説明

表示装置

【課題】隔壁に囲まれた領域に、膜厚が均一な有機層を形成することが可能な、簡易な構造を有する表示装置を提供する。
【解決手段】基台と、この基台上において予め設定される区画を画成する隔壁と、この隔壁によって画成される区画にそれぞれ設けられる複数の有機EL素子とを含む表示装置であって、各有機EL素子は、第1電極、有機層、第2電極が、前記基台側からこの順で積層されて構成され、前記隔壁は、その端部が、前記第1電極上に接して設けられ、前記第1電極は、前記基台の厚み方向の一方からみて、前記隔壁の端部に覆われる部位を除く残余の部位、およびこの残余の部位の周縁部に、前記隔壁の端部と前記第1電極との界面よりも基台側に凹む窪みが形成されている、表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置にはその構成や原理を異にする種々の装置がある。そのひとつとして現在、画素の光源に有機EL(Electro Luminescence)素子を利用した表示装置が実用化されつつある。
【0003】
上記表示装置には、画素に対応する多数の有機EL素子が所定の基台上に整列して配置されている。なお基台上には所定の区画を画成するための隔壁が設けられており、多数の有機EL素子は、それぞれ隔壁によって区画された領域に整列して配置されている。
【0004】
各有機EL素子は、第1電極、有機層、第2電極を基台側からこの順で積層することにより形成される。
【0005】
上述の有機層はたとえば塗布法によって形成することができる。図8を参照して有機層の形成方法について説明する。図8(1)に示すようにまず第1電極16および隔壁13が予め形成された基台12を用意する。つぎにこの基台12において隔壁13に囲まれた領域15に有機層18となる材料を含むインキ17を供給する。供給されたインキ17は隔壁13に囲まれた領域(凹部)15に収容される(図8(2)参照)。そしてインキ17の溶媒が気化することによって有機層18が形成される(図8(3)参照)。
【0006】
なお隔壁13がインキ17に対して親液性を示す場合、供給されたインキが、隔壁13表面を伝って隣の凹部にまで流出することがある。このようなインキの流出を防ぐために、通常は、ある程度撥液性を示す隔壁13が基台12上に設けられている。
【0007】
しかしながら隔壁13が撥液性を示す場合、凹部15に供給されたインキは、隔壁13に弾かれつつ気化し、薄膜化するため、膜厚が不均一な発光層が形成されることがある。たとえば有機層18の隔壁13に接する部位(すなわち有機層18の周縁部)が、中央部の膜厚に比べて薄くなることがある。そのため有機層の周縁部の電気抵抗が中央部に比べて低くなり、有機EL素子を駆動するさいに、周縁部に電流が集中して流れ、中央部が周縁部に比べて暗くなることがある。また逆に、発光層18の周縁部に所望の膜厚の層が形成されないため、発光層18の周縁部が意図したとおりには発光しないこともある。
【0008】
上記問題を解決するために、従来の技術では、隔壁13と第1電極16との間にスペーサ19を設け、隔壁の端部と第1電極との間に微細な間隙を設けている(図9参照)。間隙が設けられた基台上にインキを供給すると、毛管現象によってインキが間隙に吸い込まれつつ、薄膜化する。このように、インキは隔壁の端部によって弾かれることなく薄膜化するため、意図した膜厚の有機層を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−506490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら上述の従来の技術では間隙を形成するために、スペーサが必要となるので、表示装置の構成が複雑化するという問題がある。
【0011】
したがって本発明の目的は、隔壁に囲まれた領域に、膜厚が均一な有機層を形成することが可能な、簡易な構造を有する表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、基台と、この基台上において予め設定される区画を画成する隔壁と、この隔壁によって画成される区画にそれぞれ設けられる複数の有機EL素子とを含む表示装置であって、
各有機EL素子は、第1電極、有機層、第2電極が、前記基台側からこの順で積層されて構成され、
前記隔壁は、その端部が、前記第1電極上に接して設けられ、
前記第1電極は、前記基台の厚み方向の一方からみて、前記隔壁の端部に覆われる部位を除く残余の部位、およびこの残余の部位の周縁部に、前記隔壁の端部と前記第1電極との界面よりも基台側に凹む窪みが形成されている、表示装置に関する。
【0013】
また本発明は、前記窪みの深さが、20nm〜300nmである、表示装置に関する。
【0014】
また本発明は、基台と、この基台上において予め設定される区画を画成する隔壁と、この隔壁によって画成される区画にそれぞれ設けられる複数の有機EL素子とを含む表示装置であって、各有機EL素子は、第1電極、有機層、第2電極が、基台側からこの順で積層されて構成される表示装置の製造方法であって、
前記第1電極がそのうえに設けられた基台を準備する工程と、
その端部が前記第1電極上に接するように、前記隔壁をパターン形成する工程と、
前記第1電極のうち、前記隔壁の端部に覆われる部位を除く残余の部位とこの残余の部位の周縁部との表面に窪みを形成する工程と、
前記第1電極上に有機層を形成する工程と、
前記有機層上に前記第2電極を形成する工程とを含む、表示装置の製造方法に関する。
【0015】
また本発明は、ウエットエッチング法によって、前記第1電極に前記窪みを形成する、表示装置の製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】表示装置1の一部を拡大して模式的に示す断面図である。
【図2】本実施形態の表示装置1の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図3】表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図4】表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図5】表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図6】本実施形態の表示装置1の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【図7】表示装置1の一部を拡大して模式的に示す断面図である。
【図8】表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図9】表示装置の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の表示装置は、基台と、この基台上において予め設定される区画を画成する隔壁と、この隔壁によって画成される区画にそれぞれ設けられる複数の有機EL素子とを含む表示装置であって、各有機EL素子は、第1電極、有機層、第2電極が、前記基台側からこの順で積層されて構成され、前記隔壁は、その端部が、前記第1電極上に接して設けられ、前記第1電極は、前記基台の厚み方向の一方からみて、前記隔壁の端部に覆われる部位を除く残余の部位、およびこの残余の部位の周縁部に、前記隔壁の端部と前記第1電極との界面よりも基台側に凹む窪みが形成されている。
【0018】
表示装置には主にアクティブマトリクス駆動型の装置と、パッシブマトリクス駆動型の装置とがある。本発明は両方の型の表示装置に適用可能であるが、本実施形態では一例としてアクティブマトリクス駆動型の表示装置に適用される表示装置について説明する。
【0019】
<表示装置の構成>
まず表示装置の構成について説明する。図1は本実施形態の表示装置1の一部を拡大して模式的に示す断面図である。図2は本実施形態の表示装置1の一部を拡大して模式的に示す平面図である。表示装置1は主に、基台2と、この基台2上において予め設定される区画を画成する隔壁3と、隔壁3によって画成される区画に設けられる複数の有機EL素子4とを含んで構成される。
【0020】
隔壁3は基台2上においてたとえば格子状またはストライプ状に形成される。なお図2では実施の一形態として格子状の隔壁3が設けられた表示装置1を示している。同図中、ハッチングが施された領域が隔壁3に相当する。
【0021】
基台2上には、隔壁3と基台2とによって規定される複数の凹部5が設定される。この凹部5が、隔壁3によって画成される区画に相当する。
【0022】
本実施形態の隔壁3は格子状に設けられる。そのため基台2の厚み方向Zの一方から見て(以下、「平面視で」ということがある。)、複数の凹部5がマトリクス状に配置されている。すなわち凹部5は行方向Xに所定の間隔をあけるとともに、列方向Yにも所定の間隔をあけて整列して設けられている。各凹部5の平面視における形状はとくに限定されない。たとえば凹部5は、平面視で略矩形状、略楕円状または小判形状などの形状に形成される。本実施形態では平面視で略矩形状の凹部5が設けられている。なお本明細書において上記の行方向Xおよび列方向Yは、それぞれ基台の厚み方向Zに垂直な方向であって、かつ互いに垂直な方向を意味する。
【0023】
本実施形態の隔壁3はいわゆる順テーパ形状である。すなわち基台2から離間するにしたがって先細状に形成されている。たとえば、列方向Yに延在する隔壁を、その延在方向(列方向Y)に垂直な平面で切断したときの断面形状は、隔壁3の端部3aを除いて、基台から離間するにしたがって先細状に形成されている。図1では、略等脚台形形状の隔壁が示されており、上底と、基台側の下底とを比べると、下底の方が上底よりも幅広である。なお実際に形成される隔壁の断面は必ずしも台形形状とはならず、台形形状の直線部分および角が丸みを帯び、いわゆるかまぼこ状(ドーム状)に形成されることもある。
【0024】
隔壁3は、本実施形態では主に有機EL素子が設けられる領域を除く領域に設けられる。なお隔壁3は主に、後述する第1電極6が設けられる領域を除く領域に設けられるが、その端部3aが、第1電極6に重なるように、第1電極6の周縁部上にも形成される。さらに、隔壁3の端部3aと第1電極6との間には所定の間隙31が形成されている。なお隔壁3の端部3aは、第1電極6の全周縁部を覆うように形成する必要はない。たとえば後述するストライプ状の隔壁3を形成する場合には、第1電極6の4辺のうちの対向する2辺を隔壁の端部が覆うように隔壁を形成してもよい。本実施形態では隔壁3の端部3は、第1電極6の全周縁部を覆うように形成される。
【0025】
有機EL素子4は隔壁3によって画成される区画(すなわち凹部5)に設けられる。本実施形態のように格子状の隔壁3が設けられる場合、各有機EL素子4はそれぞれ各凹部5に設けられる。そのため有機EL素子4は、各凹部5と同様にマトリクス状に配置され、基台2上において、行方向Xに所定の間隔をあけるとともに、列方向Yにも所定の間隔をあけて整列して設けられている。
【0026】
本実施形態では3種類の有機EL素子4が設けられる。すなわち(1)赤色の光を出射する赤色有機EL素子4R、(2)緑色の光を出射する緑色有機EL素子4G、および(3)青色の光を出射する青色有機EL素子4Bが設けられる。これら3種類の有機EL素子4R,4G,4Bは、たとえば以下の(I)、(II)、(III)の行を、列方向Yにこの順で繰り返し配置することによって、それぞれ整列して配置される(図2参照)。
(I)赤色有機EL素子4Rが行方向Xにそれぞれ所定の間隔をあけて配置される行。
(II)緑色有機EL素子4Gが行方向Xにそれぞれ所定の間隔をあけて配置される行。
(III)青色有機EL素子4Bが行方向Xにそれぞれ所定の間隔をあけて配置される行。
【0027】
なお他の実施の形態として、上記3種類の有機EL素子に加えて、たとえば白色の光を出射する有機EL素子がさらに設けられてもよい。また1種類のみの有機EL素子を設けることによって、モノクロ表示装置を実現してもよい。
【0028】
有機EL素子4は、第1電極、有機層、第2電極が、基台2側からこの順で積層されて構成される。本明細書では第1電極6と第2電極10との間に設けられる層のうち、有機物を含む層を有機層という。有機EL素子4は有機層として少なくとも1層の発光層を備える。なお有機EL素子は、1層の発光層に加えて、必要に応じて発光層とは異なる有機層や無機層をさらに備えることもある。たとえば第1電極6と第2電極10との間には、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、電子輸送層、および電子注入層などが設けられる。また第1電極6と第2電極10との間には2層以上の発光層が設けられることもある。
【0029】
有機EL素子4は、陽極および陰極からなる一対の電極として、第1電極6と第2電極10とを備える。第1電極6および第2電極10のうちの一方の電極は陽極として設けられ、他方の電極は陰極として設けられる。
【0030】
本実施形態では一例として、陽極として機能する第1電極6、正孔注入層として機能する第1の有機層7、発光層として機能する第2の有機層9、陰極として機能する第2電極10がこの順で基台2上に積層されて構成される有機EL素子4について説明する。
【0031】
本実施形態では3種類の有機EL素子が設けられるが、これらは第2の有機層(本実施形態では発光層)9の構成がそれぞれ異なる。赤色有機EL素子4Rは赤色の光を放射する赤色発光層9を備え、緑色有機EL素子4Gは緑色の光を放射する緑色発光層9を備え、青色有機EL素子4Bは青色の光を放射する青色発光層9を備える。
【0032】
本実施形態では第1電極6は有機EL素子4ごとに設けられる。すなわち有機EL素子4と同数の第1電極6が基台2上に設けられる。第1電極6は有機EL素子4の配置に対応して設けられ、有機EL素子4と同様にマトリクス状に配置される。なお本実施形態の隔壁3は、主に第1電極6を除く領域に格子状に形成されるが、さらにその端部3aが第1電極6の周縁部を覆うように形成されている(図1参照)。
【0033】
第1電極6は、基台2の厚み方向の一方からみて、前記隔壁の端部に覆われる部位を除く残余の部位、およびこの残余の部位の周縁部に、前記隔壁の端部3aと前記第1電極6との界面11よりも基台側に凹む窪みが形成されている。このような窪みが形成されることによって、隔壁3の端部3aと、第1電極6との間に所定の間隙31が形成される。
【0034】
正孔注入層に相当する第1の有機層7は、凹部5において第1電極6上にそれぞれ設けられる。この第1の有機層7は、必要に応じて、有機EL素子の種類ごとにその材料または膜厚を異ならせて設けられる。なお第1の有機層7の形成工程の簡易さの観点から、同じ材料、同じ膜厚で全ての第1の有機層7を形成してもよい。この第1の有機層7は、その端部が、隔壁3と第1電極6との間の間隙31に充填されるように形成される。
【0035】
発光層として機能する第2の有機層9は、凹部5において第1の有機層7上に設けられる。上述したように発光層は有機EL素子の種類に応じて設けられる。そのため赤色発光層9は赤色有機EL素子4Rが設けられる凹部5に設けられ、緑色発光層9は緑色有機EL素子4Gが設けられる凹部5に設けられ、青色発光層9は青色有機EL素子4Bが設けられる凹部5に設けられる。
【0036】
なお第2の有機層9は、その端部が、隔壁3と第1電極6との間の間隙31に充填されるように形成される。
【0037】
第2電極10は有機EL素子4が設けられる表示領域において全面に形成される。すなわち第2電極10は、第2の有機層9上だけでなく、隔壁3上にも形成され、複数の有機EL素子にわたって連続して形成され、全ての有機EL素子4に共通の電極として設けられる。
【0038】
以下、図3〜図5を参照しつつ表示装置の製造方法について説明する。
【0039】
(基台を用意する工程)
本工程では基台2上に第1電極6を形成する(図3(1)参照)。なお本工程では第1電極6がそのうえに予め形成された基台を市場から入手することによって、第1電極6が予め形成された基台2を用意してもよい。
【0040】
アクティブマトリクス型の表示装置の場合、複数の有機EL素子を個別に駆動するための回路が予め形成された基板を、基台2として用いることができる。たとえばTFT(Thin Film Transistor)およびキャパシタなどが予め形成された基板を基台として用いることができる。
【0041】
まず基台2上に複数の第1電極6をマトリクス状に形成する。第1電極6は、たとえば基台2上の一面に導電性薄膜を形成し、これをフォトリソグラフィー法によってマトリクス状にパターニングすることによってパターン形成される。またたとえば所定の部位に開口が形成されたマスクを基台2上に配置し、このマスクを介して基台2上の所定の部位に導電性材料を選択的に堆積することにより第1電極6をパターン形成してもよい。第1電極6の材料については後述する。
【0042】
(隔壁を形成する工程)
本工程では、その端部が前記第1電極上に接するように、前記隔壁をパターン形成する。本実施形態ではまず感光性樹脂を含むインキを前記基台上に隔壁形成用膜8を形成する。インキの塗布方法としては、たとえばスピンコート法やスリットコート法などをあげることができる。
【0043】
感光性樹脂を含むインキを前記基台上に塗布成膜した後、通常はプリベークを行う。たとえば80℃〜110℃の温度で、60秒〜180秒間、基台2を加熱することによってプリベークを行い、溶媒を除去する(図3(2)参照)。
【0044】
つぎに所定のパターンの光を遮光するフォトマスク21を基台2上に配置し、このフォトマスク21を介して、隔壁形成用膜8を露光する。感光性樹脂には、ポジ型およびネガ型の樹脂があるが、本工程ではいずれの樹脂を用いてもよい。ポジ型の感光性樹脂を使用した場合には、隔壁形成用膜8のうち主に隔壁3が形成されるべき部位を除く残余の部位に光を照射する。またネガ型の感光性樹脂を使用した場合には、隔壁形成用膜8のうち主に隔壁3が形成されるべき部位に光を照射する。本工程ではネガ型の感光性樹脂を使用した場合について、図3(3)を参照して説明する。図3(3)に示すように、基板上にフォトマスク21を配置し、このフォトマスク21を介して光を照射することによって、隔壁形成用膜8のうちで主に隔壁3が形成されるべき部位に光を照射する。なお図3(3)では隔壁形成用膜8に照射する光を模式的に矢印記号で示している。
【0045】
つぎに現像をおこなう。これによって隔壁3がパターン形成される(図4(1)参照)。現像後、必要に応じてポストベークをおこなう。たとえば200℃〜230℃の温度で、15分〜60分間、基板を加熱することによってポストベークを行い、隔壁3を硬化する。
【0046】
隔壁の形成に使用される感光性樹脂にはネガ型のものとポジ型のものがある。
ネガ型の感光性樹脂は、光が照射された部位が、現像液に対して不溶化し、残存するものである。
【0047】
感光性樹脂を含むインキには一般にバインダー樹脂、架橋材、光反応開始材、溶媒、およびその他の添加剤を配合したものが使用される。
【0048】
バインダー樹脂は、予め重合されたものである。その例としては、自ら重合性を有しない非重合性バインダー樹脂、重合性を有する置換基が導入された重合性バインダー樹脂が挙げられる。バインダー樹脂は、ポリスチレンを標準としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で求められる重量平均分子量が5,000〜400,000の範囲にある。
【0049】
バインダー樹脂としては、たとえばフェノール樹脂、ノボラック樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。バインダー樹脂としては、単量体はそれぞれ単独または2種以上を組み合わせた共重合体を使用することもできる。バインダー樹脂は、上記感光性樹脂を含むインキの全固形分に対して、質量分率で通常5%〜90%である。
【0050】
架橋材としては、光を照射することによって光重合開始剤から発生した活性ラジカル、酸などによって重合し得る化合物であって、たとえば、重合性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が挙げられる。架橋材は、分子内に重合性炭素−炭素不飽和結合を1個有する単官能の化合物であってもよいし、重合性炭素−炭素不飽和結合を2個またはそれ以上有する2官能または3官能以上の多官能の化合物であってもよい。上記感光性樹脂を含むインキにおいて、架橋材は、バインダー樹脂と架橋材との合計量を100質量部とすると、通常0.1質量部以上70質量部以下である。また上記感光性樹脂を含むインキにおいて光反応開始材は、バインダー樹脂と架橋材との合計量を100質量部とすると、通常1質量部以上30質量部以下である。
【0051】
一方、ポジ型感光性樹脂は、光の照射部分が現像液に対して、可溶化するものであり一般的には樹脂と光反応で親水化する化合物を複合化することで構成される。
【0052】
ポジ型感光性樹脂は、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリイミドなどの耐薬品性と密着性を有する樹脂と光分解性化合物と組み合わせたものを使用するができる。
【0053】
また上記で使用される撥液性を付与する材料としては、フッ素含有化合物、シリコーン含有化合物などを挙げることができる。好ましくは、有機溶剤に対しても優れた撥液性を示すフッ素含有化合物である。
【0054】
フッ素化含有化合物としては、たとえば炭素鎖数C1〜C8の直鎖状や分岐状のフルオロアルキル基やフルオロポリエーテル基を有する化合物が例示される。フッ素含有化合物としては、架橋性基を有するポリマーが好ましく、更に好ましくは、炭素鎖数C4〜C6のフルオロアルキル基やフルオロポリエーテル基を有し、かつ架橋性基を有するポリマーである。または現像液に対して可溶性機能を有していることが好ましい。フッ素含有化合物はポリマーに限られず、低分子化合物であっても、現像後の隔壁形成後にも隔壁表面を撥液性を付与する機能を有すものであればよい。
【0055】
架橋性基は、フッ素含有化合物に架橋性の機能を付与するものであり、エチレン性不飽和結合基や、エポキシ基、水酸基などが例示される。隔壁の形成に使用される感光性樹脂と架橋する機能を有していれば、架橋性基の種類は上記に限定するものではない。
【0056】
具体的にはメガファックRS−101、RS−102、RS−105、RS−401、RS−402、RS−501、RS−502、RS−718(以上、DIC社製)、オプツールDAC、オプトエース HPシリーズ(以上ダイキン工業社製)、パーフルオロ(メタ)アクリレート、パーフルオロジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0057】
上記の撥液剤は、1種を単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて用いてもよい。撥液剤は、上記感光性樹脂を含むインキの全固形分に対して、質量分率で通常0.1質量部以上3質量部以下である。
【0058】
現像に使用される現像液としては、たとえば塩化カリウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液などを挙げることができる。
【0059】
隔壁3の形状およびその配置は、画素数および解像度などの表示装置の仕様や製造の容易さなどに応じて適宜設定される。たとえば隔壁3の行方向Xまたは列方向Yの幅は、5μm〜50μm程度であり、隔壁3の高さは0.5μm〜5μm程度であり、行方向Xまたは列方向Yに隣り合う隔壁3間の間隔、すなわち凹部5の行方向Xまたは列方向Yの幅は、10μm〜200μm程度である。また第1電極6の行方向Xまたは列方向Yの幅はそれぞれ10μm〜200μm程度である。
【0060】
(第1電極に窪みを形成する工程)
本工程では、前記第1電極のうち、前記隔壁の端部に覆われる部位を除く残余の部位とこの残余の部位の周縁部との表面に窪みを形成する(図4(2)参照)。
【0061】
具体的には第1電極6上の隔壁3をマスクとして利用し、第1電極6に等方性エッチングを施すことによって第1電極6の表面に窪みを形成するとともに、マスクとして利用される隔壁3の直下をアンダーカットすることができる。
【0062】
エッチングにはウエットエッチング法およびドライエッチング法があるが、ウエットエッチング法が好ましい。ドライエッチング法では、隔壁3もエッチングされてしまったり、表面に反応生成物が堆積したりすることもあるが、ウエットエッチング法では、隔壁3よりも第1電極6を選択的にエッチングすることが容易にできるため、前記残余の部位の周縁部上の隔壁3を削ることなく、前記残余の部位の周縁部に窪みを形成することができるからである。このようにエッチングをおこなうことにより、隔壁3の端部3aの下をいわゆるアンダーカットすることができる。
【0063】
ウエットエッチング法によってたとえばITO(Indium Tin Oxide)薄膜をエッチングする場合、塩酸と塩化第2鉄溶液の混合溶液や、塩酸と硝酸の混合溶液を用いてエッチングすることができる。またたとえばIZO(Indium Zinc Oxide)をエッチングする場合、リン酸と硝酸と酢酸との混合溶液を用いてエッチングすることができる。
【0064】
ドライエッチング法としては、たとえば反応ガス中に材料を曝す方法(反応性ガスエッチング)や、プラズマによりガスをイオン化・ラジカル化してエッチングする反応性イオンエッチングなどがあげられる。ドライエッチング法に使用するフッ素系のガスとしては、CF、CHF、CH、C、C、Cなどがあげられる。
【0065】
このようにエッチングを施すことにより、第1電極6において、前記隔壁の端部に覆われる部位を除く残余の部位とこの残余の部位の周縁部との表面に窪みを形成することができる。
【0066】
なお隔壁形成用膜8のポストベークを2回にわけて行い、第1回目のポストベークと第2回目のポストベークとの間に、上記エッチングをおこなってもよい。
【0067】
この場合、第1回目のポストベークをおこなう第1の温度と、第2回目のポストベークをおこなう第2の温度とを異ならせることが好ましい。具体的には第1の温度は第2の温度よりも低い方が好ましい。なお第2の温度は、隔壁3を確実に硬化することができる温度であり、第1の温度は、隔壁3を確実に硬化することができる温度よりも低い温度である。たとえば110℃で3分間加熱することによって第1のポストベークをおこなう。このような条件で第1回目のポストベークをおこなうと、第1電極6との密着性の弱い隔壁3が形成される。第1電極6と隔壁3との密着性が弱い状態で上記エッチングを施すと、第1電極6と隔壁3との界面にエッチング液が浸透し易くなり、等方性エッチングであっても隔壁3の下では横方向にエッチングが進みやすくなり、より幅を持ったアンダーカットを形成することができる。
【0068】
このように第1の温度でポストベークをおこなう場合には、エッチング後に通常のポストベークの条件で、すなわち第2の温度でポストベークをおこなうことにより、隔壁3を確実に硬化させることができる。これによって基台および第1電極との密着性の強い隔壁3を形成することができる。
【0069】
第1回目のポストベークの条件は、第1の温度が100℃〜120℃、加熱時間が2分〜10分であることが好ましく、第2回目のポストベークの条件は、第2の温度が200℃〜230℃、加熱時間が15分〜60分間であることが好ましい。
【0070】
窪みの深さLD(図4(2)参照)は、20nm〜300nmが好ましい。また平面視における第1電極6の窪みの、前記周縁部の幅は通常20nm〜2μmであり、20nm〜1μmが好ましい。
【0071】
(有機層を形成する工程)
本工程では少なくとも1層の有機層を塗布法によって形成する。本実施形態では、第1の有機層7および第2の有機層9を塗布法によって形成する。
【0072】
まず第1の有機層7となる材料を含むインキ22を隔壁3に囲まれた領域(凹部5)に供給する(図4(3)参照)。インキは、隔壁3の形状、成膜工程の簡易さ、および成膜性などを勘案して適宜最適な方法によって供給される。インキはたとえばインクジェットプリント法、ノズルコート法、凸版印刷法、および凹版印刷法などによって供給される。
【0073】
つぎに、供給されたインキ22を固化することによって第1の有機層7を形成する(図5(1)参照)。インキの固化は、たとえば自然乾燥、加熱乾燥、真空乾燥によっておこなうことができる。またインキが、エネルギーを加えることによって重合する材料を含む場合、インキを供給した後に、薄膜を加熱したり、薄膜に光を照射したりすることによって、有機層を構成する材料を重合してもよい。このように有機層を構成する材料を重合することによって、この有機層上に有機層を形成するさいに使用されるインキに対して、有機層を難溶化することができる。
【0074】
隔壁3に囲まれた領域(凹部5)に供給されたインキ22は、毛管現象によって、隔壁3の端部3aと第1電極6との間の間隙31に吸い込まれつつ、溶媒が気化し、薄膜化する。このように、毛管現象によってインキが隔壁3に弾かれることを防ぐことができるため、たとえ隔壁3が撥液性を有していたとしても、隔壁3近傍の第1の有機層7が中央部に比べて薄膜化することを防ぐことができる。これによって平坦な第1の有機層7を形成することができる。
【0075】
つぎに、発光層として機能する第2の有機層9を形成する。第2の有機層9は第1の有機層7と同様に形成することができる。すなわち赤色発光層9、緑色発光層9、青色発光層9となる材料を含む3種類のインキを、隔壁3に囲まれた領域にそれぞれ供給し、さらにこれを固化することによって各発光層9を形成することができる。
【0076】
前述の第1の有機層7と同様に、隔壁3の端部3aと第1電極6との間の間隙31に由来する毛管現象によって、たとえ隔壁3が撥液性を有していたとしても、平坦な第2の有機層9を形成することができる。
【0077】
(第2電極を形成する工程)
本工程では有機層上に第2電極を形成する。本実施形態では第2電極10は、有機EL素子4が設けられる表示領域において全面に形成する。すなわち第2電極10は、第2の有機層9上だけでなく、隔壁3上にも形成し、複数の有機EL素子にわたって連続して形成する。このように第2電極を形成することにより、全ての有機EL素子4に共通の電極として機能する第2電極10が設けられる。
【0078】
以上説明したように、第1電極6に窪みを形成し、隔壁3の端部3と第1電極6との間に間隙31を設けることによって、平坦な有機層を形成することができる。従来の技術では、スペーサを設けることによって隔壁3の端部3と第1電極6との間に間隙31を設けていたが、本実施形態では、第1電極6に窪みを形成するだけで隔壁3の端部3と第1電極6との間に間隙を形成することができ、装置構成を追加することなく、簡易な装置構成で、平坦な有機層を形成することが可能となる。
【0079】
以上では格子状の隔壁を設けた形態の表示装置について説明したが、上述したように基台上にはストライプ状の隔壁を設けてもよい。図6は、ストライプ状の隔壁が設けられた本実施形態の表示装置の一部を拡大して模式的に示す平面図である。同図中、ハッチングが施された領域が隔壁3に相当する。図7は、行方向Xに垂直な平面で表示装置を切断した表示装置の断面形状を示す。なお表示装置を列方向Yに垂直な平面で切断した表示装置の断面形状は、図1と同じである。なお本実施形態の表示装置は前述の実施形態の表示装置と構成がほぼ共通するため、以下では相違する部分についてのみ説明し、対応する部分については同一の参照符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0080】
ストライプ状の隔壁が設けられる場合、隔壁は、たとえば列方向Yに延在する複数本の隔壁部材から構成される。この隔壁部材は行方向Xに所定の間隔をあけて配置される。ストライプ状の隔壁が設けられた形態では、ストライプ状の隔壁と基台とによって、ストライプ状の凹部が規定される。
【0081】
ストライプ状の隔壁が設けられる場合、有機EL素子4は、列方向Yに延在する各凹部において、列方向Yにそれぞれ所定の間隔をあけて配置される。
【0082】
第1電極6は、上述の実施形態と同様にマトリクス状に配置される。隔壁3は、その端部3aが、第1電極6の行方向Xの一方の端部と、他方の端部とを覆うように形成される(図1参照)。なお図7に示すように、本実施形態では、第1電極6の列方向Yの端部は、隔壁によって覆われていない。
【0083】
本実施形態では第1の有機層7および第2の有機層9は、それぞれ、列方向Yに延在する各凹部に延在して形成され、複数の有機EL素子にまたがって連なるように形成される。
【0084】
図1に示すように本実施形態では、前述の実施形態と同様に、第1電極6は、基台2の厚み方向の一方からみて、前記隔壁の端部に覆われる部位を除く残余の部位、およびこの残余の部位の周縁部に、前記隔壁の端部3aと前記第1電極6との界面11よりも基台側に凹む窪みが形成されている。このような窪みが形成されることによって、隔壁3の端部3aと、第1電極6との間に所定の間隙31が形成される。これによって前述の実施形態と同様に、平坦な有機層を形成することができる。
【0085】
<有機EL素子の構成>
以下では有機EL素子の構成についてさらに詳しく説明する。有機EL素子は、有機層として少なくとも1層の発光層を有するが、上述したように一対の電極間にたとえば正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層、および電子注入層などを有する。
【0086】
本実施形態の有機EL素子のとりうる層構成の一例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
f)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
g)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
h)陽極/発光層/電子注入層/陰極
i)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。
以下同じ。)
本実施形態の有機EL素子は2層以上の発光層を有していてもよい。上記a)〜i)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極と陰極とに挟持された積層体を「構造単位A」とすると、2層の発光層を有する有機EL素子の構成として、以下のj)に示す層構成をあげることができる。なお2つある(構造単位A)の層構成は互いに同じでも、異なっていてもよい。
j)陽極/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極
ここで電荷発生層とは、電界を印加することにより、正孔と電子を発生する層である。
電荷発生層としては、たとえば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、酸化モリブデンなどから成る薄膜をあげることができる。
【0087】
また「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の発光層を有する有機EL素子の構成として、以下のk)に示す層構成をあげることができる。
k)陽極/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極
なお記号「x」は、2以上の整数を表し、(構造単位B)xは、構造単位Bがx段積層された積層体を表す。また複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0088】
なお電荷発生層を設けずに、複数の発光層を直接積層させた有機EL素子を構成してもよい。
【0089】
<基台>
基台には、有機EL素子を製造する工程において化学的に変化しないものが好適に用いられ、たとえばガラス、プラスチック、高分子フィルム、およびシリコン板、並びにこれらを積層したものなどが用いられる。
【0090】
<陽極>
発光層から放射される光が陽極を通って外界に出射する構成の有機EL素子の場合、陽極には光透過性を示す電極が用いられる。光透過性を示す電極としては、金属酸化物、金属硫化物および金属などの薄膜を用いることができ、電気伝導度および光透過率の高いものが好適に用いられる。具体的には酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、および銅などから成る薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、または酸化スズから成る薄膜が好適に用いられる。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などを挙げることができる。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0091】
<陰極>
陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易で、電気伝導度の高い材料が好ましい。また陽極側から光を取出す構成の有機EL素子では、発光層から放射される光を陰極で陽極側に反射するために、陰極の材料としては可視光に対する反射率の高い材料が好ましい。陰極には、たとえばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属および周期表の13族金属などを用いることができる。陰極の材料としては、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、またはグラファイト若しくはグラファイト層間化合物などが用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などを挙げることができる。また陰極としては導電性金属酸化物および導電性有機物などから成る透明導電性電極を用いることができる。具体的には、導電性金属酸化物として酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、およびIZOを挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などを挙げることができる。なお陰極は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお電子注入層が陰極として用いられることもある。
【0092】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法などを挙げることができる。
【0093】
陽極または陰極の膜厚は、求められる特性や成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0094】
<正孔注入層>
正孔注入層を構成する正孔注入材料としては、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、および酸化アルミニウムなどの酸化物や、フェニルアミン系化合物、スターバースト型アミン系化合物、フタロシアニン系、アモルファスカーボン、ポリアニリン、およびポリチオフェン誘導体などを挙げることができる。
【0095】
正孔注入層の成膜方法としては、たとえば正孔注入材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。たとえば正孔注入材料を含む溶液を所定の塗布法によって塗布成膜し、さらにこれを固化することによって正孔注入層を形成することができる。
【0096】
正孔注入層の膜厚は、求められる特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0097】
<正孔輸送層>
正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0098】
正孔輸送層の膜厚は、求められる特性および成膜工程の簡易さなどを考慮して設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0099】
<発光層>
発光層は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、または該有機物とこれを補助するドーパントとから形成される。ドーパントは、たとえば発光効率の向上や、発光波長を変化させるために加えられる。なお発光層を構成する有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよく、塗布法によって発光層を形成する場合には、発光層は高分子化合物を含むことが好ましい。発光層を構成する高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量はたとえば10〜10程度である。発光層を構成する発光材料としては、たとえば以下の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料、ドーパント材料を挙げることができる。
【0100】
(色素系材料)
色素系材料としては、たとえば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体などを挙げることができる。
【0101】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、たとえばTb、Eu、Dyなどの希土類金属、またはAl、Zn、Be、Ir、Ptなどを中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを配位子に有する金属錯体を挙げることができ、たとえばイリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体などを挙げることができる。
【0102】
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素系材料や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどを挙げることができる。
【0103】
発光層の厚さは、通常約2nm〜200nmである。
【0104】
<電子輸送層>
電子輸送層を構成する電子輸送材料としては、公知のものを使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0105】
電子輸送層の膜厚は、求められる特性や成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0106】
<電子注入層>
電子注入層を構成する材料としては、発光層の種類に応じて最適な材料が適宜選択され、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの1種類以上を含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、およびこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、および炭酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。電子注入層は、2層以上を積層した積層体で構成されてもよく、たとえばLiF/Caなどを挙げることができる。
【0107】
電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
【0108】
上述の各有機層は、たとえばノズルプリンティング法、インクジェットプリンティング法、凸版印刷法、凹版印刷法などの塗布法や、真空蒸着法などによって形成することができる。
【0109】
なお塗布法では、各有機層となる有機EL材料を含むインキを塗布成膜し、さらにこれを固化することによって有機層を形成するが、その際に使用されるインキの溶媒には、たとえばクロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、および水などが用いられる。
【実施例】
【0110】
まず膜厚が200nmのITO薄膜からなる第1電極が形成されたTFT基板を用意する(図3(1)参照)。このTFT基板の表面に、感光性樹脂溶液(東レ株式会社製 フォトニースSL-1904)をスピンコータにより塗布し、ホットプレート上で110℃で120秒間加熱し、プリベークをおこなう。このプリベークによって感光性樹脂溶液の溶媒を蒸発させ、感光性樹脂薄膜を形成する(図3(2)参照)。
【0111】
つぎにプロキシミティ露光機を用い、所定のマスクを介して感光性樹脂薄膜を露光する(図3(3)参照)。その露光量は100mJ/cmとする。つぎに現像液(株式会社トクヤマ製SD-1 (TMAH2.38wt%)溶液)で90秒間現像し、順テーパ形状のバンク(隔壁)を形成する(図4(1)参照)。このバンクを230℃で20分間加熱し、樹脂を硬化させる。このポストベークにより膜厚が1.0μmの隔壁を形成する。
【0112】
塩酸と塩化第二鉄との混合溶液を40℃に保ち、この混合溶液に、隔壁が形成された基板を浸漬し、膜厚が200nmの第1電極(ITO)の表面を90nmエッチングし、隔壁の先端部の下側に、第1電極(ITO)にアンダーカットを形成する(図4(2)参照)。
【0113】
つぎに真空チャンバに基板を導入し、CF4プラズマ表面処理を行い、隔壁表面に撥液性を付与する。
【0114】
つぎにインクジェット装置(ULVAC社製 Litlex142P)を用いて、隔壁に囲まれた画素内にインキを塗布する。インキには(固形分濃度1.5% ポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ポリスチレンスルホン酸(PSS)水分散液 (バイエル社製 AI4083))を使用する。インキは、撥液性が付与された接触角の高い隔壁表面に弾かれ、隔壁に囲まれた画素内に充填されるとともに、隔壁の端部の下にアンダーカットが形成された部位に吸い込まれるように充填され、隔壁に囲まれた画素内の隅々に均一に広がる(図4(3)参照)。この基板を200℃で焼成し、膜厚が50nmの均一な膜厚の正孔注入層を形成する(図5(1)参照)。
【0115】
つぎに3種類の発光層を形成する。まず赤色の光を放射する高分子発光材料を、その濃度が0.8wt%となるように有機溶媒に混合して、赤インキを調整する。同様に、緑色の光を放射する高分子発光材料を、その濃度が0.8wt%となるように有機溶媒に混合して、緑インキを調整する。さらに青色の光を放射する高分子発光材料を、その濃度が0.8wt%となるように有機溶媒に混合して、青インキを調整する。これら赤、緑、青インキをそれぞれインクジェット装置(ULVAC社製 Litrex142P)を用いて所定の画素内に塗布する(図5(2)参照)。インキは、接触角の高いバンクによって弾かれるため、この頂面を伝わって隣の領域に溢れ出ることが防がれ、画素内に収容される。他方、画素内に収容されたインキは、隔壁の端部の下にアンダーカットが形成された部位に吸い込まれるように充填され、隔壁に囲まれた画素内の隅々に均一に広がる。この基板を130℃で焼成することにより、均一な膜厚の発光層(膜厚60nm)を形成する。
【0116】
さらに、真空蒸着法により膜厚20nmのCa層、膜厚150nmのAl層を順次形成し、第2電極(陰極)を形成する。そして、有機EL素子が形成された基板と、封止用のガラス基板とを貼り合せて封止し、表示装置を作製する。このようにして作製される有機EL素子は表示領域ないにおいて均一に発光するとともに、各画素内においても均一に発光する。
【符号の説明】
【0117】
1 表示装置
2 基台
3 隔壁
3a 端部
4 有機EL素子
5 凹部
6 第1電極
7 第1の有機層(正孔注入層)
8 隔壁形成用膜
9 第2の有機層(発光層)
10 第2電極
12 基台
13 隔壁
15 凹部
16 第1電極
17 インキ
18 有機層
19 スペーサ
21 フォトマスク
22 インキ
31 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、この基台上において予め設定される区画を画成する隔壁と、この隔壁によって画成される区画にそれぞれ設けられる複数の有機EL素子とを含む表示装置であって、
各有機EL素子は、第1電極、有機層、第2電極が、前記基台側からこの順で積層されて構成され、
前記隔壁は、その端部が、前記第1電極上に接して設けられ、
前記第1電極は、前記基台の厚み方向の一方からみて、前記隔壁の端部に覆われる部位を除く残余の部位、およびこの残余の部位の周縁部に、前記隔壁の端部と前記第1電極との界面よりも基台側に凹む窪みが形成されている、表示装置。
【請求項2】
前記窪みの深さが、20nm〜300nmである、請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
基台と、この基台上において予め設定される区画を画成する隔壁と、この隔壁によって画成される区画にそれぞれ設けられる複数の有機EL素子とを含む表示装置であって、各有機EL素子は、第1電極、有機層、第2電極が、基台側からこの順で積層されて構成される表示装置の製造方法であって、
前記第1電極がそのうえに設けられた基台を準備する工程と、
その端部が前記第1電極上に接するように、前記隔壁をパターン形成する工程と、
前記第1電極のうち、前記隔壁の端部に覆われる部位を除く残余の部位とこの残余の部位の周縁部との表面に窪みを形成する工程と、
前記第1電極上に有機層を形成する工程と、
前記有機層上に前記第2電極を形成する工程とを含む、表示装置の製造方法。
【請求項4】
ウエットエッチング法によって、前記第1電極に前記窪みを形成する、請求項3記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−104430(P2012−104430A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253571(P2010−253571)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】