表示装置
【課題】視認範囲が狭い画像を表示する場合であっても表示画像の輝度が低くならず、かつ視認範囲の広い画像を表示する際に表示が行われない領域(暗部)が生じることがない表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置は、複数の画素群A,Bを有する表示パネル1と、各画素群A,Bが表示する各々の画像の視認範囲5,6を互いに一部が交叉するように制限する多視点化部材8とを備えている。表示装置は、複数の視認範囲5,6の交叉部9で画素群A,Bの画像を同時に観察すると有意な画像を認識できるが、交叉部9以外の単一の視認範囲5,6で各画素群A,Bの画像を観察すると有意な画像を認識することができない第1の表示モードと、交叉部9で画素群A,Bの画像を同時に観察した場合と、交叉部9以外の単一の視認範囲5,6で各画素群A,Bの画像を観察した場合とのいずれにおいても有意な画像を認識することができる第2の表示モードとを切替可能である。
【解決手段】表示装置は、複数の画素群A,Bを有する表示パネル1と、各画素群A,Bが表示する各々の画像の視認範囲5,6を互いに一部が交叉するように制限する多視点化部材8とを備えている。表示装置は、複数の視認範囲5,6の交叉部9で画素群A,Bの画像を同時に観察すると有意な画像を認識できるが、交叉部9以外の単一の視認範囲5,6で各画素群A,Bの画像を観察すると有意な画像を認識することができない第1の表示モードと、交叉部9で画素群A,Bの画像を同時に観察した場合と、交叉部9以外の単一の視認範囲5,6で各画素群A,Bの画像を観察した場合とのいずれにおいても有意な画像を認識することができる第2の表示モードとを切替可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に視認角度範囲を変化させることができる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の技術の発展に伴い、広い角度範囲で視認可能な表示装置が実用化されている。一方で、液晶表示装置(LCD)等の表示装置を搭載した携帯情報端末の普及も進んでいる。このような携帯情報端末においては、画面に表示された情報を他人と共有して見る場合には広い角度で視認可能なことが望まれる。一方で、他人から画面を覗かれることを望まない場合も考えられる。従って、使用状況に応じて、画面に表示された情報の視認角度範囲が広い場合と狭い場合とを切り替えることが可能な表示装置が求められている。
【0003】
上記の要求を満たす表示装置の一例が、特許文献1に開示されている。ここで、図19を参照して、特許文献1に開示された表示装置の構造を説明する。図19は特許文献1に開示された従来の表示装置を示す図である。
【0004】
特許文献1の表示装置では、液晶ディスプレイ101上にレンチキュラーレンズ板102が設けられている。特許文献1の構成では、レンチキュラーレンズ板102の1つのレンズに対して、平均して2つの画素が配置されている。特に、各レンズの中央部には画素103が配置され、端部には画素104が配置されている。
【0005】
このような構成を備えた特許文献1の表示装置では、視認範囲が狭い画像を表示する場合には、画素103のみに表示信号を供給する。この場合、表示された画像は視認範囲105のみで視認することができる。これに対し、視認範囲が広い画像を表示する場合には、画素103および画素104に同時に表示信号を供給する。この場合には、視認範囲105のみならず視認範囲106,107でも画像を視認することができる。
【0006】
以上のように、特許文献1の表示装置は、画素103および104への信号供給を制御することにより、視認範囲を選択することが可能である。
【特許文献1】特開平6−105305号公報(第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に開示された表示装置には、以下の課題が存在する。
【0008】
第1に、視認範囲105の大きさが画素103の大きさで決まることである。このために、視認範囲を狭く設定しようとすると、画素103の大きさを小さくしなければならず、輝度が低い(暗い)表示画像しか得られない。
【0009】
第2に、視認範囲105と視認範囲106あるいは107との間に、表示が行われない領域が生じることである。これは、画素103と画素104との間の隙間領域がレンズで拡大されるために生じる。このため、観察者は暗線を見ることとなり、違和感を生じる。これは、視認角度の広い画像を表示するために画素103および104の両方を表示させたときに生じる。このため、観察者はこの暗線領域を避けて画像を見なければならず、表示装置が実用上広い視野角特性を有しているとは感じられない。
【0010】
そこで本発明は、視認範囲が狭い画像を表示する場合であっても表示画像の輝度が低くならず、かつ視認範囲の広い画像を表示する際に表示が行われない領域(暗部)が生じることがない表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の表示装置は、各々が独立して画像を表示する複数の画素群を有する表示パネルと、前記各画素群が表示する各々の画像の視認範囲を互いに一部が交叉するように制限することが可能な多視点化手段と、を備え、前記複数の視認範囲が交叉する交叉部において前記複数の画素群がそれぞれ表示する画像を同時に観察した場合には有意な画像を認識可能とし、前記交叉部以外の単一の視認範囲において前記各画素群が表示する画像を観察した場合には有意な画像を認識不能とする第1の表示モードと、交叉部において前記複数の画素群がそれぞれ表示する画像を同時に観察した場合と、前記交叉部以外の単一の視認範囲において前記各画素群が表示する画像を観察した場合とのいずれにおいても有意な画像を認識可能とする第2の表示モードと、を切り替え可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明による表示装置では、第1の表示モードにおける複数の視認範囲が交叉する交叉部の大きさは画素の大きさに依存しないので、視認範囲が比較的狭い第1の表示モードでの表示画像の輝度を維持することができる。さらに、本発明の表示装置は複数の視認範囲が交叉する交叉部を有するので、視認範囲が比較的広い第2の表示モードにおいて表示が行われない領域(暗部)が生じることなく、広い視認範囲にわたって良好な画像を観察することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明によれば、視認角度が狭い画像を表示する場合であっても表示画像の輝度が低くならず、かつ視認角度の広い画像を表示する際に表示が行われない領域(暗部)が生じることがない表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る表示装置の概略構成を示す図である。
【0016】
本実施形態の表示装置は、表示パネル1と多視点化部材8とを有している。表示パネル1には複数の画素群が配置されている。図1では、例として画素群Aと画素群Bの2つの画素群が交互に配置された場合を示している。一方、多視点化部材8には、複数の画素群に対応する繰り返し単位Cからなる繰り返し構造が設けられている。画素群Aは、多視点化部材8を介することにより視認範囲5で視認することができる。一方、画素群Bは、多視点化部材8を介することにより視認範囲6で視認することができる。本実施形態においては、これらの視認範囲5,6が空間上に交叉部9を有している。
【0017】
図2および図3を用いて、本実施形態の表示装置の表示動作を説明する。
【0018】
本実施形態の表示装置は2つの表示モードを有する。図2は、第1の表示モードでの表示動作を示す図である。画素群Aに対応する視認範囲5では、例えば視認内容10に示すような表示を視認することができる。一方、画素群Bに対応した視認範囲6では、視認内容11に示すような表示を視認することができる。これら2つの視認内容は有意なものではなく、観察者はその内容を理解することができない。他方、両視認範囲5,6の交叉部9では視認内容12に示すような表示を視認することができる。これにより、観察者は初めて視認内容を理解することができる。以上のように本実施形態の表示装置は、視認範囲5,6の交叉部9において複数の画素群A,Bが表示する画像を同時に観察することにより、初めて有意な画像が認識することが可能になっている。
【0019】
図3は、第2の表示モードでの表示動作を示す図である。この第2の表示モードでは、各視認範囲5,6において各画素A,B群の表示画像を観察した場合でも有意な画像を認識できる。
【0020】
上記の表示モードの切り替えは、各画素群A,Bに表示させる表示信号を切替えることによって容易に行うことができる。第1の表示モードでは、画素群Aに図2の視認内容10の画像をさせ、画素群Bに図2の視認内容11の画像を表示させることにより、図2の表示状態を作りだしている。すなわち、画素群Aでは本来表示すべき有意な画像の一部である図2の視認内容10を表示し、画素群Bではその残りの部分である図2の視認内容11を表示し、それらの交叉部9では本来の有意な画像が表示されるようになっている。
【0021】
これに対して第2の表示モードでは、画素群Aに本来表示すべき有意な画像である図3の視認内容10の画像を表示させ、画素群Bにも本来表示すべき有意な画像である図3の視認内容11の画像を表示させることにより、図3の状態を作りだしている。図3の交叉部9に表示される画像も、本来表示すべき有意な画像となる。
【0022】
また、多視点化部材8がアクティブ状態と非アクティブ状態とを切り替えることができる構成である場合には、これと上記の表示モード切替動作とを連動させることも可能である。この場合、第1の表示モードであって多視点化部材8がアクティブ状態の場合には図2と同等の状態になる。一方、表示モードを第2の表示モードに切替えて多視点化部材8を非アクティブ状態にすると、図3の状態に替わって図4の状態になる。多視点化部材8が非アクティブ状態になるために、単一の大きな視認範囲14が生じる。このため、多視点化部材8の存在を意識することなく、表示画像を認識することが可能となる。
【0023】
多視点化部材8として、視差バリアやレンズアレイを用いることができる。これらが単一方向に繰り返し周期を持つ場合には、繰り返し方向が配置された表示画面方向に複数の視認範囲を得ることができる。例えば、多視点化部材8の繰り返し方向が画面左右方向に配置されている場合には、画面左右方向に複数の視認範囲を得ることができる。また、画面の上下左右方向等の互いに交差する二方向に繰り返し周期を有する視差バリアあるいはレンズアレイを用いる場合には、これら2つの繰り返し方向に複数の視認範囲を得ることができる。
【0024】
上記のような多視点化部材8の例として、電圧によって可変なレンズアレイを挙げることができる。例えば、液晶を用いた液晶レンズを挙げることができる。これは、液晶を電圧を印加して駆動させてレンズ機能を果たすものである。また、液体を用いた可変レンズを挙げることができる。これは、電極を用意したセルに二層の液体を封入したものである。電極を用いることにより、電界を発生させて液体の界面を変形させることができる。この界面変形は、電圧印加時のみ生じる。以上のようにして、電界により界面変形をオン・オフさせることにより、レンズ機能のオン・オフを行うことができる。
【0025】
多視点化部材8を単一方向あるいは二方向に繰り返し周期を有する視差バリアとして構成する場合には、多視点化部材8を液晶層と繰り返し構造を有する電圧供給部とで構成することができる。例えば、多視点化部材8を、一対の直交した偏光板の間に周期的な電圧供給部を備えたツイステッドネマチック液晶層を挿入して構成することができる。このツイステッドネマチック液晶層は、ノーマリホワイトモードとして動作する。この場合、周期的に電圧印加されたツイステッドネマチック液晶層は、視差バリアとして機能する。また、ツイステッドネマチック層への電圧供給を止めることにより、視差バリアを非アクティブ状態にすることができる。
【0026】
また、多視点化部材8としてレンズアレイを用いる場合には、画素群のレイアウトを変更することで視認範囲の交叉部を形成することができる。これを図5を参照して説明する。
【0027】
図5ではレンチキュラーレンズアレイと2つの画素群とからなる構成の平面透視図を例示している。レンチキュラーレンズアレイ15は、画面横方向に繰り返し構造を有している。図5には、表示パネルの2つの画素群A,Bの形状の4つの例も示されている。
【0028】
図5中の画素レイアウト19は、各レンチキュラーレンズの中心線16を境に画素群Aの画素と画素群Bの画素とに振り分けたものである。この場合には、各画素群A,Bの視認範囲の交叉部は得られない。
【0029】
一方、図5中の画素レイアウト17や画素レイアウト18は、画素群Aの画素と画素群Bの画素とが各レンチキュラーレンズの中心線16を越えて互いに入り込んだ部分を有している。このため、レンチキュラーレンズの左半分が作り出す視認範囲では、主に画素群Aの画像が表示されるが、画素群Bの情報も混在することとなる。また、レンチキュラーレンズの右半分が作り出す視認範囲では、主に画素群Bが作りだす画像が表示されるが、画素群Aの情報も混在することとなる。以上のようにして、画素群Aの表示画像と画素群Bの表示画像とが混在する視認領域を作り出すことができる。
【0030】
また、画素レイアウト20では、レンチキュラーレンズの左半分が作り出す視認範囲に、画素群Aの表示画像と画素群Bの表示画像との2つの画像が混在した領域を作り出すことができる。
【0031】
以上のように画素レイアウトを変更することにより、各画素群の視認範囲の形を変更して、互いに入り組んだ視認範囲を作り出すことができる。この入り組んだ視認範囲は両視認範囲が空間上複雑な形をしているために、実質的に視認範囲が交叉した部分とみなすことができる。以上のように、多視点化部材8としてレンズアレイを用いた場合でも、交叉した視認範囲を作成することができる。
【0032】
本実施形態の表示装置は、電子機器に搭載することが可能である。図6は、本実施形態の表示装置22を携帯電話21に組み込んだ例を示している。図6では、2つの視認範囲5,6が表示装置21と多視点化部材(不図示)とによって作り出される。第1の表示モード時には、視認範囲5,6の交叉部9でのみ有意な画像を認識することができる。この携帯電話21に備えられた制御部(不図示)は、所定のキー操作によって第1の表示モードと第2の表示モードとを切り替えるように構成されている。第2の表示モードに切り替えられると、両視認範囲5,6において同一の表示画像を観察することができる。一方、他人から画面を覗かれることを望まない場合には、第1の表示モードで画像を表示して交叉部9でのみ有意な画像を認識することを可能とすることで、画面に表示される情報の秘匿性を高めることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の表示装置の実施例について説明する。
【0034】
(第1の実施例)
図7等を参照して、本発明の第1の実施例を説明する。
【0035】
図7に示すように、本実施例の表示装置は、表示パネル24と、その上に配置された多視点化手段としての視差バリア23とを有している。表示パネル24には、液晶表示装置や発光表示装置などを用いることができる。視差バリア23には、遮光ストリップと透光ストリップとが交互に並んだものが用いられている。遮光ストリップと透光ストリップは、各々のストリップの方向が表示パネル24の上下方向と一致するように配置されている。
【0036】
表示パネル24内には2種類の画素群A,Bが配置されている。画素群Aおよび画素群Bは、表示パネル24の左右方向に交互に配置されている。図7はこの両者の配置を示している。図7からわかるように、視点25では、視差バリア23を介して画素群Bの表示画像のみを観察することができる。一方、視点26では、視差バリアを介して画素群Aの表示画像のみを観察することができる。以上のように、本実施例の表示装置によれば、視差バリア23を多視点化手段として、複数の視認範囲を得ることができる。
【0037】
これに対し、図8に示すように、視点25と視点26との中間の視点27では、画素群Aの表示画像と画素群Bの表示画像を同時に観察することができる。従って、この場合には、複数の視認範囲が交叉部を有することがわかる。その場合の交叉部の中心は視点27である。
【0038】
以上のような構成の表示装置において、第1の表示モードでは表示パネル24上に図9のような画像を表示させる。図9の画面左半分には、画素群Bで文字“A”の左半分の画像が表示されている。一方、図9の画面右半分には、画素群Aで文字“A”の右半分の画像が表示されている。従って、図7の視点25および視点26においては、文字“A”の左半分あるいは右半分の画像がそれぞれ認識されることとなる。一方、図8の視点27では、画素群Aの表示画像と画素群Bの表示画像との両者が同時に観察できるため、文字“A”の全体画像を認識できる。観察者は、図8の視点27から観察したときにのみ、有意な画像として認識することができる。
【0039】
画素群Aおよび画素群Bに供給する画像情報を変更して、表示モードを第2の表示モードに切り替えると、図10に示す表示画像が表示パネル24に表示される。この第2の表示モードでは、画面の全面において、画素群Aと画素群Bは共に、文字“A”の全部の画像を表示している。この場合には、図7の視点25および視点26のいずれもおいても表示装置に文字“A”が表示されていることを認識でき、また、図8の視点27においても表示装置に文字“A”が表示されていることを認識できる。
【0040】
(第2の実施例)
図11及び図12を参照して、本発明の第2の実施例を説明する。
【0041】
本実施例の表示装置は多視点化手段が液晶素子32で構成されている。図11に示すように、本実施例の表示装置は、表示パネル24と、その前面に配置された液晶素子32からなる視差バリアとを有している。
【0042】
本実施例における液晶素子32からなる視差バリアは、表示パネル24に対向する位置に配置された第1の基板31aと、さらにこれに対向配置された第2の基板31bとを有している。これらの基板31a,31bはガラスやプラスチックからなる。第1の基板31aの表示パネル24に対向する面に偏光板28が設けられている。また、第2の基板31bの第1の基板31aに対向する面とは反対側の面に偏光板28が設けられている。さらに、第1の基板31aの第2の基板31bに対向する面には第1の透明電極29aが設けられており、第2の基板31bの第1の基板31aに対向する面には第2の透明電極29bが設けられている。第1の透明電極29aはストリップ形状に形成されており、表示パネル24の各画素群A,Bと対応するように配置されている。第2の透明電極29bは第2の基板31bのほぼ全面にわたって形成されている。さらに、第1の基板31aと第2の基板31bとの間には液晶層30が設けられている。液晶層30としては、ノーマリホワイト液晶モードを選択することができる。
【0043】
このストリップ形状の透明電極29aに電圧を印加することにより(アクティブ状態)、遮光ストリップと透光ストリップとを生成することができる。この場合、図9に示した画像を表示するための信号が各画素群A,Bに供給され、表示装置は上述した第1の表示モードとして動作する。
【0044】
一方、透明電極29aに電圧が供給されない場合(非アクティブ状態)には、液晶素子32は透明状態となるため、視差バリアの機能がなくなる。この場合には、図10に示した画像を表示するための信号が各画素群A,Bに供給され、表示装置は上述した第2の表示モードとして動作する。この場合、遮光ストリップが生成されないため、液晶素子の透過率が向上し、表示画像の輝度が上昇する。
【0045】
このように、本実施例の表示装置では、表示パネル24に入力する表示信号の切り替えと液晶素子32の切り替えとを連動させることが望ましい。この切り替えを行うための構成と動作について、図12を参照して説明する。
【0046】
図12に示すように、表示装置は表示パネル24と多視点化手段である液晶素子32とが積層されて構成されている。キーパッド33の操作で表示モードの切替操作が指示されると、この切替要求信号は装置制御部34に送出される。装置制御部34は、液晶素子制御部35と表示信号処理部36とへ切替信号を送信する。液晶素子制御部35は、液晶層への電圧印加状態を変更する。同時に、表示信号処理部36は画素群Aおよび画素群Bへ送出する表示信号を切り替える。以上のようにして、表示パネル24に入力する表示信号の切り替えと液晶素子32の切り替えとを連動させることができる。
【0047】
図12では表示パネル24の前面に液晶素子32を配置したが、この配置順を変更して、液晶素子32の前面に表示パネル24を配置することもできる。この場合には、表示パネル24が観察者に直接相対することとなる。このため、余分な散乱によるコントラスト低下や、いわゆる奥行き感を感じることがない。
【0048】
(第3の実施例)
図13〜15を参照して、本発明の第3の実施例を説明する。
【0049】
本実施例の表示装置では、多視点化手段が電圧制御可能なレンズアレイ素子で構成されている。図13に示すように、本実施例におけるレンズアレイ素子は、第1の基板31aと、これに対向配置された第2の基板31bとを有している。第1の基板31aの第2の基板31bに対向する面には第1の透明電極29aが設けられており、第2の基板31bの第1の基板31aに対向する面には第2の透明電極29bが設けられている。第1の透明電極29aは第1の基板31aのほぼ全面にわたって形成されている。第2の透明電極29bはストリップ形状に形成されている。さらに、第1の基板31aと第2の基板31bとの間には、第1の液体37と第2の液体38との二層の液体が封止されている。これらの液体37および38は、相溶性の無い液体同士の組み合わせであり、比重、誘電率および屈折率が互いに異なる。このため、レンズアレイ素子内では、第1の液体37と第2の液体38とは二層に分離している。
【0050】
このレンズアレイ素子の透明電極29a,29b間に電圧を印加することにより、図14に示すように二層液体界面を変調することができる。これは、2種類の液体37,38の誘電率が異なるために生じる。このとき、変調された液体界面がレンズとして機能する。電圧印加を停止すれば、図13の状態へ戻すことができる。以上のようにして、本実施例におけるレンズアレイ素子は電圧制御が可能になっている。
【0051】
続いて、図15を参照して、上述したレンズアレイ素子を備えた本実施例の表示装置を説明する。本実施例の表示装置は、表示パネルと、多視点化手段としての電圧制御可能なレンズアレイ素子とが積層されて構成されている。図15は、それらを積層した状態の平面透視図を示している。図15の表示パネルでは、画素群Aの画素と画素群Bの画素とが各レンズの中心線を越えて互いに入り込んだ部分を有しており、視認範囲の交叉部が形成できるようになっている。また、図13の第2の透明電極29bは、各画素列に整合するように配置されている。レンズアレイ素子に電圧を印加してレンズ機能が生じると、A画素群39およびB画素群40に対応した視認範囲が形成される。
【0052】
第1の表示モードでは、透明電極29a,29bへ電圧を供給してレンズアレイ素子をアクティブ状態とし、表示パネルには図9に示すような画像を形成する。したがって、画素群Aのみの視認範囲あるいはあるいは画素群Bのみの視認範囲からそれぞれの画素群の表示画像を見た場合には有意な画像を観察できず、両者の視認範囲の交叉部で観察した場合にのみ有意な画像を観察することができる。
【0053】
第2の表示モードでは、透明電極29a,29bへの電圧供給を停止してレンズアレイ素子を非アクティブ状態とし、表示パネルには図10に示すような画像を形成する。これにより、画素群Aの視認範囲あるいは画素群Bの視認範囲、および両者の視認範囲の交叉部で、有意な画像を観察することができる。
【0054】
以上のような切り替え操作は、図12に示した装置と同様の装置で行うことができる。
図12に示した装置の液晶素子制御部35をレンズアレイ制御部として機能させることで、本実施例の表示装置の切り替え操作を行うことが可能である。
【0055】
(第4の実施例)
図16を参照して、本発明の第4の実施例を説明する。
【0056】
本実施例の表示装置とその制御装置は、図12に示したものと同じ構成である。図16は、図12中の表示制御部36の詳細な構成と表示パネル24のみを図示している。また、図16では表示装置がテキストデータを表示する場合を示している。
【0057】
まず、第1の表示モードにおける表示制御部36の動作を説明する。図16に示すように、テキスト信号41が表示制御部36に入力する。表示制御部36内には、A画素群用変換機42とB画素群用変換機43とが備えられている。両者は、各テキストをどのように変換するかのテーブルを有している。この変換テーブルに従って、入力された各テキストキャラクタが変換され、各画素群A,Bへ送られる。図16に示すように、各テキストキャラクタは、両テーブルのものを組み合わせることによってはじめて通常のテキストキャラクタとして認識することができる。一方のテーブルに係る内容のみでは、有意な文字として認識することができない。第1の表示モードでは、視差バリアとしての液晶素子32をオンにし、視差バリアを機能させる。したがって、第1の表示モードでは、画素群Aのみの視認範囲あるいはあるいは画素群Bのみの視認範囲から表示文字を見た場合には有意な文字を認識できず、両者の視認範囲の交叉部で観察した場合にのみ有意な文字を認識することができる。
【0058】
これに対し、第2の表示モードに設定された場合には、A画素群用変換機42およびB画素群用変換機43の動作が停止される。この結果、テキストキャラクタの変換が停止し、画素群Aおよび画素群Bとも単独で有意なテキストデータを表示することが可能となる。第2の表示モードでは、視差バリアとしての液晶素子32をオフにし、視差バリアとしての機能を停止させる。これにより、画素群Aの視認範囲あるいは画素群Bの視認範囲、および両者の視認範囲の交叉部で、有意な文字を認識することができる。
【0059】
(第5の実施例)
図17を参照して、本発明の第5の実施例を説明する。
【0060】
本実施例の表示装置とその制御装置は、図12に示したものと同じ構成である。図17は、図12中の表示制御部36の詳細な構成と表示パネル24のみを図示している。また、図17では表示装置が画像を表示する場合を示している。
【0061】
図17は、第1の表示モード時の表示制御部36の動作を示している。本実施例においては、表示パネル24で表示する画像の画像信号44が表示制御部36に送信される。送信された画像信号44は、以下のように加工される。はじめに、同一画素数を有する二値画像がランダムマスク発生器45で形成される。図17では、透明部に複数の黒ボックスが存在するマスク画像が生成されている。この複数の黒ボックスのサイズ、数、大きさは、任意の確率分布で発生させることができる。このサイズ、数、大きさは、画像サイズや使用する画像信号に応じて、調節することが可能である。さらに、画像反転器46においてネガ・ポジを反転した反転マスク画像が生成される。透明部に複数の黒ボックス(ポジ)のマスク画像は画像信号44に乗算されて表示パネル24の画素群Aへ送られ、黒地に複数の透明ボックス(ネガ)の反転マスク画像は画像信号44に乗算されて表示パネル24の画素群Bへ送られる。
【0062】
以上のようにして、画素群Aではマスク画像が乗算された画像が表示され、画素群Bでは反転マスク画像が乗算された画像が表示される。したがって、個別の画素群の画像のみでは有意な画像を認識することはできず、画素群Aの視認領域と画素群Bの視認領域との交叉部においてのみ有意な画像を認識することができる。ランダムマスク発生器45は、数秒毎にそのマスク画像を変更することもできる。この結果、覗き防止として、画素群Aおよび画素群Bの画像を数秒ごとに変化させて、個別の画素群の画像内容が認識されることを妨げることができる。
【0063】
第2の表示モードに設定された場合には、ランダムマスク発生器45および画像反転器46の動作が停止する。このため、マスク画像が乗算されない画像が、画素群Aおよび画素群Bに表示される。そのため、画素群A,Bのそれぞれの単独の視認領域でも有意な画像を観察することができる。
【0064】
(第6の実施例)
図18を参照して、本発明の第6の実施例を説明する。
【0065】
本実施例の表示装置とその制御装置は、図12に示したものと同じ構成である。図18は、図12中の表示制御部36の詳細な構成と表示パネル24のみを図示している。また、図18では表示装置が画像を表示する場合を示している。
【0066】
図18では、第1の表示モードの表示制御部の動作を示している。本実施例において、画素群Aに送られる画像信号44に透明部に複数の黒ボックスのマスク画像を乗算し、画素群Bに送られる画像信号44に黒地に複数の透明ボックスの反転マスク画像を乗算する点は、第5の実施例と同じである。
【0067】
本実施例では、マスク画像及び反転マスク画像の生成を以下のように行う。画像信号44の画像の特徴点が、特徴点抽出器49で抽出される。これは公知の手法を用いて行うことが可能である。例えば、画像信号44の画像を二値化処理した後にその連結点を抽出し、各特徴点群を求めることが可能である。これらの特徴点群から、画像の代表的大きさとその位置を知ることができる。図18では、抽出された特徴点の内で、最大のものを抽出した例を示している。このように特徴点が抽出された画像信号は、マスク発生器48へ送られる。マスク発生器48では、最大特徴点の画像を4分割し、その半数をマスク画像として使用する。このマスク画像は画像信号44に乗算されて表示パネル24の画素群Aへ送られる。一方、このマスク画像は画像反転器46に送られてその反転画像である反転マスクが生成され、反転マスク画像が画像信号44に乗算されて表示パネル24の画素群Bへ送られる。したがって、画素群Aではマスク画像が乗算された画像が表示され、画素群Bでは反転マスク画像が乗算された画像が表示される。したがって、個別の画素群の画像のみでは有意な画像を認識することはできず、画素群Aの視認領域と画素群Bの視認領域との交叉部においてのみ有意な画像を認識することができる。
【0068】
以上のようにして、画像信号の内容に応じたマスク画像及び反転マスク画像を生成することが可能である。第5の実施例と同様に、マスク画像を数秒毎に変更することも可能である。この場合には、特徴点抽出器49やマスク発生器48のパラメータを一定時間毎に変更する。
【0069】
第2の表示モードに設定された場合には、第6の実施例と同様にマスク発生器48および画像反転器46の動作を停止し、画像信号44のみが画素群Aおよび画素群Bに送られる。そのため、画素群A,Bのそれぞれの単独の視認領域でも有意な画像を観察することができる。
【0070】
以上のような処理は、表示制御部36に専用のハードウエアを設けて行うこともできる。また、専用のハードウエアを設けることなく、表示制御部36の処理部に適当なソフトウエアを組み込むことによって行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態に係る表示装置の概略構成を示す図である。
【図2】第1の表示モードでの表示動作を示す図である。
【図3】第2の表示モードでの表示動作を示す図である。
【図4】表示モードを第2の表示モードに切替えて多視点化部材を非アクティブ状態にしたときの視認範囲を示す図である。
【図5】レンチキュラーレンズアレイと2つの画素群とからなる構成の平面透視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る表示装置を携帯電話に組み込んだ例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図8】本発明の第1の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図9】本発明の第1の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図10】本発明の第1の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図11】本発明の第2の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図12】本発明の第2の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図13】本発明の第3の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図14】本発明の第3の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図15】本発明の第3の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図16】本発明の第4の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図17】本発明の第5の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図18】本発明の第6の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図19】従来の表示装置を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 表示パネル
5,6 視認範囲
8 多視点化部材
9 交叉部
A,B 画素群
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に視認角度範囲を変化させることができる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の技術の発展に伴い、広い角度範囲で視認可能な表示装置が実用化されている。一方で、液晶表示装置(LCD)等の表示装置を搭載した携帯情報端末の普及も進んでいる。このような携帯情報端末においては、画面に表示された情報を他人と共有して見る場合には広い角度で視認可能なことが望まれる。一方で、他人から画面を覗かれることを望まない場合も考えられる。従って、使用状況に応じて、画面に表示された情報の視認角度範囲が広い場合と狭い場合とを切り替えることが可能な表示装置が求められている。
【0003】
上記の要求を満たす表示装置の一例が、特許文献1に開示されている。ここで、図19を参照して、特許文献1に開示された表示装置の構造を説明する。図19は特許文献1に開示された従来の表示装置を示す図である。
【0004】
特許文献1の表示装置では、液晶ディスプレイ101上にレンチキュラーレンズ板102が設けられている。特許文献1の構成では、レンチキュラーレンズ板102の1つのレンズに対して、平均して2つの画素が配置されている。特に、各レンズの中央部には画素103が配置され、端部には画素104が配置されている。
【0005】
このような構成を備えた特許文献1の表示装置では、視認範囲が狭い画像を表示する場合には、画素103のみに表示信号を供給する。この場合、表示された画像は視認範囲105のみで視認することができる。これに対し、視認範囲が広い画像を表示する場合には、画素103および画素104に同時に表示信号を供給する。この場合には、視認範囲105のみならず視認範囲106,107でも画像を視認することができる。
【0006】
以上のように、特許文献1の表示装置は、画素103および104への信号供給を制御することにより、視認範囲を選択することが可能である。
【特許文献1】特開平6−105305号公報(第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に開示された表示装置には、以下の課題が存在する。
【0008】
第1に、視認範囲105の大きさが画素103の大きさで決まることである。このために、視認範囲を狭く設定しようとすると、画素103の大きさを小さくしなければならず、輝度が低い(暗い)表示画像しか得られない。
【0009】
第2に、視認範囲105と視認範囲106あるいは107との間に、表示が行われない領域が生じることである。これは、画素103と画素104との間の隙間領域がレンズで拡大されるために生じる。このため、観察者は暗線を見ることとなり、違和感を生じる。これは、視認角度の広い画像を表示するために画素103および104の両方を表示させたときに生じる。このため、観察者はこの暗線領域を避けて画像を見なければならず、表示装置が実用上広い視野角特性を有しているとは感じられない。
【0010】
そこで本発明は、視認範囲が狭い画像を表示する場合であっても表示画像の輝度が低くならず、かつ視認範囲の広い画像を表示する際に表示が行われない領域(暗部)が生じることがない表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の表示装置は、各々が独立して画像を表示する複数の画素群を有する表示パネルと、前記各画素群が表示する各々の画像の視認範囲を互いに一部が交叉するように制限することが可能な多視点化手段と、を備え、前記複数の視認範囲が交叉する交叉部において前記複数の画素群がそれぞれ表示する画像を同時に観察した場合には有意な画像を認識可能とし、前記交叉部以外の単一の視認範囲において前記各画素群が表示する画像を観察した場合には有意な画像を認識不能とする第1の表示モードと、交叉部において前記複数の画素群がそれぞれ表示する画像を同時に観察した場合と、前記交叉部以外の単一の視認範囲において前記各画素群が表示する画像を観察した場合とのいずれにおいても有意な画像を認識可能とする第2の表示モードと、を切り替え可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明による表示装置では、第1の表示モードにおける複数の視認範囲が交叉する交叉部の大きさは画素の大きさに依存しないので、視認範囲が比較的狭い第1の表示モードでの表示画像の輝度を維持することができる。さらに、本発明の表示装置は複数の視認範囲が交叉する交叉部を有するので、視認範囲が比較的広い第2の表示モードにおいて表示が行われない領域(暗部)が生じることなく、広い視認範囲にわたって良好な画像を観察することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明によれば、視認角度が狭い画像を表示する場合であっても表示画像の輝度が低くならず、かつ視認角度の広い画像を表示する際に表示が行われない領域(暗部)が生じることがない表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る表示装置の概略構成を示す図である。
【0016】
本実施形態の表示装置は、表示パネル1と多視点化部材8とを有している。表示パネル1には複数の画素群が配置されている。図1では、例として画素群Aと画素群Bの2つの画素群が交互に配置された場合を示している。一方、多視点化部材8には、複数の画素群に対応する繰り返し単位Cからなる繰り返し構造が設けられている。画素群Aは、多視点化部材8を介することにより視認範囲5で視認することができる。一方、画素群Bは、多視点化部材8を介することにより視認範囲6で視認することができる。本実施形態においては、これらの視認範囲5,6が空間上に交叉部9を有している。
【0017】
図2および図3を用いて、本実施形態の表示装置の表示動作を説明する。
【0018】
本実施形態の表示装置は2つの表示モードを有する。図2は、第1の表示モードでの表示動作を示す図である。画素群Aに対応する視認範囲5では、例えば視認内容10に示すような表示を視認することができる。一方、画素群Bに対応した視認範囲6では、視認内容11に示すような表示を視認することができる。これら2つの視認内容は有意なものではなく、観察者はその内容を理解することができない。他方、両視認範囲5,6の交叉部9では視認内容12に示すような表示を視認することができる。これにより、観察者は初めて視認内容を理解することができる。以上のように本実施形態の表示装置は、視認範囲5,6の交叉部9において複数の画素群A,Bが表示する画像を同時に観察することにより、初めて有意な画像が認識することが可能になっている。
【0019】
図3は、第2の表示モードでの表示動作を示す図である。この第2の表示モードでは、各視認範囲5,6において各画素A,B群の表示画像を観察した場合でも有意な画像を認識できる。
【0020】
上記の表示モードの切り替えは、各画素群A,Bに表示させる表示信号を切替えることによって容易に行うことができる。第1の表示モードでは、画素群Aに図2の視認内容10の画像をさせ、画素群Bに図2の視認内容11の画像を表示させることにより、図2の表示状態を作りだしている。すなわち、画素群Aでは本来表示すべき有意な画像の一部である図2の視認内容10を表示し、画素群Bではその残りの部分である図2の視認内容11を表示し、それらの交叉部9では本来の有意な画像が表示されるようになっている。
【0021】
これに対して第2の表示モードでは、画素群Aに本来表示すべき有意な画像である図3の視認内容10の画像を表示させ、画素群Bにも本来表示すべき有意な画像である図3の視認内容11の画像を表示させることにより、図3の状態を作りだしている。図3の交叉部9に表示される画像も、本来表示すべき有意な画像となる。
【0022】
また、多視点化部材8がアクティブ状態と非アクティブ状態とを切り替えることができる構成である場合には、これと上記の表示モード切替動作とを連動させることも可能である。この場合、第1の表示モードであって多視点化部材8がアクティブ状態の場合には図2と同等の状態になる。一方、表示モードを第2の表示モードに切替えて多視点化部材8を非アクティブ状態にすると、図3の状態に替わって図4の状態になる。多視点化部材8が非アクティブ状態になるために、単一の大きな視認範囲14が生じる。このため、多視点化部材8の存在を意識することなく、表示画像を認識することが可能となる。
【0023】
多視点化部材8として、視差バリアやレンズアレイを用いることができる。これらが単一方向に繰り返し周期を持つ場合には、繰り返し方向が配置された表示画面方向に複数の視認範囲を得ることができる。例えば、多視点化部材8の繰り返し方向が画面左右方向に配置されている場合には、画面左右方向に複数の視認範囲を得ることができる。また、画面の上下左右方向等の互いに交差する二方向に繰り返し周期を有する視差バリアあるいはレンズアレイを用いる場合には、これら2つの繰り返し方向に複数の視認範囲を得ることができる。
【0024】
上記のような多視点化部材8の例として、電圧によって可変なレンズアレイを挙げることができる。例えば、液晶を用いた液晶レンズを挙げることができる。これは、液晶を電圧を印加して駆動させてレンズ機能を果たすものである。また、液体を用いた可変レンズを挙げることができる。これは、電極を用意したセルに二層の液体を封入したものである。電極を用いることにより、電界を発生させて液体の界面を変形させることができる。この界面変形は、電圧印加時のみ生じる。以上のようにして、電界により界面変形をオン・オフさせることにより、レンズ機能のオン・オフを行うことができる。
【0025】
多視点化部材8を単一方向あるいは二方向に繰り返し周期を有する視差バリアとして構成する場合には、多視点化部材8を液晶層と繰り返し構造を有する電圧供給部とで構成することができる。例えば、多視点化部材8を、一対の直交した偏光板の間に周期的な電圧供給部を備えたツイステッドネマチック液晶層を挿入して構成することができる。このツイステッドネマチック液晶層は、ノーマリホワイトモードとして動作する。この場合、周期的に電圧印加されたツイステッドネマチック液晶層は、視差バリアとして機能する。また、ツイステッドネマチック層への電圧供給を止めることにより、視差バリアを非アクティブ状態にすることができる。
【0026】
また、多視点化部材8としてレンズアレイを用いる場合には、画素群のレイアウトを変更することで視認範囲の交叉部を形成することができる。これを図5を参照して説明する。
【0027】
図5ではレンチキュラーレンズアレイと2つの画素群とからなる構成の平面透視図を例示している。レンチキュラーレンズアレイ15は、画面横方向に繰り返し構造を有している。図5には、表示パネルの2つの画素群A,Bの形状の4つの例も示されている。
【0028】
図5中の画素レイアウト19は、各レンチキュラーレンズの中心線16を境に画素群Aの画素と画素群Bの画素とに振り分けたものである。この場合には、各画素群A,Bの視認範囲の交叉部は得られない。
【0029】
一方、図5中の画素レイアウト17や画素レイアウト18は、画素群Aの画素と画素群Bの画素とが各レンチキュラーレンズの中心線16を越えて互いに入り込んだ部分を有している。このため、レンチキュラーレンズの左半分が作り出す視認範囲では、主に画素群Aの画像が表示されるが、画素群Bの情報も混在することとなる。また、レンチキュラーレンズの右半分が作り出す視認範囲では、主に画素群Bが作りだす画像が表示されるが、画素群Aの情報も混在することとなる。以上のようにして、画素群Aの表示画像と画素群Bの表示画像とが混在する視認領域を作り出すことができる。
【0030】
また、画素レイアウト20では、レンチキュラーレンズの左半分が作り出す視認範囲に、画素群Aの表示画像と画素群Bの表示画像との2つの画像が混在した領域を作り出すことができる。
【0031】
以上のように画素レイアウトを変更することにより、各画素群の視認範囲の形を変更して、互いに入り組んだ視認範囲を作り出すことができる。この入り組んだ視認範囲は両視認範囲が空間上複雑な形をしているために、実質的に視認範囲が交叉した部分とみなすことができる。以上のように、多視点化部材8としてレンズアレイを用いた場合でも、交叉した視認範囲を作成することができる。
【0032】
本実施形態の表示装置は、電子機器に搭載することが可能である。図6は、本実施形態の表示装置22を携帯電話21に組み込んだ例を示している。図6では、2つの視認範囲5,6が表示装置21と多視点化部材(不図示)とによって作り出される。第1の表示モード時には、視認範囲5,6の交叉部9でのみ有意な画像を認識することができる。この携帯電話21に備えられた制御部(不図示)は、所定のキー操作によって第1の表示モードと第2の表示モードとを切り替えるように構成されている。第2の表示モードに切り替えられると、両視認範囲5,6において同一の表示画像を観察することができる。一方、他人から画面を覗かれることを望まない場合には、第1の表示モードで画像を表示して交叉部9でのみ有意な画像を認識することを可能とすることで、画面に表示される情報の秘匿性を高めることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の表示装置の実施例について説明する。
【0034】
(第1の実施例)
図7等を参照して、本発明の第1の実施例を説明する。
【0035】
図7に示すように、本実施例の表示装置は、表示パネル24と、その上に配置された多視点化手段としての視差バリア23とを有している。表示パネル24には、液晶表示装置や発光表示装置などを用いることができる。視差バリア23には、遮光ストリップと透光ストリップとが交互に並んだものが用いられている。遮光ストリップと透光ストリップは、各々のストリップの方向が表示パネル24の上下方向と一致するように配置されている。
【0036】
表示パネル24内には2種類の画素群A,Bが配置されている。画素群Aおよび画素群Bは、表示パネル24の左右方向に交互に配置されている。図7はこの両者の配置を示している。図7からわかるように、視点25では、視差バリア23を介して画素群Bの表示画像のみを観察することができる。一方、視点26では、視差バリアを介して画素群Aの表示画像のみを観察することができる。以上のように、本実施例の表示装置によれば、視差バリア23を多視点化手段として、複数の視認範囲を得ることができる。
【0037】
これに対し、図8に示すように、視点25と視点26との中間の視点27では、画素群Aの表示画像と画素群Bの表示画像を同時に観察することができる。従って、この場合には、複数の視認範囲が交叉部を有することがわかる。その場合の交叉部の中心は視点27である。
【0038】
以上のような構成の表示装置において、第1の表示モードでは表示パネル24上に図9のような画像を表示させる。図9の画面左半分には、画素群Bで文字“A”の左半分の画像が表示されている。一方、図9の画面右半分には、画素群Aで文字“A”の右半分の画像が表示されている。従って、図7の視点25および視点26においては、文字“A”の左半分あるいは右半分の画像がそれぞれ認識されることとなる。一方、図8の視点27では、画素群Aの表示画像と画素群Bの表示画像との両者が同時に観察できるため、文字“A”の全体画像を認識できる。観察者は、図8の視点27から観察したときにのみ、有意な画像として認識することができる。
【0039】
画素群Aおよび画素群Bに供給する画像情報を変更して、表示モードを第2の表示モードに切り替えると、図10に示す表示画像が表示パネル24に表示される。この第2の表示モードでは、画面の全面において、画素群Aと画素群Bは共に、文字“A”の全部の画像を表示している。この場合には、図7の視点25および視点26のいずれもおいても表示装置に文字“A”が表示されていることを認識でき、また、図8の視点27においても表示装置に文字“A”が表示されていることを認識できる。
【0040】
(第2の実施例)
図11及び図12を参照して、本発明の第2の実施例を説明する。
【0041】
本実施例の表示装置は多視点化手段が液晶素子32で構成されている。図11に示すように、本実施例の表示装置は、表示パネル24と、その前面に配置された液晶素子32からなる視差バリアとを有している。
【0042】
本実施例における液晶素子32からなる視差バリアは、表示パネル24に対向する位置に配置された第1の基板31aと、さらにこれに対向配置された第2の基板31bとを有している。これらの基板31a,31bはガラスやプラスチックからなる。第1の基板31aの表示パネル24に対向する面に偏光板28が設けられている。また、第2の基板31bの第1の基板31aに対向する面とは反対側の面に偏光板28が設けられている。さらに、第1の基板31aの第2の基板31bに対向する面には第1の透明電極29aが設けられており、第2の基板31bの第1の基板31aに対向する面には第2の透明電極29bが設けられている。第1の透明電極29aはストリップ形状に形成されており、表示パネル24の各画素群A,Bと対応するように配置されている。第2の透明電極29bは第2の基板31bのほぼ全面にわたって形成されている。さらに、第1の基板31aと第2の基板31bとの間には液晶層30が設けられている。液晶層30としては、ノーマリホワイト液晶モードを選択することができる。
【0043】
このストリップ形状の透明電極29aに電圧を印加することにより(アクティブ状態)、遮光ストリップと透光ストリップとを生成することができる。この場合、図9に示した画像を表示するための信号が各画素群A,Bに供給され、表示装置は上述した第1の表示モードとして動作する。
【0044】
一方、透明電極29aに電圧が供給されない場合(非アクティブ状態)には、液晶素子32は透明状態となるため、視差バリアの機能がなくなる。この場合には、図10に示した画像を表示するための信号が各画素群A,Bに供給され、表示装置は上述した第2の表示モードとして動作する。この場合、遮光ストリップが生成されないため、液晶素子の透過率が向上し、表示画像の輝度が上昇する。
【0045】
このように、本実施例の表示装置では、表示パネル24に入力する表示信号の切り替えと液晶素子32の切り替えとを連動させることが望ましい。この切り替えを行うための構成と動作について、図12を参照して説明する。
【0046】
図12に示すように、表示装置は表示パネル24と多視点化手段である液晶素子32とが積層されて構成されている。キーパッド33の操作で表示モードの切替操作が指示されると、この切替要求信号は装置制御部34に送出される。装置制御部34は、液晶素子制御部35と表示信号処理部36とへ切替信号を送信する。液晶素子制御部35は、液晶層への電圧印加状態を変更する。同時に、表示信号処理部36は画素群Aおよび画素群Bへ送出する表示信号を切り替える。以上のようにして、表示パネル24に入力する表示信号の切り替えと液晶素子32の切り替えとを連動させることができる。
【0047】
図12では表示パネル24の前面に液晶素子32を配置したが、この配置順を変更して、液晶素子32の前面に表示パネル24を配置することもできる。この場合には、表示パネル24が観察者に直接相対することとなる。このため、余分な散乱によるコントラスト低下や、いわゆる奥行き感を感じることがない。
【0048】
(第3の実施例)
図13〜15を参照して、本発明の第3の実施例を説明する。
【0049】
本実施例の表示装置では、多視点化手段が電圧制御可能なレンズアレイ素子で構成されている。図13に示すように、本実施例におけるレンズアレイ素子は、第1の基板31aと、これに対向配置された第2の基板31bとを有している。第1の基板31aの第2の基板31bに対向する面には第1の透明電極29aが設けられており、第2の基板31bの第1の基板31aに対向する面には第2の透明電極29bが設けられている。第1の透明電極29aは第1の基板31aのほぼ全面にわたって形成されている。第2の透明電極29bはストリップ形状に形成されている。さらに、第1の基板31aと第2の基板31bとの間には、第1の液体37と第2の液体38との二層の液体が封止されている。これらの液体37および38は、相溶性の無い液体同士の組み合わせであり、比重、誘電率および屈折率が互いに異なる。このため、レンズアレイ素子内では、第1の液体37と第2の液体38とは二層に分離している。
【0050】
このレンズアレイ素子の透明電極29a,29b間に電圧を印加することにより、図14に示すように二層液体界面を変調することができる。これは、2種類の液体37,38の誘電率が異なるために生じる。このとき、変調された液体界面がレンズとして機能する。電圧印加を停止すれば、図13の状態へ戻すことができる。以上のようにして、本実施例におけるレンズアレイ素子は電圧制御が可能になっている。
【0051】
続いて、図15を参照して、上述したレンズアレイ素子を備えた本実施例の表示装置を説明する。本実施例の表示装置は、表示パネルと、多視点化手段としての電圧制御可能なレンズアレイ素子とが積層されて構成されている。図15は、それらを積層した状態の平面透視図を示している。図15の表示パネルでは、画素群Aの画素と画素群Bの画素とが各レンズの中心線を越えて互いに入り込んだ部分を有しており、視認範囲の交叉部が形成できるようになっている。また、図13の第2の透明電極29bは、各画素列に整合するように配置されている。レンズアレイ素子に電圧を印加してレンズ機能が生じると、A画素群39およびB画素群40に対応した視認範囲が形成される。
【0052】
第1の表示モードでは、透明電極29a,29bへ電圧を供給してレンズアレイ素子をアクティブ状態とし、表示パネルには図9に示すような画像を形成する。したがって、画素群Aのみの視認範囲あるいはあるいは画素群Bのみの視認範囲からそれぞれの画素群の表示画像を見た場合には有意な画像を観察できず、両者の視認範囲の交叉部で観察した場合にのみ有意な画像を観察することができる。
【0053】
第2の表示モードでは、透明電極29a,29bへの電圧供給を停止してレンズアレイ素子を非アクティブ状態とし、表示パネルには図10に示すような画像を形成する。これにより、画素群Aの視認範囲あるいは画素群Bの視認範囲、および両者の視認範囲の交叉部で、有意な画像を観察することができる。
【0054】
以上のような切り替え操作は、図12に示した装置と同様の装置で行うことができる。
図12に示した装置の液晶素子制御部35をレンズアレイ制御部として機能させることで、本実施例の表示装置の切り替え操作を行うことが可能である。
【0055】
(第4の実施例)
図16を参照して、本発明の第4の実施例を説明する。
【0056】
本実施例の表示装置とその制御装置は、図12に示したものと同じ構成である。図16は、図12中の表示制御部36の詳細な構成と表示パネル24のみを図示している。また、図16では表示装置がテキストデータを表示する場合を示している。
【0057】
まず、第1の表示モードにおける表示制御部36の動作を説明する。図16に示すように、テキスト信号41が表示制御部36に入力する。表示制御部36内には、A画素群用変換機42とB画素群用変換機43とが備えられている。両者は、各テキストをどのように変換するかのテーブルを有している。この変換テーブルに従って、入力された各テキストキャラクタが変換され、各画素群A,Bへ送られる。図16に示すように、各テキストキャラクタは、両テーブルのものを組み合わせることによってはじめて通常のテキストキャラクタとして認識することができる。一方のテーブルに係る内容のみでは、有意な文字として認識することができない。第1の表示モードでは、視差バリアとしての液晶素子32をオンにし、視差バリアを機能させる。したがって、第1の表示モードでは、画素群Aのみの視認範囲あるいはあるいは画素群Bのみの視認範囲から表示文字を見た場合には有意な文字を認識できず、両者の視認範囲の交叉部で観察した場合にのみ有意な文字を認識することができる。
【0058】
これに対し、第2の表示モードに設定された場合には、A画素群用変換機42およびB画素群用変換機43の動作が停止される。この結果、テキストキャラクタの変換が停止し、画素群Aおよび画素群Bとも単独で有意なテキストデータを表示することが可能となる。第2の表示モードでは、視差バリアとしての液晶素子32をオフにし、視差バリアとしての機能を停止させる。これにより、画素群Aの視認範囲あるいは画素群Bの視認範囲、および両者の視認範囲の交叉部で、有意な文字を認識することができる。
【0059】
(第5の実施例)
図17を参照して、本発明の第5の実施例を説明する。
【0060】
本実施例の表示装置とその制御装置は、図12に示したものと同じ構成である。図17は、図12中の表示制御部36の詳細な構成と表示パネル24のみを図示している。また、図17では表示装置が画像を表示する場合を示している。
【0061】
図17は、第1の表示モード時の表示制御部36の動作を示している。本実施例においては、表示パネル24で表示する画像の画像信号44が表示制御部36に送信される。送信された画像信号44は、以下のように加工される。はじめに、同一画素数を有する二値画像がランダムマスク発生器45で形成される。図17では、透明部に複数の黒ボックスが存在するマスク画像が生成されている。この複数の黒ボックスのサイズ、数、大きさは、任意の確率分布で発生させることができる。このサイズ、数、大きさは、画像サイズや使用する画像信号に応じて、調節することが可能である。さらに、画像反転器46においてネガ・ポジを反転した反転マスク画像が生成される。透明部に複数の黒ボックス(ポジ)のマスク画像は画像信号44に乗算されて表示パネル24の画素群Aへ送られ、黒地に複数の透明ボックス(ネガ)の反転マスク画像は画像信号44に乗算されて表示パネル24の画素群Bへ送られる。
【0062】
以上のようにして、画素群Aではマスク画像が乗算された画像が表示され、画素群Bでは反転マスク画像が乗算された画像が表示される。したがって、個別の画素群の画像のみでは有意な画像を認識することはできず、画素群Aの視認領域と画素群Bの視認領域との交叉部においてのみ有意な画像を認識することができる。ランダムマスク発生器45は、数秒毎にそのマスク画像を変更することもできる。この結果、覗き防止として、画素群Aおよび画素群Bの画像を数秒ごとに変化させて、個別の画素群の画像内容が認識されることを妨げることができる。
【0063】
第2の表示モードに設定された場合には、ランダムマスク発生器45および画像反転器46の動作が停止する。このため、マスク画像が乗算されない画像が、画素群Aおよび画素群Bに表示される。そのため、画素群A,Bのそれぞれの単独の視認領域でも有意な画像を観察することができる。
【0064】
(第6の実施例)
図18を参照して、本発明の第6の実施例を説明する。
【0065】
本実施例の表示装置とその制御装置は、図12に示したものと同じ構成である。図18は、図12中の表示制御部36の詳細な構成と表示パネル24のみを図示している。また、図18では表示装置が画像を表示する場合を示している。
【0066】
図18では、第1の表示モードの表示制御部の動作を示している。本実施例において、画素群Aに送られる画像信号44に透明部に複数の黒ボックスのマスク画像を乗算し、画素群Bに送られる画像信号44に黒地に複数の透明ボックスの反転マスク画像を乗算する点は、第5の実施例と同じである。
【0067】
本実施例では、マスク画像及び反転マスク画像の生成を以下のように行う。画像信号44の画像の特徴点が、特徴点抽出器49で抽出される。これは公知の手法を用いて行うことが可能である。例えば、画像信号44の画像を二値化処理した後にその連結点を抽出し、各特徴点群を求めることが可能である。これらの特徴点群から、画像の代表的大きさとその位置を知ることができる。図18では、抽出された特徴点の内で、最大のものを抽出した例を示している。このように特徴点が抽出された画像信号は、マスク発生器48へ送られる。マスク発生器48では、最大特徴点の画像を4分割し、その半数をマスク画像として使用する。このマスク画像は画像信号44に乗算されて表示パネル24の画素群Aへ送られる。一方、このマスク画像は画像反転器46に送られてその反転画像である反転マスクが生成され、反転マスク画像が画像信号44に乗算されて表示パネル24の画素群Bへ送られる。したがって、画素群Aではマスク画像が乗算された画像が表示され、画素群Bでは反転マスク画像が乗算された画像が表示される。したがって、個別の画素群の画像のみでは有意な画像を認識することはできず、画素群Aの視認領域と画素群Bの視認領域との交叉部においてのみ有意な画像を認識することができる。
【0068】
以上のようにして、画像信号の内容に応じたマスク画像及び反転マスク画像を生成することが可能である。第5の実施例と同様に、マスク画像を数秒毎に変更することも可能である。この場合には、特徴点抽出器49やマスク発生器48のパラメータを一定時間毎に変更する。
【0069】
第2の表示モードに設定された場合には、第6の実施例と同様にマスク発生器48および画像反転器46の動作を停止し、画像信号44のみが画素群Aおよび画素群Bに送られる。そのため、画素群A,Bのそれぞれの単独の視認領域でも有意な画像を観察することができる。
【0070】
以上のような処理は、表示制御部36に専用のハードウエアを設けて行うこともできる。また、専用のハードウエアを設けることなく、表示制御部36の処理部に適当なソフトウエアを組み込むことによって行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態に係る表示装置の概略構成を示す図である。
【図2】第1の表示モードでの表示動作を示す図である。
【図3】第2の表示モードでの表示動作を示す図である。
【図4】表示モードを第2の表示モードに切替えて多視点化部材を非アクティブ状態にしたときの視認範囲を示す図である。
【図5】レンチキュラーレンズアレイと2つの画素群とからなる構成の平面透視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る表示装置を携帯電話に組み込んだ例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図8】本発明の第1の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図9】本発明の第1の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図10】本発明の第1の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図11】本発明の第2の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図12】本発明の第2の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図13】本発明の第3の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図14】本発明の第3の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図15】本発明の第3の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図16】本発明の第4の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図17】本発明の第5の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図18】本発明の第6の実施例に係る表示装置を説明する図である。
【図19】従来の表示装置を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 表示パネル
5,6 視認範囲
8 多視点化部材
9 交叉部
A,B 画素群
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が独立して画像を表示する複数の画素群を有する表示パネルと、
前記各画素群が表示する各々の画像の視認範囲を互いに一部が交叉するように制限することが可能な多視点化手段と、
を備え、
前記複数の視認範囲が交叉する交叉部において前記複数の画素群がそれぞれ表示する画像を同時に観察した場合には有意な画像を認識可能とし、前記交叉部以外の単一の視認範囲において前記各画素群が表示する画像を観察した場合には有意な画像を認識不能とする第1の表示モードと、
交叉部において前記複数の画素群がそれぞれ表示する画像を同時に観察した場合と、前記交叉部以外の単一の視認範囲において前記各画素群が表示する画像を観察した場合とのいずれにおいても有意な画像を認識可能とする第2の表示モードと、
を切り替え可能に構成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記両表示モードの切り替えは前記各画素群が表示する画像を切替えることによって行われる、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1の表示モードでは、前記表示パネルの各画素群は、前記表示パネルに表示する画像を前記複数の画素群の数で分割したうちの1つの部分の画像をそれぞれ表示し、
前記第2の表示モードでは、前記表示パネルの各画素群は、前記表示パネルに表示させる画像の全部をそれぞれ表示する、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示パネルは第1の画素群と第2の画素群との2つの画素群を有しており、
前記第1の表示モードでは、前記表示パネルの第1の画素群が、前記表示パネルに表示する画像に、透明部に複数の黒ボックス部が配されたマスク画像を重畳させた画像を表示するとともに、前記表示パネルの第2の画素群が、前記表示パネルに表示する画像に、前記マスク画像の透明部と黒ボックス部とを反転させた反転マスク画像を重畳させた画像を表示し、
前記第2の表示モードでは、前記表示パネルの各画素群は、前記表示パネルに表示させる画像のみをそれぞれ表示する、請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記多視点化手段は、前記各画素群が表示する各々の画像の視認範囲を互いに一部が交叉するように制限するアクティブ状態と、前記各画素群が表示する各々の画像の視認範囲を規制しない非アクティブ状態とを切り替え可能であり、
前記多視点化手段は、前記第1の表示モード時にはアクティブ状態とされ、前記第2の表示モード時には非アクティブ状態とされるように切り替えられる、請求項1から4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記多視点化手段は、一方向あるいは互いに交差する二方向に繰り返し周期を有する透光部と遮光部とが交互に配置された視差バリアからなる、請求項1から5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記視差バリアは、前記遮光部の表示と非表示とを切り替え可能な液晶素子からなる、請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記多視点化手段は、一方向あるいは互いに交差する二方向に繰り返し配置された複数のレンズ素子を有するレンズアレイからなる、請求項1から5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示パネルは交互に配置された第1の画素群と第2の画素群との2つの画素群を有し、
前記レンズ素子の各々は、前記第1の画素群の1つの画素と該画素に隣接する前記第2の画素群の1つの画素との2つの画素にそれぞれ対応して配置されており、
前記第1の画素群の1つの画素及び該画素に隣接する前記第2の画素群の1つの画素はそれぞれ、前記レンズ素子の中心線を越えて互いに入り込んだ形状を有している、請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載された表示装置を備えた電子機器。
【請求項1】
各々が独立して画像を表示する複数の画素群を有する表示パネルと、
前記各画素群が表示する各々の画像の視認範囲を互いに一部が交叉するように制限することが可能な多視点化手段と、
を備え、
前記複数の視認範囲が交叉する交叉部において前記複数の画素群がそれぞれ表示する画像を同時に観察した場合には有意な画像を認識可能とし、前記交叉部以外の単一の視認範囲において前記各画素群が表示する画像を観察した場合には有意な画像を認識不能とする第1の表示モードと、
交叉部において前記複数の画素群がそれぞれ表示する画像を同時に観察した場合と、前記交叉部以外の単一の視認範囲において前記各画素群が表示する画像を観察した場合とのいずれにおいても有意な画像を認識可能とする第2の表示モードと、
を切り替え可能に構成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記両表示モードの切り替えは前記各画素群が表示する画像を切替えることによって行われる、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1の表示モードでは、前記表示パネルの各画素群は、前記表示パネルに表示する画像を前記複数の画素群の数で分割したうちの1つの部分の画像をそれぞれ表示し、
前記第2の表示モードでは、前記表示パネルの各画素群は、前記表示パネルに表示させる画像の全部をそれぞれ表示する、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示パネルは第1の画素群と第2の画素群との2つの画素群を有しており、
前記第1の表示モードでは、前記表示パネルの第1の画素群が、前記表示パネルに表示する画像に、透明部に複数の黒ボックス部が配されたマスク画像を重畳させた画像を表示するとともに、前記表示パネルの第2の画素群が、前記表示パネルに表示する画像に、前記マスク画像の透明部と黒ボックス部とを反転させた反転マスク画像を重畳させた画像を表示し、
前記第2の表示モードでは、前記表示パネルの各画素群は、前記表示パネルに表示させる画像のみをそれぞれ表示する、請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記多視点化手段は、前記各画素群が表示する各々の画像の視認範囲を互いに一部が交叉するように制限するアクティブ状態と、前記各画素群が表示する各々の画像の視認範囲を規制しない非アクティブ状態とを切り替え可能であり、
前記多視点化手段は、前記第1の表示モード時にはアクティブ状態とされ、前記第2の表示モード時には非アクティブ状態とされるように切り替えられる、請求項1から4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記多視点化手段は、一方向あるいは互いに交差する二方向に繰り返し周期を有する透光部と遮光部とが交互に配置された視差バリアからなる、請求項1から5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記視差バリアは、前記遮光部の表示と非表示とを切り替え可能な液晶素子からなる、請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記多視点化手段は、一方向あるいは互いに交差する二方向に繰り返し配置された複数のレンズ素子を有するレンズアレイからなる、請求項1から5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示パネルは交互に配置された第1の画素群と第2の画素群との2つの画素群を有し、
前記レンズ素子の各々は、前記第1の画素群の1つの画素と該画素に隣接する前記第2の画素群の1つの画素との2つの画素にそれぞれ対応して配置されており、
前記第1の画素群の1つの画素及び該画素に隣接する前記第2の画素群の1つの画素はそれぞれ、前記レンズ素子の中心線を越えて互いに入り込んだ形状を有している、請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載された表示装置を備えた電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−83153(P2008−83153A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260337(P2006−260337)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(303018827)NEC液晶テクノロジー株式会社 (547)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(303018827)NEC液晶テクノロジー株式会社 (547)
【Fターム(参考)】
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