説明

表示装置、スペーサ、および電子機器

【課題】画質の低下を抑えることができる表示装置を得る。
【解決手段】画像を表示する液晶表示部20と、開状態と閉状態とを切り換え可能な液晶バリアを有するバリア部10と、液晶表示部20とバリア部10との間に挿入され、リタデーション値が40[nm]以下であるスペーサ9とを備える。液晶バリアを透過状態にすることにより、光が液晶表示部20とバリア部10との間に挿入されたスペーサ9を透過し、液晶表示部20に表示された画像が観察者に視認される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液晶素子により構成される表示装置、そのような表示装置に用いられるスペーサ、ならびにそのような表示装置を含んで構成される電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、立体視表示を実現できる表示装置が注目を集めている。立体視表示は、互いに視差のある(視点の異なる)左眼映像と右眼映像を表示するものであり、観察者が左右の目でそれぞれを見ることにより奥行きのある立体的な映像として認識することができる。また、互いに視差がある3つ以上の映像を表示することにより、観察者に対してより自然な立体映像を提供することが可能な表示装置も開発されている。
【0003】
このような表示装置は、専用の眼鏡が必要なものと、不要なものとに大別されるが、観察者にとっては専用の眼鏡は煩わしく感じるものであり、専用の眼鏡が不要なものが望まれている。専用の眼鏡が不要な表示装置としては、例えば、パララックスバリア(視差バリア)方式や、レンチキュラーレンズ方式などがある。これらの方式では、互いに視差がある複数の映像(視点映像)を同時に表示し、表示装置と観察者の視点との相対的な位置関係(観察角度)によって見える映像が異なるようになっている。例えば、特許文献1には、バリアとして液晶素子を用いた、パララックスバリア方式の表示装置が開示されている。
【0004】
パララックスバリア方式の表示装置では、観察角度によって見える映像が異なるようにするために、一般に、表示パネルとバリアとの間に所定の間隔を設ける。その際、この所定の間隔を保持する目的により、スペーサ部材を挿入する場合がある。特許文献2には、液晶表示パネルを構成するガラス基板に比べて熱膨張係数の大きいガラスをスペーサ部材として用いた表示装置が開示されている。この表示装置は、液晶表示パネルがスペーサ部材よりもバックライトの近くに配置されることに着目し、そのようなガラスをスペーサ部材として用いることにより、液晶表示パネルの熱膨張とスペーサ部材の熱膨張との差を少なくし、これらの接合部における歪みに起因する画質の低下を低減するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−119889号公報
【特許文献2】特開2004−294484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、表示パネルとバリアの間にスペーサ部材を挿入する場合には、画質の低下を抑えることができるスペーサ部材を用いることが望まれている。
【0007】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、画質の低下を抑えることができる表示装置、スペーサ、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の表示装置は、液晶表示部と、バリア部と、スペーサとを備えている。液晶表示部は、画像を表示するものである。バリア部は、開状態と閉状態とを切り換え可能な液晶バリアを有するものである。スペーサは、液晶表示部とバリア部との間に挿入され、リタデーション値が40[nm]以下のものである。
【0009】
本開示のスペーサは、2枚の偏光板の間に挿入される、リタデーション値が40[nm]以下のものである。
【0010】
本開示の電子機器は、上記表示装置を備えたものであり、例えば、テレビジョン装置、デジタルカメラ、パーソナルコンピュータ、ビデオカメラあるいは携帯電話等の携帯端末装置などが該当する。
【0011】
本開示の表示装置、スペーサ、および電子機器では、液晶バリアを透過状態にすることにより、液晶表示部に表示された画像が観察者に視認される。その際、光は、液晶表示部とバリア部との間に挿入された、リタデーション値が40[nm]以下であるスペーサを透過する。
【発明の効果】
【0012】
本開示の表示装置、スペーサ、および電子機器によれば、液晶表示部とバリア部との間に挿入するスペーサのリタデーション値を40[nm]以下にしたので、画質の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示の実施の形態に係る立体表示装置の一構成例を表すブロック図である。
【図2】図1に示した立体表示装置の一構成例を表す説明図である。
【図3】図1に示した表示駆動部の一構成例を表すブロック図である。
【図4】図1に示した表示部の一構成例を表す説明図である。
【図5】図1に示したバリア部の一構成例を表す説明図である。
【図6】図1に示したバリア部のグループ構成例を表す説明図である。
【図7】図1に示した表示部およびバリア部の一動作例を表す模式図である。
【図8】図1に示した立体表示装置の概略構成の一例を表す説明図である。
【図9】図1に示した立体表示装置の立体視表示の一動作例を表す模式図である。
【図10】図8に示したスペーサにおける応力の分布を表す模式図である。
【図11】図8に示したスペーサにおける遅相軸の方向の分布を表す模式図である。
【図12】図1に示したバリア部における透過率の特性を表す模式図である。
【図13】図1に示した立体表示装置における、立体視表示の際のクロストーク特性の一例を表す特性図である。
【図14】クロストークとコントラストとの関係を表す特性図である。
【図15】本実施の形態の変形例に係る立体表示装置の概略構成の一例を表す説明図である。
【図16】実施の形態に係る立体表示装置を適用したテレビジョン装置の外観構成を表す斜視図である。
【図17】変形例に係る立体表示装置の一構成例を表す説明図である。
【図18】図17に示した立体表示装置の概略構成の一例を表す説明図である。
【図19】図17に示した立体表示装置における立体視表示の一動作例を表す模式図である。
【図20】他の変形例に係る立体表示装置の概略構成の一例を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.適用例
【0015】
<1.実施の形態>
[構成例]
(全体構成例)
図1は、実施の形態に係る立体表示装置の一構成例を表すものである。立体表示装置1は、液晶バリアを用いた、パララックスバリア方式の表示装置である。なお、本開示の実施の形態に係るスペーサは、本実施の形態により具現化されるので、併せて説明する。立体表示装置1は、制御部41と、バックライト駆動部42と、バックライト30と、表示駆動部50と、表示部20と、バリア駆動部43と、バリア部10とを備えている。
【0016】
制御部41は、外部より供給される映像信号Sdispに基づいて、バックライト駆動部42、表示駆動部50、およびバリア駆動部43に対してそれぞれ制御信号を供給し、これらがお互いに同期して動作するように制御する回路である。具体的には、制御部41は、バックライト駆動部42に対してバックライト制御信号を供給し、表示駆動部50に対して映像信号Sdispに基づいて生成した映像信号Sdisp2を供給し、バリア駆動部43に対してバリア制御信号を供給するようになっている。ここで、映像信号Sdisp2は、立体表示装置1が通常表示(2次元表示)を行う場合には、1つの視点映像を含む映像信号S2Dであり、立体表示装置1が立体視表示を行う場合には、後述するように、複数(この例では8)の視点映像を含む映像信号S3Dである。
【0017】
バックライト駆動部42は、制御部41から供給されるバックライト制御信号に基づいてバックライト30を駆動するものである。バックライト30は、表示部20に対して面発光した光を射出する機能を有している。バックライト30は、例えば、LED(Light Emitting Diode)や、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)などを用いて構成されるものである。
【0018】
表示駆動部50は、制御部41から供給される映像信号Sdisp2に基づいて表示部20を駆動するものである。表示部20は、この例では液晶表示部であり、液晶表示素子を駆動して、バックライト30から射出した光を変調することにより表示を行うようになっている。
【0019】
バリア駆動部43は、制御部41から供給されるバリア制御信号に基づいて、バリア部10を駆動するものである。バリア部10は、バックライト30から射出し表示部20を透過した光を透過(開動作)または遮断(閉動作)するものであり、液晶を用いて構成された複数の開閉部11,12(後述)を有している。
【0020】
図2は、立体表示装置1の要部の一構成例を表すものであり、(A)は立体表示装置1の分解斜視構成を示し、(B)は立体表示装置1の側面図を示す。図2に示したように、立体表示装置1では、これらの各部品は、バックライト30、表示部20、およびバリア部10の順に配置されている。つまり、バックライト30から射出した光は、表示部20およびバリア部10を介して、観察者に届くようになっている。
【0021】
表示部20とバリア部10との間には、スペーサ9が設けられている。これにより、立体表示装置1では、表示部20とバリア部10との間隔を一定に保つとともに、これらのたわみを抑えるようになっている。
【0022】
(表示駆動部50および表示部20)
図3は、表示駆動部50のブロック図の一例を表すものである。表示駆動部50は、タイミング制御部51と、ゲートドライバ52と、データドライバ53とを備えている。タイミング制御部51は、ゲートドライバ52およびデータドライバ53の駆動タイミングを制御するとともに、制御部41から供給された映像信号Sdisp2に基づいて映像信号Sdisp3を生成し、データドライバ53へ供給するものである。ゲートドライバ52は、タイミング制御部51によるタイミング制御に従って、表示部20内の画素Pixを行ごとに順次選択して、線順次走査するものである。データドライバ53は、表示部20の各画素Pixへ、映像信号Sdisp3に基づく画素信号を供給するものである。具体的には、データドライバ53は、映像信号Sdisp3に基づいてD/A(デジタル/アナログ)変換を行うことにより、アナログ信号である画素信号を生成し、各画素Pixへ供給するようになっている。
【0023】
図4は、表示部20の一構成例を表すものであり、(A)は画素Pixの回路図の一例を示し、(B)は表示部20の断面構成を示す。
【0024】
各画素Pixは、図4(A)に示したように、TFT(Thin Film Transistor)素子Trと、液晶素子LCと、保持容量素子Csを備えている。TFT素子Trは、例えばMOS−FET(Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor)により構成されるものであり、ゲートがゲート線GCLに接続され、ソースがデータ線SGLに接続され、ドレインが液晶素子LCの一端と保持容量素子Csの一端に接続されている。液晶素子LCは、一端がTFT素子Trのドレインに接続され、他端は接地されている。保持容量素子Csは、一端がTFT素子Trのドレインに接続され、他端は保持容量線CSLに接続されている。ゲート線GCLはゲートドライバ52に接続され、データ線SGLはデータドライバ53に接続されている。
【0025】
表示部20は、図4(B)に示したように、駆動基板208と対向基板209との間に、液晶層204を封止したものである。この例では、光の入射側に駆動基板208を配置し、光の出射側に対向基板209を配置している。駆動基板208は、透明基板201と、画素電極202と、偏光板203とを有している。透明基板201は、例えばガラス等から構成されるものであり、TFT素子Trが形成されたものである。この透明基板201上には、画素Pix毎に画素電極202が配設されている。そして、透明基板201の、画素電極202が配設された面とは反対の面には、偏光板203が貼り付けられている。液晶層204は、液晶分子を含んで構成されるものであり、例えば、いわゆるVA(Vertical Alignment)方式やTN(Twisted Nematic)方式などにより駆動されるものである。対向基板209は、透明基板205と、対向電極206と、偏光板207とを有している。透明基板205は、例えばガラス等から構成されるものである。透明基板205の液晶層204側の面には、図示しないカラーフィルタやブラックマトリクスが形成され、さらにその上には、対向電極206が各画素Pixに共通の電極として配設されている。透明基板205の、対向電極206が配設された面とは反対の面には、偏光板207が貼り付けられている。偏光板203および偏光板207は、互いにクロスニコルになるように貼り合わせられている。具体的には、例えば、偏光板203の透過軸を表示画面の水平方向Xにし、偏光板207の透過軸を垂直方向Yにすることができる。
【0026】
(バリア部10およびバリア駆動部43)
図5は、バリア部10の一構成例を表すものであり、(A)はバリア部10の平面図を示し、(B)は(A)のバリア部10のV−V矢視方向の断面構成を示す。
【0027】
バリア部10は、いわゆるパララックスバリアであり、図5(A)に示したように、光を透過または遮断する複数の開閉部(液晶バリア)11,12を有している。開閉部11,12は、XY平面における一方向(ここでは、例えば垂直方向Yから所定の角度θをなす方向)に延在して設けられている。この例では、開閉部11の幅W11と、開閉部12の幅W12とは、互いに異なっており、ここでは例えばW11>W12となっている。但し、開閉部11,12の幅の大小関係はこれに限定されず、W11<W12であってもよく、また、W11=W12であってもよい。
【0028】
バリア部10は、図5(B)に示したように、駆動基板108と対向基板109との間に、液晶層104を封止したものである。この例では、光の入射側に駆動基板108を配置し、光の出射側に対向基板109を配置している。駆動基板108は、透明基板101と、透明電極層102と、位相差フィルム103aとを有している。透明基板101は、例えばガラス等から構成されるものであり、その上には、透明電極層102が形成されている。また、透明基板101の、透明電極層102が配設された面とは反対の面には、位相差フィルム103aが貼り付けられている。位相差フィルム103aは、視野角を広げる目的で用いられるものである。液晶層104は、液晶分子を含んで構成されるものであり、例えば、いわゆるVA(Vertical Alignment)方式やTN(Twisted Nematic)方式などにより駆動されるものである。対向基板109は、透明基板105と、透明電極層106と、位相差フィルム107aと、偏光板107bとを有している。透明基板105は、例えばガラス等から構成されるものであり、その上には、透明電極層106が形成されている。透明基板105の、透明電極層106が配設された面とは反対の面には、位相差フィルム107aおよび偏光板107bがこの順に張り付けられている。位相差フィルム107aは、位相差フィルム103aと同様に、視野角を広げる目的で用いられるものである。
【0029】
図5(B)に示したように、駆動基板108には、対向基板109とは異なり、偏光板が設けられていない。すなわち、立体表示装置1では、表示部20における対向基板209(光の出射側)に設けられた偏光板207を、バリア部10の入射側の偏光板としても共用するようになっている。このように偏光板を一枚省くことにより、偏光板における光の吸収がなくなるため透過率が向上することができ、偏光板による色度のずれを低減することができ、またコストを削減することができる。対向基板109の偏光板107bは、この偏光板207とクロスニコルになるように貼り合わせられている。
【0030】
透明電極層102は、複数の透明電極110,120を有している。また、透明電極層106は、複数の透明電極110,120に対応する位置にわたって、いわゆる共通電極として設けられるものである。透明電極110と、液晶層104および透明電極層106におけるその透明電極110に対応する部分とは、開閉部11を構成している。同様に、透明電極120と、液晶層104および透明電極層106におけるその透明電極120に対応する部分とは、開閉部12を構成している。このような構成により、バリア部10では、透明電極110または透明電極120に電圧を選択的に印加することにより、液晶層104がその電圧に応じた液晶配向になり、開閉部11,12毎の開閉動作を行うことができるようになっている。
【0031】
バリア部10では、開閉部12は複数のグループにグループ分けされており、立体視表示を行う際、同じグループに属する複数の開閉部12が、同じタイミングで開動作および閉動作を行うようになっている。以下に、開閉部12のグループについて説明する。
【0032】
図6は、開閉部12のグループ構成例を表すものである。開閉部12は、この例では4つのグループA〜Dにグループ分けされている。具体的には、図6に示したように、グループAを構成する開閉部12(開閉部12A)と、グループBを構成する開閉部12(開閉部12B)と、グループCを構成する開閉部12(開閉部12C)と、グループDを構成する開閉部12(開閉部12D)とが、この順で巡回するように配置されている。
【0033】
バリア駆動部43は、立体視表示を行う際、同じグループに属する複数の開閉部12が同じタイミングで開閉動作を行うように駆動する。具体的には、バリア駆動部43は、後述するように、グループAに属する複数の開閉部12Aを同時に開閉し、グループBに属する複数の開閉部12Bを同時に開閉し、グループCに属する複数の開閉部12Cを同時に開閉し、グループDに属する複数の開閉部12Dを同時に開閉することにより、開閉部12A〜12Dを時分割的に巡回して開閉動作するように駆動する。
【0034】
図7は、バリア部10および表示部20の一動作例を、断面構造を用いて模式的に表すものであり、(A)〜(D)は立体視表示を行う場合の4つの状態をそれぞれ示す。この例では、開閉部12Aは、表示部20の8つの画素Pixに1つの割合で設けられている。同様に、開閉部12B,12C,12Dは、それぞれ、表示部20の8つの画素Pixに1つの割合で設けられている。以下の説明では、画素Pixは、3つのサブピクセル(RGB)から構成されたピクセルとするが、これに限定されるものではなく、例えば、画素Pixがサブピクセルであってもよい。図7では、液晶バリア部10の開閉部11,12(12A〜12D)のうち、光が遮断される開閉部を斜線で示している。
【0035】
立体表示装置1では、立体視表示を行う場合には、表示駆動部50に映像信号S3Dが供給され、表示部20はそれに基づいて表示を行う。そして、液晶バリア部10では、開閉部11が閉状態(遮断状態)を維持するとともに、表示部20の表示に同期して開閉部12(開閉部12A〜12D)が時分割的に開閉動作を行う。具体的には、バリア駆動部43が開閉部12Aを開状態(透過状態)にした場合には、表示部20では、図7(A)に示したように、この開閉部12Aに対応した位置に配置された互いに隣接する8つの画素Pixが、8つの視点映像に対応する画素情報P1〜P8を表示する。同様に、バリア駆動部43が開閉部12Bを開状態(透過状態)にした場合には、表示部20では、図7(B)に示したように、この開閉部12Bに対応した位置に配置された互いに隣接する8つの画素Pixが、8つの視点映像に対応する画素情報P1〜P8を表示する。また、バリア駆動部43が開閉部12Cを開状態(透過状態)にした場合には、表示部20では、図7(C)に示したように、この開閉部12Cに対応した位置に配置された互いに隣接する8つの画素Pixが、8つの視点映像に対応する画素情報P1〜P8を表示する。そして、バリア駆動部43が開閉部12Dを開状態(透過状態)にした場合には、表示部20では、図7(D)に示したように、この開閉部12Dに対応した位置に配置された互いに隣接する8つの画素Pixが、8つの視点映像に対応する画素情報P1〜P8を表示する。これにより、観察者は、後述するように、例えば左眼と右眼とで異なる視点映像を見ることができ、表示された映像を立体的な映像として感じるようになっている。立体表示装置1では、このように、開閉部12A〜12Dを時分割的に切り換えて開閉し映像を表示することにより、後述するように、表示装置の解像度を高めることができるようになっている。
【0036】
なお、通常表示(2次元表示)を行う場合には、表示部20は、映像信号S2Dに基づいて通常の2次元映像を表示し、液晶バリア部10では、開閉部11および開閉部12(開閉部12A〜12D)は全て開状態(透過状態)を維持するようになっている。これにより、観察者は、表示部20に表示された通常の2次元映像をそのまま見ることができる。
【0037】
(スペーサ9)
表示部20とバリア部10との間にはスペーサが設けられ、これにより、表示部20とバリア部10との間隔を一定に保つとともに、これらのたわみを抑えるようになっている。以下に、このスペーサについて説明する。
【0038】
図8は、立体表示装置1の概略構成を表すものである。立体表示装置1は、スペーサ9を備えている。スペーサ9は、この例ではホウケイ酸ガラスによって構成されたものであり、例えば、Schott社のテンパックス(TEMPAX(登録商標))が使用可能である。このテンパックスの熱膨張係数は、3.3×10-6[K-1]程度である。なお、熱膨張係数は、例えば、ISO7991規格に基づいて求めることができる。このスペーサ9は、立体表示装置1の使用温度範囲において、リタデーション値Rを所定の値以下の低い値に維持するものである。ここで、リタデーション値Rは、以下の式で定義されるものである。
R=(nx−ny)×d ・・・(1)
ここで、nxはx方向の屈折率であり、nyはy方向の屈折率であり、dはスペーサ9の厚さである。屈折率nxと屈折率nyとの間には、次式のような関係がある。
nx≧ny ・・・(2)
ここで、x方向を遅相軸、y方向を進相軸と定義する。スペーサ9の熱膨張係数は、後述するように、使用温度範囲内においてリタデーション値Rを所定の値以下の低い値に維持できる程度に小さいものである。すなわち、このスペーサ9の熱膨張係数は、後述するように、例えば温度が高くなり膨張し、スペーサ9内において応力が発生することによりリタデーション値Rが大きくなった場合でも、そのリタデーション値Rを所定の値以下に維持できる程度に小さいものである。
【0039】
バックライト30から射出した光は、まず、表示部20に入射する。表示部20に入射した光は、入射側に配置された偏光板203に入射し、その透過軸に応じた方向に直線偏光し、液晶層204に入射する。液晶層204では、液晶素子LCにおける液晶分子の向きが画素信号に応じて変化し、これにより、液晶層204に入射した光の偏光方向が変化する。そして、液晶層204を透過した光は、出射側に配置された偏光板207に入射し、その透過軸に応じた偏光方向の光のみが通過する。
【0040】
表示部20を透過した光は、スペーサ9に入射する。スペーサ9では、光の偏光方向がほぼ維持される。スペーサ9を透過した光は、バリア部10に入射する。バリア部10に入射した光は、液晶層104に入射する。液晶層104では、開閉部11,12における液晶分子の向きに応じて、光の偏光方向が変化する。そして、液晶層104を透過した光は、出射側に配置された偏光板107bに入射し、その透過軸に応じた偏光方向の光のみが通過するようになっている。
【0041】
ここで、表示部20は、本開示における「液晶表示部」の一具体例に対応する。開閉部12は、本開示における「第1系列の液晶バリア」の一具体例に対応し、開閉部11は、本開示における「第2系列の液晶バリア」の一具体例に対応する。
【0042】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の立体表示装置1の動作および作用について説明する。
【0043】
(全体動作概要)
まず、図1などを参照して、立体表示装置1の全体動作概要を説明する。制御部41は、外部より供給される映像信号Sdispに基づいて、バックライト駆動部42、表示駆動部50、およびバリア駆動部43を制御する。バックライト駆動部42は、制御部41から供給されるバックライト制御信号に基づいてバックライト30を駆動する。バックライト30は、面発光した光を表示部20に対して射出する。表示駆動部50は、制御部41から供給される映像信号Sdisp2に基づいて表示部20を駆動する。表示部20は、バックライト30から射出した光を変調することにより表示を行う。バリア駆動部43は、制御部41から供給されるバリア制御信号に基づいてバリア部10を制御する。バリア部10の開閉部11,12は、バリア駆動部43からの指示に基づいて開閉動作を行い、バックライト30から射出し表示部20を透過した光を透過または遮断する。
【0044】
次に、立体視表示を行う場合の詳細動作を説明する。
【0045】
図9は、バリア駆動部43が開閉部12Aを開状態(透過状態)にした場合の、表示部20および液晶バリア部10の動作例を表すものである。この場合には、開閉部12Aが開状態(透過状態)になるとともに、開閉部12B〜12Dが閉状態(遮断状態)になり、表示部20は、映像信号S3Dに含まれる8つの視点映像のそれぞれに対応する画素情報P1〜P8を、開閉部12A付近に配置された画素Pixにそれぞれ表示する。これにより、表示部20の各画素Pixから出た光は、開閉部12Aによりそれぞれ角度が制限されて出力される。観察者は、例えば左眼で画素情報P4を、右眼で画素情報P5を見ることにより、立体的な映像を見ることができる。なお、ここでは、バリア駆動部43が開閉部12Aを開状態にした場合について説明したが、開閉部12B〜12Dを開状態にした場合についても同様である。
【0046】
このように、観察者は、左眼と右眼とで、画素情報P1〜P8のうちの異なる画素情報を見ることとなり、観察者は立体的な映像として感じることができる。また、開閉部12A〜12Dを時分割的に順次開閉して映像を表示することにより、観察者は、互いにずれた位置に表示される映像を平均化して見ることとなる。よって、立体表示装置1は、開閉部12Aのみをもつ場合に比べ、4倍の解像度を実現することが可能となる。言い換えれば、立体表示装置1の解像度は、2次元表示の場合に比べ1/2(=1/8×4)で済むこととなる。
【0047】
(スペーサ9の作用について)
スペーサ9は、上述したように、表示部20とバリア部10との間隔を一定に保つとともに、これらのたわみを抑えるために挿入されている。また、スペーサ9は、表示部20から入射した光の偏光方向をほぼ維持したまま、その光を表示部20に伝える機能をも有している。具体的には、スペーサ9は、例えば、立体表示装置1の環境温度が変化した場合でも、リタデーション値Rを所定の値以下に低く抑えることにより、光の偏光方向をほぼ維持することができる。以下に、その詳細を説明する。
【0048】
スペーサ9が、温度とともに膨張または縮小する際、その面内では、様々な方向に応力が発生する。
【0049】
図10は、スペーサ9の面内における熱膨張による応力方向の一例を表すものである。この例では、図10に示したように、スペーサ9の面内の中央付近では、例えば、スペーサ9の長辺方向である水平方向Xに応力が働き、スペーサ9の面内の周辺部では外側に向かう方向に応力が働く。
【0050】
スペーサ9の面内において、このような応力の分布が生じると、ブリュースターの法則として知られているように、スペーサ9に入射した光の偏光方向によって光の位相が変化することにより、位相差(リタデーション値R)が生じる。
【0051】
図11は、高い温度における、スペーサ9の面内での遅相軸の方向の分布を表すものである。この例では、図10に示した応力方向と垂直の方向に遅相軸が生じている。具体的には、遅相軸の方向は、スペーサ9の面内の中央付近では垂直方向Yになり、角付近の部分Z1〜Z4では斜め方向になる。これにより、スペーサ9は、遅相軸の方向に偏光した光の位相を遅らせ、遅相軸と垂直の方向(進相軸の方向)に偏光した光の位相を進めるため、比較例として後述するように、スペーサ9へ入射した光の偏光方向を変化させてしまう場合がある。しかしながら、スペーサ9では、このように面内において位相差が発生しても、後述するようにリタデーション値Rを小さくしているので、スペーサ9における偏光方向の変化を小さく抑えることができる。
【0052】
スペーサ9を透過した光は、バリア部10において、液晶層104を透過した後、偏光板107bに入射する。このとき、例えば、バリア部10の開閉部11,12が開状態である場合には、液晶層104において偏光方向が約90度変化し、バリア部10に入射した光の大部分は偏光板107bを通過する。また、バリア部10の開閉部11,12が閉状態である場合には、液晶層104において偏光方向は殆ど変化せず、バリア部10に入射した光の大部分は偏光板107bにおいて遮断される。
【0053】
図12は、スペーサ9におけるリタデーション値Rと、表示部20からスペーサ9を介して入射した光に対するバリア部10における透過率Tとの関係についてのシミュレーション結果を表すものである。この図12は、図11に示した部分Z1〜Z4において、バリア部10の開閉部11,12が開状態のときの透過率To、および閉状態のときの透過率Tcをシミュレーションしたものである。
【0054】
図12に示したように、バリア部10は、スペーサ9のリタデーション値Rが小さいほど、開状態における透過率Toが高くなり、閉状態における透過率Tcが低下してゼロに近づく。すなわち、リタデーション値Rが小さいほど、スペーサ9において光の偏光方向が変化しないため、バリア部10は、開状態である場合には光を十分に透過し、閉状態である場合には光を十分に遮断することができる。言い換えれば、スペーサ9のリタデーション値Rが小さいほど、コントラストCR(開状態および閉状態における透過率の比To/Tcに対応)は大きくなる。
【0055】
このように、スペーサ9では、熱膨張係数が比較的小さいため、温度が変化しても熱膨張により生じる応力を小さくすることができ、その結果、リタデーション値Rを低く抑えることができる。言い換えれば、スペーサ9は、使用温度範囲内においてリタデーション値Rを低く抑えることができるように、熱膨張係数が小さい材質のものが用いられる。これにより、スペーサ9における偏光方向の変化を小さくすることができるため、バリア部10では、開状態における透過率Toを高くし、閉状態における透過率Tcを低くすることができる。
【0056】
(スペーサ9のリタデーション値Rについて)
次に、スペーサ9の好ましいリタデーション値Rについて説明する。以下の例では、まず、立体視表示の際のクロストーク特性を用いて、好ましいコントラスト値CRを求め、そのコントラスト値CRに基づいて図12を用いて好ましいリタデーション値Rを求める。以下に、その詳細を説明する。
【0057】
図13は、立体表示装置1のクロストーク特性を表すものである。この図13は、立体視表示の際、互いに異なる視点映像が混ざりあう、いわゆるクロストークを評価するための特性図である。図13に示したクロストーク特性は、以下のようにして得られるものである。すなわち、まず、表示部20は、ある視点映像が全面において白色(白画像)であり、その他の視点映像が全面において黒色(黒画像)である、8つの視点映像を表示する。そして、バリア部10が、あるグループに属する開閉部12(例えばグループAに属する開閉部12A)のみを常に開状態(透過状態)にし、他のグループに属する開閉部12を常に閉状態(遮断状態)にする。そして、観察角度αを変化させながらその輝度Iを測定することにより、図13に示したクロストーク特性が得られる。この例では、バリア部10において、閉状態(遮断状態)にある開閉部11,12に対して異なる駆動電圧を与えることにより透過率Tcをいくつか設定し、各透過率Tcに対してこのクロストーク特性を測定している。
【0058】
図13に示したように、輝度Iは、観察者が、開状態にある開閉部12を介して、白画像である視点映像に係る画素情報を観察するような観察角度αにおいて大きくなり(部分Pt)になり、黒画像である視点映像に係る画素情報を観察するような観察角度αにおいて小さくなる(部分Pb)。部分Pbにおいて、輝度Iが、閉状態(遮断状態)のときの透過率Tcが大きくなるほど大きくなるのは、白画像である視点映像に係る画素情報の光の一部が、透過率Tcが高くなるほど、閉状態にある開閉部11,12を透過してしまうからである。
【0059】
ここで、クロストークCTを以下のように定義する。
CT=Ib/It
ここで、Itは、輝度Iの最大値であり、Ibは輝度Iの最小値である。すなわち、クロストークCTは、小さいほど好ましいものである。
【0060】
ところで、上述したクロストーク特性を得るときと同様に、閉状態(遮断状態)にある開閉部11,12に対して異なる駆動電圧(いわゆる黒電圧)を与えることにより透過率Tcをいくつか設定して立体表示装置1におけるコントラストCRを求めることができる。よって、各黒電圧におけるクロストークCTとコントラストCRの対のデータを、様々な黒電圧に対して得ることにより、クロストークCTとコントラストCRとの関係を得ることができる。
【0061】
図14は、コントラストCRとクロストークCTとの関係を表すものである。図14に示したように、コントラストCRが100以上の場合には、クロストークCTはほぼ一定であり、十分に低い値になる。そして、コントラストCRが100以下になると、クロストークCTは上昇し始める。この図から、コントラストCRが100以上であれば、クロストークによる画質の低下はほとんどなく、また、コントラストCRが100以下であっても、20以上であれば、クロストークCTは5%程度以下であるため、クロストークにより画質が大きく低下することはない。
【0062】
コントラストCR=100は、図12に示したように、リタデーション値R=20[nm]に対応する。すなわち、リタデーション値Rが20[nm]以下であれば、コントラストCRは100以上になるため、図14に示したように、クロストークによる画質の低下はほとんどない。一方、コントラストCR=20は、図12に示したように、リタデーション値R=40[nm]に対応する。すなわち、リタデーション値Rが40[nm]以下であれば、コントラストCRは20以上になるため、図14に示したように、クロストークにより画質が大きく低下することはない。
【0063】
このように、スペーサ9のリタデーション値Rは、40[nm]以下が好ましく、20[nm]以下であればさらに望ましい。
【0064】
このようにリタデーション値Rを低く抑えるためには、例えば、ブリュースターの法則から示唆されるように、スペーサ9を薄くする方法が考えられる。しかしながら、スペーサ9は、例えば図9に示したように、表示部20の各画素Pixから出た光が、それぞれの方向に進むようにするために設けられるものであり、スペーサ9の厚さdは、例えば、画面のサイズや解像度等により設定されるため、スペーサ9を容易に薄くすることはできない。
【0065】
立体表示装置1では、熱膨張係数が小さい材質によりスペーサ9を構成したので、温度が変化しても、熱膨張により生じる応力を小さく抑えることができ、スペーサ9を薄くすることなく、リタデーション値を小さく抑えることができる。
【0066】
(比較例)
次に、比較例について説明する。この比較例に係る立体表示装置1Rは、スペーサ9Rを備えている。スペーサ9Rは、ソーダライムガラスによって構成された、いわゆる青板である。このスペーサ9Rの熱膨張係数は、例えば9.0×10-6[K-1]程度である。つまり、上記実施の形態に係るスペーサ9の熱膨張係数(3.3×10-6[K-1]程度)の約3倍である。
【0067】
スペーサ9Rの場合でも、温度を高くすると、熱膨張により、例えば図10に示したような応力の分布が生じ、これにより、例えば図11に示したような遅相軸の方向の分布が生じる。本比較例に係るスペーサ9Rでは、本実施の形態に係るスペーサ9の場合に比べ、熱膨張係数が大きいため、光の位相差(リタデーション値R)は大きいものとなる。よって、スペーサ9Rを透過する光の偏光方向は、大きく変化することとなる。
【0068】
具体的には、図11に示したように、スペーサ9Rの面内における角付近の部分Z1〜Z4において、偏光方向が大きく変化する。すなわち、図8に示したように、この例では、偏光板207の透過軸を垂直方向Yにしているため、スペーサ9Rに入射する光は、垂直方向Yに直線偏光したものである。よって、特に部分Z1〜Z4では、スペーサ9Rに入射した直線偏光の光のうち、遅相軸方向の成分の位相が遅れるとともに、進相軸方向の成分の位相が進むことにより、円偏光の光になる。
【0069】
スペーサ9Rを透過した光は、バリア部10において、液晶層104を透過した後、偏光板107bに入射する。このとき、例えば、光の偏光方向は、液晶層104だけでなくスペーサ9Rによっても変化してしまうため、特に、立体表示装置1Rの表示画面における、部分Z1〜Z4に対応する部分では、開閉部11,12が開状態であっても光の一部が遮断されて暗くなり、開閉部11,12が閉状態であっても光がやや漏れてしまう。特に、開閉部11,12が閉状態である場合には、わずかな透過率差でもムラとして認識されやすい。
【0070】
この例では、本比較例に係るスペーサ9Rにおけるリタデーション値Rは、コントラストCRの測定に基づいて56[nm]程度と見積もられた。すなわち、この値は、上記実施の形態に係るスペーサ9におけるリタデーション値Rの望ましい値(20[nm])の3倍程度である。これにより、図12に示したように、バリア部10では、開状態における透過率Toが小さくなるとともに、閉状態における透過率Tcが大きくなってしまう。
【0071】
このように、本比較例に係る立体表示装置1Rでは、スペーサ9Rの熱膨張係数が比較的大きいため、温度が変化した場合に熱膨張により生じる応力が大きくなり、リタデーション値Rが大きくなってしまい、バリア部10が、光を十分に遮断もしくは透過することができなくなるおそれがある。
【0072】
一方、本実施の形態に係る立体表示装置1では、スペーサ9の熱膨張係数を小さくしたので、温度が変化した場合でも熱膨張により生じる応力を小さく抑えることができ、リタデーション値Rを小さく抑えることができるため、バリア部10は、光を十分に遮断もしくは透過することができる。
【0073】
[効果]
以上のように本実施の形態では、リタデーション値を、好ましくは40[nm]以下、望ましくは20[nm]以下にしたので、バリア部において、開状態の透過率Toを高くするとともに、閉状態の透過率を低くすることができ、画質の低下を抑えることができる。
【0074】
また、本実施の形態では、熱膨張係数が小さい材質によりスペーサを構成したので、温度が変化しても、熱膨張により生じる応力を小さく抑えることができ、リタデーション値を小さく抑えることができるため、画質の低下を抑えることができる。
【0075】
[変形例1]
上記実施の形態では、図5,8に示したように、バリア部10の駆動基板108(光の入射側)の偏光板を省き、表示部20における対向基板209(光の出射側)に設けられた偏光板207を、バリア部10の入射側の偏光板としても共用したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、図15に示したように、表示部20Bの対向基板209(光の出射側)の偏光板を省くとともに、バリア部10Bにおける対向基板108(光の入射側)に偏光板103bを設け、この偏光板103bを表示部20Bの出射側の偏光板としても共用してもよい。
【0076】
[変形例2]
上記実施の形態では、スペーサ9をホウケイ酸ガラスによって構成したが、これに限定されるものではなく、リタデーション値が40[nm]以下であればどのようなものでもよく、例えば、他材質のガラスやプラスチックなどにより構成してもよい。
【0077】
<2.適用例>
次に、上記実施の形態および変形例で説明した立体表示装置の適用例について説明する。
【0078】
図16は、上記実施の形態等の立体表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表すものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル511およびフィルターガラス512を含む映像表示画面部510を有しており、この映像表示画面部510は、上記実施の形態等に係る立体表示装置により構成されている。
【0079】
上記実施の形態等の立体表示装置は、このようなテレビジョン装置の他、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、携帯型ゲーム機、あるいはビデオカメラなどのあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。言い換えると、上記実施の形態等の立体表示装置は、映像を表示するあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0080】
以上、実施の形態および変形例、ならびに電子機器への適用例を挙げて本技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0081】
例えば、上記実施の形態等では、バックライト30、表示部20、バリア部10は、この順に配置したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、図17に示したように、バックライト30、バリア部10C、表示部20の順に配置してもよい。この場合には、例えば、図18に示したように、バリア部10Cの駆動基板108(光の入射側)に偏光板103bを設けるととともに、対向基板109(光の出射側)の偏光板を省き、表示部20の駆動基板208(光の入射側)の偏光板203をバリア部10Cの出射側の偏光板としても共用してもよい。図19は、本変形例に係る立体表示装置1Cにおいて、開閉部12Aが開状態(透過状態)である場合の、表示部20および液晶バリア部10の動作例を表すものである。本変形例では、バックライト30から射出した光は、まずバリア部10に入射する。そして、その光のうち、開閉部12A〜12Dを透過した光が表示部20において変調されるとともに、8つの視点映像を出力するようになっている。
【0082】
また、例えば、上記実施の形態等では、開閉部12は4つのグループA〜Dを構成したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば3つ以下のグループを構成してもよいし、5つ以上のグループを構成してもよい。
【0083】
また、上記実施の形態等では、開閉部12は、立体視表示の際に、開状態および閉状態との間で時分割的に切り換わるようにしたが、これに限定されるものではなく、立体視表示の際に常に開状態にしてもよい。
【0084】
また、例えば、上記実施の形態等では、表示部20は、8つの視点映像を表示したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば7つ以下の視点映像を表示してもよいし、9つ以上の視点映像を表示してもよい。
【0085】
また、例えば、上記実施の形態等では、開閉部11,12は、垂直方向Yから所定の角度θをなす斜め方向に延在するように設けたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、ステップ状(ステップバリア形式)に設けても良いし、垂直方向Yに延在するように設けてもよい。ステップバリア形式については、例えば、特開2004−264762に記載がある。
【0086】
また、例えば、上記実施の形態等では、バリア部10の駆動基板108(光の入射側)の偏光板を省いたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、図20に示したように、偏光板を省かない構成にしてもよい。この場合には、スペーサ9に入射した光の偏光方向がスペーサ9において変化すると、輝度が変化することとなるため、図11に示したような遅相軸の方向の分布が生じた場合には、表示面内において輝度むらが発生することとなる。このような場合でも、リタデーション値Rを所定の値以下の低い値に維持することにより、輝度むらを低減することができ、画質の低下を抑えることができる。
【0087】
なお、本技術は以下のような構成とすることができる。
【0088】
(1)画像を表示する液晶表示部と、
開状態と閉状態とを切り換え可能な液晶バリアを有するバリア部と、
前記液晶表示部と前記バリア部との間に挿入され、リタデーション値が40[nm]以下であるスペーサと
を備えた表示装置。
【0089】
(2)前記リタデーション値は20[nm]以下である
前記(1)に記載の表示装置。
【0090】
(3)前記スペーサは、ガラスにより構成される
前記(1)または(2)に記載の表示装置。
【0091】
(4)前記ガラスは、ホウケイ酸ガラスである
前記(3)に記載の表示装置。
【0092】
(5)前記スペーサは、プラスチックにより構成される
前記(1)または(2)に記載の表示装置。
【0093】
(6)前記スペーサは、熱膨張係数が3.3×10-6[K-1]以下である
前記(1)から(5)のいずれかに記載の表示装置。
【0094】
(7)前記液晶表示部は、表示液晶層と、その表示液晶層を挟んで配置された第1の偏光板および第2の偏光板とを有し、
前記バリア部は、バリア液晶層と、そのバリア液晶層の前記スペーサが配置された側とは反対側に配置された第3の偏光板とを有する
前記(1)から(6)のいずれかに記載の表示装置。
【0095】
(8)前記液晶表示部は、表示液晶層と、その表示液晶層の前記スペーサが配置された側とは反対側に配置された第1の偏光板とを有し、
前記バリア部は、バリア液晶層と、そのバリア液晶層を挟んで配置された第2の偏光板および第3の偏光板とを有する
前記(1)から(6)のいずれかに記載の表示装置。
【0096】
(9)前記液晶表示部は、表示液晶層と、その表示液晶層を挟んで配置された第1の偏光板および第2の偏光板とを有し、
前記バリア部は、バリア液晶層と、そのバリア液晶層を挟んで配置された第3の偏光板および第4の偏光板とを有する
前記(1)から(6)のいずれかに記載の表示装置。
【0097】
(10)前記バリア部は、複数の第1系列の液晶バリアおよび複数の第2系列の液晶バリアを有する
前記(1)から(9)のいずれかに記載の表示装置。
【0098】
(11)第1の表示モードおよび第2の表示モードを含む複数の表示モードを有し、
前記第1の表示モードでは、前記液晶表示部は複数の視点画像を表示し、前記バリア部は、前記複数の第1系列の液晶バリアを透過状態にするとともに、前記複数の第2系列の液晶バリアを遮断状態にすることにより、各視点画像からの光線または各視点画像に向かう光線を、それぞれ対応する角度方向に規制するように動作し、
前記第2の表示モードでは、前記液晶表示部は単一の視点画像を表示し、前記バリア部は、前記複数の第1系列の液晶バリアおよび前記複数の第2系列の液晶バリアを透過状態にすることにより、前記単一の視点画像からの光線または前記単一の視点画像に向かう光線をそのまま透過させるように動作する
前記(10)に記載の表示装置。
【0099】
(12)前記複数の第1系列の液晶バリアは、複数のバリアグループにグループ分けされ、
前記第1の表示モードでは、前記複数の第1系列の液晶バリアは、バリアグループごとに、時分割的に開状態および閉状態との間で切り換わる
前記(11)に記載の表示装置。
【0100】
(13)バックライトをさらに備え、
前記液晶表示部は、前記バックライトと前記バリア部との間に配置されている
前記(1)から(12)のいずれかに記載の表示装置。
【0101】
(14)バックライトをさらに備え、
前記バリア部は、前記バックライトと前記液晶表示部との間に配置されている
前記(1)から(12)のいずれかに記載の表示装置。
【0102】
(15)2枚の偏光板の間に挿入される、リタデーション値が40[nm]以下である
スペーサ。
【0103】
(16)表示装置と
前記表示装置を利用した動作制御を行う制御部と
を備え、
前記表示装置は、
画像を表示する液晶表示部と、
開状態と閉状態とを切り換え可能な液晶バリアを有するバリア部と、
前記液晶表示部と前記バリア部との間に挿入され、リタデーション値が40[nm]以下であるスペーサと
を有する電子機器。
【符号の説明】
【0104】
1,1B,1C,1D…立体表示装置、9…スペーサ、10,10B,10C…バリア部、11,12,12A〜12D…開閉部、20,20B…表示部、30…バックライト、41…制御部、42…バックライト駆動部、43…バリア駆動部、50…表示駆動部、51…タイミング制御部、52…ゲートドライバ、53…データドライバ、101,105…透明基板、102…透明電極層、103a,107a…位相差フィルム、103b,107b…偏光板、104…液晶層、106…透明電極層、108…駆動基板、109…対向基板、110…透明電極、120…透明電極、201,205…透明基板、202…画素電極、203,207…偏光板、204…液晶層、206…対向電極、208…駆動基板、209…対向基板、CR…コントラスト、Cs…保持容量素子、CSL…保持容量線、CT…クロストーク、GCL…ゲート線、I,It,Ib…輝度、LC…液晶素子、Pix…画素、R…リタデーション値、Sdisp,Sdisp2,Sdisp3…映像信号、SGL…データ線、T,Tc,To…透過率、Tr…TFT素子、Z1〜Z4…部分、α…観察角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する液晶表示部と、
開状態と閉状態とを切り換え可能な液晶バリアを有するバリア部と、
前記液晶表示部と前記バリア部との間に挿入され、リタデーション値が40[nm]以下であるスペーサと
を備えた表示装置。
【請求項2】
前記リタデーション値は20[nm]以下である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記スペーサは、ガラスにより構成される
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記ガラスは、ホウケイ酸ガラスである
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記スペーサは、プラスチックにより構成される
請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記スペーサは、熱膨張係数が3.3×10-6[K-1]以下である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記液晶表示部は、表示液晶層と、その表示液晶層を挟んで配置された第1の偏光板および第2の偏光板とを有し、
前記バリア部は、バリア液晶層と、そのバリア液晶層の前記スペーサが配置された側とは反対側に配置された第3の偏光板とを有する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記液晶表示部は、表示液晶層と、その表示液晶層の前記スペーサが配置された側とは反対側に配置された第1の偏光板とを有し、
前記バリア部は、バリア液晶層と、そのバリア液晶層を挟んで配置された第2の偏光板および第3の偏光板とを有する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記液晶表示部は、表示液晶層と、その表示液晶層を挟んで配置された第1の偏光板および第2の偏光板とを有し、
前記バリア部は、バリア液晶層と、そのバリア液晶層を挟んで配置された第3の偏光板および第4の偏光板とを有する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
前記バリア部は、複数の第1系列の液晶バリアおよび複数の第2系列の液晶バリアを有する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項11】
第1の表示モードおよび第2の表示モードを含む複数の表示モードを有し、
前記第1の表示モードでは、前記液晶表示部は複数の視点画像を表示し、前記バリア部は、前記複数の第1系列の液晶バリアを透過状態にするとともに、前記複数の第2系列の液晶バリアを遮断状態にすることにより、各視点画像からの光線または各視点画像に向かう光線を、それぞれ対応する角度方向に規制するように動作し、
前記第2の表示モードでは、前記液晶表示部は単一の視点画像を表示し、前記バリア部は、前記複数の第1系列の液晶バリアおよび前記複数の第2系列の液晶バリアを透過状態にすることにより、前記単一の視点画像からの光線または前記単一の視点画像に向かう光線をそのまま透過させるように動作する
請求項10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記複数の第1系列の液晶バリアは、複数のバリアグループにグループ分けされ、
前記第1の表示モードでは、前記複数の第1系列の液晶バリアは、バリアグループごとに、時分割的に開状態および閉状態との間で切り換わる
請求項11に記載の表示装置。
【請求項13】
バックライトをさらに備え、
前記液晶表示部は、前記バックライトと前記バリア部との間に配置されている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項14】
バックライトをさらに備え、
前記バリア部は、前記バックライトと前記液晶表示部との間に配置されている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項15】
2枚の偏光板の間に挿入される、リタデーション値が40[nm]以下である
スペーサ。
【請求項16】
表示装置と
前記表示装置を利用した動作制御を行う制御部と
を備え、
前記表示装置は、
画像を表示する液晶表示部と、
開状態と閉状態とを切り換え可能な液晶バリアを有するバリア部と、
前記液晶表示部と前記バリア部との間に挿入され、リタデーション値が40[nm]以下であるスペーサと
を有する電子機器。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−88775(P2013−88775A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232101(P2011−232101)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】