説明

表示装置

【課題】立体視画像の表示とともに、従来行われていた2次元表示用画像の表示も行うことができ、さらに観察者に負担をかけることなく、放射線画像の立体視を行うことができるようにする。
【解決手段】右目用画像を表示する第1の表示画面と第1の表示画面に隣接して配置され、左目用画像を表示する第2の表示画面とを有する表示部を備えた表示装置において、第1の表示画面と第2の表示画面とが上下方向に隣接する第1の設置状態と、第1の表示画面と第2の表示画面とが左右方向に隣接する第2の設置状態とを切り替え可能にし、第1の設置状態である場合に、第1および第2の表示画面に右目用画像および左目用画像を表示し、第2の設置状態である場合に、第1および第2の表示画面に2次元表示用画像を表示させ、さらに第1の設置状態である場合に、第1および第2の表示画面の少なくとも一方に立体視確認用指標を表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに異なる2つの撮影方向からの被写体への放射線の照射によって撮影された立体視画像を表示する表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の画像を組み合わせて表示することにより、視差を利用して立体視できることが知られている。このような立体視できる画像(以下、立体視画像またはステレオ画像という)は、同一の被写体を異なる方向から撮影して取得された互いに視差のある複数の画像に基づいて表示される。
【0003】
このような立体視画像の生成は、デジタルカメラやテレビ等の分野だけでなく、放射線画像撮影の分野においても利用されている。すなわち、被検体に対して異なる撮影方向から放射線を照射し、その被検体を透過した放射線を放射線検出器によりそれぞれ検出して互いに視差のある複数の放射線画像を取得し、これらの放射線画像を用いて立体視画像を表示することが行われている。このような立体視画像を用いることにより、奥行き感のある放射線画像を観察することができるため、診断をより行いやすくすることができる。
【0004】
ところで、放射線画像の立体視は、上述した複数の放射線画像を、立体視を行うための3次元モニタ等の表示装置に表示することにより行われる。このような表示装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、ハーフミラーを利用した表示装置が公知である。
【0005】
特許文献1に記載のハーフミラーを使用した表示装置は、立体視を行うための2つの放射線画像を表示する、表示光が互いに直交するように配置された2つの表示部と、一方の表示部からの表示光を反射し、他方の表示部からの表示光を透過するハーフミラーとを備え、2つの表示部からの表示光をハーフミラーを介して観察することにより、放射線画像の立体視を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−187916号公報
【特許文献2】特開2010−183965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の表示装置は、立体視画像を表示するものとしては適しているが、2次元表示用画像を表示することは想定していない。たとえば、乳房の放射線画像診断においては、2次元表示用画像として撮影された左右の乳房の放射線画像を胸壁を垂直方向にして左右に並べて表示したり、同一乳房を異なる撮影日時で撮影した2つの放射線画像を左右に並べて表示したりすることが従来から行われているが、特許文献1に記載の表示装置では、このような表示方法は実現することができない。また、特許文献1に記載の表示装置のような立体視画像の表示専用のモニタとは別に2次元表示用画像として撮影された放射線画像を左右に並べて表示可能なモニタを設けるようにすればよいがコストが増大してしまう。
【0008】
一方、観察者が正しい観察位置から表示装置を観察して立体視を適正に行うことができるようにするために、位置確認用画像を表示する手法が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に記載された手法は、表示装置を適正位置から観察したときには立体視を行うことができ、適正位置以外の位置から観察したときには立体視を行うことができないような位置確認用画像を表示するものである。これにより、観察者は適正な位置から表示装置を観察することができるため、立体視を適正に行うことが可能となる。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載された手法を用いた場合、観察者は自分の顔を上下左右に移動させて、試行錯誤しながら位置確認用画像を立体視できる適正位置を探す必要がある。とくに特許文献2における位置確認用画像は、立体視可能か否かにより適正位置が観察者に認識されるものであることから、適正位置を探し出すまでに位置確認用画像が立体視されたり、立体視されなかったりするため、目が疲れる等して観察者の負担が大きい。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、立体視画像の表示とともに、従来行われていた2次元表示用画像の表示も行うことができ、さらに観察者に負担をかけることなく、放射線画像の立体視を行うことができるような表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の表示装置は、互いに異なる方向から被写体を撮影した右目用画像および左目用画像のうちの右目用画像を表示する第1の表示画面と第1の表示画面に隣接して配置され、左目用画像を表示する第2の表示画面とを有する表示部と、右目用画像と左目用画像とが入射され、2つの画像を結合させて立体視画像を生成する光学系とを備えた表示装置において、第1の表示画面と第2の表示画面とが上下方向に隣接する第1の設置状態と、第1の表示画面と第2の表示画面とが左右方向に隣接する第2の設置状態とが切替え可能なように表示部を回転自在に支持する回転支持機構と、第1の設置状態である場合に、第1および第2の表示画面に右目用画像および左目用画像をそれぞれ表示し、第2の設置状態である場合に、第1および第2の表示画面に2次元表示用画像を表示させる表示制御部とを備え、表示制御部が、第1の設置状態である場合に、第1の表示画面および第2の表示画面の少なくとも一方にさらに立体視確認用指標を表示させるものであることを特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の表示装置においては、第1の設置状態であるかまたは第2の設置状態であるかを検出する設置状態検出部を設け、表示制御部を、設置状態検出部の検出結果に応じて、右目用画像および左目用画像と2次元表示用画像とを切り替えるものとすることができる。
【0013】
また、表示制御部を、立体視確認用指標として十字マークを表示させるものとできる。
【0014】
また、第1の表示画面および第2の表示画面にそれぞれ表示された立体視確認用指標のうちの少なくとも一方の表示位置の調整を受け付ける表示位置調整部を設けることができる。
【0015】
また、立体視画像の観察者の情報を受け付ける観察者情報受付部と、表示位置調整部よって調整された立体視確認用指標の表示位置と観察者情報受付部によって受け付けられた観察者情報とを対応付けて保存する指標表示位置保存部とを設け、表示制御部を、入力された観察者情報に対応する立体視確認用指標の表示位置を指標表示位置保存部から読み出して表示位置に立体視確認用指標を表示させるものとできる。
【0016】
また、右目用画像、左目用画像および2次元表示用の画像を、放射線画像とできる。
【0017】
また、放射線画像を乳房の放射線画像とし、表示制御部を、第1の設置状態の場合に、乳房の胸壁が水平となるように第1および第2の表示画面に右目用画像と左目用画像とをそれぞれ表示させるものとできる。
【0018】
また、表示制御部を、第2の設置状態の場合に、同一被検者の左側乳房を撮影した左側乳房放射線画像および右側乳房を撮影した右側乳房放射線画像のうちの一方を第1の表示画面に表示させ、他方を第2の表示画面に表示させるものとできる。
【0019】
また、表示制御部を、左側乳房放射線画像と右側乳房放射線画像とを胸壁が向かい合うように表示させるものとできる。
【0020】
また、光学系を、一方の表示画面の表示光を透過させるとともに、他方の表示画面の表示光を反射させるハーフミラーとすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の表示装置によれば、第1の表示画面と第2の表示画面とが上下方向に隣接する第1の設置状態と、第1の表示画面と第2の表示画面とが左右方向に隣接する第2の設置状態とが切替え可能にし、第1の設置状態である場合に、第1および第2の表示画面に右目用画像および左目用画像をそれぞれ表示し、第2の設置状態である場合に、第1および第2の表示画面に2次元表示用画像を表示させるようにしたので、立体視画像の表示とともに、従来行われていた2次元表示用画像の表示も行うことができる。
【0022】
そして、さらに、第1の設置状態である場合に、第1の表示画面および第2の表示画面の少なくとも一方に立体視確認用指標を表示させるようにしたので、2次元表示用画像が表示された第2の設置状態から立体視画像が表示された第1の設置状態に切り替えられた際、観察者が、立体視確認用指標の表示に基づいて自身の頭の位置を立体視しやすい位置に誘導することが可能となる。このため、観察者は誘導された位置において合成された右目用および左目用の放射線画像を観察することにより、容易に立体視を行うことができる。
【0023】
また、上記本発明の表示装置において、第1の設置状態であるかまたは第2の設置状態であるかを検出し、その検出結果に応じて、右目用画像および左目用画像と2次元表示用画像とを切り替えるようにした場合には、表示内容の切り替えを指示する手間を省くことができる。
【0024】
また、立体視は人間の頭の中で成立し、また目の間隔も個人差があるため、観察者によって立体視し易い位置が異なる場合がある。
【0025】
そこで、第1の表示画面および第2の表示画面にそれぞれ表示された立体視確認用指標のうちの少なくとも一方の表示位置の調整を受け付けるようにした場合には、各観察者に応じた表示位置に立体視確認用指標を表示させることができ、より適切な立体視を容易に行うことができる。
【0026】
また、調整後の立体視確認用指標の表示位置を観察者毎に保存しておくようにすれば、毎回立体視確認用指標を表示位置を微調整する手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の表示装置の一実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムの概略構成図
【図2】図1に示す乳房画像撮影表示システムにおいてアーム部を右方向から見た図
【図3】図1に示す乳房画像撮影表示システムのコンピュータ内部の概略構成を示すブロック図
【図4】第1の表示画面と第2の表示画面とを上下方向に隣接させたモニタの設置状態を示す図
【図5】図4に示すモニタの背面図
【図6】図4に示すモニタの側面図
【図7】第1の表示画面と第2の表示画面とを左右方向に隣接させたモニタの設置状態を示す図
【図8】第1の表示画面と第2の表示画面とに十字マークを表示させた状態の一例を示す図
【図9】本発明の表示装置の一実施形態の作用を説明するためのフローチャート
【図10】第2の表示画面のみに十字マークを表示させた状態の一例を示す図
【図11】本発明の表示装置のその他の実施形態を示す図
【図12】観察者とその観察者に応じた十字マーク表示位置とを対応付けたテーブルの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の表示装置の一実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムについて説明する。図1は、本実施形態の乳房画像撮影表示システム全体の概略構成を示す図である。
【0029】
本実施形態の乳房画像撮影表示システム1は、図1に示すように、乳房画像撮影装置10と、乳房画像撮影装置10に接続されたコンピュータ2と、コンピュータ2に接続されたモニタ3および入力部4とを備えている。
【0030】
乳房画像撮影装置10は、乳房Mに所定の撮影方向から放射線を照射することで2次元表示用画像の撮影およびステレオ画像の撮影を行い、乳房Mの2次元表示画像またはステレオ画像を取得し、これらの画像をコンピュータ2に出力するものである。
【0031】
具体的には、乳房画像撮影装置10は、図1に示すように、基台11と、基台11に対し上下方向(Z方向)に移動可能であり、かつ回転可能な回転軸12と、回転軸12により基台11と連結されたアーム部13を備えている。なお、図2には、図1の右方向から見たアーム部13を示している。
【0032】
アーム部13はアルファベットのCの形をしており、その一端には撮影台14が、その他端には撮影台14と対向するように放射線源ユニット16が取り付けられている。アーム部13の上下方向の移動は、基台11に組み込まれたアームコントローラ31により制御される。
【0033】
撮影台14の内部には、フラットパネルディテクタ等の放射線画像検出器15と、放射線画像検出器15からの電荷信号の読み出しなどを制御する検出器コントローラ33が備えられている。
【0034】
また、撮影台14の内部には、放射線画像検出器15から読み出された電荷信号を電圧信号に変換するチャージアンプや、チャージアンプから出力された電圧信号をサンプリングする相関2重サンプリング回路や、電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換部などが設けられた回路基板なども設置されている。
【0035】
放射線画像検出器15は、放射線画像の記録と読出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接型の放射線画像検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線画像検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフされることによって放射線画像信号が読みだされる、いわゆるTFT読出方式のものや、読取光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることが望ましいが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。
【0036】
放射線源ユニット16の中には放射線源17と、放射線源コントローラ32が収納されている。放射線源コントローラ32は、放射線源17から放射線を照射するタイミングと、放射線源17における放射線発生条件(管電流、時間、管電圧等)を制御するものである。
【0037】
また、アーム部13の中央部には、撮影台14の上方に配置されて乳房を押さえつけて圧迫する圧迫板18と、その圧迫板18を支持する支持部20と、支持部20を上下方向に移動させる移動機構19が設けられている。圧迫板18の位置、圧迫圧は、圧迫板コントローラ34により制御される。
【0038】
コンピュータ2は、中央処理装置(CPU)および半導体メモリやハードディスクやSSD等のストレージデバイスなどを備えており、これらのハードウェアによって、図3に示すような制御部2a、放射線画像記憶部2bおよび表示制御部2cが構成されている。
【0039】
制御部2aは、各種のコントローラ31〜35に対して所定の制御信号を出力し、システム全体の制御を行うものである。具体的な制御方法については後で詳述する。
【0040】
放射線画像記憶部2bは、乳房画像撮影装置10によって撮影された乳房Mの2次元表示用画像およびステレオ画像をそれぞれ記憶するものである。
【0041】
表示制御部2cは、放射線画像記憶部2bから読み出された撮影画像の放射線画像信号に対して所定の信号処理を施した後、モニタ3に乳房Mの2次元表示用画像およびステレオ画像を表示させるものである。
【0042】
また、表示制御部2cは、モニタ3がステレオ画像を表示する際、後述する2つの表示画面に、観察者が適切な立体視を行うことができるように観察者の頭の位置を誘導するための立体視確認用マークを表示するものである。本実施形態においては、立体視確認用マークとして十字マークを表示させるようにするが、これに限らず、観察者が上下方向および左右方向の頭の位置を特定できるような形状であれば如何なる形状でもよく、たとえば、矩形のマークを表示させるようにしてもよい。
【0043】
モニタ3は、図4に示すように、第1の表示画面42と第2の表示画面43を備えており、これらの2つの表示画面42,43は、後述するように上下方向に隣接する第1の設置状態と左右方向に隣接する第2の設置状態とで切り替え可能に構成されている。そして、2つの表示画面42,43が上下方向に隣接する第1の設置状態である場合には、主に、ステレオ画像を構成する右目用撮影画像GRが第1の表示画面42に表示され、左目用撮影画像GLが第2の表示画面43に表示される。一方、2つの表示画面42,43が左右方向に隣接する第2の設置状態である場合には、主に、2次元表示用画像が2つの表示画面42,43の少なくとも一方に表示される。図4は、2つの表示画面42、43が上下方向に隣接したモニタ3の概略構成図である。
【0044】
なお、2つの表示画面42,43が左右方向に隣接する第2の設置状態である場合に表示される2次元表示用画像としては、たとえば、同一患者の左側の乳房を撮影した左側乳房放射線画像と右側の乳房を撮影した右側乳房放射線画像の組み合わせや、同一乳房についての撮影日時の異なる2枚の放射線画像の組み合わせや、同一乳房についての撮影方法(CC撮影やMLO撮影)の異なる2枚の放射線画像の組み合わせなどがある。または、同一患者の異なる部位ついての2枚の放射線画像の組み合わせでもよい。さらに、ステレオ撮影によって撮影された右目用画像および左目用画像を2次元表示用画像の組み合わせとして表示するようにしてもよい。
【0045】
そして、モニタ3の第1の表示画面42と第2の表示画面43との間にはハーフミラー45が設けられている。ハーフミラー45は、図3に示すように第1の表示画面42が第2の表示画面43に対して傾いた姿勢において、第1の表示画面42の表示光を、偏光を乱さず図中実線で示すように反射させ、第2の表示画面43の表示光を、偏光を乱さず図中破線で示すように透過させる。これにより、ハーフミラー45は、第1の表示画面42に表示された右目用画像GRと第2の表示画面43に表示された左目用画像GLとをハーフミラー45上で所定の視差を有するように重ねて結合させることによって、乳房Mの立体視可能なステレオ画像を生成する。なお、本実施形態では、第1の表示画面42が右目用画像GR、第2の表示画面43が左目用画像GLを表示するものとしたが、その逆でもよい。
【0046】
そして、モニタ3は、第1および第2の表示画面42、43の表示光を互いに直交する偏光とすることが可能に構成されている。これにより、観察者は、右目用画像GRを観察する右目用偏光レンズと左目用画像GLを観察する左目用偏光レンズを有する偏光メガネを装着し、左目用画像GLおよび右目用画像GRを左右の目でそれぞれ観察することで乳房Mを立体視できる。
【0047】
また、第1の表示画面42と第2の表示画面の接合部分にはヒンジ機構46が設けられている。ヒンジ機構46は、第1の表示画面42が第2の表示画面43に対して図3の矢印A方向に回転するように設けられたものである。このヒンジ機構46によって第1の表示画面42と第2の表示画面43とがなす角度αを変化させることができ、第1の表示画面42と第2の表示画面43とが図中破線で示すような平行となる姿勢と、第1の表示画面42が第2の表示画面43に対して傾いた姿勢とを変化させることができる。
【0048】
さらに、図5にモニタ3の背面図、図6にモニタ3の側面図を示す。図4から図6に示すように、モニタ3の第1の表示画面42と第2の表示画面43とからなる表示部は、基台44に対して回転支持軸47を介して回転自在に設置されている。
【0049】
そして、第1の表示画面42と第2の表示画面43とからなる表示部は、観察者の回転操作により、図5の矢印C方向に回転自在である。この観察者の回転操作により、第1および第2の表示画面42、43の隣接方向βが図4に示すような上下方向と図7に示すような左右方向とに変化する。ここで、隣接方向βとは、図4および図7に示すように、ヒンジ機構46を介して第1の表示画面42と第2の表示画面43とが隣接する方向である。
【0050】
また、回転支持軸47内には隣接方向βを検出する角度センサ47aが設けられている。なお、本実施形態においては隣接方向βを検出するものとして角度センサ47aを設けるようにしたが、これに限らず、ジャイロセンサ等などのその他のセンサを用いるようにしてもよく、要は隣接方向βの角度を検出できる構成であれば如何なる構成を採用してもよい。
【0051】
そして、角度センサ47aによって検出された隣接方向βに関する情報は、上述したコンピュータ2における表示制御部2cへ出力され、表示制御部2cは、入力された隣接方向βに関する情報に基づいて、第1および第2の表示画面42,43に右目用画像GRおよび左目用画像GLを立体視表示させるか、2次元表示用画像G2を2次元表示させるかを切り替えるものである。すなわち、表示制御部2cは、隣接方向βが上下方向である場合には、
第1および第2の表示画面42,43に右目用画像GRおよび左目用画像GLを立体視表示させ、隣接方向βが左右方向である場合には、第1または第2の表示画面42,43に2次元表示用画像G2を2次元表示させるものである。
【0052】
そして、さらに、表示制御部2cは、上述したように第1および第2の表示画面42,43に右目用画像GRおよび左目用画像GLを立体視表示させる際には、図7に示すように第1および第2の表示画面42,43にそれぞれ十字マーク50を表示させるものである。
【0053】
なお、本実施形態においては、上述したように角度センサ47aの検出結果に応じて、第1および第2の表示画面42,43の表示内容を自動的に切り替えるようにしたが、必ずしも自動的に切り替える必要はなく、第1および第2の表示画面42,43の回転に応じて観察者が入力部4を用いて表示内容の切り替えの指示を入力し、その入力に応じて表示制御部2cが表示内容を切り替えるようにしてもよい。
【0054】
入力部4は、たとえば、キーボードやマウスなどのポインティングデバイスから構成されるものであり、乳房画像撮影装置10における撮影条件や撮影開始指示の入力などを受け付けるものであるとともに、モニタ3における表示切替指示やステレオ画像を観察する観察者の情報の入力を受け付けるものである。観察者情報の使用方法については、後で詳述する。
【0055】
次に、本実施形態の乳房画像撮影表示システムの作用について説明する。
【0056】
まずは、乳房画像撮影表示システムの乳房画像撮影装置10によって乳房Mの2次元表示用画像の撮影を行う場合について図1および図2を参照しながら説明する。
【0057】
まず、撮影台14の上に乳房Mが設置され、圧迫板18により乳房Mが所定の圧力で圧迫される。
【0058】
次に、入力部4を用いて撮影者によって乳房Mの撮影方法や乳房Mの2次元表示用画像の撮影開始指示が入力され、2次元表示画像の撮影が開始される。具体的には、制御部2aは入力された撮影方法に応じてアームコントローラ31に制御信号を出力する。なお、本実施形態においては、撮影方法としてCC撮影(頭尾方向)が入力されたものとするが、その他、MLO撮影(内外斜位方向)がある。
【0059】
そして、アームコントローラ31は、制御部2aからの制御信号に応じてアーム部13を駆動制御し、アーム部13を図2の実線で示すような略垂直な状態とする。
【0060】
そして、アームコントローラ31が略垂直となった状態において、制御部2aは、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像の読み出しを行うよう制御信号を出力する。
【0061】
この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が照射されることによって、乳房MをCC撮影(頭尾方向)した2次元表示用画像が放射線画像検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像検出器15から電荷信号が読み出される。そして、この電荷信号に所定の信号処理を施した放射線画像信号がコンピュータ2に出力され、コンピュータ2は、入力された乳房Mの2次元表示用画像G2を放射線画像記憶部2bに記憶する。
【0062】
上述したCC撮影は、同一患者の右側乳房と左側乳房との両方ついて行われ、各撮影によって取得された2次元表示用画像G2が放射線画像記憶部2bに記憶される。
【0063】
次に、乳房画像撮影装置10によって乳房Mをステレオ撮影する場合について説明する。2次元表示用画像の撮影と同様に、撮影台14の上に乳房Mが設置され、圧迫板18により乳房Mが所定の圧力で圧迫される。
【0064】
次に、入力部4において、撮影者による乳房Mのステレオ撮影の開始指示が入力され、ステレオ撮影が開始される。
【0065】
具体的には、入力部4における撮影開始指示入力に応じて制御部2aは、予め設定されたステレオ画像の撮影のための撮影角度θを読み出し、その読み出した撮影角度θの情報をアームコントローラ31に出力する。なお、本実施形態においては、撮影角度θとは、図2に示すように放射線画像検出器15の検出面に対して垂直な直線と放射線源17から出される放射線の光軸とがなす角のことをいう。そして、本実施形態においては、撮影角度θの情報として0°と4°とが予め記憶されているものとするが、これに限らず、撮影者によって入力部4において任意の撮影角度を設定可能である。
【0066】
そして、アームコントローラ31において、制御部2aから出力された撮影角度θの情報が受け付けられ、アームコントローラ31は、その撮影角度θに応じた制御信号をアーム部13に出力する。
【0067】
アーム部13は、入力された撮影角度θに応じた制御信号に基づいて回転し、その結果、アーム部13の撮影角度は0°に設定される。続いて、制御部2aは、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像信号の読出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房を0°方向から撮影した放射線画像が放射線画像検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、その放射線画像信号に対して所定の信号処理が施された後、右目用画像GRを表す放射線画像信号としてコンピュータ2の放射線画像記憶部2bに記憶される。
【0068】
次に、アームコントローラ31は、撮影角度θ=4°の情報に基づいて、アーム部13が放射線画像検出器15の検出面に対して4°の方向となるように制御信号を出力する。
【0069】
そして、このアームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が撮影角度θ=4°に設定された後、上記と同様にして放射線の照射と放射線画像の検出とが行われ、放射線画像検出器15から出力された放射線画像信号が、左目用画像GLを表す放射線画像信号としてコンピュータ2の放射線画像記憶部2bに記憶される。
【0070】
次に、上述したようにして記憶された2次元表示用画像の放射線画像信号と、ステレオ画像の放射線画像信号とに基づいてモニタ3において2次元表示用画像およびステレオ画像を表示する作用について説明する。なお、ここでは2次元表示用画像の表示を行った後に、ステレオ画像の表示を行う作用について説明する。
【0071】
まず、図7に示すように、第1の表示画面42と第2の表示画面43とが左右方向に隣接するように設置されるとともに、第1の表示画面42と第2の表示画面43とが平行な状態となるように調整される(S10)。
【0072】
そして、角度センサ47aによって隣接方向βの情報が検出され、その情報がコンピュータ2の表示制御部2cに入力され、この状態において入力部4から観察者によって表示開始指示が入力されると、表示制御部2cは、その表示開始指示に応じて、放射線画像記憶部2bに記憶された放射線画像信号のうちの2次元表示用画像の放射線画像信号を読み出し、その放射線画像信号に基づいてモニタ3に2次元表示用画像を表示させる(S12)。具体的には、本実施形態においては、表示制御部2cによって右側乳房の放射線画像信号と左側乳房の放射線画像信号とが読み出され、これらの放射線画像信号に基づいて、モニタ3の第1の表示画面42と第2の表示画面43とにそれぞれ右側乳房の放射線画像と左側乳房の放射線画像とが表示される。なお、このとき図7に示すようにそれぞれの乳房の胸壁MWが垂直方向、かつ向かい合わせとなるように表示される。また、2次元表示用画像の放射線画像信号とステレオ画像の放射線画像信号との区別については、たとえば、これらを放射線画像記憶部2bに記憶する際に、ヘッダ情報として識別情報を付加するようにし、その識別情報に基づいて表示制御部2cが放射線画像信号を読み出すようにすればよい。
【0073】
次に、観察者がステレオ画像を観察したいと思った場合には、第1および第2の表示画面42,43が観察者によって回転支持軸47を中心として回転させられ、図4に示すように、第1の表示画面42と第2の表示画面43とが上下方向に隣接するように設置される(S14)。そして、さらに、第1の表示画面42が第2の表示画面43に対して傾いた姿勢となるように調整される。
【0074】
そして、角度センサ47aによって隣接方向βの情報が検出され、その情報がコンピュータ2の表示制御部2cに入力され、この状態において入力部4から観察者によって表示開始指示が入力されると、表示制御部2cは、その表示開始指示に応じて、放射線画像記憶部2bに記憶された放射線画像信号のうちのステレオ画像の放射線画像信号を読み出し、その放射線画像信号に基づいてモニタ3にステレオ画像を表示させる(S16)。具体的には、本実施形態においては、表示制御部2cによって右目用画像を表す放射線画像信号と左目用画像を表す放射線画像信号とが読み出され、これらの放射線画像信号に基づいて、モニタ3の第1の表示画面42に右目用画像GRが表示されるとともに、第2の表示画面43に左目用画像が表示される。なお、このとき表示制御部2cは、図4に示すように各乳房Mが鏡像関係を有し、且つ胸壁MWが水平となる状態で左目用画像GLおよび右目用画像GRを表示する。
【0075】
そして、このとき表示制御部2cは、図8に示すように、第1の表示画面42と第2の表示画面43とにさらに十字マーク50をそれぞれ表示する(S18)。このとき表示される十字マーク50の表示位置は予め設定されており、上下左右方向について、第1の表示画面42の十字マーク50と第2の表示画面の十字マーク50とで同じ位置に表示される。
【0076】
そして、観察者は、第1の表示画面42と第2の表示画面43とに表示された十字マーク50を観察し、2つの十字マーク50が一致する位置に自身の頭の位置を調整する。
【0077】
このように被写体である乳房画像の観察の前に、十字マーク50を観察して立体視しやすい位置に頭を誘導することによって乳房画像を適切に立体視することができる。なお、十字マーク50については、観察者が十字マークが一致したと認識した後、観察者による入力部4からの指示によって消去される。また、必要であれば再度十字マーク50を入力部4からの指示によって表示するようにしてもよい。
【0078】
なお、上記実施形態においては、十字マーク50を第1の表示画面42と第2の表示画面43との両方に表示するようにしたが、たとえば、図10に示すように第2の表示画面43にのみ表示させるようにしてもよい。このようにした場合、十字マークの正面の位置が立体視しやすい位置となり、第1の表示画面42と第2の表示画面43との両方に表示された十字マークの一致する位置に頭を移動させる場合と比べて、より簡便に頭の位置を調節することができる。
【0079】
また、上記実施形態においては、2つの十字マーク50を予め設定された表示位置に表示させるようにしたが、立体視は人間の頭の中で成立し、また目の間隔も個人差があるため、観察者によっては、必ずしも予め設定した表示位置が立体視に適切な表示位置ではない場合がある。
【0080】
そこで、たとえば、2つの十字マーク50の表示位置を入力部4からの入力によって微調整できるようにしてもよい。なお、2つの十字マーク50の両方の表示位置を調整可能としてもよいし、いずれか一方の十字マーク50の表示位置のみを調整可能としてもよい。
【0081】
そして、さらに、図11に示すように、コンピュータ2にマーク表示位置保存部2dを設け、調整後の2つの十字マーク50の表示位置とその調整を行った観察者の情報とを対応付けてマーク表示位置保存部2dに保存しておくようにしてもよい。観察者の情報については、たとえば、入力部4を用いて入力するようにすればよい。図12は、各観察者とその各観察者に対応する十字マークの表示位置とを対応付けたテーブルの一例を示す図である。なお、第1のマーク表示位置とは第1の表示画面42における観察者の調整後の十字マーク50の表示位置であり、第2のマーク表示位置とは第2の表示画面43における観察者の調整後の十字マーク50の表示位置である。
【0082】
そして、入力部4において現在の観察者の情報の入力を受け付け、表示制御部2cが、その入力された観察者に対応する十字マーク50の表示位置をマーク表示位置保存部2dから読み出して第1の表示画面42と第2の表示画面43とに十字マーク50をそれぞれ表示するようにすれば、観察者が毎度十字マーク50の表示位置を微調整する手間を省くことができる。
【0083】
また、上記実施形態においては、本発明の表示装置を乳房画像撮影表示システムに適用するようにしたが、被写体は乳房に限定されるものではなく、乳房以外の胸部撮影用などのいわゆる一般撮影用の放射線画像撮影表示システムに適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 乳房画像撮影表示システム
2 コンピュータ
2a 制御部
2b 放射線画像記憶部
2c 表示制御部
2d マーク表示位置保存部
3 モニタ
4 入力部
10 乳房画像撮影装置
13 アーム部
14 撮影台
15 放射線画像検出器
17 放射線源
18 圧迫板
42 第1の表示画面
43 第2の表示画面
44 基台
45 ハーフミラー
46 ヒンジ機構
47 回転支持軸
47a 角度センサ
50 十字マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる方向から被写体を撮影した右目用画像および左目用画像のうちの右目用画像を表示する第1の表示画面と該第1の表示画面に隣接して配置され、前記左目用画像を表示する第2の表示画面とを有する表示部と、前記右目用画像と前記左目用画像とが入射され、該2つの画像を結合させて立体視画像を生成する光学系とを備えた表示装置において、
前記第1の表示画面と前記第2の表示画面とが上下方向に隣接する第1の設置状態と、前記第1の表示画面と前記第2の表示画面とが左右方向に隣接する第2の設置状態とが切替え可能なように前記表示部を回転自在に支持する回転支持機構と、
前記第1の設置状態である場合に、前記第1および第2の表示画面に前記右目用画像および前記左目用画像をそれぞれ表示し、前記第2の設置状態である場合に、前記第1および第2の表示画面に2次元表示用画像を表示させる表示制御部とを備え、
該表示制御部が、前記第1の設置状態である場合に、前記第1の表示画面および前記第2の表示画面の少なくとも一方にさらに立体視確認用指標を表示させるものであることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1の設置状態であるかまたは前記第2の設置状態であるかを検出する設置状態検出部を備え、
前記表示制御部が、前記設置状態検出部の検出結果に応じて、前記右目用画像および前記左目用画像と前記2次元表示用画像とを切り替えるものであることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示制御部が、前記立体視確認用指標として十字マークを表示させるものであることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1の表示画面および前記第2の表示画面にそれぞれ表示された前記立体視確認用指標のうちの少なくとも一方の表示位置の調整を受け付ける表示位置調整部を備えたことを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の表示装置。
【請求項5】
前記立体視画像の観察者の情報を受け付ける観察者情報受付部と、
前記表示位置調整部よって調整された前記立体視確認用指標の表示位置と前記観察者情報受付部によって受け付けられた観察者情報とを対応付けて保存する指標表示位置保存部とを備え、
前記表示制御部が、入力された前記観察者情報に対応する前記立体視確認用指標の表示位置を前記指標表示位置保存部から読み出して該表示位置に前記立体視確認用指標を表示させるものであることを特徴とする請求項4記載の表示装置。
【請求項6】
前記右目用画像、前記左目用画像および前記2次元表示用の画像が、放射線画像であることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の表示装置。
【請求項7】
前記放射線画像が乳房の放射線画像であって、
前記表示制御部が、前記第1の設置状態の場合に、前記乳房の胸壁が水平となるように前記第1および前記第2の表示画面に前記右目用画像と前記左目用画像とをそれぞれ表示させるものであることを特徴とする請求項6記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示制御部が、前記第2の設置状態の場合に、同一被検者の左側乳房を撮影した左側乳房放射線画像および右側乳房を撮影した右側乳房放射線画像のうちの一方を前記第1の表示画面に表示させ、他方を前記第2の表示画面に表示させるものであることを特徴とする請求項6または7記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示制御部が、前記左側乳房放射線画像と前記右側乳房放射線画像とを胸壁が向かい合うように表示させるものであることを特徴とする請求項8記載の表示装置。
【請求項10】
前記光学系が、前記一方の表示画面の表示光を透過させるとともに、前記他方の表示画面の表示光を反射させるハーフミラーであることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−125453(P2012−125453A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280518(P2010−280518)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
【Fターム(参考)】