説明

表示装置、及び、表示方法

【課題】表示装置が記憶している画像や外部の情報供給装置から入力される一つの画像を利用して、表示中の情報に別の情報を追加した表示が可能な表示装置、及び、表示方法を提供する。
【解決手段】原画像に基づいて、表示用画像を生成する画像用プロセッサー11と、画像用プロセッサー11により生成された表示用画像を表示する照明光学系2、液晶パネル3、及び投射光学系4を備え、画像用プロセッサー11は、原画像に含まれる色のうち特定の色の視認性を低下させて前記表示用画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された画像信号に基づいて画像を表示する表示装置、及び、表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、教育現場において、スクリーンに画像を投射するプロジェクター等の表示装置を用いて講義内容や試験問題等の情報を表示して、受講者が受講する環境を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の表示装置は、表示装置が内蔵する記憶装置に記憶された画像、或いは、外部接続された情報供給装置から入力される画像を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−77739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、教育現場において表示装置を用いて講義や試験問題の出題を行う場合、講義内容に注意事項を書き加えたり、試験問題に問題の解答を書き加えたり、或いは、答案用紙に採点やアドバイスを書き加えたりすることがある。これらの、書き加えられる追加情報を、上記のように表示装置を用いて表示した講義内容や試験問題等に追加して表示するためには、表示する情報を、予めこれらの追加情報が書き加えられた講義内容や試験問題の情報に切り換えるといった方法を採る必要があり、非効率的であった。また、講義内容や試験問題が印刷された紙を読み取って表示する装置を利用し、追加情報を表示する場合には、実際に紙に追加情報を書き加えて表示を更新するといった方法を採る必要があり、この場合も非効率的であった。
本発明は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、表示装置が記憶している画像や外部の情報供給装置から入力される一つの画像を利用して、表示中の情報に別の情報を追加した表示が可能な表示装置、及び、表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、原画像に基づいて、表示用画像を生成する画像処理手段と、前記画像処理手段により生成された表示用画像を表示する表示手段と、を備え、前記画像処理手段は、前記原画像に含まれる色のうち特定の色の視認性を低下させて前記表示用画像を生成することを特徴とする。
本発明によれば、原画像のうち特定の色の視認性を低下させた表示用画像を生成して表示するので、表示対象の画像の一部を視認しにくい状態にして表示できる。このため、取得した画像の一部を視認しにくい状態で表示し、その後に取得した画像をそのまま表示すれば、表示中の画像に情報が追加されたように表示することができる。従って、一つの表示対象の画像を利用して、画像の表示中に情報を追加して表示する表示態様を実現できる。
【0006】
また、本発明は、上記表示装置において、前記画像処理手段は、前記原画像を構成する画素のうち、色データが特定の範囲に属する画素を他の色に変換する色変換手段を備えることを特徴とする。
本発明によれば、取得した表示対象の画像から特定の範囲に属する色を視認しにくくして表示するので、表示対象の画像は、特定の色を含むカラー画像データやグレースケール画像であればよく、一般的な画像を利用できる。これにより、通常の画像を利用して、表示中の画像に情報が追加されたような表示態様を実現できる。
【0007】
また、本発明は、上記表示装置において、
前記原画像は、赤色、緑色、及び青色の3色の色データを含んで構成され、前記原画像を構成する前記画素に対応する3色の色データは、色ごとに最大値及び最小値が規定された値で表されており、前記色変換手段は、前記3色の色データのいずれかである第1の色データが第1の閾値以上であり、かつ他の2の色データが第2の閾値以下である画素について、前記3色の色データが同一となるように変換することを特徴とする。
本発明によれば、色データが閾値により定められた範囲に属する画素について、効果的に視認性を低くすることができる。
【0008】
また、本発明は、上記表示装置において、前記画像処理手段は、前記原画像を構成する画素のうち、背景色および地の文字または画像の色とは異なる色の画素について、背景色と同色に変換する色変換手段を備えることを特徴とする。
本発明によれば、背景色、及び、地の文字又は画像の色とは異なる色の画素を背景色と同じ色にして視認できない状態すなわち非表示状態として、取得した画像を表示できる。このため、背景と地の文字又は画像を表示し、他の色の文字や画像等を非表示状態で表示できるので、一般的な画像を用いて、その一部のみを非表示とする表示態様を実現できる。
【0009】
また、本発明は、上記表示装置において、前記原画像は学習用の文字、記号あるいは画像を含む画像であり、前記画像処理手段は前記学習用の文字、記号あるいは画像を構成する色のいずれかを前記特定の色として視認性を低下させて、前記表示用画像を生成することを特徴とする。
本発明によれば、学習用の文字、記号あるいは画像を含む一般的な画像を用いて、模範解答やアドバイス等の一部の情報のみを非表示にした状態で表示することができ、この非表示にした情報を追加したような表示態様を実現できる。これにより、通常の画像として構成された学習用の教材を表示して講義等を行い、模範回答やアドバイス等の情報を後からわかりやすく提示して、効率良く講義等を行うことができる。
【0010】
また、本発明は、上記表示装置において、前記表示手段は、前記表示用画像、及び前記原画像を切り替えて表示することが可能であることを特徴とする。
本発明によれば、取得した画像を、特定の色の視認性を低下させた状態で表示し、この表示をもとの取得した画像に切り替え可能であるため、一般的な画像を用いて一部のみを非表示とし、その後に全てを表示する表示態様を実現できる。
【0011】
また、本発明は、上記表示装置において、前記表示手段は、光源と、前記光源が発した光を変調する変調手段と、前記変調手段により変調した光を投射面に投射する投射手段とを備えるプロジェクターであることを特徴とする。
本発明によれば、投射面に画像を投射するプロジェクターを用いて、複数の人に画像を表示して見せ、同じ画像を利用して、その一部のみを非表示とした状態と、その後に画像の全てを表示する状態とを切り換える表示態様を実現できる。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明は、原画像に含まれる色のうち特定の色の視認性を低下させた表示用画像を生成し、生成した前記表示用画像を表示することを特徴とする。
本発明の制御方法を実行することにより、表示装置は、原画像のうち特定の色の視認性を低下させた表示用画像を表示するので、表示対象の画像の一部を視認しにくい状態にして、画像を表示できる。このため、取得した画像の一部を視認しにくくして表示し、その後に取得した画像をそのまま表示すれば、表示中の画像に情報が追加されたように表示することができる。従って、一つの表示対象の画像を利用して、画像の表示中に情報を追加して表示する表示態様を実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一つの表示対象の画像を利用して、画像の表示中に情報を追加して表示する表示態様を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した実施形態に係るプロジェクターの構成を示すブロック図である。
【図2】プロジェクターの動作を示すフローチャートである。
【図3】投射画像の例を示す図であり、(A)は通常表示モードにおける投射画像の例であり、(B)は特定色非表示モードにおける投射画像の例である。
【図4】色変換部が実行するガンマ補正処理のゲインカーブの一例を示す図であり、(A)は赤色のゲイン補正に用いるゲインカーブを示し、(B)は黒色と白色のゲイン補正に用いるゲインカーブを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態に係るプロジェクター1の全体構成を示すブロック図である。プロジェクター1は、内蔵する記憶装置が記憶する画像ソースとしての画像データ(図示略)、または、パーソナルコンピューター、各種画像プレーヤー、書画カメラ等の外部の画像供給装置(図示略)から入力される画像データを取得し、この取得した画像データを表示する。プロジェクター1は、動画像を表示することも、静止画像を表示し続けることも可能である。このプロジェクター1は、例えば、教育現場において学習用の教材をスクリーンSC(投射面)に表示する用途で使用される。
【0016】
プロジェクター1は、大きく分けて光学的な画像の形成を行う光学系と画像信号を電気的に処理する画像処理系とからなる。表示手段として機能する光学系は、照明光学系2(光源)、液晶パネル(変調手段)3、投射光学系4(投射手段)から構成されている。照明光学系2は、キセノンランプ、超高圧水銀ランプ、LED(Light Emitting Diode)等からなる光源を備えている。照明光学系2は、光源が発した光を液晶パネル3に導くリフレクター及び補助リフレクターを備えていてもよく、投射光の光学特性を高めるためのレンズ群(図示略)、偏光板、或いは光源が発した光を液晶パネル3に至る経路上で減光させる調光素子等を備えたものであってもよい。
液晶パネル3は、複数の画素をマトリクス状に配置した透過型液晶パネルで構成され、後述する画像処理系からの信号を受けて、各画素の光透過率を変化させることによりパネル面に画像を形成し、照明光学系2からの光を変調する。
本実施形態の液晶パネル3は、カラーの投影を行うため、RGBの三原色に対応した3枚の液晶パネルを備えて構成される。照明光学系2からの光はRGBの3色の色光に分離され、各色の光は対応する各液晶パネルに入射する。各液晶パネルを通過して変調された色光はクロスダイクロイックプリズム等の合成光学系によって合成され、投射光学系4に射出される。
【0017】
投射光学系4には、投射する画像の拡大・縮小および焦点の調整を行うズームレンズ5、ズームの度合いを調整するズーム調整用モーター6、フォーカスの調整を行うフォーカス調整用モーター7が備えられている。投射光学系4は、液晶パネル3で変調された光を入射し、ズームレンズ5を用いて、スクリーンSC上に投射画像を結像する。ズームレンズ5は、ズーム調整用モーター6とフォーカス調整用モーター7とによって、レンズの位置などが調整され、スクリーンSC上の投射画像の拡大・縮小を行うズーム調整や、スクリーンSC上に投射画像を適正に結像させるフォーカス調整を行う。
【0018】
画像処理系は、プロジェクター1全体を統合的に制御するCPU10と画像用プロセッサー(画像処理手段)11とを中心に構成され、画像取得部(取得手段)12、変調手段駆動部13、レンズ駆動部14、RAM15、不揮発性メモリー16、フレームメモリー17、リモコン制御部18、リモコン19、操作部20等を備える。これらの画像処理系を構成する各要素は、バス22を介して互いに接続されている。
【0019】
画像取得部12は、上述した外部の画像供給装置からケーブル25を介して表示対象の画像の画像信号を取得し、取得したアナログ入力信号をA/D変換部23の機能によりデジタル信号に変換する。画像取得部12は、変換後のデジタル信号を画像用プロセッサー11に出力する。画像用プロセッサー11は、画像取得部12から入力されたデジタル信号に対して、明度、コントラスト、色の濃さ、色合い、投射画像の形状等の画像の表示状態を調整してフレーム毎の画像データを生成し、生成した画像データをフレームメモリー17に展開する。フレームメモリー17に展開される画像データには、各フレームの画素毎の色データが含まれる。すなわち、フレームメモリー17に展開される画像データはビットマップデータであり、例えば、8ビットのグレースケールや24ビットカラーのビットマップである。24ビットカラービットマップデータでは、画素ごとにR、G、Bの各色の階調が各8ビット(256階調)のデータで表現される。
【0020】
画像用プロセッサー11は、フレームメモリー17から画像データを読み出し、画像取得部12を介して取得した入力画像から表示用画像を生成する画像処理を行って、変調手段駆動部13に対して処理後の画像信号を出力する。変調手段駆動部13は、画像用プロセッサー11から入力される画像信号に基づいて、液晶パネル3を駆動する。これにより、画像取得部12によって取得された画像信号に基づいて画像用プロセッサー11で処理された表示用画像が、液晶パネル3に形成され、この画像が投射光学系4を介して、スクリーンSC上に投射画像として形成される。
【0021】
画像用プロセッサー11は、フレームメモリー17から読み出した画像データに対する表示用画像を生成するための画像処理として、画像データの色変換を実行する色変換部21(色変換手段)を備えている。色変換部21は、リモコン19または操作部20におけるユーザーの操作に応じて、フレームメモリー17に展開された画像データを構成する画素の色データを、他の色データに変換する処理を行い、この処理後の画像データが表示用画像データとなる。
プロジェクター1は、画像取得部12が取得した取得した画像の特定の色の視認性を低下させて表示する特定色非表示モードと、画像取得部12が取得した原画像をそのままの色で表示する通常表示モードの2つの表示モードを切り替えて実行可能に構成されている。特定色非表示モードと通常表示モードとの切り換えは、リモコン19または操作部20におけるユーザーの操作によって行える。
色変換部21が処理する対象の色および変換後の色は任意に指定可能であるが、特定色非表示モードでは、色変換部21は、画像取得部12が取得した原画像データに含まれる特定の色の視認性を低下させた表示用画像を生成する画像処理を行う。
【0022】
レンズ駆動部14は、CPU10の制御の下、フォーカス調整用モーター7を駆動してフォーカス調整を行う。フォーカス調整を行うためには、ズームレンズ5のズーム比が必要である。このズーム比は、例えば、ズーム調整用モーター6によるズームレンズ5の駆動量から算出できる。
RAM15は、CPU10が実行するプログラムやデータを一時的に格納するワークエリアを形成する。なお、画像用プロセッサー11は、自身が行う画像の表示状態の調整処理など、各処理の実行の際に必要となるワークエリアを、内蔵RAMとして備えている。不揮発性メモリー16は、上述した各処理部を実現するためにCPU10が実行するプログラムや、当該プログラムに係るデータ等を記憶する。
【0023】
リモコン制御部18は、プロジェクター1の外部のリモコン19から送信される無線信号を受信する。リモコン19は、ユーザーによって操作される操作子(図示略)を備え、操作子に対する操作に応じた操作信号を赤外線信号または所定周波数の電波を用いた無線信号として送信する。リモコン制御部18は、リモコン19が送信する無線信号を受信する受光部(図示略)或いは受信回路(図示略)を備え、リモコン19から送信された信号を受信し、解析して、ユーザーによる操作の内容を示す信号を生成してCPU10に出力する。
操作部20は操作子(図示略)を備え、操作子に対する操作に応じた操作信号をCPU10に出力する。この操作子としては、電源ON/OFFを指示するスイッチ、上述した特定色非表示モードと通常表示モードとの切り替えを指示するスイッチ等がある。
【0024】
プロジェクター1は、図示は省略したが、この他に、音声入力部および音声出力部(スピーカー)、LANやUSBの接続ポート、照明光学系2の温度を一定にするための冷却装置、温度監視や傾き検出のための各種センサー等を備えている。
【0025】
続いて、プロジェクター1の動作について説明する。
図2は、プロジェクター1の動作を示すフローチャートである。
プロジェクター1は、電源が投入されると(ステップS1)、システムの初期化を行い(ステップS2)、画像取得部12を介して外部の画像供給装置から入力される画像を取得する(ステップS3)。プロジェクター1は、画像用プロセッサー11を制御して、画像取得部12が取得した原画像データをフレームメモリー17に展開する(ステップS4)。
ここで、プロジェクター1は、現在選択されている表示モードが、特定色非表示モードか通常表示モードかを判別し(ステップS5)、特定色非表示モードである場合には(ステップS4:Yes)、画像用プロセッサー11の機能により、フレームメモリー17の画像データに、特定の範囲の色の視認性を低下させる画像処理を行って、表示用画像の画像データを生成する(ステップS6)。また、表示モードが通常表示モードである場合(ステップS5:No)、プロジェクター1は、画像用プロセッサー11の機能により、フレームメモリー17に展開された画像データを表示用画像の画像データとする(ステップS7)。なお、ステップS6、S7においては、必要に応じて、画像取得部12が取得した原画像の画像データを液晶パネル3の表示解像度に合わせて解像度変換する処理や、キーストーン補正処理、リモコン19や操作部20の操作により設定されたカラーモードに対応する色変換処理、スクリーンSCの環境光に合わせた輝度補正処理、スクリーンSCに投射する画像サイズを拡大/縮小するズーム処理等が実行される。
プロジェクター1は、ステップS6、S7で生成された表示用画像の画像データをフレームメモリー17から読み出して、変調手段駆動部13の機能により、表示用画像をスクリーンSC上に表示する(ステップS8)。
【0026】
ここで、プロジェクター1は、リモコン19または操作部20の操作により、表示モードの切換が指示されたか否かを判別し(ステップS9)、表示モードの切換が指示された場合には(ステップS9;Yes)、指示通りに表示モードを切り換えた後でステップS5に戻り、切り換え後の表示モードに対応する表示に更新する。また、表示モードの切換が指示されていない場合には(ステップS9;No)、プロジェクター1の電源がオフされたか否かを判別し(ステップS10)、電源がオフにされた場合には動作を終了する。
なお、ステップS9で、リモコン19または操作部20の操作による表示モードの切換指示を検出する動作は、実際には割り込み処理として実行される。すなわち、ステップS3〜S8の動作中であっても、表示モードの切換を指示する操作が行われた場合には、プロジェクター1は、指示に従って表示モードを切り換える。
【0027】
ここで、色変換部21による処理について詳細に説明する。なお、以下の説明では、フレームメモリー17に24ビットカラーの画像データが展開され、この画像データを構成する各画素がR、G、Bの各色256階調(各8ビット)の色データを有する例について説明する。この場合、各色の色データの値は最小値が0、最大値が255である。以下の説明では各色の色データを16進数(00〜FF)で表現する。
色変換部21は、画像取得部12が取得した原画像、すなわちフレームメモリー17に展開された画像データを構成する画素のうち、色データが特定の範囲に属する画素を他の色に変換する処理を行う。処理対象の色データの特定の範囲とは、画素の色データを構成するR、G、B各色の値の範囲により定義され、例えば24ビットカラーの画像データについて、赤い色の画素を対象とする場合には、特定の範囲は、R=E0〜FF、G=00〜20、B=00〜20と定められる。言い換えれば、R(第1の色)の色データが閾値(第1の閾値)E0以上であり、かつ、G及びB(他の2色)の色データが閾値(第2の閾値)20以下であることが条件となる。RGB各色のデータ全てが特定の範囲に属する画素、すなわち、上記の例ではR=E0〜FF、かつ、G=00〜20、かつ、B=00〜20である画素が、変換処理の対象となる。変換後の色も予め設定され、例えば、白色(R、G、B=FF、FF、FF)に設定される。
また、青い色の画素を対象とする場合には、対象のBの色データが所定の閾値以上であり、R及びGの色データが閾値以下の画素を検出し、検出した画素の色データを白(R、G、B=FF、FF、FF)としてもよい。なお、第1の色以外の2色(上記の例ではG及びB)の閾値を個別に設けてもよい。
さらに、変換後の色を、画像取得部12が取得した原画像の背景色とするよう設定することも可能である。この場合、色変換部21は、フレームメモリー17に展開された画像データから、最も面積の大きい(画素数の多い)色を検出する方法や、文字を検出して文字以外の部分で最も面積の大きい色を検出する方法等により、背景色を特定する。
【0028】
上記の特定の範囲および変換後の色の設定値は、デフォルト値が不揮発性メモリー16に記憶されており、この値がリモコン19または操作部20の操作で指定された場合は、その都度、不揮発性メモリー16に記憶される。色変換部21は、図2のステップS6で、フレームメモリー17の画素ごとに、色データが特定の範囲に該当するか否かを判別し、該当する画素の色データを変換後の色として指定されたデータに置き換える処理を行い、全ての画素に対する処理を完了すると、処理後の画像データを表示用画像とする。
【0029】
また、色変換部21は、フレームメモリー17に展開された画像データを構成する画素のうち、背景色および地の文字または画像の色とは異なる色の画素を検出して、この画素の色を背景色と同色に変換する処理を行うこともできる。この場合、色変換部21は、フレームメモリー17に展開された画像を解析し、背景と、文字及び記号と、画像とを検出する。文字及び記号は公知の文字認識技術を適用すれば容易に実現可能であり、背景の検出は上述したとおりである。また、画像の検出は、フレームメモリー17に展開された画像に含まれる矩形または円形で背景とは異なる色で構成された領域を画像として検出する。さらに、色変換部21は、検出した文字及び画像から地の文字と地の画像を特定する。地の文字とは、対象の画像に複数の色の文字が含まれる場合に、最も字数が多い色の文字として検出できる。地の画像とは、例えば、模様等の背景の一部を構成する画像である。具体的な例を挙げると、画像の背景が花柄となっている場合には、花の画像が画像全体に散在しているし、チェック柄の背景があれば複数の直線の画像が画像全体に存在する。このような地の画像については、対象の画像に複数の画像が含まれる場合に、各画像を構成する色を特定し、同じ色を含む画像をグループとしてまとめ、最も数が多いグループを地の画像とする方法がある。画像は単色とは限らないが、その場合は画像に含まれる複数の色について統計的処理を施し、当該画像の代表色を定めれば処理可能である。このように検出した地の文字、地の画像の色と、背景色とをもとに、色変換部21は、地の文字でも画像でもない文字、記号あるいは画像を検出し、この検出した文字、記号あるいは画像の色を、特定の色に変換する。変換後の特定の色は、背景色または地の画像の色とすればよいし、予め設定された色であってもよい。この処理において、地の文字、地の画像及び背景の検出に用いる各種の設定値は、デフォルト値が不揮発性メモリー16に記憶されており、この値がリモコン19または操作部20の操作で指定された場合は、その都度不揮発性メモリー16に記憶される。
【0030】
図3は、プロジェクター1によって表示される画像の一例を示した図であり、(A)は通常表示モードにおける投射画像を示し、(B)は特定色非表示モードにおける投射画像を示す。
図3に示す例では、プロジェクター1により、学習用の教材の一例として、問題文と回答欄が配置された画像を表示する。この画像の回答欄には模範解答が書き込まれており、問題文と回答欄は黒色(R、G、B=0、0、0)、模範解答は赤色(R、G、B=FF、0、0)である。また、背景色は白(R、G、B=FF、FF、FF)である。
図3(A)に示す通常表示モードの投射画像200では、黒色の問題文201の全文と、全ての回答欄(図中の□)202が表示されている。この問題文201は2つの問題を含んでおり、1つ目の問題(図3(A)の「第一問」)は、問題に対して文章で回答する形式である。また2つ目の問題(図3(A)の「第二問」)は、3つの選択肢からいずれか1つを選択して、対応する回答欄202にチェックマークを記入して回答する形式である。このため、図3(A)の投射画像200には、1つの回答欄202に模範解答203(図中に「レ」で示すチェックマーク)が表示されている。
【0031】
ここで、表示モードが特定色非表示モードに切り替わると、処理対象である赤(R、G、B=E0〜FF、00〜20、00〜20)の画素の色データが、白(R、G、B=FF、FF、FF)に変換され、変換後の画像が表示用画像として出力される。このため、図3(B)に示すように、プロジェクター1が投射する画像は投射画像210に切り替わる。投射画像210では、赤色の模範解答203(図3(A))が背景色の白と同一色に変換されるため、全ての回答欄202は空欄となる。また、地の文字である問題文201は黒色で表示されている。
講義においては、例えば、投射画像210を用いて説明、発問或いは回答を行い、その後に表示モードを通常表示モードに切り換えて、図3(A)の投射画像200を投射させて模範解答203を学習者に見せ、追加の説明を行うことができる。
【0032】
また、色変換部21は、ガンマ補正に用いるガンマカーブを変更することにより、特定の範囲の色を、視認性が低下するように変換する処理を行ってもよい。色変換部21は、通常表示モードにおいてフレームメモリー17に展開された画像データにガンマ補正処理を実行し、処理後の画像を液晶パネル3に表示させることが可能である。このガンマ補正処理はプロジェクター1の特性に合わせて投射画像の画質を高めるために行われる処理であるが、特定色非表示モードでもガンマ補正処理を実行し、かつ、特定色非表示モードでガンマ補正処理に用いるパラメーターを通常表示モードとは異なるパラメーターにすることで、ガンマ補正処理を実行するだけで特定の色の視認性を低下させることができる。
【0033】
図4は、色変換部21が実行するガンマ補正処理のガンマカーブ(ゲインカーブ)の一例を示す図であり、(A)は赤色のゲイン補正に用いるゲインカーブを示し、(B)は黒色と白色のゲイン補正に用いるゲインカーブを示す。この例では、黒は地の文字の色であり、白は背景色である。
図4(A)に示す赤色のゲインカーブは、色データの赤色成分(R)の値がゼロ及びゼロの近傍である場合を除き、入力値に対して出力を最大値(FF)にするよう補正するものである。この図4(A)のゲインカーブに示すガンマ補正を行うと、赤色は白色に変換され、赤色の視認性は極端に低下し、実質的に赤い文字等が隠される。
これに対し、図4(B)に示すゲインカーブは、入力の色を大きく白側と黒側に分ける。図4(B)中に符号Aで示す入力値が白側と黒側の境界である。このゲインカーブは、境界よりも白側の入力に対して全て最大値(FF)を出力し、黒側の色の入力に対しては全て最小値(00)を出力する。このため、境界Aを境として、白に近い色は全て白色になり、黒に近い色は全て黒色に変換される。
従って、赤色については図4(A)のゲインカーブにより白に変換するとともに、白及び黒については図4(B)に示すゲインカーブによって白と黒を強調すると、フレームメモリー17の画像の赤色の視認性が大幅に低下する。これにより、ゲイン補正後の画像データは、赤色を視認できないようにした表示用画像となる。この処理は、一般的な画像補整回路が備えるゲイン補正機能を用い、特定色非表示モードにおいてのみ、補正処理のパラメーターを、例えば図4(A)、(B)に示すようなパラメーターに切り換えることで、容易に特定色非表示モードの機能を実現できる。
【0034】
また、さらに別の実施例としては、特定色非表示モードにおいて、画像用プロセッサー11が色変換部21の機能により、フレームメモリー17に展開された画像データ全体が赤色で飽和するように、全ての画素の色データのうち赤色のデータ(R)の値を最大値(例えば、FF)に変換する。この場合、画像取得部12が取得した原画像中に赤色で表示されていた文字、記号あるいは画像は、周囲の画素も赤色が飽和することで、視認性が極端に低下する。この実施例ではフレームメモリー17に展開されたビットマップデータの全ての画素について赤色のデータを特定の値に変換するだけでよいので、色変換部21の処理負荷が軽く、容易に特定色非表示モードの機能を実現できる。
【0035】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態に係るプロジェクター1によれば、表示対象の画像を取得する画像取得部12と、画像取得部12により取得した画像に基づいて、表示用画像を生成する画像用プロセッサー11と、画像用プロセッサー11により生成された表示用画像を表示する表示手段としての照明光学系2、液晶パネル3、及び投射光学系4を備え、画像用プロセッサー11は、画像取得部12により取得された画像に含まれる色のうち特定の色の視認性を低下させた表示用画像を生成するので、取得された表示対象の画像の一部を視認しにくい状態にして表示できる。ここで、画像用プロセッサー11は、外部情報供給装置から入力される画像信号に基づいて画像を表示する場合等で、出力元のデータが編集できない場合であっても、画像の編集処理を実行することなく、一部の視認性を低下させることができる。このため、取得した画像の一部を視認しにくい状態で表示し、その後に取得した画像をそのまま表示すれば、表示中の画像に情報が追加されたように表示することができる。従って、一つの表示対象の画像を利用して、画像の表示中に情報を追加して表示する表示態様を実現できる。
【0036】
プロジェクター1は、画像用プロセッサー11は、画像取得部12により取得された画像を構成する画素のうち、色データが特定の範囲に属する画素を他の色に変換する色変換部21を備えるので、プロジェクター1は、フレームメモリーに展開した画像データの中の、色データが特定の範囲に属する画素を視認しにくくして表示するので、表示対象の画像は、特定の色を含むカラー画像データやグレースケール画像であればよく、一般的な画像を利用できる。これにより、通常の画像を利用して、表示中の画像に情報が追加されたような表示態様を実現できる。また、非表示にしたい文字または画像を位置やデータの属性で特定する必要がないため、非表示にしたい文字または画像を含む画像を作成するにあたっての自由度が向上する。
また、プロジェクター1は、画像用プロセッサー11は、画像取得部12により取得された画像を構成する画素のうち、背景色および地の文字または画像の色とは異なる色の画素について、背景色と同色に変換する色変換部21を備えるので、地の文字又は画像と異なる色で表示される文字又は画像を背景色と同色にして隠して表示することができる。これにより、背景と地の文字又は画像を表示し、他の色の文字や画像等を非表示状態で表示できるので、一般的な画像を用いて、その一部のみを非表示とする表示態様を実現できる。このため、画像中で非表示にしたい文字または画像を背景色と、地の文字又は画像の色とは異なる色にしておくだけで、その文字または画像を非表示にすることができ、フレーム中で非表示にしたい文字または画像を位置やデータの属性で特定する必要がないため、非表示にしたい文字または画像を含む画像を作成するにあたっての自由度が向上する。
【0037】
そして、プロジェクター1は、画像取得部12により取得される画像は、学習用の文字、記号あるいは画像を含む画像であり、画像用プロセッサー11は学習用の文字、記号あるいは画像を構成する色のいずれかを特定の色として視認性を低下させて、表示用画像を生成する。つまり、プロジェクター1は、教育現場において用いられる表示装置であり、試験問題を出題する場合等に使用されることがある。試験問題などは、通常、白色の背景色に、地の文字の色を黒色にして問題が作成され、問題には、模範解答やアドバイス等の情報が赤色の文字または画像で書き加えられる。そのため、出題時には赤色で書き加えられた文字または画像の視認性を低下させた表示用画像を生成して表示する特定色非表示モードと用いて、回答後には赤色で書き加えられた文字または画像を表示する通常表示モードを用いることができ、その場で回答やアドバイスを書き加える、或いは、出題用の表示画面とは別に模範解答を記した表示画面を用意する手間を省いて、効率良く授業を行うことが可能となる。この構成では、学習用の文字、記号あるいは画像を含む通常の画像として構成された学習用の教材を表示して講義等を行い、模範回答やアドバイス等の情報を後からわかりやすく提示して、効率良く講義等を行うことができる。
【0038】
また、プロジェクター1は、画像用プロセッサー11により生成される表示用画像が、特定の色の視認性を低下させた表示用画像或いは通常の画像に切り替え可能である。これにより、教育現場において、講義内容情報の重要部分が赤色で記された表示用画像を用いて講義を行い、この赤色の部分の視認性を低下させた表示用画像に切り替えて穴埋めテストを行い、回答後に再び赤色の部分を表示させる通常の画像に切り替えて答え合わせを行うといったこともでき、効率よく授業を行うことが可能となる。
そして、照明光学系2と、照明光学系2が発した光を変調する液晶パネル3と、液晶パネル3により変調した光をスクリーンSCに投射する投射光学系4とを備えるプロジェクター1に本発明を適用したことにより、複数の人にスクリーンSCの画像を表示して見せ、同じ画像を利用して、その一部のみを非表示とした状態と、その後に画像の全てを表示する状態とを切り換える表示態様を実現できる。
【0039】
なお、上述した実施形態は本発明を限定するものではなく、上記実施形態とは異なる態様として本発明を適用することも可能である。例えば、上記実施形態では、赤色で書き込まれた文字または画像の視認性を低下させる場合を例に説明したが、プロジェクター1は、赤色以外にも青色等他の色で書き込まれた文字または画像の視認性を低下させるように設定可能な構成であっても良い。さらに、本発明の表示装置は、スクリーンSCに画像を投射するプロジェクターに限定されず、液晶表示パネルに画像/画像を表示する液晶モニターまたは液晶テレビ、或いは、PDP(プラズマディスプレイパネル)に画像/画像を表示するモニター装置またはテレビ受像機、OLED(Organic light-emitting diode)、OEL(Organic Electro-Luminescence)等と呼ばれる有機EL表示パネルに画像/画像を表示するモニター装置またはテレビ受像機等の自発光型の表示装置など、各種の表示装置も本発明の表示装置に含まれ、入力された画像信号に基づく画像をカラー表示することができる携帯型の表示装置も含まれる。この場合、液晶表示パネル、プラズマディスプレイパネル、有機EL表示パネルが変調手段に相当する。
【0040】
例えば、上記実施形態では、光源が発した光を変調する変調手段として、RGBの各色に対応した3枚の透過型または反射型の液晶パネル3を用いた構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、1枚の液晶パネルとカラーホイールを組み合わせた方式、3枚のデジタルミラーデバイス(DMD)を用いた方式、1枚のデジタルミラーデバイスとカラーホイールを組み合わせた方式等により構成してもよい。ここで、変調部として1枚のみの液晶パネルまたはDMDを用いる場合には、クロスダイクロイックプリズム等の合成光学系に相当する部材は不要である。また、液晶パネル及びDMD以外にも、光源が発した光を変調可能な構成であれば問題なく採用できる。
【0041】
また、上記実施形態において不揮発性メモリー16が記憶していた制御プログラムを、プロジェクター1が通信ネットワークを介して接続された他の装置からダウンロードして実行しても良いし、可搬型の記録媒体に制御プログラムを記録して、この記録媒体から上記各プログラムを読み取って実行する構成としても良い。また、図2に示したプロジェクター1の各機能部は機能的構成を示すものであって、具体的な実装形態は特に制限されない。つまり、必ずしも各機能部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサーがプログラムを実行することで複数の機能部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上記実施形態においてソフトウェアで実現されている機能の一部をハードウェアで実現してもよく、あるいは、ハードウェアで実現されている機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。その他、プロジェクター1の具体的な細部構成について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…プロジェクター(表示装置)、2…照明光学系(光源)、3…液晶パネル(変調手段)、4…投射光学系(投射手段)、10…CPU、11…画像用プロセッサー(画像処理手段)、12…画像取得部(取得手段)、16…不揮発性メモリー、17…フレームメモリー、21…色変換部(色変換手段)、SC…スクリーン(投射面)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像に基づいて、表示用画像を生成する画像処理手段と、
前記画像処理手段により生成された表示用画像を表示する表示手段と、を備え、
前記画像処理手段は、前記原画像に含まれる色のうち特定の色の視認性を低下させて前記表示用画像を生成すること
を特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、前記原画像を構成する画素のうち、色データが特定の範囲に属する画素を他の色に変換する色変換手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記原画像は、赤色、緑色、及び青色の3色の色データを含んで構成され、
前記原画像を構成する前記画素に対応する3色の色データは、色ごとに最大値及び最小値が規定された値で表されており、
前記色変換手段は、前記3色の色データのいずれかである第1の色データが第1の閾値以上であり、かつ他の2の色データが第2の閾値以下である画素について、前記3色の色データが同一となるように変換することを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記画像処理手段は、前記原画像を構成する画素のうち、背景色および地の文字または画像の色とは異なる色の画素について、背景色と同色に変換する色変換手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記原画像は学習用の文字、記号あるいは画像を含む画像であり、
前記画像処理手段は前記学習用の文字、記号あるいは画像を構成する色のいずれかを前記特定の色として視認性を低下させて、前記表示用画像を生成することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示手段は、前記表示用画像、及び前記原画像を切り替えて表示することが可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の表示装置。
【請求項7】
前記表示手段は、光源と、前記光源が発した光を変調する変調手段と、前記変調手段により変調した光を投射面に投射する投射手段とを備えるプロジェクターであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の表示装置。
【請求項8】
原画像に含まれる色のうち特定の色の視認性を低下させた表示用画像を生成し、
生成した前記表示用画像を表示することを特徴とする表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−198459(P2012−198459A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64018(P2011−64018)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】