説明

表面保護フィルム

【課題】表面保護フィルムを、含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を用いてのハードコート処理、或いは、低反射処理又は防汚処理によって形成された機能性層を被着体として適用した場合も、剥離の際の静電気発生自体が抑制され、剥離帯電による被着体汚染や、剥離帯電に起因するスパーク等による障害の発生を抑制することができる表面保護フィルムの提供。
【解決手段】含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を用いての処理によって形成された機能性層を被着体とし、該被着体に貼付される表面保護フィルムであって、基材フィルム表面に形成した粘着剤層を有し、該粘着剤層を構成するアクリル系粘着剤に、少なくとも、帯電防止剤と、アクリル系粘着剤100質量部に対して0.005質量部よりも多く、5質量部よりも少ない範囲で、その構造中にフッ素或いはケイ素を含有する化合物を外添されてなる表面保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に機能性層が設けられた被着体に対しても優れた帯電防止性を有し、被着体汚染が少ない表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイ分野では、タッチパネルディスプレイにおける耐水・耐油適性の向上に対する要求や、大型テレビ等に応用されている液晶ディスプレイやプラズマディスプレイにおける表面の乱反射防止・防汚適性・耐擦過性等への要求から、表面に機能性層が積層されてなる製品が増えてきている。例えば、含フッ素化合物や含ケイ素化合物を表面に塗布したハードコート(HC)層を設けた偏光板や、低反射層を備えた反射防止(Anti Reflection:ARと略)フィルム、さらに、低反射層を備え且つアンチグレア処理(AG;防眩処理)が施されたAGLR(Anti Glare Low Reflection)偏光板等があり、目的に応じて適宜に選択され、広範に用いられている。より具体的には、例えば、タッチパネル用途の場合、パネル表面の傷つき防止のためにハードコート層を設けるが、同時に耐水性や指紋付着低減(防汚)の目的から含フッ素化合物や含ケイ素化合物を含んだ塗膜を設けたもの等が広く用いられている。また、ARフィルムは、反射率の低減と防汚性を兼ね備えたものであり、例えば、プラズマディスプレイの前面フィルターなどに使用されている。
【0003】
そして、これらの製品の、製造・運搬・販売等の工程で生じるおそれのある、これらの機能性層が設けられている表面部分の傷つきや汚染等を防止する目的で、製品の表面(被着体)の上に、さらに、再剥離性の粘着剤が塗布された表面保護フィルム(粘着フィルム)を貼付することが広く行われている。表面保護フィルムは、使用時等に被着体(製品)から容易に且つ一体的に剥離されるが、剥離する際に静電気が発生し、表面保護フィルム及び被着体に、互いに反対の極性を有する電荷として帯電する、いわゆる剥離帯電を生じる。この剥離帯電は、空気中のほこり等を引きよせて製品に汚染を生じる原因となるばかりでなく、製品の用途によっては、剥離帯電に起因するスパーク等により電子回路の破壊等の障害が発生する危険性もある。このため、表面保護フィルム用の粘着剤には、帯電防止機能、とりわけ保護フィルム剥離時の帯電圧(量)が低いことが求められている。具体的な手段として、従来より、機能性層を設ける基材表面に帯電防止剤を塗布することや、保護フィルムの粘着剤中に、界面活性剤、アルカリ金属塩、イオン性液体などの帯電防止剤を添加することが行われている。基材層と粘着剤層とからなる粘着フィルムにおいて、粘着フィルムと被着体の剥離帯電性を良好な状態に調整する方法についての提案もある(特許文献1参照)。すなわち、該文献では、粘着主剤以外の粘着剤層の帯電順位を変化させ得る低分子量成分を粘着剤層に含有させる際に、その添加量を、JISに準拠して剥離帯電量を測定した場合の被着体の帯電量が10nC以下であるように調整すれば、剥離する際に発生する剥離帯電の小さなフィルムが容易に得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−147296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術は、対象とするフィルムが、良好な剥離帯電性を示すか否かの検証には役立つものの、剥離帯電は、被着体(機能層)と粘着剤層との兼ね合いで生じるものであり、種々の材料からなる被着体のそれぞれに対して最適な表面保護フィルムを得るためには、被着体毎に検討を要し、表面保護フィルムの粘着剤層に含有させる最適な構成とすることは容易ではない。本発明者らの検討によれば、特に、近年、多用されている、含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を利用して表面に機能性を付与してなる機能層を備えた、ハードコート(HC)偏光板や、前記したARフィルムやAGLR偏光板等の被着体に対しては、従来の表面保護フィルムでは剥離帯電を低く抑えることができず、このような被着体に対しても最適な表面保護フィルム(粘着フィルム)を開発することが急務であるとの認識を持つに至った。
【0006】
したがって、本発明の目的は、表面保護フィルムを、特に、含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を用いてハードコート処理した機能性層、或いは、これらの化合物によって低反射もしくは防汚処理した機能性層を表面に有するいずれの被着体に適用した場合にも、剥離の際における静電気の発生自体を抑制でき、剥離帯電による被着体汚染や、剥離帯電に起因するスパーク等により電子回路の破壊等の障害の発生を抑制することができる、実用価値の高い表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を用いての処理によって形成された機能性層を被着体とし、該被着体に貼付される表面保護フィルムであって、基材フィルム表面に形成した粘着剤層を有し、該粘着剤層を構成するアクリル系粘着剤に、少なくとも、帯電防止剤と、アクリル系粘着剤100質量部に対して0.005質量部よりも多く、5質量部よりも少ない範囲で、その構造中にフッ素或いはケイ素を含有する化合物を外添されてなることを特徴とする表面保護フィルムを提供する。
【0008】
好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。その構造中にフッ素或いはケイ素を含有する化合物が、ポリエーテル変性ポリオルガノシロキサン、含フッ素アルキル基含有のフッ素系界面活性剤、その構造中にフッ素或いはケイ素を含有するアクリル系ポリマー、のいずれかから選択される上記表面保護フィルム。その構造中にフッ素或いはケイ素を含有する化合物が、アクリル系粘着剤100質量部に対して、0.05〜4質量部の範囲で、且つ、前記帯電防止剤が、アクリル系粘着剤100質量部に対して、0.1〜3質量部の範囲で外添されている上記表面保護フィルム。前記被着体が、偏光板の表面に形成されている上記表面保護フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面保護フィルムを貼付する被着体が、特に、含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を用いてのハードコート処理、或いは、これらの化合物によって低反射処理もしくは防汚処理して形成された機能性層である場合にも、剥離の際における静電気の発生自体が抑制され、剥離帯電による被着体汚染や、剥離帯電に起因するスパーク等により電子回路の破壊等の障害の発生を抑制することができる優れた表面保護フィルムが提供される。この結果、表面保護フィルムを施した製品の商品価値を損なうことがなく、その高い品質を確実に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】剥離試験の模式図である。
【図2】実施例の結果を示す図である。
【図3】比較例の結果を示す図である。
【図4】実施例の結果を示す図である。
【図5】実施例及び比較例の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明者らは、特に、含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を用いて処理することで表面に機能性層が形成されている、ハードコート(HC)偏光板、低反射性や防汚性を付与したAR偏光板やAGLR偏光板のいずれにも適用できる最適な表面保護フィルムについて鋭意検討した結果、これらの被着体(機能性層)に対しては、従来の表面保護フィルムでは不十分であり、この場合には、静電気の発生自体の低減が十分になされず、むしろ増大することがわかった。本発明者らは、上記した場合に、発生する静電気量が低減できない理由を、偏光板表面がフッ素化合物或いはケイ素化合物で覆われたことで、帯電列における被着体と粘着剤の差が広がったため、剥離の際に、発生する静電気量が増大したものと考えている。この場合に、例えば、粘着剤層中に、界面活性剤のようなものを含有させることで、粘着剤と被着体との界面にブリードアウトさせて剥離帯電を低く抑える方法もある。しかし、この方法では、粘着剤層中に多量に界面活性剤を添加する必要があるが、剥離力の低下や、剥離後に深刻な被着体汚染をもたらすので適当な方法ではない。
【0012】
これに対し、本発明者らは、表面保護フィルムを構成する粘着剤層を、アクリル系粘着剤に、帯電防止剤に加え、さらに、その構造中にフッ素或いはケイ素を有する化合物を添加することが、表面の含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を用いて処理した機能性層を被着体とする場合に、剥離した際における静電気の発生自体を抑制する手段として有効であることを見出して本発明に至った。より具体的には、その構造中にフッ素或いはケイ素を含有する化合物として、ポリエーテル変性ポリオルガノシロキサンや、含フッ素アルキル基含有の、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の、各フッ素系界面活性剤や、その構造中にフッ素やケイ素を含有するアクリル系ポリマーを粘着剤層中に含有させることが有効であることを見出した。
【0013】
本発明者らは、本発明の構成によって前記した優れた効果が得られる理由を下記のように考えている。すなわち、粘着剤層中に、その構造中にフッ素或いはケイ素を有する化合物を添加させた結果、該粘着剤層と、被着体となる、含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を用いて処理することで表面に形成された機能性層との帯電列の差が縮まり、剥離の際に発生する静電気量を抑えることが可能となったためと考えている。さらに詳しくは、帯電列順位では、(プラスに帯電)アクリル樹脂>シリコン樹脂>フッ素樹脂(マイナスに帯電)であるため、アクリル樹脂とシリコン樹脂との剥離帯電では、アクリル樹脂がプラスに、シリコン樹脂がマイナスに、それぞれ帯電する。一方、シリコン樹脂とフッ素樹脂[例えば、テフロン(登録商標)]との剥離帯電では、シリコン樹脂がプラスに、フッ素樹脂がマイナスに帯電する。このように、シリコン樹脂は相手次第で、プラスにもマイナスにも帯電される。本発明者らは、このため、粘着剤層中に、その構造中にフッ素或いはケイ素を有する化合物を添加させることで、発生する電荷が容易に中和され、結果として剥離帯電を低くできたのではないかと考えている。特に、剥離する物質或いは剥離される物質の帯電列の中間に位置する第三物質が存在する場合に、剥離帯電が低くなる可能性があると考えられるが、本発明で好ましく使用する、ポリエーテル変性ポリオルガノシロキサン、含フッ素アルキル基含有のフッ素系界面活性剤、その構造中にフッ素或いはケイ素を含有するアクリル系ポリマーを添加したことによって、同様の効果が発揮されたものと推論される。上記のことは、AG処理だけを施した偏光板に対しては、帯電防止剤だけの添加でも剥離帯電を下げることができ、従来の表面保護フィルムによっても対応できたのに対し、近年、多用されている、含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を利用して表面に機能性を付与してなる機能層を備えた、ハードコート(HC)偏光板等に対しては、従来の表面保護フィルムでは剥離帯電を低く抑えることができなかった事実とも一致する。すなわち、本発明は、従来の表面保護フィルム製品では不十分であった、含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を用いての処理によって形成された機能性層を被着体とし、該被着体に貼付するための表面保護フィルムとして特に有用である。
【0014】
本発明者らの検討によれば、特に、アクリル系粘着剤に、ポリエーテル変性ポリオルガノシロキサンや、含フッ素アルキル基含有の、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の、各フッ素系界面活性剤等と、帯電防止剤とを併用して粘着剤層を形成することで、剥離の際に発生する静電気が速やかに除電され、より優れた帯電防止効果が発揮されることがわかった。先の推論に基づくと、その構造中にフッ素或いはケイ素を有する化合物を粘着剤層中に添加した場合は、発生する静電気量を少なくする効果があり(しかし、発生した電荷を中和する効果には乏しい)、一方、イオン液体などの帯電防止剤の添加は、少量発生した電荷の中和に有効に働くと考えられる。本発明で対象とする被着体となる前記した機能性層の場合は、発生する静電気量が大きすぎ、常識的な帯電防止剤の添加量では電荷中和能を超えてしまい、従来の保護フィルムでは剥離帯電を低く抑えることができなかったものと考えられる。一方、帯電防止剤の添加量を多くすることは、被着体汚染という別の問題を生ずるため、有効な解決策とはならない。
【0015】
本発明者らの検討によれば、中でも、その構造中にケイ素を含有する化合物よりも、その構造中にフッ素を含有する化合物を添加させた方が、よりバランスのよい効果が得られるので好ましい。また、本発明の構成によれば、添加剤の全体としての使用量を少なくできるため、添加剤を含有させたことによって生じるおそれのある剥離力の低下が少なく、被着体汚染も極めて少ないことがわかった。被着体汚染を少なくできれば、剥離後の被着体の商品価値を下げることがなくなる。また、剥離力の低下を少なくできれば、例えば、パネル製造工程で、うち抜き、加圧・加熱処理を行っても、保護フィルムの浮きや剥がれが発生しなくなるので、製品の保護をより確実に行うことができる。
【0016】
さらに、本発明者らの検討によれば、特に、アクリル系粘着剤に、例えば、フルオロアルキル基含有アクリルポリマー等の、その構造中にフッ素やケイ素を含有するアクリル系ポリマーを添加する構成とすれば、被着体と粘着剤の帯電列の差を縮め、発生する静電気量を抑えることに加えて、下記のような効果が得られる。上記添加剤と粘着剤層のベースとなるポリマーとは、いずれもアクリル系成分同士のブレンドであるため、相溶性が悪いことに起因する塗膜の不透明化や、界面へのマイグレーションを少なくできる。さらに、必要に応じ、フルオロアルキル基含有アクリルポリマー等に官能基を持たせ、硬化剤で架橋するようにすれば、被着体汚染の低減をさらに大幅に改善することができる。また、この場合も剥離力の低下が少ないため、剥離バランスが良好な表面保護フィルムを得ることができる。また、前記したように、被着体汚染を少なくできれば、剥離後の被着体の商品価値を下げることがなくなる。さらに、剥離力の低下を少なくできれば、例えば、パネル製造工程で、うち抜き、加圧・加熱処理を行っても、保護フィルムの浮きや剥がれが発生しなくなるので、製品の保護をより確実に行うことができる。
【0017】
本発明の表面保護フィルムを構成する粘着剤層の形成材料である、ベースとなるポリマー、これに添加する、その構造中にフッ素或いはケイ素を有する化合物、帯電防止剤、必要に応じて使用する硬化剤(架橋剤)等について説明する。
【0018】
(ベースポリマー)
本発明では、粘着剤のベースポリマーとして、アクリル系樹脂を用いる。本発明に好適なアクリル系共重合体は、アルキレンオキサイド基を有するアクリルモノマー(以下、AO基含有モノマーと呼ぶ)及び水酸基を含有するアクリルモノマー(以下、OH基含有モノマーと呼ぶ)を含むモノマーを、適宜に選択し共重合することで得ることができる。例えば、反応に使用する全モノマー中におけるAO基含有モノマーの含有率が1〜50%程度、より好ましくは5〜20%、OH基含有モノマーの含有率が0.1〜10%程度、より好ましくは0.5〜5%となるような質量比率で共重合させるとよい。
【0019】
より具体的には、側鎖炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸エステルをベースとして、これに、アルキレンオキサイド基を持つ(メタ)アクリル酸エステル及び水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルのモノマーを、上記の範囲で使用して共重合体を得る。上記において使用できる具体的なモノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ラウリルメタクリレート(LMA)、2−プロピルヘプチルアクリレート(2PHA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、ブチルアクリレート(BA)、エチルアクリレート(EA)、メチルアクリレート(MA)、#400メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート[MPEGMM(#400)]、#200メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート[MPEGMA(#200)]、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)、4−ヒドロキシブチルメタクリレート(4HBA)が挙げられ、適宜に組み合わせて使用することができる。
【0020】
上記ベースポリマー(アクリル系共重合体)は、例えば、下記のようにして製造できる。還流冷却器付きの反応装置に、側鎖炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸エステルを75〜90質量部、AO基含有モノマーを5〜20質量部、OH基含有モノマーを2〜5質量部に、有機溶剤とアゾビスイソブチロニトリル等の重合開始剤を加え、撹拌しながら有機溶剤の還流温度で数時間反応させることで容易に得られる。
【0021】
(添加剤)
本発明を特徴づける上記のベースポリマーに添加させる、その構造中にフッ素或いはケイ素を含む化合物としては、下記のものが挙げられる。例えば、ポリエーテル変性ポリオルガノシロキサンや、含フッ素アルキル基含有の、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の、各フッ素系界面活性剤等を用いることができる。市販されているものとしては、側鎖にポリエーテル鎖を有するポリエーテル変性ポリオルガノシロキサンである、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017、X−22−3939A、X−22−4741、KF−1002(商品名:以上、信越化学工業社製)や、両末端にポリエーテル鎖を有するポリエーテル変性ポリオルガノシロキサンである、X−22−4952、X−22−4272、X−22−6266(商品名:以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0022】
本発明においては、下記式(1)又は(2)で示される構造を有するオルガノポリシロキサンからなる化合物も好適に使用できる。

上記式(1)中のR2、R4、R5は、アルキレン基であり、nは1〜100の整数、aおよびbはそれぞれ0〜100の整数である。
【0023】

上記式(2)中の、R1は1価の有機基、R2〜R4はアルキレン基、R5は水素又は1価の有機基、mは0〜100の整数、nは1〜100の整数、aおよびbはそれぞれ0〜100の整数である。
【0024】
ノニオン型フッ素含有化合物としては、パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有オリゴマーであるメガファック477、メガファック470、メガファック444、メガファック445(商品名:以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。アニオン型フッ素含有化合物としては、パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有カルボン酸であるメガファック410(商品名:DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0025】
フッ素系界面活性剤としては、ヘキサフルオロプロペンオリゴマーから誘導して開発されたパーフルオロアルケニル基を有するフタージェント222F[商品名:ポリオキシエチレン型(ノニオン系)]や、フタージェント310[商品名:(トリメチル{3−{4−[3,4,4,4−テトラフルオロ−2−(ペルフルオロイソプロピル)−1,3−ビス(トリフルオロメチル)−1−ブテニルオキシ]ベンゾイルアミノ}プロピル}アンモニウム=ヨージド(カチオン系)]、さらに、フタージェント100[商品名:(パーフルオロアルケニル(C=3,9)オキシベンゼンスルホン酸塩(Na,K)]、フタージェント110[商品名:(4−ペルフルオロヘキセニルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム)(アニオン系)]等が挙げられる。以上はいずれも株式会社ネオス製である。
【0026】
これらの化合物の添加量としては、共に粘着剤中に添加させる帯電防止剤の量によっても異なるが、粘着剤中に、アクリル系粘着剤100質量部に対して、0.005質量部よりも多く、5質量部よりも少ない範囲とする。より好ましくは0.05〜3質量部の範囲、さらには0.1〜3質量部の範囲で外添させればよい。含有量が多くなると、剥離力が低下して被着体汚染を生じるおそれがあるので好ましくない。本発明者らの検討によれば、0.005質量部以下と極端に少な過ぎると本発明の効果が十分に認められないが、0.1〜3質量部、更には0.1〜1.0質量部程度の少量で十分な効果が得られる。また、これらの化合物の粘着剤層への添加は、下記のような方法で行えばよい。例えば、先に説明したようにして得たベースポリマーに、上記の化合物と、後述する帯電防止剤、トルエン等の有機溶剤を添加して混合する。この場合、25℃における粘度が3,000〜5,000mPa・s、その固形分が34〜36%程度のアクリル系共重合体組成物溶液が得られるが、本発明で使用する粘着剤組成物は、この溶液に、後述するような硬化剤(架橋剤)及び硬化遅延剤を加えて充分に混合することで、粘着性等の特性を適宜に調整して得られる。
【0027】
さらに、本発明においては、前記したベースポリマー(アクリル系共重合体)に添加させる、その構造中にフッ素或いはケイ素を含む化合物として、構造中にフッ素やケイ素を含むアクリル系ポリマーを使用することもできる。かかるポリマーは、ベースポリマーとの相溶性がよく、粘着剤層中に良好な状態で混合されて、本発明の効果を発揮することができる。具体的には、前記したベースポリマーを合成する際に使用するモノマーに、その構造中にフルオロアルキル基を持つ(メタ)アクリル酸エステルや、その構造中にケイ素を持つ(メタ)アクリル酸エステル等の含フッ素或いは含ケイ素モノマーを加えて得られる、フッ素或いはケイ素を含むポリマーを使用することができる。本発明で使用する、その構造中に、フッ素或いはケイ素を含むモノマーとしては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0028】
例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ノナフルオロブチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロラウリル(メタ)アクリレート、トリデカフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロラウリルエチル(メタ)アクリレート、等のフッ化アルキル(メタ)アクリレート類を使用できる。
【0029】
また、α−フルオロ−ω−[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ポリジフルオロメチレン、2−[N−メチル−N−(ペルフルオロ−n−アルキルスルホニル)アミノ]エチル(メタ)アクリレート、等の含フッ素親水性ノニオン或いはアニオン性モノマーを使用できる。
【0030】
また、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、等の(メタ)アクリロキシアルキルシラン類を使用できる。
【0031】
フッ素或いはケイ素を含むポリマーを合成する際に使用する、全モノマー中におけるこれらの含フッ素或いは含ケイ素モノマーの量は、質量比率で、1〜99%、より好ましくは5〜90%である。この際に、側鎖炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸エステルを上記に加えてベースとしてもよい。さらに、このようなベースとするモノマーに加えて、例えば、AO基含有モノマーを1〜80%程度、より好ましくは5〜50%、OH基含有モノマーを0.1〜50%程度、より好ましくは1〜30%となるような質量比率で使用して合成してもよい。AO基含有モノマーやOH基含有モノマーには、ベースポリマーの説明の際に挙げたものを、いずれも使用することができる。
【0032】
その構造中にフッ素やケイ素を含むアクリル系ポリマーは、前記したベースポリマーと同じような方法で得ることができるが、この場合には、有機溶剤を使用せず、また、必要に応じて重合連鎖移動剤を加えて、80℃前後の温度で還流させながら重合することで製造する。反応後、室温に冷却して得られるポリマーは、25℃における粘度が50,000〜200,000mPa・s、その固形分が99%程度のものとして得、これを前記したベースポリマーに添加することが好ましい。その平均分子量は、1,000〜100,000程度のものが好ましい。このような、その構造中にフッ素やケイ素を含有するアクリル系ポリマーの添加量としては、共に添加させる帯電防止剤の量によっても異なるが、粘着剤中に、質量基準で、0.1〜5%程度、より好ましくは0.5〜3%の範囲で含有させるようにするとよい。その構造中にフッ素やケイ素を含むアクリル系ポリマーの、前記したベースポリマーへの添加方法は、下記のようにすることが好ましい。先ず、両者をそれぞれに合成した後、合成したベースポリマーに帯電防止剤と有機溶剤を加えた後、冷却して得られた粘度3,000mPa・s程度の溶液に、フッ素やケイ素を含むアクリル系ポリマーを添加して充分に撹拌して均一な溶液にする。その後、この溶液に、必要に応じて、後述するような硬化剤(架橋剤)及び硬化遅延剤を加えて充分に混合することで、本発明で使用する粘着剤組成物を得ることができる。
【0033】
(帯電防止剤)
本発明で使用する帯電防止剤としては、従来、剥離帯電を低減させる目的で使用されている、金属塩、イオン性液体のような有機塩等をいずれも使用できる。本発明では、特に、剥離帯電により生じた電荷の偏りを速やかに中和するために帯電防止剤を使用しているので、高い電気伝導度のものが好ましい。具体的には、本発明で使用する帯電防止剤としては、電気伝導度の値が0.1mS/cm以上のものが好適である。下記に挙げる有機塩は、いずれも電気伝導度の値が0.1mS/cm以上のものであり、いずれも本発明に好適である。
【0034】
本発明において使用できる金属塩としては、例えば、リチウム=トリフルオロメタンスルホネート、リチウム=ビス(フルオロスルフォニル)イミド、リチウム=ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、リチウム=ビス(ペンタフルオロエチルスルフォニル)イミド、等のフッ素を含有するものが挙げられる。また、有機塩としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム=ビス(フルオロスルフォニル)イミド、1−オクチルピリジニウム=ビス(フルオロスルフォニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム=ビス(フルオロスルフォニル)イミド、3−メチルピラゾリウム=ビス(ペンタフルオロエチルスルフォニル)イミド、トリメチルスルホニウム=ビス(フルオロスルフォニル)イミド、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウム=テトラフルオロボレート、1−ブチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ヘキシルピリジニウム=ビス(フルオロスルフォニル)イミド、1−オクチルピリジニウム=ビス(フルオロスルフォニル)イミド、4−メチル−1−オクチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム=ヘキサフルオロフォスフェイト、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム=クロライド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム=ブロマイド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム=ビス(ペンタフルオロエチルスルフォニル)イミド、等が挙げられる。これらの帯電防止剤の添加量としては、帯電防止剤と共に添加する、先に説明した、その構造中にフッ素或いはケイ素を含有する化合物の量によっても異なるが、アクリル系粘着剤100質量部に対して、0.1〜3質量部の範囲で、より好ましくは0.1〜2質量部程度の範囲で外添させればよい。
【0035】
(硬化剤)
本発明の表面保護フィルムを特徴づける粘着剤層は、上記以外に、さらに硬化剤(架橋剤)を配合して、その一部を架橋させるようにして形成してもよい。このようにすれば、粘着剤層の粘着性及び剥離性が改善され、表面保護フィルムを剥離した際に生じる被着体汚染の問題をより大幅に改善できる。この際に使用する硬化剤としては、イソシアネート系、エポキシ系、アジリジン系、メラミン系、金属系等をいずれも用いることができる。具体的には、デュラネートTPA−100(商品名:ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、旭化成ケミカルズ製)や、デュラネートT4330−75B(商品名:ヘキサメチレンジイソシアネート/イソホロンジイソシアネート=70/30、旭化成ケミカルズ製)等を使用することができる。これらの硬化剤の添加量としては、粘着剤組成物中に、質量基準で、0.1〜5%程度、より好ましくは0.5〜3%の範囲で含有させるとよい。なお、この場合に、アセチルアセトン等の硬化遅延剤を併用して配合させることで、硬化(架橋)状態を適宜に調整してもよい。
【0036】
(表面保護フィルムの作成)
本発明の表面保護フィルムは、上記のような成分からなる粘着剤組成物を使用して、下記のような方法で作成することができる。先ず、基材となるポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン及び塩化ビニル等のプラスチックフィルムを用意する。基材の厚みは、通常、40μm程度である。このようなフィルムに、直接、粘着剤組成物を、粘着剤層厚が25μm程度となるようにバーコーター等を用いて塗工する。これを90℃程度の温度で60秒程乾燥させて粘着剤層を形成後、得られた粘着剤層の上に、シリコーンコート等で一方の面が撥水処理されたポリエステル等のプラスチックフィルムからなるセパレーターを被覆することで、本発明の表面保護フィルムが得られる。本発明の表面保護フィルムは、特に硬化剤等を添加した場合は、この状態で、数日間、養生後、製品に適用するようにすれば、より安定した効果が得られるものとなる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、以下の記載で「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0038】
<実施例1>
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応装置を用い、窒素ガスを封入後、反応容器に、酢酸エチル75部、アセトン15部、2−エチルヘキシルアクリレート80部、#400メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート20部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2部および重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル)0.2部を仕込んだ。次に、攪拌機で攪拌しながら溶剤の還流温度で7時間反応させた。反応終了後、含ケイ素化合物であるグラノール100(商品名:AO末端水酸基型のポリエーテル変性ポリオルガノシロキサン、共栄社化学製)を0.1部、帯電防止剤としてリチウム=ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドを0.3部、及びトルエン95部を添加して混合し、該混合物を室温まで冷却し、30℃における粘度が3,000mPa・s、固形分30%の共重合体組成物溶液Aを得た。
【0039】
上記で得られた共重合体組成物溶液Aの固形分100部に対して、硬化剤(架橋剤)としてデュラネートTPA−100(商品名:ヘキサメチレンジイソシアネート=イソシアヌレート型架橋剤、旭化成ケミカルズ製)を2部およびアセチルアセトンを2部、を添加して充分に混合して粘着剤組成物を得た。
【0040】
該粘着剤組成物を粘着剤層厚が25μmになるように、基材である38μm厚のポリエステルフィルムに、バーコーターを用いて直接塗工した。その後、90℃で60秒乾燥させて粘着剤層を形成した後、該粘着剤層にシリコーンコートされた38μm厚のポリエステルフィルムセパレーターを被覆して、本実施例の表面保護フィルムを作製した。更に、上記で得た表面保護フィルムを、23℃、50%RH中で7日間養生し、各評価試験の試料とした。
【0041】
<実施例2〜5>
実施例1で使用したモノマー、含ケイ素化合物及び帯電防止剤の、種類と組成比を表1に示したように変えた以外は、実施例1と同様の方法で、それぞれ粘着剤組成物を得た。そして、得られた粘着剤組成物をそれぞれに用いて、実施例1と同様の方法で実施例2〜5の表面保護フィルムを得た。
【0042】
<比較例1〜5>
実施例1で使用したモノマーの種類と組成比を表2に示したように変え、表2に示したように、含ケイ素化合物又は帯電防止剤のいずれかが含有されてなる粘着剤組成物をそれぞれ得た。そして、得られた粘着剤組成物をそれぞれに用いて、実施例1と同様の方法で比較例1〜4の表面保護フィルムを得た。比較例1及び2は、帯電防止剤のみを添加した構成であり、比較例3及び4は、含ケイ素化合物のみを添加した構成である。また、含ケイ素化合物及び帯電防止剤のいずれも含有しない粘着剤組成物を得、これを用いて、実施例1と同様の方法で比較例5の表面保護フィルムを得た。
【0043】
<評価方法>
フッ素系ハードコート剤でハードコートされたHC偏光板を被着体として、これらの表面に、上記で得た実施例及び比較例の表面保護フィルムをそれぞれに貼った後、下記のようにして剥離力及び剥離帯電圧をそれぞれ測定した。また、表面がフッ素系ハードコート剤でコートされていないAG偏光板についても同様にした。なお、このようなAG処理だけを施した偏光板は、機能性層を有するものの、帯電防止剤だけの添加でもある程度は剥離帯電を下げることができる。すなわち、本発明は、従来の表面保護フィルムでは不十分であった、含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を用いての処理によって形成された機能性層を被着体とする表面保護フィルムとして、特に有用である。
【0044】
剥離帯電圧低減の効果に関しては、確認がし易いように、被着体にポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)板を用いて検討を行った。本発明者らの検討によれば、フッ素化合物によって処理された表面をもつ偏光板よりも、PTFE板の方が剥離帯電圧は高く出るが、両者は良好な相関を示すことが確認できた。したがって、PTFE板で良好な結果が得られれば、表面がフッ素化合物によって処理された偏光板でも良好であると結論づけることができる。また、各偏光板に貼付した後、剥がした場合における被着体の汚染状況を調べ、それぞれ評価した。さらに、粘着剤面の表面抵抗をそれぞれ測定した。詳細な方法は、それぞれ下記の通りである。
【0045】
[剥離力]
(1)低速剥離力
上記したAG偏光板及びHC偏光板のそれぞれの機能性層側の表面及びPTFE板に、先に得た各表面保護フィルムをそれぞれ2kgfローラー1往復で圧着して貼り付け、貼付してから24時間経過後に、テンシロン引張試験機RTG−1210(商品名:エーアンドディー製)を用い、低速剥離力を測定した。測定条件は、下記の通りである。また、測定結果は表1及び表2に示した。
・引張速度:0.3m/min
・剥離方向:180°
・試料サイズ:25mm×100mm
【0046】
(2)高速剥離力
上記したAG偏光板及びHC偏光板のそれぞれの機能性層側の表面及びPTFE板に、先に得た各表面保護フィルムをそれぞれ2kgfローラー1往復で圧着して貼り付け、貼付してから24時間経過後に、高速剥離試験機(テスター産業製)を用い、高速剥離力を測定した。測定条件は、下記の通りである。また、測定結果は表1及び表2に示した。
・引張速度:30m/min
・剥離方向:180°
・試料サイズ:25mm×200mm
【0047】
[剥離帯電圧]
上記したAG偏光板及びHC偏光板のそれぞれの機能性層側の表面及びPTFE板に、先に得た各表面保護フィルムをそれぞれ2kgfローラー1往復で圧着して貼り付け、貼付してから24時間経過後に、高速剥離試験機(テスター産業製)を用い、フィルムを剥離する。そして、その際に発生する静電気量を、高精度静電器センサーSK−200、SK−030(商品名:キーエンス社製)で測定した。図1は、測定状態を示す模式図である。Aは、保護フィルムの貼付面となる側であり、基材フィルムBの表面に形成されてなる粘着剤層である。Cは、被着体の表面に設けられた機能性層を有するフィルムを示し、Eはガラス板であり、DはCとEとを固定するために用いられる粘着剤であり、Fはアルミ板である。Gは静電気センサーを示す。剥離する条件は、下記の通りである。
・引張速度:30m/min
・剥離方向:180°
・試料サイズ:A4(210mm×297mm)
【0048】
測定結果を表1及び表2に示したが、剥離帯電圧の評価は、発生した静電気の最高値と最低値によって示した。また、測定結果を、図2及び図3に示した。上記した測定方法では、測定対象とする保護フィルムが剥がれる途中までは保護フィルムに塗工された粘着剤の静電気量を測ることになり、保護フィルムが剥がれ、静電気センサーGの測定範囲外に抜けた後は、残された被着体の静電気量を測ることになる。なお、保護フィルムが正に帯電していれば、被着体は同じ大きさで負に帯電するはずであるが、上記で検討したフッ素系表面処理剤で処理したHC偏光板やPTFE板では、相手がアクリルの場合、負に帯電すると予想される。これに対し、図2及び図3に示したように、実際の測定結果もほぼそのようになった。
【0049】
[被着体汚染]
上記したAG偏光板及びHC偏光板の機能性層側の表面に、先に得た各表面保護フィルムをそれぞれ2kgfローラー1往復で圧着して貼り付けた。そして、これらの試料を70℃の環境下で3日間放置する。その後、試料を取り出し、23℃、50%RH中で24時間放置した後、試料を被着体から剥がし、汚染の度合いを目視にて観察し、下記の基準で評価した。測定結果は表1及び表2に示した。
○:汚染は認められない
△:僅かに汚染が認められる
×:汚染が認められる
【0050】
[表面抵抗値]
それぞれの表面保護フィルムの粘着面の表面抵抗値を、高抵抗率計MCP−HT450(商品名:三菱化学社製)を用いて測定した。測定結果は、表1及び表2に示した。
【0051】

【0052】

【0053】

【0054】
<結果1>
表1及び表2を比較した結果、下記の点がわかった。粘着剤自体の剥離力は、比較例5のデータでわかる。そして、粘着剤に帯電防止剤のみを添加した場合の剥離力は、比較例1又は2のデータと、比較例5のデータの比較から、この程度の添加量であれば若干の低下で留まることがわかる。ノニオン性のフッ素系界面活性剤を微少量添加した比較例3を比較例5の場合と比較すると、比較例3は添加量が少ないため、被着体汚染は生じず剥離力の低下も僅かではあるが、剥離帯電圧の抑制効果は認められない。一方、その添加量を非常に多くした比較例4では、対テフロン(登録商標)板やHC偏光板に対する剥離帯電圧が低いものの、剥離力がかなり低下する上に被着体汚染を生じている。これらのことから添加剤の添加量は0.005部より多く、5.0部より少ない場合に最適なことがわかる。
【0055】
表1及び2、図2及び3に示した、実施例1〜5の結果と、比較例1又は2の結果との比較から下記のことが確認された。帯電防止剤に加えて、その構造中にフッ素或いはケイ素を含む化合物を適量含有させた実施例の場合は、いずれも、帯電防止剤のみを加えた比較例の場合よりも、粘着剤層の表面抵抗値を低下させることができた。さらに、剥離帯電圧も、いずれの被着体から剥離した場合も非常に低くなっており、静電気の発生が低減されることが確認できた。また、剥離力の低下は、帯電防止剤のみを加えた場合と、同程度からやや劣る程度に留まり、被着体汚染に影響を与えることはなかった。
【0056】
添加物とした、その構造中にフッ素或いはケイ素を含む化合物による違いについて考察した。その結果、実施例1及び2のケイ素を含む化合物を添加した例よりも、実施例3〜5のフッ素を含む化合物を添加した例の場合の方が、剥離帯電圧については、同じか若干劣るものの、剥離力の低下の度合いが小さく、その一方で表面抵抗値がより小さくなって、静電気の発生自体を少なくでき、バランスのよい効果が得られることを確認した。
【0057】
<実施例6>
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応装置を用い、窒素ガスを封入後、反応容器に、酢酸エチル75部、アセトン15部、2−エチルヘキシルアクリレート73部、ブチルアクリレート20部、#400メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート7部、4−ヒドロキシエチルアクリレート3部および重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル)0.2部を仕込んだ。次に、撹拌機で撹拌しながら溶剤の還流温度で7時間反応させた。反応終了後、帯電防止剤としてリチウム=ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドを1.0部、及びトルエン95部を添加して混合し、該混合物を室温まで冷却し、30℃における粘度が3,000mPa・s、固形分35%の共重合体組成物溶液A−1を得た。
【0058】
一方、下記のようにして、添加剤用のポリマーを合成した。撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応装置を用い、窒素ガスを封入後、反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート47.5部、#400メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート47.5部、ライトエステルFM−108[商品名:2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート、共栄社化学製]を5部、トリグリコールジメルカプタン3部および重合開始剤V−65(商品名:[2,2’-Azobis(2,4-dimethylvaleronitrile)、和光純薬工業製]を0.02部仕込んだ。次に、撹拌機で撹拌しながら80℃の温度を保ちながら7時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、30℃における粘度が70,000mPa・s、固形分99%の共重合体組成物溶液B−1を得た。
【0059】
先に得られた共重合体組成物溶液A−1の固形分100部に対して、共重合体組成物溶液B−1を2部加え、充分に混合した。上記で得られた共重合体組成物溶液の固形分100部に対して、架橋剤として旭化成ケミカルズ株式会社製デュラネートTPA−100(ヘキサメチレンジイソシアネート=イソシアヌレート型架橋剤)を2部と、アセチルアセトンを2部とを添加して充分に混合して粘着剤組成物を得た。
【0060】
該粘着剤組成物を粘着剤層厚が25μmになるように、基材である38μm厚のポリエステルフィルムに、バーコーターを用いて直接塗工した。その後、90℃で60秒乾燥させて粘着剤層を形成した後、該粘着剤層にシリコーンコートされた38μm厚のポリエステルフィルムセパレーターを被覆して、本実施例の表面保護フィルムを作製した。さらに、上記で得た表面保護フィルムを、23℃、50%RH中で7日間養生し、各評価試験の試料とした。評価は、剥離力、剥離帯電圧、表面抵抗値のそれぞれを、実施例1で行ったと同様にして測定することで行った。評価結果は、表5に示した。
【0061】
<実施例7〜12及び比較例6〜8で使用するポリマーの合成>
(1)共重合体組成物溶液A−2の合成
モノマー組成を、2−エチルヘキシルアクリレートを90部、ブチルアクリレート10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2部とし、帯電防止剤として、1−オクチルピリジニウム=ビス(フルオロスルフォニル)イミドを1.0部を添加した以外は、実施例6で製造した共重合体組成物溶液A−1と同様の方法で、共重合体組成物溶液A−2を得た。
【0062】
(2)添加剤用のポリマーの合成
実施例6で製造した共重合体組成物溶液B−1のモノマー組成を、表4に示したように変えた以外は、それぞれ同様の方法で、共重合体組成物溶液B−2〜B−7を合成した。
【0063】

【0064】
<実施例7〜12及び比較例6〜8>
上記で得た共重合体組成物溶液A−1又はA−2、添加剤用のポリマーである共重合体組成物溶液B−2〜B−7、及び硬化剤をそれぞれ表5に示した種類と量で使用した以外は、実施例6で行ったと同様の方法で、各粘着剤組成物を得た。そして、得られた粘着剤組成物を用い、実施例6で行ったと同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。さらに、得られた表面保護フィルムを、23℃、50%RH中で7日間養生し、各評価試験の試料とし、実施例6と同様に評価を行い、評価結果を表5及び6に示した。
【0065】

【0066】

【0067】

【0068】
<結果2>
表5及び表6を比較した結果、下記の点がわかる。粘着剤に帯電防止剤と含フッ素或いは含ケイ素を有するアクリル系ポリマーを添加した実施例では、これを含まない比較例と比べて剥離帯電圧が格段に低くなることを確認した。さらに、粘着剤層の表面抵抗値も、添加しないものと比較して低減しており、静電気の発生自体が低減していることを確認した。また、剥離試験時における被着体汚染を観察したところ、実施例の場合は、いずれも汚染は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を用いての処理によって形成された機能性層を被着体とし、該被着体に貼付される表面保護フィルムであって、基材フィルム表面に形成した粘着剤層を有し、該粘着剤層を構成するアクリル系粘着剤に、少なくとも、帯電防止剤と、アクリル系粘着剤100質量部に対して0.005質量部よりも多く、5質量部よりも少ない範囲で、その構造中にフッ素或いはケイ素を含有する化合物を外添されてなることを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
前記その構造中にフッ素或いはケイ素を含有する化合物が、ポリエーテル変性ポリオルガノシロキサン、含フッ素アルキル基含有のフッ素系界面活性剤、その構造中にフッ素或いはケイ素を含有するアクリル系ポリマー、のいずれかから選択される請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記その構造中にフッ素或いはケイ素を含有する化合物が、アクリル系粘着剤100質量部に対して、0.05〜3質量部の範囲で、且つ、前記帯電防止剤が、アクリル系粘着剤100質量部に対して、0.1〜3質量部の範囲で外添されている請求項1又は2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
前記被着体が、偏光板の表面に形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−63712(P2011−63712A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215506(P2009−215506)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000105877)サイデン化学株式会社 (39)
【Fターム(参考)】