説明

表示装置および電子機器

【課題】発光素子の寸法が小さい場合にも、隣接するカラーフィルタを通過した光の回折による混色を抑えることが可能な表示装置およびこれを備えた電子機器を提供する。
【解決手段】複数の発光素子と、複数の発光素子に対向する透過色領域および透過色領域の一部に設けられた半透過領域を有するカラーフィルタとを備えた表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機EL(Electroluminescence)または無機ELなどの自発光型の表示装置およびこれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
フルカラー表示装置では、白色発光の発光素子を用いる場合には、カラーフィルタを用いて赤,緑および青の三原色の光を生成し、カラー画像を表示する。また、赤,緑および青の三原色の発光素子を用いる場合にも、色純度の向上を目的として、カラーフィルタを用いる場合がある。更に、コントラスト向上のため、カラーフィルタの境界には遮光性のブラックマトリクスが設けられる。
【0003】
カラーフィルタと遮光性のブラックマトリクスとを併用する場合には、ブラックマトリクスが回折格子となり、隣接するカラーフィルタを通過した光が回折して混色を発生させる。従来では、ブラックマトリクスによる回折現象を抑制するため、ブラックマトリクスの端部から開口部に向けて光学的濃度勾配を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−8861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ブラックマトリクスの縁に光学的濃度勾配をつけることは、発光素子の寸法が小さい場合には極めて困難であるという問題があった。
【0006】
本開示の目的は、発光素子の寸法が小さい場合にも、隣接するカラーフィルタを通過した光の回折による混色を抑えることが可能な表示装置およびこれを備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による表示装置は、複数の発光素子と、複数の発光素子に対向する透過色領域および透過色領域の一部に設けられた半透過領域を有するカラーフィルタとを備えたものである。
【0008】
本開示の表示装置では、複数の発光素子の各々で発生した光は、その発光素子に対向する透過色領域を通過して取り出されるが、発生した光の一部は、隣接する透過色領域に入射する。ここでは、透過色領域の一部に半透過領域が設けられているので、隣接する透過色領域に入射した光の一部は半透過領域を通過する。よって、隣接する透過色領域を通過する光と、隣接する透過色領域および半透過領域を通過する光との間に位相差が生じ、互いに打ち消し合う。これにより、隣接する透過色領域を通過する光の回折に起因する混色が低減される。
【0009】
本開示による電子機器は、上記表示装置を備えたものである。
【0010】
本開示の電子機器では、上記表示装置によって画像表示がなされる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の表示装置、または本開示の電子機器によれば、カラーフィルタの透過色領域の一部に半透過領域を設けるようにしたので、発光素子の寸法が小さい場合にも、カラーフィルタの隣接する透過色領域を通過した光の回折による混色を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の一実施の形態に係る表示装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図3】図1に示した表示領域の概略構成を表すと共に、半透過領域の第1例を表す断面図である。
【図4】半透過領域の第2例を表す図である。
【図5】半透過領域の第3例を表す図である。
【図6】第3例の他の例を表す図である。
【図7】半透過領域の第4例を表す図である。
【図8】第4例の他の例を表す図である。
【図9】半透過領域の第5例を表す図である。
【図10】第5例の他の例を表す図である。
【図11】半透過領域の第6例を表す図である。
【図12】第6例の他の例を表す図である。
【図13】回折による混色の原理を説明するための図である。
【図14】隣接する透過色領域を通過した光の輝度を表す図である。
【図15】第1例ないし第4例の半透過領域の混色率低減効果を、図13に示した従来のブラックマトリクスを設けた場合と比較して表す図である。
【図16】第1例の半透過領域を設けた場合に、隣接する透過色領域を通過した光の輝度を、図13に示した従来のブラックマトリクスを設けた場合と比較して表す図である。
【図17】第3例の半透過領域を設けた場合に、隣接する透過色領域を通過した光の輝度を、図13に示した従来のブラックマトリクスを設けた場合と比較して表す図である。
【図18】第1例ないし第4例の半透過領域を設けた場合の色再現範囲を、図13に示した従来のブラックマトリクスを設けた場合と比較して表す図である。
【図19】図3に示した発光素子の構成を表す断面図である。
【図20】上記実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図21】上記実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す正面図および背面図である。
【図22】適用例2の外観を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本開示の一実施の形態に係る表示装置の構成を表すものである。この表示装置は、デジタル一眼レフカメラのビューファインダやヘッドマウント形ディスプレイなどに用いられる小型・高精細有機EL表示装置であり、例えば、ガラスなどの基板11の上に、後述する複数の画素10R,10G,10Bがマトリクス状に配置されてなる表示領域110が設けられたものである。表示領域110の周辺には、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が設けられている。
【0015】
表示領域110内には画素駆動回路140が設けられている。図2は、画素駆動回路140の一例を表したものである。この画素駆動回路140は、後述する第1電極32の下層に設けられたアクティブ型の駆動回路である。画素駆動回路140は、例えば、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、キャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された有機EL素子10とを有している。キャパシタCsの一方の電極は駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2の間に接続され、他方の電極は駆動トランジスタTr1および有機EL素子10との間に接続されている。
【0016】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、有機EL素子10のいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0017】
図3は、図1に示した表示領域110の一部の断面構成を表したものである。各画素10R,10G,10Bは、例えば、白色光を発生する複数の有機EL素子10と、カラーフィルタ20との組み合わせにより三原色(赤,緑および青)のいずれかの光を発生するものである。複数の有機EL素子10のピッチ(中心間距離)pは、例えば30μm以下、具体的には例えば約2μmないし3μmである。すなわち、この表示装置は、有機EL素子10の寸法が極めて小さい、いわゆるマイクロディスプレイと呼ばれるものである。なお、この表示装置上には接眼レンズ(図示せず)が設けられており、使用者は、表示装置に表示された画像を、接眼レンズを通して拡大して見るようになっている。そのため、使用者が見ることができるのは、表示装置に表示された画像のうち、接眼レンズの取り込み角の範囲内の部分のみである。
【0018】
有機EL素子10は、基板11上に行列状に配置されると共に、保護膜12により被覆されている。保護膜12上には、接着層13を間にして、ガラスなどよりなる封止用基板14が全面にわたって貼り合わせられている。この封止用基板14の基板11側の表面にカラーフィルタ20が設けられている。そのため、有機EL素子10と、カラーフィルタ20の上面(封止用基板14側の表面)との間には、例えば7μm程度の離間距離(ギャップ)Gが生じている。
【0019】
保護膜12は、例えば、厚みが0.5μmないし10μmであり、窒化ケイ素(SiN)により構成されている。接着層13は、例えば紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂により構成されている。封止用基板14は、有機EL素子10R,10G,10Bの後述する第2電極35の側に位置しており、接着層13と共に有機EL素子10R,10G,10Bを封止するものである。封止用基板14は、例えば、有機EL素子10R,10G,10Bで発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。
【0020】
カラーフィルタ20は、複数の有機EL素子10に対向する透過赤色領域21R,透過緑色領域21G,透過青色領域21B(以下、「透過色領域21」と総称する。)を有している。透過色領域21の一部には、半透過領域22が設けられている。これにより、この表示装置では、有機EL素子10R,10G,10Bの寸法が小さい場合にも、隣接する透過色領域21を通過した光の回折による混色を抑えることが可能となっている。
【0021】
透過色領域21は、有機EL素子10で発生した白色光を,赤,緑または青の色光として取り出すためのものであり、上述したように透過赤色領域21R,透過緑色領域21Gおよび透過青色領域21Bを有している。透過赤色領域21R,透過緑色領域21Gおよび透過青色領域21Bは、有機EL素子10に対応して順に配置されている。透過赤色領域21R,透過緑色領域21Gおよび透過青色領域21Bは、顔料を混入した樹脂よりなる着色層により構成され、顔料の選択により、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0022】
半透過領域22は、透過色領域21の一部に後述する半透過膜が設けられていることにより、透過色領域21の一部の透過率を可変させたものである。透過率は、半透過膜の材料、厚みなどにより調整することが可能である。
【0023】
半透過領域22は、有機EL素子10の一つから、当該有機EL素子10に対向する透過色領域21に隣接する透過色領域21(以下、単に「隣接する透過色領域21」と呼ぶ。)に入射する光の一部が半透過領域22を通過可能な位置に設けられていることが好ましい。具体的には、半透過領域22は、複数の有機EL素子10どうしの境界に対向して設けられていることが好ましい。これにより、発光面垂直方向(視野角0°方向)の光取り出しを妨げず、かつ透過色領域21の開口幅w1を大きくしつつ、光の回折に起因する混色を抑えることが可能となる。
【0024】
また、半透過領域22は、封止用基板14側から入射する外光を吸収することによりコントラストを向上させる、すなわち従来のブラックマトリクスと同様の機能も有している。
【0025】
(半透過領域22の第1例)
このような半透過領域22は、例えば図3に示したように、透過色領域21の着色層の有機EL素子10から遠い側の表面(封止用基板14側の表面)に設けられた半透過膜22Aにより構成されている。半透過膜22Aは、例えば、厚みが90nm、線幅が1.2μmであり、窒化チタン(TiN)により構成されている。この場合には、製造工程において封止用基板14に窒化チタンよりなる半透過膜22Aを直接成膜することにより、半透過領域22を容易に形成することが可能となる。
【0026】
(半透過領域22の第2例)
半透過領域22は、また、図4に示したように、透過色領域21の着色層の有機EL素子10に近い側の表面(基板11側の表面)に設けられた半透過膜22Aにより構成されていることも可能である。半透過膜22Aは、例えば、厚みが90nm、線幅が1.2μmであり、窒化チタン、または光学濃度を薄くした黒色樹脂により構成されている。
【0027】
(半透過領域22の第3例)
更に、半透過領域22は、図5に示したように、透過色領域21の着色層の有機EL素子10から遠い側の表面(封止用基板14側の表面)に設けられた第1半透過膜22Bと、この第1半透過膜22Bの表面(下面および側面)を覆う第2半透過膜22Cを有していることも可能である。第2半透過膜22Cは、第1半透過膜22Bの周囲の着色層の表面に張り出した部分22Dを有している。第1半透過膜22Bは、例えば、厚みが90nm、線幅が1.2μmであり、窒化チタンにより構成されている。第2半透過膜22Cは、例えば、厚みが30nm、線幅が1.8μmであり、窒化チタンにより構成されている。張り出した部分22Dの張り出し量d1は、透過色領域21の片側で0.3μm、両側の合計で0.6μmである。
【0028】
張り出した部分22Dの張り出し量d1は、透過色領域21の両側の合計で、第1半透過膜22Bの開口幅d2の1/4(4分の1)以下であることが好ましい。張り出し量d1がこれよりも大きくなると、透過色領域21の開口率が低下してしまうからである。
【0029】
なお、第1半透過膜22Bと第2半透過膜22Cとの積層順序は、図5に示した例に限られない。例えば、図6に示したように、半透過領域22は、透過色領域21の着色層の有機EL素子10から遠い側の表面(封止用基板14側の表面)に設けられた第2半透過膜22Cと、この第2半透過膜22Cの表面(下面)の一部に設けられた第1半透過膜22Bを有していることも可能である。第2半透過膜22Cは、第1半透過膜22Bの周囲の着色層の表面に張り出した部分22Dを有している。
【0030】
(半透過領域22の第4例)
あるいは、半透過領域22は、図7に示したように、透過色領域21の着色層の有機EL素子10から遠い側の表面(封止用基板14側の表面)に設けられた半透過膜22Eと、この半透過膜22Eの表面(下面)の一部に設けられた遮光膜22Fを有していることも可能である。半透過膜22Eは、遮光膜22Fの周囲の着色層の表面に張り出した部分22Gを有している。半透過膜22Eは、例えば、厚みが30nm、線幅が1.8μmであり、窒化チタンにより構成されている。遮光膜22Fは、例えば、厚みが160nm、線幅が1.2μmであり、チタン(Ti)により構成されている。張り出した部分22Gの張り出し量dは、透過色領域21の片側で0.3μm、両側の合計で0.6μmである。
【0031】
張り出した部分22Gの張り出し量d1は、透過色領域21の両側の合計で、遮光膜22Fの開口幅d2の1/4(4分の1)以下であることが好ましい。張り出し量d1がこれよりも大きくなると、透過色領域21の開口率が低下してしまうからである。
【0032】
なお、半透過膜22Eと遮光膜22Fとの積層順序は、図7に示した例に限られない。例えば、図8に示したように、半透過領域22は、透過色領域21の着色層の有機EL素子10から遠い側の表面(封止用基板14側の表面)に設けられた遮光膜22Fと、この遮光膜22Fの表面(下面および側面)を覆う半透過膜22Eを有していることも可能である。半透過膜22Eは、遮光膜22Fの周囲の着色層の表面に張り出した部分22Gを有している。
【0033】
(半透過領域22の第5例)
なお、第3例に示した第1半透過膜22Aおよび第2半透過膜22Bよりなる半透過領域22は、図9または図10に示したように、透過色領域21の着色層の有機EL素子10に近い側の表面(基板11側の表面)に設けられていることも可能である。
【0034】
(半透過領域22の第6例)
また、第4例に示した半透過膜22Eおよび遮光膜22Fよりなる半透過領域22は、図11または図12に示したように、透過色領域21の着色層の有機EL素子10に近い側の表面(基板11側の表面)に設けられていることも可能である。
【0035】
この表示装置では、各画素に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、各有機EL素子10に駆動電流Idsが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、保護膜12,接着層13,カラーフィルタ20および封止用基板14を透過して(トップエミッション)取り出される。
【0036】
ここでは、各有機EL素子10で発生した光は、その有機EL素子10に対向する透過色領域21を通過して取り出されるが、発生した光の一部は、隣接する透過色領域21に入射する。ここでは、透過色領域21の一部に半透過領域22が設けられているので、隣接する透過色領域21に入射した光の一部は半透過領域22を通過する。よって、隣接する透過色領域21を通過する光h1と、隣接する透過色領域21および半透過領域22を通過する光h2との間に位相差が生じ、互いに打ち消し合う。これにより、隣接する透過色領域21を通過する光h1,h2の回折に起因する混色が低減される。
【0037】
特に、図4に示した第2例では、半透過領域22は、透過色領域21の着色層の有機EL素子10に近い側の表面(基板11側の表面)に設けられた半透過膜22Aにより構成されている。よって、半透過領域22と有機EL素子10との距離が小さくなり、光h1,h2の入射角度が同じでも、透過色領域21および半透過領域22の両方を通る光h2の量が増える。よって、光h1,h2の回折に起因する混色を抑える効果がより高くなる。
【0038】
また、特に、図5または図6に示した第3例では、半透過領域22は、透過色領域21の着色層の有機EL素子10から遠い側の表面(封止用基板14側の表面)に設けられた第1半透過膜22Bと、この第1半透過膜22Bの表面(下面および側面)を覆う第1半透過膜22Cを有している。第2半透過膜22Cは、第1半透過膜22Bの周囲の着色層の表面に張り出した部分22Dを有している。よって、透過色領域21および半透過領域22の両方を通過する光h2のうち、第1半透過膜22Bと第2半透過膜22Cとが重なった部分を通過する光h3と、張り出した部分22Dを通過する光h4との間に位相差を生じさせることが可能となる。よって、透過色領域21のみを通過する光h1と、透過色領域21および半透過領域22の両方を通過する光h2との間に位相差を生じさせると同時に、光h3,h4との間にも位相差を生じさせることが可能となる。よって、光h1〜h4の回折に起因する混色を更に抑えることが可能となる。
【0039】
更に、特に、図7または図8に示した第4例では、半透過領域22は、透過色領域21の着色層の有機EL素子10から遠い側の表面(封止用基板14側の表面)に設けられた半透過膜22Eと、この半透過膜22Eの表面(下面)の一部に設けられた遮光膜22Fを有している。半透過膜22Eは、遮光膜22Fの周囲の着色層の表面に張り出した部分22Gを有している。よって、半透過膜22Eの貼りだした部分22Gによって光h1,h2の回折に起因する混色を抑えると共に、遮光膜22Fにより外光を吸収してコントラストを向上させるという本来のブラックマトリクスの効果を得ることが可能となる。
【0040】
加えて、特に、図9または図10に示した第5例では、第1半透過膜22Aおよび第2半透過膜22Bよりなる半透過領域22が、透過色領域21の着色層の有機EL素子10に近い側の表面(基板11側の表面)に設けられている。また、図11または図12に示した第6例では、半透過膜22Eおよび遮光膜22Fよりなる半透過領域22が、透過色領域21の着色層の有機EL素子10に近い側の表面(基板11側の表面)に設けられている。よって、半透過領域22と有機EL素子10との距離が小さくなるので、光h1,h2の入射角度が同じでも、透過色領域21および半透過領域22の両方を通る光h2の量が増える。よって、光h1,h2の回折に起因する混色を抑える効果をより高めることが可能となる。
【0041】
図13は、半透過領域22に代えて従来のブラックマトリクスBMを有する表示装置の断面構成を表したものである。ブラックマトリクスBMは、厚みが200nm、線幅w2が1.2μmであり、チタン(Ti)により構成されている。なお、図13においては、図3と同一の構成要素には200番台の同一の符号を付している。
【0042】
図13において、例えば中央の有機EL素子210で発生した光は、その有機EL素子210に対向する透過色領域221(透過赤色領域221R)を通過して取り出されるが、発生した光の一部は、隣接する透過色領域221(透過緑色領域221Gまたは透過青色領域221B)に入射し、透過光h5と、ブラックマトリクスBMによる1次回折光h6とが生じる。
【0043】
図14は、図13に示した従来のブラックマトリクスBMを有する表示装置について、隣接する透過色領域221(透過緑色領域221G)を通過した光の強度を調べたシミュレーション結果を表したものである。なお、図14において、角度は空気中での値である。図14から分かるように、隣接する透過色領域221を通過した光は、視野角θ=32°付近に最大のピークを有している。これは図13に示した透過光h5に相当する。また、視野角10°付近に第2のピークがあり、これは図13に示した1次回折光h6に相当する。また、視野角−5°付近および−20°付近には、第3および第4のピークがそれぞれ生じている。これらは2次回折光および3次回折光(図13には図示せず)に相当する。
【0044】
一方、上述した接眼レンズ(図示せず)の取り込み角αは、例えば−10°ないし+10°である。そのため、図13および図14に示したように、透過光h5は−10°ないし+10°の範囲内には入射しないが、1次回折光h6および2次回折光(図14参照。)は−10°ないし+10°の範囲内に入射し、混色が発生する。
【0045】
図15は、図3,図4,図5および図7に示した第1例ないし第4例の半透過領域22を有する表示装置を作製し、得られた表示装置について、接眼レンズの取り込み角の範囲内(±10°)での混色率を調べたシミュレーション結果を表したものである。なお、図15の混色率は、図13に示した従来のブラックマトリクスBMを設けた表示装置の混色率を参照値として表している。図15から分かるように、混色率は、第1例では−48%、第2例では−63%、第3例では−66%、第4例では−44%となり、いずれも従来のブラックマトリクスBMを有する場合(比較例)に比べて混色率が大幅に抑えられていた。
【0046】
第1例と第2例とを比較すると、第2例のほうが第1例よりも更に混色率が抑えられていた。これは、第2例では半透過領域22と有機EL素子10との距離が小さくなり、光h1,h2の入射角度が同じでも、透過色領域21および半透過領域22の両方を通る光h2の量が増えたためであると考えられる。
【0047】
また、第1例と第3例を比較すると、第3例のほうが第1例よりも更に混色率が抑えられていた。これは、第3例では、透過色領域21および半透過領域22の両方を通過する光h2のうち、第1半透過膜22Bと第2半透過膜22Cとが重なった部分を通過する光h3と、張り出した部分22Dを通過する光h4との間に位相差を生じさせることが可能となるからであると考えられる。
【0048】
図16および図17は、第1例および第3例において隣接する透過色領域21を通過した光の強度を調べた結果を表したものである。なお、図16および図17には、図14に示した従来のブラックマトリクスBMを有する場合を、比較例として併せて示している。図16および図17から分かるように、第1例および第3例ではいずれも、接眼レンズの取り込み角α(−10°ないし+10°)の範囲内の1次回折光および2次回折光ともに、比較例に比べて抑えられていた。また、第3例のほうが第1例よりも更に回折光の強度が抑えられていることが分かる。
【0049】
更に、図15において第1例と第4例を比較すると、第4例は第1例と同程度の混色率となっていた。これは、第4例では、チタンよりなる遮光膜22Fでの反射の影響があったからであると考えられる。
【0050】
図18は、図3,図4,図5および図7に示した半透過領域22の第1例ないし第4例の色再現範囲を、図13に示した従来のブラックマトリクスBMを設けた比較例と比較して表した色度図(CIE1976u'v'色度図)である。図18から分かるように、第1例ないし第4例ではいずれも、比較例に比べて、特に赤および青の色再現範囲が拡大されていた。
【0051】
すなわち、透過色領域21の一部に半透過領域22を設けるようにすれば、隣接する透過色領域21を通過する光の回折による混色を抑え、色純度を改善し、色再現範囲を拡大することが可能となることが分かった。
【0052】
図19は、図3に示した有機EL素子10の具体的な構成を表したものである。基板11上には、上述した駆動トランジスタTr1を有する画素駆動回路140が設けられている。基板11の画素駆動回路140が設けられた面は、第1絶縁膜31によって被覆されている。第1絶縁膜31の上に有機EL素子10が設けられている。
【0053】
駆動トランジスタTr1は、例えば、基板11にゲート電極11A,ゲート絶縁膜11B,半導体膜11C,チャネル保護膜11D,層間絶縁膜11E,配線11Fがこの順に積層されたボトムゲート型(逆スタガ型)の構成を有している。なお、図2に示した書き込みトランジスタTr2も、駆動トランジスタTr1と同様の構成を有している。
【0054】
第1絶縁膜31は、画素駆動回路140が形成された基板11の表面を平坦化するためのものであり、例えば、厚みが100nmないし1000nmであり、酸化窒化ケイ素(SiON)または酸化ケイ素(SiO2またはSiO)により構成されている。また、第1絶縁膜31は、厚みが2.0μm程度であり、ポリイミドなどの感光性絶縁材料により構成されていることも可能である。第1絶縁膜31には、駆動トランジスタTr1と有機EL素子10との電気的接続をとるための接続孔31Aが設けられている。
【0055】
有機EL素子10は、第1絶縁膜31の上に設けられ、基板11の側から、第1電極32,第2絶縁膜33,発光層を含む有機層34、および第2電極35がこの順に積層された構成を有している。
【0056】
第1電極32は、複数の有機EL素子10の各々ごとに設けられている。第1電極32は、例えば、厚みが100nm程度であり、高反射率材料であるアルミニウム(Al)またはアルミニウム(Al)を含む合金により構成されており、発光層で発生した光を第2電極35側から取り出すようになっている(トップエミッション)。第1電極32の厚みは、発光層で発生した光が透過されず、光取出し効率を維持することが可能な程度、例えば30nmないし200nmの範囲であることが好ましい。第1電極32の構成材料としては、アルミニウム(Al)またはその合金のほか、金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),クロム(Cr),銅(Cu),タングステン(W),モリブデン(Mo),チタン(Ti),タンタル(Ta)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金よりなる反射電極が挙げられる。
【0057】
また、第1電極32は、上述した反射電極の下地として、厚みが20nm程度であり、チタン(Ti),タングステン(W),銅(Cu),タンタル(Ta),モリブデン(Mo)などよりなる密着層(図示せず)を有していてもよい。この密着層は、第1電極32の厚みを薄くした場合にも反射率を高く維持するための反射補助層としての機能も有している。このような密着層を設けた場合には、第1電極32の厚みは15nm以上であれば足りる。
【0058】
更に、第1電極32は、密着層または反射補助層としてのチタン層と、アルミニウムまたはその合金などの上述した反射電極と、チタン層またはタンタル層との3層の積層構造を有していてもよい。あるいは、第1電極32は、上述した反射電極と、ITO(インジウム・スズ複合酸化物;Indium Tin Oxide),IZO(登録商標)(インジウム・亜鉛複合酸化物),またはSnO2などの透明電極との複合膜により構成されていてもよい。
【0059】
第2絶縁膜33は、第1電極32と第2電極35との絶縁性を確保すると共に発光領域を正確に所望の形状にするためのものである。第2絶縁膜33は、第1電極32の発光領域に対応して開口部33Aを有している。第2絶縁膜33は、例えば、厚みが100nmないし200nmであり、SiONにより構成されている。また、第2絶縁膜33は、ポリイミドなどの感光性絶縁材料により構成されていることも可能である。
【0060】
有機層34は、第1電極32および第2絶縁膜33の上に、複数の有機EL素子10に共通に設けられている。有機層34は、例えば、第1電極32の側から順に、正孔注入層,正孔輸送層,発光層および電子輸送層を積層した構成を有している。
【0061】
正孔注入層は、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔注入層は、例えば、厚みが2nmないし10nmであり、化1に示したヘキサトリルアザトリフェニレンにより構成されている。
【0062】
【化1】

【0063】
正孔輸送層は、発光層への正孔注入効率を高めるためのものである。正孔輸送層は、例えば、厚みが30nmであり、化2に示した材料により構成されている。
【0064】
【化2】

【0065】
発光層は、例えば、第1電極32の側から順に、厚み10nmの赤色発光層、厚み10nmの発光分離層、厚み10nmの青色発光層、および厚み10nmの緑色発光層(いずれも図示せず)を順に積層した白色発光用のものである。赤色発光層は、電界をかけることにより、第1電極32から正孔注入層および正孔輸送層を介して注入された正孔の一部と、第2電極35から電子輸送層を介して注入された電子の一部とが再結合して、赤色の光を発生するものである。発光分離層は、赤色発光層への電子供給量を減らすためのものである。青色発光層は、電界をかけることにより、第1電極32から正孔注入層,正孔輸送層および発光分離層を介して注入された正孔の一部と、第2電極35から電子輸送層を介して注入された電子の一部とが再結合して、青色の光を発生するものである。緑色発光層は、電界をかけることにより、第1電極32から正孔注入層,正孔輸送層および発光分離層を介して注入された正孔の一部と、第2電極35から電子輸送層を介して注入された電子の一部とが再結合して、緑色の光を発生するものである。赤色発光層,緑色発光層および青色発光層は、第2絶縁膜33の開口部33Aに対応した領域で発光するようになっている。
【0066】
赤色発光層は、例えば、赤色発光材料,正孔輸送性材料,電子輸送性材料および両電荷輸送性材料のうち少なくとも1種を含んでいる。赤色発光材料は、蛍光性のものでも燐光性のものでもよい。具体的には、赤色発光層は、例えば、厚みが5nm程度であり、4,4−ビス(2,2−ジフェニルビニン)ビフェニル(DPVBi)に2,6−ビス[(4’−メトキシジフェニルアミノ)スチリル]−1,5−ジシアノナフタレン(BSN)を30重量%混合したものにより構成されている。
【0067】
発光分離層は、例えば、化3に示した材料により構成されている。
【0068】
【化3】

【0069】
緑色発光層は、例えば、緑色発光材料,正孔輸送性材料,電子輸送性材料および両電荷輸送性材料のうち少なくとも1種を含んでいる。緑色発光材料は、蛍光性のものでも燐光性のものでもよい。具体的には、緑色発光層は、例えば、厚みが10nm程度であり、DPVBiにクマリン6を5重量%混合したものにより構成されている。
【0070】
青色発光層は、例えば、青色発光材料,正孔輸送性材料,電子輸送性材料および両電荷輸送性材料のうち少なくとも1種とを含んでいる。青色発光材料は、蛍光性のものでも燐光性のものでもよい。具体的には、青色発光層は、例えば、厚みが30nm程度であり、DPVBiに4,4’−ビス[2−{4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を2.5重量%混合したものにより構成されている。
【0071】
電子輸送層は、発光層への電子注入効率を高めるためのものである。電子輸送層は、例えば、厚みが20nm程度であり、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3 )により構成されている。
【0072】
第2電極35は、有機層34の上に、複数の有機EL素子10に共通に設けられている。第2電極35は、例えば、第1電極32の側から順に、厚みが約0.3nmでありフッ化リチウム(LiF)よりなる第1層と、厚みが3nmでありカルシウム(Ca)よりなる第2層と、厚みが5nmでありMg−Ag合金よりなる第3層とを積層した構成を有している。第2電極35は、表示領域110の外側の領域で、図示しない補助配線に接続されている。その理由は、有機層34が複数の有機EL素子10に共通に設けられているので、各有機EL素子10ごとに第2電極35と補助配線との接続をとることができないからである。
【0073】
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
【0074】
まず、上述した材料よりなる基板11の上に画素駆動回路140を形成し、接続孔31Aを有する第1絶縁膜31を形成する。
【0075】
次いで、第1絶縁膜31の上に、例えばスパッタリング法により、例えばチタン膜およびアルミニウム合金膜(図示せず)を形成する。そののち、このチタン膜およびアルミニウム合金膜を、例えばフォトリソグラフィ法およびドライエッチングにより所定の形状に成形し、複数の有機EL素子10の各々ごとに第1電極32を形成する。
【0076】
続いて、第1電極32上および第1絶縁膜31上に、例えばPECVD法により、SiON膜を例えば10nmないし200nmの厚みで成膜する。このSiON膜を、例えばフォトリソグラフィ法およびドライエッチングにより所定の形状に成形し、開口部33Aを有する第2絶縁膜33を形成する。
【0077】
そののち、第1電極32および第2絶縁膜33の上に、例えば蒸着法により、有機層34を形成し、引き続き、例えば真空蒸着法により、第2電極35を形成する。以上により、図3および図19に示した有機EL素子10が形成される。
【0078】
続いて、図3に示したように、例えばCVD法またはスパッタ法により、有機EL素子10の上に上述した材料よりなる保護膜12を形成する。
【0079】
また、例えば、上述した材料よりなる封止用基板14を用意し、この封止用基板14に、図3ないし図12に示した第1例ないし第6例のいずれかの構成を有する半透過領域22を有するカラーフィルタ20を形成する。
【0080】
図3に示した第1例の半透過領域22を有するカラーフィルタ20を作製する場合には、まず、封止用基板14に、窒化チタン膜を90nmの厚みで形成する。続いて、この窒化チタン膜に対してフォトレジストパターニングおよびウェットエッチングを行い、線幅が1.2μmの窒化チタンよりなる半透過膜22Aを有する半透過領域22を形成する。
【0081】
そののち、半透過膜22Aを形成した封止用基板14に、透過赤色領域21Rの着色層の材料をスピンコートなどにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして焼成することにより透過赤色領域21Rを形成する。続いて、透過赤色領域21Rと同様にして、透過青色領域21Bおよび透過緑色領域21Gを順次形成し、透過赤色領域21R,透過緑色領域21Gおよび透過青色領域21Bを有する透過色領域21を形成する。
【0082】
図4に示した第2例の半透過領域22を有するカラーフィルタ20を形成する場合には、まず、封止用基板14に、上述した第1例と同様にして透過赤色領域21R,透過緑色領域21Gおよび透過青色領域21Bを有する透過色領域21を形成する。
【0083】
続いて、透過色領域21の上に、上述した第1例と同様にして、厚みが90nm、線幅が1.2μmの窒化チタンよりなる半透過膜22Aを有する半透過領域22を形成する。あるいは、透過色領域21の上に、厚みが90nm、線幅が1.2μmの黒色樹脂よりなる半透過膜22Aを有する半透過領域22を形成する。
【0084】
図5に示した第3例の半透過領域22を有するカラーフィルタ20を形成する場合には、まず、封止用基板14に、上述した第1例と同様にして、厚みが90nm、線幅が1.2μmの窒化チタンよりなる第1半透過膜22Bを形成する。
【0085】
続いて、第1半透過膜22Bを形成した封止用基板14に、窒化チタン膜を30nmの厚みで形成したのち、この窒化チタン膜に対してフォトレジストパターニングおよびウェットエッチングを行い、線幅が1.8μmの第2半透過膜22Cを形成する。張り出した部分22Dの張り出し量d1は、透過色領域21の片側で0.3μm、両側の合計で0.6μmとなる。これにより、第1半透過膜22Bおよび第2半透過膜22Cを有する半透過領域22が形成される。
【0086】
そののち、上述した第1例と同様にして透過赤色領域21R,透過緑色領域21Gおよび透過青色領域21Bを有する透過色領域21を形成する。
【0087】
図7に示した第4例の半透過領域22を有するカラーフィルタ20を形成する場合には、窒化チタン膜を30nmの厚みで形成したのち、この窒化チタン膜に対してフォトレジストパターニングおよびウェットエッチングを行い、線幅が1.8μmの半透過膜22Eを形成する。
【0088】
続いて、半透過膜22Eを形成した封止用基板14に、チタン膜を200nmの厚みで形成する。このチタン膜に対して、半透過膜22Eと同じ線幅の1.8μmでフォトレジストパターニングおよびウェットエッチングを行う。窒化チタンとチタンとではエッチング選択比が異なり、チタンのエッチングレートが速いので、半透過膜22Eの線幅w4を維持する一方で、半透過膜22Eの表面に、線幅が1.2μmの遮光膜22Fを形成することが可能となる。張り出した部分22Gの張り出し量d1は、透過色領域21の片側で0.3μm、両側の合計で0.6μmとなる。これにより、半透過膜22Eおよび遮光膜22Fを有する半透過領域22が形成される。
【0089】
そののち、上述した第1例と同様にして透過赤色領域21R,透過緑色領域21Gおよび透過青色領域21Bを有する透過色領域21を形成する。
【0090】
図8に示した第4例の半透過領域22を有するカラーフィルタ20を形成する場合には、チタン膜を200nmの厚みで形成したのち、このチタン膜に対してフォトレジストパターニングおよびウェットエッチングを行い、線幅が1.2μmの遮光膜22Fを形成する。
【0091】
続いて、遮光膜22Fを形成した封止用基板14に、窒化チタン膜を30nmの厚みで形成する。この窒化チタン膜に対してフォトレジストパターニングおよびウェットエッチングを行い、遮光膜22Fの表面に、線幅が1.8μmの半透過膜22Eを形成する。張り出した部分22Gの張り出し量d1は、透過色領域21の片側で0.3μm、両側の合計で0.6μmとなる。これにより、半透過膜22Eおよび遮光膜22Fを有する半透過領域22が形成される。
【0092】
そののち、上述した第1例と同様にして透過赤色領域21R,透過緑色領域21Gおよび透過青色領域21Bを有する透過色領域21を形成する。
【0093】
図9または図10に示した第5例の半透過領域22を有するカラーフィルタ20を形成する場合には、まず、上述した第1例と同様にして透過赤色領域21R,透過緑色領域21Gおよび透過青色領域21Bを有する透過色領域21を形成する。そののち、上述した第3例と同様にして第1半透過膜22Bおよび第2半透過膜22Cを有する半透過領域22を形成する。
【0094】
図11または図12に示した第6例の半透過領域22を有するカラーフィルタ20を形成する場合には、まず、上述した第1例と同様にして透過赤色領域21R,透過緑色領域21Gおよび透過青色領域21Bを有する透過色領域21を形成する。そののち、上述した第4例と同様にして半透過膜22Eおよび遮光膜22Fを有する半透過領域22を形成する。
【0095】
封止用基板14にカラーフィルタ20を形成したのち、同じく図3に示したように、保護膜12の上に、接着層13を形成し、この接着層13を間にして封止用基板14を貼り合わせる。以上により、図1ないし図3に示した表示装置が完成する。
【0096】
このように本実施の形態では、カラーフィルタ20の透過色領域21の一部に半透過領域22を設けるようにしたので、有機EL素子10の寸法が小さい場合にも、カラーフィルタ20の隣接する透過色領域21を通過した光h1,h2の回折による混色を抑えることが可能となる。
【0097】
(モジュールおよび適用例)
以下、上述した実施の形態で説明した表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態の表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0098】
(モジュール)
上記実施の形態の表示装置は、例えば、図20に示したようなモジュールとして、後述する適用例1,2などの電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板11の一辺に、封止用基板14から露出した領域310を設け、この露出した領域310に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)320が設けられていてもよい。
【0099】
(適用例1)
図21は、上記実施の形態の表示装置が適用される撮像装置(レンズ交換式一眼レフレックスタイプのデジタルカメラ)の外観を表したものである。この撮像装置は、例えば、カメラ本体部(カメラボディ)411の正面右側に交換式の撮影レンズユニット(交換レンズ)412を有し、正面左側に撮影者が把持するためのグリップ部413を有している。カメラ本体部411の背面略中央にはモニタ414が設けられている。モニタ414の上部には、ビューファインダ(接眼窓)415が設けられている。撮影者は、ビューファインダ415を除くことによって、撮影レンズユニット412から導かれた被写体の光像を視認して構図決定を行うことが可能である。このビューファインダ415は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0100】
(適用例2)
図22は、上記実施の形態の表示装置が適用されるヘッドマウントディスプレイの外観を表したものである。このヘッドマウントディスプレイは、例えば、眼鏡形の表示部421の両側に、使用者の頭部に装着するための耳掛け部422を有しており、その表示部421は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0101】
以上、実施の形態を挙げて本開示を説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、半透過領域22が、複数の有機EL素子10どうしの境界に対向して設けられている場合について説明した。しかしながら、半透過領域22は、複数の有機EL素子10の一つから、当該有機EL素子10に隣接する有機EL素子10に対向する透過色領域21に入射する光の一部が半透過領域22を通過可能な位置に設けられていれば、その位置は特に限定されない。例えば、半透過領域22は、透過色領域21の中央(透過赤色領域21Rの中央,透過緑色領域21Gの中央,透過青色領域21Bの中央)に配置されていてもよい。
【0102】
また、例えば、上記実施の形態では、透過色領域21が赤色透過領域21R,緑色透過領域21Gおよび青色透過領域21Bの三つの異なる色の着色層を有する場合について説明したが、透過色領域21は、二つ、または四つ以上の異なる色の着色層を有していてもよい。二色の場合としては、青色および黄色の例が挙げられる。また、四色の場合としては、赤色,緑色,青色と、黄色またはシアン色またはマゼンタ色との例が挙げられる。
【0103】
更に、例えば、上記実施の形態では、カラーフィルタ20が封止用基板14に設けられている場合について説明したが、カラーフィルタ20は基板11上、例えば保護膜12と接着層13との間に設けられていることも可能である。
【0104】
加えて、例えば、上記実施の形態では、発光層で発生した光を封止用基板14側から取り出す場合(トップエミッション)を例として説明したが、発光層で発生した光を基板11側から取り出すことも可能である(ボトムエミッション)。この場合には、カラーフィルタ20は基板11上、例えば画素駆動回路140と第1絶縁膜31との間に設けることが可能である。また、ボトムエミッションの場合には、第1電極32は、ITO,IZO(登録商標),またはSnO2などの透明電極により構成され、第2電極35は、金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),クロム(Cr),銅(Cu),タングステン(W),アルミニウム(Al),モリブデン(Mo)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金よりなる反射電極により構成されている。また、第2電極35は、上述した反射電極と透明電極との複合膜により構成されていてもよい。
【0105】
更にまた、例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。例えば、上記実施の形態では、半透過膜22A,22E、第1半透過膜22Bおよび第2半透過膜22Cを窒化チタン、遮光膜22Fをチタンにより構成した場合について説明した。しかしながら、半透過領域22を構成する各層の材料としては、窒化チタンおよびチタンのほか、窒化クロム(CrN),クロム(Cr)または感光性黒色樹脂など、反射率が低く、光吸収率が高い材料を用いることが可能である。
【0106】
加えてまた、例えば、上記実施の形態では発光素子が有機EL素子10である場合について説明したが、本開示の表示装置は無機EL素子などの他の発光素子を備えたものでもよい。
【0107】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
複数の発光素子と、
前記複数の発光素子に対向する透過色領域および前記透過色領域の一部に設けられた半透過領域を有するカラーフィルタと
を備えた表示装置。
(2)
前記半透過領域は、前記複数の発光素子の一つから、当該発光素子に隣接する発光素子に対向する透過色領域に入射する光の一部が前記半透過領域を通過可能な位置に設けられている
前記(1)記載の表示装置。
(3)
前記半透過領域は、前記複数の発光素子どうしの境界に対向して設けられている
前記(2)記載の表示装置。
(4)
前記透過色領域は、二以上の異なる色の着色層により構成され、
前記半透過領域は、前記着色層の表面に設けられた半透過膜により構成されている
前記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の表示装置。
(5)
前記半透過膜は、前記着色層の前記複数の発光素子から遠い側の表面に設けられている
前記(4)記載の表示装置。
(6)
前記半透過膜は、前記着色層の前記複数の発光素子に近い側の表面に設けられている
前記(4)記載の表示装置。
(7)
前記透過色領域は、二以上の異なる色の着色層により構成され、
前記半透過領域は、
第1半透過膜と、
前記第1半透過膜の周囲の前記着色層の表面に張り出した部分を有する第2半透過膜と
を有する前記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の表示装置。
(8)
前記透過色領域は、二以上の異なる色の着色層により構成され、
前記半透過領域は、
遮光膜と、
前記遮光膜の周囲の前記着色層の表面に張り出した部分を有する半透過膜と
を有する前記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の表示装置。
(9)
前記発光素子は、第1電極と、発光層を含む有機層と、第2電極とを順に積層した有機EL素子である
前記(1)ないし(8)のいずれか1項に記載の表示装置。
(10)
前記有機EL素子は白色光を発生するものであり、
前記着色層は、前記白色光を赤色光,緑色光または青色光として取り出す赤色着色層,緑色着色層および青色着色層を有する
前記(9)記載の表示装置。
(11)
前記複数の有機EL素子は一方向に長い矩形形状を有すると共に、短辺に平行な行方向および長辺に平行な列方向に配列されており、
前記複数の有機EL素子の行方向のピッチは30μm以下である
前記(9)または(10)記載の表示装置。
(12)
表示装置を備え、
前記表示装置は、
複数の発光素子と、
前記複数の発光素子に対向する透過色領域および前記透過色領域の一部に設けられた半透過領域を有するカラーフィルタと
を備えた電子機器。
【符号の説明】
【0108】
10R,10G,10B…画素、10…有機EL素子、11…基板、12…保護膜、13…接着層、14…封止用基板、20…カラーフィルタ、21…透過色領域、21R…透過赤色領域、21G…透過緑色領域、21B…透過青色領域、22…半透過領域、32…第1電極、33…第2絶縁膜、34…有機層、35…第2電極、110…表示領域、120…信号線駆動回路、130…走査線駆動回路、140…画素駆動回路、Tr1,Tr2…トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子と、
前記複数の発光素子に対向する透過色領域および前記透過色領域の一部に設けられた半透過領域を有するカラーフィルタと
を備えた表示装置。
【請求項2】
前記半透過領域は、前記複数の発光素子の一つから、当該発光素子に隣接する発光素子に対向する透過色領域に入射する光の一部が前記半透過領域を通過可能な位置に設けられている
請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記半透過領域は、前記複数の発光素子どうしの境界に対向して設けられている
請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記透過色領域は、二以上の異なる色の着色層により構成され、
前記半透過領域は、前記着色層の表面に設けられた半透過膜により構成されている
請求項1記載の表示装置。
【請求項5】
前記半透過膜は、前記着色層の前記複数の発光素子から遠い側の表面に設けられている
請求項4記載の表示装置。
【請求項6】
前記半透過膜は、前記着色層の前記複数の発光素子に近い側の表面に設けられている
請求項4記載の表示装置。
【請求項7】
前記透過色領域は、二以上の異なる色の着色層により構成され、
前記半透過領域は、
第1半透過膜と、
前記第1半透過膜の周囲の前記着色層の表面に張り出した部分を有する第2半透過膜と
を有する請求項1記載の表示装置。
【請求項8】
前記透過色領域は、二以上の異なる色の着色層により構成され、
前記半透過領域は、
遮光膜と、
前記遮光膜の周囲の前記着色層の表面に張り出した部分を有する半透過膜と
を有する請求項1記載の表示装置。
【請求項9】
前記発光素子は、第1電極と、発光層を含む有機層と、第2電極とを順に積層した有機EL素子である
請求項1記載の表示装置。
【請求項10】
前記有機EL素子は白色光を発生するものであり、
前記着色層は、前記白色光を赤色光,緑色光または青色光として取り出す赤色着色層,緑色着色層および青色着色層を有する
請求項9記載の表示装置。
【請求項11】
前記複数の有機EL素子は一方向に長い矩形形状を有すると共に、短辺に平行な行方向および長辺に平行な列方向に配列されており、
前記複数の有機EL素子の行方向のピッチは30μm以下である
請求項9記載の表示装置。
【請求項12】
表示装置を備え、
前記表示装置は、
複数の発光素子と、
前記複数の発光素子に対向する透過色領域および前記透過色領域の一部に設けられた半透過領域を有するカラーフィルタと
を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−209201(P2012−209201A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75470(P2011−75470)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】