説明

表示装置,表示パネル,及び表示パネルの駆動方法

【課題】 開口率を向上させ,駆動部がパネル上に形成される場合には駆動部占有面積を減らして非発光領域を減少させることができる表示装置,表示パネル,及び表示パネルの駆動方法を提供する。
【解決手段】 データ信号を伝達する複数のデータ線D1〜Dmと,選択信号を伝達する複数の選択走査線S1〜Snと,データ線及び選択走査線に接続されてデータ信号及び選択信号が印加される複数の画素110と,を有する表示装置において;画素110は,選択信号が印加されている間,データ信号を入力し,データ信号に対応するデータ電流を出力する発光素子駆動部300と,データ電流に対応して各々発光する少なくとも4つの発光素子と,データ電流を各々の発光素子へ伝達するスイッチング部と,を備え,少なくとも2つの発光素子は,走査線に対して水平方向に離隔して形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,表示装置と,表示パネル,及びその駆動方法に係り,特に,有機物質の電界発光を用いた有機電界発光(electro luminescent:EL)表示装置,その表示パネル,及び表示パネルの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に,有機EL表示装置は,蛍光性有機化合物を電気的に励起させて発光させる表示装置であって,N×M個の有機発光セルに電圧書き込み,または電流書き込みを行って画像を表現することができるようになっている。このような有機発光セルは,アノード,有機薄膜,カソードレイヤの構造を有している。
【0003】
有機薄膜は,電子と正孔のバランスを良くして発光効率を向上させるために,発光層(emitting layer:EML),電子輸送層(electron transport layer:ETL),及び正孔輸送層(hole transport layer:HTL)を有する多層構造からなり,且つ別途の電子注入層(electron injecting layer:EIL)と正孔注入層(hole injecting layer:HIL)をも有している。
【0004】
このような有機発光セルを駆動する方式は,パッシブマトリックス(passive matrix)方式と,薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)を用いたアクティブマトリックス(active matrix)方式に大別される。パッシブマトリックス方式は,陽極と陰極を直交配置し,ラインを選択して駆動する。これに対して,アクティブマトリックス方式は,薄膜トランジスタを各画素電極に接続し,薄膜トランジスタのゲートに接続されたキャパシタの容量によって維持された電圧に応じて駆動する方式である。
【0005】
このようなアクティブマトリックス方式は,キャパシタに電圧書き込みを行って維持させるために,印加される信号の形態によって,電圧書き込み(voltage programming)方式と電流書き込み(current programming)方式に分けられる。
【0006】
従来の有機EL表示装置は,様々な色相を表現するために一つの画素がそれぞれの色相を有する複数の副画素からなり,このような副画素から発光する色相の組み合わせで色相が表現される。一般に,一つの画素は,赤色Rを表示する副画素,緑色Gを表示する副画素,および青色Bを表示する副画素からなる。これらの赤色,緑色および青色の組み合わせで色相が表現される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,このような副画素を駆動するためには,副画素別に,有機EL素子を駆動するための駆動回路が必要であり,データ信号を伝達するためのデータ線,走査信号を伝達するための走査線,および電源電圧を伝達するための電源線が設けられなければならない。よって,一つの画素において形成されるトランジスタ,キャパシタ,および電圧または信号を伝達するための配線が多く必要となり,画素の内部にこれらを配置するのが難しいという不具合があった。また,駆動回路の領域が大きいために,画素において発光する領域に該当する開口率が減少するという問題点があった。
【0008】
そこで,本発明は,このような問題点に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,開口率を向上させ,各駆動部がパネル上に形成される場合には駆動部占有面積を減らして非発光領域を減少させることができる表示装置,表示パネル,及び表示パネルの駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,データ信号を伝達する複数のデータ線と,選択信号を伝達する複数の走査線と,データ線及び走査線に接続されてデータ信号及び選択信号が印加される複数の画素と,を有する表示装置において;画素は,選択信号が印加されている間,データ信号を入力し,データ信号に対応するデータ電流を出力する発光素子駆動部と,データ電流に対応して各々発光する少なくとも4つの発光素子と,データ電流を各々の発光素子へ伝達するスイッチング部と,を備え,4つの発光素子のうち,少なくとも2つの発光素子は,走査線とデータ線とからお互い異なる位置に形成されていることを特徴とする表示装置が提供される。
【0010】
従来画素内で,各発光素子に対応して設けられていた駆動回路を,発光素子駆動部やスイッチング部を用いて,少なくとも2つの発光素子に対して共通の駆動回路で発光させることにより,画素内で用いられる素子の構成と電流,電圧または信号を伝達する配線を単純化させることができ,表示装置の開口率を向上させることができる。
【0011】
表示装置に用いられる4つの発光素子は,2つの列にそれぞれ2つずつ形成することができる。また,複数の発光素子を駆動するための発光素子駆動部は,第1電極,第2電極及び第3電極を備え,第1電極と第2電極との間に印加される電圧に対応する電流を第3電極へ出力するトランジスタと,選択信号に応答してデータ信号を第1キャパシタへ伝達する第1スイッチング素子と,データ信号に対応する電圧を蓄える前記第1キャパシタと,を有することができる。
【0012】
また例えば,トランジスタの第2電極は第1電源に接続され,発光素子駆動部は,トランジスタの第1電極と第1キャパシタとの間に接続される第2キャパシタと,トランジスタの第1電極と第3電極との間に接続され,第1制御信号に応答してトランジスタをダイオード接続させる第2スイッチング素子と,第1電源と第2キャパシタの第1キャパシタ側の電極との間に接続され,第2制御信号に応答して,第2キャパシタの第1キャパシタ側の電極に,第1電源の電圧を印加する第3スイッチング素子と,をさらに有することができる。
【0013】
第1制御信号と第2制御信号とは実質的に同一の制御信号とすることができる。また,第1制御信号は,選択信号が印加される前に印加された走査線の選択信号であってもよい。
【0014】
スイッチング部は,4つの発光素子を発光させるために,お互い異なる期間に,データ電流を4つの発光素子へそれぞれ伝達する4つのスイッチング素子を有することができる。この4つの発光素子のうち,少なくとも2つは,異なる色相で発光することができる。または,4つの発光素子は,実質的に同一の色相で発光してもよい。
【0015】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,発光表示装置の表示パネルにおいて;データ信号を伝達する複数のデータ線と,選択信号を伝達する複数の走査線と,データ線及び走査線に接続されてデータ信号及び選択信号が印加される複数の画素を有する表示部と,少なくとも4つのデータ信号を1フィールドの間に時分割し,データ線に印加するデータ信号駆動部と,複数の走査線に,順次選択信号を印加するための走査駆動部と,を備えており,
画素は,選択信号が印加されている間,データ信号を入力し,データ信号に対応するデータ電流を出力する駆動部と,データ電流に対応して各々発光する少なくとも4つの発光素子と,データ電流を各々の発光素子へ伝達するスイッチング部と,を有し,
4つの発光素子は,走査線に対して水平方向に形成された第1及び第2発光素子と,第1及び第2発光素子各々の,走査線に対して垂直方向に形成された第3及び第4発光素子であることを特徴とする表示パネルが提供される。
【0016】
上記のように構成された表示パネルにおいて,画素内で少なくとも4つのデータ信号を1フィールドの間に時分割してデータ線に印加することにより,4つの発光素子を共通の駆動回路で発光させ,画素内で用いられる素子の構成と電流,電圧または信号を伝達する配線を単純化させることができ,表示装置の開口率を向上させることができる。また,データ信号駆動部の内部構造が簡単になり,各駆動部がパネル上に形成される場合,駆動部占有面積を減らして非発光領域を減少させることができる。
【0017】
上記表示パネルの構成において,1フィールドは,少なくとも4つのサブフィールドに分けられて駆動され,走査駆動部は,選択信号をサブフィールド毎に走査線に順次印加することができる。こうして,4つの異なる発光素子を共通の駆動回路で発光させることができる。また,データ信号駆動部は,4つのサブフィールドで走査線に選択信号が印加される間,4つの発光素子各々に対応するデータ信号をデータ線に順次印加することができる。
【0018】
4つの発光素子を駆動するための駆動部は,第1電極,第2電極及び第3電極を備え,第1電極と第2電極との間に印加される電圧に対応する電流を第3電極へ出力するトランジスタと,選択信号に応答してデータ信号を第1キャパシタへ伝達する第1スイッチング素子と,データ信号に対応する電圧を蓄える前記第1キャパシタと,を有することができる。また,スイッチング部は,お互い異なる期間に,データ電流を4つの発光素子へそれぞれ伝達する4つのスイッチング素子を有して構成することができる。
【0019】
さらに,別の観点によれば,データ信号を伝達する複数のデータ線と,選択信号を伝達する複数の走査線と,データ線および走査線に接続されてデータ信号及び選択信号が印加される複数の画素と,を備える表示パネルの駆動方法において;複数の画素は少なくとも4つの発光素子を有しており,1フィールドが少なくとも4つのサブフィールドに分けられて駆動され,各サブフィールドで走査線に選択信号を順次印加する段階と,選択信号が印加される間,データ線にデータ信号を書き込む段階と,データ信号に対応する電流を4つの発光素子に順次伝達する段階と,を含み,4つの発光素子は,走査線に対して水平方向に形成された第1及び第2発光素子と,第1及び第2発光素子各々の走査線に対して垂直方向に形成された第3及び第4発光素子であることを特徴とする表示パネルの駆動方法が提供される。
【0020】
上記のように表示パネルを駆動させることにより,画素内で1フィールドが4つのサブフィールドに分けて駆動され,選択信号が順次印加されることにより,4つの発光素子を共通の駆動回路で発光させ,画素内で用いられる素子の構成と電流,電圧または信号を伝達する配線を単純化させることができる。データ線には,第1〜第4発光素子に対応するデータ信号が,順次書き込まれて,4つの発光素子を1つの駆動回路で発光させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上詳述したように本発明によれば,1つの駆動部で複数の有機EL素子を駆動することにより,画素の内部に含まれる素子の構成及び配線を単純化することができるので,走査線の数を減らして表示装置の開口率を向上させることができる。また,各駆動部の内部構造が簡単になるため,各駆動部がパネル上に形成される場合には,各駆動部占有面積を減らして非発光領域を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
また,図面において,本発明を明確に説明するために,説明と関係のない部分は省略した。さらに,ある部分が他の部分に接続されているとするときに,これは直接に接続されている場合のみならず,その間に他の素子を挟んで間接に接続されている場合も含むこととする。
【0024】
(第1の実施の形態)
まず,第1の実施の形態に係る有機EL表示装置および駆動方法を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を示す説明図,図2は,図1の有機EL表示装置の画素の概略説明図である。
【0025】
図1に示すように,本実施の形態に係る有機EL表示装置は,表示パネル(表示部)100,選択信号駆動部200(走査駆動部),発光信号駆動部300(発光素子駆動部または駆動部)およびデータ信号駆動部400を有している。表示パネル100は,横方向に伸びている複数の選択走査線S1〜Sn,発光走査線Eml〜Emn,列方向に伸びている複数のデータ線D1〜Dm,および複数の画素110を有する。
【0026】
画素110は,隣り合う2本の走査線と隣り合う2本のデータ線によって定義される画素領域に形成される。図2を参照すると,各画素110は,お互い異なる色相の光を発光する有機EL素子OLED_R,OELD_G(4つの発光素子のうち少なくとも2つ)と,有機EL素子OLED_R,OLED_Gを駆動するためのOLED駆動部111とを有している。このような有機EL素子は,印加される電流の大きさに対応する明るさで光を発光する。
【0027】
選択信号駆動部200は,該当走査線に接続された画素110にデータ信号が書き込まれるように,複数の選択走査線S1〜Snに選択信号を順次印加し,発光信号駆動部300は,有機EL素子OLED_R,OLED_Gの発光を制御するために発光走査線Em1〜Emnに発光信号を順次印加する。データ信号駆動部400は,選択信号が順次印加される度に,選択信号が印加された走査線の画素110に対応するデータ信号をデータ線D1〜Dmに印加する。
【0028】
選択信号駆動部200,発光信号駆動部300,及びデータ信号駆動部400は,それぞれ表示パネル100の形成された基板に電気的に接続される。これとは異なり,選択信号駆動部200,発光信号駆動部300,及びデータ信号駆動部400の少なくとも1つを,表示パネル100のガラス基板上に直接装着することもでき,表示パネル100の基板に走査線,データ線及びトランジスタと,同一の層で形成される駆動回路で代替することもできる。
【0029】
また,選択信号駆動部200,発光信号駆動部300,及びデータ信号駆動部400の少なくとも1つを,表示パネル100の基板に接着して電気的に接続した,TCP(tape carrier package),FPC(flexible printed circuit),またはTAB(tape automatic bonding)にチップなどの形で装着することもできる。
【0030】
この際,本実施の形態では,1つのフィールドが2つのサブフィールドに分割されて駆動され,2つのサブフィールドではそれぞれ有機EL素子OLED_R,OLED_Gに対応するデータが書き込まれて発光がなされる。このため,選択信号駆動部200は,サブフィールド毎に選択信号を順次選択走査線S1〜Snに印加し,発光信号駆動部300も,各色相の有機EL素子が一つのサブフィールドで発光するように,発光信号を発光走査線Em1〜Emnに印加する。データ信号駆動部400は,2つのサブフィールドでそれぞれ有機EL素子OLED_R,OLED_Gにそれぞれ対応するデータ信号をデータ線D1〜Dmに印加する。
【0031】
次に,図3および図4を参照して,第1の実施の形態に係る有機EL表示装置の具体的な動作について詳細に説明する。図3は第1の実施の形態に係る有機EL表示装置の画素を示す回路図,図4は第1の実施の形態に係る有機EL表示装置の駆動タイミング図である。
【0032】
図3では,選択走査線S1とデータ線D1に接続される電圧書き込み方式の画素を示し,赤色で発光する有機EL素子OLED_Rと緑色で発光する有機EL素子OLED_Gとを有する画素回路を例示的に示した。
【0033】
図3に示すように,本実施の形態に係る画素回路は,ゲートとソースとの間に印加される電圧に対応する電流をドレインへ出力するトランジスタである駆動トランジスタM1,スイッチングトランジスタM2(第1スイッチング素子),2つの有機EL素子OLED_R,OLED_G,および有機EL素子OLED_R,OLED_Gの発光をそれぞれ制御する発光トランジスタM3a,M3bを有している。
【0034】
1本の発光走査線Em1は,2本の発光信号線Em1a,Em1bからなり,図3に示してはいないが,残りの発光走査線Em2〜Emnもそれぞれ2本の発光信号線からなる。このような発光トランジスタM3a,M3bと発光信号線Em1a,Em1bは,駆動トランジスタM1からの電流を有機EL素子OLED_R,OLED_Gに選択的に伝達するためのスイッチング部を形成する。
【0035】
具体的に,スイッチングトランジスタM2は,ゲートが選択走査線S1に接続され,ソースがデータ線D1に接続されることにより,選択走査線S1からの選択信号に応答してデータ線D1からのデータ電圧を伝達する。駆動トランジスタM1は,ソース(第2電極)が電源電圧VDD(第1電源)を供給する電源線に接続され,ゲート(第1電極)がスイッチングトランジスタM2のドレインに接続されており,駆動トランジスタM1のソースとゲートとの間にキャパシタC1(第1キャパシタ)が接続されている。
【0036】
駆動トランジスタM1のドレイン(第3電極)には発光トランジスタM3a,M3bのソースがそれぞれ接続されており,発光トランジスタM3a,M3bのゲートにはそれぞれ発光信号線Em1a,Em1bが接続されている。発光トランジスタM3a,M3bのドレインにはそれぞれ有機EL素子OLED_R,OLED_Gのアノードが接続されており,有機EL素子OLED_R,OLED_Gのカソードには電源電圧VDDより低い電源電圧VSSが印加される。このような電源電圧VSSとしては,負の電圧または接地電圧を使用することができる。
【0037】
スイッチングトランジスタM2は,選択走査線S1からの低レベルの選択信号に応答してデータ線D1からのデータ電圧を駆動トランジスタM1のゲートへ伝達し,トランジスタM1のゲートに伝達されたデータ電圧と電源電圧VDDとの差に相当する電圧がキャパシタC1に蓄えられる。そして,発光トランジスタM3aが発光信号線Em1aからの低レベルの発光信号に応答してターンオンされると,駆動トランジスタM1から,キャパシタC1に蓄えられた電圧に対応する電流が有機EL素子OLED_Rに伝達されて発光が行われる。
【0038】
同様に,発光トランジスタM3bが発光信号線Em1bからの低レベルの発光信号に応答してターンオンされると,駆動トランジスタM1から,キャパシタC1に蓄えられた電圧に対応する電流が有機EL素子OLED_Gに伝達されて発光が行われる。
【0039】
1つの画素がお互い異なる色相を表示できるように2本の発光信号線にそれぞれ印加される2つの発光信号は,1フィールドの間に重複しない低レベルの期間をそれぞれ有するようにするとよい。
【0040】
次に,図4を参照して本実施の形態に係る有機EL表示装置の駆動方法について詳細に説明する。図4に示すように,本実施の形態によれば,1フィールド1Fが2つのサブフィールド1SF,2SFからなり,サブフィールド1SF,2SFではそれぞれ画素110の有機EL素子OLED_R,OLED_Gを駆動するための信号が印加される。図4ではこれらサブフィールド1SF,2SFの期間を同一に示した。
【0041】
サブフィールド1SFでは,まず第1行目の選択走査線S1に低レベルの選択信号が印加されるとき,データ線D1〜Dmには第1行目の画素110の有機EL素子OELD_Rに対応するデータ電圧Rが印加される。
【0042】
第1行目の発光信号線Em1aに低レベルの発光信号が印加される。すると,第1行目の各画素110のスイッチングトランジスタM2を介してデータ電圧RがキャパシタC1のスイッチングトランジスタM2側の端子に印加され,キャパシタC1にデータ電圧Rに対応する電圧が充電される。そして,第1行目の画素110の発光トランジスタM3aがターンオンされ,キャパシタC1に蓄えられたゲート−ソース電圧に対応する電流が駆動トランジスタM1から赤色の有機EL素子OLED_Rに伝達されて発光が行われる。
【0043】
次に,第2行目の選択走査線S2に低レベルの選択信号が印加されるとき,データ線D1〜Dmには第2行目の画素110の赤色に対応するデータ電圧Rが印加される。また,第2行目の発光信号線Em2aに低レベルの発光信号が印加される。すると,第2行目の画素110の赤色有機EL素子OLED_Rにデータ線D1〜Dmからのデータ電圧Rに対応する電流が供給されて発光が行われる。
【0044】
順次第3行目〜第(n−1)行目の画素110にデータ電圧を印加して赤色有機EL素子OLED_Rを発光させる。第n行目の選択走査線Snに低レベルの選択信号が印加されるとき,データ線D1〜Dmに第n行目の画素の赤色に対応するデータ電圧Rが印加され,第n行目の発光信号線Emnaに低レベルの発光信号が印加される。すると,第n行目の画素110の赤色有機EL素子OLED_Rにデータ線D1〜Dmからのデータ電圧Rに対応する電流が供給されて発光が行われる。
【0045】
こうして,サブフィールド1SFでは,表示パネル100に形成された各画素110に,赤色に対応するデータ電圧Rを印加する。発光信号線Em1a〜Emnaに印加される発光信号は,一定の期間低レベルに維持され,発光信号が低レベルの間,該当発光信号の印加された発光トランジスタM3aに接続された有機EL素子OLED_Rは引き続き発光する。
【0046】
図4では,この期間をサブフィールド1SFと同一の期間で示した。すなわち,各画素110において,赤色有機EL素子OLED_Rは,サブフィールドに対応する期間の間,印加されたデータ電圧に対応する輝度で発光する。
【0047】
次のサブフィールド2SFでは,前のサブフィールド1SFと同様に,第1行目〜第n行目の選択走査線S1〜Snに低レベルの選択信号が順次印加され,各選択走査線S1〜Snに選択信号が印加されるとき,データ線D1〜Dmには該当行の画素110の緑色に対応するデータ電圧Gが印加される。
【0048】
また,選択走査線S1〜Snに低レベルの選択信号が順次印加されることに同期し,発光信号線Em1b〜Emnbにも低レベルの発光信号が順次印加される。すると,印加されたデータ電圧に対応する電流が発光トランジスタM3bを介して緑色の有機EL素子OLED_Gに伝達されて発光が行われる。
【0049】
このサブフィールド2SFでも,発光信号線Em1b〜Emnbに印加される発光信号は一定の期間低レベルに維持され,発光信号が低レベルの間,該当発光信号の印加された発光トランジスタM3bに接続された緑色の有機EL素子OLED_Gは引き続き発光する。
【0050】
図4では,この期間を該当サブフィールド2SFと同一の期間で示した。すなわち,各画素110において,緑色の有機EL素子OLED_Gは,サブフィールド2SFに対応する期間の間,印加されたデータ電圧に対応する輝度で発光する。
【0051】
このように,第1の実施の形態に係る有機EL表示装置の駆動方法によれば,1フィールドが2つのサブフィールドに分割されて順次駆動される。各サブフィールドでは一つの画素110で1色相の有機EL素子のみが発光し,2つのサブフィールドを介して順次2色相の有機EL素子が発光する。
【0052】
上記のように本実施の形態によれば,1画素でいろいろの色相の発光素子を共通の駆動及びスイッチングトランジスタとキャパシタで駆動することができるので,画素内で用いられる素子の構成と電流,電圧または信号を伝達する配線を単純化させ,1本のデータ線D1で2列の有機EL素子を駆動することができる。したがって,表示パネルに形成されるデータ線が減少して表示装置の開口率を向上させることができる。
【0053】
また,データ線D1〜Dmを駆動するためのデータ信号駆動部400の内部構造が簡単になり,駆動部がパネル上に形成される場合,駆動部占有面積を減らして非発光領域(dead space)を減少させることができる。
【0054】
図4では,有機EL表示装置が単一走査(single scan)において順次走査(progressive scan)方式で駆動されることを示したが,本発明は,これに限定されず,二重走査(dual scan)方式,インタレース走査(interlaced scan)方式または他の走査方式も適用することができる。
【0055】
さらに,本実施の形態では,スイッチングトランジスタと駆動トランジスタのみを使用する電圧書き込み方式の画素回路について説明したが,スイッチングトランジスタと駆動トランジスタ以外に,駆動トランジスタのしきい値電圧を補償するためのトランジスタ,または電圧降下を補償するためのトランジスタなどを使用する電圧書き込み方式の画素回路に対しても適用することができる。
【0056】
(第2の実施の形態)
図5は第2の実施の形態に係る有機EL表示装置の画素を概略的に示す説明図である。本実施の形態に係る有機EL表示装置の画素は,1つのOLED駆動部が,2つの行に形成された4つの有機EL素子(4つの発光素子)を駆動するという点において,第1の実施の形態に係る画素回路とは異なる。
【0057】
具体的には,1つのOLED駆動部111が,一番目の行に形成された2つの有機EL素子OLED_R,OLED_G(第1発光素子,第2発光素子)と,2番目の行に形成された2つの有機EL素子OLED_R,OLED_G(第3発光素子,第4発光素子)を駆動する。このように画素を形成する場合には,1フィールドが4つのサブフィールドに分けられて駆動され,各サブフィールドで有機EL素子が順次発光するように駆動される。
【0058】
また,第2の実施の形態では,垂直,及び水平に隣接した4つの有機EL素子を1つのOLED駆動部111で駆動することにより,1本の選択走査線S1で2行の有機EL素子を駆動することができ,1本のデータ線D1で2列の有機EL素子を駆動することができる。したがって,表示パネルに形成される選択走査線及びデータ線が半分に減少して発光表示装置の開口率を,より向上させることができる。
【0059】
また,走査線S1〜Sn及びデータ線D1〜Dmを駆動するための選択信号駆動部200及びデータ信号駆動部400の内部構造が簡単になり,駆動部がパネル上に形成される場合,駆動部占有面積を減らして非発光領域を減少させることができる。
【0060】
図6は,第2の実施の形態に係る画素回路をより具体的に示す回路図であって,3本のデータ線D1,D2,D3と選択走査線S1によって定義される画素領域に形成された3つの画素110a,110b,110cを示した。
【0061】
次に,図6を参照して本実施の形態に係る画素回路の構成及び動作について説明する。但し,3つの画素110a〜110cのうち,データ線D1と選択走査線S1によって定義される画素領域に形成される画素110aを中心として説明し,第1の実施の形態と関連して重複する部分については説明を省略する。第1の実施の形態と同じ番号の素子は,第1の実施の形態と同様の動作をするものとする。
【0062】
第2の実施の形態によれば,OLED駆動部111は,駆動トランジスタM11,スイッチングトランジスタM12,キャパシタC11及び4つの発光トランジスタM13a,M13b,M13c,M13dを有している。
【0063】
発光トランジスタM13a,M13bは,1番目の列に形成された2つの有機EL素子OLED_R1,OLED_G1に電流を伝達するためのものである。発光トランジスタM13a,M13bのゲートはそれぞれ発光信号線Em1a,Em1bに接続され,ソースは駆動トランジスタM11のドレインに接続され,ドレインは有機EL素子OLED_R1,OLED_G1のアノードに接続される。
【0064】
発光トランジスタM13c,M13dは,2番目の列に形成された2つの有機EL素子OLED_R3,OLED_G3に電流を伝達するためのものである。発光トランジスタM13c,M13dのゲートはそれぞれ発光信号線Em1c,Em1dに接続され,ソースは駆動トランジスタM11のドレインに接続され,ドレインは有機EL素子OLED_R3,OLED_G3のアノードに接続される。
【0065】
このように画素を構成し,4つのサブフィールドで発光信号線Em1a〜Em1dに順次低レベルの発光信号を印加すると,駆動トランジスタM11の電流が発光トランジスタM13a〜M13dを介して有機EL素子OLED_R1,OLED_G1,OLED_R3,OLED_G3に順次伝達されて発光がなされる。
【0066】
同様に画素110b,110cに対して,OLED駆動部111は,各々駆動トランジスタM21,M31,スイッチングトランジスタM22,M32,キャパシタC21,C31及び発光トランジスタM23a,M23b,M23c,M23d,M33a,M33b,M33c,M33dを有している。
【0067】
画素110bにおいて,発光トランジスタM23a,M23bは,1番目の列に形成された2つの有機EL素子OLED_B1,OLED_R2に電流を伝達し,画素110cにおいて,発光トランジスタM33a,M33bは,1番目の列に形成された2つの有機EL素子OLED_G2,OLED_B2に電流を伝達する。
【0068】
発光トランジスタM23a,M23b,M33a,M33bのゲートはそれぞれ発光信号線Em1a,Em1bに接続され,ソースは駆動トランジスタM21,M31のドレインに各々接続され,ドレインは各有機EL素子のアノードに接続される。
【0069】
画素110bにおいて発光トランジスタM23c,M23dは,2番目の列に形成された2つの有機EL素子OLED_B3,OLED_R4に電流を伝達し,画素110cにおいて発光トランジスタM33c,M33dは,2番目の列に形成された2つの有機EL素子OLED_G4,OLED_B4に電流を伝達する。発光トランジスタM23c,M23d,M33c,M33dのゲートは,それぞれ発光信号線Em1c,Em1dに接続され,ソースは駆動トランジスタM21,M31のドレインに接続され,ドレインは各有機EL素子のアノードに接続される。
【0070】
画素110aと同様に,4つのサブフィールドで発光信号線Em1a〜Em1dに順次低レベルの発光信号を印加すると,4つの有機EL素子に順次伝達されて発光がなされる。
【0071】
こうして,本実施の形態では,図6に示すように,赤色,緑色,青色で発光する有機EL素子が水平的に繰り返し形成され,1つのOLED駆動部111が水平的に隣接した有EL素子を駆動するので,1つのOLED駆動部111は,お互い異なる色相で発光する有機EL素子を駆動する。
【0072】
具体的には,1つのサブフィールドを第1〜第4サブフィールドに分けて駆動する場合,第1サブフィールドでは,赤色で発光する有機EL素子OLED_R1に対応するデータ電圧がデータ線D1に印加され,発光信号線Em1aに低レベルの発光信号が印加されて駆動トランジスタM11の電流が有機EL素子OLED_R1へ流れる。
【0073】
第2サブフィールドでは,緑色で発光する有機EL素子OLED_G1に対応するデータ電圧がデータ線D1に印加され,発光信号線Em1bに低レベルの発光信号が印加されて駆動トランジスタM11の電流が有機EL素子OLED_G1へ流れる。
【0074】
第3サブフィールドでは,赤色で発光する有機EL素子OLED_R3に対応するデータ電圧がデータ線D1に印加され,発光信号線Em1cに低レベルの発光信号が印加されて駆動トランジスタM11の電流が有機EL素子OLED_R3へ流れる。
【0075】
同様に,第4サブフィールドでは,緑色で発光する有機EL素子OLED_G3に対応するデータ電圧がデータ線D1に印加され,発光信号線Em1dに低レベルの発光信号が印加されて駆動トランジスタM11の電流が有機EL素子OLED_G3へ流れる。
【0076】
このように1つのフィールドを4つのサブフィールドに分け,各サブフィールドで4つの有機EL素子を順次駆動することにより,一つの駆動部で4つの有機EL素子を駆動することができる。
【0077】
(第3の実施の形態)
次に,第3の実施の形態について説明する。ここで,第2の実施の形態のように,1つの駆動部がお互い異なる色相の有機EL素子を駆動する場合には,駆動トランジスタの特性を調節することにより,赤色,緑色,及び青色画像のホワイトバランスを制御することが難しいという不具合があった。
【0078】
そこで,第3の実施の形態においては,1つの画素に形成された駆動部が,同一の色相で発光する有機EL素子を駆動するようにすることにより,前記のような欠点を克服することができる。図7を参照して本実施の形態に係る有機EL表示装置の画素について具体的に説明する。第2の実施の形態と同じ番号の素子は,第2の実施の形態と同様の動作をするものとする。
【0079】
図7は,第3の実施の形態に係る有機EL表示装置の複数の画素を示す回路図である。本実施の形態によれば,各画素110a,110b,110cは,OLED駆動部と4つの有機EL素子とを有しており,データ線D1,D2,D3にはそれぞれ赤色,緑色,及び青色に対応するデータ信号が印加される。
【0080】
画素110aのOLED駆動部は,データ線D1に接続され,赤色のデータ信号に対応する電流を発光トランジスタM13a,M23b,M13c,M23dを介して有機EL素子OLED_R1,OLED_R2,OLED_R3,OLED_R4に印加する。具体的に,駆動トランジスタM11のドレインに発光トランジスタM13a,M23b,M13c,M23dが接続され,ゲートに印加される発光信号に応答して駆動トランジスタM11の電流を有機EL素子OLED_R1,OLED_R2,OLED_R3,OLED_R4へ伝達する。
【0081】
画素110bのOLED駆動部は,データ線D2に接続され,緑色のデータ信号に対応する電流を発光トランジスタM13b,M33a,M13d,M33cを介して有機EL素子OLED_G1,OLED_G2,OLED_G3,OLED_G4に印加する。すなわち,駆動トランジスタM21のドレインに発光トランジスタM13b,M33a,M13d,M33cが接続され,ゲートに印加される発光信号に応答して駆動トランジスタM21の電流を有機EL素子OLED_G1,OLED_G2,OLED_G3,OLED_G4へ伝達する。
【0082】
同様に,画素110cのOLED駆動部は,データ線D3に接続され,青色のデータ信号に対応する電流を発光トランジスタM23a,M33b,M23c,M33dを介して有機EL素子OLED_B1,OLED_B2,OLED_B3,OLED_B4に印加する。すなわち,駆動トランジスタM31のドレインに発光トランジスタM23a,M33b,M23c,M33dが接続され,ゲートに印加される発光信号に応答して駆動トランジスタM31の電流を有機EL素子OLED_B1,OLED_B2,OLED_B3,OLED_B4へ伝達する。
【0083】
このように構成すると,1フィールドの間,1本のデータ線には同一の色相に対応するデータ電圧が印加され,1つの駆動トランジスタは,データ電圧に対応する電流を,同一の色相で発光する有機EL素子へ伝達する。
【0084】
したがって,1つの画素に含まれた駆動トランジスタは,1フィールドの間,同一色相の有機EL素子に流れる電流を制御するので,駆動トランジスタのチャネルの幅Wと長さLの比(W/L)を制御することにより,表示パネルのホワイトバランスを調節することができる。
【0085】
すなわち,図7においてトランジスタM11,M21,M31のチャネルの幅と長さの比をお互い異なるように設定し,実質的に同じレベルのデータ電圧によって,お互い異なる量の電流がそれぞれ赤色,緑色,及び青色の有機EL素子へ流れるようにすることができる。
【0086】
(第4の実施の形態)
次に,第4の実施の形態について説明する。第3の実施の形態のように画素回路を形成する場合には,有機EL素子へ流れる電流は,駆動トランジスタのしきい値電圧に影響される。したがって,製造工程の不均一により,薄膜トランジスタの間にしきい値電圧の偏差が存在する場合,高諧調を得ることが難しいという問題が発生する。
【0087】
そこで,第4の実施の形態では,駆動トランジスタのしきい値電圧を補償するための補償回路を備えることにより,有機EL素子へ流れる電流が駆動トランジスタのしきい値電圧に影響されないようにできる。
【0088】
図8は,第4の実施の形態に係る有機EL表示装置の複数の画素を示す回路図である。本実施の形態に係る画素回路は,駆動部が,駆動トランジスタのしきい値電圧の偏差を補償するための2つのトランジスタとキャパシタをさらに有するという点において,第3の実施の形態に係る画素回路とは異なっている。第3の実施の形態と同じ番号の素子は,第3の実施の形態と同様の動作をするものとする。
【0089】
次に,画素110aを中心として本実施の形態に係る画素回路について具体的に説明する。但し,第3の実施の形態と関連して重複する部分については説明を省略する。なお,現在の選択信号を伝達しようとする選択走査線を「現在走査線」といい,現在の選択信号が伝達される前に選択信号を伝達した選択走査線を「直前走査線」ということとする。
【0090】
画素110aのキャパシタC12(第2キャパシタ)は,トランジスタM11(ゲートとソースとの間に印加される電圧に対応する電流をドレインへ出力するトランジスタ)のゲート(第1電極)とキャパシタC11(第1キャパシタ)との間に接続される。トランジスタM14(第2スイッチング素子)は,トランジスタM11のゲートとトランジスタM11のドレイン(第3電極)との間に接続され,例えば第1制御信号である直前走査線Sn−1からの選択信号に応答してトランジスタM11をダイオード接続させる。トランジスタM15(第3スイッチング素子)は,電源電圧VDD(第1電源)とキャパシタC12のキャパシタC11側の電極に接続されるが,例えば第2制御信号として直前走査線Sn−1からの選択信号に応答して,キャパシタC12の一電極に電源VDDを印加する。
【0091】
画素110aと同様に,画素110b,110cにおいて,キャパシタC12に対してキャパシタC22,C32が,トランジスタM14に対してトランジスタM24,M34が,トランジスタM15に対してトランジスタM25,M35を構成することができる。
【0092】
直前走査線Sn−1に低レベルの電圧が印加されると,トランジスタM14がターンオンして,トランジスタM11がダイオード接続状態になり,トランジスタM15もターンオンして,キャパシタC12にはトランジスタM11のしきい値電圧が蓄えられる。
【0093】
その後,現在走査線Snに低レベルの電圧が印加されると,トランジスタM12がターンオンして,データ電圧VdataがキャパシタC11に充電される。キャパシタC12にはトランジスタM11のしきい値電圧Vthが蓄えられているので,トランジスタM11のゲートには,データ線D1からデータ電圧VdataとトランジスタM11のしきい値電圧Vthとの和に対応する電圧が印加される。
【0094】
したがって,発光信号線Emna,Emnb,Emnc,Emndのいずれかに低レベルの電圧が印加され,対応する発光トランジスタM13a,M23b,M13c,M23dがターンオンすると,数式1のような電流が有機EL素子に伝達されて,発光が行われる。
【0095】
【数1】

【0096】
ここで,IOLEDは有機EL素子に流れる電流,VgsはトランジスタM11のソースとゲート間の電圧,VthはトランジスタM11のしきい値電圧,Vdataはデータ電圧,βは定数値を示す。
【0097】
これにより,有機EL素子OLEDに流れる電流が,トランジスタM11のしきい値電圧に影響されなくなって,所望の諧調画像を表現することができる。一方,画素110aで直前走査線Sn−1に選択信号が印加され,キャパシタC12にトランジスタM11のしきい値電圧に対応する電圧を蓄える場合,キャパシタC12に蓄えられた電圧は,駆動トランジスタM11のドレイン電極の電圧に影響されるが,ドレイン電極の電圧は,直前のサブフィールドでトランジスタM11を介して流れた電流に影響される。
【0098】
本実施の形態において,駆動トランジスタM11は直前のサブフィールドと現在のサブフィールドで全て赤色に対応する電流を出力するので,現在のサブフィールドと同一の条件下でトランジスタM11のしきい値電圧の偏差を補償するための電圧がキャパシタC12に蓄えられる。したがって,駆動トランジスタM11のドレイン電極に寄生キャパシタンス成分が存在して駆動トランジスタM11のしきい値電圧とは異なる電圧で充電されるとしても,現在のサブフィールドと直前のサブフィールドとで同一の条件下でしきい値電圧に対応する電圧が充填されるので,駆動トランジスタM11のしきい値電圧の偏差を効果的に補償することができる。
【0099】
このように第1〜第4の実施の形態によれば,1つの駆動部で複数の有機EL素子を駆動することにより,開口率の向上した発光表示装置を提供することができる。また,画素の内部に含まれる素子の構成及び配線を単純化することが可能な発光表示装置を提供することができる。
【0100】
ひいては,表示パネルに形成されるデータ線及び走査線の数を減らしてデータ信号駆動部と走査駆動部の内部構成を簡単にすることができ,表示パネルで駆動部占有領域を減少させて非発光領域を減少させることができる。
【0101】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0102】
また,例えば,図5〜図8では,1つの駆動トランジスタに4つの有機EL素子が発光トランジスタを介して接続されていると示したが,4つの有機EL素子に限定されず,実施の形態によっては,1つの駆動トランジスタに他の数の有機EL素子を駆動する形態も可能である。すなわち,図5及び図6のように画素を形成する場合,1つの駆動トランジスタが,2つの列にそれぞれ形成された赤色,緑色,青色の有機EL素子を駆動するようにすることができ,図7及び図8のように画素を形成する場合には,1つの駆動トランジスタが,2つの列にそれぞれ形成された3つの同一色相で発光する有機EL素子を駆動するようにすることができる。そして,実施の形態によっては,1つの駆動トランジスタが,3つ以上の行に形成された有機EL素子を駆動するようにすることができる。
【0103】
また,上記では,駆動トランジスタとしてP型のチャネルを有するトランジスタを用いて説明したが,実施の形態によっては,N型のチャネルを有するトランジスタを使用することもでき,MOSトランジスタ以外に第1〜第3電極を備え,第1電極と第2電極との間に印加される電圧に対応して,第3電極へ出力される電流を制御することが可能な他の能動素子を用いて駆動トランジスタを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は,表示装置,表示パネル,及びその駆動方法に適用可能であり,特に,有機物質の電界発光を用いており,開口率が向上して表示パネルの非発光領域を減少させることができる,有機電界発光(electro luminescent:EL)表示装置,表示パネル及び表示パネルの駆動方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】第1の実施の形態に係る表示装置の構成を示す説明図である。
【図2】図1の表示装置の画素を概略的に示す説明図である。
【図3】第1の実施の形態に係る表示装置の1つの画素を示す回路図である。
【図4】第1の実施の形態に係る表示装置の駆動タイミング図である。
【図5】第2の実施の形態に係る表示装置の1つの画素を示す回路図である。
【図6】第2の実施の形態に係る表示装置の複数の画素を示す回路図である。
【図7】第3の実施の形態に係る表示装置の複数の画素を示す回路図である。
【図8】第4の実施の形態に係る表示装置の複数の画素を示す回路図である。
【符号の説明】
【0106】
100 表示パネル
110 画素
S1〜Sn 選択走査線
Eml〜Emn 発光走査線
D1〜Dm データ線
111 OLED駆動部
200 選択信号駆動部
300 発光信号駆動部
400 データ信号駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ信号を伝達する複数のデータ線と,選択信号を伝達する複数の走査線と,前記データ線及び前記走査線に接続されて前記データ信号及び前記選択信号が印加される複数の画素と,を有する表示装置において;
前記画素は,
前記選択信号が印加されている間,前記データ信号を入力し,前記データ信号に対応するデータ電流を出力する発光素子駆動部と,
前記データ電流に対応して各々発光する少なくとも4つの発光素子と,
前記データ電流を各々の前記発光素子へ伝達するスイッチング部と,
を備え,
前記4つの発光素子のうち,少なくとも2つの発光素子は,前記走査線とデータ線とからお互い異なる位置に形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記4つの発光素子は,2つの列にそれぞれ2つずつ形成されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記発光素子駆動部は,
第1電極,第2電極及び第3電極を備え,前記第1電極と前記第2電極との間に印加される電圧に対応する電流を前記第3電極へ出力するトランジスタと,
前記選択信号に応答して前記データ信号を第1キャパシタへ伝達する第1スイッチング素子と,
前記データ信号に対応する電圧を蓄える前記第1キャパシタと,
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記トランジスタの前記第2電極は第1電源に接続され,
前記発光素子駆動部は,
前記トランジスタの前記第1電極と前記第1キャパシタとの間に接続される第2キャパシタと,
前記トランジスタの前記第1電極と前記第3電極との間に接続され,第1制御信号に応答して前記トランジスタをダイオード接続させる第2スイッチング素子と,
前記第1電源と前記第2キャパシタの前記第1キャパシタ側の電極との間に接続され,第2制御信号に応答して,前記第2キャパシタの前記第1キャパシタ側の電極に,前記第1電源の電圧を印加する第3スイッチング素子と,
をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1制御信号と前記第2制御信号とは実質的に同一の制御信号であることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1制御信号は,前記選択信号が印加される前に印加された走査線の選択信号であることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項7】
前記スイッチング部は,お互い異なる期間に,前記データ電流を前記4つの発光素子へそれぞれ伝達する4つのスイッチング素子を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の表示装置。
【請求項8】
前記4つの発光素子のうち,少なくとも2つは,異なる色相で発光することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表示装置。
【請求項9】
前記4つの発光素子は,実質的に同一の色相で発光することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表示装置。
【請求項10】
発光表示装置の表示パネルにおいて;
データ信号を伝達する複数のデータ線と,
選択信号を伝達する複数の走査線と,
前記データ線及び前記走査線に接続されて前記データ信号及び前記選択信号が印加される複数の画素を有する表示部と,
少なくとも4つの前記データ信号を1フィールドの間に時分割し,前記データ線に印加するデータ信号駆動部と,
前記複数の走査線に,順次前記選択信号を印加するための走査駆動部と,
を備えており,
前記画素は,
前記選択信号が印加されている間,前記データ信号を入力し,前記データ信号に対応するデータ電流を出力する駆動部と,
前記データ電流に対応して各々発光する少なくとも4つの発光素子と,
前記データ電流を各々の前記発光素子へ伝達するスイッチング部と,
を有し,
前記4つの発光素子は,
前記走査線に対して水平方向に形成された第1及び第2発光素子と,前記第1及び第2発光素子各々の,前記走査線に対して垂直方向に形成された第3及び第4発光素子であることを特徴とする表示パネル。
【請求項11】
前記1フィールドは,少なくとも4つのサブフィールドに分けられて駆動され,前記走査駆動部は,前記選択信号を前記サブフィールド毎に前記走査線に順次印加することを特徴とする請求項10に記載の表示パネル。
【請求項12】
前記データ信号駆動部は,前記4つのサブフィールドで前記走査線に前記選択信号が印加される間,前記4つの発光素子に対応する前記データ信号を前記データ線に順次印加することを特徴とする請求項11に記載の表示パネル。
【請求項13】
前記駆動部は,
第1電極,第2電極及び第3電極を備え,前記第1電極と前記第2電極との間に印加される電圧に対応する電流を前記第3電極へ出力するトランジスタと,
前記選択信号に応答して前記データ信号を第1キャパシタへ伝達する第1スイッチング素子と,
前記データ信号に対応する電圧を蓄える前記第1キャパシタと,
を有することを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の表示パネル。
【請求項14】
前記スイッチング部は,お互い異なる期間に,前記データ電流を前記4つの発光素子へそれぞれ伝達する4つのスイッチング素子を有することを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の表示パネル。
【請求項15】
データ信号を伝達する複数のデータ線と,選択信号を伝達する複数の走査線と,前記データ線および前記走査線に接続されて前記データ信号及び前記選択信号が印加される複数の画素と,を備える表示パネルの駆動方法において;
前記複数の画素は少なくとも4つの発光素子を有しており,1フィールドが少なくとも4つのサブフィールドに分けられて駆動され,
各サブフィールドで前記走査線に前記選択信号を順次印加する段階と,
前記選択信号が印加される間,前記データ線に前記データ信号を書き込む段階と,
前記データ信号に対応する電流を前記4つの発光素子に順次伝達する段階と,
を含み,
前記4つの発光素子は,前記走査線に対して水平方向に形成された第1及び第2発光素子と,前記第1及び第2発光素子各々の前記走査線に対して垂直方向に形成された第3及び第4発光素子であることを特徴とする表示パネルの駆動方法。
【請求項16】
前記データ線には,前記第1〜第4発光素子に対応するデータ信号が,順次書き込まれることを特徴とする請求項15に記載の表示パネルの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−65274(P2006−65274A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21854(P2005−21854)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】