説明

表面パネルの取付構造

【課題】 表面パネルの取付構造において、使用する機器内や周辺温度の変化に対して表面パネルの浮き上がりを防止し、表面パネルによる表示機能を損なうことがないようにする。
【解決手段】 アッパーケース2の凹部2aの四隅に一個の第1のスタッド5と三個の第2のスタッド6とが突設されている。凹部2aに取り付けられる表面パネル3の四隅には、第1のスタッド5に嵌合される第1の嵌合孔13と第2のスタッド6に嵌合される第2の嵌合孔14とが設けられている。第2のスタッド6の凹部2aからの突出高さは、表面パネル3の厚みよりも大きく形成されている。第2の嵌合孔14の径は、第2のスタッド6の径よりも大きく形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等の表面に取り付けられ透明な材料によって形成された表面パネルの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の表面パネルの取付構造としては、表面に表示シートを載置する表示シート載置面が設けられた筺体と、表示シート載置面に表示シートを押え付けるために透明な材料によって形成された表面パネルとを備え、表示シート載置面の一端部に設けた長溝に表面パネルの凸条体を嵌合させ、表示シート載置面の他端部に設けた取付孔に表面パネルの係合片を係合させることにより、表面パネルを表示シート載置面に取り付けるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−142782号公報(段落〔0008〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の表面パネルの取付構造においては、長溝に凸条体を嵌合させ係合片を取付孔に係合させて、表面パネルを表示シート載置面に取り付ける構造であるため、表示シート載置面に対して表面パネルが平面方向に遊びを有して取り付けられていると、係合片が係合孔から外れ、表面パネルが表示シート載置面から脱落してしまうことがある。したがって、表面パネルは表示シート載置面に対して、平面方向に遊びがない状態で取り付けられている。このため、筺体内に発熱する電気部品等が搭載されている場合は、発生する熱によって表面パネルが熱膨張するとき、筺体と表面パネルとが熱膨張係数の異なる材料によって形成されていると、表面パネルが表示シート載置面から部分的に浮き上がって撓んでしまうことがある。表面パネルが部分的に撓むと、表示シートに記載されている文字や絵柄等が歪んだ状態で目視されるようになり、表面パネルによる表示機能が損なわれるという問題があった。
【0004】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、装置筺体内や周辺温度の変化に対して表面パネルの浮き上がりを防止し、表面パネルによる表示機能を損なうようなことがない表面パネルの取付構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、表面に複数のスタッドが突設された筺体と、この筺体と熱膨張係数が異なる透明な部材によって形成され前記スタッドに嵌合する嵌合孔を有する表面パネルと、前記スタッドに螺合され頭部によって前記表面パネルの前記スタッドからの抜けを規制する締結部材とを備えた表面パネルの取付構造において、前記嵌合孔は、前記スタッドに嵌合する一つの第1の嵌合孔と、前記スタッドに遊びを有して遊嵌する複数の第2の嵌合孔とによって構成し、この第2の嵌合孔が嵌合する前記スタッドの突出高さを、前記表面パネルの厚みよりも大きく形成したものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記第2の嵌合孔に嵌合するスタッドに締結される前記締結部材によって前記第2の嵌合孔を覆ったものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、装置筺体内や周辺の温度変化により表面パネルが伸縮したとしても、複数の第2の嵌合孔とスタッドとの間の遊びの範囲内において表面パネルが筺体に対して移動可能なため、表面パネルが筺体から浮き上がるようなことがない。このため、表面パネルが部分的に撓むようなことがないから、表面パネルによる表示機能を損なうようなことがない。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、締結部材によって第2の嵌合孔を覆うようにしたことにより、第2の嵌合孔が外部から目視できなくなるため、第三者によって故意に嵌合孔から筺体内に異物を挿入されるようなことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係る表面パネルの取付構造を実施した電子機器の正面図、図2は同じく電子機器の斜視図、図3は同じく電子機器を分解して示す斜視図、図4は図1におけるIV-IV 線断面図、図5は図1におけるV部の拡大図、図6は図4におけるVI部の拡大図、図7は図4におけるVII 部の拡大図である。
【0010】
図3および図4に全体を符号1で示す電子機器は、電子機器1の筺体の一部を構成するABSによって浅底状に形成されたアッパーケース2と、このアッパーケース2と共に筺体を構成するロアーケース(図示せず)と、アッパーケース2の表面に取り付けられ透明なアクリル板によって形成された表面パネル3と、アッパーケース2の裏面側にスタッドを介して取り付けられるプリント配線板4とによって概ね構成されている。
【0011】
アッパーケース2の正面には、図3に示すように正面視矩形状で扁平な表面2aが形成されており、この表面2aの四隅のそれぞれには、一個の第1のスタッド5と3個の第2のスタッド6とが一体に突設されている。第1のスタッド5の表面2aからの突出高さH1は、図6に示すように表面パネル3の厚みtよりわずかに高く形成されている。一方、第2のスタッド6の表面2aからの突出高さH2は、図7に示すように表面パネル3の厚みtよりも遊動しない程度(がたつきが生じない程度)に大きく形成されている。図3において、8,9はアッパーケース2の表面2a内側に実装された各種の機能釦とダイヤル釦であって、押圧操作されることによって図4に示すラバーシート12を介して、プリント配線板4上に印刷された接点(図示せず)を閉じる。
【0012】
表面パネル3の四隅のそれぞれには、図3に示すように上記した第1のスタッド5が嵌合する一個の第1の嵌合孔13と、上記した第2のスタッド6が遊嵌する三個の第2の嵌合孔14とが設けられている。第1の嵌合孔13の径d1は、図6に示すように第1のスタッド5の径D1よりもわずかに大きく形成されている。一方、第2の嵌合孔14の径d2は、図7に示すように第2のスタッド6の径D1よりも大きく形成されている。
【0013】
図6および図7において、15は第1および第2のスタッド5,6に螺合される締結部材としての六角穴付きボルトであって、頭部15aには、図7に示すように第2の嵌合孔14の径d2よりも大きな径D2に形成された鍔15bが設けられている。図6および図7において、16は第1および第2のスタッド5,6に設けた中心孔5a,6aに嵌着された筒状の螺合子であって、内周部に設けたねじ部に六角穴付きボルト15が螺合する。
【0014】
次に、このように構成された表面パネルの取付構造において、表面パネルの取付方法について説明する。図3に示すように表面パネル3の第1の嵌合孔13をアッパーケース2の第1のスタッド5に嵌合させるとともに、第2の嵌合孔14を第2のスタッド6に嵌合させ、表面パネル3をアッパーケース2の表面2aに嵌合させる。この状態で、機能釦8とダイヤル釦9とのそれぞれが、図2に示すように表面パネル3の孔10,11から突出する。
【0015】
次いで、表面パネル3の第1および第2の嵌合孔13,14を挿通させた四本の六角穴付きボルト15のそれぞれを、図3に示すようにアッパーケース2の一個の第1のスタッド5の螺合子16と三個の第2のスタッド6の螺合子16とに螺合させることにより、表面パネル3をアッパーケース2の表面2aに取り付ける。
【0016】
上述したように、第1のスタッド5の表面2aからの突出高さH1が、図6に示すように表面パネル3の厚みtよりわずかに大きく形成され、かつ第1の嵌合孔13の径d1が、第1のスタッド5の径D1よりもわずかに大きく形成されている。したがって、表面パネル3の一隅3aは、図2においてX軸方向およびY軸方向ならびにZ軸方向への摺動が規制された状態でアッパーケース2の表面2aに取り付けられる。
【0017】
一方、三個の第2のスタッド6の表面2aからの突出高さH2が、図7に示すように表面パネル3の厚みtよりも大きく形成され、かつ三個の第2の嵌合孔14の径d2は第2のスタッド6の径D1よりも大きく形成されている。したがって、表面パネル3の他の三偶3b,3c,3dは、X軸方向およびY軸方向へ第2の嵌合孔14の径d2と第2のスタッド6の径D1との差(d2−D1)分だけ遊びが設けられており、移動が可能な状態でアッパーケース2の表面2aに取り付けられている。また、この三偶3b,3c,3dは、Z軸方向へ第2のスタッド6の表面2aからの突出高さH2と、表面パネル3の厚みtとの差(H2−t)分だけ隙間が設けられた状態でアッパーケース2の表面2aに取り付けられている。
【0018】
したがって、ABSによって形成されたアッパーケース2と、ABSと熱膨張係数が異なるアクリル板によって形成された表面パネル3とが、アッパーケース2内や周辺の温度変化に対して互いに異なって伸縮するが、表面パネル3の三偶が3b,3c,3dは、X軸方向およびY軸方向への摺動が可能なため、表面パネル3はアッパーケース2の表面2aから浮き上がるようなことがない。このため、表面パネル3が部分的に撓むようなことがないから、アッパーケース2の表面2aに付された文字や記号等が歪んだ状態で目視されることがないので、表面パネル3による表示機能を損なうようなことがない。
【0019】
また、表面パネル3の三偶3b,3c,3dは、Z軸方向へ第2のスタッド6の表面2aからの突出高さH2と、表面パネル3の厚みtとの差(H2−t)分だけ隙間が設けられているため、三偶3b,3c,3dのX軸方向およびY軸方向への摺動が円滑に行われる。
【0020】
また、六角穴付きボルトの頭部15aに、第2の嵌合孔14の径d2よりも大きな径D2に形成された鍔15bが設けられていることにより、表面パネル3の正面から第2の嵌合孔14が目視されるようなことがないから、第三者によって故意に第2の嵌合孔14からアッパーケース2内に異物を挿入されるようなことがない。
【0021】
なお、本実施の形態では、第2の嵌合孔14を覆う部材として六角穴付きボルト15の頭部15aに一体に鍔15bを設けるようにしたが、ワッシャーによって覆うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る表面パネルの取付構造を実施した電子機器の正面図である。
【図2】本発明に係る表面パネルの取付構造を実施した電子機器の斜視図である。
【図3】本発明に係る表面パネルの取付構造を実施した電子機器を分解して示す斜視図である。
【図4】図1におけるIV-IV 線断面図である。
【図5】図1におけるV部の拡大図である。
【図6】図4におけるVI部の拡大図である。
【図7】図4におけるVII 部の拡大図である。
【符号の説明】
【0023】
1…電子機器、2…アッパーケース、2a…表面、3…表面パネル、5…第1のスタッド、6…第2のスタッド、13…第1の嵌合孔、14…第2の嵌合孔、15…六角穴付きボルト、15b…鍔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数のスタッドが突設された筺体と、この筺体と熱膨張係数が異なる透明な材料によって形成され前記スタッドに嵌合する嵌合孔を有する表面パネルと、前記スタッドに螺合され頭部によって前記表面パネルの前記スタッドからの抜けを規制する締結部材とを備えた表面パネルの取付構造において、前記嵌合孔は、前記スタッドに嵌合する一つの第1の嵌合孔と、前記スタッドに遊びを有して遊嵌する複数の第2の嵌合孔とによって構成し、この第2の嵌合孔が嵌合する前記スタッドの突出高さを、前記表面パネルの厚みよりも大きく形成したことを特徴とする表面パネルの取付構造。
【請求項2】
前記第2の嵌合孔に嵌合するスタッドに締結される前記締結部材によって前記第2の嵌合孔を覆ったことを特徴とする請求項1記載の表面パネルの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−187110(P2008−187110A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21062(P2007−21062)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】