説明

表示装置

【課題】ミュート時間に表示装置自身で内部回路を検査することができるようにすることで、表示装置を出荷した後でも映像処理手段内部の誤りを常に検査することを可能とする。
【解決手段】映像処理手段3における映像信号のデータパスブロックの最初に備えられたテストパターン発生ブロック10と、データパスブロックの最終段に備えられたCRC判定処理ブロック12とにより、映像処理手段3の内部回路である画像処理ブロック11の誤りの有無が検査される。ここでは、表示装置の電源ON時などミュートをかけている間に、テストパターン発生ブロック10で所定のテストパターンを発生させ、CRC判定処理ブロック12は、そのCRC結果により内部回路に誤りがないかどうかを判断する。そして、CRC結果が想定している値と違う値であれば、ミュート解除後に、内部回路に誤りがある旨をユーザーに報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部で画像処理を行って映像を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示装置において、メモリに記憶されているデータの破損の発生を検出することにより、意味不明のパターンが表示されたり、表示不能に陥ったりといった最悪の事態を回避する技術が知られている。
例えば特許文献1には、表示装置を起動する際に、第1の記憶手段に記憶した冗長検査プログラムを実行し、第2の記憶手段に記憶しているシステムプログラム等の記憶内容に誤りがないかを確認し、記憶データに異常がなく表示装置が正常に起動すると、以降は第2の記憶手段に格納されたシステムプログラムの冗長検査機能によって定期的に第2の記憶手段の内容に誤りが発生していないかを確認し、また、この定期的な自己診断動作を表示装置の稼動時間外に行うようにし、もし誤りの発生を検出したら所定のメッセージを固定表示すると共に、通信回線を介して予め登録された連絡先に異常が発生した旨を通知するようにした装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、電子機器等の製造試験工程において、出力された画像信号の良又は不良を判定する判定装置及び判定方法として、表示信号入力インターフェースと、LVDS−Parallel変換部と、Parallel−LVDS変換部とを備え、さらにCRC演算回路部、カウンタ回路部、期待値格納部及び判定回路部がFPGAにより作成されていて、画像信号に演算を行い、判定回路部がCRC演算回路部の演算結果と期待値格納部に格納されている期待値とを比較し、画像信号の良又は不良を判定する判定装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−70097号公報
【特許文献2】特開2007−101691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、テレビなどの表示装置を出荷する前の製造試験工程において、上述のような判定装置を用いて、表示装置に搭載している画像処理ICの内部回路の検査を行うことができる。しかしながら、出荷された表示装置をユーザーが使用しているときに、表示装置に搭載している画像処理ICが壊れないという保証は絶対にない。
例えば、表示装置に表示させる映像に明らかに異常があれば、ユーザーは表示装置が壊れたということを認識してメーカーなどに修理を依頼できる。しかしながら、例えば内部データ処理部の12ビット中の下位1ビットに誤りがあったとしても、異常を目視により認識できるユーザーは少ないと思われ、そのまま使い続ければ画像品質という点において問題となる。
【0005】
また、上述のように、従来の技術としてメモリーデータの破損自動チェックを行う表示装置はあるが、表示装置に搭載している画像処理ICの内部回路の定期自動チェックを行う表示装置はない。
【0006】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、起動時やチャンネル切り替え時及び入力切り換え時などの一瞬のミュート時間に表示装置自身で内部回路を検査することができるようにすることで、表示装置を出荷した後でも映像処理手段内部の誤りを常に検査することを可能とした表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような問題点を解決するため、本発明の表示装置は、入力した映像信号に対して高画質化のための画像処理を施す映像処理手段と、映像処理手段により処理された映像信号を表示する表示手段とを備えた表示装置において、映像処理手段は、入力した映像信号のデータパスブロックの最初に、所定のテストパターンを発生するテストパターン発生手段を備えるとともに、データパスブロックの最終段に手軽で実用性の高い誤り検出符号処理手段とを備え、テストパターン発生手段及び誤り検出符号処理手段により、前記映像処理手段の内部回路の誤りの有無を検査することを特徴としている。
【0008】
また、本発明の表示装置は、内部回路の検査を、表示装置の起動時やチャンネル切り替え時及び入力切り換え時などの一瞬のミュート時に実行することで、表示装置を出荷した後でも内部回路の誤りを常に検査できるようにしたことを特徴としている。
【0009】
さらに、上記の表示装置において、内部回路の検査によってその内部回路に誤りを検出したとき、エラーであることを報知する報知手段を備えることにより、ユーザーが目視で認識できない内部回路の異常を確実に報知できるようにしたことを特徴としている。そして上記報知手段は、LEDの発光により誤りを報知するか、表示手段にOSD(オンスクリーンディスプレイ)により誤りを表示させるか、またはその両方を使用可能とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、起動時やチャンネル切り替え時及び入力切り換え時などの一瞬のミュート時間に表示装置自身で内部回路を検査することができるようにすることで、表示装置を出荷した後でも映像処理手段内部の誤りを常に検査することを可能とした表示装置を提供することができる。
すなわち本発明によれば、表示装置に入力した映像信号に対して高画質化のための画像処理を施す映像処理手段のデータパスブロックの最初に、所定のテストパターンを発生するテストパターン発生手段を備えるとともに、そのデータパスブロックの最終段に誤り検出符号処理手段とを備え、これらテストパターン発生手段及び誤り検出符号処理手段により、映像処理手段の内部回路の異常の有無を検査することにより、起動時やチャンネル切り替え時及び入力切り換え時などの一瞬のミュート時間に異常の有無を検査することができ、表示装置の出荷後でも常に異常を検査することができるようになる。
【0011】
また、映像処理手段の内部回路に誤りを検出したときにエラーであることを表示させることにより、例えば、内部回路の12ビット中の下位1ビットの異常発生のように、ユーザーが目視で異常を認識できないような故障であっても、故障を知らせることができるようになり、ユーザーが画像品質の悪いまま使い続けるといったことを防ぐことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を基に、本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明による表示装置の一実施例を示すブロック図である。表示装置1において、映像信号入力I/F(インターフェース)2は、放送受信チューナーやコンポジットケーブル,D端子ケーブル,及びHDMI(High-Definition Multimedia Interface)ケーブルなどからの映像信号を映像処理手段3に渡すブロックである。映像処理手段3は、画像処理回路を含むICなどであって、入力した映像信号に対して各種高画質化のための画像処理を施すものである。具体的には、後述する映像処理手段内の画像処理ブロック11によって画像処理が施される。
また、表示手段4は、例えば液晶テレビでは液晶パネルに相当するものであり、映像処理手段3で処理された映像信号を表示するものである。マイコン5は、表示装置各部を制御するもので、ROM6に記憶されたプログラムやデータに従って処理を実行する。
【0013】
リモコン8は、電源オン/オフや、チャンネル切り替えまたは入力切換などを指示するユーザー操作を行うものである。リモコン8は、ユーザー操作に応じて制御コード信号を送信し、表示装置1の受光手段7で受信された制御コード信号がマイコン5に送られる。マイコン5では、その制御コード信号に応じた制御を行う。
【0014】
LED(Light Emitting Diode)9は、表示装置の電源オン時に発光するLEDの他、映像処理手段3の内部回路の検査により、当該内部回路の誤りを検出したときにエラーであることを報知する報知手段として機能させるLEDを含む。このような報知手段の他の例では、内部回路の誤りを報知する画面をOSD(オンスクリーンディスプレイ)によって表示手段4に表示させるようにする。OSDは、マイコン5の制御に従って、映像処理手段3もしくは図示しないOSD生成手段により報知画面データを生成し、その報知画面データを、入力した映像信号に重畳させて表示手段4に表示させるものである。このときに、LEDによる報知とOSDによる報知のいずれかまたは両方を使用してもよい。
【0015】
次に映像処理手段3の構成について、図2に基づいて更に詳しく説明する。
映像処理手段3において、テストパターン発生ブロック10は、例えばテレビセットの組み立て出荷検査など、様々な検査に使用するいろいろなテストパターンを任意に発生させる回路になっている。また、画像処理ブロック11は、映像信号に対して各種高画質化するための画像処理を施す画像処理回路になっている。
【0016】
CRC(Cyclic Redundancy Check)判定処理ブロック12は、画像処理ブロック11に誤りが発生していないかを検出するCRC回路になっている。CRCは、従来からデータ通信における伝送誤りの検出方法として用いられている巡回冗長検査であり、転送する前のデータを生成多項式で除算(2進数演算のうちのモジュロ2除算)し、その剰余をCRCコードとしてデータに付加しておき、転送後のデータが同じ生成多項式で割り切れるか否かによりデータの誤り有無を検出するものである。
【0017】
本実施例の表示装置では、データ通信で使用するCRCを映像信号に適用し、マイコン5がROM6にデータを記憶する際にCRCコードを保存しておく。
そして、表示装置1の電源が投入された起動時などに一連の動作を実行し、映像処理手段3では、画像処理ブロック11に誤りが発生していないかを検出するようにしている。映像処理手段3におけるレジスタI/Fブロック13は、マイコン5からの制御データを受け取って、テストパターン発生ブロック10,画像処理ブロック11,CRC判定処理ブロック12にそのデータを渡す回路になっている。
【0018】
テストパターン発生ブロック10は、本発明のテストパターン発生手段に該当し、CRC判定処理ブロック12は、本発明の誤り検出符号処理手段に該当する。そして、映像処理手段3における映像信号のデータパスブロックの最初に備えられたテストパターン発生ブロック10と、上記データパスブロックの最終段に備えられたCRC判定処理ブロック12とにより、映像処理手段3の内部回路である画像処理ブロック11の誤りの有無が検査される。ここでは、表示装置1の電源ON時などミュートをかけている間に、テストパターン発生ブロック10で所定のテストパターンを発生させ、CRC判定処理ブロック12は、そのCRC結果により内部回路に誤りがないかどうかを判断する。そして、CRC結果が想定している値と違う値であれば、ミュート解除後に、内部回路に誤りがある旨をユーザーに報知する。
【0019】
次に表示装置の動作について説明する。
図3は、本発明による表示装置の動作の一例を説明するためのフローチャートで、表示装置の起動状態時の動作例を示すものである。ここでは図1及び図2の構成を参照しながら説明する。
表示装置1の電源が投入されると(S1)、デバイスが初期化され、マイコン5はROM6から各種設定データを読み出す(S2)。このROMデータには、あらかじめ決められた内部テストパターン表示時のCRC期待値を書き込んでおく。
【0020】
そして表示装置1では、すぐにミュートがかけられ(S3)、CRC判定に必要な決められた内部テストパターンをONする(S13)。ここでは、マイコン5による制御に従って、映像処理手段3のテストパターン発生ブロック10により、テストパターンが発生される。このとき、表示装置1にはミュートがかかっているので、当然その内部テストパターンは表示手段4には表示されないが、表示装置1の内部回路にはその内部テストパターンの映像データが流れている。そしてCRC判定処理ブロック12にてすぐにCRC判定が実行され(S5)、画像処理ブロック11に誤りがあるか、つまりエラーが発生しているか否かの検査が行われる(S6)。ここではテストパターン発生ブロック10により発生された内部テストパターンと、あらかじめROMに書き込まれたCRC期待値とを比較して、一致すれば画像処理ブロック11に誤りがないものと判定される。
【0021】
表示装置1のマイコン5は、画像処理ブロック11が正常であれば(S6−Yes)、内部テストパターンをOFFにし(S8)、ミュートを解除する(S9)。そして、通常の外部入力表示状態にして(S11)、ユーザーが任意の映像を見ることができる状態とする。
【0022】
S6において、画像処理ブロック11に誤りがあることが検出された場合、マイコン5は、エラーであることを報知させてユーザーに知らせる(S7)。ここでは例えば、通常は緑に点灯しているLED9を点滅させることにより、ユーザーにエラーを報知する(S7)。あるいは、表示手段4の例えば液晶パネル上に、OSDにより内部回路(画像処理ブロック11)が正常ではないことを表示するようにしてもよく、さらには、LED9の発光と表示手段4へのOSD表示を併用してもよい。
【0023】
また、例えばテレビなどでは、ユーザーがチャンネル(CH)切り換えや入力切り換えを行った際にも、画面が切り替わってミュートがかけられる。
従って、S11の状態で、チャンネル切り替えまたは入力切り替えが行われた場合(S12−Yes)、ミュートがかけられ(S3)、再びCRC判定に必要な決められた内部テストパターンをONする(S4)。そして、すぐにCRC判定実行が行われ(S5)、画像処理ブロック11にエラーが発生していないか検査が行われる(S6)。
【0024】
そして、画像処理ブロックが正常であれば(S6−Yes)、内部テストパターンをOFFし(S8)、ミュートを解除する(S9)。さらに、通常の外部入力表示状態にし(S11)、ユーザーが切り換えた先の映像を見ることができる状態とする。また、S6で画像処理ブロック11にエラーが存在することを検出した場合には、エラーであることをユーザーに報知する(S7)。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による表示装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す映像処理手段の更に詳細な構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明による表示装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0026】
1…表示装置、2…映像信号入力I/F、3…映像処理手段、4…表示手段、5…マイコン、6…ROM、7…受光手段、8…リモコン、9…LED、10…テストパターン発生ブロック、11…画像処理ブロック、12…CRC判定処理ブロック、13…レジスタI/Fブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した映像信号に対して高画質化のための画像処理を施す映像処理手段と、該映像処理手段により処理された映像信号を表示する表示手段とを備えた表示装置において、
前記映像処理手段は、入力した映像信号のデータパスブロックの最初に、所定のテストパターンを発生するテストパターン発生手段を備えるとともに、前記データパスブロックの最終段に誤り検出符号処理手段とを備え、
前記テストパターン発生手段及び前記誤り検出符号処理手段により、前記映像処理手段の内部回路の誤りの有無を検査することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の表示装置において、前記内部回路の検査は、前記表示装置がミュートしたときに実行することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表示装置において、前記内部回路の検査によって該内部回路に誤りを検出したとき、エラーであることを報知する報知手段を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の表示装置において、前記報知手段は、LEDの発光、及び/または前記表示手段へのOSD(オンスクリーンディスプレイ)表示により前記エラーであることを報知することを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−60711(P2010−60711A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224796(P2008−224796)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】