説明

表示装置とその製造方法

【課題】フレキシブル回路基板と表示パネルとの接続部を曲げなどの外的要因による異方性導電膜の剥がれを防止し、機械的な引き剥がしに対する強度や接続信頼性に優れた表示装置とその製造方法を提供すること。
【解決手段】一対の基板4を備え、該一対の基板4のうち、少なくともどちらか一方の基板4と接続するフレキシブル配線基板8とを備えた表示装置において、基板4には基板貫通穴40を設け、フレキシブル配線基板8には配線基板貫通穴30を設け、基板貫通穴40と配線基板貫通穴30との両方を重ねて配置し、基板貫通穴40と配線基板貫通穴30との両方を貫通する接合部材10によって、基板4とフレキシブル配線基板8とを固着することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示パネルを用いた表示装置に関し、特にフレキシブル回路基板と表示パネルとの接続部分の固着に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置として液晶表示パネルを用いた液晶表示装置を例に以下説明する。従来から、液晶表示基板と液晶表示基板とを所定の間隙を設けて対向させ、その間隙にシール剤によって液晶層を注入し、液晶層を介して対向するように各基板上に設けた透明電極によって画素部を形成し、少なくとも、片方の液晶表示基板上に画素部を形成する電極に電気信号を印可するための引き出し電極を設けた液晶パネルが用いられている。そして、このような液晶表示パネルにおいては、画素部を形成する電極に印可する電気信号によって液晶層の光学特性を変化させ、画素のオン、オフを制御して表示を行っている。
【0003】
このような従来の液晶表示パネルを用いた表示装置の構成について、携帯電話に代表される液晶表示装置を例として図12から図14を用いて説明する。図12は従来の液晶表示装置の平面図、図13は、図12のC−C′断面図、図14は、図12のD−D′断面図である。
【0004】
この液晶表示パネルは、図12に示すように、液晶表示基板4上に設けたm本のストライブ状の透明電極6と対向した液晶表示基板4上に設けたn本のストライプ状の透明電極6を有し、液晶表示基板4上に形成された透明電極6と対向した液晶表示基板4上に形成された透明電極6の交差部であるm×n個の画素部からなる表示領域を有するマトリクス型の液晶表示パネルである。液晶表示基板4と対向した液晶表示基板4とは、図13に示すようにスペーサー20により所定の間隙を設けて対向させ、シール材22により接着し、その間隙に液晶18を封入して封孔材により密閉し、気密性を確保する。
【0005】
そして、図13に示したように、液晶表示基板4上に形成された透明電極6は、液晶表示パネルの表示領域からシール材22の外側に延長しており、駆動回路へ電気信号を伝送するためのフレキシブル回路基板8と電気的に接続している。液晶表示基板4とフレキシブル回路基板8とをエポキシ樹脂やアクリル樹脂に導電粒子を含有した異方性導電膜16で仮接続し、さらに熱圧着機で本圧着を行うことにより、液晶表示基板4上に形成された透明電極6と異方性導電膜に含有した導電粒子24とフレキシブル回路基板8上に形成された電極配線14との接続をとることが出来る。また、圧着部は、曲げることを強いられるため補強がなされており、一般的に、液晶表示基板4とフレキシブル回路基板8を圧着した上部と圧着部裏面に接着テープ28を張ることで、フレキシブル回路基板の剥がれに対する強度の向上を行っている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−338699号公報(第5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、最近になってガラス基板ではなく、プラスチック基板で形成された液晶表示パネルなどが出始め、低温かつ短時間で硬化ができる異方性導電膜での接続が望まれており、アクリル系の異方性導電膜が近年使用され始めている。アクリル系の異方性導電膜は一般的にエポキシ系の異方性導電膜よりも機械的な引き剥がし強度が弱く、機械的な引き剥がし強度を向上することが、課題となっていた。
【0008】
本発明の目的は、フレキシブル回路基板と表示パネルとの接続部を曲げなどの外的要因による異方性導電膜の剥がれを防止し、機械的な引き剥がしに対する強度や接続信頼性に優れた表示装置とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における表示装置は上記目的を達成するために、一対の基板を備え、一対の基板のうち、少なくともどちらか一方の基板と接続するフレキシブル配線基板とを備えた表示装置において、基板には基板貫通穴を設け、フレキシブル配線基板には配線基板貫通穴を設け、基板貫通穴と配線基板貫通穴との両方を重ねて配置し、基板貫通穴と配線基板貫通穴との両方を貫通する接合部材によって、基板とフレキシブル配線基板とを固着することを特徴とする。
【0010】
接合部材は、熱可塑性の材料であることを特徴とする。また、接合部材は、高分子材料あるいは金属材料であることを特徴とする。また、接合部材は、ボルトとナットであることを特徴とする。また、基板貫通穴と配線基板貫通穴とのそれぞれが2個ずつ設けられていることを特徴とする。また、基板は樹脂製のフィルム基板であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明による表示装置の製造方法は、一対の基板を備え、一対の基板のうち、少なくともどちらか一方の基板と接続するフレキシブル配線基板とを備えた表示装置の製造方法において、基板に基板貫通穴を設ける工程と、フレキシブル配線基板に配線基板貫通穴を設ける工程と、基板貫通穴と配線基板貫通穴との両方を貫通するように、接合部材を挿入し、基板と配線基板とを重ね合わせる工程と、この接続部材によって、基板とフレキシブル配線基板とを固着する工程とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、接続部材に熱可塑性の材料を用い、固着する工程において、接続部材を加熱しながら、基板側の面とフレキシブル配線基板側の面とから、接続部材を押圧して、前記基板と前記フレキシブル配線基板とを固着することを特徴とする。あるいは、接続部材にボルトとナットを用い、ボルトを挿入する工程で挿入し、固着する工程において、ナットとボルトを固着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明の液晶表示装置によれば、フレキシブル回路基板を強制的に大きく屈曲させた場合でも、接合部材を設けることによって、液晶表示パネルと、フレキシブル基板が機械的に密接に接合されているため、引き剥がしによる剥がれを防止することが可能となり、これによって長手方向の圧着両端部付近における導電パターンの断線を無くし歩留まりを向上させると共に、信頼性を向上させることが出来るという利点がある。
【0014】
また、不良発生が激減することにより、その結果、製造コストを低下させることが出来る。さらに、接合部材を使用することで、液晶表示パネルとフレキシブル回路基板の位置あわせが自動的に行えるため、位置あわせが容易かつ短時間でできるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を以下図1、図2、図3にしたがって、より詳細に説明する。本実施の形態では、表示パネルに液晶表示パネルを用いた場合について説明する。図1は本発明における液晶パネルとフレキシブル配線基板とを接続した表示装置の平面図であり、図2は図1のA−A′断面図、図3は図1のB−B′断面図である。液晶表示パネルの構成は従来の図12で図示したような構成を採用することができる。
【0016】
液晶表示基板4には基板貫通穴40を設け、フレキシブル配線基板8にも配線基板貫通穴30を設けている。そして基板貫通穴40と配線基板貫通穴30との両方を重ねて配置
し、両方の貫通穴を貫通するように接合部材10が配置されており、液晶表示基板4とフレキシブル配線基板8とが固着されている。
【実施例1】
【0017】
液晶表示基板に樹脂製のフィルム基板を、接合部材に熱可塑性の材料を用いた実施例について以下詳細に説明する。最初に、図4に図示するように、フレキシブル配線基板8に配線基板貫通穴30を、また図5に図示するように、液晶表示基板4に基板貫通穴40をレーザーやパンチなどで正確に開けて設ける。
【0018】
その後、異方性導電膜16を70℃で数秒程度で仮圧着した液晶表示基板4を用意し、図6に図示するように、液晶表示基板4の基板貫通穴40に、熱可塑性材料であるT字状の接合部材10を通す。次にフレキシブル配線基板8に形成された配線基板貫通穴30に、すでに液晶表示基板4に挿入済みのT字型の接合部材10を挿入することで、液晶表示基板4とフレキシブル回路基板8を容易に重ね合わせることができ、同時に位置あわせも容易に完了する。
【0019】
図7は接続部材10によって、液晶表示基板4とフレキシブル配線基板8とを固着する工程を示した図である。図7(b)に離型加工を行った注形型が形成されているヒートツール26の平面図を示し、図7(a)のように、このヒートツール26を接合部材10に対して、フレキシブル配線基板8側上方に配置する。
【0020】
次に、液晶表示基板4側の面を固い板状の所に配置して、図8に示したように、ヒートツール26を下げ130℃〜200℃間で加熱しながら、フレキシブル配線基板8側の面から接合部材10を押圧して熱圧着を行う。図8はT字型の熱可塑性の接合部材10が溶融する経過を示している。
【0021】
最終的には、図9に示したように、T字型の接合部材10が溶融し、I字型の接合部材10となり、液晶表示基板4とフレキシブル配線基板8とが、I字型の接合部材10で固着される。
【0022】
接合部材10は、熱可塑性の高分子材料を使用することで、熱圧着時に高分子材料が軟化し、異方性導電膜16が硬化する所定の時間が経過した後、ヒートツール26を上昇させた際には、図3の様に、異方性導電膜16を介し電気的接続された液晶表示基板4とフレキシブル配線路基板8がI字型の接合部材10で固着された形となる。よって、接合部材10の溶融と同時に異方性導電膜16の硬化が行われ、効率よく液晶表示基板4とフレキシブル配線基板8とを電気的かつ機械的に接続することができる。
【0023】
本実施例では、接続部材10に熱可塑性の高分子材料を用いたが、熱可塑性の金属材料を用いても同様に固着することができる。
【実施例2】
【0024】
本実施例では、接合部材10にボトルとナットを用いた例を説明する。表示パネル及びフレキシブル配線基板との構成は従来の構成のものを使用することができる。また、基板とフレキシブル配線基板とに貫通穴を設ける工程までは、実施例1と同じ工程を用いることができる。
【0025】
図10に図示するように、液晶表示基板4には、異方性導電膜16を70℃で数秒程度で仮圧着し、その後、基板貫通穴40と配線基板貫通穴30とが重ね合うように、液晶表示基板4と、フレキシブル配線基板8とを位置あわせして、130℃〜200℃の間に加熱し、熱圧着装置にて本圧着を行う。これによって異方性導電膜を16介し、液晶表示基
板4上に形成された透明電極6と異方性導電膜16内の導電粒子24とフレキシブル回路基板8上の電極配線14とを電気的、機械的に接続する。
【0026】
次に、図11に示すように、基板貫通穴40と配線基板貫通穴30とに、ボルト36を挿入し、同時にナット34を使用し、液晶表示基板4とフレキシブル回路基板8とをねじ止めし、液晶表示基板4とフレキシブル回路基板8との固着を行う。この際、ボルトの寸法調整を行うことにより、外装などにでも同時に固着することができる。
【0027】
本実施例では、液晶表示パネルを使用したが、これに限定されず、表示パネルとフレキシブル回路基板とを固着するのであれば、いかなる表示パネルでも使用することができる。また、基板には貫通穴の形成が容易な樹脂製のフィルム基板を用いたが、薄いガラス基板などを用いても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例における液晶表示装置の構造を示す平面図である。
【図2】本発明の実施例における液晶表示装置を構造示すA−A′断面図である。
【図3】本発明の実施例における液晶表示装置を構造示すB−B′断面図である。
【図4】本発明の実施例における液晶表示装置の製造方法を示す、フレキシブル回路基板の平面図と断面図である。
【図5】本発明の実施例における液晶表示装置の製造方法を示す、液晶表示パネルの平面図と断面図である。
【図6】本発明の実施例における液晶表示装置の製造方法を示す、接合部材を挿入し、液晶表示パネルとフレキシブル回路基板を位置あわせした断面図である。
【図7】本発明の実施例における液晶表示装置の製造方法を示す、液晶表示パネルとフレキシブル回路基板と熱圧着装置のヒートツールの位置関係を示す断面図とヒートツールの平面図である。
【図8】本発明の実施例における液晶表示装置の製造方法を示す、熱圧着の際の接合部材を溶融している経過の断面図である。
【図9】本発明の実施例における液晶表示装置の製造方法を示す、熱圧着後の断面図である。
【図10】本発明の実施例2における液晶表示装置の製造方法を示す、圧着後の断面図である。
【図11】本発明の実施例2における液晶表示装置の製造方法を示す、ボルトとナットを装着し、液晶表示パネルとフレキシブル回路基板を固着した後の断面図である。
【図12】従来の液晶表示装置を示す平面図である。
【図13】従来の液晶表示装置を示すC−C′断面図である。
【図14】従来の液晶表示装置を示すD−D′断面図である。
【符号の説明】
【0029】
4. 液晶表示基板
6. 透明電極
8. フレキシブル配線基板
10.接合部材
12.ポリイミド
14.電極配線
16.異方性導電膜
18.液晶
20.スペーサー
22.シール
24.導電粒子
26.ヒートツール
28.補強テープ
30.配線基板貫通穴
32.注形型
34.ナット
36.ボルト
40.基板貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板を備え、該一対の基板のうち、少なくともどちらか一方の基板と接続するフレキシブル配線基板とを備えた表示装置において、
前記基板には基板貫通穴を設け、前記フレキシブル配線基板には配線基板貫通穴を設け、前記基板貫通穴と前記配線基板貫通穴との両方を重ねて配置し、前記基板貫通穴と前記配線基板貫通穴との両方を貫通する接合部材によって、前記基板と前記フレキシブル配線基板とを固着することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記接合部材は、熱可塑性の材料であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記接合部材は、高分子材料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記接合部材は、金属材料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記接合部材は、ボルトとナットであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記基板貫通穴と前記配線基板貫通穴とのそれぞれが2個ずつ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記基板は樹脂製のフィルム基板であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
一対の基板を備え、該一対の基板のうち、少なくともどちらか一方の基板と接続するフレキシブル配線基板とを備えた表示装置の製造方法において、
前記基板に基板貫通穴を設ける工程と、
前記フレキシブル配線基板に配線基板貫通穴を設ける工程と、
前記基板貫通穴と前記配線基板貫通穴との両方を貫通するように、接合部材を挿入し、前記基板と前記配線基板とを重ね合わせる工程と、
前記接続部材によって、前記基板と前記フレキシブル配線基板とを固着する工程とを備えたことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記接続部材に熱可塑性の材料を用い、前記固着する工程において、前記接続部材を加熱しながら、前記基板側の面と前記フレキシブル配線基板側の面とから、前記接続部材を押圧して、前記基板と前記フレキシブル配線基板とを固着することを特徴とする請求項8に記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記接続部材にボルトとナットを用い、前記ボルトを前記挿入する工程で挿入し、前記固着する工程において、前記ナットと前記ボルトを固着することを特徴とする請求項8に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−76930(P2008−76930A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258435(P2006−258435)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】