説明

表示駆動装置および電子機器

【課題】発熱部分の影響により表示領域内において温度ムラが生じても画像表示に異常をきたさないようにする。
【解決手段】表示装置140は、コレステリック液晶の配向状態を変更して表示を行う装置であり、温度センサ150Aが表示装置の下面中央に配置され、温度センサ150Fが表示装置の下面であって高温となる電子部品近傍に配置されている。画像表示を行う際には、温度センサ150Aと温度センサ150Fとの温度差に基づいて温度センサ150Fの位置と温度センサ150Fの周囲の表示画素の温度が求められる。そして、表示画素の温度と、表示画素の階調を定めた階調値に基づいて、表示画素に印加する電圧が制御されて表示画素が駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶性液晶を用いて画像表示を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ブックまたは電子ペーパー等においては、コレステリック液晶などの記憶性液晶が表示に用いられている。これはコレステリック液晶を表示に用いた場合、コレステリック液晶に電圧を印加しなくても表示を保持することができ、消費電力を抑えることができるという利点があるためである。しかしながら、コレステリック液晶を表示に用いた場合、表示の書き換えにおいて時間がかかるという問題がある。そこで書き換えに時間がかかるのを改善する技術として、特許文献1に記載された、いわゆるDDS(Dynamic Drive Scheme)という技術が考案されている。
【0003】
このDDSにおいては、コレステリック液晶の配向状態を変化させて表示を行う際、リセット期間、選択期間、保持期間、非選択期間をへて配向状態が決定される。具体的には、まずリセット期間においては、配向状態をホメオトロピック配向に遷移させる電圧がコレステリック液晶に印加され、次の選択期間においては、画素の部分をホメオトロピック配向にするか、過渡プレーナ配向にするかを選択する電圧(以下、この電圧を選択電圧と称する)が印加される。そして、次の保持期間においては、選択期間においてホメオトロピック配向とされた画素部分の配向状態を維持し、選択期間において過渡プレーナ配向とされた画素部分の配向状態をフォーカルコニック配向に遷移させる電圧が印加される。次に印加されている電圧が非選択期間において除去されると、保持期間においてホメオトロピック配向となっていた部分がプレーナ配向に遷移する。フォーカルコニック配向となった部分は黒が表示され、プレーナ配向となった部分は白が表示されるので、配向状態を制御することにより各種表示を行うことができる。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5748277号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、DDSにおいては、選択期間においてコレステリック液晶に印加する電圧に応じてその後の配向状態が決定されるが、配向状態は電圧を印加される時の温度に影響を受けることが明らかになっている。図19は、選択電圧とコレステリック液晶の反射率との関係の温度特性を模式的に示した図であり、横軸は選択電圧、縦軸は反射率を示している。反射率は、基準となる標準白色板の反射輝度を100%としたときの相対値である。この反射率が高い(白レベル)ということは、コレステリック液晶がプレーナ配向に近づいて白みが強くなっていることを意味し、反射率が低い(黒レベル)ということは、コレステリック液晶がフォーカルコニック配向に近づいて黒みが強くなっていることを意味する。そして、反射率が白レベルと黒レベルの間にあるということは、白と黒の間の中間階調(グレー)が表れていることを意味する。
【0006】
図19によれば、表示領域の温度が全体に渡ってムラなく24〜26℃の範囲内にあるときに、選択電圧Vを印加すると電圧が印加された部分の反射率は白レベルとなり、選択電圧として電圧Vを印加すると電圧が印加された部分の反射率は黒レベルとなって、白および黒の表示を正しく行うことができることがわかる(以下、黒を表示するときに印加する電圧を黒選択電圧、白を表示するときに印加する電圧を白選択電圧、選択電圧V,Vにより正しく白黒を表示できる温度範囲を温度マージン、選択電圧を設定する際に基準とした温度を基準温度と称する)。
【0007】
しかしながら、電子ブックまたは電子ペーパー等においては装置の構成や装置外部からの影響により、表示領域の一部の温度が高く(または低く)なる等、表示領域内において温度が一様ではなく温度にムラが生じる場合がある。例えば、表示領域の下方にCPU(Central Processing Unit)など熱を発生する電子部品が配置されている場合、その電子部品の発熱により、その電子部品近傍の液晶温度が他の表示領域より上昇する。ここで、電子部品の発熱により、例えば、電子部品近傍の液晶温度が29℃、他の表示領域の温度が24〜26℃の範囲内というように表示領域内において温度ムラが生じた場合、上述したように、選択電圧V,Vが設定されていると、24℃〜26℃の範囲内にある表示領域は白・黒の表示が正しく行われるものの、29℃となった部分においては、白を表示させるために電圧Vを選択電圧として印加しても、図19によれば電圧Vが印加された部分は白ではなく黒となってしまい、正しく表示が行えなくなるという問題が生じてしまう。
【0008】
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、その目的は、発熱部分の影響により表示領域内において温度ムラが生じても画像表示に異常をきたさないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために本発明は、複数の走査電極と複数のデータ電極との重なり位置に対応して設けられ、前記走査電極に走査電圧が印加され、かつ前記データ電極にデータ電圧が印加されたときに、前記データ電圧および前記走査電圧に応じた駆動電圧が印加される電気光学層を含む複数の表示画素を有する表示装置を駆動する表示駆動装置であって、前記表示装置において複数の表示画素が配置された表示領域の温度を検知する手段であって、前記表示領域において熱が加わる所定の第1位置の温度を検知する第1検知手段と、前記表示領域の温度を検知する手段であって、前記第1位置から所定の距離だけ離れた第2位置の温度を検知する第2検知手段と、前記第1検知手段で検知した温度と、前記第2検知手段で検知した温度との温度差に基づいて、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の温度を特定する温度演算手段と、前記温度演算手段により特定された前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の温度と、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の階調を定めた階調値に基づいて、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素を駆動する駆動手段とを有する表示駆動装置を提供する。
【0010】
本発明においては、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素は、所定の温度差で複数の領域に区分されており、前記駆動手段は、前記複数の領域の各領域内の表示画素の温度と、前記各領域内の表示画素の階調を定めた階調値に基づいて、前記各領域内の表示画素を駆動してもよい。
【0011】
また、本発明においては、前記表示領域のうち、前記第1位置と前記第1位置周囲以外の複数位置の温度を検知する温度検知手段と、前記第2検知手段により検知された温度と前記温度検知手段により検知された前記複数位置の温度との基準温度を求める基準温度演算手段を有し、前記駆動手段は、前記複数の表示画素のうち前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素を除く他の表示画素について、前記基準温度演算手段により求められた基準温度と前記他の表示画素の階調を定めた階調値に基づいて、前記他の表示画素を駆動してもよい。
【0012】
また、本発明においては、前記複数の表示画素により表される画像中において文字を有する文字領域にある表示画素を特定する文字領域特定手段を有し、前記駆動手段は、前記文字領域特定手段により特定された表示画素については、前記文字領域内のいずれかの表示画素の温度と、前記文字領域内の表示画素の階調を定めた階調値に基づいて、前記文字
領域内の表示画素を駆動してもよい。
【0013】
また、本発明においては、前記基準温度は、前記第2検知手段により検知された温度と前記温度検知手段により検知された前記複数位置の温度との平均の温度であってもよい。
また、本発明においては、前記基準温度は、前記第2検知手段により検知された温度と前記温度検知手段により検知された前記複数位置の温度のうちの最も低い温度であってもよい。
【0014】
また、本発明は、複数の走査電極と複数のデータ電極との重なり位置に対応して設けられ、前記走査電極に走査電圧が印加され、かつ前記データ電極にデータ電圧が印加されたときに、前記データ電圧および前記走査電圧に応じた駆動電圧が印加される電気光学層を含む複数の表示画素を有する表示装置を駆動する表示駆動装置であって、前記表示領域の温度を検知する手段であって、前記表示装置において複数の表示画素が配置された表示領域の所定の第1位置から所定の距離だけ離れた第2位置の温度を検知する温度検知手段と、前記第1位置へ熱を加える発熱部から放出される熱量を予め記憶し、前記表示装置の駆動時間と、記憶した熱量と、前記温度検知手段で検知した温度とに基づいて、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の温度を特定する温度演算手段と、前記温度演算手段により特定された前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の温度と、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の階調を定めた階調値に基づいて、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素を駆動する駆動手段とを有する表示駆動装置を提供する。
【0015】
また、本発明においては、前記電気光学層の材料は、最終的な表示状態において、分子配向が異なる複数の最終配向状態を呈する液晶材料であり、前記駆動手段は、前記分子配向の配向状態を前記最終配向状態とは異なる過渡配向状態に遷移させた後、前記最終分子配向状態を選択期間で選択する駆動方式を用いて、前記複数の表示画素を駆動してもよい。
また、本発明においては、前記液晶材料は、コレステリック液晶を用いたものであってもよい。
【0016】
また、本発明は、複数の走査電極と複数のデータ電極との重なり位置に対応して設けられ、前記走査電極に走査電圧が印加され、かつ前記データ電極にデータ電圧が印加されたときに、前記データ電圧および前記走査電圧に応じた駆動電圧が印加される電気光学層を含む複数の表示画素と、前記複数の表示画素が配置された表示領域の温度を検知する手段であって、前記表示領域において熱が加わる所定の第1位置の温度を検知する第1検知手段と、前記表示領域の温度を検知する手段であって、前記第1位置から所定の距離だけ離れた第2位置の温度を検知する第2検知手段と、前記第1検知手段で検知した温度と、前記第2検知手段で検知した温度との温度差に基づいて、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の温度を特定する温度演算手段と、前記温度演算手段により特定された前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の温度と、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の階調を定めた階調値に基づいて、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素を駆動する駆動手段とを有する電子機器を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[実施形態の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器100のハードウェア構成の概略図である。電子機器100は、文字や図形、写真等の画像の表示を行う薄い板状の形状をした電子機器であり、制御回路110、電源回路120、表示体駆動回路130、表示装置140、温度センサ150A〜150F、インターフェース160を備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0018】
(表示装置140)
表示装置140は画像の表示を行う装置である。この表示装置140は、透明電極が設けられた2枚のガラス基板によって電気光学層を上下から挟み込んで封止した装置であり、電気光学層としては、電力を供給しなくとも配向状態を維持できるコレステリック液晶を含む液晶層を有している。図2(a)〜(c)は、表示装置140の断面およびコレステリック液晶の配向状態を示した図である。図2(a)〜(c)に示したように、表示装置140は、上側透明電極1414を有する上側ガラス基板1412、下側透明電極1415を有する下側ガラス基板1413、コレステリック液晶層1411、光吸収層1416を有している。この表示装置140においては、コレステリック液晶層1411は上側ガラス基板1412と下側ガラス基板1413との間に挟まれて封止されている。また、下側ガラス基板1413の下には光吸収層1416が配置されている。
【0019】
また、上側透明電極1414と下側透明電極1415には、コレステリック液晶に電圧を印加するための走査線とデータ線とが設けられている。図3は、この走査線とデータ線とを模式的に示した図である。表示装置140の一方のガラス基板にはn桁の走査線Y、Y、…、Yが設けられており、もう一方のガラス基板には走査線に対して直交する方向にm列のデータ線X、X、…、Xが設けられている。これにより表示装置140においては、n×mのマトリクスが形成されている(nおよびmは正の整数)。
【0020】
平面視した時に走査線とデータ線とが重なる位置で走査線とデータ線とに挟まれるコレステリック液晶には、走査線に印加される電圧(走査電圧)とデータ線に印加される電圧(データ電圧)との差に相当する電圧(以下、この電圧を「駆動電圧」という)が印加される。走査線とデータ線とに挟まれたコレステリック液晶の配向状態は駆動電圧に応じて遷移する。つまり、走査線とデータ線とが重なる位置にあるコレステリック液晶の各々が画像を形成する画素の役割を担うこととなる。以降の説明では、この走査線とデータ線とが重なる位置において個別に配向状態を遷移させられるコレステリック液晶の各々を「電気光学素子141」と称する。
【0021】
図2(a)はプレーナ配向(以下、「P配向」という)、図2(b)はフォーカルコニック配向(以下、「F配向」という)、図2(c)はホメオトロピック配向(以下、「H配向」という)を模式的に示した図である。P配向状態では、上側ガラス基板1412側から入射した光がP配向状態にあるコレステリック液晶層1411で反射されて白が表示される。また、F配向状態では、上側ガラス基板1412側から入射した光がF配向状態にあるコレステリック液晶層1411を透過する。コレステリック液晶層1411を透過した光は光吸収層1416に到達して吸収されるため、黒が表示される。また、コレステリック液晶に印加する電圧を制御することにより、P配向状態とF配向状態を混在させて中間階調を表示することも可能である。また、H配向状態では、コレステリック液晶の分子構造は螺旋構造が崩れた状態になり、上側ガラス基板1412側から入射した光はコレステリック液晶を透過する。なお、H配向は安定状態ではないためコレステリック液晶に電圧が印加されている状態においてのみ存在する。
【0022】
このように、コレステリック液晶の配向状態を制御することにより、表示装置140では白および黒の表示を行うことができるが、本実施形態においてはコレステリック液晶の配向状態をDDS(Dynamic Drive Scheme)の駆動方式により変更する。
【0023】
図4は、DDSによりコレステリック液晶の配向状態を制御するときの電圧の印加期間を示した図である。DDSによりコレステリック液晶の配向状態を変更するときは、電圧の印加期間は図4に示したように非選択期間(Non-selection phase)、リセット期間(Preparation phase)、選択期間(Selection phase)、保持期間(Evolution phase)の4つの期間に分けられる。そして、走査線Y〜Yに対して1ラインづつ順番に選択期間
が割り当てられる(図4においては走査線Y〜Yのみ図示)。
【0024】
図5は、DDSにおけるコレステリック液晶の配向状態の遷移を示した図である。まずリセット期間においては、P配向またはF配向にある電気光学素子141をH配向(過渡配向状態)にする電圧(以下、リセット電圧という)が電気光学素子141に印加される。これにより、電気光学素子141はH配向に遷移する。
【0025】
次に選択期間においては、コレステリック液晶の表示状態を要求される表示状態(2階調であれば白または黒であり、最終的な表示状態)に対応した配向状態(最終配向状態)とするための選択電圧が印加される。具体的には、白を表示する場合にはH配向の配向状態を維持する電圧が電気光学素子141に印加され、黒を表示する場合には配向状態をH配向とP配向の中間的な状態である過渡プレーナ配向(以下、「TP配向」という)にする電圧が電気光学素子141に印加される。これにより、電気光学素子141は、要求される表示状態に対応してH配向またはTP配向のいずれかに遷移する。
【0026】
次に保持期間においては、要求される表示状態を維持するための電圧(以下、「保持電圧」という)が印加される。保持電圧が印加されると、選択期間においてH配向となった電気光学素子141はH配向状態が維持され、TP配向となった電気光学素子141はF配向に遷移する。
【0027】
次に非選択期間において保持電圧が除去されると、保持期間においてH配向であった電気光学素子141はP配向に遷移して白を表示し、保持期間においてF配向であった電気光学素子141はF配向を維持して黒を表示する。なお、コレステリック液晶は双安定性を有する材料であるため、電圧を印加しない状態であってもP配向またはF配向を維持することができる。
【0028】
次に、配向状態を遷移させるときに電気光学素子141に印加する電圧の波形を説明する。図6は、DDSにおいて走査線に印加される電圧の波形、データ線に印加される電圧の波形、および駆動電圧の波形を示した図である。図6に示したように本実施形態においては、コレステリック液晶の劣化を防ぐために駆動電圧として正負の電圧が交互に電気光学素子141に印加される。なお、図6に示されている電圧Vは、黒を表示する時に駆動電圧として印加する黒選択電圧Vであり、電圧Vは、白を表示する時に駆動電圧として印加する白選択電圧Vである。
【0029】
まず、画素を白とする場合、画素に対応するデータ線の電圧(以下、「データ電圧VSEG」という)は、選択期間の前半においては白を表示するための白選択電圧V、選択期間の後半においては黒を表示するための黒選択電圧Vにされる。ここで、VとVの大小関係は、V>Vである。このとき画素に対応する走査線の電圧(以下、「走査電圧VCOM」という)は、選択期間の前半においてはゼロ、後半においては(V+V)にされる。これにより、選択期間において画素に対応する電気光学素子141に印加される駆動電圧(データ電圧VSEG−走査電圧VCOM)は、選択期間の前半においてはV、後半においては−Vとなり、選択期間においてはH配向が維持される。
【0030】
一方、非選択期間においては画素の走査電圧VCOMは(V+V)/2にされる。なお、非選択期間においては、データ線に白を表示させるための波形と黒を表示させるための波形のいずれが印加されようとも、H配向となっている電気光学素子141に印加される駆動電圧(データ電圧VSEG−走査電圧VCOM)の非選択期間全体の実効値は、(V−V)/2となり、電気光学素子141はH配向からP配向に遷移して白が表示される。
【0031】
また、黒を表示する場合、画素に対応するデータ線の電圧は、選択期間の前半においては黒を表示するための黒選択電圧Vにされ、選択期間の後半においては白を表示するための白選択電圧Vにされる。このとき画素に対応する走査線の電圧は、選択期間の前半においてはゼロ、後半においては(V+V)にされる。これにより、選択期間において画素に対応する電気光学素子141に印加される駆動電圧(データ電圧VSEG−走査電圧VCOM)は、選択期間の前半においてはV、後半においては−Vとなり、選択期間においてはTP配向となる。そして、TP配向となった電気光学素子141は、保持期間においてF配向に遷移して黒が表示される。
【0032】
また、ある画素を中間階調とする場合、画素に対応するデータ線には、選択期間の前半において黒選択電圧Vと白選択電圧Vが印加され、また、選択期間の後半においても黒選択電圧Vと白選択電圧Vが印加される。これにより、選択期間において画素に対応する電気光学素子141に印加される駆動電圧(データ電圧VSEG−走査電圧VCOM)は、選択期間の前半においてはVの後でVとなり、後半においては−Vの後で−Vとなり、非選択期間となった時にP配向とF配向が混在して中間階調が表示される。なお、選択期間の前半と後半においては、白選択電圧Vが印加される期間と、黒選択電圧Vが印加される期間は、画素を白または黒にする時と比較すると、図6に示したように異なっており、黒選択電圧Vと白選択電圧Vのパルス幅を制御(PWM(Pulse Width Modulation)制御)してコレステリック液晶に印加される電圧の実効値を制御することにより、階調を変えることができる。
【0033】
(温度センサ150)
温度センサ150A〜150F(以下、各々を区別する必要のない場合は単に温度センサ150と称する)は温度を測定するためのセンサであり、温度センサ150は、図7に示したようにサーミスタ151と抵抗152とを有している。サーミスタ151の一端は接地されており、もう一端は抵抗152の一端に接続されている。また、抵抗152のもう一端は電圧源に接続されている。サーミスタ151は温度の変化に応じて抵抗値が変化する素子であるため、図7に示した温度センサ150において温度変化に応じてサーミスタ151の抵抗値が変化すると、この変化に応じてサーミスタ151と抵抗152との間の接続点153の電圧値が変化する。即ち、接続点153の電圧値はサーミスタ151の温度変化に応じて変化するため、接続点153の電圧値を検知することにより、温度センサ150が設けられている部分の温度を知ることができる。
【0034】
そして、温度センサ150A〜150Fは、光吸収層1416の下に配置されている。図8は表示装置140を上側ガラス基板1412側から見た平面図であるが、本実施形態においては、6つの温度センサ150A〜150Fが光吸収層1416の下面に配置されており、図8に示したように、温度センサ150Aは光吸収層1416の中央に配置され、温度センサ150B〜150Eは矩形の表示領域の4隅の各々に配置されている。
【0035】
また、図9は板状の形状をした電子機器100の断面の一部を模式的に示した図であるが、電子機器100においては、制御回路110、電源回路120、表示体駆動回路130等の各種回路が配置された基板170が表示装置140の下面に配置され、これらの回路の中においては他の部分と比較して高温となる電子部品171がある。本実施形態においては、図9に示したように温度センサ150Fは、CPU、電源回路、FPGA等、熱を発生する電子部品171と光吸収層1416との間に配置されている。
【0036】
(インターフェース160)
インターフェース160は、表示装置140に表示されている表示の書き換えを行うための書き換えキーなど、電子機器100を操作するためのキーを有しており、キーが操作されるとキーが操作されたことを示す信号を制御回路110へ出力する。
また、インターフェース160は、他のコンピュータ装置と通信を行う通信インターフェース機能を備えている。インターフェース160は、他のコンピュータ装置から送信された各種データ(例えば、画像を表す画像データ等)を受信し、受信したデータをCPU111へ出力する。
【0037】
(制御回路110)
制御回路110は、表示体駆動回路130を制御する回路であり、CPU(Central Processing Unit)111、ROM(Read Only Memory)112、RAM(Random Access Memory)113、AD(Analog Digital)コンバータ114、表示体駆動制御回路115を有している。CPU111には、ROM112、RAM113、表示体駆動制御回路115、電源回路120が接続されている。CPU111はROM112に記憶されている制御プログラムに従って動作し、表示体駆動制御回路115を制御する。また、CPU111には、ADコンバータ114、インターフェース160が接続されている。CPU111は、インターフェース160から入力される信号や、ADコンバータ114から入力される信号に基づいて表示体駆動制御回路115を制御する。また、RAM113には、他のコンピュータ装置からインターフェース160を介して受信された画像データが記憶される。
【0038】
ADコンバータ114はアナログ信号をデジタル信号に変換する回路であり、表示装置140に配置されている複数の温度センサ150の各接続点153に接続されている。ADコンバータ114は、接続点153の電圧値をデジタル値に変換してCPU111へ出力する。
【0039】
表示体駆動制御回路115は、CPU111の制御の下、電源回路120や表示体駆動回路130を制御する回路である。表示体駆動制御回路115は、図示せぬRAMを有しており、このRAMには、画素値マップMAP1と温度マップMAP2とが設けられている。この画素値マップMAP1は、マトリクス状に配置されている電気光学素子141の各々に対応して図10に示したようにn×mのマトリクス状に画素値格納領域が設けられており、各画素値格納領域にはビットマップデータが表すビットマップ画像の各画素の画素値(画素の濃度値)が格納される。例えば、表示装置140が、黒、グレー、白というように3階調の表示を行う場合、本実施形態に係るビットマップデータにおいては、ビットマップ画像の各画素の画素値は、黒=「0」、グレー=「1」、白=「2」というように設定される。そして、各画素の画素値がビットマップデータに応じて画素値格納領域に格納される。例えば、ビットマップデータが表すビットマップ画像の1行1列目の画素の画素が黒(画素値=0)である場合、1行1列目の画素に対応した画素値格納領域には、画素値として「0」が格納される。また、1行2列目の画素の画素がグレー(画素値=1)である場合、1行2列目の画素に対応した画素値格納領域には、画素値として「1」が格納される。また、1行3列目の画素の画素が白(画素値=2)である場合、1行3列目の画素に対応した画素値格納領域には、画素値として「2」が格納される。
【0040】
また、温度マップMAP2は、画素値マップMAP1と同様に、マトリクス状に配置されている電気光学素子141の各々に対応して図11に示したようにn×mのマトリクス状に温度格納領域が設けられており、各温度格納領域には各電気光学素子141の温度を表す値が格納される。例えば、1行1列目の電気光学素子141の温度が「24℃」である場合、1行1列目(YとXの交差位置)の電気光学素子141に対応した温度格納領域には、図11に示したように温度値として「24」が格納される。また、3行1列目(YとXの交差位置)の電気光学素子141の温度が「25℃」である場合、3行1列目の電気光学素子141に対応した温度格納領域には、図11に示したように温度値として「25」が格納される。
【0041】
また、表示体駆動制御回路115は、図12に示したテーブルTBを記憶している。テーブルTBは、「温度」フィールド、「電圧値」フィールド、「出力値」フィールドを有しており、「温度」フィールドには温度を表す数値が格納され、「電圧値」フィールドには、中間階調を表示する時に電気光学素子141に印加する選択電圧の実効電圧を表す値が格納されている。また、「出力値」フィールドには、黒選択電圧Vを「0」、白選択電圧Vを「255」として選択電圧を正規化した時の値が格納されている。
例えば、本実施形態において、基準温度が25℃として選択期間の長さ、保持期間の電圧、保持期間の長さを設定したときの選択電圧とコレステリック液晶の反射率との関係の温度特性が図13に示した関係にある場合、コレステリック液晶の温度が25℃の時にグレーを表示するために印加する選択電圧は、図13に示した関係からV250(250)となるため、テーブルTBにおいて温度「25℃」のレコードの電圧値のセルには、電圧値「V250(250)」が格納され、温度「25℃」のレコードの出力値のセルには、電圧値を正規化した値である「50」が格納される。(なお、(250)は、25.0℃を基準にしているという意味である。)
また、上記の場合と同様に基準温度が基準温度が25℃として選択期間の長さ、保持期間の電圧、保持期間の長さを設定したときに例えば発熱部近傍のコレステリック液晶の温度が26℃となった場合、この発熱部近傍においてグレーを表示するために印加する選択電圧は、図13に示した関係からV260(250)となるため、テーブルTBにおいて温度「26℃」のレコードの電圧値のセルには、電圧値「V260(250)」が格納され、温度「26℃」のレコードの出力値のセルには、電圧値を正規化した値である「100」が格納される。
【0042】
そして、表示体駆動制御回路115は、画素値マップMAP1に格納された画素値を正規化してデータ電極駆動回路131へ出力する。例えば、ある画素の画素値が黒を表す「0」である場合には、この画素値を正規化して「0」としてデータ電極駆動回路131へ出力し、画素値が白を表す「1」である場合には、この画素値を正規化して「255」としてデータ電極駆動回路131へ出力する。また、表示体駆動制御回路115は、ある画素の画素値がグレーを表す「1」である場合には、温度マップMAP2において、この画素の位置と同じ位置に格納されている温度値を読み出す。そして、読み出した温度値が格納されているレコードを検索し、検索されたレコードの出力値のセルに格納されている出力値をデータ電極駆動回路131へ出力する。例えば、図10に示したように3行2列目の画素の画素値が「1」であり、図11に示したように3行2列目の画素の温度が25℃である場合、テーブルTBにおいて温度値フィールドに25℃が格納されているレコードが検索され、このレコードの出力値のセルに格納されている値「50」がデータ電極駆動回路131へ出力される。
【0043】
(電源回路120)
電源回路120は、データ電極駆動回路131に接続されたデータ電極用電源回路121と、走査電極駆動回路132に接続された走査電極用電源回路122とを有している。データ電極用電源回路121は、図6に示した黒選択電圧Vと、白選択電圧Vとを生成する回路であり、生成した電圧をデータ電極駆動回路131へ供給する。また、走査電極用電源回路122は、リセット電圧、保持電圧、選択期間や非選択期間において走査線に印加する電圧(図6に示した0V、V+V、(V+V)/2))等を生成する回路であり、生成した電圧を走査電極駆動回路132へ供給する。
【0044】
(データ電極駆動回路131、走査電極駆動回路132)
走査電極駆動回路132は、走査線に電圧を印加する回路である。走査電極駆動回路132は、表示体駆動制御回路115の制御の下、リセット電圧や保持電圧、選択期間や非選択期間において走査線に印加する電圧等、走査電極用電源回路122から供給された電圧を選択して出力し、図6に示した波形の電圧を走査線に印加する。
【0045】
また、データ電極駆動回路131は、データ線に電圧を印加する回路である。データ電極駆動回路131は、表示体駆動制御回路115から送られる出力値に応じて、データ電極用電源回路121から供給された電圧のいずれかを選択して出力し、各データ線に図6示した波形の電圧を印加する。
具体的には、例えば、走査線Yの1行分について正規化された画素値が表示体駆動制御回路115から出力され、データ線Xの列については、画素値として黒を表す「0」が入力された場合、データ電極駆動回路131は、選択期間の前半においては黒を表示するための黒選択電圧V、選択期間の後半においては白を表示するための白選択電圧Vをデータ線Xに印加する。
また、例えば、データ線Xの列について、画素値として白を表す「255」が入力された場合、データ電極駆動回路131は、選択期間の前半においては白を表示するための白選択電圧V、選択期間の後半においては黒を表示するための黒選択電圧Vをデータ線Xに印加する。
また、例えば、データ線Xの列について、画素値として中間階調を表す「100」が入力された場合、データ電極駆動回路131は、選択期間の前半においては、黒を表示するための黒選択電圧Vと、白を表示するための白選択電圧Vとをデータ線Xに印加し、選択期間の後半においても、黒を表示するための黒選択電圧Vと、白を表示するための白選択電圧Vとをデータ線Xに印加する。なお、中間階調を表す画素値に対応して電圧を印加する際、黒選択電圧Vの印加期間と白選択電圧Vの印加期間は、入力された出力値によりその印加期間が制御され、値が小さいほど黒選択電圧Vの印加期間が長くなり、値が大きくなるにつれて、黒選択電圧Vの印加期間が短くなるとともに白選択電圧Vの印加期間が長くなる。
【0046】
[実施形態の動作]
次に本実施形態に係る電子機器100において画像表示を行う時の動作について説明する。まず、RAM113に格納された画像データが表す画像の表示を指示する操作をユーザがインターフェース160において行うと、CPU111は、画素値マップMAP1と温度マップMAP2の各領域に格納されている値を消去し、画素値マップMAP1と温度マップMAP2を初期化する(図14:ステップSA1)。
【0047】
次にCPU111は、ADコンバータ114から出力されているデジタル値、即ち、温度センサ150で測定された温度を表す値を取得し、取得した値をRAM113に格納する。本実施形態では、6つの温度センサが表示装置140に配置されているため、各温度センサ150A〜150Fに対応した6つのデジタル値がRAM113に格納される。CPU111は、RAM113にデジタル値を格納すると、格納したデジタル値を温度の値に変換する(ステップSA2)。なお、デジタル値を温度値に変換する際には、デジタル値と温度値との対応関係を表したテーブルを用いてもよいし、予め記憶した数式に基づいてデジタル値を温度値に変換してもよい。
【0048】
次にCPU111は、表示領域の中央と4隅にある温度センサ150A〜150Eの5つの温度値の平均値(基準値)を算出する。CPU111は温度の平均値を算出すると、この平均値を基準温度としてRAM113に格納すると共に、この平均値を一旦、温度マップの全ての領域に格納する(ステップSA3)。
【0049】
次にCPU111は、温度センサ150Fに最も近い温度センサ150Aの温度値を、温度マップMAP2の温度格納領域に格納する(ステップSA4)。具体的には、例えば、温度センサ150Aが、走査線Yaと、データ線Xbとの交差位置(a,bはいずれも整数)にあり、温度センサ150Aで検知した温度が「25℃」である場合、CPU111は、走査線Yaと、データ線Xbとの交差位置に対応した温度格納領域から所定範囲内
にある温度格納領域A(図15)に温度の値「25」を格納する。
また、CPU111は、温度センサ150Fの温度値を、温度マップMAP2の温度格納領域に格納する(ステップSA5)。具体的には、例えば、温度センサ150Fが、走査線Yaと、データ線Xc(ここでcは、bより小さな整数)の交差位置にあり、温度センサ150Fで検知した温度が「28℃」である場合、CPU111は、走査線Yaと、データ線Xcとの交差位置に対応した温度格納領域から所定範囲内にある温度格納領域B(図15)に「28」を格納する。
【0050】
次に、CPU111は、温度センサ150Aの位置に対応した温度格納領域Aに格納された温度値と、温度センサ150Fの位置に対応した温度格納領域Bに格納された温度値との差を求める。そして、求めた温度差に基づいて、温度センサ150Aの位置から温度センサ150Fの位置の間にある各電気光学素子141の温度を求め、求めた温度を温度格納領域Aから温度格納領域Bの間にある各温度格納領域に格納する(ステップSA6)。
【0051】
具体的には、上述したように、温度センサ150Aの温度が「25℃」、温度センサ150Fの温度が「28℃」である場合、温度センサ150Aの温度と温度センサ150Fとの間の画素は、25℃〜28℃の間の温度となる。CPU111は、温度として「25」が格納された温度格納領域Aと、温度として「28」が格納された温度格納領域Bとの間にある温度格納領域を、所定の温度で区切って複数の区間に分割する。ここで、1つの区間の温度を1℃とする場合、図16に示したように、温度センサ150Aと温度センサ150Fとの間は、温度センサ150Fの28℃の領域を中心として、27℃の領域、26℃の領域というように分割される。CPU111は、この分割された領域内にある画素に対応した温度格納領域に、各領域の温度を格納する。例えば、図17に示した27℃の温度領域に対応した温度格納領域Cには温度として「27」が格納され、26℃の温度領域に対応した温度格納領域Dには温度として「26」が格納される。
【0052】
CPU111は、各温度領域への温度値の格納が終了すると、RAM113に記憶されている画像データが表すn行×m列の画像のビットマップデータを生成する。そして、生成したビットマップデータを表示体駆動制御回路115へ出力する。表示体駆動制御回路115は、CPU111から出力されたビットマップデータを受け取ると、受け取ったビットマップデータが表す画像の各画素の画素値を画素値マップMAP1に記憶させる(ステップSA7)。そして、表示体駆動制御回路115において画素値の画素値マップMAP1への格納が終了すると、ビットマップデータが表す画像の表示が表示装置140において行われる(ステップSA8)。
【0053】
以下、画像の表示について各画素について着目して具体的に説明する。まずリセット電圧が図4に示したリセット期間において走査電極駆動回路132から出力されて走査線Yに印加され、リセット期間が終了すると選択期間に移行する。この選択期間においては、画素値マップMAP1に格納されている1行分のデータが正規化されて表示体駆動制御回路115からデータ電極駆動回路131へ出力され、データ電極駆動回路131に読み込まれる。
【0054】
具体的に、Ya行目のデータを正規化して出力する場合を例にして説明すると、Ya行目のデータにおいて、1列目(X)の画素値が白を表す「2」である場合、この値が正規化されて「255」が1列目の画素値のデータとしてデータ電極駆動回路131へ出力される。また、3列目(X)の画素値が黒を表す「0」である場合、この値が正規化されて「0」が3列目の画素値のデータとしてデータ電極駆動回路131へ出力される。
【0055】
また、ある列の画素値が中間階調を表す「1」である場合、温度マップMAP2のこの
列のYa行目の温度格納領域に格納されている温度値が読み出される。そして、この読み出した温度値が格納されているレコードがテーブルTB1において検索され、検索されたレコードの出力値のセルに格納されている出力値がデータ電極駆動回路131へ出力される。
例えば、ある画素の画素値が「1」であり、この画素の温度を格納した温度格納領域が図17に示した温度格納領域D内にある場合、この画素の温度は26℃であるため、温度値フィールドに26℃が格納されているレコードが検索され、このレコードの出力値のセルに格納されている出力値「100」がデータ電極駆動回路131へ出力される。
また、ある画素の画素値が「1」であり、この画素の温度を格納した温度格納領域が図17に示した温度格納領域C内にある場合、この画素の温度は27℃であるため、温度値フィールドに27℃が格納されているレコードが検索され、このレコードの出力値のセルに格納されている出力値「150」がデータ電極駆動回路131へ出力される。
【0056】
そして、走査線Yaの1行分のデータをデータ電極駆動回路131が受け取ると、走査線Yaにおいては、図6に示した選択期間走査電圧波形の電圧が走査電極駆動回路132から印加される。
一方、データ線X、X、…、Xにおいては、表示体駆動制御回路115から出力された出力値に応じてデータ電極駆動回路131から電圧が印加される。例えば、Ya行目の1列目の出力値が上述したように白を表す「255」である場合、データ線Xにおいては、図6に示した、選択期間の前半においては白選択電圧V、選択期間の後半においては黒選択電圧Vという波形の電圧が印加される。これにより、走査線Yaとデータ線Xとが交差する位置の電気光学素子141には、選択期間の前半においてはV、後半においては−Vという電圧が印加され、コレステリック液晶がH配向となる。
【0057】
また、Ya行目の3列目の出力値が上述したように黒を表す「0」である場合、データ線Xにおいては、図6に示した、選択期間の前半においては黒選択電圧V、選択期間の後半においては白選択電圧Vという波形の電圧が印加される。これにより、走査線Yaとデータ線Xとが交差する位置の電気光学素子141には、選択期間の前半においてはV、後半においては−Vという電圧が印加され、コレステリック液晶がTP配向となる。
【0058】
また、上述したようにYa行目で温度格納領域Dの領域に属する画素の出力値が「100」、即ち中間階調を表す数値である場合、この画素に対応したデータ線においては、出力値の値に応じて、選択期間の前半において黒選択電圧Vと白選択電圧Vの印加期間がPWM制御により調整されて印加され、また、出力値の値に応じて、選択期間の後半においても黒選択電圧Vと白選択電圧Vの印加期間がPWM制御により調整されて印加される。そして、選択期間において画素に対応する電気光学素子141に印加される駆動電圧(データ電圧VSEG−走査電圧VCOM)は、選択期間の前半においてはVの後でVとなり、後半においては−Vの後で−Vとなって、電気光学素子141においてはH配向とTP配向が混在することとなる。なお、ここで、電気光学素子141に印加される駆動電圧の実効値は、図13における電圧V260である。
【0059】
また、上述したようにYa行目で温度格納領域Cの領域に属する画素の出力値が「150」、即ち中間階調を表す数値である場合、この画素に対応したデータ線においては、出力値の値に応じて、選択期間の前半において黒選択電圧Vと白選択電圧Vの印加期間がPWM制御により調整されて印加され、また、出力値の値に応じて、選択期間の後半においても黒選択電圧Vと白選択電圧Vの印加期間がPWM制御により調整されて印加される。これにより、電気光学素子141においてはH配向とTP配向が混在することとなる。なお、ここで、電気光学素子141に印加される駆動電圧の実効値は、図13における電圧V270である。
【0060】
次に、選択期間が終了すると保持期間に移行し、保持期間においては保持電圧がコレステリック液晶に印加される。これにより、配向状態がH配向となっている部分においては、コレステリック液晶の配向状態がH配向となっているのでH配向が保たれ、配向状態がTP配向となっている部分においては、配向状態がTP配向となっているのでF配向に移行する。
【0061】
そして、この後、保持期間から非選択期間に移行すると、H配向となっている部分においては、図6に示した非選択期間走査電圧波形の電圧が走査電極駆動回路132から印加されて保持電圧が除去される。すると、保持期間においてH配向であった部分はP配向に遷移して白を表示し、保持期間においてF配向であった部分はF配向を維持して黒を表示する。即ち、駆動電圧として黒選択電圧Vが印加された電気光学素子141は、黒を表示し、駆動電圧として白選択電圧Vが印加された電気光学素子141は、白を表示する。
【0062】
また、黒選択電圧V1と白選択電圧V2が印加された電気光学素子141は、P配向とF配向が混在するため中間階調が表示される。なお、中間階調を表示する電気光学素子141は、上述したように、印加される駆動電圧の実効値が電気光学素子141の温度に応じて制御されるため、表示装置140の表示領域内において図16に示したように温度ムラが生じても、画素が白または黒になることがなく中間階調が正しく表示される。
【0063】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。
【0064】
上述した実施形態においては、CPU111が、ビットマップデータが表すビットマップ画像を画像解析し、画像中において文字のある文字領域を抽出してもよい。そして、この文字領域内にある画素を特定し、この特定された画素に対応する画素値格納領域に、文字領域内の画素であることを示す文字領域情報を画素値と合わせて格納するようにしてもよい。そして、画素値マップMAP1に格納されている画素値を正規化してデータ電極駆動回路131へ出力する際、画素値マップMAP1に格納されている画素値が中間階調を表す画素値である場合、文字領域情報が画素値格納領域にあるか否かに応じて、データ電極駆動回路131へ出力する画素値を異ならせてもよい。
【0065】
例えば、温度センサ150A〜150Eで求めた温度の平均値が「25℃」であるときに、文字領域外にある中間階調の画素の画素値を正規化してデータ電極駆動回路131へ出力する場合、中間階調の画素の温度が26℃であると、表示体駆動制御回路115は、温度値フィールドに26℃が格納されているレコードを検索し、このレコードの出力値のセルに格納されている出力値「100」をデータ電極駆動回路131へ出力する。
一方、図18に示したように文字領域が複数の温度領域にかかる場合、文字領域内の中間階調の画素の画素値を正規化してデータ電極駆動回路131へ出力する際には、いずれかの一の温度領域の温度が格納されているレコードをテーブルTBにおいて検索し、このレコードの出力値のセルに格納されている出力値をデータ電極駆動回路131へ出力してもよい。
【0066】
例えば、図18に示した例の場合、「あ」と「い」の文字領域については28℃が格納されているレコードをテーブルTBにおいて検索し、文字領域内にある中間階調の画素の画素については、このレコードの出力値のセルに格納されている出力値を出力する。また、「う」の文字領域については27℃が格納されているレコードをテーブルTBにおいて
検索し、文字領域内にある中間階調の画素の画素については、このレコードの出力値のセルに格納されている出力値を出力する。
【0067】
一方、図18に示した「え」のように文字領域が複数の温度領域に跨っている場合、跨っているいずれかの温度領域の温度が格納されているレコードをテーブルTBにおいて検索し、文字領域内にある中間階調の画素の画素については、このレコードの出力値のセルに格納されている出力値を出力する。例えば、27℃の温度領域と26℃の温度領域に跨っている「え」の文字領域については、27℃が格納されているレコードをテーブルTBにおいて検索し、文字領域内にある中間階調の画素の画素については、このレコードの出力値のセルに格納されている出力値を出力する。また、26℃の温度領域と25℃の温度領域に跨っている「お」の文字領域については、26℃が格納されているレコードをテーブルTBにおいて検索し、文字領域内にある中間階調の画素の画素については、このレコードの出力値のセルに格納されている出力値を出力する。この構成によれば、中間階調の画素の画素値を正規化してデータ電極駆動回路131へ出力する際に文字領域内にある中間階調の画素の画素値については、文字領域内で温度差があっても同じ値が出力される。つまり、表示装置140においては、文字は複数の画素を組み合わせて表示されるが、この構成においては、文字を構成する画素が中間階調で表示される場合、各画素の温度が異なっても、中間階調を表示するために電気光学素子141に印加される電圧は、文字領域内においては一定となる。
【0068】
電子機器100においては、発熱部分、発熱部分の単位時間あたりの発熱量などは、設計段階において、実験を行うことにより予め知ることができる。このため、上述した実施形態においては、発熱部分の温度を算出する数式を実験結果から予め定めてもよい。そして、温度センサ150Fを設けず、発熱する電子部品近傍の表示領域の温度を予め定めた数式から算出し、この算出した温度を、温度マップMAP2において発熱部分に対応する温度格納領域に格納するようにしてもよい。そして、中間階調を表示する時には、この格納した温度に基づいてデータ電圧波形のPWM制御を行うようにしてもよい。この構成によれば、温度センサ150を設けなくとも温度ムラの生じる部分について中間階調を正しく行うことができるため、コストダウンや制御回路の単純化が達成できる。
また、発熱部分を中心とした温度分布を算出する数式を実験結果から求めてもよい。そして、発熱する電子部品近傍にある温度センサ150Fの温度を取得し、この取得した温度と、発熱部分を中心とした温度分布を算出する数式に基づいて、発熱部分近傍における表示装置140の各画素の温度を温度マップMAP2に格納してもよい。
【0069】
上述した実施形態においては、温度センサ150の数は6つとなっているが、温度センサ150の数は、この数に限定されるものではない。
例えば、温度の平均値を得るための温度センサ150は、表示領域の中央に配置せず4隅にのみ配置してもよい。この場合、温度センサ150Fに近い温度センサ150との間を所定の温度単位で区切って複数の温度領域に分割し、各領域の温度を領域に属する画素に対応した温度格納領域に格納する。
また、電子機器100において発熱して表示領域に温度ムラを生じさせる電子部品が複数ある場合には、温度ムラを生じさせる電子部品の数に対応して温度センサ150を複数設けてもよい。
また、温度ムラを生じさせる複数の電子部品に対応して複数の温度センサ150を配置する場合、上述した実施形態のように、これらの温度センサ150で検知した温度と、この温度センサ150の周辺の領域の温度を図17に示したように温度格納領域に格納してもよい。
【0070】
上述した第1実施形態においては温度センサ150A〜150Eで検知した温度により、温度の平均値を求めているが、検知した温度の標準偏差σを求め、RAM113に格納
した複数の温度値から3σの範囲外にある値を除外して温度の平均値(基準値)を求め、この求めた平均値を温度マップMAP2に格納するようにしてもよい。この構成によれば、温度センサ150の取り付け不良や温度センサ150の故障によって、他の温度センサ150と著しく異なる温度値がRAM113に格納されたり、一部領域の局所的な加熱または冷却によって値の著しく異なる温度値がRAM113に格納されても、このような温度値は平均値の算出からは除外されるので、表示を正しく行うことができる。
【0071】
上述した実施形態においては、温度センサ150Aと温度センサ150Fとの間を1℃単位で区切って複数の温度領域に分割しているが、1℃単位ではなく例えば0.95℃単位など、1℃未満の単位で複数の温度領域に分割してもよい。また、1℃未満ではなく、1℃以上の単位で複数の温度領域に分割してもよい。
【0072】
上述した実施形態においては、ステップSA3において温度センサ150A〜150Eの5つの温度値の平均値を基準温度として温度マップの全ての領域に格納しているが、5つの温度値のなかで最低温度を基準温度としてRAM113に格納すると共に、温度マップの全ての領域に格納するようにしてもよい。
【0073】
上述した実施形態においては、電気光学素子としてコレステリック液晶を用いたが、電気光学素子として、温度に影響を受ける他の表示材料を用いた表示装置に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子機器100のハードウェア構成図である。
【図2】表示装置140の断面とコレステリック液晶の配向状態を示した図である。
【図3】表示装置140の走査線とデータ線とを模式的に示した図である。
【図4】DDSにおける電圧印加期間を説明するための図である。
【図5】DDSにおけるコレステリック液晶の配向遷移を説明するための図である。
【図6】DDSにおける駆動電圧を説明するための図である。
【図7】温度センサ150の構成を示した図である。
【図8】温度センサ150A〜150Fの配置位置を示した図である。
【図9】電子機器100の断面の一部を模式的に示した図である。
【図10】画素値マップMAP1を模式的に示した図である。
【図11】温度マップMAP2を模式的に示した図である。
【図12】テーブルTBのフォーマットを例示した図である。
【図13】温度の違いによる選択電圧と反射率との関係を模式的に示した図である。
【図14】電子機器100が行う処理の流れを示したフローチャートである。
【図15】温度マップMAP2を模式的に示した図である。
【図16】温度センサ150Aと温度センサ150F周辺の温度分布を模式的に示した図である。
【図17】温度マップMAP2を模式的に示した図である。
【図18】文字領域を説明するための図である。
【図19】温度の違いによる選択電圧と反射率との関係を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0075】
100・・・電子機器、110・・・制御回路、111・・・CPU、112・・・ROM、113・・・RAM、114・・・ADコンバータ、115・・・表示体駆動制御回路、120・・・電源回路、121・・・データ電極用電源回路、122・・・走査電極用電源回路、130・・・表示体駆動回路、131・・・データ電極駆動回路、132・・・走査電極駆動回路、140・・・表示装置、150,150A〜150F・・・温度センサ、160・・・インターフェース、1411・・・コレステリック液晶層、141
2・・・上側ガラス基板、1413・・・下側ガラス基板、1414・・・上側透明電極、1415・・・下側透明電極、1416・・・光吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査電極と複数のデータ電極との重なり位置に対応して設けられ、前記走査電極に走査電圧が印加され、かつ前記データ電極にデータ電圧が印加されたときに、前記データ電圧および前記走査電圧に応じた駆動電圧が印加される電気光学層を含む複数の表示画素を有する表示装置を駆動する表示駆動装置であって、
前記表示装置において複数の表示画素が配置された表示領域の温度を検知する手段であって、前記表示領域において熱が加わる所定の第1位置の温度を検知する第1検知手段と、
前記表示領域の温度を検知する手段であって、前記第1位置から所定の距離だけ離れた第2位置の温度を検知する第2検知手段と、
前記第1検知手段で検知した温度と、前記第2検知手段で検知した温度との温度差に基づいて、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の温度を特定する温度演算手段と、
前記温度演算手段により特定された前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の温度と、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の階調を定めた階調値に基づいて、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素を駆動する駆動手段と
を有する表示駆動装置。
【請求項2】
前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素は、所定の温度差で複数の領域に区分されており、前記駆動手段は、前記複数の領域の各領域内の表示画素の温度と、前記各領域内の表示画素の階調を定めた階調値に基づいて、前記各領域内の表示画素を駆動することを特徴とする請求項1に記載の表示駆動装置。
【請求項3】
前記表示領域のうち、前記第1位置と前記第1位置周囲以外の複数位置の温度を検知する温度検知手段と、
前記第2検知手段により検知された温度と前記温度検知手段により検知された前記複数位置の温度との基準温度を求める基準温度演算手段を有し、
前記駆動手段は、前記複数の表示画素のうち前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素を除く他の表示画素について、前記基準温度演算手段により求められた基準温度と前記他の表示画素の階調を定めた階調値に基づいて、前記他の表示画素を駆動すること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示駆動装置。
【請求項4】
前記複数の表示画素により表される画像中において文字を有する文字領域にある表示画素を特定する文字領域特定手段を有し、
前記駆動手段は、前記文字領域特定手段により特定された表示画素については、前記文字領域内のいずれかの表示画素の温度と、前記文字領域内の表示画素の階調を定めた階調値に基づいて、前記文字領域内の表示画素を駆動することを特徴とする請求項2に記載の表示駆動装置。
【請求項5】
前記基準温度は、前記第2検知手段により検知された温度と前記温度検知手段により検知された前記複数位置の温度との平均の温度であることを特徴とする請求項3に記載の表示駆動装置。
【請求項6】
前記基準温度は、前記第2検知手段により検知された温度と前記温度検知手段により検知された前記複数位置の温度のうちの最も低い温度であることを特徴とする請求項3に記載の表示駆動装置。
【請求項7】
複数の走査電極と複数のデータ電極との重なり位置に対応して設けられ、前記走査電極に走査電圧が印加され、かつ前記データ電極にデータ電圧が印加されたときに、前記データ電圧および前記走査電圧に応じた駆動電圧が印加される電気光学層を含む複数の表示画
素を有する表示装置を駆動する表示駆動装置であって、
前記表示領域の温度を検知する手段であって、前記表示装置において複数の表示画素が配置された表示領域の所定の第1位置から所定の距離だけ離れた第2位置の温度を検知する温度検知手段と、
前記第1位置へ熱を加える発熱部から放出される熱量を予め記憶し、前記表示装置の駆動時間と、記憶した熱量と、前記温度検知手段で検知した温度とに基づいて、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の温度を特定する温度演算手段と、
前記温度演算手段により特定された前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の温度と、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の階調を定めた階調値に基づいて、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素を駆動する駆動手段と
を有する表示駆動装置。
【請求項8】
前記電気光学層の材料は、最終的な表示状態において、分子配向が異なる複数の最終配向状態を呈する液晶材料であり、
前記駆動手段は、前記分子配向の配向状態を前記最終配向状態とは異なる過渡配向状態に遷移させた後、前記最終分子配向状態を選択期間で選択する駆動方式を用いて、前記複数の表示画素を駆動することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の表示駆動装置。
【請求項9】
前記液晶材料は、コレステリック液晶を用いたものであることを特徴とする請求項8に記載の表示駆動装置。
【請求項10】
複数の走査電極と複数のデータ電極との重なり位置に対応して設けられ、前記走査電極に走査電圧が印加され、かつ前記データ電極にデータ電圧が印加されたときに、前記データ電圧および前記走査電圧に応じた駆動電圧が印加される電気光学層を含む複数の表示画素と、
前記複数の表示画素が配置された表示領域の温度を検知する手段であって、前記表示領域において熱が加わる所定の第1位置の温度を検知する第1検知手段と、
前記表示領域の温度を検知する手段であって、前記第1位置から所定の距離だけ離れた第2位置の温度を検知する第2検知手段と、
前記第1検知手段で検知した温度と、前記第2検知手段で検知した温度との温度差に基づいて、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の温度を特定する温度演算手段と、
前記温度演算手段により特定された前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の温度と、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素の階調を定めた階調値に基づいて、前記第1位置と前記第1位置周囲の表示画素を駆動する駆動手段と
を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−257010(P2008−257010A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100179(P2007−100179)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】