説明

表示装置

【課題】発光素子と色変換層とを組み合わせて用いた表示装置において、各色変換層を介しての各変換光の取り出し効率を高めることが可能な新たな構成を提供する。
【解決手段】発光層13-3を有する薄膜の積層体からなる複数の発光素子3を基板2上に配列してなる表示装置1において、発光素子3のうちの少なくとも一部は、反射電極層11,15によって上下方向が狭持され、発光層13-3で生じた発光光hbを基板2と平行な方向に放出する構成である。また、これらの発光素子3のそれぞれに隣接して、反射電極層15からなる光反射層と、発光層13-3から放出された発光光hbを異なる波長の変換光Hr,Hgに変換する色変換層21r,21gとを、基板2上に積層してなる色変換素子5が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し特には色変換層を備えたカラー表示を行う表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescence)を利用した有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に、正孔輸送層や発光層等の有機層を積層させた発光ユニットを設けてなり、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。
【0003】
このような有機電界発光素子を用いたフルカラーの表示装置の1つに、有機電界発光素子と、色変換層とを組み合わせた構成がある。色変換層を用いることにより、有機電界発光素子の作製において発光層を含む有機層を作り分けることなく、すなわちメタルマスクを用いた高精細な塗り分けを行わずにフルカラーの表示装置を作製することが可能である。
【0004】
上記色変換層を用いた表示装置においては、有機電界発光素子として青色発光素子が用いられ、各色発光の全ての画素には青色発光素子が設けられる。そして、赤色発光の画素および緑色発光の画素には、青色発光素子の光取り出し側に、吸収した青色の発光光を、蛍光または燐光、または両者の混合によって赤色または緑色に再発光させる色変換層がそれぞれ設けられる。一方、青色発光の画素には色変換層を設けず、青色発光素子での青色発光をそのまま取り出す構成となっている。
【0005】
このような構成の表示装置において色再現性の向上を図るべく、各画素における色純度を確保するためには、各発光素子から発せられた光を色変換層において効率よく他の波長の光に変換する必要がある。しかしながら、変換効率を高めることを目的として色変換層中における蛍光体や燐光体の濃度を高めた場合、濃度消光が発生するために高い変換効率を得ることができなかった。
【0006】
そこで、色変換層に対して、光源となる発光素子から発せられる光のピーク波長に対する吸光度が1.6以上で、かつ蛍光量子収率が50%以上との規定を設けることで、色純度の良い発光素子とする構成が提案されている(以上、下記特許文献1参照)。
【0007】
またこの他にも、有機電界発光素子で発生させた発光光の取り出し効率のロスを低減することを目的として、有機電界発光素子を第1発光部とし、この第1発光部に隣接するように色変換層(蛍光膜)を設けた構成が提案されている(以上、下記特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2005−56767号公報
【特許文献2】特開2005−71920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、発光素子と色変換層とを組み合わせて用いた表示装置においては、各色変換層を介しての各色光の取り出し効率を高める構成が提案されているが、本発明はこのような組み合わせの表示装置において、さらに取り出し効率を高めることが可能な構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するための本発明の表示装置は、発光層を有する薄膜の積層体からなる複数の発光素子を基板上に配列してなる表示装置において、発光素子のうちの少なくとも一部は、光反射層によって上下方向が狭持され、発光層で生じた発光光を当該電極層および前記基板と平行な方向に放出する構成である。また、このような構成の発光素子のそれぞれに隣接して、光反射層と当該発光素子の発光層から放出された発光光を異なる波長の変換光に変換する色変換層とを、基板上に積層してなる色変換素子が設けられている。
【0011】
このような構成の表示装置では、光反射層によって上下方向が狭持された発光素子において、その発光層で生じた発光光の殆どを、基板と平行な方向に効率的に放出させることができる。そして、発光素子から効率的に放出させた発光光は、色変換層において各色の変換光に変換され、色変換層に積層された光反射層で反射して基板と垂直方向に放出される。この際、色変換層への発光光の入射光路は、基板と平行な色変換層の面内方向であり、発光光の入射方向に対する色変換層の長さを充分に大きくすることで、発光光を充分に吸収することができる。一方、色変換層からの変換光の出射光路は、基板と垂直な色変換層の膜厚方向であり、色変換層の膜厚を充分に薄くすることで、当該色変換層での変換光の自己吸収を抑えて効率良く変換光を取り出すことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明の表示装置によれば、高効率で色変換層に入射させた発光光を、色変換層において充分に吸収させて変換光に変換することができ、しかも変換光が当該色変換層で自己吸収されることを充分に抑えて取り出すことができるため、変換光の取り出し効率の向上を図ることが可能になる。これにより、高精細なカラー表示を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の表示装置の構成を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施形態の表示装置を示す断面構成図である。
【0014】
先ず、図1に示される本実施形態の表示装置1は、基板2上に、赤色画素R、緑色画素G、および青色画素Bが設定されたものである。この基板2上には、各画素R,G,Bに対応させて発光素子3が配列されている。このうち、赤色画素Rおよび緑色画素Gには、発光素子3に隣接して色変換素子5が設けられた構成となっている。一方、青色画素Bには、発光素子3に隣接して光散乱素子7が設けられた構成となっている。
【0015】
ここで基板2は、ガラス基板のような透明基板からなり、例えば画素駆動用の薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)やこれを駆動する駆動回路を備えた、いわゆるTFT基板として構成されていることとする。
【0016】
各発光素子3は、各画素R,G,Bに共通の構成の薄膜発光素子であって、発光層を有する薄膜の積層体からなり、ここでは一例として有機電界発光素子であることとする。これらの発光素子3は、図中右下の拡大図に示すように、基板2側から順に、光反射層を兼ねた反射電極層11、低屈折率層12、発光層13-3を含む機能層13、低屈折率層14,光反射層を兼ねた反射電極層15を積層した構成となっている。これにより、この発光素子3を配列してなる表示装置1は、各発光素子3での発光光hbを、反射電極層15間で反射させた基板2と平行な方向に取り出す構成となっている。
【0017】
次に、発光素子3の詳細な構成を、基板2側から順に説明する。
【0018】
先ず反射電極層11は、発光素子3において陽極(または陰極)として用いられるもので、画素電極としてパターニングされている。またこの反射電極層11は、銀(Ag)のような光反射特性の良好な材料からなる層と、ITO(Indium Tin Oxide)のような透明電極材料からなる層との積層構造であっても良い。このような反射電極層11は、その周縁部がここでの図示を省略した絶縁性パターンで覆われ、絶縁性パターンから反射電極層11が露出している部分が発光素子3として機能する。そして、以下に説明する低屈折率層12および機能層13が、反射電極層11の露出面を完全に覆う構成となっている。
【0019】
低屈折率層12は、反射電極層11においての発光光hbの吸収ロスを抑えるための層である。この低屈折率層12は、この上部に設けられた発光層13-3の屈折率よりも充分に低い屈折率を備えていることとする。そして次に説明する機能層13の反射電極層11側の界面層(13-1)が、このように充分に低い屈折率を有する材料からなる場合には、図示したように界面層(13-1)を低屈折率層12として用いてもよい。
【0020】
機能層13は、陽極(ここでは例えば反射電極層11)側から順に、例えば正孔注入層(つまり上記界面層)13-1、正孔輸送層13-2、発光層13-3、電子輸送層13-4、および電子注入層13-5等をこの順に積層させてなる。ただし、少なくとも青色の発光光hbを発生させる発光層13-3を備えていれば良く、この発光層13-3において高輝度の発光が得られるように他の層が必要に応じて設けられていることとする。
【0021】
尚、各層13-1〜13-5は、それぞれが単層で構成されても良いし積層構造であっても良い。また、1つの層が複数の機能を備えてもよく、例えば発光層13-3が電子輸送層としての機能を有していても良い。
【0022】
低屈折率層14は、次に説明する反射電極層15においての発光光hbの吸収ロスを抑えるための層である。この低屈折率層14は、発光層13-3の屈折率よりも充分に低い屈折率を備えていることとする。そして、上述した機能層13の反射電極層15側の界面層(例えば上記電子注入層13-5)が、充分に低屈折率な材料からなる場合には、図示したようにこの界面層(13-5)を低屈折率層14として用いても良よい。またこの低屈折率層14は、各発光素子3に共通層として設けられ、基板2上にベタ膜形成されていて良い。
【0023】
反射電極層15は、反射電極層11が陽極として用いられる場合には陰極として用いられ、その逆である場合は陽極として用いられる。このような光透過性電極13は、各発光素子3に共通層として設けられ、基板2上にベタ膜形成されていて良い。またこの反射電極層15は、光反射特性の良好な材料からなる層と、透明電極材料からなる層との積層構造であっても良い。尚、図面においては、説明のため低屈折率層14および反射電極層15が画素毎にパターニングされている状態を示している。
【0024】
以上説明した発光素子3の各層の一構成例を次に示す。
反射電極層11 :Ag(500nm)/ITO(1100nm)、
正孔注入層13-1:m−MTDATA(120nm)、
正孔輸送層13-2:αNPD(11nm)、
発光層13-3 :DPVBi+5%BCzVBi(30nm)、
電子輸送層13-4:Alq3(10nm)
電子注入層13-5:LiF(0.3nm)、
反射電極層15 :MgAg(1nm)/ITO(100nm)/Ag(100nm)。
【0025】
また、これらの各層のうちITO膜の成膜は、DCマグネトロンスパッタ方式によって行われ、例えば成膜雰囲気内圧力0.3Pa、1%O2/Arガス流量5sccm、150Wの条件で行われる。これ以外の各層(膜)の成膜は、真空蒸着法によって行われ、例えば成膜雰囲気内圧力を1×10-4Paに保った抵抗加熱法が適用される。
【0026】
以上のように構成された発光素子3は、発光層13-3で生じた発光光hbが、反射電極層11,15間で反射し、基板2と水平方向に放出される構成となっている。
【0027】
以上の構成例においては、正孔注入層13-1が低屈折率層12を兼ねており、電子注入層13-5が低屈折率層14を兼ねている。また、2枚の反射電極層11,15が、光反射層を兼ねた構成となっている。しかしながら、2枚の電極間に有機層13を狭持した発光素子3をさらに低屈折率層で狭持し、この外側にさらに光反射層を設けた構成であっても良い。この場合、発光素子3を構成する2枚の電極は、透明電極材料で構成されることとする。
【0028】
次に、赤色画素Rと緑色画素Gの発光素子3に隣接して設けられた色変換素子5の構成を説明する。色変換素子5は、基板2側から順に、色変換層21r,21g、低屈折率層14、および光反射層15を積層した構成となっている。
【0029】
このうち赤色画素Rの色変換層21rは、発光素子3で発生した青色の発光光hbを吸収し、赤色の変換光hrに変換して再発光させる蛍光体または燐光体の少なくとも一方を含有している。また緑色画素Gの色変換層21gは、発光素子3で発生した青色の発光光hbを吸収し、緑色の変換光hgに変換して再発光させる蛍光体または燐光体の少なくとも一方を含有している。
【0030】
このような色変換層21r,21gは、蛍光体または燐光体の少なくとも一方と、これを分散または溶解させる樹脂とで構成されており、有機蛍光色素溶解含有層、有機蛍光顔料分散層、無機蛍光体結晶分散層、量子ドット蛍光体分散層などを適用することができる。またこれらの色変換層21r、21gは、光透過性の基板2よりも高い屈折率を備えていることとする。
【0031】
そして特に、これらの色変換層21r,21gのそれぞれにおいては、以降に説明するように、発光素子3からの発光光hbの入射方向の長さLr,Lgが、基板2と垂直方向の膜厚tr,tgよりも充分に大きいことが重要である。
【0032】
すなわちここでは、図2に示すように、色変換層21(21r,21g)のパターン形状が、基板2と平行方向の長さL(Lr,Lg)、および膜厚t(tr,tg)であって、この色変換層21に対して基板(図示省略)と平行な方向から発光光h(hb)が入射する構成を考える。尚ここでは、色変換層21内に入射した発光光hは、外部に発散することなく色変換層21内ですべて吸収されるものと仮定する。また、色変換層21は、下記式(1)に示す光吸収特性(吸収比γ)を備えているとする。
【0033】
【数1】

【0034】
また、色変換層21に含まれる蛍光体のモル濃度をn、モル吸光度で表したモル吸収係数をKとすると、k=K×nとなり、発光光の吸収係数k0=K0×nとなる。
【0035】
以上の吸収比γ、発光光のモル吸光係数K0、および色変換層21の長さL,および膜厚tから、各色変換層21における全変換光強度Iは、下記式(2)のように表される。
【数2】

【0036】
ここで図3のグラフに示すように、式(2)を構成する関数I2=[1−Exp(-2L×γ×n)]/(L×γ×n)は、(L×γ×n)が小さいときは2に収束し、大きくなるにしたがって単調に減少する。したがって、吸収比γが有限であるときに全変換光強度Iを大きくするには、(L×γ×n)を小さくして関数I2が大きくなるようにすれば良い。
【0037】
また全変換光強度Iを大きくするには、同時に式(2)を構成する関数I1=[1−Exp(-K0×n×t)]を大きくする必要がある。
【0038】
以上から、具体的には、(L×γ×n)<0.2、(K0×n×t)>2となるようにすれば良い。
【0039】
ここで、発光光hにおけるピーク波長λの吸収係数k0、および吸収係数γは、色変換層21を構成する材料によって決まるパラメーターである。そして、調整可能な値は、色変換層21に含まれる蛍光体のモル濃度n、色変換層21の長さL,色変換層21の膜厚tである。このため、対象とする構造を考慮しつつ、上記条件(L×γ×n)<0.2、(K0×n×t)>2となるように、これらの値を調整することにより、変換光Hが、色変換層21において自己吸収される量を極めて少なく抑えることができる。これにより、蛍光材料の量子収率に近い値の変換光Hを色変換層21から取り出すことが可能になる。
【0040】
このような色変換層21(21r,21g)上に積層された低屈折率層14は、この上部に設けられる光反射層15においての発光光hbの吸収ロスを抑えるための層である。このような低屈折率層14は、当該色変換層21(21r,21g)よりも屈折率が低い材料で構成されることとし、また発光素子3の低屈折率層14と共通層として設けられたものであっても良い。
【0041】
そして光反射層15は、発光素子の反射電極層15と共通層として設けられたものであって良い。特に、色変換素子5を構成する光反射層15は、反射電極層15における光反射性材料からなる層のみを延設した構成であっても良い。
【0042】
このように、色変換層21上に、低屈折率層14を介して反射電極層(光反射層)15を設け、また上述したように色変換層21(21g、21r)の屈折率を光透過性の基板2よりも高くしたことにより、色変換層21内に入射した発光光hは、外部に発散することなく色変換層21内ですべて吸収される構成となる。
【0043】
以上説明した色変換素子5の形成は、次のように行う。先ず、発光素子3で発生する青色の発光光hbによって励起可能な蛍光量子収率を持つ蛍光材料を、エポキシ樹脂中(屈折率1.9)に所望の濃度で分散させ、スクリーン印刷法にてガラス(屈折率1.5)基板上にパターン形成する。その後、約100℃で硬化させ、色変換層21r,21gを形成る。尚、色変換層21r,21gのパターン形状(長さLr,Lgおよび膜厚Tr,Tg)は、上述のようにして設定された値とする。
【0044】
その後、発光素子3の形成と同一工程で、低屈折率層14および反射電極層15を順次形成する。
【0045】
以上のように構成された色変換素子5では、図4の拡大図に示すように、発光素子3から基板2と平行方向に放出された発光光hbが、色変換層21(21r,21g)に入射すると、これらの色変換層21において吸収されて各色の変換光H(Hr,Hg)に変換される。これらの変換光Hは、反射電極層(光反射層)15で反射され、光透過性材料からなる基板(図示省略)側から表示光として放出されることになる。
【0046】
次に、青色画素Bの発光素子3に隣接して設けられた光散乱素子7の構成を説明する。光散乱素子7は、基板2側から順に、光散乱層23、低屈折率層14、および光反射層15を積層した構成となっている。
【0047】
このうち光散乱層23は、発光素子3で発生した青色の発光光hbを吸収することなく散乱させて等方的に放射させる。これにより、青色画素Bからは、青色の発光光hbがそのまま放出される構成となっている。またこの光散乱層23は、光透過性の基板2よりも高い屈折率を備えていることとする。
【0048】
このような光散乱層23は、例えば前出のエポキシ樹脂中に白色顔料であるTiO2微粒子などを分散させた層によって構成されている。このような光散乱層23の形成は、上述した色変換層21r,21gの形成と同様のスクリーン印刷法によって行われる。
【0049】
この光散乱層23上に積層された低屈折率層14は、この上部に設けられる光反射層15においての発光光hbの吸収ロスを抑えるための層である。このような低屈折率層14は、当該色変換層よりも屈折率が低い材料で構成されることとし、また発光素子3の低屈折率層14と共通層として設けられたものであっても良い。
【0050】
そして光反射層15は、発光素子の反射電極層15と共通層として設けられたものであって良い。特に、光散乱素子7を構成する光反射層15は、反射電極層15における光反射性材料からなる層のみを延設した構成であっても良い。
【0051】
以上のように構成された光散乱素子7では、図5の拡大図に示すように、発光素子3から基板2と平行方向に放出された発光光hbが、光散乱層23に入射すると、この光散乱層23において等方的に散乱する。そして散乱した発光光hbの一部は、そのまま光透過性材料からなる基板(図示省略)側から表示光として放出されることになる。また、その他の発光光hbは、反射電極層(光反射層)15で反射され、光透過性材料からなる基板(図示省略)側から表示光として放出されることになる。
【0052】
尚、以上のように基板2上に配列形成せれた発光素子3,色変換素子5,および光散乱素子7は、ここでの図示を省略した窒化シリコン膜のような保護膜によって覆われ、さらに必要に応じて接着剤を介して対向基板が貼り合せられることにより、2枚の基板間に封止される。
【0053】
以上説明した構成の表示装置1においては、反射電極層11,14によって上下方向を狭持した構成の発光素子3を各画素R,G,Bに設けた。このような発光素子3では、その発光層13-3で生じた発光光hbの殆どを、基板2と平行な方向に効率的に放出させることができる。そして、図2の拡大図に示すように、効率的に放出させた発光光hbは、色変換層21r,21bで各色の変換光Hr,Hgに変換され、色変換層21r,21bに積層された反射電極層15で反射して基板2と垂直方向に放出される。
【0054】
この際、色変換層21r,21bへの発光光hbの入射光路は、基板2と平行な色変換層21r,21bの面内方向である。そして、発光光hbの入射方向に対する色変換層21r,21bの長さLr,Lgを充分に大きくすることで、発光光hbを充分に吸収することができる。一方、色変換層21r,21bからの変換光Hr,Hgの出射光路は、基板2と垂直な色変換層21r,21bの膜厚tr,tg方向であり、色変換層21r,21bの膜厚tr,tgを充分に薄くすることで、色変換層21r,21bでの変換光Hr,Hgの自己吸収を抑えて効率良く変換光Hr,Hgを取り出すことができる。
【0055】
したがって、高効率で色変換層21r,21gに入射させた発光光hbを、これらの色変換層21r,21gにおいて充分に吸収させて変換光Hr,Hgに変換することができ、しかも変換光Hr,Hgが色変換層21r,21gで自己吸収されることを充分に抑えて取り出すことができる。この結果、変換光Hr,Hgの取り出し効率の向上を図ることが可能になる。これにより、高精細なカラー表示を行うことができる。
【0056】
尚、上述した実施形態においては、全ての画素R,G,Bにおいて、同一構成の発光素子3を設けた構成を説明した。しかしながら、図6に示すように、発光光hbを色変換せずにそのまま表示光として放出する青色画素Bの発光素子3’は、光取り出し側となる電極層を光透過性電極層11’として構成しても良い。この場合、青色画素Bには光散乱素子を設けず、発光層での発光光hbを光透過性電極層11’側から直接取り出す構成とする。
【0057】
また、上述した実施形態においては、表示素子3で発生させた青色の発光光hbを、赤色の変換光Hrや緑色の変換光Hgに色変換して放出する表示装置1.1’の構成を説明した。しかしながら、発光素子3においての発光光の色、および変換光の色は、このような組み合わせに限定されることはない。例えば、シアン系の発光光を、これよりも長波長のマゼンダやイエローのような変換光に変換して放出する構成であっても良い。
【0058】
さらに、表示素子3,3’は、発光層を有する薄膜の積層体からなる発光素子であれば、有機電界発光素子に限定されることはない。このような発光素子の他の例として、無機電界発光素子や、無機LEDを適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態の表示装置の構成を示す断面図である。
【図2】実施形態の表示装置における光変換素子の拡大図である。
【図3】式(2)中の関数I2と(L×γ×n)との関係を示すグラフである。
【図4】実施形態の表示装置における光変換素子からの表示光の放出を説明する図である。
【図5】実施形態の表示装置における光散乱素子からの表示光の放出を説明する図である。
【図6】本発明の表示装置の他の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1,1’…表示装置、2…基板、3,3’…発光素子、5…色変換素子、7…光散乱素子、11,15…反射電極層(光反射層)、11’…光透過性電極層、12,14…低屈折率層、13-3…発光層、hb…発光光、Hr,Hg…変換光、21r,21g…色変換層、23…光散乱層、Lr,Lg…入射方向の長さ、tr,tg…膜厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層を有する薄膜の積層体からなる複数の発光素子を基板上に配列してなる表示装置において、
前記複数の発光素子のうちの少なくとも一部は、光反射層によって上下方向が狭持され、前記発光層で生じた発光光を前記基板と平行な方向に放出する構成であると共に、
前記一部の発光素子のそれぞれに隣接して、光反射層と前記発光層から放出された発光光を異なる波長の変換光に変換する色変換層とを、前記基板上に積層してなる色変換素子が設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の表示装置において、
前記色変換層は、前記発光光の入射方向の長さが、前記基板と垂直方向の膜厚よりも大きい
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の表示装置において、
前記色変換層と前記光反射層との間に、当該色変換層よりも屈折率が低い材料からなる低屈折率層が設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1記載の表示装置において、
前記発光素子と前記光反射層との間に、前記発光素子よりも屈折率が低い材料からなる低屈折率層が設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1記載の表示装置において、
前記発光素子を構成する電極層が、当該発光素子を狭持する前記光反射層を兼ねている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1記載の表示装置において、
前記発光素子を狭持する2枚の光反射層のうちの一方と前記色変換素子を構成する光反射層とが共通層として設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項1記載の表示装置において、
前記複数の発光素子は、同一の発光層を用いて構成されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項7記載の表示装置において、
前記発光層は青色の発光光を発生するものであり、
前記色変換層のうちの一部は、前記発光光を赤色の波長の変換光に変換し、
前記色変換層のうちの残りの一部は、前記発光光を緑色の波長の変換光に変換する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項1記載の表示装置において、
前記複数の発光素子のうちの残りの一部は、光反射層によって上下方向が狭持され、前記発光層で生じた発光光を前記基板と平行な方向に放出する構成であると共に、当該発光素子のそれぞれに隣接して、光反射層と当該発光素子の発光層から放出された発光光を散乱させる光散乱層とを、前記基板上に積層してなる光散乱素子が設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項10】
請求項9記載の表示装置において、
前記光散乱層と前記光反射層との間に、当該光散乱層よりも屈折率が低い材料からなる低屈折率層が設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項11】
請求項1記載の表示装置において、
前記複数の発光素子のうちの残りの一部は、
前記2枚の電極層のうちの一方が光反射性材料で構成され、他方が光透過性材料で構成され、前記発光層で生じた発光光を当該光透過性材料で構成された電極層側から放出する
ことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−52950(P2008−52950A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226002(P2006−226002)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】