説明

表示装置

【課題】視野角特性に優れ、かつ高品位な有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】基板上に、少なくとも第一発光ユニットと、第二発光ユニットと、が配置され、前記第一発光ユニットと、前記第二発光ユニットと、が、それぞれ前記基板上に配置された白色発光素子と、前記白色発光素子を被覆するように設けられた第一保護膜と、前記第一保護膜上に設けられたカラーフィルタと、前記カラーフィルタ上に設けられる第二保護膜を備え、前記第一発光ユニットに備えられているカラーフィルタの膜厚が、前記第二発光ユニットに備えられているカラーフィルタの膜厚よりも薄く、前記第二保護膜が、前記白色発光素子の配置位置に対応する位置にレンズ部材を有し、前記第一発光ユニットが、前記第一保護膜と前記第二保護膜との間に膜厚調整層を有し、前記白色発光素子と前記レンズ部材との距離が、前記第一発光ユニットと前記第二発光ユニットとにおいて同一である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、特に、有機EL(Electro Luminescence)素子を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、この一対の電極の間に形成され発光層を含む単数あるいは複数の有機化合物層からなる有機EL層と、を有する電子素子である。現在、有機EL素子は、その特長(低駆動電圧、多様な発光波長、高速応答性、発光デバイスの薄型化・軽量化が可能であること)から、盛んに研究開発がされている。
【0003】
そして、これらの有機EL素子を用いた表示装置、即ち、有機EL表示装置が液晶ディスプレイ(LCD)に代わる薄型の表示装置として、近年注目されている。ここで有機EL素子は自発光デバイスであるため、有機EL表示装置は、視野角、コントラスト及び色再現性に関して優れた性能を有する。
【0004】
有機EL表示装置でフルカラーを表示する方式には、互いに異なる色を発光することが可能である有機EL素子を複数組み合わせる方式と、カラーフィルタ方式と、がある。ここでカラーフィルタ方式は、白色発光する有機EL素子と、光の三原色である赤、緑、青のいずれかの光を透過する着色層と、を組み合わせてフルカラー発光を得る方式である。
【0005】
このカラーフィルタ方式を利用した有機EL表示装置は、異なる色を発する有機EL素子を複数組み合わせる方式に比べて、カラーフィルタによる光吸収が増えることで光取り出し効率が低下する。そこで、特許文献1や特許文献2では、カラーフィルタ方式の有機EL表示装置にマイクロレンズを組み合わせて光取り出し効率を高める構成が開示されている。ここで特許文献1に開示されている表示装置は、有機EL素子上に設けられる封止樹脂層を含むシート上にカラーフィルタとマイクロレンズとがこの順で形成されている。また特許文献2に開示されている表示装置は、有機EL素子の上にマイクロレンズとカラーフィルタとがこの順で形成されている。これらの表示装置の構成を比較すると、特許文献1の表示装置のようにマイクロレンズ表面に沿ってカラーフィルタを形成するのは難しいため、特許文献2の構成が製造上好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−127662号公報
【特許文献2】特開2004−127661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、白色発光素子とカラーフィルタとを有する有機EL表示装置では、カラーフィルタの膜厚が厚くなるほど光の透過率は低下するが、その代わりに透過光の波長スペクトルはシャープになり、色再現性は高くなる。また各色(赤、緑、青)のカラーフィルタは、一般的に、下記(a)及び(b)に示す傾向が見られる。
(a)赤色のカラーフィルタは、緑色や青色のカラーフィルタと比較して白色光の透過率が高いこと。
(b)緑色のカラーフィルタは、赤色や青色のカラーフィルタと比較して透過光の輝度が高くなること。
【0008】
このため、特許文献2のように全色のカラーフィルタの膜厚を等しくするよりも、他のカラーフィルタと比較して白色光の透過率も透過光の輝度も低い青色のカラーフィルタは、色再現性よりも透過率を優先してフィルタ自体の膜厚を薄くするのが好ましい。以上より、カラーフィルタの膜厚は、透過光の特性に応じて色毎に変えて形成することが望ましい。
【0009】
しかし、カラーフィルタの膜厚を色毎に異なるようにすると、発光面とマイクロレンズとの距離を色によらず同一に保つことは困難となり、色毎の集光率がばらついてしまう。従って、この構成では、光取り出し効率について色ごとにばらつきが発生し、視野角特性が低下してしまう。
【0010】
以上より、複数種類の光を出力する有機EL表示装置において、白色発光素子上に、2色以上のカラーフィルタと、マイクロレンズ形状を有する保護膜とをこの順で積層する構成の場合では、色毎に集光率のばらつきが生じるという課題があった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、視野角特性に優れ、かつ高品位な表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の表示装置は、基板上に配置された白色発光素子と、
前記白色発光素子を被覆するように設けられた第一保護膜と、
前記第一保護膜上に設けられたカラーフィルタと、
前記カラーフィルタ上に設けられレンズ部材を含む第二保護膜と、を備える複数の発光ユニットが配置された表示装置であって、
前記第一保護膜及び前記第二保護膜が、前記複数の発光ユニットに共通する層であり、
前記複数の発光ユニットが、少なくとも第一カラーフィルタを有する第一発光ユニットと、前記第一カラーフィルタよりも膜厚の薄い第二カラーフィルタを有する第二発光ユニットと、を含んでおり、
前記第一発光ユニットと前記第二発光ユニットとにおいて、前記白色発光素子と前記レンズ部材との距離が互いに等しくなるように、前記第二発光ユニットが備える前記第一保護膜と前記第二保護膜との間に膜厚調整層が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、視野角特性に優れ、かつ高品位な有機EL表示装置を提供することができる。即ち、本発明の表示装置では、各発光ユニットにおける発光面からレンズ部材(マイクロレンズ)までの距離を合わせる目的で膜厚調整層を適宜設けている。これによって、カラーフィルタの色毎の膜厚差によって生じる段差をなくすことができると共に、各発光ユニット間の集光率のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の表示装置における第一の実施形態を示す断面模式図である。
【図2】本発明の表示装置における第二の実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の表示装置には、複数の発光ユニットが配置されている。ここで各発光ユニットには、基板上に配置された白色発光素子と、この白色発光素子を被覆するように設けられた第一保護膜と、第一保護膜上に設けられたカラーフィルタと、カラーフィルタ上に設けられレンズ部材を含む第二保護膜と、を備えている。また本発明の表示装置を構成する発光ユニットには、少なくとも第一カラーフィルタを有する第一発光ユニットと、第二カラーフィルタを有する第二発光ユニットと、を含んでいる。尚、第一発光ユニット及び第二発光ユニットの特徴については、後述する。以下、表示装置の一つである有機EL表示装置を具体例として説明するが、本発明は、無機EL素子やLED等の他の発光素子を用いた表示装置にも適用することができる。
【0016】
ここで白色発光素子は、基板上に配置され白色光を出射する有機EL素子である。
【0017】
第一保護膜は、白色発光素子を被覆するために設けられた保護膜であり、第一発光ユニットと、第二発光ユニットと、に共通する層として形成されている。
【0018】
カラーフィルタは、第一保護膜上に設けられる部材である。本発明においては、第一発光ユニットが有する第一カラーフィルタと、第二発光ユニットが有する第二カラーフィルタと、を比較すると、第一カラーフィルタよりも第二カラーフィルタの膜厚が薄くなっている。カラーフィルタの膜厚が各発光ユニットで異なる(第二発光ユニットに備える第二カラーフィルタの膜厚を薄くする)ようにしているのは、第一発光ユニットと第二発光ユニットとがそれぞれ有するカラーフィルタの性質が異なっているからである。具体的には、下記(i)及び(ii)に示されるように性質が異なっている。
(i)第二発光ユニットに備えられているカラーフィルタが、第一発光ユニットに備えられているカラーフィルタよりも白色発光素子から出射される白色光の透過率が低いこと
(ii)第二発光ユニットに備えられているカラーフィルタを透過する光の輝度が、第一発光ユニットに備えられているカラーフィルタを透過する光の輝度よりも低いこと
第二保護膜は、カラーフィルタ上に設けられる保護膜であって、第一発光ユニットと、第二発光ユニットと、に共通する層として形成されると共に、上記白色発光素子の配置位置に対応する位置にレンズ部材を有している。
【0019】
第一発光ユニットは、第一保護膜と第二保護膜との間に膜厚調整層を有している。尚、第一保護膜と第二保護膜との間にはカラーフィルタが設けられているため、膜厚調整層は、第一保護膜とカラーフィルタとの間又はカラーフィルタと第二保護膜との間に設けられる。
【0020】
また本発明においては、白色発光素子とレンズ部材との距離が、第一発光ユニットと第二発光ユニットとにおいて同一である。即ち、膜厚調整層は、各発光ユニットにおける白色発光素子とレンズ部材との距離を均一にするために設けられる部材である。本発明において、「同一」や「均一」なる文言は、完全な同一あるいは均一のみを意味するものではなく、表示に影響のない範囲の誤差を有するものも含まれている。
【0021】
以上の説明は、装置内に発光色が異なる二種類の発光ユニットが設けられている有機EL表示装置に関する説明であるが、本発明はこれに限定されるものではない。具体例として、装置内に発光色が異なる三種類の発光ユニット(第一発光ユニット、第二発光ユニット、第三発光ユニット)が設けられている表示装置について説明する。この表示装置では、発光ユニットごとに設けられる三種類のカラーフィルタ(第一カラーフィルタ、第二カラーフィルタ、第三カラーフィルタ)について、その性質に応じて適宜膜厚を調整する。このため本発明においては、少なくとも第一発光ユニット、第二発光ユニット又は第三発光ユニットが有するカラーフィルタの膜厚が、他の発光ユニットが有するカラーフィルタの膜厚と異なっている。例えば、第一発光ユニットに含まれる第一カラーフィルタの膜厚を、他の発光ユニット(第二発光ユニット、第三発光ユニット)に含まれるカラーフィルタの膜厚よりも薄くした表示装置について説明する。係る表示装置では、各発光ユニットにおいて白色発光素子とレンズ部材との距離が互いに等しくなる(均一になる)ように、第一発光ユニットには、第一保護膜と第二保護膜との間に膜厚調整層が設けられる。また4種類以上の発光ユニットを有する場合も同様に各発光ユニットにおいて白色発光素子とレンズ部材との距離が互いに等しくなる(均一になる)ように膜厚調整層を適宜設けるとよい。具体的には、最も厚いカラーフィルタを有する発光ユニットに合わせて、他の発光ユニットについて第一保護膜と第二保護膜との間に膜厚調整層が設けられる。
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る有機EL表示装置の実施形態について説明する。尚、本発明において特に図示又は記載されない箇所に関しては、当該技術分野の周知又は公知技術を適用することができる。また、以下に説明する実施例は、あくまでも本発明の実施例一つに過ぎず、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の表示装置における第一の実施形態を示す断面概略図である。図1の有機EL表示装置1は、基板10上に、出力する色が異なる三種類の発光ユニット、即ち、赤発光ユニット2R、緑発光ユニット2G及び青発光ユニット2Bが設けられている。尚、図1の有機EL表示装置1では、この三種類の発光ユニット(2R、2G、2B)が1つずつ集まって1つの画素が形成され、この画素が基板10上にマトリックス状に複数配置されている。また図1の有機EL表示装置1は、基板10上に形成される有機EL素子(後述する白色発光素子20)の上面から、基板10の反対方向へ光を出射するトップエミッション型の表示装置である。
【0024】
各発光ユニット(2R、2G、2B)は、それぞれ基板10上に、白色発光素子20と、保護膜30(第一保護膜)と、カラーフィルタ40(40R、40G、40B)と、第二保護膜50と、がこの順に設けられている。
【0025】
以下、図1の有機EL表示装置1の構成部材について説明する。
【0026】
図1の有機EL表示装置1を構成する基板10は、基材(不図示)上に画素回路(不図示)が形成されたものが使用されている。つまり、図1の有機EL表示装置1はアクティブマトリックス駆動型の表示装置である。基材上に形成される画素回路は、公知のトランジスタ作製技術により作製することができる。またこの画素回路は、複数のトランジスタから構成される。そして、この複数のトランジスタを保護し、基板10を平坦化することを目的として、画素回路上に層間絶縁膜(不図示)及び平坦化膜(不図示)が設けられている。また層間絶縁膜や平坦化膜には、所定の位置にコンタクトホール(不図示)が形成される。このコンタクトホールは、画素回路と、白色発光素子20を構成する下部電極21(陽極)とを電気的に接続するために設けられている。このコンタクトホールにより、図1の有機EL表示装置1は、画素単位での独立駆動を可能にしている。
【0027】
基板10上に設けられる白色発光素子20は、基板10上に設けられる下部電極21(陽極)と、下部電極21上に設けられる白色有機EL層22と、白色有機EL層22上に設けられる上部電極23(陰極)と、からなる部材である。
【0028】
下部電極21は、発光ユニット(2R、2G、2B)が設けられている位置に対応する位置に所望のパターンで形成されている。トップエミッション型の有機EL表示装置の場合、下部電極21(陽極)は、反射率の高い導電性材料からなる電極層である。反射率の高い導電性材料として、例えば、Cr、Al、Ag、Au、Pt等の高い反射率を持つ金属材料が挙げられる。
【0029】
下部電極21は、上述した反射率の高い導電性材料からなる層のみの単層電極であってもよいし、反射率の高い導電性材料からなる層と透明導電材料からなる層とを積層してなる積層電極であってもよい。下部電極21を積層電極とする場合、この積層電極を構成する透明導電材料からなる層の構成材料である透明導電材料は、正孔注入性に優れたものであれば特に限定されるものではない。例えば、ITO、IZO、ZnO等が挙げられる。
【0030】
下部電極21を構成する電極薄膜は、スパッタリング法等の公知の方法を利用して形成することができる。本実施例では、Agを100nm成膜し、その上にITOを20nm成膜する。また成膜した電極薄膜は、フォトリソパターニング等の公知の方法により各発光ユニットに対応するようにパターン形成する。
【0031】
図1の有機EL表示装置1において、下部電極21は、基板10上に設けられる隔壁11によって、発光ユニットごとに区画されている。下部電極21を発光ユニットごと(副画素単位)で区画するバンク11は、その構成材料が、好ましくは、平坦性に優れる絶縁性材料である。その中でも塗布法等の湿式法による膜の形成が容易であってフォトリソパターニングが適用できる材料がより好ましい。例えば、感光性アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂材料が好適に用いられる。尚、隔壁11は必要に応じて設ければよく、省いてもよい。
【0032】
下部電極21及びバンク11上に設けられている白色有機EL層22は、少なくとも発光層(不図示)を有する単層あるいは複数層からなる積層体であり、この積層体を構成する各層は、それぞれ有機化合物からなる層である。尚、図1の有機EL表示装置1において、白色有機EL層22は、全ての発光ユニットに共通する層として形成されている。
【0033】
白色有機EL層22を構成する層としては、発光層(白色発光層)の他に、正孔注入・輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子注入・輸送層当が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、白色有機EL層22が、陽極(下部電極21)側から順に、正孔注入・輸送層、白色発光層、電子注入・輸送層からなる積層体である場合について説明する。
【0034】
正孔注入・輸送層は、正孔注入性あるいは正孔輸送性又はその両方の機能を有する有機化合物からなる単層又は複数の層からなる層である。つまり正孔注入・輸送層には、正孔注入層、正孔輸送層はもちろんのこと、正孔注入層と正孔輸送層とからなる積層体も含まれる。また正孔注入・輸送層の構成材料として、公知の材料を用いることができる。
【0035】
正孔注入・輸送層は、真空蒸着法等の公知の方法で成膜・形成することができる。また正孔注入・輸送層の膜厚は、層を構成する材料の正孔注入・輸送能等を考慮して適宜設定される。本実施例では、正孔注入・輸送層を膜厚150nm形成する。
【0036】
白色発光層は、白色光を発する有機化合物層であり、層内に赤色発光材料、緑色発光材料及び青色発光材料が含まれている。また白色発光層は、単一の層であってもよいし、複数の層を組み合わせた積層体であってもよい。
【0037】
白色発光層が複数の層を組み合わせた積層体である場合、層の組み合わせとして、例えば、黄色発光材料を含む層とシアン発光材料を含む層との組合せ、オレンジ発光材料を含む層とシアン発光材料を含む層との組合せ、黄色発光材料を含む層と青色発光材料を含む層との組合せ等が挙げられる。本実施例では、黄色発光材料を含む層とシアン発光材料を含む層との積層体を形成する。具体的には、真空蒸着法により、まずシアン発光材料を含む層を膜厚10nmで成膜し、その上に黄色発光材料を含む層を膜厚10nmで成膜する。
【0038】
電子注入・輸送層は、電子注入性あるいは電子輸送性又はその両方の機能を有する有機化合物からなる単層又は複数の層からなる層である。つまり電子注入・輸送層は、電子注入層、電子輸送層はもちろんのこと、電子注入層と電子輸送層とからなる積層体も含まれる。また電子注入・輸送層の構成材料として、公知の材料を用いることができる。
【0039】
本実施例では、白色発光層上に、電子輸送層及び電子注入層をこの順に積層する。具体的には、白色発光層上に、電子輸送層を膜厚10nmで、次いで電子注入層を膜厚80nmで、それぞれ真空蒸着法により形成する。
【0040】
白色有機EL層22上に形成される上部電極23は、白色有機EL層22と同様に、全ての発光ユニットに共通する層として形成されている。トップエミッション型の有機EL表示装置では、白色有機EL層22上に形成される上部電極23(陰極)は、白色発光層から取り出された光を素子の外部へ取り出すことができるように、透過率の高い導電性材料から構成される。即ち、上部電極23は、光取り出し電極である。上部電極23は、例えば、ITO、IZO、ZnO等の透明導電材料を膜厚10nm乃至1000nm程度で形成した透明導電膜が好適に使用される。また、Ag、Au、Al等の金属材料を10nm乃至30nm程度で形成した半透過膜も好適に使用される。本実施例では、スパッタリング法によりITOを1000nm形成する。
【0041】
白色発光素子20上に設けられる保護膜30(第一保護膜)は、空気中の酸素や水分及びカラーフィルタ40を形成する際に行われるフォトリソプロセスから白色発光素子20を保護するために形成される。保護膜30の構成材料は、光透過性を有する絶縁材料である。具体的には、SiN、SiON、SiO等の絶縁膜が挙げられる。また保護膜30は、CVD法等の公知の方法により形成される。尚、保護膜30は、少なくとも各発光ユニットの発光領域においては、膜厚を均一にして形成するのが望ましい。本実施例では、CVD法により、SiNを膜厚1μmで成膜する。
【0042】
図1の有機EL表示装置1において、保護膜30上の非発光領域(下部電極21が設けられていない領域)には、ブラックマトリックス31が設けられている。ブラックマトリックス31は、隣接する白色発光素子同士が発光する際に生じ得る混色を防止したり、外交反射を防止したりする目的で保護膜30上の非発光領域に対応する領域にパターン形成されている。ただし本発明においては、このブラックマトリックス31を省いてもよい。ブラックマトリクス31は、公知の材料を使用し、公知の技術を用いて作製することができる。
【0043】
図1の有機EL表示装置1は、保護膜30と後述する青カラーフィルタ40Bとの間に膜厚調整層41が設けられている。尚、本実施例では、図1に示されるように、膜厚調整層41が青色発光ユニット2Bにのみ設けられているが、本発明はこれに限定されるものではない。つまり、赤や緑のカラーフィルタが青のカラーフィルタに比べて膜厚が薄い場合は、その膜厚差に応じて、膜厚調整層41を青色発光ユニット2Bの代わりに赤色発光ユニット2Rや緑色発光ユニット2Gに設けてもよく、また複数種の発光ユニットにそれぞれ形成してもよい。
【0044】
本実施例においては、カラーフィルタの光の透過率と当該カラーフィルタを透過する光の輝度と、を考慮して、青色カラーフィルタ40Bの膜厚が他のカラーフィルタ(40R、40G)よりも薄く設定されている。このため、白色発光素子20と後述するレンズ部材52との距離を各発光ユニットで等しくする(同一にする)ために青色発光ユニット2Bに、膜厚調整層41を選択的に設ける。
【0045】
膜厚調整層41は、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の光透過性の樹脂材料を成膜(コーティング)した膜を所望の形状にパターニングすることにより作製できる。またSiN、SiON、SiO等の光透過性の絶縁材料をCVD法により成膜した膜を所望の形状にパターニングすることによっても作製できる。本実施例では、アクリル樹脂からなる薄膜を膜厚1μmで成膜(コーティング)し、公知のパターニング技術により、青色発光ユニット2Bの領域内に形成されている保護膜30上に選択的に膜厚調整層41を形成する。
【0046】
保護膜30(第一保護膜)上、あるいは膜厚調整層11上には、カラーレジストからなるカラーフィルタ40が形成されている。図1の有機EL表示装置1では、三種類の発光ユニット(赤色発光ユニット2R、緑色発光ユニット2G、青色発光ユニット2B)がそれぞれ出力する光の色に対応するカラーフィルタが設けられている。具体的には、赤色カラーフィルタ40R、緑色カラーフィルタ40G、青色カラーフィルタ40Bがそれぞれ設けられている。各色のカラーフィルタは、成膜(コーティング)及び加工(パターニング)を繰り返すことにより、各色の発光ユニットに対応する位置に作製することができる。
【0047】
本実施例では、青色カラーフィルタ40Bの膜厚が他のカラーフィルタ(40R、40G)よりも薄く設定されている。カラーレジストからなるカラーフィルタ40は、その厚みが増せば増すほど白色発光素子から出力される光を色純度が高い状態で透過することができるが、同時にフィルタ自体の透過率が低下する。このため各カラーフィルタの光の透過率を考慮して、取り出す光の波長に応じてカラーフィルタ40の膜厚を適宜調整する必要がある。従って、本実施例では、青色カラーフィルタを透過した光の輝度が他のカラーフィルタ(赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ)よりも低いことから、輝度バランスを保つために青色カラーフィルタ40Bの膜厚を薄く設定している。具体的には、青色カラーフィルタ40B、赤色カラーフィルタ40R及び緑色カラーフィルタ40Gの膜厚は、それぞれ1μm、2μm、2μmと設定されている。
【0048】
このように、青色カラーフィルタ40Bの膜厚は、他のカラーフィルタ(40R、40G)と比較して1μm薄いため、青色カラーフィルタ40Bと保護膜30との間に膜厚調整層41を膜厚1μmで設ける。
【0049】
以上のように、青色発光ユニット2Bにおいて、保護膜30(第一保護膜)とカラーフィルタ40(40B)との間に膜厚調整層41を設けて、青色カラーフィルタ40Bと他のカラーフィルタ(40G、40R)との表面高さの差を埋める。具体的には、各色のカラーフィルタ40B、40G、40Rの膜厚を、それぞれd1(=1μm)、dG(=2μm)、dR(=2μm)とし、膜厚保護膜41の膜厚をd1とdG(あるいはdR)との差分d2(=1μm)とする。これにより、以下の作用効果を奏する。即ち、白色発光素子20の上表面から、第二保護膜50を構成するオーバーコート層51の下表面までの距離は、各画素において同一となる。また、オーバーコート層51を各発光ユニットにおいて(少なくとも発光領域において)膜厚を均一にして形成すると、白色発光素子20の上表面から、第二保護膜50を構成するレンズ部材52の下表面までの距離DB、DG、DRは、全て同一となる。これにより、有機EL表示装置における各発光ユニット間の集光率のばらつきを抑えることができる。さらに、外観を損ねることなくカラーフィルタ40上にレンズ部材52を形成することができる。
【0050】
本実施例では、白色発光素子から発生しカラーフィルタを透過する光の特性(透過光の輝度)に応じて、青色カラーフィルタ40Bと膜厚調整層41の膜厚を調整したが、本発明はこの形態に制限されない。つまり、上述した光の特性(透過光の輝度)以外の要素(各カラーフィルタの光の透過率等)に応じて設定した各カラーフィルタ40(40R、40G、40B)の膜厚の差を膜厚調整層41によって埋める(解消する)ものである。つまり、各カラーフィルタの膜厚がそれぞれ異なることにより図1中のDB、DG、DRがそれぞれ異なる場合は、膜厚調整層41を適宜設けて図1中のDB、DG、DRが全て等しくなるように調整する。
【0051】
尚、膜厚調整層41は全ての発光ユニットに設けてもよい。係る場合、集光効率の観点から、カラーフィルタの膜厚がもっとも大きい発光ユニットにおいては、膜厚調整層41はなるべくその膜厚を薄くするのが望ましい。
【0052】
一方、後述するレンズ部材52の形成をより容易にするため、カラーフィルタ40の断面形状は、図1に示されるように、中央部よりも周縁部の方が高い所謂すり鉢状にするのが好ましい。
【0053】
カラーフィルタ40を形成した後、このカラーフィルタ40上にレンズ部材52(マイクロレンズ)を有する第二保護膜50を形成する。本実施例において、第二保護膜50は、オーバーコート層51と、レンズ部材52とがこの順に積層してなる部材である。
【0054】
オーバーコート層51は、カラーフィルタ40上を被覆して保護すると共に、各カラーフィルタ(40R、40G、40B)間の段差や隙間を埋めて表面を滑らかにするために設けられる部材である。オーバーコート層51は、例えば、アクリル樹脂等の透明な樹脂により形成される。尚、各発光ユニットの集光率を考慮して、オーバーコート層51は、なるべく薄く形成するのが好ましい。本実施例では、アクリル樹脂を膜厚200nmで成膜(コーティング)する。
【0055】
オーバーコート層51上に形成されるレンズ部材52(マイクロレンズ)は、アレイ状かつ半球状に形成される部材である。マイクロレンズの構成材料は、透過性を有する材料であれば特に限定されるものではない。例えばSiN、SiON,SiO等の無機透明膜又はアクリル、エポキシ等の樹脂膜で形成する。ここでマイクロレンズは、下記(1)乃至(6)に示される作製方法のうちのいずれかによって作製することができる。
(1)フォトリソプロセス等によってパターニングされた樹脂層を熱処理し、リフローによって当該樹脂層をマイクロレンズ形状に変形させる方法。
(2)光硬化型樹脂層を膜厚を均一にして形成した後、面内方向に分布を持った光で露光し、この露光された樹脂層を現像することによってマイクロレンズを形成する方法。
(3)無機材料からなる透明薄膜を膜厚を均一にして形成した後、当該透明薄膜をフォトリソプロセスによってマイクロレンズ形状に加工する方法。
(4)イオンビーム、電子ビーム、レーザー等を照射して、膜厚を均一にして形成された無機材料からなる透明薄膜又は樹脂層の表面をマイクロレンズ形状に加工する方法。
(5)各画素に適量の樹脂を滴下して自己整合的にマイクロレンズを形成する方法。
(6)有機発光素子が形成された基板とは別個に、マイクロレンズが予め形成された樹脂シートを用意し、両者をアライメントした後、貼り合せることによりマイクロレンズを形成する方法。
【0056】
本実施例では、(3)と(1)とをこの順で利用してアレイ状かつ半球状のレンズ部材52を形成する。具体的には、まずCVD法によりSiNを30μmの膜厚で均一に成膜した後、20μmの膜厚のレジストで均一にコーティングする。レジストをアレイ状にパターニングした後、リフローによりマイクロレンズ形状を形成する。その後、マイクロレンズ形状となったレジストをシャドウマスクとしてSiNを後退エッチングし、マイクロレンズ10を形成する。最後に、表面保護のために熱可塑性エポキシ樹脂フィルムを貼り付け、完成させる。
【0057】
尚、本発明の表示装置を構成するマイクロレンズは、半球状でもよいし、蒲鉾型の半円筒状でもよい。蒲鉾型の半円筒状である場合は、上下又は左右方向のいずれかにおいて特に集光機能を有する点で有利である。尚、半円筒状の長さ方向の端部は半球状でもよいし、端面が基板に垂直に形成されていてもよい。
【0058】
以上、本実施例に述べた有機EL表示装置において、発光面(白色発光素子22)からマイクロレンズ(レンズ部材52)までの距離DB、DG、DRをカラーフィルタ40の色によらず同一にすることができるので、集光率のばらつきを抑えることができる。また、外観を損ねることなくカラーフィルタ40上にレンズ部材52を形成することができる。従って、視野角特性に優れた高品位な有機EL表示装置を提供することができる。
【0059】
本発明の表示装置は、高輝度による視認性の向上が重要なモバイル用途、例えばデジタルカメラの背面ディスプレイ、携帯電話用ディスプレイ等への利用が可能である。また、同じ輝度でも低消費電力が期待されるので、屋内で使用する照明等への利用も可能である。
【0060】
また本発明は、上述した趣旨を逸脱しない限り、以上に説明した実施形態に限定されることはなく、種々の応用・変形が可能である。
【実施例2】
【0061】
図2は、本発明の表示装置における第二の実施形態を示す断面概略図である。図2の有機EL表示装置3は、図1の有機EL表示装置1と比較して膜厚調整層41の配置位置を除いては、図1の有機EL表示装置1と同様の構成である。以下、図2の有機EL表示装置3について、図1の有機EL表示装置1との相違点を中心に説明する。
【0062】
図2の有機EL表示装置3は、基板10、バンク11、白色発光素子20、保護膜30(第一保護膜)及びブラックマトリックス31については、図1の有機EL表示装置1と共通する。このため基板10上に、白色発光素子20、保護膜30(第一保護膜)及びブラックマトリックス31をこの順に形成する際には、実施例1と同様の方法を利用することができる。
【0063】
本実施例においては、ブラックマトリックス31を形成した後に、カラーフィルタ(40R、40G、40B)を、各発光ユニット(2R、2G、2B)に対応する位置にそれぞれ形成する。ここで各カラーフィルタ(40R、40G、40B)の膜厚dR、dG、d1を、それぞれ2μm(40R)、2μm(40G)、1μm(40B)と設定する。このように設定すると、青色カラーフィルタ40Bの膜厚は、他のカラーフィルタ40R、40Gに比べて1μm薄くなる。
【0064】
カラーフィルタ(40R、40G、40B)を形成した後、青色カラーフィルタ40B上に膜厚調整層41を膜厚1μmで形成する。これにより、青色カラーフィルタ40Bの膜厚d1と膜厚調整層41の膜厚d2との合計が他のカラーフィルタ(40R、40G)の膜厚dR、dGと等しくなる。即ち、白色発光素子20上表面から、レンズ部材52(マイクロレンズ)を有する第二保護膜50の下表面に相当するオーバーコート層51の下表面までの距離がいずれも同一となる。従って、オーバーコート層51を各発光ユニットにおいて(少なくとも発光領域において)膜厚を均一にして形成することで、各発光ユニットにおいて発光面からマイクロレンズまでの距離DR、DG、DBをカラーフィルタ40の色によらず同一にすることができる。このため、各発光ユニット間の集光率のばらつきを抑えることができる。さらに、外観を損ねることなくカラーフィルタ40上にレンズ部材52を形成することができる。
【0065】
本実施例では、白色発光素子からの発光に応じて、青色カラーフィルタ40Bと膜厚調整層41の膜厚を調整する実施例であるが、本発明はこの実施形態に制限するものではない。本発明は、使用する白色有機EL層22の材料と発光輝度に応じて生じるカラーフィルタ40の色毎の膜厚の違いを膜厚調整層41によってなくすものである。つまり、各カラーフィルタの膜厚がそれぞれ異なることにより図2中のDB、DG、DRがそれぞれ異なる場合は、膜厚調整層41を適宜設けて図2中のDB、DG、DRが全て等しくなるように調整する。
【0066】
尚、膜厚調整層41は全ての発光ユニットに設けてもよい。係る場合、集光効率の観点から、カラーフィルタの膜厚がもっとも大きい発光ユニットにおいては、膜厚調整層41はなるべくその膜厚を薄くするのが望ましい。
【0067】
以上、本実施例に述べた有機EL表示装置において、白色発光素子からレンズ部材52までの距離DB、DG、DRを、カラーフィルタ40の色によらず同一にすることができると共に、集光率のばらつきを抑えることができる。また、外観を損ねることなくカラーフィルタ40上にマイクロレンズを形成することができる。従って、視野角特性に優れた高品位な有機EL表示装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0068】
1(2):有機EL表示装置、10:基板、11:バンク、21:下部電極、22:白色有機EL層、23:上部電極、30:保護膜(第一保護膜)、31:ブラックマトリックス、40(40R、40G、40B):カラーフィルタ、41:膜厚調整層、50:第二保護膜、51:オーバーコート層、52:レンズ部材(マイクロレンズ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置された白色発光素子と、
前記白色発光素子を被覆するように設けられた第一保護膜と、
前記第一保護膜上に設けられたカラーフィルタと、
前記カラーフィルタ上に設けられレンズ部材を含む第二保護膜と、を備える複数の発光ユニットが配置された表示装置であって、
前記第一保護膜及び前記第二保護膜が、前記複数の発光ユニットに共通する層であり、
前記複数の発光ユニットが、少なくとも第一カラーフィルタを有する第一発光ユニットと、前記第一カラーフィルタよりも膜厚の薄い第二カラーフィルタを有する第二発光ユニットと、を含んでおり、
前記第一発光ユニットと前記第二発光ユニットとにおいて、前記白色発光素子と前記レンズ部材との距離が互いに等しくなるように、前記第二発光ユニットが備える前記第一保護膜と前記第二保護膜との間に膜厚調整層が設けられていることを特徴とする、表示装置。
【請求項2】
基板上に配置された白色発光素子と、
前記白色発光素子を被覆するように設けられた第一保護膜と、
前記第一保護膜上に設けられたカラーフィルタと、
前記カラーフィルタ上に設けられレンズ部材を含む第二保護膜と、を備える複数の発光ユニットが配置された表示装置であって、
前記第一保護膜及び前記第二保護膜が、前記複数の発光ユニットに共通する層であり、
前記複数の発光ユニットが、少なくとも第一カラーフィルタを有する第一発光ユニットと、第二カラーフィルタを有する第二発光ユニットと、第三カラーフィルタを有する第三発光ユニットと、を含んでおり、
少なくとも前記第一発光ユニット、前記第二発光ユニット又は前記第三発光ユニットが有するカラーフィルタの膜厚が、他の発光ユニットが有するカラーフィルタの膜厚と異なり、
前記第一発光ユニットと、前記第二発光ユニットと、前記第三発光ユニットと、において、前記白色発光素子と前記レンズ部材との距離が互いに等しくなるように、前記第一発光ユニット、前記第二発光ユニット又は前記第三発光ユニットが備える前記第一保護膜と前記第二保護膜との間に膜厚調整層が設けられていることを特徴とする、表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−248453(P2012−248453A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120148(P2011−120148)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】