説明

表示装置

【課題】電力消費が少なく、実用的な速度で手書き表示が可能な反射型の表示装置を提供する。
【解決手段】第1の書き込みモードまたは第2の書き込みモードのいずれか一方でフレームの期間毎に電気化学表示素子に書き込み電流を印加する駆動回路を制御する表示コントローラを有し、電気化学表示素子に書き込み電流を印加するフレームの回数は、第2の書き込みモードより第1の書き込みモードの方が少ないことを特徴とする表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は必ずしも人間に優しい手段とは言い難い。一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない(メモリー性)反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低いため白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は駆動電圧が高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。
【0006】
これら上述の各方式の欠点を解消する表示方式として、金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション方式(以下、ED方式と略す)が知られている。ED方式は、3V以下の低電圧で駆動が可能で、簡便なセル構成、黒と白のコントラストや黒品質に優れる等の利点があり、様々な方法が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0007】
このようにED方式の表示素子(電気化学表示素子と略す)は、3V以下の低電圧で駆動が可能で、簡便なセル構成、また、優れた表示品位(明るいペーパーライクな白と引き締まった黒)といった特長を持っている。
【0008】
しかしながら、このような金属析出型の電気化学表示装置では、金属の析出や溶解にある程度の時間を要することから、手書きのスピードに表示スピードが追従しきれないという大きな課題を残している。例えば、液晶パネル等においては、タッチパネルやタブレットからの位置情報を一度メモリに保存し、このメモリからの情報に基づいて画面のスキャンを行って、入力された情報を表示するようにしている。液晶パネルにおいては、応答速度が速いことから前記方式でも問題が生ずることはない。金属析出型の表示装置では、この方式をそのまま応用すると、表示が追いつかず、手書きの情報が遅れて表示されることになり、手書き入力の利点が大きく損なわれる。
【0009】
このような課題を解決するため、手書き用のペンが発生する各時点の位置情報(X,Y)から直接に表示装置のX、Y電極端子に電圧を印加し、短時間にペンの位置に対応した書き込みが行う方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
特許文献3では、ペンの位置に対応した書き込みを行うときは結晶が析出を開始する閾値電圧を越える電圧を短時間印加し、核となる結晶を形成することにより高速な表示駆動が可能にしている。一方、核となる結晶の形成のみでは、手書き部分の表示濃度が不足するので後に行う追加の書き込みによって表示濃度を補っている。
【特許文献1】特許第3428603号公報
【特許文献2】特開2003−241227号公報
【特許文献3】特開2004−29399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献3に開示されている方法では、表示濃度を補うために追加の書き込みを行っている間に新たに手書き入力を行った場合、追加の書き込みが終了するまで新たに手書き入力した画像を表示することができないという問題がある。
【0012】
このような問題に対応するためには、書き込みを行っている間も追加の書き込みができるように最大表示濃度までの書き込みを複数回のフレームに分けて実行し、フレーム毎に新たな手書き入力などで表示濃度を変更する必要のある画素を含めて書き込みを行う方法が考えられる。
【0013】
しかしながら、このような方法で表示の応答速度を上げるためには、上記フレームの周期を短縮する必要があり、駆動回路を高速駆動する必要があるため表示装置の消費電力が増す問題がある。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、電力消費が少なく、実用的な速度で手書き表示が可能な反射型の表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
【0016】
1.マトリクス状に配列した電気化学表示素子からなる表示画面に画像を表示する表示装置において、
第1の書き込みモードまたは第2の書き込みモードのいずれか一方でフレームの期間毎に前記電気化学表示素子に書き込み電流を印加する駆動回路と、
前記駆動回路を制御する表示コントローラと、
を有し、
前記電気化学表示素子に前記書き込み電流を印加する前記フレームの回数は、第2の書き込みモードより第1の書き込みモードの方が少ないことを特徴とする表示装置。
【0017】
2.前記駆動回路は、
制御電圧に応じた前記書き込み電流を前記電気化学表示素子に印加する定電流回路を有し、
前記表示コントローラは、
前記第1の書き込みモードでは、
前記制御電圧を、前記電気化学表示素子に表示させる画像濃度の値に応じた電圧に設定することを特徴とする前記1に記載の表示装置。
【0018】
3.前記駆動回路は、
制御電圧に応じた前記書き込み電流を前記電気化学表示素子に印加する定電流回路を有し、
前記表示コントローラは、
前記第2の書き込みモードでは、
前記制御電圧を、所定の前記書き込み電流が印加される第1の電圧、または、前記書き込み電流が印加されない第2の電圧の何れかに設定することを特徴とする前記1または2に記載の表示装置。
【0019】
4.前記表示画面に表示する画像を操作する操作手段と、
前記表示画面の上層に設けられ、前記表示画面の画面上の位置情報を入力する入力手段と、
前記表示コントローラを制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記操作手段による操作を検知したときは、前記第1の書き込みモードを前記表示コントローラに実行させ、前記入力手段による入力を検知したときは、前記第2の書き込みモードを前記表示コントローラに実行させることを特徴とする前記1乃至3の何れか1項に記載の表示装置。
【0020】
5.前記制御手段は、
前記操作手段による操作が行われたと判定したときは、前記入力手段の機能を停止させることを特徴とする前記4に記載の表示装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、第1の書き込みモードまたは第2の書き込みモードのいずれか一方でフレームの期間毎に電気化学表示素子に書き込み電流を印加し、電気化学表示素子に書き込み電流を印加するフレームの回数は、第1の書き込みモードの方が第2の書き込みモードより少なくなっている。文書等を表示するときはフレーム回数の少ない第1の書き込みモード、手書き入力時はフレーム回数が多い第2の書き込みモードで書き込みを行うので、トータルの電力消費が少なく、実用的な速度で手書き表示が可能な反射型の表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る表示装置の一例を示す外観図である。
【0024】
表示装置100は、例えばタブレットPCや電子ブック、PDAであり、図1には図示せぬ記憶部10に記憶されている画像や文字などのデータを表示画面50に表示する。表示画面50には白、黒の階調表示が可能なメモリー性表示素子である図1には図示せぬ電気化学表示素子1が用いられている。操作部42にはメカニカルスイッチからなる順送りボタン43と逆送りボタン44が設けられている。例えば、ユーザが順送りボタン43を押すと表示画面50に表示されているデータの次のページのデータを後に説明する第3フレームメモリ62から読み出して表示する。同様に、ユーザが逆送りボタン44を押すと表示画面50に表示されているデータの前のページのデータを第3フレームメモリ62から読み出して表示する。操作部42は本発明の操作手段である。
【0025】
また、表示画面50の上層はタッチパネル40になっている。ユーザは、タッチパネル40への入力操作により、手書きモードへの切換を行った後、画面上の位置または領域を指定し、手書き入力を行う。タッチパネル40への入力操作は図1には図示せぬスタイラスペン55を用いても良いし、直接指などでタッチパネル40を操作しても良い。タッチパネル40は本発明の入力手段である。
【0026】
図2は本発明の表示装置の一実施形態であるED方式の電気化学表示素子1の基本的な構成を示す概略断面図である。
【0027】
図2に示すED方式の電気化学表示素子1は、透明なITO電極32と銀電極30の間に電解質31を保持している。ITO電極32と銀電極30には電流源33が接続されている。電流源33から銀電極30に図中の矢印方向に電流iを印加すると、電解質31中に含まれる銀イオンの還元反応が生じ、銀が析出する。析出した銀は光を吸収し、ITO電極32から見た電気化学表示素子1の濃度が高くなる。
【0028】
一方、電流源33から銀電極30に図中の矢印と逆方向に電流iを印加すると、電解質31中に含まれる銀の酸化反応が生じ、銀イオンとなって電解質に溶け出す。析出した銀は溶解し、一定時間電流iを図中の矢印と逆方向に印加するとITO電極32から見た電気化学表示素子1の濃度は初期状態の白色になる。VEDは電流iを印加したときのITO電極32と銀電極30の間の電圧である。
【0029】
電気化学表示素子1に含まれる電解質31は、例えば銀塩水溶液より非水系銀塩溶液に銀を転相させることにより調製できる。このような銀塩水溶液は、公知の銀塩を水に溶解して調製することができる。
【0030】
図3は本発明の実施形態に係る表示装置100の構成を示す図である。図3では説明の簡単のため3行×3列の画素を有する表示装置の構成を示したが、本発明はこの画素数に限定されるものではなくn行×m列の画素を有する表示装置に適用できる。
【0031】
各画素は、電気化学表示素子1、駆動トランジスタ2、補助容量3、スイッチングトランジスタ4から構成される。駆動トランジスタ2と補助容量3は電気化学表示素子1に書き込み電流を印加する電流源を構成している。
【0032】
図3ではn行×m列の電気化学表示素子1をそれぞれEDnmと表記している。例えば1行、1列目の電気化学表示素子1はED11、1行、2列目の電気化学表示素子1はED12、というように順に表記している。また、図3の例は、駆動トランジスタ2、スイッチングトランジスタ4はNチャンネルTFTを用いた場合である。
【0033】
符号5a、5b、5cは走査線で、行方向に並んだ画素それぞれのスイッチングトランジスタ4のゲートを互いに接続し、ゲートドライバ12に接続されている。符号8a、8b、8cは信号線で列方向に並んだ画素それぞれのスイッチングトランジスタ4のソースを互いに接続し、ソースドライバ14に接続されている。ゲートドライバ12が走査線5a、5b、5cに出力電圧G1、G2、G3を出力することにより、スイッチングトランジスタ4のオン/オフの制御を行い、制御電圧を印加する行を選択する。
【0034】
ソース電源15は表示コントローラ11の指令によりソースドライバ14に正の電圧Vsを供給する。
【0035】
ソースドライバ14は、信号線8a、8b、8c毎にドライバ回路を有し、表示コントローラ11の制御に基づいて出力側に接続された信号線8a、8b、8cに出力電圧S1、S2、S3を出力する。ソースドライバ14のドライバ回路は多値ドライバであり、表示コントローラ11から送信された信号線8a、8b、8c毎の制御信号に基づいて、ソースドライバ14に供給された電圧Vsを分圧して出力する。本実施形態では、ソースドライバ14は表示コントローラ11の指令により0Vを含む11レベルの電圧を出力するものとする。
【0036】
ソースドライバ14、ソース電源15、ゲートドライバ12、コモン電源13、駆動トランジスタ2、補助容量3、スイッチングトランジスタ4は本発明の駆動回路を構成する。
【0037】
表示コントローラ11はクロック発生回路、ロジック回路などから構成され、第1の書き込みモードまたは第2の書き込みモードのいずれか一方でフレームの周期毎に駆動回路を制御し、所定の電気化学表示素子1に電流を印加させる。表示コントローラ11は本発明の表示コントローラである。
【0038】
CPU71は記憶部10に記憶されているプログラムに基づいて表示装置全体を制御する本発明の制御手段である。記憶部10は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどの記録媒体から構成され、表示装置100を制御する各種プログラムや各種データを記憶している。また、CPU71は、第1フレームメモリ60と第2フレームメモリ61の表示濃度の値を順次比較する比較部70を備えている。
【0039】
第1フレームメモリ60、第2フレームメモリ61は、それぞれ表示画面50の画素数に対応する記憶領域を有する1画面分のフレームメモリである。第1フレームメモリ60は、電気化学表示素子1が次に表示画面50に表示する表示濃度の値Xを記憶する。第2フレームメモリ61は、電気化学表示素子1が表示画面50に表示中の表示濃度の値Yを記憶する。比較部70は、第1フレームメモリ60と第2フレームメモリ61とから、対応する画素の表示濃度の値Xと表示濃度の値Yとをそれぞれ読み出して比較する。
【0040】
後に説明するように、表示コントローラ11は、所定のタイミングで割り込み信号INT3をCPU71に送信し、比較部70が比較した結果のデータを受信する。
【0041】
第3フレームメモリ62は、複数ページ分の画像データ(表示濃度の値X)を記憶する容量を有し、操作部42の操作により指定されたページの表示濃度の値Xを第1フレームメモリ60に書き込めるように構成されている。なお、図面上では第1フレームメモリ60、第2フレームメモリ61、第3フレームメモリ62をそれぞれFM1、FM2、FM3と表記する。
【0042】
タッチパネル40は表示画面50の上層に設けられている。タッチパネルコントローラ41は、タッチパネル40の入力域を順次走査し、タッチパネル40に入力があると割り込み信号INT1をCPU71に送信し、入力があった場所の位置情報をCPU71に送信する。
【0043】
操作部42は、メカニカルスイッチから構成される順送りボタン43、逆送りボタン44がONになると割り込み信号INT2をCPU71に送信し、操作されたボタンの情報をCPU71に送信する。
【0044】
B1はアドレスバス、データバスを含むバスラインである。B1には表示コントローラ11、CPU71、記憶部10、第1フレームメモリ60、第2フレームメモリ61、第3フレームメモリ62、タッチパネルコントローラ41などが接続され、接続された各要素はB1を介してデータの交換を行う。
【0045】
表示画面50の各画素の回路構成は同じであり、図3を用いて以下1行1列目の画素を例に説明する。
【0046】
駆動トランジスタ2のドレインはバスライン6に接続され、ソースは電気化学表示素子1の銀電極30に接続されている。補助容量3は駆動トランジスタ2のソースとゲート間に接続されており、ソースとゲート間に印加された制御電圧Vを保持する。バスライン6はコモン電源13のGNDに接続されている。
【0047】
コモン電極7は各画素の電気化学表示素子1と接続され、またその一端はコモン電源13に接続されている。コモン電源13は表示コントローラ11の指令により、正または負の所定のコモン電圧Vcを電気化学表示素子1のITO電極32に供給する。
【0048】
スイッチングトランジスタ4のソースは信号線8aに、ドレインは駆動トランジスタ2のゲートと補助容量3に、ゲートはゲートドライバ12に接続されている。ゲートドライバ12の出力電圧G1が‘H’になるとスイッチングトランジスタ4はオンになり、ソースドライバ14の出力電圧S1が駆動トランジスタ2のゲートと補助容量3に加わる。
【0049】
駆動トランジスタ2は、コモン電圧Vcとゲート、ソース間に印加された制御電圧Vに応じた定電流を電気化学表示素子1(ED11)に印加する。
【0050】
図4は本実施形態の電気化学表示素子1の表示濃度Dを説明する図である。
【0051】
図4の横軸はTxは書き込み時間、縦軸の0〜10は表示濃度の値Dである。0は電気化学表示素子1の最小表示濃度、10は電気化学表示素子1の最大表示濃度であり本実施形態では0から10までの11段階の階調を表示するものとする。図4に示すように本実施形態の表示素子1では一定電流の書き込み電流を印加すると書き込み時間Txに応じて表示濃度Dが増していく。
【0052】
本実施形態の第1の書き込みモードでは、全ての電気化学表示素子1の表示濃度を0にして画像を消去した後、表示する画像濃度に応じた書き込み電流を所定の電気化学表示素子1に印加して画像を表示させる。また、第2の書き込みモードでは、画像の消去を行わず、表示する画像濃度に応じたフレーム回数の書き込み電流を電気化学表示素子1に順次印加して画像を表示させる。CPU71は、操作部42の操作を検知したときは、第1の書き込みモードを表示コントローラ11に実行させ、タッチパネル40の入力を検知したときは、第2の書き込みモードを表示コントローラ11に実行させる。
【0053】
最初に、図5、図6を用いて、本実施形態の第1の書き込みモードについて説明する。
【0054】
図5、図6は、本実施形態の表示装置100の第1の書き込みモードの画像消去時と書き込み動作時における各部の電圧の変化を示すタイムチャートである。図5は電気化学表示素子1の画像を消去するときの各部の電圧の変化を示すタイムチャート、図6は電気化学表示素子1に画像を表示させるときの各部の電圧の変化を示すタイムチャートである。
【0055】
第1の書き込みモードでは、電気化学表示素子1への画像の書き込みを行う前に、図3にi11〜i33で示す矢印と逆方向に電流を流し、全ての画素の電気化学表示素子1の画像を消去する。図5のタイムチャートで画像を消去する手順を説明する。
【0056】
図5のT1は各画素の駆動トランジスタ2の制御電圧V(ゲート電圧)をそれぞれ設定するプログラム期間、T2は消去期間であり各画素の電気化学表示素子1に消去電流を印加する単位時間を示している。T1とT2とからなるF1は、画像を消去するフレーム期間を示している。本実施形態ではF1の1フレームで画像を消去する例を説明する。
【0057】
最初に図5のF1のプログラム期間T1から説明する。
【0058】
1の間Vは0Vであり、各画素の電気化学表示素子1の電流i11〜i33は0である。なお、図面を簡略化するため図5にはi11、i12、i13のタイムチャートしか図示していない。
【0059】
表示コントローラ11は、T1の間、ソースドライバ14の出力電圧S1、S2、S3全てがVS0になるように制御する。
【0060】
ゲートドライバ12の1行目の出力電圧G1はΔTの間‘H’になり、1行目のED11、ED12、ED13に接続されている駆動トランジスタ2のゲート、ソース間の電圧はVS0に設定され補助容量3に保持される。次に、ゲートドライバ12の2行目の出力電圧G2がΔTの間‘H’になり、2行目のED21、ED22、ED23に接続されている駆動トランジスタ2のゲート、ソース間の電圧はVS0に設定され補助容量3に保持される。同様に、3行目のED31、ED32、ED33に接続されている駆動トランジスタ2のゲート、ソース間の電圧もVS0に設定され補助容量3に保持される。
【0061】
表示コントローラ11は、次のT2の消去期間では、バス電源13の出力電圧Vを0からVChに切り替える。出力電圧VがVChになると、駆動トランジスタ2は、補助容量3に保持されている駆動トランジスタ2のゲート、ソース間の電圧に応じた定電流−iを電気化学表示素子1に印加する。
【0062】
本実施形態では、T2の消去期間に表示状態が最大表示濃度の電気化学表示素子1を表示濃度0にできる消去電流が印加されるものとする。
【0063】
第1の書き込みモードでは、このように全ての電気化学表示素子1の画像が消去された後、画像の書き込みが行われる。図6のタイムチャートで画像を書き込む手順を説明する。
【0064】
図6に示すF1は第1の書き込みモードで画像を書き込むフレーム期間を示している。本実施形態ではF1の1フレームで画像を書き込む例を説明する。
【0065】
図6のT1は各画素の駆動トランジスタ2の制御電圧Vをそれぞれ設定するプログラム期間、T2は書き込み期間であり各画素の電気化学表示素子1に書き込み電流を印加する時間を示している。
【0066】
最初に図6のプログラム期間T1から説明する。
【0067】
1の間Vは0Vであり、各画素の電気化学表示素子1の電流i11〜i33は0である。なお、図面を簡略化するため図6にはi11、i12、i13のタイムチャートしか図示していない。
【0068】
第1フレームの最初はゲートドライバ12の出力電圧G1がΔTの間‘H’になる。この間G2、G3は‘L’である。なお、‘H’はスイッチングトランジスタ4をオンにする電圧、‘L’はスイッチングトランジスタ4をオフにする電圧である。
【0069】
表示コントローラ11は、T1の間、表示する画像の濃度の情報に基づいて、ソースドライバ14の多値ドライバをそれぞれ制御し信号線8a、8b、8cに所定の出力電圧S1、S2、S3を出力させる。
【0070】
図6の例では、T1の最初のタイミングでゲートドライバ12の出力電圧G1がΔTの間‘H’になる。この間、出力電圧S1の電圧はVS2、出力電圧S2、S3の電圧はVS1である。ED11に接続されている駆動トランジスタ2の制御電圧VはVS2、ED12、ED13に接続されている駆動トランジスタ2の制御電圧VはVS1設定され、補助容量3に保持される。
【0071】
次にゲートドライバ12の出力電圧G2がΔTの間‘H’になる。この間G1、G3は‘L’である。この間、図6の例では、出力電圧S1の電圧はVS2、出力電圧S2、S3の電圧はVS1である。ED21に接続されている駆動トランジスタ2の制御電圧VはVS2、ED22、ED23に接続されている駆動トランジスタ2の制御電圧VはVS1に設定され、補助容量3に保持される。
【0072】
次にゲートドライバ12の出力電圧G3がΔTの間‘H’になる。この間G1、G2は‘L’である。図6の例では、この間、出力電圧S1、S2の電圧はVS1、出力電圧S3の電圧は0である。ED31、ED32に接続されている駆動トランジスタ2の制御電圧VはVS1、ED33に接続されている駆動トランジスタ2の制御電圧Vは0Vに設定され、補助容量3に保持される。
【0073】
2の書き込み期間ではVはVChであり、補助容量3に保持されている駆動トランジスタ2の制御電圧Vに応じた定電流を電気化学表示素子1に印加する。図6では電気化学表示素子1の電流i11の電流値がこの間ib、i12とi13の電流値がこの間iaであることを示している。図示していないが、この例ではED21の電気化学表示素子の電流i21がib、ED22とED23の電気化学表示素子1の電流i22、i23がiaである。また、ED31とED32の電気化学表示素子1の電流i21、i22がia、ED33の電気化学表示素子の電流i33が0である。
【0074】
本実施形態では、このようにT1の間、ソースドライバ14の出力する11段階の電圧を各駆動トランジスタ2の制御電圧Vとし、T2の書き込み期間の間、各電気化学表示素子1に書き込み電流を印加し、1回の書き込みで書き込み電流に応じた11階調の濃度を表示する。
【0075】
第1の書き込みモードの説明は以上である。
【0076】
次に、図7を用いて第2の書き込みモードについて説明する。
【0077】
図7のT1は各画素の駆動トランジスタ2の制御電圧Vをそれぞれ設定するプログラム期間、T2は書き込み期間であり各画素の電気化学表示素子1に書き込み電流i11〜i33を印加する単位時間を示している。本実施形態の表示装置は、手書き入力時などでは第2の書き込みモードを実行し、画像消去を行わず、T1とT2から成るフレームFを複数回行って追記することにより所望の表示濃度Dを得ている。
【0078】
フレームFの周期(T1+T2)は、第1の書き込みモードのフレームFよりはるかに短く、入力された情報を表示画面50に短時間で表示することができる。一方、駆動回路の電力消費は、第2の書き込みモードより長い周期で駆動される第1の書き込みモードの方が少ないので、本発明では目的に応じて第1の書き込みモードと第2の書き込みモードを切り替えることにより表示装置100の低消費電力化を図っている。
【0079】
表示コントローラ11は、T1の間、ソース電源15が負の電圧VS3を出力するように制御するとともに、ソースドライバ14から0VとVS3の2値の何れかを出力させる。本実施形態では、書き込み電流が印加される第1の電圧はVS3、書き込み電流が印加されない第2の電圧は0Vである。表示コントローラ11は、ソースドライバ14を制御し、比較部70がX>Yと判定した画素に対応する信号線8をVS3にし、それ以外の画素に対応する信号線8は0Vにする。
【0080】
図7に示すF1は第1フレームのフレーム期間、F2は第2フレームのフレーム期間を示している。最初に図7の第1フレームのプログラム期間T1から説明する。
【0081】
1の間、Vは0Vであり、各画素の電気化学表示素子1の電流i11〜i33は0である。なお、図面を簡略化するため図7にはi11、i12、i13のタイムチャートしか図示していない。
【0082】
表示コントローラ11は、第1フレームの最初のt11のタイミングでCPU71に割り込み信号INT3を送り、比較部70が第1フレームメモリ60と第2フレームメモリ61とから、対応する1行目の画素の表示濃度の値Xと表示濃度の値Yとをそれぞれ読み出して比較した結果のデータを要求する。
【0083】
CPU71は割り込み信号INT3を受信すると、後に詳しく説明する割り込み処理を行って比較部70が比較したn行目の判定結果のデータを表示コントローラ11に送信する。表示コントローラ11はソースドライバ14を制御し、比較部70がX>Yと判定した画素に対応する信号線8をVS3にし、それ以外の画素に対応する信号線8は0Vにする。
【0084】
図7の例では、比較部70が比較した1行目の判定結果は、全ての画素がX>Yであり、表示コントローラ11は信号線8a、8b、8cを全てVS3にしている。ソースドライバ14の出力電圧S1、S2、S3の電圧はVS3であり、1行目のED11、ED12、ED13に接続されている駆動トランジスタ2のゲート、ソース間の制御電圧VはVS0に設定され補助容量3に保持される。
【0085】
ゲートドライバ12の1行目の出力電圧G1は、t11のタイミングで‘L’から‘H’に立ち上がりΔTの間‘H’になる。この間G2、G3は‘L’である。
【0086】
次に、表示コントローラ11は、t12のタイミングでCPU71に割り込み信号INT3を送り、比較部70が比較した2行目の判定結果を要求する。表示コントローラ11は同様にソースドライバ14を制御し、比較部70がX>Yと判定した画素に対応する信号線8をVS0にし、それ以外の画素に対応する信号線8は0Vにする。
【0087】
図7の例では、比較部70が比較した2行目の判定結果は、全ての画素がX>Yであり、表示コントローラ11は信号線8a、8b、8cを全てVS3にしている。ソースドライバ14の出力電圧S1、S2、S3の電圧はVS3であり、ED21、ED22、ED23に接続されている駆動トランジスタ2の制御電圧VはVS3に設定され補助容量3に保持される。
【0088】
ゲートドライバ12の2行目の出力電圧G2は、t12のタイミングで‘L’から‘H’に立ち上がりΔTの間‘H’になる。この間G1、G3は‘L’である。
【0089】
次に、表示コントローラ11は、t13のタイミングでCPU71に割り込み信号INT3を送り、比較部70が比較した3行目の判定結果を要求する。表示コントローラ11は同様にソースドライバ14を制御し、比較部70がX>Yと判定した画素に対応する信号線8をVS3にし、それ以外の画素に対応する信号線8は0Vにする。
【0090】
図7の例では、比較部70が比較した3行目の判定結果は、ED31、ED32がX>Y、ED33はX≦Yであり、これに基づいて表示コントローラ11は信号線8a、8bをVS3、信号線8cを0Vにしている。したがって、ソースドライバ14の出力電圧S1、S2の電圧はVS3であり、ED31、ED32に接続されている駆動トランジスタ2の制御電圧VはVsに設定され補助容量3に保持される。また、この間出力電圧S3の電圧は0であり、ED33に接続されている駆動トランジスタ2のゲート、ソース間の電圧は0Vに設定され補助容量3に保持される。
【0091】
ゲートドライバ12の出力電圧G3はt13のタイミングで‘L’から‘H’に立ち上がりΔTの間‘H’になる。この間G1、G2は‘L’である。
【0092】
表示コントローラ11は、次のT2の書き込み期間では、コモン電源13の出力電圧Vを0からVChに切り替える。出力電圧VがVChになると、駆動トランジスタ2は、補助容量3に保持されている駆動トランジスタ2の制御電圧Vに応じた定電流を電気化学表示素子1に印加する。
【0093】
図7では、電気化学表示素子1に流れる電流i11、i12、i13の電流値がこの間icであることを示している。この例では、図7には図示していないED33の電気化学表示素子1の電流i33が0であるが、それ以外の電気化学表示素子1の電流値はicである。このように、比較部70がX>Yと判定した画素には書き込み電流が印加される。
【0094】
第2フレームF2のプログラム期間T1も同様に、表示コントローラ11は、t21のタイミングでCPU71に割り込み信号INT3を送り、比較部70が比較した1行目の判定結果を要求する。表示コントローラ11は同様にソースドライバ14を制御し、比較部70がX>Yと判定した画素に対応する信号線8をVS3にし、それ以外の画素に対応する信号線8は0Vにする。
【0095】
図7の例では、比較部70が比較した1行目の判定結果は、ED31、ED32がX>Y、ED33はX≦Yであり、これに基づいて表示コントローラ11は信号線8a、8bをVS3、信号線8cを0Vにしている。したがって、ソースドライバ14の出力電圧S1、S2の電圧はVS3であり、ED11、ED12に接続されている駆動トランジスタ2の制御電圧VはVS3に設定され補助容量3に保持される。また、この間出力電圧S3の電圧は0であり、ED13に接続されている駆動トランジスタ2の制御電圧Vは0Vに設定され補助容量3に保持される。
【0096】
ゲートドライバ12の1行目の出力電圧G1は、t21のタイミングで‘L’から‘H’に立ち上がりΔTの間‘H’になる。この間G2、G3は‘L’である。
【0097】
以降、表示コントローラ11は、t22のタイミングとt23のタイミングとでCPU71に割り込み信号INT3を送り、同様の処理が行われる。
【0098】
2の書き込み期間ではT1の期間に補助容量3に保持されている駆動トランジスタ2の制御電圧Vに応じた定電流を電気化学表示素子1に印加する。図7の例では電気化学表示素子1の電流i11、i12の電流値がこの間ic、i13の電流値は0であることを示している。
【0099】
電気化学表示素子1に電流値icの電流がT2の期間印加されると、電気化学表示素子表示濃度Dは1つ増す。例えば、表示濃度0の電気化学表示素子1に1フレームの書き込みを行うと表示濃度は1になる。
【0100】
図7では2回目のフレームまでしか表示していないが、例えば表示濃度0の電気化学表示素子1に10フレームの書き込みを行うと、当該電気化学表示素子1を最大表示濃度である10にすることができる。
【0101】
このように、第2の書き込みモードでは複数回の書き込みを行って最大表示濃度を表示する。
【0102】
なお、表示濃度Dは書き込み電流の積分値に応じて変化するので、書き込みを毎フレーム連続して行う必要はない。また、本実施形態では0から10までの11段階の階調を表示する例を説明するが、電流値icや書き込み期間を適宜設定することにより多くの階調を再現することも可能であり、また少ない階調にすることも可能である。
【0103】
次に、本発明の実施形態における表示装置100の制御の手順について図8〜10のフローチャートを用いて説明する。
【0104】
図8は、本発明の実施形態における操作ボタンの操作による割り込み処理を説明するためのフローチャート、図9は、本発明の実施形態における手書き入力による割り込み処理を説明するためのフローチャートである。図10は、本発明の実施形態における表示コントローラ11による割り込み処理を説明するためのフローチャートである。
【0105】
最初に図8のフローチャートについて説明する。
【0106】
操作者が操作部42の順送りボタン43または逆送りボタン44を押すと、操作部42からCPU71に割り込み信号INT2が送信され、CPU71では図8に示す操作ボタン割り込み処理ルーチンが起動される。
【0107】
操作ボタン割り込み処理ルーチンではステップS10が実行される。
【0108】
S10:タッチパネル40の機能を停止するステップである。
【0109】
CPU71は、タッチパネルコントローラ41を制御し、タッチパネル40の駆動を停止させる。このようにすると、タッチパネル40を駆動する電力が不要になり、表示装置100の消費電力を低減することができる。タッチパネル40の機能を停止させることは必ずしも必須ではないが、タッチパネル40の機能を停止させない場合は本ステップで、CPU71は、タッチパネルコントローラ41からの割り込みINT1をマスクする。
【0110】
S11:表示コントローラ11を第1の書き込みモードに設定するステップである。
【0111】
CPU71は、表示コントローラ11を第1の書き込みモードに設定し、実行させる。
【0112】
S12:全画面を消去し、初期化するステップである。
【0113】
表示コントローラ11は、図5のタイムチャートで説明した手順で画像を消去する。
【0114】
S13:第3フレームメモリ62から画像データを読み出すページを指定し、当該ページの表示濃度の値Xを第1フレームメモリ60に書き込むステップである。
【0115】
CPU71は、第3フレームメモリ62から画像データを読み出すページを指定し、当該ページの表示濃度の値Xを第1フレームメモリ60に書き込む。
【0116】
例えば、操作者が操作部42の順送りボタン43を押すと、CPU71は第3フレームメモリ62から読み出すページ指定を第1ページから第2ページに更新し、第2ページに記憶されている画像データ(表示濃度の値X)を第1フレームメモリ60に書き込む。
【0117】
S14:第1フレームメモリ60の画像データの描画を表示コントローラ11に指令するステップである。
【0118】
CPU71は、第1フレームメモリ60の画像データの描画を表示コントローラ11に指令する。表示コントローラ11は、図6で説明した画像を書き込む手順で電気化学表示素子1に画像を書き込むとともに、第2フレームメモリ61の画素に対応する表示濃度の値Yを書き込み電流に相当する分だけ増加させる。
【0119】
S15:描画が終了したか、否か、判定するステップである。
【0120】
CPU71は、第1フレームメモリ60から描画終了の信号を受信するまで待機する。
【0121】
描画終了の信号を受信した場合、(ステップS15;Yes)、ステップS16に進む。
【0122】
S16:タッチパネル40の機能をオンにするステップである。
【0123】
CPU71は、タッチパネルコントローラ41を制御し、タッチパネル40の駆動を開始させる。または、タッチパネルコントローラ41からの割り込みINT1のマスクを解除する。
【0124】
割り込み処理が終了すると元のルーチンに戻る。
【0125】
操作ボタン割り込み処理ルーチンの説明は以上である。
【0126】
次に、図9を用いて、手書き入力割り込み処理ルーチンを説明する。
【0127】
タッチパネル40にスタイラスペン55などを用いて入力すると、タッチパネルコントローラ41からCPU71に割り込み信号INT1が送信され、CPU71では図9に示す手書き入力割り込み処理ルーチンが起動される。
【0128】
手書き入力割り込み処理ルーチンでは最初にステップS20が実行される。
【0129】
S20:表示コントローラ11を第2の書き込みモードに設定するステップである。
【0130】
CPU71は、表示コントローラ11を第2の書き込みモードに設定し、実行させる。
【0131】
S21:CPU71が、手書き入力に対応する第1フレームメモリ60の表示濃度の値Xを書き換えるステップである。
【0132】
CPU71は、タッチパネルコントローラ41が検出した位置情報に基づいて第1フレームメモリ60に記憶されている表示濃度の値Xを書き換える。本実施形態では、CPU71は、タッチパネルコントローラ41が検出した位置情報に対応するアドレスの第1フレームメモリ60に記憶されている表示濃度の値Xを最大濃度である10に書き換える。
【0133】
割り込み処理が終了すると元のルーチンに戻る。
【0134】
手書き入力割り込み処理ルーチンの説明は以上である。
【0135】
次に、図10のフローチャートについて説明する。
【0136】
表示コントローラ11は、図7で説明したように各フレームでGnの立ち上がり時に割り込み信号INT3が送信され、CPU71では図10に示す表示コントローラ割り込み処理ルーチンが起動される。なお、電源投入時など初期状態ではn=1に初期化されている。
【0137】
S101:n行目の第1フレームメモリ60と第2フレームメモリ61の表示濃度の値を比較するステップである。
【0138】
比較部70は、第1フレームメモリ60に記憶されている表示濃度の値Xと第2フレームメモリ61に記憶されている表示濃度の値Yとをそれぞれn行目の行方向に順次読み出して比較し、Xnm>Ynmのとき‘H’、Xnm≦Ynmのとき‘L’と判定する。比較部70は、判定した結果を記憶部10に一時記憶する。
【0139】
例えば、1行目の1列目の場合、X11が10、Y11が0だったとすると、判定結果は‘H’であり、以降の処理で1行目の1列目の電気化学表示素子1に書き込み電流が加えられる。
【0140】
S102:表示コントローラ11にステップS101で比較した結果を出力するステップである。
【0141】
CPU71は、記憶部10に一時記憶されているステップS102で比較した結果を表示コントローラ11に出力する。表示コントローラ11は、‘H’と判定された列のソースドライバ14の出力電圧をVS3にし、‘L’と判定された列のソースドライバ14の出力電圧を0Vにする。
【0142】
S103:第2フレームメモリ61のn行目の表示濃度の値Yを更新するステップである。
【0143】
表示コントローラ11は、第2フレームメモリ61のn行目の画素に対応する表示濃度の値Yを書き込み電流に相当する分だけ増加させる。例えば、表示濃度の値Y11が0だったとすると1に書き換える。
【0144】
S104:nとnmaxを比較するステップである。
【0145】
CPU71は、nと表示装置の最大行nmaxを比較する。図3の例ではnmaxは3である。
【0146】
n≠nmaxの場合、(ステップS104;No)、ステップS105に進む。
【0147】
S105:n=n+1とするステップである。
【0148】
最大行nmaxまで比較を終えていないのでn=n+1とし、元のルーチンに戻る。
【0149】
例えば、nが1のときはn=2とし、次に表示コントローラ11から割り込み信号INT3が送信されたときは、本ルーチンで2行目の表示濃度を比較することになる。
【0150】
n=nmaxの場合、(ステップS104;Yes)、ステップS106に進む。
【0151】
S106:n=1とするステップである。
【0152】
最大行nmaxまで比較したのでn=1とし、元のルーチンに戻る。
【0153】
次に表示コントローラ11から割り込み信号INT3が送信されたときは、次のフレームの処理であり、本ルーチンで1行目の表示濃度から比較することになる。
【0154】
表示コントローラ割り込み処理ルーチンの説明は以上である。
【0155】
次に、今までに説明した表示装置で行われる処理を、図11〜図14を用いて具体的な例を基に詳しく説明する。
【0156】
図11は表示装置100の手書き入力操作の一例を説明する説明図である。
【0157】
図11では、スタイラスペン55を用いて十字線を手書き入力でタッチパネル40に書き込む手順を図示している。図11では、白い背景に灰色(表示濃度5)の四角形75が表示されている表示画面50に、四角形75に沿って十字線を手書き入力で書き込む例を説明する。
【0158】
図11(a)は、手書き入力で横線を書き始めた当初のスタイラスペン55の位置、図11(b)は横線を書き終えた位置を示している。また、図11(c)は、縦線を書き始めた位置、図11(b)は十字線を書き終えた位置を示している。
【0159】
なお、図11に図示している線はスタイラスペン55の軌跡を示すものであり、実際に表示される表示濃度は次に図12〜図14を用いて説明する。
【0160】
図12は、図11のように十字線を手書き入力したときの第1フレームメモリ60と第2フレームメモリ61に記憶されている表示濃度X、表示濃度Yの値を時系列に沿って模式的に示すタイムチャートである。
【0161】
図13、図14は第1フレームメモリ60と第2フレームメモリ61に記憶されている表示濃度X、表示濃度Yの値を説明するための模式図である。図13、図14の点線で示す升目はそれぞれ表示画面50の画素を表し、升目の中の数字はその画素に対応する各フレームメモリに記憶されている表示濃度X、表示濃度Yの値を示している。
【0162】
図12の時間軸に示すF1は、図5で説明した第1の書き込みモードの画像を消去するフレーム期間、F1は、図6で説明した第1の書き込みモードの画像を書き込むフレーム期間である。また、F1〜F13は、それぞれ図7で説明した第2の書き込みモードの追記書き込みを行うフレーム期間を示している。以降、時間軸に沿って順に説明する。
【0163】
s0は、操作者が操作部42の順送りボタン43または逆送りボタン44を押し、操作部42からCPU71に割り込み信号INT2が送信されたタイミングである。CPU71では図8で説明した操作ボタン割り込み処理ルーチンが起動される。フレームF1で画像が消去された後、フレームF1で第3フレームメモリ62に記憶されていた四角形75が表示画面50に書き込まれたものとする。
【0164】
s1は、スタイラスペン55をタッチパネル40に触れて横棒を書き始めたタイミングであり、ts2は横棒を書き終えてスタイラスペン55をタッチパネル40から離したタイミングである。また、ts3スタイラスペン55をタッチパネル40に触れて縦棒を書き始めたタイミングであり、ts4は縦棒を書き終えてスタイラスペン55をタッチパネル40から離したタイミングである。
【0165】
s1のタイミングから所定時間入力が続くと、タッチパネルコントローラ41からCPU71に割り込み信号INT1が送信され、CPU71では図9で説明した手書き入力割り込み処理ルーチンが起動される。
【0166】
t1は第1フレームF1の開始タイミングであり、t1から図4で説明したプログラム期間T1が開始される。同様に、t2からt11は、それぞれ第2フレームF2から第11フレームF11の開始タイミングである。
【0167】
図12に示す80a、80b、80c、80dは、図13、図14に示す80a、80b、80c、80dの第1フレームメモリ60に記憶されている表示濃度の値Xに応じて、例えば表示濃度の値0は白、表示濃度の値10は黒で表現している。
【0168】
また、図12に示す90a、90b、90c、90d、90e、90fは、図13、図14に示す90a、90b、90c、90d、90e、90fの第2フレームメモリ61に記憶されている表示濃度の値Yに応じて、例えば表示濃度の値0は白、表示濃度の値10は黒で表現している。
【0169】
図12の時間軸に沿って順に説明する。
【0170】
第1フレームメモリ60の四角形75に対応するアドレスの表示濃度の値Xは、フレームF1の間に行われるステップS13で5に書き換えられる。また、第2フレームメモリ61の四角形75に対応するアドレスの表示濃度の値Yは、フレームF1の間に行われるステップS14で5に書き換えられる。四角形75以外の画素の表示濃度の値Xと表示濃度の値Yは0である。
【0171】
手書き入力割り込み処理ルーチンが起動されると、手書き入力の位置に対応するアドレスの第1フレームメモリ60の表示濃度の値Xが順次10に書き換えられる。
【0172】
80aはt1の時点の第1フレームメモリ60の表示濃度の値Xを示している。すなわち、図13(a)のようにPaで示す画素と右隣の画素は表示濃度の値Xが10であり、四角形75に対応する表示濃度の値Xは5、それ以外の画素の表示濃度の値Xは0である。
【0173】
t1のタイミングから始まる第1フレームでは、プログラム期間T1に表示コントローラ1からGnの立ち上がり周期毎に割り込み信号INT3がCPU71に送信され、CPU71は表示コントローラ割り込み処理ルーチンを実行する。
【0174】
表示コントローラ割り込み処理ルーチンでは、図10で説明したように、比較部70は、第1フレームメモリ60に記憶されている表示濃度の値Xと第2フレームメモリ61に記憶されている表示濃度の値Yとをそれぞれn行目の行方向に順次読み出して比較し、Xnm>Ynmのとき‘H’、Xnm≦Ynmのとき‘L’と判定する。Paで示す画素と右隣の画素の第1フレームメモリ60の表示濃度の値Xは10、第2フレームメモリ61の表示濃度の値Yは0であり、表示コントローラ割り込み処理ルーチン終了後、この2つの画素に対応する電気化学表示素子1に書き込み電流が加えられる。一方、それ以外の電気化学表示素子1には書き込み電流は加えられない。
【0175】
書き込み電流が加えられた電気化学表示素子1は徐々に濃度を増し、書き込み期間T2が終了すると、表示画面50のPaで示す画素と右隣の画素に対応する位置に表示濃度の値1の横線が表示される。
【0176】
また、表示コントローラ割り込み処理ルーチンのステップS103で、CPU71は、第2フレームメモリ61のPaで示す画素と右隣の画素に対応する表示濃度の値Yを1に増加させ、t2のタイミングでは図13(b)のようになっている。
【0177】
一方、t2のタイミングでは、スタイラスペンによる55による横線の書き込みは終了しており、第1フレームメモリ60に記憶されている表示濃度の値Xは、図13(c)のようにPaで示す画素から右方向に10画素が10になっている。
【0178】
第1フレームと同様に、第2フレームでもCPU71が表示コントローラ割り込み処理ルーチンを実行し、表示コントローラ11はX>Yの画素に対応する電気化学表示素子1に書き込み電流を加える。
【0179】
第1フレームと同様の処理により、書き込みのあった画素に対応する第2フレームメモリ61の表示濃度の値Yはt3のタイミングでは図13(d)のように増加している。Paで示す画素と右隣の画素は2回書き込みを行っているので表示濃度の値Yは2であり、第2フレームで書き込みを行った画素の表示濃度の値Yは1である。
【0180】
以降のフレームでX=Yになるまで対応する電気化学表示素子1に書き込み電流が印加され表示画面50に徐々に高い濃度で表示される。例えばt9のタイミングでは、図13(e)のように高い表示濃度になっている。
【0181】
このように、本発明では手書き入力から若干の遅れで手書きの情報が淡く表示され、徐々に高い濃度で表示されるので、実用的な速度で手書き表示を行うことができる。
【0182】
s3のタイミングで、縦線が書き込まれた場合も同様に、タッチパネルコントローラ41からCPU71に割り込み信号INT1が送信され、CPU71では図9に示す手書き入力割り込み処理ルーチンが起動され、手書き入力の位置に対応する第1フレームメモリ60の表示濃度の値Xが順次書き換えられる。
【0183】
80cはt9の時点の第1フレームメモリ60の表示濃度の値Xを示している。すなわち、図14(a)のように横線を書き込んだ画素とPbで示す画素から下に2つの画素までは表示濃度の値Xが10であり、横線を書き込んだ画素以外の表示濃度の値Xは0である。
【0184】
これまでと同様に、第9フレームでもCPU71が表示コントローラ割り込み処理ルーチンを実行し、X>Yの画素に対応する電気化学表示素子1に書き込み電流を加える。
【0185】
同様の処理により、第2フレームメモリ61の画素はt10のタイミングでは図14(b)のようになっている。Pbで示す画素と下側2つの画素は1回書き込みを行っているので表示濃度の値Yは1であり、横線の画素は書き込み回数に応じた表示濃度の値になっている。
【0186】
以降のフレームでX=Yになるまでは対応する電気化学表示素子1に書き込み電流が加えられ表示画面に徐々に高い濃度で表示される。例えばt11のタイミングでは、図14(d)のようになっている。
【0187】
このようにして、1フレーム毎にX>Yの画素に書き込み電流が加えられて図14(e)のように横線と縦線の画素の表示濃度の値Yは10になり、表示画面50には最大表示濃度で表示される。
【0188】
本実施形態では、書き込み電流を加えるときに、Pcで示す縦線と横線が交差する位置の画素のように、縦線の書き込みをするときに表示濃度の値Yがすでに10になっているときはX=Yとなり、書き込み電流を加えない。したがって、最大表示濃度を超えて書き込み電流を加えることはないので、消去電圧を印加しても表示画像が消えにくくなったり、表示画像が焼きついてしまうという問題が発生しない。
【0189】
なお、本実施形態では、手書き入力した部分を最大表示濃度10で黒く表示する例を説明したが、最小表示濃度0で白く表示させることも可能である。電気化学表示素子1の表示濃度を減少させる場合は、電気化学表示素子1に流れる電流が図3とは逆方向に流れるようにコモン電圧Vcと制御電圧Vの極性を逆にすれば良い。表示コントローラ11はX<Yの画素に対応する電気化学表示素子1に書き込み電流を加えれば良い。
【0190】
以上このように、本発明によれば、電力消費が少なく、実用的な速度で手書き表示が可能な反射型の表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】本発明の実施形態に係る表示装置の一例を示す外観図である。
【図2】本発明の表示装置の一実施形態であるED方式の電気化学表示素子1の基本的な構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の構成を示す図である。
【図4】本実施形態の表示素子1の表示濃度Dを説明する図である。
【図5】第1の書き込みモードで電気化学表示素子1の画像を消去するときの各部の電圧の変化を示すタイムチャートである。
【図6】第1の書き込みモードで電気化学表示素子1に画像を表示させるときの各部の電圧の変化を示すタイムチャートである。
【図7】第2の書き込みモードで電気化学表示素子1に画像を表示させるときの各部の電圧の変化を示すタイムチャートである。
【図8】本発明の実施形態における操作ボタンの操作による割り込み処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態における手書き入力による割り込み処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態における表示コントローラ11による割り込み処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】表示装置100の手書き入力操作の一例を説明する説明図である。
【図12】第1フレームメモリ60と第2フレームメモリ61に記憶されている表示濃度の値を時系列に沿って模式的に示すタイムチャートである。
【図13】第1フレームメモリ60と第2フレームメモリ61に記憶されている表示濃度の値を説明するための模式図である。
【図14】第1フレームメモリ60と第2フレームメモリ61に記憶されている表示濃度の値を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0192】
1 電気化学表示素子
2 駆動トランジスタ
3 補助容量
4 スイッチングトランジスタ
5a、5b、5c 走査線
8a、8b、8c 信号線
10 記憶部
11 表示コントローラ
12 ゲートドライバ
13 コモン電源
14 ソースドライバ
15 ソース電源
30 銀電極
31 電解質
32 ITO電極
40 タッチパネル
41 タッチパネルコントローラ
60 第1フレームメモリ
61 第2フレームメモリ
62 第3フレームメモリ
70 比較部
71 CPU
75 四角形
100 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配列した電気化学表示素子からなる表示画面に画像を表示する表示装置において、
第1の書き込みモードまたは第2の書き込みモードのいずれか一方でフレームの期間毎に前記電気化学表示素子に書き込み電流を印加する駆動回路と、
前記駆動回路を制御する表示コントローラと、
を有し、
前記電気化学表示素子に前記書き込み電流を印加する前記フレームの回数は、第2の書き込みモードより第1の書き込みモードの方が少ないことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、
制御電圧に応じた前記書き込み電流を前記電気化学表示素子に印加する定電流回路を有し、
前記表示コントローラは、
前記第1の書き込みモードでは、
前記制御電圧を、前記電気化学表示素子に表示させる画像濃度の値に応じた電圧に設定することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、
制御電圧に応じた前記書き込み電流を前記電気化学表示素子に印加する定電流回路を有し、
前記表示コントローラは、
前記第2の書き込みモードでは、
前記制御電圧を、所定の前記書き込み電流が印加される第1の電圧、または、前記書き込み電流が印加されない第2の電圧の何れかに設定することを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示画面に表示する画像を操作する操作手段と、
前記表示画面の上層に設けられ、前記表示画面の画面上の位置情報を入力する入力手段と、
前記表示コントローラを制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記操作手段による操作を検知したときは、前記第1の書き込みモードを前記表示コントローラに実行させ、前記入力手段による入力を検知したときは、前記第2の書き込みモードを前記表示コントローラに実行させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記操作手段による操作が行われたと判定したときは、前記入力手段の機能を停止させることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−32612(P2010−32612A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192070(P2008−192070)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】