説明

表示装置およびその製造方法

【課題】材料を帯状に塗布することによって形成された導電層を備え、画素間のクロストークおよび短絡が抑制された表示装置、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の表示装置では、複数の発光素子30が行方向および列方向に整列するようにマトリックス状に配置されている。この表示装置は、ガラス基板11と、列方向に並ぶ複数の発光素子30の列間に配置されるように形成された隔壁15と、2つの隔壁15の間に配置された陽極12と、陽極12上に積層され導電性を有する材料からなる導電層13と、導電層13上に積層され発光層22を含む有機層20と、有機層20上に積層された陰極14とを含む。隔壁15の行方向の断面は、ガラス基板11側から上方に向かって逆テーパ形状を有している。導電層13は、行方向に沿って複数の帯状に形成された上記材料からなる層が隔壁15によって分断されることによって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子を代表とする電流駆動型の発光素子を用いた表示装置、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代のFPD(Flat Panal Display)の候補として、有機EL素子を用いたディスプレイが注目されている。
【0003】
有機ELディスプレイは、一般的に、以下の方法で作製される。まず、基板上に、パターニングされた陽極(アノード)を形成する。次に、陽極上に、ホール注入層および発光層といった有機層を形成する。低分子材料からなる有機層は、一般的に真空蒸着法によって形成される。一方、高分子材料からなる有機層は、スピンコート法やインクジェット法といった塗布法によって形成される。
【0004】
インクジェット法は、有機層の塗り分けが必要な場合に選択される。高分子材料からなるホール注入層およびホール輸送層を用いる場合、一般的に、それらの層はインクジェット法によって形成される。その後、陰極(カソード)を形成し、最後に封止を行うことによって有機ELディスプレイが得られる。
【0005】
高分子材料からなる有機層の塗り分け方法として、インクジェット法以外にも、凸版印刷法、凹版印刷法、ロール印刷法といった、様々な印刷法の適用が検討されている(特許文献1および2)。有機層を帯状に印刷する方法は、インクジェット法のように1画素毎に印刷する方法と比べて、有機層の膜厚制御が容易である。そのため、有機層を帯状に印刷する方法は、画素ごとの特性のバラツキを小さくできるというメリットを有する。
【特許文献1】特開2003―59655号公報
【特許文献2】米国特許第7、091、660号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、導電性を有するホール注入層を帯状に形成する場合、隣接する画素間でクロストークが発生するという問題がある。この問題は、導電性が高いホール注入層を用いる場合に特に顕著になる。このような問題を回避するためには、それらの層をインクジェット法によって画素ごとに形成する必要があるが、それでは生産性が低下し、画素ごとの特性のバラツキが大きくなるという問題がある。
【0007】
このような状況において、本発明は、材料を帯状に塗布することによって形成された導電層を備え、画素間のクロストークおよび短絡が抑制された表示装置を提供することを目的の1つとする。また、本発明は、そのような表示装置の製造方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の表示装置は、複数の発光素子が行方向および列方向に整列するようにマトリックス状に配置されている表示装置であって、基板と、前記列方向に並ぶ前記複数の発光素子の列間に配置されるように前記基板上に形成された複数の隔壁と、隣接する2つの前記隔壁の間に配置された陽極と、前記陽極上に積層され導電性を有する材料からなる導電層と、前記導電層上に積層され発光層を含む有機層と、前記有機層上に積層された陰極とを含み、前記隔壁の前記行方向の断面は、前記基板側から上方に向かって逆テーパ形状を有しており、前記導電層は、前記行方向に沿って複数の帯状に形成された前記材料からなる層が前記隔壁によって分断されることによって形成されている。
【0009】
なお、複数の発光素子がマトリックス状に配置された表示装置において、いずれの方向を列方向とするかは相対的な問題であるが、この明細書では、後述する導電層(A)が帯状に形成される方向を行方向と定義し、導電層(A)と直交するように形成される隔壁の方向を列方向と定義する。また、この明細書において、「要素Xが要素Yの上に積層されている」とは、要素Xが要素Y上に直接積層されている場合に加え、要素Xが他の層を挟んで要素Yの上方に積層されている場合を含む。
【0010】
また、表示装置を製造するための本発明の方法は、複数の発光素子が行方向および列方向に整列するようにマトリックス状に配置されている表示装置の製造方法であって、(i)前記列方向に並ぶ前記複数の発光素子の列間に配置される隔壁と、隣接する2つの前記隔壁の間に配置された陽極とを、基板上に形成する工程と、(ii)導電性を有する材料を、前記隔壁と直交するように帯状に塗布することによって、前記材料からなり前記隔壁によって分断された導電層を前記陽極上に積層する工程とを含み、前記隔壁の前記行方向の断面は、前記基板側から上方に向かって逆テーパ形状を有している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の表示装置において、陽極と発光層との間に配置される導電層は、隔壁と直交する方向に帯状に形成された導電層が隔壁によって分断されることによって形成されている。当該導電層が隔壁によって発光素子ごとに分断されているため、隣接する発光素子間のクロストークや短絡が抑制されている。そのため、本発明によれば、表示品位および生産性が高い表示装置が得られる。また、本発明の製造方法によれば、表示品位が高い表示装置を生産性よく製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について例を挙げて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。以下の説明では、特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。
【0013】
[表示装置]
本発明の表示装置は、電流駆動型の発光素子を用いた表示装置であり、典型的には、有機EL素子を用いた表示装置である。本発明の表示装置では、複数の発光素子が行方向および列方向に整列するようにマトリックス状に配置されている。この表示装置は、基板、複数の隔壁(第1の隔壁)、陽極、導電層、有機層、および陰極を備える。1つの発光素子は、1つの画素または1つのサブ画素として機能する。
【0014】
基板の材料に限定はない。基板側から画像を表示する場合、ガラス、石英、透明なプラスチックといった透明な材料からなる基板が用いられる。アクティブマトリクス型の表示装置の場合には、基板上に、発光素子を駆動するための薄膜トランジスタが発光素子ごとに形成される。
【0015】
隔壁は、列方向に並ぶ複数の発光素子の列間に配置されるように基板上に形成される。隔壁の行方向の断面は、基板側から上方(基板とは離れる側)に向かって逆テーパ形状を有している。そのような断面形状は、帯状に形成される導電層を分断するために必要である。隔壁の断面形状の詳細については、後述する。隔壁の材料は、少なくとも表面が絶縁性であればよく、特に限定はないが、逆テーパ形状の断面を実現できる材料が選択される。隔壁の材料としては、たとえば、感光性のポリイミド材料、アクリル材料等の合成樹脂が挙げられる。
【0016】
陽極は、隣接する2つの隔壁の間に配置されている。陽極は、ホールを注入するための電極である。基板側から光を取り出すボトムエミッション構造の場合、陽極の材料として、ITOなど、仕事関数が高い透光性の材料が選択される。陰極側から光を取り出すトップエミッション構造の場合には、AlやAgといった金属からなる反射層を含む陽極が用いられる。たとえば、陽極として、金属層の上にITO層が積層された多層膜を用いることができる。
【0017】
導電層(以下、「導電層(A)」という場合がある)は、陽極上に積層されており、導電性を有する材料(以下、「材料(B)」という場合がある)からなる。なお、材料(B)は、全体として導電性を有すればよく、導電性を有する材料と導電性を有さない材料の混合物であってもよい。材料(B)は、有機物であってもよいし、無機物であってもよいし、それらの混合物であってもよい。
【0018】
導電層(A)は、ホール注入層および/またはホール輸送層である。本発明の好ましい一例では、導電層(A)はホール注入層である。導電層(A)は、行方向に沿って複数の帯状に形成された材料(B)からなる層が、隔壁によって分断されることによって形成されている。すなわち、導電層(A)は、隔壁と直交する方向に形成された層が、隔壁によって分断されることによって形成されている。この構成によれば、材料(B)を帯状に塗布することによって、発光素子ごとに分断された導電層(A)を形成できる。導電層(A)の厚さは、たとえば50nm〜80nmの範囲にある。
【0019】
有機層は、導電層(A)上に積層されており、発光層を含む。有機層は、発光層に加えて他の層を含んでもよく、たとえば電子輸送層や電子注入層を含んでもよい。また、導電層(A)がホール注入層である場合、有機層はホール輸送層を含んでもよい。
【0020】
発光層は、隣接する2つの隔壁の間に、列方向に沿って帯状に形成されていてもよい。すなわち、発光層は、列方向に配列された複数の発光素子にわたるように帯状に形成されていてもよい。発光層を帯状に形成することによって、表示品位および生産性を向上させることができる。
【0021】
陰極は、電子を注入するための電極であり、導電性の材料で形成される。基板側から光を取り出す場合、陰極は、たとえば、BaやAlといった金属からなる金属層や、BaOなどの金属酸化物層を含む。陰極側から光を取り出す場合、陰極は、たとえば、ITO層、BaやAlなどの薄い金属層、酸化タングステン層(WOx層)、有機バッファー層といった透光性の導電層を用いて形成される。陰極は、多層膜で形成されていてもよい。
【0022】
アクティブマトリクス型の表示装置の場合、通常、陽極は発光素子ごとに形成され、陰極はすべての発光素子をカバーするようにディスプレイパネルのほぼ全面に形成される。一方、パッシブマトリクス型の表示装置の場合、通常、陽極は行方向または列方向に複数の帯状に形成され、陰極は陽極と直交するように複数の帯状に形成される。
【0023】
本発明の表示装置では、隔壁上において、材料(B)によって形成された層と陰極とが接触していてもよい。この構成によれば、材料(B)によって形成された層(導電層)を陰極の一部として機能させることができる。
【0024】
材料(B)は、導電性を有する有機材料であってもよい。材料(B)の好ましい一例は、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)である。ポリエチレンジオキシチオフェンで形成された導電層(A)は、ホール注入層として機能する。ポリエチレンジオキシチオフェンは高い導電性を有するため、本発明によって得られる効果が特に大きい。
【0025】
本発明の表示装置では、上記隔壁に加えて、行方向に並ぶ複数の発光素子の行間に配置された複数の第2の隔壁をさらに備えてもよい。以下、材料(B)からなる導電層を分断するように列方向に形成されている隔壁を「第1の隔壁」と呼び、第1の隔壁と直交するように形成されている隔壁を「第2の隔壁」と呼ぶ場合がある。第2の隔壁を形成することによって、列方向に隣接する発光素子間で導電層(A)が短絡することを抑制できる。そのため、プロセスの制御が行いやすく、生産性を上げることができる。
【0026】
第2の隔壁は、第1の隔壁よりも高くてもよいし、第1の隔壁よりも低くてもよい。第2の隔壁を第1の隔壁よりも低くすることによって、導電層(A)上に形成される膜の均一性を高めることができる。
【0027】
第2の隔壁の行方向の断面形状は、基板側から上方に向かって逆テーパ形状を有していてもよいし、それ以外の形状であってもよい。
【0028】
本発明の表示装置の一例では、発光層は、赤色を発する第1の発光層と、緑色を発する第2の発光層と、青色を発する第3の発光層とを含む。この一例では、第1、第2および第3の発光層は、それぞれ、列方向に沿って帯状に形成されている。そして、第1、第2および第3の発光層の列は、行方向に繰り返し配置されている。この構成では、カラー表示が可能である。
【0029】
[表示装置の製造方法]
以下、本発明の表示装置の製造方法について説明する。この製造方法によれば、本発明の表示装置を製造できる。なお、本発明の表示装置と同様の事項については、重複する説明を省略する場合がある。
【0030】
本発明の製造方法は、複数の発光素子が行方向および列方向に整列するようにマトリックス状に配置されている表示装置の製造方法である。この製造方法は、以下の工程(i)および(ii)を含む。
【0031】
工程(i)では、列方向に並ぶ複数の発光素子の列間に配置される隔壁(第1の隔壁)と、隣接する2つの隔壁の間に配置された陽極とを、基板上に形成する。上述したように、隔壁の行方向の断面は、基板側から上方に向かって逆テーパ形状を有している。
【0032】
隔壁は、たとえば、感光性の合成樹脂を基板上に塗布したのち、隔壁を形成する部分のみを露光することによって形成できる。隔壁の断面を逆テーパ形状とする方法については、後述する実施形態1で説明する。陽極は、たとえば、スパッタリング法や蒸着法で形成できる。
【0033】
工程(ii)では、導電性を有する材料(B)を、隔壁と直交するように帯状に塗布することによって、材料(B)からなり隔壁によって分断された導電層(A)を陽極上に積層する。材料(B)は、通常、溶媒に溶解されて塗布される。材料(B)を帯状に塗布する方法としては、たとえば、インクジェット法、凸版印刷法、凹版印刷法、ロール印刷法、ディスペンサ描画等、様々な印刷方法が挙げられる。
【0034】
材料(B)を行方向に帯状に塗布すると、隣接する隔壁間の領域と、隔壁の上部とに層が形成される。隔壁は逆テーパ形状を有するため、隔壁間に形成された導電層(A)と、隔壁の上部に形成された導電層とは分断される。このため、行方向に隣接する発光素子間で、それぞれの導電層(A)は短絡しない。
【0035】
なお、工程(i)および(ii)以外の工程については、必要に応じて行われる。たとえば、工程(i)の前に、各発光素子を駆動するためのトランジスタおよび配線を形成する工程が行われてもよい。工程(ii)ののちには、通常、以下の工程(iii)および(iv)が行われる。工程(iii)では、導電層(A)上に発光層を含む有機層を積層する。有機層を構成する各層は、その層に応じた公知の方法で形成でき、たとえば塗布法や蒸着法で形成できる。工程(iv)では、有機層上に陰極を積層する。陰極は、たとえばスパッタリング法や真空蒸着法で形成できる。このようにして、各発光素子を構成する有機EL素子が形成される。有機EL素子を形成したのち、必要に応じて、有機EL素子が形成された側が封止される。
【0036】
本発明の製造方法では、工程(ii)の前に、前記行方向に並ぶ複数の発光素子の行間に配置される他の隔壁(第2の隔壁)を形成する工程をさらに含んでもよい。第2の隔壁は、列方向に形成された隔壁(第1の隔壁)と直交する方向に形成される。第2の隔壁は、たとえば感光性の合成樹脂で形成できる。第2の隔壁の列方向の断面を逆テーパ形状とする場合、第1の隔壁と同様の方法で形成できる。
【0037】
以下、本発明の表示装置およびその製造方法の例について図面を参照しながら説明する。なお、以下の図では、表示装置の一部の画素のみを示している。以下の実施形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の例について示す。アクティブマトリクス型の表示装置では、各画素が薄膜トランジスタによって駆動される。薄膜トランジスタは、基板上に形成され、その上に有機EL素子が形成されるが、以下の図面では、薄膜トランジスタの図示を省略する。なお、薄膜トランジスタは、公知の方法によって形成できる。
【0038】
[実施形態1]
実施形態1の表示装置10について、行方向の一部端面図を図1(A)に示し、列方向の一部端面図を図1(B)に示す。図1(A)の端面図は図4(K)の線IIIL−IIILにおける端面図であり、図1(B)の端面図は図4(K)の線IB−IBにおける端面図である。
【0039】
表示装置10は、ガラス基板11と、ガラス基板11上に積層された陽極12と、陽極12上に積層された導電層(ホール注入層)13と、導電層13上に積層された有機層20と、有機層20上に形成された陰極14と、ストライプ状に形成された隔壁15とを備える。有機層20は、陽極12側から順に積層された、ホール輸送層21および発光層22を含む。隔壁15上には、導電層13aが形成されている。陽極12、導電層13、有機層20および陰極14によって、発光素子30が構成される。発光素子30は、1つの画素または1つのサブ画素として機能する。
【0040】
隔壁15の行方向の断面図の例を図2(A)および図2(B)に示す。隔壁15の断面は、基板11側から上方に向かって幅が広くなっている。なお、隔壁15の断面は、全体が逆テーパ形状となっていなくてもよい。たとえば、断面の全体が逆テーパ形状となっていなくても、図2(B)に示すように、導電層を分断できる程度に逆テーパ形状となっていればよい。いずれの場合も、基板の上方から見た場合、隔壁15の下部の最も幅が狭い部分は、隔壁15の上部に遮られて見えない。そのため、隔壁15の上方から材料(B)を帯状に塗布するか、または、蒸着やスパッタなどの方法で導電層を形成した場合、材料(B)からなる導電層は、隔壁15によって分断される。そのため、本発明によれば、導電層が発光素子間で接続することによるクロストークの発生を防止できる。
【0041】
図2(B)に示す隔壁15の高さhは、たとえば0.1μm〜3μmの範囲にある。隔壁15の高さhは、導電層13の厚さdのたとえば5〜30倍(一例では10〜20倍)である。この場合において、隔壁15の行方向の断面の一例では、高さh/2よりも低い部分の幅WLは、高さh/2よりも高い位置における最も広い部分の幅Wmaxよりも小さい。幅WLは、幅Wmaxの0.2〜0.8倍の範囲にあることが好ましい。
【0042】
表示装置10の製造方法について、図3(A)〜(F)および図4(G)〜(L)に示す。なお、図3(A)は上面図であり、図3(B)は、図3(A)の線IIIB−IIIBにおける端面図である。同様に、図3(C)、図3(E)、図4(G)、図4(I)および図4(K)は上面図であり、図3(D)、図3(F)、図4(H)、図4(J)および図4(L)はそれらの端面図である。
【0043】
まず、図3(A)および(B)に示すように、ガラス基板11上に陽極12を形成する。陽極12は、ガラス基板11上に、アルミニウムや銀などからなる金属層とITO層(厚さ100nm程度)とを積層することによって形成する。陽極12は、スパッタ法で形成した後、フォトマスクを用いて露光・現像を行い、パターニングする。
【0044】
次に、図3(C)および(D)に示すように、隔壁15をストライプ状に形成する。隔壁15は、行方向に並ぶ発光素子の行間となる位置に形成される。隔壁15は、感光性の合成樹脂で形成される。具体的には、感光性の合成樹脂を塗布したのち、プリベークを行い、露光、現像してからポストベークを行い所望の形状を実現する。露光条件を調整することによって、逆テーパ形状の隔壁を容易に形成できる。その後、露光しなかった部分の合成樹脂を除去する。このようにして、断面が逆テーパ形状である隔壁15が形成される。
【0045】
次に、図3(E)および(F)に示すように、隔壁15と直交する方向(行方向)に、導電層13の材料(B)を帯状に塗布する。材料(B)は、マトリックス状に配置される複数の発光素子の、各行に対応するように帯状に塗布される。帯状に塗布された材料(B)は、隔壁15によって分断される。その結果、陽極12上に導電層13が形成され、隔壁15上に導電層13aが形成される。
【0046】
材料(B)の塗布方法として、一般的な印刷法を用いてもよく、たとえば、スクリーン印刷法、ロール印刷法、凸版印刷法、または凹版印刷法を用いてもよい。材料(B)としてポリエチレンジオキシチオフェンを使用する場合、導電層13の厚さは、たとえば30nm〜150nmの範囲にある。材料(B)としてポリエチレンジオキシチオフェンを使用する場合、通常、ポリエチレンジオキシチオフェンをポリスチレンスルフォン酸(PSS)などの溶媒に溶解して塗布する。
【0047】
次に、図4(G)、図4(H)、図4(I)および図4(J)に示すように、ホール輸送層21および発光層22を順に形成する。これらの層は、導電層13の形成方向と直行する方向、すなわち列方向に帯状に形成される。ホール輸送層21は、発光効率および寿命を改善するために形成されるが、なくてもよい。これらの層の形成方法に限定はないが、たとえば、導電層13と同様に、様々な印刷方法で形成できる。それらの層の厚さは、数10nm程度から100nm程度である。表示装置10がフルカラーの表示装置である場合、発光層22の材料として、赤色の発光材料、緑色の発光材料、および青色の発光材料が用いられる。それらの材料は、列ごとに塗り分けられる。たとえば、赤色の発光材料の列、緑色の発光材料の列、青色の発光材料の列という順序で繰り返し形成してもよい。
【0048】
最後に、図4(K)および(L)に示すように、すべての発光素子に対応するように陰極14を形成する。陰極14は、発光層22側から、バリウム層(厚さ5nm)と酸化タングステン層(50nm)とITO層(厚さ100nm)とを順に積層することによって形成する。
【0049】
このとき、陰極14は、隔壁15によって分断されないことが必要である。そのため、陰極14が隔壁15によって分断されないように、隔壁15の高さおよび陰極14の厚さを調節する。
【0050】
隔壁15上の導電層13aは、陰極14と接触する。そのため、導電層13aは陰極14の一部として機能する。これによって、陰極の抵抗値を下げることができ、表示装置の輝度ムラを改善できる。
【0051】
[実施形態2]
実施形態2では、第2の隔壁を備える表示装置の一例について説明する。実施形態2の表示装置10aについて、行方向の一部端面図を図5(A)に示し、列方向の一部端面図を図5(B)に示す。図5(A)の端面図は図7(J)の線VIIK−VIIKにおける端面図であり、図5(B)の端面図は図7(J)の線VIIL−VIILにおける端面図である。
【0052】
表示装置10aは、ガラス基板11、陽極12、導電層(ホール注入層)13、ホール輸送層21、発光層22、陰極14、第1の隔壁15および第2の隔壁16を含む。
【0053】
第1の隔壁15は、実施形態1で説明した隔壁である。第2の隔壁16は、行方向に並ぶ複数の発光素子の行間に配置されるように、行方向にストライプ状に形成されている。第2の隔壁の列方向の断面は、ガラス基板11側から上方に向かって逆テーパ形状を有している。
【0054】
第2の隔壁16の高さは、第1の隔壁15の高さよりも低い。ただし、第2の隔壁16の高さは、列方向に隣接する発光素子間で導電層13が短絡することを防止できる高さとされる。第1の隔壁15の高さは、たとえば0.1μm〜3μmの範囲にある。第2の隔壁16の高さは、たとえば0.1μm〜0.5μmの範囲にある。
【0055】
表示装置10aの製造方法を、図6(A)〜(F)および図7(G)〜(L)に示す。なお、図6(A)は上面図であり、図6(B)は図6(A)の線VIB−VIBにおける端面図であり、図6(C)は、図6(A)の線VIC−VICにおける端面図である。同様に、図6(D)、図7(G)および図7(J)は上面図であり、図6(E)、図6(F)、図7(H)、図7(I)、図7(K)および図7(L)はそれらの端面図である。
【0056】
まず、図6(A)〜6(C)に示すように、ガラス基板11上に陽極12を形成する。陽極12は、実施形態1と同様の方法で形成できる。
【0057】
次に、図6(D)〜6(F)に示すように、ガラス基板11上に、第1の隔壁15および第2の隔壁16を形成する。第1の隔壁15および第2の隔壁16は、たとえば感光性の合成樹脂で形成できる。これらは、実施形態1と同様の方法で形成される。この場合、露光プロセスにおいてハーフトーンマスク、またはグレートーンマスクを使用してもよい。なお、第1の隔壁15の材料と第2の隔壁16の材料とは、同じであってもよいし異なってもよい。
【0058】
次に、図7(G)〜7(I)に示すように、導電層13の材料(B)を行方向に帯状に塗布する。形成される導電層は第1の隔壁15によって分断されるため、導電層13と導電層13aとが形成される。第1の隔壁15によって、隣接する発光素子間で導電層13が分離されるため、クロストークを抑制できる。また、表示装置10aでは、第2の隔壁16が存在するため、列方向に隣接する2つの発光素子間において導電層13が短絡することを防止できる。そのため、プロセスの制御が行いやすく生産性を上げることができる。
【0059】
次に、図7(J)〜7(L)に示すように、ホール輸送層21、発光層22および陰極14を形成する。ホール輸送層21、発光層22および陰極14は、実施形態1と同様の方法で形成される。このようにして、表示装置10aが製造される。
【0060】
[実施形態3]
実施形態3では、第2の隔壁を備える表示装置の他の一例について説明する。実施形態3の表示装置10bについて、行方向の一部端面図を図8(A)に示し、列方向の一部端面図を図8(B)に示す。図8(A)の端面図は図10(J)の線XL−XLにおける端面図であり、図8(B)の端面図は図10(J)の線XK−XKにおける端面図である。
【0061】
表示装置10bは、ガラス基板11、陽極12、導電層(ホール注入層)13、ホール輸送層21、発光層22、陰極14、第1の隔壁15および第2の隔壁16aを含む。
【0062】
第1の隔壁15は、実施形態1で説明した隔壁である。第2の隔壁16aは、行方向に並ぶ複数の発光素子の行間に配置されるように、行方向にストライプ状に形成されている。第2の隔壁16aの列方向の断面は逆テーパ形状ではない。第2の隔壁16aの高さは、第1の隔壁15の高さよりも高い。
【0063】
表示装置10bの製造方法を、図9(A)〜9(F)および図10(G)〜10(L)に示す。なお、図9(A)は上面図であり、図9(B)は図9(A)の線IXB−IXBにおける端面図であり、図9(C)は、図9(A)の線IXC−IXCにおける端面図である。同様に、図9(D)、図10(G)、図10(J)は上面図であり、図9(E)、図9(F)、図10(H)、図10(I)、図10(K)および図10(L)はそれらの端面図である。
【0064】
まず、図9(A)〜9(C)に示すように、ガラス基板11上に陽極12を形成する。陽極12は、実施形態1と同様の方法で形成できる。
【0065】
次に、図9(D)〜9(F)に示すように、ガラス基板11上に、第1の隔壁15および第2の隔壁16aを形成する。第1の隔壁15と第2の隔壁16aは、たとえば感光性の合成樹脂で形成できる。第1の隔壁15、実施形態1と同様の方法で形成される。第2の隔壁16aは、断面が逆テーパ形状ではないため、一般的な露光方法で形成できる。
【0066】
次に、図10(G)〜10(I)に示すように、導電層13の材料(B)を行方向に帯状に塗布する。形成される導電層は第1の隔壁15によって分断されるため、導電層13と導電層13aとが形成される。
【0067】
次に、図10(J)〜10(L)に示すように、ホール輸送層21、発光層22および陰極14を形成する。ホール輸送層21、発光層22および陰極14は、実施形態1と同様の方法で形成される。ただし、図10(J)〜10(L)に示すように、実施形態3では、ホール輸送層21および発光層22は、導電層13と同様に行方向に帯状に形成される。このようにして、表示装置10bが製造される。
【0068】
第2の隔壁16aは、断面が逆テーパ形状ではないため、実施形態2の第2の隔壁16aに比べて容易に形成できる。
【0069】
実施形態1のアクティブマトリクス型の表示装置10において、陽極12は、基板11上に形成された薄膜トランジスタ(図示せず)のドレイン電極に接続される。薄膜トランジスタは、図11に示すように、ゲートドライバ111およびソースドライバ112によって駆動される。その結果、発光素子ごとの発光が制御される。実施形態2および実施形態3の表示装置についても、同様の方法で制御できる。
【0070】
上記実施形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の例について説明したが、本発明の表示装置は、パッシブマトリクス型の表示装置であってもよい。パッシブマトリクス型の表示装置を製造する場合には、陽極と陰極とを、それぞれ、列方向および行方向に帯状に形成する。各発光素子は、陽極と陰極との交点に配置される。そして、陽極と陰極とにそれぞれのドライバによって電圧を印加することによって、各発光素子が駆動される。
【0071】
なお、別の観点では、本発明の表示装置は、基板上に陰極と導電層(電子注入層および/または電子輸送層)とが形成されており、その導電層が、第1の隔壁によって分断されているものであってもよい。この観点の表示装置は、有機EL素子を構成する各層の積層順序が上記表示装置と逆である。この観点の表示装置は、複数の発光素子が行方向および列方向に整列するようにマトリックス状に配置されている表示装置である。この表示装置は、基板と、列方向に並ぶ複数の発光素子の列間に配置されるように基板上に形成された複数の隔壁と、隣接する2つの前記隔壁の間に形成された電極(陽極または陰極)と、その電極上に積層され導電性を有する材料からなる導電層と、その導電層上に形成され発光層を含む有機層と、その有機層上に積層された陰極とを含む。隔壁の行方向の断面は、基板側から上方に向かって逆テーパ形状を有している。上記導電層は、行方向に沿って複数の帯状に形成された材料からなる層が隔壁によって分断されることによって形成されている。
【0072】
また、本発明は、別の観点では、有機EL素子などの発光素子の製造方法、およびそれによって製造される発光素子に関する。具体的には、本発明の製造方法によって基板上に複数の発光素子を形成したのち、素子ごとに分離することによって、発光素子を製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、様々な表示装置に適用でき、たとえば、コンピュータおよび家電などに用いられるディスプレイに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の表示装置の一例について示す、(a)端面図の一例、および(b)端面図の他の一例である。
【図2】本発明の表示装置で用いられる隔壁について示す、(a)一例の断面図、および(b)他の一例の断面図である。
【図3】図1の表示装置の製造方法の一部を示す工程図である。
【図4】図3の工程に続く工程の一部を示す工程図である。
【図5】本発明の表示装置の他の一例について示す、(a)端面図の一例、および(b)端面図の他の一例である。
【図6】図5の表示装置の製造方法の一部を示す工程図である。
【図7】図6の工程に続く工程を示す工程図である。
【図8】本発明の表示装置のその他の一例について示す、(a)端面図の一例、および(b)端面図の他の一例である。
【図9】図8の表示装置の製造方法の一部を示す工程図である。
【図10】図9の工程に続く工程を示す工程図である。
【図11】図1に示した表示装置の駆動方法を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0075】
10、10a、10b 表示装置
11 ガラス基板
12 陽極
13 導電層
14 陰極
15 隔壁(第1の隔壁)
16、16a 第2の隔壁
20 有機層
21 ホール輸送層
22 発光層
30 発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子が行方向および列方向に整列するようにマトリックス状に配置されている表示装置であって、
基板と、
前記列方向に並ぶ前記複数の発光素子の列間に配置されるように前記基板上に形成された複数の隔壁と、
隣接する2つの前記隔壁の間に配置された陽極と、
前記陽極上に積層され導電性を有する材料からなる導電層と、
前記導電層上に積層され発光層を含む有機層と、
前記有機層上に積層された陰極とを含み、
前記隔壁の前記行方向の断面は、前記基板側から上方に向かって逆テーパ形状を有しており、
前記導電層は、前記行方向に沿って複数の帯状に形成された前記材料からなる層が前記隔壁によって分断されることによって形成されている表示装置。
【請求項2】
前記発光層は、隣接する2つの前記隔壁の間に、前記列方向に沿って帯状に形成されている請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記隔壁上において、前記材料からなる層と前記陰極とが接触している請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記材料が、ポリエチレンジオキシチオフェンである請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記隔壁は第1の隔壁であり、
前記行方向に並ぶ前記複数の発光素子の行間に配置された複数の第2の隔壁をさらに備える請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第2の隔壁の前記列方向の断面は、前記基板側から上方に向かって逆テーパ形状を有している請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記発光層は、赤色を発する第1の発光層と、緑色を発する第2の発光層と、青色を発する第3の発光層とを含み、
前記第1、第2および第3の発光層は、それぞれ、前記列方向に沿って帯状に形成されており、
前記第1、第2および第3の発光層は、前記行方向に繰り返し配置されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
複数の発光素子が行方向および列方向に整列するようにマトリックス状に配置されている表示装置の製造方法であって、
(i)前記列方向に並ぶ前記複数の発光素子の列間に配置される隔壁と、隣接する2つの前記隔壁の間に配置された陽極とを、基板上に形成する工程と、
(ii)導電性を有する材料を、前記隔壁と直交するように帯状に塗布することによって、前記材料からなり前記隔壁によって分断された導電層を前記陽極上に積層する工程とを含み、
前記隔壁の前記行方向の断面は、前記基板側から上方に向かって逆テーパ形状を有している、表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記材料が、ポリエチレンジオキシチオフェンである請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記(ii)の工程の前に、前記行方向に並ぶ前記複数の発光素子の行間に配置される他の隔壁を前記基板上に形成する工程をさらに含む請求項8または9に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−170115(P2009−170115A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3680(P2008−3680)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】