説明

表示装置、表示装置の製造方法および電子機器

【課題】複数色を用いたカラー表示に際し、良好な色純度を確保することが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置は、駆動基板10上に、画素10R,10G,10Bを有し、各画素は、下部電極11と上部電極16との間に、有機積層膜12R,12G,12Bを有する。有機積層膜12R,12G,12Bは、2以上の有機発光層と、それ以外の他の有機層とを含み、他の有機層の層構造が画素毎に異なっている。画素10G,10Bには、緑用電子ブロック層15G,青用電子ブロック層15Bを配置される。成膜プロセスにおいて、ある色の発光材料が所望の画素以外の画素に付着してしまった場合にも、それによる色光の混色が抑制される。緑用電子ブロック層15G,青用電子ブロック層15Bを用いることで、各色の有機発光材料の成膜順序や成膜箇所を適切に設定することができ、各画素から所望の色光を取り出し易くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー表示を行う有機EL素子を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料のエレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:以下、ELと略称する
)を利用した有機EL表示装置では、一対の電極間に正孔輸送層や発光層を含む有機層を有する有機EL素子が表示画素として用いられている。有機EL素子は、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。
【0003】
このような有機EL素子は、応答速度が1マイクロ秒以下であることから、有機EL表示装置において、単純マトリックス方式によるデューティ駆動が可能である。但し、画素数の増加に伴って高デューティ化が進んだ場合、十分な輝度を確保するためには、有機EL素子に瞬間的に大電流を供給する必要があるため、この単純マトリックス方式では、素子にダメージが生じ易くなる。
【0004】
一方、アクティブマトリックス駆動方式では、サブピクセル毎に、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)と共に保持容量を形成することで、信号電圧を保持することができる。それ故、1フレームにおける所望の期間中、常に信号電圧に応じた駆動電流を有機EL素子に供給することができる。従って、アクティブマトリックス駆動方式では、単純マトリックス方式のように瞬間的に大電流を有機EL素子に供給する必要がなく、素子に対するダメージを少なくすることができる。尚、1画素は、例えば赤(R),緑(G),青(B)の3種のサブピクセルから構成されており、これによりフルカラーの映像表示を実現できる。
【0005】
ところで、このようなフルカラーの有機EL表示装置を製造するためには、サブピクセル毎に各色の発光層を塗り分ける必要があり、様々な手法が試みられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、基板上に突部をパターン配置し、斜方から真空蒸着(以下、斜方蒸着という)を行うことにより、各色発光層の塗り分けを行っている。具体的には、突部を画素間の選択的な領域に配置して、成膜する有機材料毎に適宜角度を変えて斜方蒸着を行うことにより、突部を塗り分け用のマスクとして利用している。この際、まず、赤色サブピクセルに赤色発光層、緑色サブピクセルに緑色発光層をそれぞれ斜方蒸着により選択的に形成した後、青色発光層については、全サブピクセルにわたって成膜する。尚、この他にも、金属製の蒸着マスクを一時的にアライメントして、発光層をパターン形成する方法や、印刷やインクジェット方式によるものもある。あるいは、白色発光の有機EL素子とカラーフィルタとを組み合わせて用いる手法等もあり、フルカラーの映像表示を実現するために様々な手法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3369615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の手法では、突部をマスクとして赤色発光材料を蒸着する際に、その赤色発光材料を、他のサブピクセル、例えば青色サブピクセルに全く付着させないようにすることは困難である。換言すると、真空中での分子の運動方向の変化や蒸着装置の壁面における反射等により、実際には、青色サブピクセルに付着する赤色

発光分子が存在する。ここで、赤色の発光のエネルギーは青色に比べて低いため、赤色発光分子が青色サブピクセルに付着すると、その付着量が微量であっても青色発光分子の励起エネルギーが速やかにエネルギー移動し、青色サブピクセルから赤色の発光が生じてしまう。このような発光光の混色は、色純度を低下させ、表示品位の低下を招く。また、近年では、表示装置の応用範囲が多岐にわたり、画素の微細化に対する要求も高まっており、上記のような色光の混色を抑制して、色純度の低下を防ぐことが望まれている。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、カラー表示に際し、良好な色純度を確保することが可能な表示装置および表示装置の製造方法、ならびに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の表示装置は、基板上に、互いに異なる色光を発する複数種類の画素を有し、各画素は、1または2以上の有機発光層と、その有機発光層以外の他の有機層とを含み、他の有機層の層構造が画素の種類毎に異なる有機積層膜と、有機積層膜を挟み込む第1電極および第2電極とを備えたものである。
【0010】
本発明の表示装置の製造方法は、基板上に互いに異なる色光を発する複数種類の画素を形成する際に、各画素領域において、基板上に第1電極を形成する工程と、1または2以上の有機発光層と、その有機発光層以外の他の有機層とを含み、有機層の層構造が画素の種類毎に異なる有機積層膜を形成する工程と、有機積層膜を形成した後、第2電極を形成する工程とを含むものである。
【0011】
本発明の表示装置の製造方法では、第1電極と第2電極との間に有機積層膜を設け、その有機積層膜が、1または2以上の有機発光層とそれ以外の他の有機層とを含み、他の有機層における層構造(即ち、他の有機層の層数や種類、厚み等)が、画素の種類毎に異なるようにする。例えば、選択的な画素に対し、有機材料よりなるキャリアブロック層を配置するようにする。これにより、成膜プロセスにおいて、ある色の有機発光材料が所望の画素以外の画素に付着してしまった場合であっても、その付着による色光の混色が抑制される。換言すると、そのようなキャリアブロック層を用いることで、各色の有機発光材料の成膜順序や成膜箇所を適切に設定することができ、各画素から所望の色光を取り出し易くなる。
【0012】
本発明の表示装置では、第1電極および第2電極間に設けられた有機積層膜が、1または2以上の有機発光層とそれ以外の他の有機層とを含み、他の有機層における層構造(即ち、他の有機層の層数や種類、厚み等)が、画素の種類毎に異なっている。例えば、選択的な画素において、有機材料よりなるキャリアブロック層が配置されている。これにより、各画素に自己の色光とは異なる色の有機発光材料が付着している場合であっても、その付着による色光の混色が抑制される。
【0013】
本発明の電子機器は、上記本発明の表示装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表示装置および表示装置の製造方法によれば、第1電極と第2電極との間に設けられる有機積層膜が、1または2以上の有機発光層とそれ以外の他の有機層とを含み、他の有機層における層構造が、画素の種類毎に異なっている。例えば、選択的な画素において、有機材料よりなるキャリアブロック層を配置する。これにより、各画素において、色光の混色を抑制することができる。よって、複数色を用いたカラー表示に際し、良好な色純度を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の断面構造を表すものである。
【図2】図1に示したR,G,B3種の有機EL素子における各有機積層膜の概略構成を表す断面図である。
【図3】図1に示した表示装置の製造方法を工程順に表す図である。
【図4】図3に続く工程を表す図である。
【図5】図4に続く工程を表す図である。
【図6】図5に続く工程を表す図である。
【図7】図6に続く工程を表す図である。
【図8】比較例に係る表示装置の構成および製造方法について説明するための断面図である。
【図9】比較例に係る表示装置における各色光の発光強度を表す特性図である。
【図10】図1に示した表示装置における各色光の発光強度を表す特性図である。
【図11】変形例1に係る表示装置の断面構造を表すものである。
【図12】図11に示したR,G,B3種の有機EL素子における各有機積層膜の概略構成を表す断面図である。
【図13】図11に示した表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図14】図13に続く工程を表す図である。
【図15】図14に続く工程を表す図である。
【図16】図11に示した表示装置における各色光の発光強度を表す特性図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の断面構造を表すものである。
【図18】図17に示したR,G,B3種の有機EL素子における各有機積層膜の概略構成を表す断面図である。
【図19】図17に示した表示装置の製造方法を工程順に表す図である。
【図20】図19に続く工程を表す図である。
【図21】図20に続く工程を表す図である。
【図22】図21に続く工程を表す図である。
【図23】図22に続く工程を表す図である。
【図24】図17に示した表示装置における各色光の発光強度を表す特性図である。
【図25】変形例2に係る表示装置の断面構造を表すものである。
【図26】図25に示したR,G,B3種の有機EL素子における各有機積層膜の概略構成を表す断面図である。
【図27】図25に示した表示装置における各色光の発光強度を表す特性図である。
【図28】本発明の第3の実施の形態に係る表示装置の断面構造を表すものである。
【図29】図28に示したR,G,B3種の有機EL素子における各有機積層膜の概略構成を表す断面図である。
【図30】図28に示した表示装置の製造方法を工程順に表す図である。
【図31】図30に続く工程を表す図である。
【図32】図31に続く工程を表す図である。
【図33】本発明の第4の実施の形態に係る表示装置(斜方蒸着前の基板構造)の構造を表す断面図である。
【図34】比較例に係る基板構造を表す断面図である。
【図35】図33に示した基板構造における効果を説明するための図である。
【図36】変形例3に係る基板構造を表す断面図である。
【図37】図36に示した基板構造における効果を説明するための図である。
【図38】変形例4に係る基板構造を表す断面図である。
【図39】その他の変形例に係る基板構造を表す断面図である。
【図40】各実施の形態に係る表示装置の周辺回路を含む全体構成を表す図である。
【図41】図40に示した画素の回路構成を表す図である。
【図42】図40に示した表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図43】適用例1の外観を表す斜視図である。
【図44】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図45】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図46】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図47】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。尚、説明は以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態(緑用電子ブロック層,青用電子ブロック層を用いた例)
2.変形例1(1.において緑色発光層をR,G,B共通層とした例)
3.第2の実施の形態(緑用膜厚調整層,青用膜厚調整層を用いた例)
4.変形例2(3.において緑色発光層をR,G,B共通層とした例)
5.第3の実施の形態(赤色発光層,緑色発光層を薄膜化した例)
6.第4の実施の形態(斜め蒸着時におけるケラレ抑制構造を付加した例)
7.変形例3(6.においてリーク防止絶縁膜を設けた例)
8.変形例4(6.ケラレ抑制構造の他の例)
9.適用例(電子機器の例)
【0017】
<第1の実施の形態>
[表示装置1の全体構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置1の断面構造を表すものである。表示装置1は、例えばアクティブマトリクス方式の有機EL表示装置であり、また、後述の上部電極16の側から光が取り出される上面発光型である。この表示装置1は、駆動基板10上に、マトリクス状に配列する3種類の画素10R,10G,10Bを有する。これらの画素10R,10G,10Bは、R,G,Bのサブピクセルに対応するものであり、それぞれが有機EL素子よりなる。即ち、画素10Rは、赤色光を発する赤色有機EL素子、画素10Gは、緑色光を発する緑色有機EL素子、画素10Bは、青色光を発する青色有機EL素子からそれぞれなる。
【0018】
これらの画素10R,10G,10Bは、例えば、駆動基板10の側から順に、下部電極11、有機積層膜(12R,12G,12B)および上部電極16をこの順に有している。
【0019】
駆動基板10は、画素10R,10G,10Bの駆動回路を含む基板であり、画素毎にTFTが配設されている。駆動基板10の表面は、平坦化膜で覆われており、この平坦化膜に設けられた開口を介して、各TFTと下部電極11とが電気的に接続されている。
【0020】
下部電極11は、例えば各有機発光層に正孔を注入するアノード電極として機能するものである。この下部電極11は、本実施の形態のような上面発光型の表示装置では、反射電極としても機能するため、できるだけ高い反射率を有していることが発光効率を高める上で望ましい。例えば、下部電極11の構成材料としては、銀(Ag)、アルミニウム、モリブデン(Mo)およびクロム(Cr)などの金属元素の単体または合金が挙げられる。この下部電極11は、このような金属材料を用いた単層構造でもよいし、複数の層の積層構造であってもよい。また、上記材料よりなる下部電極表面に、更にインジウムとスズの酸化物(ITO)やインジウムと亜鉛の酸化物(IZO)等の透明導電膜を設けた構造であってもよい。但し、Al合金を下部電極11として用いた場合、高反射率は確保できるものの、表面に酸化皮膜が生じ易いことや、仕事関数が大きくないことに起因して正孔注入障壁が生じ易い。そのため、この場合には、適切な材料よりなる正孔注入層を別途設けることが望ましい。
【0021】
この下部電極11は、駆動基板10上に画素毎に設けられるが、望ましくは本実施の形態のように、駆動基板10の表面(平坦化膜等の表面)と段差が形成されないように(下部電極11および駆動基板10の各表面が同一面をなすように)設けられていることが望ましい。これにより、有機材料を斜方蒸着により成膜する際、ケラレの発生を抑制し、有機材料を所望領域に略均一に蒸着可能となる。よって、電流集中の発生を抑制したり、所望の発光色を得やすくなる。
【0022】
尚、本実施の形態では、簡便化のため、上述したTFTおよび平坦化膜の図示は省略している。また、この下部電極11上には、下部電極11に対向して開口を有する画素間絶縁膜が、画素10R,10G,10Bの全面に渡って形成されていてもよい(詳細は後述)。この場合には、画素間絶縁膜の開口部分に、有機積層膜12R,12G,12Bがそれぞれ形成される。
【0023】
有機積層膜12R,12G,12Bはそれぞれ、赤色発光層14R,緑色発光層14G,青色発光層14Bのうちの1または2以上の有機発光層と、このような有機発光層以外の他の有機層(例えば正孔輸送層や後述の電子ブロック層)とを積層したものである。詳細は後述するが、これらの有機積層膜12R,12G,12Bでは、有機発光層以外の有機層の構造が互いに異なっている。
【0024】
上部電極16は、画素10R,10G,10Bに共通の電極となっており、例えば各有機発光層に電子を注入するカソード電極として機能するものである。この上部電極16は、本実施の形態のような上面発光型の表示装置では、透明導電材料から構成されている。例えば、ITOやIZO等の透明導電膜、およびマグネシウム−銀(Mg−Ag)共蒸着膜、の単層膜あるいはこれらの積層膜が挙げられる。尚、上部電極16としてMg−Ag共蒸着膜を用い、かつ有機層積層膜12R,12G,12Bの総膜厚(総光路長)および各有機発光層と電極との距離を適切に設定することにより、各画素に光共振器構造を形成することができ、発光効率および色純度の向上が可能である(詳細は、第2の実施の形態において後述する)。
【0025】
これらの画素10R,10G,10B間の選択的な領域には、リブ110が配設されている。ここでは、画素10R,10G間および画素10B,10R間の各領域に設けられている。リブ110は、詳細は後述するが、成膜プロセスにおいて、各色発光層や電子ブロック層等の塗り分け(パターニング)の際に利用されるシャドーマスクとして機能するものである。このリブ110は、例えばフォトレジスト等の感光性樹脂材料により構成されており、画素間ピッチや蒸着角度等の諸条件を考慮して適切な形状(幅,高さ)で形成されている。
【0026】
上記のような画素10R,10G,10Bの上部電極16側には、全画素を覆うように保護層17が設けられている。更に、保護膜17上には、接着層18により封止基板19が貼り合わせられている。保護膜17は、例えばシリコン窒化膜またはシリコン酸化膜等からなり、接着層18は、例えばUV硬化樹脂よりなる。封止基板19には、カラーフィルタや、ブラックマトリクス(いずれも図示せず)等が設けられていてもよい。
【0027】
(有機積層膜12R,12G,12Bの構成)
図2(A)〜(C)は、有機積層膜12G,12B,12Rの断面構造を表したものである。このように、有機積層膜12R,12G,12Bはいずれも、下部電極11の側から順に正孔輸送層13および赤色発光層14Rを、各画素に共通の層として有している。但し、有機積層膜12Gでは、図2(A)に示したように、赤色発光層14R上に、緑用電子ブロック層15G、緑色発光層14Gおよび青色発光層14Bがこの順に積層されている。有機積層膜12Bでは、図2(B)に示したように、赤色発光層14R上に、青用電子ブロック層15Bおよび青色発光層14Bがこの順に積層されている。有機積層膜12Rでは、図2(C)に示したように、赤色発光層14R上に青色発光層14Bが積層されている。
【0028】
このように、有機積層膜12G,12B,12Rのそれぞれに、異なる色光の発光層が積層されることになるが、有機積層膜12Gの再結合位置Dgは緑色発光層14G、有機積層膜12Bの再結合位置Dbは青色発光層14B、有機積層膜12Rの再結合位置Drは赤色発光層14Rにそれぞれ形成されるようになっている。この理由については後述する。
【0029】
即ち、画素10Gにおける有機積層膜12Gは、発光層として、赤色発光層14R,緑色発光層14Gおよび青色発光層14Bを有し、これらの発光層以外の有機層としては、正孔輸送層13および緑用電子ブロック層15Gを有している。画素10Bにおける有機積層膜12Bは、発光層として、赤色発光層14Rおよび青色発光層14Bを有し、これらの発光層以外の有機層としては、正孔輸送層13および青用電子ブロック層15Gを有している。画素10Rにおける有機積層膜12Rは、発光層として、赤色発光層14Rおよび青色発光層14Bを有し、これらの発光層以外の有機層としては、正孔輸送層13を有している。
【0030】
このように、画素の種類毎に、有機積層膜12G,12B,12Rの層構造、詳細には有機発光層以外の有機層の層構造が互いに異なっている。即ち、画素10R,10G,10B毎に、有機発光層以外の有機層の層数や種類、厚み等が異なっている。
【0031】
表示装置1全体としては、駆動基板10上において、画素10R,10G,10Bの全面に渡って正孔輸送層13および赤色発光層14Rがこの順に設けられている。赤色発光層14R上では、画素10Gにおいて緑用電子ブロック層15Gおよび緑色発光層14Gがこの順に設けられ、画素10Bにおいて青用電子ブロック層15Bおよび青色発光層14Bがこの順に設けられている。そして、これらを覆うように、画素10R,10G,10Bの全面に渡って、青色発光層14Bが設けられている。
【0032】
正孔輸送層13は、正孔注入効率を高めるためのものであり、例えばヘキサアザトリフェニレン誘導体(化1)および4,4’−ビス(N−1−ナフチル−N−フェニルアミノ)ビフェニル(α−NPD)により構成されている。
【0033】
【化1】

【0034】
赤色発光層14R、緑色発光層14Gおよび青色発光層14Bはそれぞれ、電界をかけることにより、下部電極11側から注入された正孔の一部と、上部電極16側から注入された電子の一部とを再結合して、赤色、緑色および青色の色光をそれぞれ発生するものである。これらの各色発光層はそれぞれ、例えばスチリルアミン誘導体、芳香族アミン誘導体、ぺリレン誘導体、クマリン誘導体、ピラン系色素、トリフェニルアミン誘導体等の有機材料を含んで構成されている。
【0035】
赤色発光層14Rは、例えば、赤色発光材料,正孔輸送性材料および電子輸送性材料のうち少なくとも1種を含んでいる。赤色発光材料は、蛍光性のものでも燐光性のものでもよい。この赤色発光層18Rは、例えば4,4−ビス(2,2−ジフェニルビニン)ビフェニル(DPVBi)に2,6−ビス[(4'−メトキシジフェニルアミノ)スチリル]
−1,5−ジシアノナフタレン(BSN)を混合したものから構成されている。
【0036】
緑色発光層14Gは、例えば、緑色発光材料,正孔輸送性材料および電子輸送性材料のうち少なくとも1種を含んでいる。緑色発光材料は、蛍光性のものでも燐光性のものでもよい。この緑色発光層18Gは、例えば、ADNやDPVBiにクマリン6を混合したものから構成されている。
【0037】
青色発光層14Bは、例えば、青色発光材料,正孔輸送性材料および電子輸送性材料のうち少なくとも1種を含んでいる。青色発光材料は、蛍光性のものでも燐光性のものでもよい。この青色発光層18Bは、例えば、DPVBiに4,4'−ビス[2−{4−(N
,N−ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を混合したものから構成されている。
【0038】
緑用電子ブロック層15Gおよび青用電子ブロック層15Bは、例えば上下に積層された異なる色の発光層同士の間において、所定方向への電子の移動を遮蔽する機能を有するものである。これらの緑用電子ブロック層15Gおよび青用電子ブロック層15Bは、例えば上記正孔輸送層13と同様の正孔輸送材料により構成されている。
【0039】
例えば、本実施の形態において、緑用電子ブロック層15Gは、緑色発光層14Gと赤色発光層14Rとの間に配置されることにより、上部電極16側から注入された電子を、緑色発光層14Gよりも下層に配置された赤色発光層14Rに届けないようになっている。換言すると、画素10Gでは、緑用電子ブロック層15Gにより、電子−正孔対による再結合が、赤色発光層14Rではなく緑色発光層14Gにおいて発生するように、上記再結合位置を変化させるようになっている。尚、緑色発光層14G上には更に、青色発光層14Bが設けられるが、エネルギー的に緑色発光が青色発光よりも支配的となる。
【0040】
同様に、青用電子ブロック層15Bは、青色発光層14Bと赤色発光層14Rとの間に配置されることにより、上部電極16側から注入された電子を、青色発光層14Bよりも下層に配置された赤色発光層14Rに届けないようになっている。換言すると、画素10Bでは、青用電子ブロック層15Bにより、電子−正孔対による再結合が、赤色発光層14Rではなく青色発光層14Bにおいて発生するように、上記再結合位置を変化させるようになっている。
【0041】
尚、この有機積層膜12G,12B,12Rには、上記のような正孔輸送層13や各色発光層の他にも、必要に応じて、例えば正孔注入層および電子輸送層(いずれも図示せず)等が積層されていてもよい。正孔注入層としては、例えば4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)を用いることができる。電子輸送層は、各色発光層への電子注入効率を高めるためのものであり、例えば8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3 )やBCPにより構成されている。また、有機積層膜12G,12B,12R上に、更に電子注入層が設けられていてもよい。電子注入層の構成材料としては、例えばLi2O、Cs2O、LiFやCaF2等のアルカリ金属酸化物、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類フッ化物等が挙げられる。
【0042】
[表示装置1の製造方法]
上記のような表示装置1は、例えば次のようにして製造することができる。図3〜図8は、表示装置1の製造方法を工程順に表す断面図である。尚、各図において、駆動基板10の下方に、(R),(G),(B)の符号を付記しているが、これらは各画素領域(画素形成予定領域)を表しており、(R)は画素10R、(G)は画素10G、(B)は画素10Bの画素領域をそれぞれ表している。
【0043】
まず、図3(A)に示したように、駆動基板10上の各画素領域に、例えば上述の材料よりなる下部電極11を、例えばスパッタ法およびフォトリソグラフィによりパターン形成する。この際、駆動基板10に設けられた駆動回路(TFT含む)を被覆する平坦化膜(図示せず)に開口を形成しておき、この開口を介して、下部電極11と平坦化膜下層に設けられたTFTとが電気的に接続されるようにする。その後、形成した下部電極11上に、画素領域(R),(G),(B)の全体に渡って画素間絶縁膜(図示せず)を形成し、下部電極11に対向する領域に、有機積層膜12R,12G,12Bの形成領域となる開口部を形成する。
【0044】
続いて、図3(B)に示したように、画素間の選択的な領域に、上述の材料等よりなるリブ110をパターン形成する。ここでは、リブ110を、画素領域(R),(G)間および画素領域(R),(B)間に、例えばフォトリソグラフィにより形成する。
【0045】
次いで、図4(A)に示したように、駆動基板10に略垂直な方向からの真空蒸着により、画素領域(R),(G),(B)の全面に渡って、上述した材料よりなる正孔輸送層13を成膜する。
【0046】
続いて、図4(B)に示したように、駆動基板10に略垂直な方向からの真空蒸着により、画素領域(R),(G),(B)の全面に渡って、上述した材料よりなる赤色発光層14Rを成膜する。これにより、駆動基板10上において、正孔輸送層13および赤色発光層14Rが、各画素領域に共通の層として形成される。尚、この結果として、各リブ110の上面にも、正孔輸送層13および赤色発光層14Rが堆積される。
【0047】
この後、図5(A)に示したように、形成したリブ110を利用した斜方蒸着により、上述した材料よりなる緑用電子ブロック層15Gを形成する。このとき、蒸着源に対して画素領域(G)が曝され、画素領域(R),(B)についてはリブ110の陰となるような角度方向D1から蒸着を行う。このようにして、画素10Gとなる画素領域(G)に、選択的に緑用電子ブロック層15Gを形成する。尚、この結果、画素領域(R),(B)間に設けられたリブ110の画素領域(R)側の側面にも、緑用電子ブロック層15Gが成膜される。
【0048】
続いて、図5(B)に示したように、リブ110を利用した斜方蒸着により、上述した材料よりなる緑色発光層14Gを形成する。この際、上記緑用電子ブロック層15Gの場合と同じ角度方向D1から蒸着を行う。即ち、形成した緑用電子ブロック層15G上に重ねて緑色発光層14Gを成膜する。このようにして、画素10Gとなる画素領域(G)に、選択的に緑色発光層14Gを形成する。尚、この結果、画素領域(R),(B)間に設けられたリブ110の画素領域(R)側の側面にも、緑色発光層14Gが成膜される。
【0049】
次いで、図6(A)に示したように、リブ110を利用した斜方蒸着により、上述した材料よりなる青用電子ブロック層15Bを形成する。このとき、蒸着源に対して画素領域(B)が曝され、画素領域(R),(G)についてはリブ110の陰となるような角度方向D2に沿って蒸着を行う。このようにして、画素10Bとなる画素領域(B)に、選択的に青用電子ブロック層15Bを形成する。尚、この結果、画素領域(R),(G)間に設けられたリブ110の画素領域(R)側の側面にも、青用電子ブロック層15Bが成膜される。
【0050】
続いて、図6(B)に示したように、駆動基板10に略垂直な方向からの真空蒸着により、画素領域(R),(G),(B)の全面に渡って、上述した材料よりなる青色発光層14Bを成膜する。これにより、駆動基板10上において、青色発光層14Bが、各画素領域に共通の層として形成される。尚、この結果、各リブ110上にも、青色発光層14Bが堆積される。このようにして、各画素領域(R),(G),(B)にそれぞれ、有機積層膜12R,12G,12Bを形成する。
【0051】
この後、図7に示したように、画素領域(R),(G),(B)の全面に渡って、上述した材料よりなる上部電極16を、例えば真空蒸着あるいはスパッタにより成膜する。これにより、駆動基板10上に、画素10R,10G,10Bが形成される。
【0052】
最後に、形成した画素10R,10G,10Bの全面を覆うように保護層17を成膜した後、この保護層17の上面に接着層18を介して封止基板19を貼り合わせることにより、図1に示した表示装置1を完成する。
【0053】
[表示装置1の作用・効果]
本実施の形態の表示装置1では、画素10R,10G,10Bのそれぞれに、各色の映像信号に応じた駆動電流が印加されると、下部電極11および上部電極16を通じて、有機積層膜12R,12G,12Bに電子および正孔が注入される。これらの電子および正孔は、画素10R,10G,10Bにおける赤色発光層14R,緑色発光層14G,青色発光層14Bにおいてそれぞれ再結合され、発光光を生じる。このようにして、表示装置1では、R,G,Bのフルカラーの映像表示がなされる。
【0054】
ここで、表示装置1では、上記のようなフルカラーの映像表示を実現するために、駆動基板10上において、R,G,B3種の画素をパターン形成する(各色発光層を塗り分ける)必要がある。そこで、本実施の形態では、製造プロセスにおいて、シャドウマスクとしてリブ110を画素間の選択的な領域に配設し、このリブ110を利用して、各色発光材料を斜方蒸着することにより、上記塗り分けを行っている。このようなリブ110を利用した成膜プロセスを用いる場合の作用、効果について、以下に説明する。
【0055】
(比較例)
図8は、本実施の形態の比較例に係る表示装置100の概略構成および製造プロセスを説明するための断面図である。尚、簡便化のため、保護層,接着層および封止基板の図示は省略している。この表示装置100では、駆動基板101上に画素100R,100G,100Bが配置され、各画素では、下部電極102と上部電極105との間に、発光層を含む有機積層膜が形成されている。画素間の選択的な領域には、各色発光層を塗り分けるためのリブ1010が配設されている。有機積層膜としては、例えば、赤色光を発する画素100Rでは、下部電極102の側から順に、正孔輸送層103,赤色発光層104Rおよび青色発光層10Bが積層されている。緑色光を発する画素100Gでは、下部電極102の側から順に、正孔輸送層103,緑色発光層104Gおよび青色発光層10Bが積層されている。青色光を発する画素100Bでは、下部電極102の側から順に、正孔輸送層103および青色発光層10Bが積層されている。
【0056】
即ち、画素100Rでは、発光層として赤色発光層104Rおよび青色発光層10Bを含み、有機発光層以外の有機層としては、正孔輸送層103を含んでいる。画素100Gでは、発光層として緑色発光層104Gおよび青色発光層10Bを含み、有機発光層以外の有機層としては、正孔輸送層103を含んでいる。画素100Bでは、発光層として青色発光層10Bを含み、その有機発光層以外の有機層としては、正孔輸送層103を含んでいる。つまり、比較例においては、各画素において、発光層以外の有機層の層構造に相違はなく、いずれも各画素に共通の正孔輸送層103のみを有する構造となっている。
【0057】
ここで、画素100R,100Gには、2種の発光層が積層されることになるが、この場合、発光エネルギーの低い色光の発光が支配的となる。詳細には、発光エネルギーは、赤色光,緑色光,青色光の順に高くなるため、赤色発光層104R,緑色発光層104G,青色発光層104Bの順に、電荷の再結合位置が形成され易い。即ち、青色発光層104Bよりも緑色発光層104G、緑色発光層104Gよりも赤色発光層104Rにおける発光が支配的となる。そのため、上記比較例の構造では、画素100Rにおいて赤色光、画素100Gにおいて緑色光、画素100Bにおいて青色光の発光が生じ、フルカラーの映像表示が可能となる。
【0058】
このような表示装置100では、製造プロセスにおいて、上記のようにリブ1010を利用した斜方蒸着により各色発光層の塗り分けを行うが、この際、例えば次のような手順で成膜を行う。即ち、下部電極102上に正孔輸送層103を形成した後、まず、リブ1010を利用した斜方蒸着により、赤色発光層104Rを形成する。具体的には、蒸着源に対して画素100Rが曝され、画素100G,100Bについてはリブ1010の陰となるような角度方向D101から蒸着を行うことにより、画素100Rに、選択的に赤色発光層104Rを形成する。続いて、リブ1010を利用した斜方蒸着により、緑色発光層104Gを形成する。具体的には、蒸着源に対して画素100Gが曝さ2から蒸着を行うことにより、画素100Gに、選択的に緑色発光層104Gを形成する。この後、駆動基板101に略垂直な方向から、画素100R,100G,100Bの全面に渡って、青色発光層104Bを成膜する。最後に、この青色発光層104B上に上部電極105を形成することにより、上記のような積層構造を有する表示装置100を完成する。
【0059】
ところが、上記のような比較例の手法では、リブ1010をマスクとして赤色発光層104Rを蒸着する際に、その赤色発光材料の一部が、目的とする画素100R以外の画素100G,100Bに付着してしまうことがある。これは、真空中での分子の運動方向の変化や、蒸着装置の壁面における反射に起因する。特に、赤色の発光のエネルギーは青色に比べて低いため、赤色発光分子が青色サブピクセルに付着すると、その付着量が微量であっても、青色発光分子の励起エネルギーが赤色発光分子に速やかに移動し、赤色の発光が生じてしまう。即ち、画素100Bから青色光だけでなく赤色光が混在して発生してしまう。このような色光の混色は、色純度を低下させ、表示品位の低下を招きかねない。
【0060】
この比較例の数値実施例として、以下のようなサンプルを作製し、R,G,Bの各色光の発光強度を測定した。この際、各画素100R,100G,100Bの幅(ピッチ)を26μm、下部電極102を幅8μm,厚み50nmのアルミニウム膜とした。リブ1010は、画素100B,100G間、画素100B,100R間に、高さ6μm、幅6μmのフォトレジストにより形成した。正孔輸送層103としては、厚み10nmのヘキサアザトリフェニレン誘導体(上記化1)と、厚み18nmのα−NPDとを積層したものを用いた。赤色発光層104Rの成膜工程では、角度方向D101を73°方向とし、赤色発光材料としてはDPVBiにBSNを混合したものを用い、膜厚を50nmとした。緑色発光層104Gの成膜工程では、角度方向D102を−73°方向とし、緑色発光材料としてはADNにクマリン6を混合したものを用い、膜厚を25nmとした。青色発光層104Bとしては、DPVBiにDPAVBiを混合したものを用い、膜厚を15nmとした。また、この青色発光層104B上に、厚み30nmのBCPよりなる電子輸送層と、厚み0.3nmのフッ化リチウムよりなる電子注入層(いずれも図示せず)とを成膜し、この上に上部電極105としてMg−Ag(10:1)共蒸着膜を15nm形成した。尚、図示しない保護層としてチッ化珪素膜を1μmの厚さで成膜した後、UV硬化樹脂を用いて封止ガラスを貼り合せた。このようにして作製した比較例の表示装置100における上記測定結果を図9に示す。
【0061】
図9に示したように、画素100Rからは赤色光、画素100Gからは緑色光の発光がそれぞれ得られたが、画素100Bからは赤色光と緑色光の混ざった黄色の発光が得られ、青色の発光が得られなかった。また、上記のような設定とすることにより、各画素では、下部電極102と上部電極105との間において光共振器構造が形成されたが、共振の次数は赤0次、緑0次、青0次であった。
【0062】
これに対し、本実施の形態では、上述のように、有機積層膜12R,12G,12Bが、1または2以上の有機発光層とそれ以外の他の有機層とを含み、他の有機層の層構造(即ち、他の有機層の層数や種類、厚み等)が、画素の種類毎に異なっている。例えば、有機発光層以外の有機層として、有機積層膜12Gは、正孔輸送層13および緑用電子ブロック層15Gを含み、有機積層膜12Bは、正孔輸送層13および青用電子ブロック層15Bを含み、有機積層膜12Rは、正孔輸送層13を含んでいる。
【0063】
このような層構造により、画素10Rでは、有機積層膜12Rにおける赤色発光層14Rおよび青色発光層14Bのうち、上述の理由から、赤色発光層14Rに再結合位置Drが形成され、赤色光の発光が得られる。
【0064】
一方、画素10Gでは、有機積層膜12Gにおいて、赤色発光層14R,緑色発光層14Gおよび青色発光層14Bの3色の発光層が積層されている。このため、上述した発光エネルギーの観点からは、赤色発光層14Rに再結合位置が形成されることになるが、本実施の形態では、図2(A)に示したように、赤色発光層14Rと緑色発光層14Gとの間に、緑用電子ブロック層15Gが挟み込まれている。このため、上部電極16側から注入された電子は、赤色発光層14Rへ届かず、緑用電子ブロック層15Gよりも上層に留まる。緑用電子ブロック層15G上には、緑色発光層14Gおよび青色発光層14Bが積層されているが、これら2色の発光層においては、上述の発光エネルギーの観点から、緑色の発光が支配的となる(緑色発光層14Gに再結合位置Dgが形成される)。従って、画素10Gでは、緑色発光層14Gによる緑色光の発光が得られる。
【0065】
他方、画素10Bでは、有機積層膜12Bにおいて、赤色発光層14Rおよび青色発光層14Bの2色の発光層が積層されている。このため、上述した発光エネルギーの観点からは、赤色発光層14Rに再結合位置が形成されることになるが、本実施の形態では、図2(B)に示したように、赤色発光層14Rと青色発光層14Bとの間に、青用電子ブロック層15Bが挟み込まれている。このため、上部電極16側から注入された電子は、赤色発光層14Rへ届かず、青用電子ブロック層15Bよりも上層に留まる。即ち、青用電子ブロック層15B上に積層された青色発光層14Bに再結合位置Dbが形成される。従って、画素10Bでは、青色発光層14Bによる青色光の発光が得られる。
【0066】
上記のように、画素10R,10G,10B毎に、発光層以外の有機層の層構造が異なっており、具体的には、本実施の形態では、画素10Gに緑用電子ブロック層15G、画素10Bに青用電子ブロック層15Bがそれぞれ所定の位置に設けられている。これにより、成膜プロセスにおいて、斜方蒸着より選択的な画素にのみ成膜する発光材料が、所望の画素以外の画素に付着してしまった場合であっても、その付着による色光の混色が抑制される。
【0067】
例えば、緑色発光層14Gの成膜工程において、緑色発光材料が、画素10G以外の画素10R,10Bへ付着してしまった場合、画素10Rでは、元々赤色光の発光が支配的であるため問題はない。一方、画素10Bでは、緑色発光層14Gの成膜工程の後に、青用電子ブロック層15Bを形成するため、緑色発光層14Gの成膜工程において付着した緑色発光分子に電子が移動することが防止される。
【0068】
また、赤色発光層14Rを、3色の発光層の中で最も下層に設け(3色の発光層の中で最初に成膜し)、画素10,10bでは、その赤色発光層14R上に緑用電子ブロック層15Gおよび青用電子ブロック層15Bを積層することにより、画素10G,10Bにおける赤色発光層14Rへの電子の移動は防止される。
【0069】
尚、赤色発光層14R上には、緑用電子ブロック層15Gおよび青用電子ブロック層15Bの各成膜工程において、その電子ブロック層に用いられる材料(例えば、正孔輸送材料)が、付着してしまうこともあるが、付着量が微量であれば、ほとんどの励起エネルギーは赤色発光材料に移動するので、赤色光の発光の妨げにはならない。
【0070】
このように、電子ブロック層を用いることで、蒸着材料の付着による影響が最小限となるように、各色の有機発光材料の成膜順序や成膜箇所を適切に設定することができ、この結果、各画素から所望の色光を取り出し易くなる。
【0071】
本実施の形態の数値実施例として、以下のようなサンプルを作製し、R,G,Bの各色光の発光強度を測定した。この際、各画素10R,10G,10Bの幅(ピッチ)を26μm、下部電極11を幅8μm,厚み50nmのITO膜とした。また、下部電極11の下層には、厚み100nmのアルミニウムミラーを設けた。リブ110は、画素10R,10G間、画素10B,10R間に、高さ6μm、幅6μmのフォトレジストにより形成した。正孔輸送層13としては、厚み10nmのヘキサアザトリフェニレン誘導体(上記化1)と、厚み18nmのα−NPDとを積層したものを用いた。赤色発光層14Rとしては、DPVBiにBSNを混合したものを用い、膜厚を10nmとした。緑用電子ブロック層15Gの成膜工程では、斜方蒸着の角度方向D1を73°方向とし、電子ブロック材料としては、α−NPDを用い、膜厚を100nmとした。緑色発光層14Gの成膜工程においても、角度方向D1を73°方向とし、緑色発光材料としては、ADNにクマリン6を混合したものを用い、膜厚を10nmとした。また、青用電子ブロック層15Bの成膜工程では、斜方蒸着の角度方向D2を−73°方向とし、電子ブロック材料としては、α−NPDを用い、膜厚を70nmとした。青色発光層14Bとしては、DPVBiにDPAVBiを混合したものを用い、膜厚を15nmとした。また、この青色発光層14B上に、厚み30nmのBCPよりなる電子輸送層と、厚み0.3nmのフッ化リチウムよりなる電子注入層(いずれも図示せず)とを成膜し、この上に上部電極16としてMg−Ag(10:1)共蒸着膜を15nm形成した。保護層17としては、厚み1μmのチッ化珪素膜を用い、この上にUV硬化樹脂よりなる接着層18を用いて封止基板19を貼り合せた。このようにして作製した表示装置1における上記測定結果を図10に示す。
【0072】
図10に示したように、画素10Rから赤色光、画素10Gから緑色光、画素10Bから青色光の各発光が得られた。また、上記のような設定とすることにより、各画素では、下部電極11下層のAlミラーと上部電極16間において光共振器構造が形成され、その共振の次数は赤0次、緑1次、青1次であった。
【0073】
以上のように、本実施の形態では、下部電極11および上部電極16間に設けられた有機積層膜12R,12G,12Bが、2色以上の発光層とそれ以外の他の有機層とを含み、他の有機層における層構造が、画素10R,10G,10B毎に異なっている。例えば、画素10Gの所定の位置に緑用電子ブロック層15G、画素10Bの所定の位置に青用電子ブロック層15Bがそれぞれ配置されている。これにより、各画素に自己の色光とは異なる色の有機発光材料が付着した場合であっても、その付着による色光の混色を抑制することができる。よって、複数色を用いたカラー表示に際し、良好な色純度を確保することが可能となる。
【0074】
(変形例1)
[表示装置1Aの構成]
ここで、上記第1の実施の形態の変形例(変形例1)に係る表示装置(表示装置1A)について説明する。以下では、上記第1の実施の形態と同様の構成要素については、同一の符号を付し適宜説明を省略する。図11は、表示装置1Aの断面構造を表したものである。表示装置1Aは、上記第1の実施の形態の表示装置1と同様、例えばアクティブマトリクス型、上面発光型の有機EL表示装置であり、駆動基板10上に、それぞれが有機EL素子よりなる3種類の画素10R1,10G1,10B1を有するものである。これらの画素10R1,10G1,10B1は、上記第1の実施の形態と同様、駆動基板10の側から順に、下部電極11、有機積層膜(12R1,12G1,12B1)および上部電極16をこの順に有している。有機積層膜12R1,12G1,12B1はそれぞれ、上記第1の実施の形態と同様、赤色発光層14R,緑色発光層14G1,青色発光層14Bのうち1または2以上の発光層を含む有機積層膜であり、発光層以外の層構造が互いに異なるものである。また、各画素間にはリブ110が配設され、上部電極16上には、保護層17、接着層18および封止基板19が設けられている。
【0075】
但し、本変形例では、緑色発光層14G1が各画素10R1,10G1,10B1に共通の層として設けられている。換言すると、本変形例では、有機積層膜12R1,12G1,12B1が、赤色発光層14R,緑色発光層14G1,青色発光層14Bの全ての発光層を有している。以下、このような有機積層膜12R1,12G1,12B1の積層構造について具体的に説明する。
【0076】
図12(A)〜(C)は、有機積層膜12R1,12G1,12B1の断面構造を表したものである。有機積層膜12G1では、図12(A)に示したように、正孔輸送層13上に、赤色発光層14R、緑用電子ブロック層15G、緑色発光層14G1および青色発光層14Bがこの順に積層されている。有機積層膜12B1では、図12(B)に示したように、正孔輸送層13上に、赤色発光層14R、緑色発光層14G1、青用電子ブロック層15Bおよび青色発光層14Bがこの順に積層されている。有機積層膜12R1では、図12(C)に示したように、正孔輸送層13上に、赤色発光層14R、緑色発光層14G1および青色発光層14Bが積層されている。緑色発光層14G1は、上記第1の実施の形態の緑色発光層14Gと同等の材料により構成されている。
【0077】
このように、緑色発光層14G1が各画素に設けられている(全色の有機発光層が各画素に設けられている)場合であっても、有機積層膜12G1の再結合位置Dgは緑色発光層14G1、有機積層膜12B1の再結合位置Dbは青色発光層14B、有機積層膜12R1の再結合位置Drは赤色発光層14Rにそれぞれ形成されるようになっている。
【0078】
即ち、画素10G1における有機積層膜12G1は、発光層として、赤色発光層14R,緑色発光層14G1および青色発光層14Bの3色全ての発光層を有し、これらの発光層以外の有機層としては、正孔輸送層13および緑用電子ブロック層15Gを有している。画素10B1における有機積層膜12B1は、発光層として3色全ての発光層を有し、これらの発光層以外の有機層としては、正孔輸送層13および青用電子ブロック層15Gを有している。画素10R1における有機積層膜12R1は、発光層として3色全ての発光層を有し、これらの発光層以外の有機層としては、正孔輸送層13を有している。
【0079】
表示装置1A全体としては、駆動基板10上に、画素10R1,10G1,10B1の全面に渡って正孔輸送層13が設けられ、この正孔輸送層13上には、基板全面に渡って赤色発光層14Rが形成されている。赤色発光層14R上では、画素10G1に対応する選択的な領域に緑用電子ブロック層15Gが設けられており、この緑用電子ブロック層15G上に、基板全面に渡って緑色発光層14G1が設けられている。この緑色発光層14G1上の画素10B1に対応する選択的な領域に青用電子ブロック層15Bが設けられ、この青用電子ブロック層15B上に、基板全面に渡って青色発光層14Bが設けられている。
【0080】
[表示装置1Aの製造方法]
上記のような表示装置1Aは、例えば次のようにして製造することができる。図13〜図15は、表示装置1Aの製造方法を説明するための断面図である。
【0081】
まず、上記第1の実施の形態と同様にして、駆動基板10上に下部電極11、リブ110、正孔輸送層13、赤色発光層14Rおよび緑用電子ブロック層15Gを形成する(図13(A))。続いて、図13(B)に示したように、駆動基板10に略垂直な方向からの真空蒸着により、画素領域(R),(G),(B)の全面に渡って、緑色発光層14G1を成膜する。これにより、駆動基板10上において、緑色発光層14G1が、各画素領域に共通の層として形成される。尚、この結果、各リブ110上にも、緑色発光層14G1が堆積される。
【0082】
次いで、図14(A)に示したように、上記第1の実施の形態と同様にして、リブ110を利用した斜方蒸着により、画素領域(B)に選択的に青用電子ブロック層15Bを形成する。この後、図14(B)に示したように、上記第1の実施の形態と同様にして、駆動基板10に略垂直な方向からの真空蒸着により、画素領域(R),(G),(B)の全面に渡って、青色発光層14Bを成膜する。これにより、駆動基板10上において、青色発光層14Bが、各画素領域に共通の層として形成される。このようにして、各画素領域(R),(G),(B)にそれぞれ、有機積層膜12R1,12G1,12B1を形成する。
【0083】
この後、図15に示したように、上記第1の実施の形態と同様にして、画素領域(R),(G),(B)の全面に渡って、上部電極16を、例えば真空蒸着あるいはスパッタにより成膜する。これにより、駆動基板10上に、画素10R1,10G1,10B1が形成される。最後に、上記第1の実施の形態と同様にして、各画素10R1,10G1,10B1の全面を覆うように保護層17を成膜した後、この保護層17の上面に接着層18を介して封止基板19を貼り合わせることにより、図11に示した表示装置1Aを完成する。
【0084】
本変形例のように、赤色発光層14Rおよび青色発光層14Bだけでなく、緑色発光層14G1についても、各画素に共通の層として成膜することができる。換言すると、緑色発光層14G1は、上記第1の実施の形態で説明したように、リブ110を用いた斜方蒸着により成膜してもよいが、本変形例のように、他の発光層と同様にして垂直方向からの蒸着によって成膜することも可能である。このようにして、各画素に3色全ての発光層を成膜した場合であっても、画素10G1が緑用電子ブロック層15G、画素10B1が青用電子ブロック層15Bをそれぞれ有するため、上述したように、各画素では適切な層において電荷の再結合が生じ、所望の色光を取り出し易くなる。よって、上記第1の実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0085】
ここで、本変形例の数値実施例として、以下のようなサンプルを作製し、R,G,Bの各色光の発光強度を測定した。この際、各画素10R1,10G1,10B1の幅(ピッチ)、下部電極11のスケールおよび構成材料、反射ミラーの設置、リブ110スケールおよび構成材料は、上記第1の実施の形態における数値実施例と同様とした。また、正孔輸送層13、赤色発光層14R、緑色発光層14G1、青色発光層14B、緑用電子ブロック層15Gおよび青用電子ブロック層15Bの各構成材料は、上記第1の実施の形態ど同様とし、各層の膜厚を次のように設定した。即ち、正孔輸送層13を68nm、赤色発光層14Rを7nm、緑色発光層14G1を10nm、青色発光層14Bを15nm、緑用電子ブロック層15Gを30nm、青用電子ブロック層15Bを30nmにそれぞれ設定した。また、緑用電子ブロック層15Gの成膜工程では、斜方蒸着の角度方向D1を73°方向、青用電子ブロック層15Bの成膜工程では、斜方蒸着の角度方向D2を−73°方向とした。また、青色発光層14B上には、BCPよりなる膜厚35nmの電子輸送層、LIFよりなる膜厚0.3nmの電子注入層、およびMg−Ag共蒸着膜よりなる膜厚12nmの上部電極16をこの順に形成した。このようにして作製した表示装置1Aにおける上記測定結果を図16に示す。
【0086】
図16に示したように、画素10R1から赤色光、画素10G1から緑色光、画素10B1から青色光の各発光が得られた。また、上記のような設定とすることにより、各画素では、下部電極11下層のAlミラーと上部電極16間において光共振器構造が形成され、その共振の次数は赤0次、緑1次、青1次となった。
【0087】
<第2の実施の形態>
[表示装置2の構成]
図17は、本発明の第2の実施の形態に係る表示装置2の断面構造を表すものである。表示装置2は、上記第1の実施の形態の表示装置1と同様、例えばアクティブマトリクス型、上面発光型の有機EL表示装置であり、駆動基板10上に、それぞれが有機EL素子よりなる3種類の画素20R,20G,20Bを有するものである。以下では、上記第1の実施の形態と同様の構成要素については、同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0088】
これらの画素20R,20G,20Bは、例えば、駆動基板10の側から順に、下部電極11、有機積層膜(22R,22G,22B)および上部電極16をこの順に有している。また、上記第1の実施の形態と同様、画素20R,20B間および画素20R,20G間にはリブ110が配設され、上部電極16上には、保護層17、接着層18および封止基板19が設けられている。上部電極16は、上記第1の実施の形態で説明した各種電極材料を用いることができるが、本実施の形態では、上述した材料のうち、Mg−Ag共蒸着薄膜を用いるようにする。これにより、有機積層膜22R,22G,22Bの総膜厚および、各色発光層と電極との距離を適正化することで、各画素に所望の光共振器構造を形成することができる。
【0089】
(有機積層膜22R,22G,22Bの構成)
有機積層膜22R,22G,22Bはそれぞれ、上記第1の実施の形態と同様、赤色発光層14R,緑色発光層14G,青色発光層14Bのうちの1または2以上の有機発光層と、このような有機発光層以外の他の有機層とを積層したものである。また、これらの有機積層膜22R,22G,22Bでは、上記発光層以外の有機層の層構造(有機層の層数や種類、厚み等)が互いに異なっている。
【0090】
図18(A)〜(C)は、有機積層膜22R,22G,22Bの断面構造を表したものである。有機積層膜22Gでは、図18(A)に示したように、正孔輸送層13上に、緑用膜厚調整層21G、赤色発光層14R、緑用電子ブロック層15G、緑色発光層14Gおよび青色発光層14Bがこの順に積層されている。有機積層膜22Bでは、図18(B)に示したように、正孔輸送層13上に、青用膜厚調整層21B、赤色発光層14R、青用電子ブロック層15Bおよび青色発光層14Bがこの順に積層されている。緑用膜厚調整層21Gおよび青用膜厚調整層21Bは、例えば上述したような正孔輸送層13と同様の材料(正孔輸送材料)により構成されている。有機積層膜22Rでは、図18(C)に示したように、正孔輸送層13上に、赤色発光層14Rおよび青色発光層14Bが積層されている。
【0091】
このように、本実施の形態においても、有機積層膜22R,22G,22Bのそれぞれに、異なる色光の発光層が積層されることになるが、有機積層膜22Gの再結合位置Dgは緑色発光層14G、有機積層膜22Bの再結合位置Dbは青色発光層14B、有機積層膜22Rの再結合位置Drは赤色発光層14Rにそれぞれ形成されるようになっている。
【0092】
即ち、画素20Gにおける有機積層膜22Gは、発光層として、赤色発光層14R,緑色発光層14Gおよび青色発光層14Bを有し、これらの発光層以外の有機層としては、正孔輸送層13,緑用膜厚調整層21Gおよび緑用電子ブロック層15Gを有している。画素20Bにおける有機積層膜22Bは、発光層として、赤色発光層14Rおよび青色発光層14Bを有し、これらの発光層以外の有機層としては、正孔輸送層13、青用膜厚調整層21Bおよび青用電子ブロック層15Gを有している。画素20Rにおける有機積層膜22Rは、発光層として、赤色発光層14Rおよび青色発光層14Bを有し、これらの発光層以外の有機層としては、正孔輸送層13を有している。
【0093】
表示装置2全体としては、駆動基板10上に、画素20R,20G,20Bの全面に渡って正孔輸送層13が設けられ、この正孔輸送層13上において、画素20Gでは緑用膜厚調整層21G、画素20Bでは青用膜厚調整層21Bがそれぞれ設けられている。これらの緑用膜厚調整層21Gおよび青用膜厚調整層21Bを覆うように、画素20R,20G,20Bの全面に渡って赤色発光層14Rが形成されている。この赤色発光層14R上では、上記第1の実施の形態と同様、画素20Gにおいて緑用電子ブロック層15Gおよび緑色発光層14Gがこの順に設けられ、画素20Bにおいて青用電子ブロック層15Bおよび青色発光層14Bがこの順に設けられている。そして、これらを覆うように、画素20R,20G,20Bの全面に渡って、青色発光層14Bが設けられている。
【0094】
[表示装置2の製造方法]
上記のような表示装置2は、例えば次のようにして製造することができる。図19〜図23は、表示装置2の製造方法を工程順に表す断面図である。
【0095】
まず、上記第1の実施の形態と同様にして、駆動基板10上に下部電極11を形成した後、リブ110を形成する。この後、図19(A)に示したように、駆動基板10に略垂直な方向からの真空蒸着により、画素領域(R),(G),(B)の全面に渡って、正孔輸送層13を成膜する。
【0096】
この後、図19(B)に示したように、リブ110を利用した斜方蒸着により、上述した材料よりなる緑用膜厚調整層21Gを形成する。このとき、蒸着源に対して画素領域(G)が曝され、画素領域(R),(B)についてはリブ110の陰となるような角度方向D1から蒸着を行う。このようにして、画素20Gとなる画素領域(G)に、選択的に緑用膜厚調整層21Gを形成する。尚、この結果、画素領域(R),(B)間に設けられたリブ110の画素領域(R)側の側面にも、緑用膜厚調整層21Gが成膜される。また、緑色膜厚調整層21Gの厚みを、画素20Gの光共振器構造において、所望の共振長となるように適切な値に設定する。
【0097】
続いて、図20(A)に示したように、リブ110を利用した斜方蒸着により、上述した材料よりなる青用膜厚調整層21Bを形成する。このとき、蒸着源に対して画素領域(B)が曝され、画素領域(R),(G)についてはリブ110の陰となるような角度方向D2から蒸着を行う。このようにして、画素20Bとなる画素領域(B)に、選択的に青用膜厚調整層21Bを形成する。尚、この結果、画素領域(R),(G)間に設けられたリブ110の画素領域(R)側の側面にも、青用膜厚調整層21Bが成膜される。また、青色膜厚調整層21Bの厚みを、画素20Bの光共振器構造において、所望の共振長となるように適切な値に設定する。
【0098】
この後、図20(B)に示したように、上記第1の実施の形態と同様、駆動基板10に略垂直な方向からの真空蒸着により、画素領域(R),(G),(B)の全面に渡って、赤色発光層14Rを成膜する。これにより、駆動基板10上において、赤色発光層14Rが、各画素領域に共通の層として形成される。尚、この結果として、各リブ110の上面にも、赤色発光層14Rが堆積される。
【0099】
次いで、図21(A)に示したように、上記第1の実施の形態と同様、リブ110を利用した斜方蒸着により、画素領域(G)に選択的に緑用電子ブロック層15Gを形成する。尚、この結果、画素領域(R),(B)間に設けられたリブ110の画素領域(R)側の側面にも、緑用電子ブロック層15Gが成膜される。
【0100】
続いて、図21(B)に示したように、上記第1の実施の形態と同様、リブ110を利用した斜方蒸着により、画素領域(G)において、緑用電子ブロック層15G上に重ねて緑色発光層14Gを形成する。尚、この結果、画素領域(R),(B)間に設けられたリブ110の画素領域(R)側の側面にも、緑色発光層14Gが成膜される。
【0101】
次いで、図22(A)に示したように、上記第1の実施の形態と同様、リブ110を利用した斜方蒸着により、画素領域(B)に選択的に青用電子ブロック層15Bを形成する。尚、この結果、画素領域(R),(G)間に設けられたリブ110の画素領域(R)側の側面にも、青用電子ブロック層15Bが成膜される。
【0102】
続いて、図22(B)に示したように、上記第1の実施の形態と同様、駆動基板10に略垂直な方向からの真空蒸着により、画素領域(R),(G),(B)の全面に渡って、青色発光層14Bを成膜する。これにより、駆動基板10上において、青色発光層14Bが、各画素領域に共通の層として形成される。尚、この結果、各リブ110上にも、青色発光層14Bが堆積される。このようにして、各画素領域(R),(G),(B)にそれぞれ、有機積層膜22R,22G,22Bを形成する。
【0103】
この後、図23に示したように、上記第1の実施の形態と同様、画素領域(R),(G),(B)の全面に渡って、上部電極16を、例えば真空蒸着あるいはスパッタにより成膜する。これにより、駆動基板10上に、画素20R,20G,20Bが形成される。
【0104】
最後に、上記第1の実施の形態と同様にして、形成した画素20R,20G,20Bの全面を覆うように保護層17を成膜した後、この保護層17の上面に接着層18を介して封止基板19を貼り合わせることにより、図17に示した表示装置2を完成する。
【0105】
[表示装置2の作用・効果]
本実施の形態の表示装置2では、画素20R,20G,20Bのそれぞれに、各色の映像信号に応じた駆動電流が印加されると、下部電極11および上部電極16を通じて、有機積層膜22R,22G,22Bに電子および正孔が注入される。これらの電子および正孔は、画素20R,20G,20Bにおける赤色発光層14R,緑色発光層14G,青色発光層14Bにおいてそれぞれ再結合され、各色の発光光を生じる。このようにして、表示装置1では、R,G,Bのフルカラーの映像表示がなされる。
【0106】
ここで、表示装置2においても、上記第1の実施の形態の表示装置1と同様、フルカラーの映像表示を実現するために、製造プロセスにおける各色発光層の塗り分けを、リブ110を用いて行う。また、本実施の形態においても、有機積層膜22R,22G,22Bが、1または2以上の有機発光層とそれ以外の他の有機層とを含み、他の有機層の層構造が、画素の種類毎に異なっている。例えば、有機発光層以外の有機層として、有機積層膜22Gは、正孔輸送層13、緑用膜厚調整層21Gおよび緑用電子ブロック層15Gを含み、有機積層膜22Bは、正孔輸送層13、青用膜厚調整層21Bおよび青用電子ブロック層15Bを含み、有機積層膜22Rは、正孔輸送層13を含んでいる。
【0107】
このような層構造により、画素20Rでは、上記第1の実施の形態における画素10Rと同様、赤色発光層14Rに再結合位置Drが形成され、赤色光の発光が得られる。また、画素20Gでは、有機積層膜22Gにおいて、赤色発光層14R,緑色発光層14Gおよび青色発光層14Bが積層されるが、緑用電子ブロック層15Gを有するため、上記第1の実施の形態と同様の理由から、緑色発光層14Gにおいて再結合が生じる。従って、画素10Gでは、緑色発光層14Gによる緑色光の発光が得られる。画素20Bにおいても同様で、有機積層膜22Bには、赤色発光層14Rおよび青色発光層14Bが積層されるが、青用電子ブロック層15Bを有するため、青色発光層14Bにおいて再結合が生じる。従って、画素20Bでは、青色発光層14Bによる青色光の発光が得られる。
【0108】
上記のように、本実施の形態においても、画素20R,20G,20B毎に、発光層以外の有機層の層構造が異なっており、具体的には、画素20Gに緑用電子ブロック層15G、画素20Bに青用電子ブロック層15Bがそれぞれ所定の位置に設けられている。これにより、成膜プロセスにおいて、斜方蒸着より選択的な画素にのみ成膜する発光材料が、所望の画素以外の画素に付着してしまった場合であっても、その付着による色光の混色が抑制される。即ち、電子ブロック層を用いることで、蒸着材料の付着による影響が最小限となるように、各色の有機発光材料の成膜順序や成膜箇所を適切に設定することができ、この結果、各画素から所望の色光を取り出し易くなる。
【0109】
また、本実施の形態では、画素20Gに緑用膜厚調整層21G、画素20Bに青用膜厚調整層21Bがそれぞれ設けられていることにより、画素20R,20G,20Bの光共振器構造において、各共振長を所望の値に調整することができる。これにより、各画素における発光効率および色純度が向上する。
【0110】
本実施の形態の数値実施例として、以下のようなサンプルを作製し、R,G,Bの各色光の発光強度を測定した。この際、各画素20R,20G,20Bの幅(ピッチ)、下部電極11のスケールおよび構成材料、反射ミラーの設置、リブ110スケールおよび構成材料、正孔輸送層13の厚みおよび成膜材料は、上記第1の実施の形態における数値実施例と同様とした。緑用膜厚調整層21Gの成膜工程では、斜方蒸着の角度方向D1を73°方向とし、成膜材料としてはα−NPDを用い、膜厚を80nmとした。また、青用膜厚調整層21Bの成膜工程では、斜方蒸着の角度方向D2を−73°方向とし、成膜材料としてはα−NPDを用い、膜厚を40nmとした。赤色発光層14Rの成膜材料および膜厚については、上記第1の実施の形態における数値実施例と同様とした。緑用電子ブロック層15Gの成膜工程では、斜方蒸着の角度方向D1を73°方向とし、電子ブロック材料としては、α−NPDを用い、膜厚を20nmとした。緑色発光層14Gについては、上記第1の実施の形態と同様とした。また、青用電子ブロック層15Bの成膜工程では、斜方蒸着の角度方向D2を−73°方向とし、電子ブロック材料としては、α−NPDを用い、膜厚を30nmとした。青色発光層14Bについては、上記第1の実施の形態と同様とした。また、上記第1の実施の形態と同様の成膜材料および膜厚よりなる電子輸送層、電子注入層および上部電極16をこの順に形成し、更に保護層17、接着層18を介して封止基板19を貼り合せた。このようにして作製した表示装置2における上記測定結果を図24に示す。
【0111】
図24に示したように、画素20Rから赤色光、画素20Gから緑色光、画素20Bから青色光の各発光が得られた。また、上記のような設定とすることにより、各画素では、下部電極11下層のAlミラーと上部電極16間において光共振器構造が形成され、その共振の次数は赤0次、緑1次、青1次であった。また、緑用膜厚調整層21Gおよび青用膜厚調整層21Bを別途設けることにより、緑用電子ブロック層15Gおよび青用電子ブロック層15Bの膜厚を実施例1に比べて薄く形成することができる。このため、赤色発光層14上における電子ブロック材料の付着量が減少し、この結果、画素20Rにおける赤色光の発光量が実施例1よりも増した。
【0112】
以上のように、本実施の形態では、下部電極11および上部電極16間に設けられた有機積層膜22R,22G,22Bが、2色以上の発光層とそれ以外の他の有機層とを含み、他の有機層における層構造が、画素20R,20G,20B毎に異なっている。例えば、画素20Gの所定の位置に緑用膜厚調整層21Gおよび緑用電子ブロック層15G、画素20Bの所定の位置に青用膜厚調整層21Bおよび青用電子ブロック層15Bがそれぞれ配置されている。これにより、各画素に自己の色光とは異なる色の有機発光材料が付着した場合であっても、その付着による色光の混色を抑制することができる。よって、複数色を用いたカラー表示に際し、良好な色純度を確保することが可能となる。また、各画素において所望の共振長を有する光共振器構造を実現することができ、発光効率および色純度を向上させることができる。
【0113】
(変形例2)
[表示装置2Aの構成]
ここで、上記第2の実施の形態の変形例(変形例2)に係る表示装置(表示装置2A)について説明する。以下では、上記第1,2の実施の形態と同様の構成要素については、同一の符号を付し適宜説明を省略する。図25は、表示装置2Aの断面構造を表したものである。表示装置2Aは、上記第2の実施の形態の表示装置2と同様、例えばアクティブマトリクス型、上面発光型の有機EL表示装置であり、駆動基板10上に、それぞれが有機EL素子よりなる3種類の画素20R1,20G1,20B1を有するものである。これらの画素20R1,20G1,20B1は、上記第2の実施の形態と同様、駆動基板10の側から順に、下部電極11、有機積層膜(22R1,22G1,22B1)および上部電極16をこの順に有している。有機積層膜22R1,22G1,22B1はそれぞれ、上記第2の実施の形態と同様、赤色発光層14R,緑色発光層14G1,青色発光層14Bのうち1または2以上の発光層を含む有機積層膜であり、発光層以外の層構造が互いに異なるものである。また、各画素間にはリブ110が配設され、上部電極16上には、保護層17、接着層18および封止基板19が設けられている。また、有機積層膜22G1には、緑用膜厚調整層21G、有機積層膜22B1には、青用膜厚調整層21Bがそれぞれ設けられている。
【0114】
但し、本変形例では、上記第1の実施の形態の変形例1と同様、緑色発光層14G1が各画素20R1,20G1,20B1に共通の層として設けられている。換言すると、本変形例では、有機積層膜22R1,22G1,22B1が、赤色発光層14R,緑色発光層14G1,青色発光層14Bの全ての発光層を有している。以下、このような有機積層膜22R1,22G1,22B1の積層構造について具体的に説明する。
【0115】
図26(A)〜(C)は、有機積層膜22R1,22G1,22B1の断面構造を表したものである。有機積層膜22G1では、図26(A)に示したように、正孔輸送層13上に、緑用膜厚調整層21G、赤色発光層14R、緑用電子ブロック層15G、緑色発光層14G1および青色発光層14Bがこの順に積層されている。有機積層膜22B1では、図26(B)に示したように、正孔輸送層13上に、青用膜厚調整層21B、赤色発光層14R、緑色発光層14G1、青用電子ブロック層15Bおよび青色発光層14Bがこの順に積層されている。有機積層膜22R1では、図26(C)に示したように、正孔輸送層13上に、赤色発光層14R、緑色発光層14G1および青色発光層14Bが積層されている。
【0116】
このように、緑色発光層14G1が各画素に設けられている(全色の有機発光層が各画素に設けられている)場合であっても、有機積層膜22G1の再結合位置Dgは緑色発光層14G1、有機積層膜22B1の再結合位置Dbは青色発光層14B、有機積層膜22R1の再結合位置Drは赤色発光層14Rにそれぞれ形成されるようになっている。
【0117】
即ち、画素20G1における有機積層膜22G1は、発光層として、赤色発光層14R,緑色発光層14G1および青色発光層14Bの3色全ての発光層を有し、これらの発光層以外の有機層としては、正孔輸送層13、緑用膜厚調整層21Gおよび緑用電子ブロック層15Gを有している。画素20B1における有機積層膜12B1は、発光層として3色全ての発光層を有し、これらの発光層以外の有機層としては、正孔輸送層13、青用膜厚調整層21Bおよび青用電子ブロック層15Gを有している。画素20R1における有機積層膜12R1は、発光層として3色全ての発光層を有し、これらの発光層以外の有機層としては、正孔輸送層13を有している。
【0118】
表示装置2A全体としては、駆動基板10上に、画素20R1,20G1,20B1の全面に渡って正孔輸送層13が設けられ、この正孔輸送層13上の画素20G1に対応する選択的な領域に緑用膜厚調整層21G、画素20B1に対応する選択的な領域に青用膜厚調整層21Bがそれぞれ設けられている。これらの緑用膜厚調整層21Gおよび青用膜厚調整層21B上には、基板全面に渡って赤色発光層14Rが形成されている。赤色発光層14R上では、画素10G1に対応する選択的な領域に緑用電子ブロック層15Gが設けられており、この緑用電子ブロック層15G上に、基板全面に渡って緑色発光層14G1が設けられている。この緑色発光層14G1上の画素10B1に対応する選択的な領域に青用電子ブロック層15Bが設けられ、この青用電子ブロック層15B上に、基板全面に渡って青色発光層14Bが設けられている。
【0119】
尚、このような表示装置2Aは、例えば次のようにして製造することができる。即ち、図示は省略するが、上記第2の実施の形態の表示装置2と同様にして、駆動基板10上に下部電極11、リブ110、正孔輸送層13、緑用膜厚調整層21G、青用膜厚調整層21B、赤色発光層14Rおよび緑用電子ブロック層15Gをこの順に形成する。この後、上記変形例1の表示装置1Aと同様にして、緑色発光層14G1、青用電子ブロック層15B、青色発光層14Bを成膜する。このようにして成膜した有機積層膜22R1,22G1,22B1上に、上部電極16および保護層17を順に成膜した後、保護層17の上面に接着層18を介して封止基板19を貼り合わせる。これにより、図25に示した表示装置2Aを完成する。
【0120】
本変形例のように、有機積層膜22G1が緑用膜厚調整層21G、有機積層膜22B1が緑用膜厚調整層21Bをそれぞれ有する場合であっても、赤色発光層14Rおよび青色発光層14Bだけでなく、緑色発光層14G1についても、各画素に共通の層として成膜することができる。換言すると、緑色発光層14G1は、上記第2の実施の形態で説明したように、リブ110を用いた斜方蒸着により成膜してもよいが、本変形例のように、他の発光層と同様にして垂直方向からの蒸着によって成膜することも可能である。このようにして、各画素に3色全ての発光層を成膜した場合であっても、画素20G1が緑用電子ブロック層15G、画素20B1が青用電子ブロック層15Bをそれぞれ有するため、上述したように、各画素では適切な層において電荷の再結合が生じ、所望の色光を取り出し易くなる。よって、上記第1,2の実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0121】
本変形例の数値実施例として、以下のようなサンプルを作製し、R,G,Bの各色光の発光強度を測定した。この際、各画素10R1,10G1,10B1の幅(ピッチ)、下部電極11のスケールおよび構成材料、反射ミラーの設置、リブ110スケールおよび構成材料は、上記第1の実施の形態における数値実施例と同様とした。また、正孔輸送層13、赤色発光層14R、緑色発光層14G1、青色発光層14B、緑用電子ブロック層15Gおよび青用電子ブロック層15Bの各構成材料、膜厚および成膜条件は、上記変形例1における数値実施例と同様とした。尚、緑用膜厚調整層21Gの成膜工程では、斜方蒸着の角度方向D1を73°方向とし、成膜材料としてはα−NPDを用い、膜厚を84nmとした。また、青用膜厚調整層21Bの成膜工程では、斜方蒸着の角度方向D2を−73°方向とし、成膜材料としてはα−NPDを用い、膜厚を35nmとした。また、青色発光層14B上には、BCPよりなる膜厚35nmの電子輸送層、LIFよりなる膜厚0.3nmの電子注入層、およびMg−Ag共蒸着膜よりなる膜厚12nmの上部電極16をこの順に形成した。このようにして作製した表示装置2Aにおける上記測定結果を図27に示す。
【0122】
図27に示したように、画素20R1から赤色光、画素20G1から緑色光、画素20B1から青色光の各発光が得られた。また、上記のような設定とすることにより、各画素では、下部電極11下層のAlミラーと上部電極16間において光共振器構造が形成され、その共振の次数は赤0次、緑1次、青1次であった。
【0123】
<第3の実施の形態>
[表示装置3の構成]
図28は、本発明の第3の実施の形態に係る表示装置3の断面構造を表すものである。表示装置3は、上記第1の実施の形態の表示装置1と同様、例えばアクティブマトリクス型、上面発光型の有機EL表示装置であり、駆動基板10上に、それぞれが有機EL素子よりなる3種類の画素30R,30G,30Bを有するものである。以下では、上記第1の実施の形態と同様の構成要素については、同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0124】
これらの画素30R,30G,30Bは、例えば、駆動基板10の側から順に、下部電極11、有機積層膜(32R,32G,32B)および上部電極16をこの順に有している。また、上記第1の実施の形態と同様、画素30R,30B間および画素30R,30G間にはリブ110が配設され、上部電極16上には、保護層17、接着層18および封止基板19が設けられている。
【0125】
(有機積層膜32R,32G,32Bの構成)
有機積層膜32R,32G,32Bはそれぞれ、上記第1の実施の形態と同様、赤色発光層33R,緑色発光層33G,青色発光層33Bのうちの1または2以上の有機発光層と、このような有機発光層以外の他の有機層とを積層したものである。また、これらの有機積層膜32R,32G,32Bでは、上記発光層以外の有機層の層構造(有機層の層数や種類、厚み等)が互いに異なっている。
【0126】
図29(A)〜(C)は、有機積層膜32R,32G,32Bの断面構造を表したものである。有機積層膜32Rでは、図29(A)に示したように、正孔輸送層13上に、赤用正孔輸送層31R、赤色発光層33Rおよび青色発光層33Bがこの順に積層されている。有機積層膜32Gは、図29(B)に示したように、正孔輸送層13上に、緑用正孔輸送層31G、緑色発光層33Gおよび青色発光層33Bがこの順に積層されている。緑用正孔輸送層31Gおよび赤用正孔輸送層31Rは、例えば上述したような正孔輸送層13と同様の材料(正孔輸送材料)により構成されている。有機積層膜32Bでは、図29(C)に示したように、正孔輸送層13上に、青色発光層14Bが積層されている。
【0127】
このように、本実施の形態では、有機積層膜32R,32G,32Bのそれぞれに、1または2以上色光の発光層が積層されることになるが、有機積層膜32Gの再結合位置Dgは緑色発光層33G、有機積層膜32Rの再結合位置Drは赤色発光層33R、有機積層膜32Bの再結合位置Dbは青色発光層33Bにそれぞれ形成されるようになっている。
【0128】
即ち、画素30Rにおける有機積層膜32Rは、発光層として、赤色発光層33Rおよび青色発光層33Bを有し、これらの発光層以外の有機層としては、正孔輸送層13および赤用正孔輸送層31Rを有している。画素30Gにおける有機積層膜32Gは、発光層として、緑色発光層33Gおよび青色発光層33Bを有し、これらの発光層以外の有機層としては、正孔輸送層13および緑用正孔輸送層31Gを有している。画素30Bにおける有機積層膜32Bは、発光層として、青色発光層33Bを有し、この発光層以外の有機層としては、正孔輸送層13を有している。
【0129】
表示装置3全体としては、駆動基板10上に、画素30R,30G,30Bの全面に渡って正孔輸送層13が設けられ、この正孔輸送層13上において、画素30Rでは赤用正孔輸送層31R、画素30Gでは緑用正孔輸送層31Gが、それぞれ設けられている。これらの緑用正孔輸送層31Gおよび赤用正孔輸送層31Rを覆うように、画素30R,30G,30Bの全面に渡って青色発光層33Bが形成されている。
【0130】
本実施の形態では、これらの各色発光層のうち、緑色発光層33Gおよび赤色発光層33Rが、青色発光層33Bに比べて、極めて薄く形成されている。
【0131】
[表示装置3の製造方法]
上記のような表示装置3は、例えば次のようにして製造することができる。図30〜図32は、表示装置3の製造方法を工程順に表す断面図である。
【0132】
まず、上記第1の実施の形態と同様にして、駆動基板10上に下部電極11を形成した後、リブ110を形成し、更に、画素領域(R),(G),(B)の全面に渡って、正孔輸送層13を成膜する。この後、図30(A)に示したように、リブ110を利用した斜方蒸着により、上述した材料よりなる赤用正孔輸送層31Rを形成する。このとき、蒸着源に対して画素領域(R)が曝され、画素領域(G),(B)についてはリブ110の陰となるような角度方向D1から蒸着を行う。このようにして、画素30Rとなる画素領域(R)に、選択的に赤用正孔輸送層31Rを形成する。尚、この結果、画素領域(G),(B)間に設けられたリブ110の画素領域(B)側の側面にも、赤用正孔輸送層31Rが成膜される。
【0133】
続いて、図30(B)に示したように、リブ110を利用した斜方蒸着により、画素領域(R)において、赤用正孔輸送層31R上に重ねて、所定の膜厚で赤色発光層33Rを形成する。尚、この結果、画素領域(G),(B)間に設けられたリブ110の画素領域(B)側の側面にも、赤色発光層33Rが成膜される。
【0134】
次いで、図31(A)に示したように、リブ110を利用した斜方蒸着により、上述した材料よりなる緑用正孔輸送層31Gを形成する。このとき、蒸着源に対して画素領域(G)が曝され、画素領域(R),(B)についてはリブ110の陰となるような角度方向D2から蒸着を行う。このようにして、画素30Gとなる画素領域(G)に、選択的に緑用正孔輸送層31Gを形成する。尚、この結果、画素領域(R),(B)間に設けられたリブ110の画素領域(B)側の側面にも、緑用正孔輸送層31Gが成膜される
【0135】
続いて、図31(B)に示したように、リブ110を利用した斜方蒸着により、画素領域(G)において、緑用正孔輸送層31G上に重ねて、所定の膜厚で緑色発光層33Gを形成する。尚、この結果、画素領域(R),(B)間に設けられたリブ110の画素領域(B)側の側面にも、緑色発光層33Gが成膜される。
【0136】
この後、図32(A)に示したように、駆動基板10に略垂直な方向からの真空蒸着により、画素領域(R),(G),(B)の全面に渡って、青色発光層33Rを成膜する。これにより、駆動基板10上において、青色発光層33Rが、各画素領域に共通の層として形成される。尚、この結果として、各リブ110の上面にも、青色発光層33Rが堆積される。このようにして、各画素領域(R),(G),(B)にそれぞれ、有機積層膜32R,32G,32Bを形成する。
【0137】
この後、図32(B)に示したように、上記第1の実施の形態と同様、画素領域(R),(G),(B)の全面に渡って、上部電極16を、例えば真空蒸着あるいはスパッタにより成膜する。これにより、駆動基板10上に、画素30R,30G,30Bが形成される。
【0138】
最後に、上記第1の実施の形態と同様にして、形成した画素30R,30G,30Bの全面を覆うように保護層17を成膜した後、この保護層17の上面に接着層18を介して封止基板19を貼り合わせることにより、図28に示した表示装置3を完成する。
【0139】
[表示装置3の作用・効果]
本実施の形態の表示装置3では、画素30R,30G,30Bのそれぞれに、各色の映像信号に応じた駆動電流が印加されると、下部電極11および上部電極16を通じて、有機積層膜32R,32G,32Bに電子および正孔が注入される。これらの電子および正孔は、画素30R,30G,30Bにおける赤色発光層33R,緑色発光層33G,青色発光層33Bにおいてそれぞれ再結合され、各色の発光光を生じる。このようにして、表示装置3では、R,G,Bのフルカラーの映像表示がなされる。
【0140】
ここで、表示装置3においても、上記第1の実施の形態の表示装置1と同様、フルカラーの映像表示を実現するために、製造プロセスにおける各色発光層の塗り分けを、リブ110を用いて行う。また、本実施の形態においても、有機積層膜32R,32G,32Bが、1または2以上の有機発光層とそれ以外の他の有機層とを含み、他の有機層の層構造が、画素の種類毎に異なっている。例えば、有機発光層以外の有機層として、有機積層膜32Rは、正孔輸送層13および赤用正孔輸送層31Rを含み、有機積層膜32Gは、正孔輸送層13および緑用正孔輸送層31Gを含み、有機積層膜32Bは、正孔輸送層13を含んでいる。
【0141】
このような層構造により、画素30Rでは、上述した発光エネルギーに起因して、赤色発光層33Rに再結合位置Drが形成され、赤色光の発光が得られる。また同様に、画素30Gでは、緑色発光層33Gに再結合位置Dgが形成され、緑色光の発光が得られる。画素30Bでは、成膜された青色発光層33Bにおいて再結合が生じ、青色光の発光が得られる。ここで、本実施の形態では、画素30R,30Gにおいて、赤用正孔輸送層31Rおよび緑用正孔輸送層31Gが設けられていることにより、赤色発光層33Rおよび緑色発光層33Gの薄膜化が可能である。このため、赤色発光層33Rおよび緑色発光層33Gの成膜工程において、画素30Bに赤色発光材料および緑色発光材料が付着してしまったとしても、その付着量を極微量に抑えることができる。従って、そのような発光材料の付着による混色の影響を、極微小な許容範囲内に抑えることができる。
【0142】
以上のように、本実施の形態では、下部電極11および上部電極16間に設けられた有機積層膜32R,32G,32Bが、1または2以上の発光層とそれ以外の他の有機層とを含み、他の有機層における層構造が、画素30R,30G,30B毎に異なっている。例えば、画素30Gの所定の位置に緑用正孔輸送層31G、画素30Rの所定の位置に赤用正孔輸送層31Rがそれぞれ配置されている。これにより、各画素に自己の色光とは異なる色の有機発光材料が付着した場合であっても、その付着による色光の混色を抑制することができる。よって、複数色を用いたカラー表示に際し、良好な色純度を確保することが可能となる。
【0143】
<第4の実施の形態>
上記実施の形態等では、アノードとして機能する下部電極11が駆動基板10の表面(平坦化膜表面)と段差が生じないように設けられた場合について説明したが、本実施の形態では、そのような段差の発生が不可避の場合の好適な構造例について説明する。ここでは、駆動基板10の平坦面上に下部電極11が画素毎に配設され、更にその上に、下部電極11に対向して開口を有する画素間絶縁膜(画素間絶縁膜42)が形成された構成を例に挙げる。尚、本実施の形態においても、駆動基板10に配設されたTFTおよび平坦化膜の図示は省略している。また、表示装置のうち、一部の構成要素についてのみ示している。
【0144】
図33は、本実施の形態における斜方蒸着前の基板構成を表したものである。本実施の形態では、下部電極11が配設された駆動基板10上に、画素間絶縁膜42が形成されている。これらの下部電極11および画素間絶縁膜42を下地層41として、有機層43が形成されている。有機層43は、上述した正孔輸送層や赤色発光層などの垂直方向からの蒸着によって成膜される層である。尚、図33には図示しないが、本実施の形態においても、上記実施の形態と同様、有機層43上に、斜方蒸着によって各色発光層やブロック層が画素領域毎に塗り分けられており、更に上部電極16、保護層17、接着層18および封止基板19が順に設けられている。
【0145】
リブ110は、上記実施の形態等と同様、蒸着順序や画素の色配列に応じて、R,G,Bの各画素間の選択的な領域に設けられている。ここでは、それぞれがR,G,Bのいずれかに対応する画素領域S1〜S3のうちの画素領域S1,S3間および画素領域S2,S3間にリブ110が設けられている。即ち、斜方蒸着の対象となる画素領域S1,S2(例えばG,Bの画素形成領域)間にはリブ110が設けられていない。
【0146】
画素間絶縁膜42は、各画素(発光領域)を電気的に分離するための絶縁膜であり、下部電極11に対向して開口(開口H1,H2)を有している。この画素間絶縁膜42は、例えばポリイミド,アクリル系樹脂またはノボラック系樹脂などの有機絶縁膜、あるいは酸化ケイ素(SiOx)または窒化ケイ素(SiNx)等の無機絶縁膜により構成されている。この画素間絶縁膜42上に、上記リブ110が配設されている。
【0147】
本実施の形態では、斜方蒸着の対象となる画素領域S1,S2の境界B1からリブ110側に向かって(リブ110へ近づくに従って)、下地層41の厚み(高さ)が段階的に大きくなっている(雛壇構造st1,st2を有している)。具体的には、画素間絶縁膜42において、開口H1が、画素領域S1,S2の各下部電極11に共通して設けられており、即ち、画素領域S1,S2間(境界B1付近)では、下部電極11のエッジ(端部)が絶縁膜によって覆われておらず、駆動基板10の表面も露出している。一方、実質的に斜方蒸着の対象とならない画素領域S3(例えばRの画素形成領域)では、下部電極11のエッジ全て覆うように開口H2が設けられている。
【0148】
このように、斜方蒸着の対象となる画素領域S1,S2において、境界B1からリブ110に向かって段階的に厚みが大きくなっていることにより、以下に説明するように、斜方蒸着時のケラレが生じにくくなり、蒸着による膜厚むらを軽減することができる。
【0149】
例えば、仮に、図34(A),(B)に示したように、画素間絶縁膜42’が下部電極11毎に開口H1を有する場合(全画素領域における下部電極11のエッジが画素間絶縁膜42’によって覆われている場合)について考える。この場合、画素領域S1への斜方蒸着の際には、図34(A)に示したように、画素間絶縁膜42’および下部電極11間の段差(X1)の影響によってケラレが生じる。このため、画素領域S1では、下部電極11上において、局所的に薄膜となる部分が生じ、均一な厚みで有機材料を蒸着することができない。あるいは、画素領域S2への斜方蒸着の際には、図34(B)に示したように、画素間絶縁膜42’および下部電極11間の段差(X2)の影響によってケラレが生じる。このため、画素領域S2においても、下部電極11上に均一な厚みで有機材料を蒸着することができない。尚、上記のような画素領域S1,S2への斜方蒸着工程を連続的に行う場合にも同様の現象が生じる。このように、下部電極11上に均一な膜厚で各色発光層等の有機材料を成膜できないと、局所的な部分に電流が集中したり、所望の発光色が得られなかったりする。
【0150】
これに対し、本実施の形態では、上述のように画素間絶縁膜42において、開口H2を画素領域S1,S2の双方に共通して設け、境界B1からリブ110に向かって下地層41の厚みを段階的に変化させてなる雛壇構造st1,st2を有している。これにより、画素領域S1への斜方蒸着の際には、例えば図35(A)に示したように、角度方向D1に沿って有機材料を放出する蒸着源(図示せず)に対し、影となる部分が生じない。このため、画素領域S1では、下部電極11上に、略均一な厚みで有機材料44aを堆積させることができる。あるいは、画素領域S2への斜方蒸着の際には、図35(B)に示したように、角度方向D2に沿って有機材料を放出する蒸着源(図示せず)に対し、影となる部分が生じない。このため、画素領域S2においても、下部電極11上に、略均一な厚みで有機材料44bを堆積させることができる。よって、斜方蒸着時において、ケラレの発生を抑制し、略均一な厚みで有機材料の成膜を行うことができる。これにより、上記実施の形態等で説明した場合(下部電極11および駆動基板10の各表面が同一面を形成する場合)と同等の効果を得ることができる。
【0151】
<変形例3>
上記第4の実施の形態では、斜方蒸着の対象となる画素領域S1,S2において、下部電極11のエッジが露出した構成となっている。このため、例えば、高精細の有機ELディスプレイを作製する場合等、隣接画素間の距離が非常に近くなる場合には、画素領域S1,S2間において、発光層等の有機層を通じてリーク電流が発生することも考えられる。このようなリーク電流は、発光特性に影響を与えるために、できるだけ抑制されることが望ましい。
【0152】
そこで、図36に示したように、画素領域S1,S2間の境界B1付近にリーク防止絶縁膜45を設けてもよい。リーク防止絶縁膜45は、例えば絶縁性を有するリブ(突起物)であり、例えば画素間絶縁膜42と同様の材料により構成されている。このリーク防止絶縁膜45は、そのアスペクト比(厚みおよび幅の比)が、蒸着源側からみて下部電極11上に死角となる領域が形成されないような範囲に設定されていることが望ましい。リーク防止絶縁膜45に起因して生じるケラレの影響が下部電極11上へ及ばないようにするためである。このようなリーク防止絶縁膜45は、例えば画素間絶縁膜42と同一工程においてパターニング形成することもできる。
【0153】
これにより、本変形例においても、画素領域S1への斜方蒸着の際には、例えば図37(A)に示したように、角度方向D1に沿って有機材料を放出する蒸着源(図示せず)に対し、影となる部分が生じない。このため、画素領域S1では、下部電極11上に、略均一な厚みで有機材料46aを堆積させることができる。あるいは、画素領域S2への斜方蒸着の際には、図35(B)に示したように、角度方向D2に沿って有機材料を放出する蒸着源(図示せず)に対し、影となる部分が生じない。このため、画素領域S2においても、下部電極11上に、略均一な厚みで有機材料46bを堆積させることができる。よって、斜方蒸着時において、ケラレの発生を抑制し、略均一な厚みで有機材料の成膜を行うことができる。加えて、本変形例では、画素領域S1,S2間にリーク防止絶縁膜45が設けられていることにより、画素領域S1,S2間でのリーク電流の発生を抑制することができ、発光特性の劣化を防ぐことができる。
【0154】
尚、上記変形例3では、画素領域S1,S2間に、リーク防止絶縁膜45(リブ)を設けるようにしたが、画素間の絶縁が可能となる構成であれば、特にリブに限定されない。例えば、有機材料のパターニングに影響が出ない範囲で溝を形成してもよいし、あるいは画素間絶縁膜42とは異なる絶縁材料よりなる構造物を設けるようにしてもよい。
【0155】
<変形例4>
図38は、上記第4の実施の形態の変形例(変形例4)に係る基板構成を表したものである。本変形例では、絶縁膜42aがリブ110と下部電極11との間隙を埋め込むように形成されている。これらの絶縁膜42aおよび下部電極11によって、駆動基板10上に雛壇構造st1,st2が形成されている。絶縁膜42aは、例えばポリイミド、アクリル系樹脂またはノボラック系樹脂等の有機絶縁膜、あるいは酸化ケイ素または窒化ケイ素等の無機絶縁膜により構成されている。
【0156】
このように、リブ110と下部電極11との間隙を埋めるように絶縁膜42aを形成するようにしてもよく、この場合であっても、上記第4の実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0157】
尚、上記変形例4では、下部電極11とリブ110とが離隔して設けられた場合を例示したが、図39に示したように、これらが隣接して配置されていてもよい。この場合には、下部電極11とリブ110との隣接する角部に絶縁膜42aを形成することにより、雛壇構造st1を形成することができる。
【0158】
[表示装置1〜3の全体構成、画素回路構成]
次に、上記第1〜3の実施の形態に係る表示装置1〜3の全体構成および画素回路構成について説明する。図33は、有機ELディスプレイとして用いられる表示装置の周辺回路を含む全体構成を表すものである。このように、例えば駆動基板10上には、有機EL素子を含む複数の画素PXLCがマトリクス状に配置されてなる表示領域30が形成され、この表示領域30の周辺に、信号線駆動回路としての水平セレクタ(HSEL)31と、走査線駆動回路としてのライトスキャナ(WSCN)32と、電源線駆動回路としての電源スキャナ(DSCN)33とが設けられている。
【0159】
表示領域30において、列方向には複数(整数n個)の信号線DTL1〜DTLnが配置され、行方向には、複数(整数m個)の走査線WSL1〜WSLmおよび電源線DSL1〜DSLmがそれぞれ配置されている。また、各信号線DTLと各走査線WSLとの交差点に、各画素PXLC(R、G、Bに対応する画素のいずれか1つ)が設けられている。各信号線DTLは水平セレクタ31に接続され、この水平セレクタ31から各信号線DTLへ映像信号が供給されるようになっている。各走査線WSLはライトスキャナ32に接続され、このライトスキャナ32から各走査線WSLへ走査信号(選択パルス)が供給されるようになっている。各電源線DSLは電源スキャナ33に接続され、この電源スキャナ33から各電源線DSLへ電源信号(制御パルス)が供給されるようになっている。
【0160】
図34は、画素PXLCにおける具体的な回路構成例を表したものである。各画素PXLCは、有機EL素子3Dを含む画素回路40を有している。この画素回路40は、サンプリング用トランジスタ3Aおよび駆動用トランジスタ3Bと、保持容量素子3Cと、有機EL素子3Dとを有するアクティブ型の駆動回路である。
【0161】
サンプリング用トランジスタ3Aは、そのゲートが対応する走査線WSLに接続され、そのソースおよびドレインのうちの一方が対応する信号線DTLに接続され、他方が駆動用トランジスタ3Bのゲートに接続されている。駆動用トランジスタ3Bは、そのドレインが対応する電源線DSLに接続され、ソースが有機EL素子3Dのアノードに接続されている。また、この有機EL素子3Dのカソードは、接地配線3Hに接続されている。なお、この接地配線3Hは、全ての画素PXLCに対して共通に配線されている。保持容量素子3Cは、駆動用トランジスタ3Bのソースとゲートとの間に配置されている。
【0162】
サンプリング用トランジスタ3Aは、走査線WSLから供給される走査信号(選択パルス)に応じて導通することにより、信号線DTLから供給される映像信号の信号電位をサンプリングし、保持容量素子3Cに保持するものである。駆動用トランジスタ3Bは、所定の第1電位(図示せず)に設定された電源線DSLから電流の供給を受け、保持容量素子3Cに保持された信号電位に応じて、駆動電流を有機EL素子3Dへ供給するものである。有機EL素子3Dは、この駆動用トランジスタ3Bから供給された駆動電流により、映像信号の信号電位に応じた輝度で発光するようになっている。
【0163】
このような回路構成では、走査線WSLから供給される走査信号(選択パルス)に応じてサンプリング用トランジスタ3Aが導通することにより、信号線DTLから供給された映像信号の信号電位がサンプリングされ、保持容量素子3Cに保持される。また、上記第1電位に設定された電源線DSLから駆動用トランジスタ3Bへ電流が供給され、保持容量素子3Cに保持された信号電位に応じて、駆動電流が有機EL素子3D(赤色、緑色および青色の各有機EL素子)へ供給される。そして、各有機EL素子3Dは、供給された駆動電流により、映像信号の信号電位に応じた輝度で発光する。これにより、表示装置において、映像信号に基づく映像表示がなされる。
【0164】
<適用例>
以下、上記のような表示装置1〜3の電子機器への適用例について説明する。表示装置1〜3は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなどのあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。言い換えると、表示装置1〜3は、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0165】
(モジュール)
上記表示装置は、例えば図35に示したようなモジュールとして、後述の適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板10の一辺に、封止用基板50から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、水平セレクタ31、ライトスキャナ32および電源スキャナ33の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。この外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0166】
(適用例1)
図36は、テレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300が表示装置1〜3に相当する。
【0167】
(適用例2)
図37は、デジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、この表示部420が表示装置1〜3に相当する。
【0168】
(適用例3)
図38は、ノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、この表示部530が表示装置1〜3に相当する。
【0169】
(適用例4)
図39は、ビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有している。この表示部640が表示装置1〜3に相当する。
【0170】
(適用例5)
図40は、携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そして、これらのうちのディスプレイ740またはサブディスプレイ750が、表示装置1〜3に相当する。
【0171】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、本発明のキャリアブロック層として、電子ブロック機能を有する電子ブロック層を用いた場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、正孔ブロック機能を有する正孔ブロック層を用いるようにしてもよい。
【0172】
また、上記実施の形態等では、リブ等の突状部材を使用して斜方蒸着を行う場合を例に挙げて説明したが、必ずしもそのような突状部材を基板上に形成する必要はなく、蒸着方向に応じて特定の画素領域をマスクすることが可能なシャドーマスクを使用すればよい。
【0173】
また、上記実施の形態では、有機発光層以外の有機層の一例として、R,G,Bの3種の画素の選択的な画素に電子ブロック層や膜厚調整層を設けた例について説明したが、これらの層を設ける画素は、上述のものに限定されず、また全ての画素に設けるようにしてもよい。
【0174】
更に、本発明における有機積層膜は、上記実施の形態等で説明した有機積層膜に限定されず、更に他の層を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0175】
1〜3…表示装置、10R,10G,10B,20R,20G,20B,30R,30G,30B…画素、1b,10…駆動基板、11…下部電極、12R,12G,12B,22R,22G,22B,32R,32G,32B…有機積層膜、13…正孔輸送層、14R,33R…赤色発光層、14G,33G…緑色発光層、14B,33B…青色発光層、15G…緑用電子ブロック層、15B…青用電子ブロック層、16…上部電極、17…保護膜、18…接着層、19…封止基板、21G…緑用膜厚調整層、21B…青用膜厚調整層、31G…緑用正孔輸送層、31R…赤用正孔輸送層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、互いに異なる色光を発する複数種類の画素を有し、
各画素は、
1または2以上の有機発光層と、前記有機発光層以外の他の有機層とを含み、前記他の有機層の層構造が前記画素の種類毎に異なる有機積層膜と、
前記有機積層膜を挟み込む第1電極および第2電極と
を備えた表示装置。
【請求項2】
前記複数種類の画素間の選択的な領域に突状部材が配設されている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記複数種類の画素は、赤(R)画素、緑(G)画素および青(B)画素であり、
前記有機積層膜として、
前記赤画素は、赤色発光層および青色発光層を少なくとも含み、
前記緑画素は、赤色発光層、緑色発光層および青色発光層と、緑用キャリアブロック層とを少なくとも含み、
前記青画素は、赤色発光層および青色発光層と、青用キャリアブロック層とを少なくとも含む
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記基板側から順に、
前記画素毎に配設された前記第1電極と、
前記赤画素、前記緑画素および前記青画素に共通して設けられた赤色発光層と、
前記緑画素に選択的に配置された緑用キャリアブロック層および緑色発光層と、
前記青画素に選択的に配置された青用キャリアブロック層と、
前記赤画素、前記緑画素および前記青画素に共通して設けられた青色発光層と、
前記赤画素、前記緑画素および前記青画素に共通して設けられた第2電極と
を備えた請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記複数種類の画素は、赤(R)画素、緑(G)画素および青(B)画素であり、
前記有機積層膜として、
前記赤画素は、赤色発光層、緑色発光層および青色発光層を少なくとも含み、
前記緑画素は、赤色発光層、緑色発光層および青色発光層と、緑用キャリアブロック層とを少なくとも含み、
前記青画素は、赤色発光層、緑色発光層および青色発光層と、青用キャリアブロック層とを少なくとも含む
請求項2に記載の表示装置。
【請求項6】
前記基板側から順に、
前記画素毎に配設された前記第1電極と、
前記赤画素、前記緑画素および前記青画素に共通して設けられた赤色発光層と、
前記緑画素に選択的に配置された緑用キャリアブロック層と、
前記赤画素、前記緑画素および前記青画素に共通して設けられた緑色発光層と、
前記青画素に選択的に配置された青用キャリアブロック層と、
前記赤画素、前記緑画素および前記青画素に共通して設けられた青色発光層と、
前記赤画素、前記緑画素および前記青画素に共通して設けられた第2電極と
を備えた請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記赤画素、前記緑画素および前記青画素はそれぞれ、前記第1電極および前記第2電

極と前記有機積層膜とによる光共振器構造を有し、
前記赤画素、前記緑画素および前記青画素のうちの選択的な画素に、前記有機積層膜の一部として膜厚調整層が設けられている
請求項3に記載の表示装置。
【請求項8】
前記基板側から順に、
前記画素毎に配設された前記第1電極と、
前記緑画素に選択的に配置された緑用膜厚調整層および前記青画素に選択的に配置された青用膜厚調整層と、
前記赤画素、前記緑画素および前記青画素に共通して設けられた赤色発光層と、
前記緑画素に選択的に配置された緑用キャリアブロック層および緑色発光層と、
前記青画素に選択的に配置された青用キャリアブロック層と、
前記赤画素、前記緑画素および前記青画素に共通して設けられた青色発光層と、
前記赤画素、前記緑画素および前記青画素に共通して設けられた第2電極と
を備えた請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記緑用キャリアブロック層および前記青用キャリアブロック層は、正孔輸送材料から構成されている
請求項3に記載の表示装置。
【請求項10】
前記緑用膜厚調整層および前記青用膜厚調整層は、正孔輸送材料から構成されている
請求項8に記載の表示装置。
【請求項11】
前記基板側から順に、
前記画素毎に配設された前記第1電極と、
前記緑画素に選択的に配置された緑用正孔輸送層および緑色発光層と、
前記赤画素に選択的に配置された赤用正孔輸送層および赤色発光層と、
前記赤画素、前記緑画素および前記青画素に共通して設けられた青色発光層と、
前記赤画素、前記緑画素および前記青画素に共通して設けられた第2電極と
を備え、
前記緑色発光層および赤色発光層の膜厚が、前記青色発光層よりも薄く形成されている
請求項2に記載の表示装置。
【請求項12】
前記基板が絶縁膜によって平坦化された駆動基板であると共に、前記第1電極が前記画素毎に配設され、
前記第1電極の表面が前記絶縁膜の表面と同一面をなすように設けられるか、または、
前記有機層よりも下層に設けられると共に前記第1電極を含む下地層の厚みが前記突状部材へ近づくに従って段階的に大きくなるように構成されている
請求項2に記載の表示装置。
【請求項13】
基板上に互いに異なる色光を発する複数種類の画素を形成する際に、
各画素領域において、
基板上に第1電極を形成する工程と、
1または2以上の有機発光層と、前記有機発光層以外の他の有機層とを含み、前記他の有機層の層構造が前記画素の種類毎に異なる有機積層膜を形成する工程と、
前記有機積層膜を形成した後、第2電極を形成する工程と
を含む表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記基板上の複数種類の画素間の選択的な領域に突状部材を形成し、
前記突状部材を利用した斜方蒸着により、前記有機積層膜の少なくとも一部を形成する
請求項13に記載の表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記有機積層膜を形成する工程では、
赤(R)画素、緑(G)画素および青(B)画素の全面に渡って赤色発光層を形成するステップと、
前記赤色発光層を形成した後、前記緑画素に緑用キャリアブロック層を斜方蒸着により形成するステップと、
前記緑用キャリアブロック層上に緑色発光層を斜方蒸着により形成するステップと、
前記緑色発光層を形成した後、前記青画素に選択的に青用キャリアブロック層を斜方蒸着により形成するステップと、
前記青用キャリアブロック層を形成した後、前記赤画素、前記緑画素および前記青画素の全面に渡って青色発光層を形成するステップと
を含む請求項14に記載の表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記有機積層膜を形成する工程では、
赤(R)画素、緑(G)画素および青(B)画素の全面に渡って赤色発光層を形成するステップと、
前記赤色発光層を形成した後、前記緑画素に緑用キャリアブロック層を斜方蒸着により形成するステップと、
前記緑用キャリアブロック層を形成した後、前記赤画素、前記緑画素および前記青画素の全面に渡って緑色発光層を形成するステップと、
前記緑色発光層を形成した後、前記青画素に選択的に青用キャリアブロック層を斜方蒸着により形成するステップと、
前記青用キャリアブロック層を形成した後、前記赤画素、前記緑画素および前記青画素の全面に渡って青色発光層を形成するステップと
を含む請求項14に記載の表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記有機積層膜を形成する工程では、
前記赤色発光層を形成するステップの前に、
前記緑画素に緑用膜厚調整層を斜方蒸着により形成するステップと、
前記青画素に青用膜厚調整層を斜方蒸着により形成するステップと
を含む請求項15または16に記載の表示装置の製造方法。
【請求項18】
前記有機積層膜を形成する工程では、
緑(G)画素に緑用正孔輸送層を斜方蒸着により形成するステップと、
前記緑用正孔輸送層上に緑色発光層を形成するステップと、
赤(R)画素に赤用正孔輸送層を斜方蒸着により形成するステップと、
前記赤用正孔輸送層上に赤色発光層を形成するステップと、
前記緑色発光層および前期赤色発光層を形成した後、前記赤画素、前記緑画素および青(B)画素の全面に渡って青色発光層を形成するステップとを含み、
前記緑色発光層および赤色発光層の膜厚を、前記青色発光層よりも薄く形成する
請求項14に記載の表示装置の製造方法。
【請求項19】
前記緑色発光層を形成するステップの後、前記赤色正孔輸送層を形成するステップおよび前記赤色発光層を形成するステップを行う
請求項18に記載の表示装置の製造方法。
【請求項20】
基板上に、互いに異なる色光を発する複数種類の画素を有し、
前記複数種類の画素はそれぞれ、
1または2以上の有機発光層と、前記有機発光層以外の他の有機層とを含み、前記他の有機層の層構造が前記画素の種類毎に異なる有機積層膜と、
前記有機積層膜を挟み込む第1電極および第2電極と
を有する表示装置を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【公開番号】特開2012−114073(P2012−114073A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141749(P2011−141749)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】