の任意の数の階調テーブルと、
前記表示画面の一部がクリックされることで、表示されている前記複数の階調テーブルが変更される手段と、
を備えることを特徴とする表示色切替装置。
【請求項2】
前記表示色切替装置において、クリックされる前記表示画面はカラーバー表示エリアの任意の一点であることを特徴とする、請求項1記載の表示色切替装置。
【請求項3】
前記表示色切替装置において、クリックされる前記表示画面の任意の場所に、前記複数の階調テーブルに対応する画像又はテキストを有することを特徴とする、請求項1又は2記載の表示色切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−244083(P2009−244083A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90671(P2008−90671)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000133526)株式会社チノー (113)
【Fターム(参考)】