説明

表面コーティングされた撥油性及び撥水性基板

【課題】表面コーティング、特に撥油性及び撥水性の表面の基板を提供すること。
【解決手段】式(I)のモノマー化合物の2重結合が反応して重合する条件下で、式(I)のモノマー化合物のプラズマ処理により施されるポリマー層で表面がコーティングされている撥油性及び撥水性基板。


(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素、アルキル、ハロアルキル、又はハロゲンにより置換されていてもよいアリールであるが、R1、R2及びR3の少なくとも1つは水素であり、R4は、基X-R5(式中、R5はアルキル又はハロアルキル基であり、及びXは結合、式 -C(O)O(CH2)nY- の基(式中、nは1〜10の整数であり、及びYは結合又はスルホンアミド基である。)、もしくは、基 - (O)pR6(O)q(CH2)t-(式中、R6は任意にハロゲンにより置換されていてもよいアリールであり、pはO又は1、qはO又は1、及びtはO又は1〜10の整数であるが、但し、qが1であるならば、tは0ではない。)である。))。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面コーティング、特に撥油性及び撥水性の表面の製造、更にはこれにより得られたコーティングされた商品に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な表面の撥油性及び撥水性の処理は、広範に使用されている。例えば、保存特性を向上するか、もしくは、汚れ(soiling)を防止又は抑制するために、このような特性を、金属、ガラス、セラミックス、紙、高分子などのような固体表面に付与することが望ましい。
このようなコーティングが必要な具体的な基板は、布地、特にアウトドア用衣類での用途、スポーツウェア、レジャーウェア及び軍隊での用途である。これらの処理は、一般に、フルオロポリマーを衣類の布地表面へ組み込むこと、より詳細に述べると、その上に固定することが必要である。撥油性及び撥水性の度合いは、利用できる形状に適合させることができるフルオロカーボン基又は部分の数及び長さの関数である。このような部分の濃度が大きくなると、表面処理(finish)の撥水性も向上する。
しかしこれに加え、これらの高分子化合物は、基板と耐久性のある結合を形成することができなければならない。撥油性及び撥水性の織物の処理は、一般に水性乳剤の形状で布に塗布されるフルオロポリマーを基本としている。この処理は、非常に薄い、撥液体性フィルムで繊維を単純に被覆するものであるので、この布は、通気性及び空気透過性でありつづける。これらの表面処理を耐久性のあるものにするために、これらは繊維へフルオロポリマー処理を結合するような架橋結合している樹脂により同時塗布されることが多い。この方法で洗濯及びドライクリーニングに対する良好な耐久性レベルを達成することができる一方で、架橋結合している樹脂は、セルロース繊維をひどく損傷し、この材料の機械的強度を低下する。撥油性及び撥水性の織物を製造する化学的方法は、例えば、特許文献1及び特許文献2、又は非特許文献1に開示されている。
【0003】
プラズマ蒸着法が、ある範囲の表面への高分子コーティングの付着のために極めて広範に使用されている。この技術は、通常の湿式化学法と比べて廃棄物の生成がほとんどないクリーンな乾式法であることが認められている。この方法を用いて、プラズマは、低圧条件下で電離している電界に曝されている小さい有機分子から発生する。これが基板の存在下で行われるならば、プラズマ中の化合物のイオン、ラジカル及び励起した分子は、気相中で重合し、かつ基板上の成長しているポリマーフィルムと反応する。通常のポリマー合成は、モノマー種との強い相似を生じる反復ユニットを含む構造を生成する傾向がある一方で、プラズマを用いて生じた網目重合体は、極めて複雑になり得る。
プラズマ重合が成功するか否かは、有機化合物の性質を含む多くの因子に左右される。これまでは無水マレイン酸のような反応性酸素を含有する化合物がプラズマ重合されてきた(非特許文献2)。
特許文献3は、表面に酸素プラズマによる前処理、それに続くメタンのプラズマ重合を施すことにより、布又は紙の表面を処理して、撥液体性を付与することを開示している。
【0004】
しかし、所望の撥油性及び撥水性のフルオロカーボンのプラズマ重合は、実行がより困難であることが証明されている。環状フルオロカーボンは、それらの環状でないの対応物よりも、より容易にプラズマ重合を受けることが報告されている(非特許文献3)。
トリフルオロメチル-置換されたペルフルオロジクロヘキサンモノマーのプラズマ重合が報告されている(非特許文献4)。
織物に不活性ガスの存在下でプラズマ放電を施し、その後F-含有アクリルモノマーに曝す方法が、特許文献4に記されている。固体基板上へのフルオロアルキルアクリレート耐蝕膜(resist)の付着に関する類似の方法が、特許文献5に開示されている。
特許文献6は、フッ素置換されたアクリレートを含む化合物のプラズマ重合を開示している。この方法において、フッ素置換されたアクリレート化合物及び不活性ガスの混合物は、グロー放電を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開公報第97/13024号
【特許文献2】英国特許第1,102,903号
【特許文献3】米国特許第5,328,576
【特許文献4】SU-1158-634
【特許文献5】欧州特許出願第0049884号
【特許文献6】日本国特許出願第816773号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M.Lewinらの論文、「繊維科学・技術ハンドブツク」(Handbook of Fibre Sci.ence and Technology)、マーシャル・アンド・デッカー社、ニューヨーク(1984年)第2巻、パートB第2章
【非特許文献2】Chem.Mater.Vol.8,1(1996)
【非特許文献3】H.Yasudaらの論文、J.Polym.Sci.,Polyrn.Chem.Ed.15:2411(1997)
【非特許文献4】A.M.Hynesらの論文、Macromolecules,29:18-21(1996)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願人は、表面が撥水性及び/又は撥油性であるポリマーコーティング、特にハロポリマーコーティングの改良された製造法を発見した。
本発明においてはポリマー層を伴う表面のコーティング法が提供され、この方法は、任意に置換されていてもよい炭化水素基を有するモノマーの不飽和有機化合物を含有するプラズマに該表面を曝すことを含み、ここで任意の置換基はハロゲンであり;該化合物が直鎖の過ハロゲン化されたアルケンである場合は、これは少なくとも5個の炭素原子を含み;その結果、撥油性又は撥水性のコーティングを該基板上に形成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プラズマ蒸着に作用するように使用される装置の該略図である。
【図2】1H,1H,2H-ペルフルオロ-1-ドデセンの連続波プラズマ重合の特徴を示すグラフである。
【図3】50WのPp、Ton=20μs及びToff=10000μsで5分間の、1H,1H,2H-ペルフルオロ-1-ドデセンのパルスプラズマ重合の特徴を示すグラフある。
【図4】(a)1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルアクリレートの連続プラズマ重合の特性を示す図である。(b)1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルアクリレートのパルスプラズマ重合の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
不飽和の有機化合物は、反応して高分子化合物を生成することが可能であるような二重結合を少なくとも1個含むものである。適当なことに、本発明の方法で使用された化合物は、少なくとも1個の任意に置換されていてもよい炭化水素鎖を含む。適当な鎖は、直鎖又は分岐鎖であることができ、これは3〜20個の炭素原子を、より適するには6〜12個の炭素原子を有している。
本方法において使用されるモノマー化合物は、鎖内に二重結合を有することができ、かつ更にアルケニル化合物を含むことができる。あるいはこの化合物は、アルキル鎖、任意にハロゲンにより置換されていてもよいアルキル鎖を、不飽和部分に直接、もしくは、エステル又はスルホンアミド基のような官能基を介して付着した置換基として含む。
本願明細書において使用される用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。特に好ましいハロゲン基は、フルオロである。用語炭化水素は、アルキル、アルケニル又はアリール基を含む。用語「アリール」は、フェニル又はナフチル(napthyl)のような芳香環基を意味し、特にフェニルを意味する。用語「アルキル」は、直鎖又は分岐鎖の炭素原子を意味し、炭素原子の長さは最大20個までが適当である。用語「アルケニル」は、2〜20個の炭素原子を有することが適している、線状又は分岐した不飽和鎖を意味する。
【0010】
鎖が非置換のアルキル又はアルケニル基を含むモノマー化合物は、撥水性であるコーティングを製造する際に適している。これらの鎖の中の炭素原子の少なくともいくつかを、少なくともいくつかのハロゲン原子で置換すると、このコーティングをより撥油性とすることもできる。
従って好ましい態様において、このモノマー化合物は、ハロアルキル部分を含むか、もしくは、ハロアルケニルを含む。その結果、本発明の方法で使用されるプラズマは、モノマーの不飽和ハロアルキルを有する有機化合物を含むことが好ましいと思われる。
本発明の方法での使用に適したプラズマは、高周波(Rf)、マイクロ波又は直流(DC)によって生じるもののような、非平衡プラズマを含む。これらは、大気圧又は大気圧以下で操作できることが当該技術分野において公知である。
このプラズマは、モノマー化合物を単独で含み、他の気体又は例えば不活性ガスとの混合物は存在し得ない。モノマー化合物のみからなるプラズマは、以下に例示したように、最初にできる限り反応容器を排気し、次にこの反応容器を有機化合物で、容器が十分に他の気体を含まなくなったことが確認できるのに十分な時間掃流することにより達成することができる。
【0011】
特に適しているモノマー有機化合物は、式(I)の化合物である:

(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素、アルキル、ハロアルキル又は任意にハロゲンによって置換されていてもよいアリールから選択することができ;及びR4は、基X-R5(式中、R5はアルキル又はハロアルキル基であり、及びXは結合;式-C(O)O(CH2)nY-の基(式中、nは1〜10の整数であり、及びYは結合又はスルホンアミド基である。);もしくは、基-(O)pR6(O)q(CH2)t-(式中、R6は任意にハロゲンにより置換されていてもよいアリールであり、pは0又は1、qは0又は1、及びtは0又は1〜10の整数であるが、但し、qが1であるならば、tは0ではない。)である。))。
【0012】
R1、R2、R3及びR5について適当なハロアルキル基は、フルオロアルキル基である。このアルキル鎖は、直鎖又は分岐鎖であることができ、かつ環状部分を含むことができる。
R5のアルキル鎖は、2個又はそれ以上の炭素原子を有することが適当であり、2〜20個の炭素原子が適し、6〜12個の炭素原子が好ましい。
R1、R2、及びR3について、アルキル鎖は一般に、1〜6個の炭素原子を有するものが好ましい。
好ましくは、R5はハロアルキルであり、かつより好ましくはペルハロアルキル基であり、特に式CmF2m+1のペルフルオロアルキル基である(式中、mは1以上の整数であり、適しているのは1〜20であり、好ましくは8又は10のような6〜12である。)。
R1、R2、及びR3に適しているアルキル基は、1〜6個の炭素原子を有する。しかし好ましくは、R1、R2、及びR3基の少なくとも1つは水素であり、R1、R2、及びR3全てが水素であることが好ましい。
Xが基-C(O)O(CH2)nY-である場合、nは適当なスペーサー基を提供するような整数である。特にnは1〜5であり、好ましくはほぼ2である。
【0013】
Yに関して適当なスルホンアミド基は、式-N(R7)SO2であり、式中R7は水素又はアルキル、例えばC1-4アルキルであり、特にメチル又はエチルである。好ましい実施態様において、式(I)の化合物は式(II)の化合物である:
CH2=CH-R5 (II)
(式中、R5は、式(I)について先に定義されたものである。)。
式(II)の化合物において、式(I)のXは結合である。
【0014】
別の好ましい実施態様において、式(I)の化合物は、式(III)のアクリレートである:
CH2=CR7C(O)O(CH2)nR5 (III)
(式中、n及びR5は式(I)について先に定義されたものであり、及びR7は水素又はメチルのようなC1-6アルキルである。)。
これらの化合物を用いて、以下に詳細に説明されるように、最大10の疎水値及び最大8の疎油値を有するコーティングが達成されている。
式(I)の別の化合物は、高分子の技術分野において周知であるように、スチレン誘導体である。
式(I)の全ての化合物は、公知の化合物又は公知の化合物から常法により調製することができるもののいずれかである。
【0015】
本発明に従ってコーティングされた表面は、例えば布地、金属、ガラス、セラミックス、紙又は高分子のような固体基板のいずれかであることができる。特にこの表面は、セルロース布地のような、布基板を含み、これに撥油性及び/又は撥水性が適用される。あるいは、この布は、アクリル/ナイロン系布のような合成布であることができる。
この布は、処理しないか、もしくは、初期の処理(earlier treatment)を施すことができる。例えば、本発明の処理は、撥水性を増強することができ、かつ良好な撥油性の仕上げを、既に撥水性のみを示すようにシリコン仕上げされた布の上に行うことができることがわかっている。
効果的にプラズマ重合が行われるような正確な条件は、そのポリマー、基板などの性質のような因子によって変動し、かつ以下に詳細に説明する通常の方法及び/又は技術を用いて決定されると考えられる。しかしながら一般には、重合は、圧力が0.01〜10hPa(mbar)、適当には約0.2hPa(mbar)である条件で、式(I)の化合物の蒸気を用いることで適切に作用される。
その後グロー放電が、例えば13.56MHzのような高周波電圧を印加することによって点火される。
印加された電界は、50Wまでの平均電力が適している。適当な条件は、パルス電界又は連続電界であるが、パルス電界が好ましい。パルスは、例えば10W未満のような、好ましくは1W未満のような、非常に低い平均電力をもたらすようなシーケンスで適用される。このようなシーケンスの例は、電力が20μs間オン、10000μs〜20000μs間オフであるものである。
【0016】
前述の電界は、所望のコーティングを生じるのに十分な期間印加されることが適している。一般に、これは30秒から20分であり、好ましくは2〜15分であり、式(I)の化合物及び基板などの性質によって左右される。
式(I)の化合物のプラズマ重合、特に低い平均電力でのものが、超疎水性を示す高度にフッ素化されたコーティングの付着を生じることがわかっている。加えて、コーティング層において、式(I)の化合物の構造が高レベルで保持され、このことは例えばフルオロアルケンモノマーのようなアルケンモノマーの、非常に作用を受けやすいその二重結合を介した直接重合に寄与することができる。
特に前述の式(III)の化合物の重合の場合に、低電力のパルスプラズマ重合が、優れた撥水性及び撥油性を示す良く接着されたコーティングを形成することが注目されている。パルスプラズマ重合の場合、構造保持レベルがより大きくなると、動作周期のオフタイムの間に生じるフリーラジカル重合に寄与することができ、少ないとオンタイムの間の断片化をもたらす。
本発明の特に好ましい実施態様において、表面は、先に定義された式(III)の化合物を含むプラズマに曝され、ここでプラズマは、同じく先に記されたパルス電圧によって形成される。
適当な式(I)の化合物は、ペルフルオロアルキル化された尾部又は部分を含み、本発明の方法は、疎水性に加え疎油性である表面特性を有し得る。
【0017】
従って、本発明は更に、前述の方法で塗布されるアルキルポリマー、特にハロアルキルポリマーのコーティングを有する基板を含む、疎水性又は疎油性の基板を提供する。特に、この基板は、布であるが、生体医療用器具のような固体基板であることができる。
本発明はここでは、特に、添付された略図を参照とする実施例によって説明されているが、この図は:図1は、プラズマ蒸着に作用するように使用される装置の該略図であり;
図2は、1H,1H,2H-ペルフルオロ-1-ドデセンの連続波プラズマ重合の特徴を示すグラフであり;
図3は、50WのPp、Ton=20μs及びToff=10000μsで5分間の、1H,1H,2H-ペルフルオロ-1-ドデセンのパルスプラズマ重合の特徴を示すグラフであり;及び
図4は、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルアクリレートの(a)連続−及び(b)パルス−プラズマ重合の特性を示す図である。
【0018】
実施例1
アルケンのプラズマ重合
1H,1H,2H-ペルフルオロ-1-ドデセン(C10F21CH=CH2)(フルオロケム社、F06003、純度97%)をモノマーチューブ(1)に入れ(図1)、更に凍結−融解サイクルを用いて精製した。一連のプラズマ重合実験は、直径5cm、容量470cm3、底面の圧力が700Pa(7×10-3mbar)である誘導的に(inductively)組み合わせられた円筒状のプラズマ反応容器(2)中で、漏れ速度(leak rate)2×10-3cm3/minで実施した。反応容器(2)を、モノマーチューブ(1)に、“ヴィトン(viton)”O-リング(3)、ガス流入管(4)及びニードル弁(5)を用いて連結した。
熱電対式圧力ゲージ(6)を、反応容器(2)へと、ヤング栓(Young's tap)(7)を用いて連結した。別のヤング栓(8)を、空気の供給口に連結し、かつ三番目の栓(9)で、液体窒素冷却トラップ(10)を通って、E2M22段階エドワード回転ポンプ(図示せず)へと導いた。全ての連結にグリースは使用しなかった。
L-C整合器(matching unit)(11)及び電力メーター(12)を用いて、出力13.56Mhzの高周波(R.F.)発生器(13)へと連結し、これを電源(14)、反応容器の周りに巻きついている銅コイル(15)へとつないだ。この配:黄は、反応容器(2)中の部分的にイオン化された気体へと伝達された電力の定常波比(SWR)が最小化されることを確実にした。パルスプラズマ蒸着に関しては、パルス信号発生器(16)を用い、R.F電源を作動させ、かつ陰極線オシロスコープ(17)を用いて、パルス幅及び振幅をモニタリングした。パルス期間中にこのシステムにもたらされた平均電力<P>は、下記式により算出した:
<P>=Pcw{Ton/(Ton+Toff)}
(式中、Ton/(Ton+Toff)は、動作周期として定義され、かつPcwは平均連続波電力(continuous wave power)である。)。
【0019】
重合/付着反応を実行するために、反応容器(2)を、塩素漂白浴に一晩つけておき、その後洗剤で擦り洗いし、最後にイソプロピルアルコールですすぎ、炉で乾燥して清掃した。この反応容器(2)を次に、図1に示した集成装置に組込み、更に50Wのエアプラズマで30分間清掃した。次に反応容器(2)は空気を換気し、かつ基板をコーティング(19)したが、このときガラススライドを、ガラス板(18)上の該容器(2)によって区切られたチャンバーの中央に配置した。その後このチャンバーを再度排気し、基準圧力(720Pa(7.2×10-3mbar))に戻した。
その後ペルフルオロアルケン蒸気を、0.2hPa(0.2mbar)以下の定圧で反応チャンバーに導入し、プラズマ反応容器を掃流させ、その後グロー放電を開始した。
典型的には2〜15分間の付着時間で、基板に完全なコーティングを生じるのに十分であることがわかった。その後、R.F発生器のスイッチを切り、ペルフルオロアルケンの蒸気を、更に5分間基板の上を連続して通過させ、その後反応容器を排気して基準圧力に戻し、最終的には大気圧へと換気した。
付着直後に、X-線光電子分光法(XPS)により、付着されたプラズマ重合体コーティングの特徴を調べた。プラズマ薄膜(coverage)が完全であることは、下側のガラス基板を通じて示されるSi(2p)XPSシグナルが全く存在しないことにより確認される。
【0020】
比較実験では、フルオロアルケン蒸気を、基板上を15分間通過させ、その後ポンプによる排気により基準圧力へと低下させたが、これは非常に大きい基板からのSi(2p)XPSシグナルが存在することを示した。従って、プラズマ重合時に得たコーティングは、基板へのフルオロアルケンモノマーの吸収のみに起因するものではない。
実施例は、平均電力0.3〜50Wの範囲で行った。13分間のガラススライド上への0.3W連続波のプラズマ重合体の付着に関するXPSスペクトルの結果を、図2に示した。
この例において、CF2及びCF3基が、C(1s)XPS包絡線中の突出した環境であることがわかる:CF2 (291.2eV) 61%CF3 (293.3eV) 12% 残りの炭素環境は部分的にフッ素化された炭素中心及び少量の炭化水素に含まれた(CxHy)o実験値及び理論的予測値(モノマーから予測)は表1に示した。
【0021】
【表1】

実験及び理論におけるCF2及びCF3基の割合の間の差は、ペルフルオロアルケンモノマーの少量の断片化に起因している。
図3は、5分間のパルスプラズマ重合実験に関するC(1s)XPSスペクトルを示し、ここでPcw=50W、Ton=20μs、Toff=1000μs、<P>=0.1Wであった。パルスプラズマ蒸着に関して付着されたコーティングの化学組成を下記表2に示した。
【0022】
【表2】

CF2領域がより良く分解され、かつより大きい強度を有することが認められ、これはこのペルフルオロアルキル尾部の方が、連続波プラズマ重合の場合よりも、断片化が少ないことを意味する。
表面エネルギーの測定は、この方法で製造されたスライド上で、動的接触角分析(dynami ccont actanglean alysis)を用いて実施した。結果は、表面エネルギーが5〜6mJ/mの範囲であることを示した。
【0023】
実施例2
撥油性及び撥水性試験
前記実施例1において示したパルスプラズマ蒸着条件を用いて、綿片(3×8cm)をコーティングし、その後これについて、“3M試験法”(3M社の撥油性試験法1、3M試験法、1988年10月1日)を使って、湿潤性を調べた。撥水性試験としては、3M社の撥水性試験法II、水/アルコール滴下試験(3M試験法1、3M試験法、1988年10月1日)を使用した。これらの試験は、下記を測定することによってあらゆる種類の布のフルオロケミカル仕上げを検出するようにデザインされている:(a)水及びイソプロピルアルコール混合物を使用する水性汚れ抵抗性(b)選択された一連の様々な表面張力を有する炭化水素系液体による湿潤に対する布の抵抗性。
これらの試験は、布の構造、繊維の種類、染料、他の仕上げなどその他の因子も汚れ抵抗性に影響を及ぼすので、水性又は油性材料による汚れに対する布の抵抗性の絶対値を得ることは意図していない。しかしこれらの試験は、様々な仕上げを比較するために使用することができる。撥水性試験では、プラズマ重合した表面の上に、特定の容量比の水及びイソプロピルアルコールからなる標準試験液を3滴垂らした。10秒後に、3滴のうちの2滴が布を湿らせていない場合に、この表面はこの液体に対して撥水性であるとみなした。このことより、撥水性の等級付けを行い、イソプロピルアルコールの割合のより大きい試験液を本試験に合格とした。撥油性試験の場合は、コーティングした表面の上に炭化水素系液体3滴を垂らす。30秒後に、液体−布の境界面において、布への浸透又は湿潤が生じず、3滴中ほぼ2滴が残っている場合に、試験に合格とする。
撥油性の等級付けは、布の表面を湿らせない最高の数値がつけられた試験液について行った(数値の増大は、炭化水素鎖及び表面張力の減少に対応している。)。
セルロースへの1H,1H,2H-ペルフルオロ-1-ドデセンのパルスプラズマ蒸着によって得られた等級付けは:
水 9(10%水、90%イソプロピルアルコール)
油 5(ドデセン)。
これらの値は、市販の処理とも十分比較した。
【0024】
実施例3
アクリレートのプラズマ重合
上記実施例1に記した方法を、ペルフルオロアルケンの代わりに、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルアクリレートを用いて反復した(フルオロケム社、F04389E、純度98%)。実施例1のように、連続波及びパルスプラズマ重合実験のためには低い平均電力を用いた。例えば、10分間でガラススライド上に付着した1Wの連続波プラズマ重合体のXPSスペクトルは、図4(a)に示した。図4(b)は、10分間のパルスプラズマ重合実験に関するC(1s)XPSスペクトルであり、ここで:
Pcw=40W(平均連続波電力)
Ton=20μs(パルスオン時間)
Toff=20000μs(パルスオフ時間)
<P>=0.04W(平均パルス電力)である。
表3は、ポリマーコーティングについて実際に認められている理論(モノマーCH2=CHCO2CH2CH2C8F17から算出)環境と比較している。
【0025】
【表3】

291.2eVでのC(1s)XPS包絡線において、CF2基が突出した環境であることが認められる。残りの炭素環境は、CF3、部分的にフッ素化された及び酸素化された炭素中心、並びに少量の炭化水素(CxHy)である。連続波及びパルスプラズマ条件に関する付着したコーティングの化学組成を、理論的に予想される組成と共に、表4に示した(変動(satellite)の%は除く)。
【0026】
【表4】

図4(B)に認められるように、CF2領域がより良く分解され、かつより大きい強度を有し、これはパルスプラズマ条件下で生じるペルフルオロアルキル尾部の方が、連続波プラズマ重合の場合よりも、断片化が少ないことを意味する。連続波プラズマ実験の場合は、CF2及びCF3基の低い割合が生じた。
実施例1に示した表面エネルギー測定は、表面エネルギーが6mJ/mであることを示した。
【0027】
実施例4
撥油性及び撥水性試験
15分間適用すること以外は、前記実施例3において示したパルスプラズマ蒸着条件を用いて、綿片(3×8cm)を1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルアクリレートを用いてコーティングした。同様の綿片を、同じ化合物を用い、1Wの連続波により15分間コーティングした。その後これらに、先の実施例2において示したような、撥油性及び撥水性試験を行った。
その後試料を、ベンゾトリフルオリドを溶媒とするソックスレー抽出器で1又は7時間のいずれか処理し、かつ撥油性及び撥水性試験を繰り返した。実施例2のように表した結果示す。
【0028】
【表5】

ここで、これらのコーティングは、非常に疎水性かつ疎油性であり、並びにこれらのコーティングは良好な耐久性を有している。
【0029】
実施例5
シリコーンコーティングした合成布の処理
撥水性を持たせるために既にシリコーンコーティングされた改質したアクリル/ナイロン布の試料に、化合物CH2=CHCOO(CH2)2C8F17からなるパルスアクリレートプラズマを、実施例3に示した条件を用いて施した。
同じ材料の試料を、最初に布を連続波30Wエアプラズマに5秒間曝し、引き続き同じアクリレート蒸気のみに曝す2段階蒸着法を施した。その後生成物を、実施例2に記したように、撥油性及び撥水性について試験した。
加えて、その後コーティングの耐久性を、トリクロロエチレンを溶媒とするソックスレー抽出器で生成物を1時間抽出することにより調べた。
結果を表5に示す。
【0030】
【表6】

従って、本発明の方法は、単にそのような布の撥水性を増強するのみではなく、撥油性ももたらすことができ、このようなコーティングの耐久性を、公知の2段階グラフト重合法によって得られるものよりも高めることができると思われる。
【0031】
次に本発明の好ましい態様を示す。
1. ポリマー層で表面をコーティングする方法であり、これが、任意に置換されていてもよい炭化水素基を有するモノマー不飽和有機化合物を含むプラズマに該表面を曝すことを含み、ここで任意の置換基がハロゲンであり;該化合物が直鎖の過ハロゲン化されたアルケンであるならば、これは少なくとも5個の炭素原子を含み;その結果、撥油性又は撥水性コーティングを該基板の上に形成する、上記方法。
2. 前記有機化合物がハロゲンにより置換されている、上記1記載の方法。
3. 前記有機化合物が式(I)の化合物である、上記1記載の方法:

(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素、アルキル、ハロアルキル、又はハロゲンにより任意に置換されていてもよいアリールであり;及びR4は、基 X-R5(式中、R5はアルキル又はハロアルキル基であり、及びXは結合;式-C(O)O (CH2)nY-の基(式中、nは1〜10の整数であり、及びYは結合又はスルホンアミド基である。);もしくは、基-(O)pR6(O)q(CH2)t-(式中、R6は任意にハロゲンにより置換されていてもよいアリールであり、pは0又は1、qは0又は1、及びtは0又は1〜10の整数であるが、但し、qが1であるならば、tは0ではない。)
である。))。
【0032】
4. 前記R5がハロアルキル基である、上記3記載の方法。
5. 前記R5がペルハロアルキル基である、上記4記載の方法。
6. 前記R5が、式CmF2m+1のペルハロアルキル基(式中、mは1又はそれ以上の整数である。)である、上記5記載の方法。
7. 前記mが1〜20である、上記6記載の方法。
8. 前記mが6〜12である、上記7記載の方法。
9. 前記R1、R2及びR3がそれぞれ独立に水素又はC1-6アルキル又はハロC1-6アルキル基から選択される、上記1〜8のいずれかに項記載の方法。
10.前記R1、R2及びR3の少なくとも1つが水素である、上記9記載の方法。
11.前記R1、R2及びR3の全てが水素である、上記10記載の方法。
12.前記Xが、式-C(O)O(CH2)nY-の基であり、かつYが式-N(R6)SO2-のスルホンアミド基(式中、R6は水素又はアルキルである。)である、上記3記載の方法。
【0033】
13.前記式(I)の化合物が下記式(II)の化合物を含む、上記3記載の方法:
CH2=CH-R5 (II)
(式中、R5は、上記3において定義したものである。)。
14.前記式(I)の化合物が下記式(III)の化合物を含む、上記3記載の方法:
CH2=CR7C(O)O(CH2)nR5 (III)
(式中、n及びR5は上記2において定義したものであり、及びR7は水素又はC1-6アルキルである。)。
15.前記表面が、布、金属、ガラス、セラミックス、紙又は高分子の基板である、上記1〜14のいずれかに記載の方法。
16.前記基板が布である、上記15記載の方法。
17.前記有機化合物のガス圧力が、0.01〜10hPa(mbar)である、上記1〜16のいずれかに記載の方法。
【0034】
18.グロー放電が、高周波電圧を印加することによって点火される、上記1〜17のいずれかに記載の方法。
19.前記電圧が、連続電界として印加される、上記18記載の方法。
20.前記電圧が、パルス電界として印加される、上記18記載の方法。
21.前記パルスが、低い平均電力を生じるようなシーケンスで適用される、上記20記載の方法。
22.前記シーケンスが、その電力が20μs間オンになり、10000μs〜20000μs間オフであるものである、上記21記載の方法。
23.前記プラズマ重合が、2〜15分間行われる、上記1〜22のいずれかに項記載の方法。
24.前述の方法が、上記14に定義した式(III)の化合物を含むプラズマに表面を曝すことを含み、該プラズマがパルス電圧によって発生される、上記1記載の方法。
25.上記1〜24のいずれかに記載の方法により塗布されるポリマー コーティングを含む基体を含む、疎水性又は疎油性の基体。
26.前記ポリマーがハロアルキルポリマーである、上記25記載の疎水性又は疎油性の基体。
27.布である、上記25又は26記載の基体。
28.上記27記載の布を含む衣服商品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のモノマー化合物の2重結合が反応して重合する条件下で、式(I)のモノマー化合物のプラズマ処理により施されるポリマー層で表面がコーティングされている撥油性及び撥水性基板。

(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素、アルキル、ハロアルキル、又はハロゲンにより置換されていてもよいアリールであるが、R1、R2及びR3の少なくとも1つは水素であり、R4は、基X-R5(式中、R5はアルキル又はハロアルキル基であり、及びXは結合、式 -C(O)O(CH2)nY- の基(式中、nは1〜10の整数であり、及びYは結合又はスルホンアミド基である。)、もしくは、基 - (O)pR6(O)q(CH2)t-(式中、R6は任意にハロゲンにより置換されていてもよいアリールであり、pはO又は1、qはO又は1、及びtはO又は1〜10の整数であるが、但し、qが1であるならば、tは0ではない。)である。))。
【請求項2】
前記式(I)の化合物が下記式(II)の化合物である、請求項1項記載の基板:
CH2=CH-R5 (II)
(式中、R5は、請求項1項において定義したものである。)。
【請求項3】
前記式(I)の化合物が下記式(III)の化合物である、請求項1項記載の基板:
CH2=CR7C(O)O(CH2)nR5 (III)
(式中、n及びR5は請求項1項において定義したものであり、及びR7 は水素又はC1-6アルキルである。)。
【請求項4】
前記R7が、水素又はメチルである請求項3記載の基板。
【請求項5】
前記R5が、式 CmF2m+1 のペルハロアルキル基(式中、mは6〜12である。)である、請求項1〜4のいずれかに1項記載の基板。
【請求項6】
ポリマー層が1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルアクリレートのポリマー又は1H,1H,2H-ペルフルオロ-1-ドデセンのポリマーを含む請求項1記載の基板。
【請求項7】
コーティングが平らなガラス表面に存在し、5〜6mJ/mの表面エネルギーを有する、請求項1〜6のいずれか1項記載の基板。
【請求項8】
基板が、布、金属、ガラス、セラミックス、紙又は高分子の基板である、請求項1〜7のいずれか1項記載の基板。
【請求項9】
基板が布である、請求項8記載の基板。
【請求項10】
請求項9記載の布を含む衣服商品。
【請求項11】
請求項1記載の撥油性及び撥水性基板の製造方法であって、式(I)のモノマー化合物が重合して、層として基板の表面に沈着する条件下で、基板表面を式(I)のモノマー化合物の連続波プラズマ重合に曝すことを含む、前記製造方法。

(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素、アルキル、ハロアルキル、又はハロゲンにより置換されていてもよいアリールであるが、R1、R2及びR3の少なくとも1つは水素であり、R4は、基X-R5(式中、R5はアルキル又はハロアルキル基であり、及びXは結合、式 -C(O)O(CH2)nY- の基(式中、nは1〜10の整数であり、及びYは結合又はスルホンアミド基である。)、もしくは、基 - (O)pR6(O)q(CH2)t- (式中、R6は任意にハロゲンにより置換されていてもよいアリールであり、pはO又は1、qはO又は1、及びtはO又は1〜10の整数であるが、但し、qが1であるならば、tは0ではない。)である。))。
【請求項12】
R5がハロアルキル基である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
R5がペルハロアルキル基である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
R5が、式 CmF2m+1 のペルハロアルキル基(式中、mは1又はそれ以上の整数である。)である、請求項11記載の方法。
【請求項15】
mが1〜20である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
mが6〜12である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
R1、R2及びR3がそれぞれ独立に水素又はC1-6アルキル又はハロC1-6アルキル基から選択される、請求項11〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
R1、R2及びR3が全て水素である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
Xが、式 -C(O)O(CH2)nY- の基であり、かつYが式 - N(R6)SO2- のスルホンアミド基(式中、R6は水素又はアルキルである。)である、請求項11〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
式(I)の化合物が下記式(II)の化合物を含む、請求項11記載の方法:
CH2=CH-R5 (II)
(式中、R5は、請求項11において定義したものである。)。
【請求項21】
式(I)の化合物が下記式(III)の化合物を含む、請求項11記載の方法:
CH2=CR7C(O)O(CH2)nR5 (III)
(式中、n及びR5は請求項11において定義したものであり、及びR7 は水素又はC1-6アルキルである。)。
【請求項22】
前記R7が、水素又はメチルである請求項21記載の方法。
【請求項23】
R5が、式 CmF2m+1 のペルハロアルキル基(式中、mは6〜12である。)である、請求項11〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
プラズマ処理が、2〜15分間行われる、11〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
平均パワーが470cm3の容量で1W未満である連続プラズマ処理である、11〜24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
基板が、布、金属、ガラス、セラミックス、紙又は高分子の基板である、請求項11〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
基板が布である、請求項26記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−58523(P2010−58523A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284898(P2009−284898)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【分割の表示】特願平11−503948の分割
【原出願日】平成10年6月11日(1998.6.11)
【出願人】(390040604)イギリス国 (58)
【氏名又は名称原語表記】THE SECRETARY OF STATE FOR DEFENCE IN HER BRITANNIC MAJESTY’S GOVERNMENT OF THE UNETED KINGDOM OF GREAT BRITAIN AND NORTHERN IRELAND
【Fターム(参考)】