説明

表示部材

【課題】発現する構造色が外部刺激を受けることにより不可逆に変化し、得られる構造色が維持される表示部材を提供する。
【解決手段】表示層10は、マトリックスM中において、当該マトリックスと屈折率の異なる球体12による球体層15が複数、厚み方向に規則的に配されてなる構成とすることができる。この表示層は、外部からの刺激を受けることにより当該表示層における球体層の層間隔Dが変化するものであることが好ましい。外部からの刺激は、外力の付与、温度変化または湿度変化とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば環境変動などを検知するセンサーなどのセンサー類、ディスプレイ、パネル、シート、不正開封防止ラベルなどのラベル類などとして利用することのできる、外部からの刺激(以下、「外部刺激」という。)を受けることにより構造色が変化し、かつ、変化後の構造色が固定されて維持される表示部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造色の特性を利用した表示部材として、構造が変化しないもの(特許文献1参照。)や、弾性体材料を用いて外部からの刺激を受けたときに構造色が可逆的に変化するもの(特許文献2および3参照。)が提案されている。
【0003】
しかしながら、特許文献2および3に開示される構造色変化は、外部からの刺激の付与によって変化した構造色が維持・固定されないために、例えば表示部材をセンサーとして使用する場合には、検知時に立ち会わなければその履歴を知ることができない、という問題がある。また、ディスプレイやパネルなどとして使用してディスプレイに画像を表示し続ける場合には、外部からの刺激を継続的に付与しなければならず、多大なエネルギーを要する、という問題がある。
【0004】
一方、ターンパーエビデント、不正開封防止を検知する技術としては、元の画像や文字が変化し、これが維持・固定されることにより開封履歴を検知する技術がある(例えば、特許文献4および5参照。)。
【0005】
しかしながら、これらの画像の変化や文字の変化は明確ではなく、実用性に乏しい。
【0006】
【特許文献1】特開2004−276492号公報
【特許文献2】特開2004−27195号公報
【特許文献3】特開2006−28202号公報
【特許文献4】特開2001−301799号公報
【特許文献5】特開2002−82616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、発現する構造色が外部刺激を受けることにより不可逆に変化し、得られる構造色が維持される表示部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表示部材は、構造色を発現する表示層を有するものであって、
外部からの刺激を受けることにより不可逆の構造色変化を生じ、この構造色変化により得られる構造色が維持されることを特徴とする。
【0009】
本発明の表示部材は、前記表示層が、マトリックス中において、当該マトリックスと屈折率の異なる球体による球体層が複数、厚み方向に規則的に配されてなる構成とすることができる。
【0010】
この表示部材においては、外部からの刺激を受けることにより表示層における球体層の層間隔が変化するものであることが好ましい。
【0011】
また、本発明の表示部材においては、外部からの刺激が、外力の付与、温度変化または湿度変化とすることができる。
【0012】
また、本発明の表示部材においては、球体の屈折率とマトリックスの屈折率との差の絶対値が、0.02〜2.0であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の表示部材においては、球体の平均粒径が50〜500nmであることが好ましい。
【0014】
構造色とは、色素などの光の吸収による色ではなく、周期構造などによる選択的な光の反射による色であり、薄膜干渉、光散乱(レイリー散乱、ミー散乱)、多層膜干渉、回折、回折格子、フォトニック結晶などによるものを挙げることができる。
本発明の表示部材における構造色としては、例えば下記式(1)で表される色を代表的な色として表示することができる。
なお、下記式(1)および下記式(2)は近似式であり、実際上はこれらの計算値に完全には合致しない場合もある。
式(1):λ=2nD(cosθ)
〔ただし、上記式(1)において、λは構造色のピーク波長、nは下記式(2)で表される表示層の屈折率、Dは球体層の層間隔、θは表示部材の垂線との観察角である。〕
式(2):n={na・c}+{nb・(1−c)}
〔ただし、上記式(2)において、naは球体の屈折率、nbはマトリックスの屈折率、cは表示層における球体の体積率である。〕
【0015】
さらに、本発明の表示部材は、シート状とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表示部材によれば、外部刺激を受けることによって構造色を発現する表示層の構造が不可逆に変化するため、半永久的に変化後の構造色を維持することができる。
これにより、例えば本発明の表示部材をセンサーとして用いる場合は、検知時に立ち会わずともその履歴を知ることができる。また例えば、本発明の表示部材をディスプレイとして用いる場合は、ディスプレイに表示する画像を形成するための刺激を継続的に付与する必要がないため、小さいエネルギーによって画像を表示し続けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0018】
本発明の表示部材は、構造色を発現する表示層を有するものであって、外部刺激を受けることにより不可逆の構造色変化を生じ、この構造色変化により得られる構造色が維持されるものである。
【0019】
〔表示層〕
表示部材の表示層は、構造色を発現する層であり、具体的には、マトリックス中において、このマトリックスの屈折率と異なる屈折率を有する球体による球体層が複数、厚み方向に規則的に配されて、周期構造が形成されてなるものである。表示層においてこのような周期構造が形成されていることにより、可視域光の照射によって有彩色が視感される。
具体的には、図1に示されるように、表示層10は、例えば固体の球体よりなる球体12同士が接触しない状態で形成される球体層15が、マトリックスM中において、厚み方向において接触しない状態で規則的に配された構成とすることができる。また、図2に示されるように、球体12同士が層方向に接触し、かつ、厚み方向においても接触する状態で規則的に配された構成とすることもできる。
【0020】
〔構造色〕
構造色は、ブラッグの法則、スネルの法則より、下記式(1)で表される波長の色とされる。
式(1):λ=2nD(cosθ)
この式(1)において、λは構造色のピーク波長、nは下記式(2)で表される表示層10の屈折率、Dは球体層15の層間隔、θは表示部材の垂線との観察角である。
式(2):n={na・c}+{nb・(1−c)}
この式(2)において、naは球体12の屈折率、nbはマトリックスMの屈折率、cは表示層10における球体12の体積率である。
【0021】
本発明の表示部材おいては、外部刺激を受けることによりマトリックスMが変容し、これによりマトリックスM中における球体層15の位置が厚み方向に不可逆に変位して層間隔Dが変化し、その結果、構造色変化を生ずる。ここに、マトリックスMの変容による層間隔Dの変化とは、マトリクスMの変容に伴って球体12が変形した結果の変化も含むものである。この球体12の変形の影響は微細であると考えられる。
そして、層間隔Dが変化することにより、構造色のピーク波長λが変化、すなわち外部刺激を受けた後の構造色が変化する。
なお、本発明の表示部材は、外部刺激により、初期の構造色を発現する構造から、新たな構造色を発現する秩序立った構造へと変化するものであって、初期の構造からランダムに変化して秩序を失い構造色が発現しなくなるものではない。
【0022】
ここに、構造色のピーク波長λは、例えば分光測色計「CM−3600d」(コニカミノルタセンシング社製)を用い、観察角θが8°の条件で測定されるものとすることができる。
そして、この構造色のピーク波長λから、上記式(1)を用いて層間隔Dを算出することができる。
【0023】
本発明において、外部刺激とは、マトリックスMを変容させて上記式(1)における層間隔Dを変化させる力をいい、具体的には、加熱、冷却などの温度変化、外力および湿度変化が挙げられる。
本発明の表示部材は、外部刺激の大きさに基づいて、変化後の構造色が決定される。
外部刺激とは、その大きさに具体的な規定はないが、表示層10が示す上記式(1)における構造色のピーク波長λを30nm以上変化させうるものをいうことが好ましい。
【0024】
本発明の表示部材において、その構造色および/または外部刺激を受けた後の構造色は、可視域にピーク波長を有する色に限らず、紫外域または赤外域にピーク波長を有する色であってもよい。
このような紫外域または赤外域にピーク波長を有する色の表示部材は、例えば、紫外線または赤外線を認識できる検出装置などに組み込んだ状態センサーとして使用することができる。
【0025】
本発明の表示部材においては、球体12の屈折率とマトリックスMの屈折率との差の絶対値(以下、「屈折率差」という。)が、0.02〜2.0であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.6である。
この屈折率差が0.02未満である場合は、構造色が発色しにくくなり、この屈折率差が2.0より大きい場合は、光散乱が大きく生じることによって構造色が白濁化してしまう。
【0026】
球体12の平均粒径は、当該球体12の屈折率およびマトリックスMの屈折率との関係において設定する必要があるが、例えば50〜500nmであることが好ましい。
球体12の平均粒径が上記の範囲にあることにより、構造色が近紫外〜可視〜近赤外域にピーク波長を有する色となり、得られる表示部材に高い利便性が得られる。
また、粒径分布を表すCV値は20以下であることが好ましく、より好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
CV値が20より大きい場合は、マトリックス中において球体による球体層を規則的に配することができず、その結果、構造色を発現する表示部材を得られないおそれがある。
平均粒径は、走査型電子顕微鏡「JSM−7410」(日本電子社製)を用いて50,000倍の写真を撮影し、この写真画像における球体200個について、それぞれ最大長を測定し、その個数平均値を算出することにより、得られるものである。ここに、「最大長」とは、球体の周上の任意の2点による2点間距離のうち、最大のものをいう。
なお、球体が凝集体として撮影される場合には、凝集体を形成する一次粒子(球体)の最大長を測定するものとする。
CV値は、個数基準の粒度分布における標準偏差および上記の平均粒径の値を用いて下記式(CV)より算出されるものである。
式(CV):CV値(%)=((標準偏差)/(平均粒径))×100
【0027】
球体層15の厚みは、例えば0.1〜100μmであることが好ましい。
球体層の厚みが0.1μm未満である場合は、得られる構造色の色が薄いものとなり、一方、球体層の厚みが100μmよりも大きい場合は、光散乱が大きく生じることによって構造色が白濁化してしまう。
【0028】
表示層10における球体層15の周期数は、少なくとも1以上である必要があり、好ましくは5〜500である。
周期数が1未満である場合は、表示層が構造色を発現するものとすることができない。
【0029】
また、表示層10における層間隔Dは、外部刺激を受ける前後にかかわらず、50〜500nmであることが好ましい。
層間隔Dが50nm未満である場合は、明確に視認できるほどの構造色変化が得られないおそれがあり、一方、層間隔Dが500nmよりも大きい場合は、得られる表示層が構造色を発現するものとならないおそれがある。
【0030】
表示層10の厚みは、用途によって異なるが、例えば0.1〜100μmとすることができる。
【0031】
〔球体〕
本発明において、球体とは、3次元において球体形状を有する物質のことであり、真球に限定されるものではなく、おおよそ球体形状を有すればよい。この物質は、固体、液体、気体のどの形態を有していてもよく、マトリクスの屈折率と異なる屈折率を有せばよい。
表示層中の球体層が固体の球体を含有して形成されたものである場合は、当該粒子として、種々の組成のものを挙げることができる。
具体的には例えば、有機物としては、スチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸(イソ)プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸単量体などの重合性単量体のうちの1種を重合した粒子、または2種以上を共重合した粒子を挙げることができる。
また、重合性単量体に架橋性単量体を加えて重合した粒子であってもよく、架橋性単量体としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどを挙げることができる。
また例えば、無機物としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅などの無機酸化物および複合酸化物などや、ガラス、セラミックスなどにより形成された粒子を挙げることができる。
【0032】
球体12の屈折率は公知の種々の方法で測定することができるところ、本発明における球体12の屈折率は、液浸法によって測定した値とする。
球体12の屈折率の具体的な例としては、例えばポリスチレンが1.59、ポリメタクリル酸メチルが1.49、ポリエステルが1.60、フッ素変性ポリメタクリル酸メチルが1.40、ポリスチレン・ブタジエン共重合が1.56、ポリアクリル酸メチルが1.48、ポリアクリル酸ブチルが1.47、シリカが1.45、酸化チタン(アナターゼ型)が2.52、酸化チタン(ルチル型)が2.76、酸化銅が2.71、酸化アルミニウムが1.76、硫酸バリウムが1.64、酸化第二鉄が3.08である。
【0033】
球体層を構成する粒子は、単一組成の単一物であっても複合物であってもよいが、粒子の表面に粒子同士を接着させる物質が付着されたものとしてもよく、あるいは、粒子の内部に粒子同士を接着させる物質が導入されたものとしてもよい。このような接着物質を用いることによって、球体層を形成する際に自己配列などを生じにくい物質による粒子であっても、粒子同士を接着させることができる。また、屈折率が高い材料によって粒子を形成する場合は低屈折率物質を内添するなどしてもよい。
【0034】
球体層を構成する粒子は、球体層を形成させる際に規則配列させやすいことから、単分散性の高いものであることが好ましい。
単分散性の高い粒子を得るために、球体が有機物による粒子である場合は、球体は、通常一般的に用いられるソープフリー乳化重合法、懸濁重合法、乳化重合などの重合法によって粒子を調製することが好ましい。
【0035】
粒子12は、マトリックスMとの親和性を高いものとするために、各種の表面処理を行ってもよい。
【0036】
〔マトリックス〕
表示層10中のマトリックスMは、用途に応じて、さらに球体層を構成する粒子の材料との組み合わせによって、適宜に選択することができる。
温度変化により変容するものとしては、ガラス転移点または融解点を有してこれにより変容するものであり、具体的には、ポリビニルアルコールなどの種々のポリマー、天然物などが挙げられる。
また、外力により変容するものとしては、降伏点から破断点までの間に塑性変形するものが挙げられ、具体的には、(低密度)ポリエチレン、ポリスチレン、ゼラチンなどが挙げられる。降伏点の高いものは、降伏点が低いものと併用することによって小さい外力でも塑性変形を生じるよう設計することができる。
また、降伏点までの弾性範囲を規定したものを用いることによって、構造色変化を生じさせる外力の大きさを設定したものとして表示層10を構成することができる。この弾性範囲を大きく規定すると、小さい外力を受けた場合は構造色が変化しても外力が与えられなくなると元の構造色に戻り、大きい外力を受けた場合にのみ変化した構造色を固定することができる表示部材を得ることができ、例えばセンサーとして最大応力の検知などに好適に用いることができる。
さらに、湿度変化により変容するものとしては、一旦水分を吸水すると当該水分を放出しないか、放出しても長時間を要するものであり、例えばポリアクリル酸塩系ポリマー、リグニン系ポリマー、キトサン系ポリマー、ポリアスパラギン酸系ポリマーなどの吸水性ポリマーが挙げられる。
【0037】
マトリックスMの材料としては、その屈折率が球体12の屈折率と異なるものであること、球体12を構成する材料と非相溶性であることが必要とされる。
また、マトリックスMは、球体12との親和性の高い材料よりなることが好ましい。
マトリックスMの屈折率は公知の種々の方法で測定することができるところ、本発明におけるマトリックスMの屈折率は、別個にマトリックスMのみよりなる薄膜を作成し、この薄膜をアッベ屈折率計にて測定した値とする。
球体の屈折率の具体的な例としては、例えばゼラチン/アラビアゴムが1.53、ポリビニルアルコールが1.51、ポリアクリル酸ナトリウムが1.51、フッ素変性アクリル樹脂が1.34、N−イソプロピルアミドが1.51、発泡アクリル樹脂が1.43である。
【0038】
以上のような表示層10は、一度の外部刺激を受けて変化した構造色が維持されるものであるが、再度の外部刺激を受けることにより再び構造色変化を生じさせてさらに別の構造色に変化させることができる。
【0039】
〔表示部材〕
以上のような表示部材は、具体的には、例えば図2に示されるように、基板17と、当該基板17の表面上に形成された表示層10と、当該表示層10上に粘着層18を介して設けられた表面被覆層19とがこの順に積層されたシート状のものとして構成することができる。
このような表示部材において、基板17、粘着層18および表面被覆層19は、用途などに応じて必要に応じて設けられるものであり、また、基板17の裏面、または表示層10の裏面に、ラベル用粘着層を設けた構成としてもよい。
【0040】
基板17としては、例えばガラス、セラミックスやポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のフィルムやシートなどを使用することができる。
表示層10を球体12の水分散液を用いて作製する場合は、基板17としては、表面の水に対する接触角はある程度低いものが好ましく、また、表面平滑性は高いものが好ましいことから、適宜の表面処理を行うことができる。また、ブラスト処理などを行って球体が付着し易い状態にして使用することもできる。
【0041】
表面被覆層19を設ける場合は、当該表面被覆層19として、透明性が高く、表示層10における構造色の発現を阻害しないポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などよりなるフィルム、UV硬化樹脂よりなるフィルムなどを用いることができる。
また、表示部材を湿度変化による外部刺激によって変色するよう構成する場合は、表面被覆層19として、透湿性フィルムを用いることができる。
また、ラベルとして使用する場合は、ラベル用粘着層として、例えばアクリル系粘着剤、アクリル・オレフィン共重合粘着剤などの一時接着性の粘着材を用いることができる。
【0042】
本発明の表示部材における表示層の形成方法は、例えば球体が固相の粒子である場合には、当該粒子の水分散液を調製し、これを基板などの表面に塗布し、その後、粒子間の間隙にマトリックスを形成すべき材料を充填して1層目を形成し、さらにマトリックスを形成すべき材料が球体層間に充填されるよう、前記1層目の上にマトリックスを形成すべき材料のみよりなる層を形成し、これを繰り返す方法などを挙げることができる。
粒子の塗布方法としては、スクリーン塗布法、ディップ塗布法、スピンコート塗布法、カーテン塗布法、LB(Langmuir−Blodgett)膜作成法などを利用することができる。
【0043】
以上のような表示部材によれば、外部刺激を受けることによって構造色を発現する表示層10の構造が不可逆に変化するため、半永久的に変化後の構造色を維持することができる。
これにより、例えば表示部材をセンサーとして用いる場合は、検知時に立ち会わずともその履歴を知ることができる。また例えば、表示部材をディスプレイとして用いる場合は、ディスプレイに表示する画像を形成するための刺激を継続的に付与する必要がないため、小さいエネルギーによって画像を表示し続けることができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明の実施の形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【0045】
例えば、表示層の具体的な構成は、厚み方向に周期構造が形成されているものであれば、特に限定されず、図3に示されるように、球体12同士が接触して形成される球体層15が、マトリックスM中において、厚み方向において接触した状態で規則的に配層されている構成であってもよい。
【0046】
また例えば、球体が固相の粒子であることに限定されず、マトリックスを形成する材料の屈折率と異なる屈折率を有するものであれば、図4に示されるように、例えば気相の空孔22であってもよい。図4においては、空孔22同士が連通して形成される球体層25が、マトリックスM中において、厚み方向において連通した状態で規則的に配層されている構成とされている。また例えば、空孔同士が連通して形成される球体層が、マトリックス中において、厚み方向において連通しない状態で規則的に配層されている構成であってもよい。
球体が気相の空孔である場合は、表示層は、例えばスチレン−アクリル系樹脂によって形成した樹脂粒子を用いてマトリックス中に球体層となるべき層を形成し、その後、例えばテトラヒドロフラン(THF)に浸漬して樹脂粒子を溶解させて除去することにより、得ることができる。
空孔の平均孔径は、マトリックスの屈折率との関係において設定される必要があるが、例えば50〜500nmであることが好ましい。また、孔径分布を表すCV値は20以下であることが好ましく、より好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
平均孔径は、表示層10の断面の切片を透過型電子顕微鏡を用いて50,000倍の写真を撮影し、この写真画像における100個の空孔についてそれぞれ目視計測し、その個数平均値を平均孔径とする。平均孔径に係るCV値は、この平均孔径の値を用いて上記式(CV)より算出されるものである。
【0047】
また例えば、球体がすべて固体の球体または気体の空孔とされることに限定されず、その両方を含有して構成されていてもよい。
表示層における球体が固体の球体および気体の空孔の両方を含有する場合は、表示層の屈折率nを算出するための球体の屈折率naは、下記式(3)を用いて得ることができる。
式(3):na={na1 ・d}+{na2 ・(1−d)}
この式(3)において、na1 は固体の球体の屈折率、na2 は気体の空孔の屈折率、dは、固体の球体の体積率である。
【0048】
また例えば、球体層において、球体は、光が入射する方向に対して一方向に規則的に規則的に配列されている。中でも球体の配列としては、球体層が最密充填構造を呈する配列が好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、平均粒径、CV値および屈折率の測定は、上述の方法と同様の方法によって行った。
【0050】
〔微粒子分散液の調製例1〕
(球体の合成)
スチレン(St)71質量部、n−ブチルアクリレート(BA)20質量部およびメタクリル酸(MAA)9質量部を80℃に加温して単量体混合液を調製した。一方、ドデシルスルホン酸ナトリウム0.4質量部をイオン交換水263質量部に溶解させた界面活性剤溶液を80℃に加熱し、この界面活性剤溶液と上記の単量体混合液とを混合した後、機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック社製)によって30分間分散処理を行うことにより、乳化分散液を調製した。
撹拌装置、加熱冷却装置、窒素導入装置、および原料・助剤仕込み装置を備えた反応容器に、上記の乳化分散液とドデシルスルホン酸ナトリウム0.1質量部をイオン交換水142質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下200rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。この溶液に過硫酸カリウム1.4質量部、水54質量部を投入し、3時間重合処理を行うことによって微粒子の分散液を得、これを遠心分離機により大径粒子/小径粒子を分離し、単分散性の高い微粒子の分散液(以下、「微粒子分散液〔1〕」という。)を得た。この微粒子分散液〔1〕中の微粒子の平均粒径、CV値、屈折率を表1に示す。
【0051】
〔微粒子分散液の調製例2〕
チタンアルコキシド重合法によって合成した球状の酸化チタン(ルチル型、平均粒径:120nm、CV値:7.1、屈折率2.76)20質量部をドデシルスルホン酸ナトリウム0.02質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた界面活性剤溶液中に分散させることにより、微粒子分散液〔2〕を得た。この微粒子分散液〔2〕中の微粒子の平均粒径、CV値、屈折率を表1に示す。
【0052】
〔微粒子分散液の調製例3〕
トルエン40質量部にポリエステル(PEs)10質量部を溶解させてポリエステル分散液を調製し、このポリエステル分散液を、ドデシルスルホン酸ナトリウム0.2質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた界面活性剤溶液と混合させた跡、機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック社製)によって30分間分散処理を行うことにより、乳化分散液を調製した。
この乳化分散液を60℃で加熱、減圧してトルエンを蒸発させ、単分散性の高い真球微粒子による微粒子分散液〔3〕を得た。この微粒子分散液〔3〕中の微粒子の平均粒径、CV値、屈折率を表1に示す。
【0053】
〔微粒子分散液の調製例4〕
チタンアルコキシド重合法によって合成した球状の酸化チタン(アナターゼ型、平均粒径:105nm、CV値:6.5、屈折率2.52)20質量部をドデシルスルホン酸ナトリウム0.02質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた界面活性剤溶液中に分散させることにより、微粒子分散液〔4〕を得た。この微粒子分散液〔4〕中の微粒子の平均粒径、CV値、屈折率を表1に示す。
【0054】
〔微粒子分散液の調製例5〕
メタクリル酸メチル(MMA)100質量部を80℃に加温して単量体溶液を調製した。一方、ドデシルスルホン酸ナトリウム0.4質量部をイオン交換水263質量部に溶解させた界面活性剤溶液を80℃に加温し、これと前記単量体溶液を混合した後、機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック社製)によって30分間分散処理を行うことにより、乳化分散液を調製した。
撹拌装置、加熱冷却装置、窒素導入装置、および原料・助剤仕込み装置を備えた反応容器に、上記の乳化分散液と、ドデシルスルホン酸ナトリウム0.1質量部をイオン交換水142質量部に溶解させた界面活性剤を仕込み、窒素気流下200rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。この溶液に過硫酸カリウム1.4質量部、水54質量部を投入し、3時間重合を行い、単分散性の高い真球微粒子による分散液を得、この分散液を遠心分離機により大径粒子および小径粒子を分離し、粒度分布の狭い微粒子分散液〔5〕を得た。この微粒子分散液〔5〕中の微粒子の平均粒径、CV値、屈折率を表1に示す。
【0055】
〔微粒子分散液の調製例6〕
メラミン・ホルムアルデヒド縮合粒子「エポスターS」(日本触媒社製)100質量部を、ドデシルスルホン酸ナトリウム0.3質量部をイオン交換水500質量部に溶解させた界面活性剤溶液に分散させ、遠心分離機により大径粒子および小径粒子を分離し、粒度分布の狭い微粒子分散液〔6〕を得た。この微粒子分散液〔6〕中の微粒子の平均粒径、CV値、屈折率を表1に示す。
【0056】
〔微粒子分散液の調製例7〕
トルエン90質量部にポリエステル10質量部、三酸化二鉄90質量部を機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック社製)によって30分間分散処理を行うことにより、ポリエステル/三酸化二鉄分散液を調製した。この液を、ドデシルスルホン酸ナトリウム0.4質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた界面活性剤溶液と混合した後、機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック社製)によって30分間分散処理を行うことにより、乳化分散液を調製した。
この乳化分散液を60℃で加熱、減圧してトルエンを蒸発させ、ポリエステル樹脂中に三酸化二鉄を分散させた真球微粒子による分散液を得、この分散液を遠心分離機により大径粒子および小径粒子を分離し、粒度分布の狭い微粒子分散液〔7〕を得た。この微粒子分散液〔7〕中の微粒子の平均粒径、CV値、屈折率を表1に示す。
【0057】
〔微粒子分散液の調製例8〕
メタノール47.4質量部、純水12.6質量部、アンモニア3.0質量部よりなる混合溶液を調製し、これを、撹拌装置、加熱冷却装置、窒素導入装置、および原料・助剤仕込み装置を備えた反応容器に投入し、温度20℃で撹拌しながらシリコンメトキシド22.8質量部を滴下し、加水分解を行い、粒度分布の狭い微粒子による微粒子分散液〔8〕を得た。この微粒子分散液〔8〕中の微粒子の平均粒径は300nm、CV値は5.1、屈折率は1.45であった。
【0058】
〔微粒子分散液の調製例9〕
メラミン・ホルムアルデヒド縮合粒子「エポスターS」(日本触媒社製)100質量部を、ドデシルスルホン酸ナトリウム0.28質量部をイオン交換水500質量部に溶解させた界面活性剤溶液に分散させ、遠心分離機により大径粒子および小径粒子を分離し、粒度分布の狭い微粒子分散液〔9〕を得た。この微粒子分散液〔9〕中の微粒子の平均粒径、CV値、屈折率を表1に示す。
【0059】
〔微粒子分散液の調製例10〕
チタンアルコキシド重合法によって合成した球状の酸化チタン(アナターゼ型、平均粒径:260nm、CV値:6.5、屈折率2.52)20質量部をドデシルスルホン酸ナトリウム0.02質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた界面活性剤溶液中に分散させることにより、微粒子分散液〔10〕を得た。この微粒子分散液〔10〕中の微粒子の平均粒径、CV値、屈折率を表1に示す。
【0060】
〔微粒子分散液の調製例11〕
トルエン40質量部にポリエステル10質量部、酸化チタン2質量部を機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック社製)によって30分間分散処理を行うことにより、ポリエステル/酸化チタン分散液を調製した。この液を、ドデシルスルホン酸ナトリウム0.2質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた界面活性剤溶液と混合した後、機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック社製)によって30分間分散処理を行うことにより、乳化分散液を調製した。
この乳化分散液を60℃で加熱、減圧してトルエンを蒸発させ、ポリエステル樹脂中に酸化チタンを分散させた真球微粒子による分散液を得、この分散液を遠心分離機により大径粒子および小径粒子を分離し、粒度分布の狭い微粒子分散液〔11〕を得た。この微粒子分散液〔11〕中の微粒子の平均粒径、CV値、屈折率を表1に示す。
【0061】
〔実施例1:外力による構造色変化〕
(表示部材の製造例1)
親水処理した黒色のポリエチレンテレフタラート(PET)シートに、微粒子分散液〔1〕をバーコート法によって塗布・乾燥させて厚み20μmの球体含有層を形成させた。次いで、ゼラチン/アラビアゴム(ArG)(9/1)の10wt%水溶液を球体含有層の上から塗布し、球体間に塗布液を浸透させ、その後乾燥させ、前記球体含有層上に2μmの厚みを有するゼラチン/アラビアゴム層を形成した。さらに、厚さ5μmの透明PETフィルムを被せて透明なアクリル系粘着剤により接着させることにより、シート状の表示部材〔1〕を得た。この表示部材〔1〕は緑色を呈するものであった。マトリックスの屈折率を表1に示す。
(外力による構造色変化の評価)
この緑色のシート上に引っ張り用持具を接着させ、10kgfの力で上方向に引っ張ったところ、赤色に変色し、1日後においても当該赤色を維持していることが判明した。結果を表1にも示す。
以上により、この表示部材〔1〕が引張力を検知し、その履歴が保存されることが確認された。
【0062】
〔実施例2:外力による構造色変化〕
(表示部材の製造例2)
親水処理した黒色のPETシートに、微粒子分散液〔2〕をバーコート法によって塗布・乾燥させて厚み2μmの球体含有層を形成させた。次いで、パーフルオロフェニルアクリレート50質量部、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(発泡剤)4質量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(光重合開始剤)0.1質量部からなるマトリックス液を球体含有層の上から塗布し、球体間に塗布液を浸透させた後、高圧水銀ランプによって光硬化処理を行って前記球体含有層上に2μmの厚みを有する間質層を形成した。さらに、厚さ5μmの透明PETフィルムを被せてアクリル系粘着剤により接着させることにより、シート状の表示部材〔2〕を得た。この表示部材〔2〕は緑色を呈するものであった。マトリックスの屈折率を表1に示す。
(外力による構造色変化の評価)
この緑色のシート上に引っ張り用持具を接着させ、10kgfの力で上方向に引っ張ったところ、赤色に変色し、1日後においても当該赤色を維持していることが判明した。結果を表1にも示す。
以上により、この表示部材〔2〕が引張力を検知し、その履歴が保存されることが確認された。
【0063】
〔実施例3:外力による構造色変化〕
(表示部材の製造例3)
親水処理したガラス板に、微粒子分散液〔3〕をバーコート法によって塗布・乾燥させて厚み2μmの球体含有層を形成させた。次いで、ポリビニルアルコール(PVA)/アラビアゴム(ArG)(8/2)の10wt%水溶液を球体含有層の上から塗布し、球体間に塗布液を浸透させた後、乾燥させ、前記球体含有層上に2μmの厚みを有するポリビニルアルコール/アラビアゴム層を形成した。さらに、厚さ5μmの透明PETフィルムを被せて透明なアクリル系粘着剤により接着させた後、ガラス板から積層物を剥離し、その裏面(ガラス板と接触していた側)に黒色アクリル系粘着剤を塗布することにより、ラベル状の表示部材〔3〕を得た。この表示部材〔3〕は緑色を呈するものであった。マトリックスの屈折率を表1に示す。
(外力による構造色変化の評価)
この緑色のラベルを紙箱に貼り付けた後に剥離すると、ラベルが赤色に変化し、1日後においても赤色が維持されることが判明した。結果を表1にも示す。
以上により、この表示部材〔3〕が不正開封防止機能を有することが確認された。
【0064】
〔実施例4:外力による構造色変化〕
(表示部材の製造例4)
実施例1の表示部材の製造例1において、微粒子分散液〔1〕の代わりに微粒子分散液〔4〕を用い、ゼラチン/アラビアゴム(ArG)(9/1)の代わりにポリビニルアルコール/アラビアゴム(ArG)(9/1)を用いると共に、球体含有層の厚みを20μmではなく2μmとしたことの他は同様にして、シート状の表示部材〔4〕を得た。この表示部材〔4〕は青色を呈するものであった。マトリックスの屈折率を表1に示す。
(外力による構造色変化の評価)
この青色のシート上に引っ張り用持具を接着させ、10kgfの力で上方向に引っ張ったところ、黄色に変色し、1日後においても当該黄色を維持していることが判明した。結果を表1にも示す。
以上により、この表示部材〔4〕が引張力を検知し、その履歴が保存されることが確認された。
【0065】
〔実施例5:外力による構造色変化〕
(表示部材の製造例5)
実施例1の表示部材の製造例1において、微粒子分散液〔1〕の代わりに微粒子分散液〔5〕を用い、ゼラチン/アラビアゴム(ArG)(9/1)の代わりにゼラチン/アラビアゴム(ArG)/酸化チタン(TiO2 )(9/1/2)を用いると共に、球体含有層の厚みを20μmではなく4μmとしたことの他は同様にして、シート状の表示部材〔5〕を得た。この表示部材〔5〕は青色を呈するものであった。マトリックスの屈折率を表1に示す。
(外力による構造色変化の評価)
この青色のシート上に引っ張り用持具を接着させ、10kgfの力で上方向に引っ張ったところ、赤色に変色し、1日後においても当該赤色を維持していることが判明した。結果を表1にも示す。
以上により、この表示部材〔5〕が引張力を検知し、その履歴が保存されることが確認された。
【0066】
〔実施例6:外力による構造色変化〕
(表示部材の製造例6)
実施例2の表示部材の製造例2において、微粒子分散液〔2〕の代わりに微粒子分散液〔6〕を用い、球体含有層の厚みを2μmではなく4μmとしたことの他は同様にして、シート状の表示部材〔6〕を得た。この表示部材〔6〕は緑色を呈するものであった。マトリックスの屈折率を表1に示す。
(外力による構造色変化の評価)
この緑色のシート上に引っ張り用持具を接着させ、10kgfの力で上方向に引っ張ったところ、赤色に変色し、1日後においても当該赤色を維持していることが判明した。結果を表1にも示す。
以上により、この表示部材〔6〕が引張力を検知し、その履歴が保存されることが確認された。
【0067】
〔実施例7:外力による構造色変化〕
(表示部材の製造例7)
実施例2の表示部材の製造例2において、微粒子分散液〔2〕の代わりに微粒子分散液〔7〕を用いたことの他は同様にして、シート状の表示部材〔7〕を得た。この表示部材〔7〕は緑色を呈するものであった。マトリックスの屈折率を表1に示す。
(外力による構造色変化の評価)
この緑色のシート上に引っ張り用持具を接着させ、10kgfの力で上方向に引っ張ったところ、赤色に変色し、1日後においても当該赤色を維持していることが判明した。結果を表1にも示す。
以上により、この表示部材〔7〕が引張力を検知し、その履歴が保存されることが確認された。
【0068】
〔実施例8:外力による構造色変化〕
(表示部材の製造例8)
親水処理した黒色のPETシートに、微粒子分散液〔8〕をバーコート法によって塗布・乾燥させて厚み4μmの球体含有層を形成させた。次いで、ゼラチン/アラビアゴム(ArG)/酸化チタン(TiO2 )(8/2)の10wt%水溶液を球体含有層の上から塗布し、球体間に塗布液を浸透させた後、高圧水銀ランプによって光硬化処理を行って前記球体含有層上に2μmの厚みを有する間質層を形成し、続いて20%フッ酸に浸漬させてシリカを溶解させた後、水洗浄し、さらに乾燥させることにより、シート状の表示部材〔8〕を得た。この表示部材〔8〕は赤色を呈するものであった。マトリックスの屈折率、球体(空気)の平均粒径、CV値、屈折率を表1に示す。
(外力による構造色変化の評価)
この赤色のシート上を10kgfの力で押圧したところ、緑色に変色し、1日後においても当該緑色を維持していることが判明した。結果を表1にも示す。
以上により、この表示部材〔8〕が押圧力を検知し、その履歴が保存されることが確認された。
【0069】
〔実施例9:温度変化および外力による構造色変化〕
(表示部材の製造例9)
親水処理した黒色のPETシートに、微粒子分散液〔9〕をバーコート法によって塗布・乾燥させて厚み4μmの球体含有層を形成させた。次いで、塩化ビニル樹脂58質量部、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤)15質量部、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(発泡剤)4質量部、トルエン100質量部からなるマトリックス液を球体含有層の上から塗布し、球体間に塗布液を浸透させた後、乾燥させて前記球体含有層上に2μmの厚みを有する間質層を形成することにより、シート状の表示部材〔9−1〕を得た。この表示部材〔9−1〕は青色を呈するものであった。マトリックスの屈折率を表1に示す。
(温度変化による構造色変化の評価)
この青色のシートを100℃の環境下に2時間静置したところ、黄色に変色し、室温に戻した後においても当該黄色を維持していることが判明した。結果を表1にも示す。
以上により、この表示部材〔9−1〕が温度変化を検知し、その履歴が保存されることが確認された。
この黄色に変色したシートをシート状の表示部材〔9−2〕とする。
(外力による構造色変化の評価)
この黄色のシート上を10kgfの力で押圧したところ、緑色に変色し、1日後においても当該緑色を維持していることが判明した。結果を表1にも示す。
以上により、この表示部材〔9−2〕が押圧力を検知し、その履歴が保存されることが確認された。
【0070】
〔実施例10:温度変化による構造色変化〕
(表示部材の製造例10)
親水処理した黒色のPETシートに、微粒子分散液〔10〕をバーコート法によって塗布・乾燥させて厚み4μmの球体含有層を形成させた。次いで、塩化ビニル樹脂5.8質量部、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤)1.5質量部、ケイ酸ナトリウム(発泡剤)0.4質量部、トルエン100質量部からなるマトリックス液を球体含有層の上から塗布し、球体間に塗布液を浸透させた後、乾燥させて前記球体含有層上に2μmの厚みを有する間質層を形成することにより、シート状の表示部材〔10−1〕を得た。この表示部材〔10−1〕は緑色を呈するものであった。マトリックスの屈折率を表1に示す。
(温度変化による構造色変化の評価)
この緑色のシートを100℃の環境下に2時間静置したところ、赤色に変色し、室温に戻した後においても当該赤色を維持していることが判明した。結果を表1にも示す。
以上により、この表示部材〔10−1〕が温度変化を検知し、その履歴が保存されることが確認された。
【0071】
〔実施例11:湿度変化による構造色変化〕
(表示部材の製造例11)
親水処理した黒色のPETシートに、微粒子分散液〔11〕をバーコート法によって塗布・乾燥させて厚み10μmの球体含有層を形成させた。次いで、ポリアクリル酸ナトリウム10wt%溶液を球体含有層の上から塗布し、球体間に塗布液を浸透させた後、乾燥させて前記球体含有層上に2μmの厚みを有する間質層を形成することにより、シート状の表示部材〔11〕を得た。この表示部材〔11〕は青色を呈するものであった。マトリックスの屈折率を表1に示す。
(湿度変化による構造色変化の評価)
この青色のシートを通常環境(湿度40%)から湿度100%の環境下に移動させて2時間静置したところ、赤色に変色し、その後、通常環境(湿度40%)に戻した後においても当該赤色を維持していることが判明した。結果を表1にも示す。
以上により、この表示部材〔11〕が湿度変化を検知し、その履歴が保存されることが確認された。
【0072】
〔比較例1:外力による構造色変化〕
(表示部材の製造例12)
親水処理した黒色のPETシートに、平均粒径202μmの単分散ポリスチレン微粒子「Polybead Polystyrene Microsphere 0.20μm」(Polysciences社製)の分散液をバーコート法によって塗布・乾燥させて厚み10μmの球体含有層を形成させた。次いで、ポリジメチルシリコーンジェル前駆体ポリマー溶液を球体含有層の上から塗布し、球体間に塗布液を浸透させ、乾燥させた後、50℃で3時間加熱処理し、固化させるポリジメチルシリコーン浸透工程を行った。このポリジメチルシリコーン浸透工程を4回繰り返し行うことにより、シート状の表示部材〔12〕を得た。この表示部材〔12〕は赤色を呈するものであった。マトリックスの屈折率、球体の平均粒径、CV値、屈折率を表1に示す。
(外力による構造色変化の評価)
この赤色のシートに引っ張り用持具を接着させ、10kgfの力で横方向に引っ張ったところ、緑色に変色したが、引張力を解除したところ、赤色に戻ることが判明した。結果を表1にも示す。
以上により、この表示部材〔12〕は引張力が加えられている間はそれを検知するが、その履歴は保存されないことが確認された。
【0073】
〔比較例2:外力による構造色変化〕
(表示部材の製造例13)
親水処理したガラス板に、平均粒径291nmのシリカ「KE−P30」(日本触媒社製)の分散液を滴下し、100℃で3時間乾燥させ、厚み0.5mmの球体含有層を形成した。次いで、N−イソプロピルアクリルアミド10g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3g、N,N−メチレンビスアクリルアミド0.4gを窒素置換したジオキサン5mLに溶解させた溶液を球体含有層の上から塗布し、球体間に塗布液を浸透させ、60℃で12時間重合処理し、続いて20%フッ酸に浸漬させてシリカを溶解させた後、水洗浄・乾燥させ、さらに水に漬けることにより、シート状の表示部材〔13〕を得た。この表示部材〔13〕は水温20℃の環境下において赤色を呈するものであった。マトリックスの屈折率、球体(水)の平均粒径、CV値、屈折率を表1に示す。
(温度変化による構造色変化の評価)
この赤色のシートが浸漬されている水槽の水温を60℃に上昇させたところ、青色に変色したが、水槽の水温を20℃に下降させたところ、赤色に戻ることが判明した。結果を表1にも示す。
以上により、この表示部材〔13〕は加温されている間はそれを検知するが、その履歴は保存されないことが確認された。
【0074】
なお、以上の実施例および比較例における表示部材の色の観察は、表示部材に垂直な正面方向から、目視にて行った。
【0075】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の表示部材は、例えば環境変動などを検知するセンサーなどのセンサー類、ディスプレイ、パネル、シート、不正開封防止ラベルなどのラベル類などとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の表示部材を構成する表示層の構成の一例を模式的に示す説明用断面図である。
【図2】本発明の表示部材の構成の他の一例を模式的に示す説明用断面図である。
【図3】本発明の表示部材を構成する表示層の構成の他の一例を模式的に示す説明用断面図である。
【図4】本発明の表示部材を構成する表示層の構成のさらに他の一例を模式的に示す説明用断面図である。
【符号の説明】
【0078】
10 表示層
12 球体
15 球体層
17 基板
18 粘着層
19 表面被覆層
22 空孔
25 球体層
D 層間隔
M マトリックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造色を発現する表示層を有する表示部材であって、
外部からの刺激を受けることにより不可逆の構造色変化を生じ、この構造色変化により得られる構造色が維持されることを特徴とする表示部材。
【請求項2】
前記表示層が、マトリックス中において、当該マトリックスと屈折率の異なる球体による球体層が複数、厚み方向に規則的に配されてなるものであることを特徴とする請求項1に記載の表示部材。
【請求項3】
外部からの刺激を受けることにより表示層における球体層の層間隔が変化するものであることを特徴とする請求項2に記載の表示部材。
【請求項4】
外部からの刺激が、外力の付与、温度変化または湿度変化であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表示部材。
【請求項5】
球体の屈折率とマトリックスの屈折率との差の絶対値が、0.02〜2.0であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の表示部材。
【請求項6】
球体の平均粒径が50〜500nmであることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれかに記載の表示部材。
【請求項7】
構造色は、下記式(1)で表される色であることを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれかに記載の表示部材。
式(1):λ=2nD(cosθ)
〔ただし、上記式(1)において、λは構造色のピーク波長、nは下記式(2)で表される表示層の屈折率、Dは球体層の層間隔、θは表示部材の垂線との観察角である。〕
式(2):n={na・c}+{nb・(1−c)}
〔ただし、上記式(2)において、naは球体の屈折率、nbはマトリックスの屈折率、cは表示層における球体の体積率である。〕
【請求項8】
シート状であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の表示部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−139799(P2009−139799A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318085(P2007−318085)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】