説明

表面修飾シリコン粒子

【課題】充放電時の容量を確保でき、かつ、導電助剤または集電体からの脱落や被膜の破壊を抑制・防止される負極活物質を提供する。
【解決手段】シリコン粒子、および前記シリコン粒子表面をシランカップリング剤で処理することにより形成される有機シラン層を有し、
前記シランカップリング剤は、下記式(1):


ただし、Rは、それぞれ独立して、π電子を有する有機基またはローンペア電子を有する元素を含む有機基を表わし;Yは、一価の加水分解性基を表わし;nは、1〜3の整数である、で示される、表面修飾シリコン粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面修飾シリコン粒子、特にリチウムイオン二次電池用表面修飾シリコン粒子、その製造方法、および当該表面修飾シリコン粒子を負極材(負極活物質)として用いるリチウムイオン二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大気汚染や地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用二次電池としては、全ての非水電解質電池(非水系溶媒型二次電池)の中で最も高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。
【0004】
ところで、負極活物質は充放電に伴う体積変化の繰り返しにより、その表面に形成された電解液と電極表面の安定界面が破損するので、安定界面を柔軟な組成のものにして体積変化に対応したリチウムイオン二次電池が提案されている(特許文献1)。特許文献1には、式(I):(R)(R)C=C(R)−C(R)=C(R)(R)[上記式中:R〜Rは、アルキル基または水素原子]の重合体による被膜で覆われる負極活物質が開示される。特許文献1によると、このようにエラスティシティーを有する被膜で負極活物質を覆うことで、体積変動に応じて伸縮自在に変形して、被膜の破壊を抑制すると共に、非水電解液と負極活物質との副反応を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−269417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の負極活物質では、被膜は核となる負極活物質と結合しておらず、また、導電助剤や集電体との相互作用はファンデルワールス力によるため非常に低いあるいはほとんどない。このため、特許文献1の負極活物質は、充放電に伴う体積変動により、導電助剤または集電体から脱落しやすいという課題があった。なお、上記体積変動は、リチウムの吸蔵能力が高いほど大きい。このため、二次電池の性能が高いほど、上記課題が顕著に現れる。
【0007】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、導電助剤または集電体からの脱落を抑制・防止できる負極活物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、これらの問題を解決するため種々の検討を行った。その結果、特定のシランカップリング剤で表面修飾されたシリコン粒子は、粒子が導電助剤または集電体からの脱落、および表面に形成された被膜の破壊を有効に防止できることを見出した。ゆえに、このような表面修飾シリコン粒子は、リチウムイオン二次電池用電極の負極活物質として好適であることが判明した。上記知見に基づいて、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、シリコン粒子表面を特定の構造を有するシランカップリング剤で処理してなる表面修飾シリコン粒子に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の表面修飾シリコン粒子によると、粒子が導電助剤または集電体からの脱落、および表面に形成された被膜の破壊を有効に抑制・防止できる。ゆえに、本発明の表面修飾シリコン粒子は、リチウムイオン二次電池用電極の負極材、特に負極活物質として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の表面修飾シリコン粒子を使用したリチウムイオン二次電池の代表的な全体構造を模式的に表した断面概略図である。
【図2】本発明の表面修飾シリコン粒子を使用したリチウムイオン二次電池の代表的な外観を表した斜視図である。
【図3】組電池の外観図である。
【図4】組電池を搭載した車両の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、シリコン粒子、および前記シリコン粒子表面をシランカップリング剤で処理することにより形成される有機シラン層を有し、
前記シランカップリング剤は、下記式(1):
【0013】
【化1】

【0014】
ただし、Rは、それぞれ独立して、π電子を有する有機基またはローンペア電子を有する元素を含む有機基を表わし;Yは、一価の加水分解性基を表わし;nは、1〜3の整数である、で示される、表面修飾シリコン粒子を提供する。なお、本明細書中では、シランカップリング剤によるシリコン粒子表面の処理を、単に「表面処理」あるいは「表面修飾」とも称する。
【0015】
リチウムイオン2次電池の重要な性能である容量は、リチウムイオンの吸蔵・放出量に依存する。従来、リチウムイオン二次電池の負極には充放電サイクルの寿命やコスト面で有利な炭素・黒鉛系材料が用いられてきた。炭素・黒鉛系の負極材料では、最大リチウム導入化合物であるLiCから得られる理論容量372mAh/g以上の充放電容量が得られない。より高容量化を目的として、炭素・黒鉛系負極材料の代わりに、リチウムと合金化する材料を用いることが提案されている。例えば、Si材料は、充放電において下記の反応式のように1molあたり4.4molのリチウムイオンを吸蔵放出し、Li22Siにおいては2000mAh/g程度もの理論容量を有する。
【0016】
【数1】

【0017】
しかし、負極にリチウムと合金化する材料を用いたリチウムイオン二次電池は、充放電時の負極の膨張収縮が大きい。例えば、リチウムイオンを吸蔵した場合の体積膨張は、黒鉛では約1.2倍であるのに対し、Si材料では約4倍にも達する。したがって、上記特許文献1によるように、単にシリコン粒子を被膜で覆うだけでは、充放電時の体積変化(膨張収縮)に追随できず、被膜が剥離する可能性がある。
【0018】
また、リチウム含有ケイ素酸化物やケイ素酸化物の表面にはシラノール基(ケイ素に結合した水酸基)が多数存在する。この水酸基は、電解液中に含まれるエチレンカーボネートやプロピレンカーボネートと反応、消費するため、電解液量が減少する。ゆえに、このような物質を電極として用いたリチウムイオン二次電池は耐久性(電池寿命)に劣る。また、シリコン粒子表面での上記したような反応により、表面に反応生成物による膜ができるが、この様な膜があると、Liのケイ素への出入りが妨げられる。ゆえに、このような物質を電極として用いたリチウムイオン二次電池は発電性能(充放電時の高容量化)にも劣る。
【0019】
これに対して、本発明は、π電子を有する有機基またはローンペア電子を有する元素を含む有機基を有するシランカップリング剤でシリコン粒子表面を処理して、表面に有機シラン層を形成することに特徴を有する。ここで、上記有機基は、シリコン粒子表面のシラノール基(水酸基)と反応して、結合する。すなわち、有機シラン層は、シリコン粒子表面を単に覆っているわけではなく、表面に強固に結合している。このため、有機シラン層は、充放電時の体積変化(膨張収縮)時においても、シリコン粒子から剥離することはほとんどないか、あるいは全くない。また、シランカップリング剤はπ電子を有する有機基またはローンペア電子を有する元素を含む有機基を有するが、当該有機基とカーボン等の導電助剤または銅等の集電体との間で強固な相互作用が生じる。このため、本発明の表面修飾シリコン粒子を負極材として使用した場合には、充放電時の体積変化(膨張収縮)を受けても、本発明の表面修飾シリコン粒子は導電助剤や集電体から脱落することはほとんどないか、あるいは全く脱落しない。この脱落抑制・防止効果は下記メカニズムによって達成されうると、考えられる。なお、下記メカニズムによって本発明は限定されない。すなわち、アセチレンブラック等のカーボン系導電助剤や銅箔等の金属集電体は、一般的に、π電子を有する。このため、例えば、シランカップリング剤がπ電子を有する有機基を有する場合には、有機シラン層は、π−π相互作用による結合により導電助剤や集電体に吸着する。また、シランカップリング剤がローンペア電子を有する元素を含む有機基を有する場合には、有機シラン層は、ローンペア電子−π相互作用による結合により導電助剤や集電体に吸着する。ここで、π−π相互作用やローンペア電子−π相互作用による結合は、ファンデルワールス力による結合に比して強力である。ゆえに、本発明の表面修飾シリコン粒子は、表面修飾シリコン粒子中のπ電子やローンペア電子と導電助剤や集電体との相互作用により、充放電に伴う体積変動(特に膨張)による導電助剤や集電体から脱落が有意に抑制・防止できる。
【0020】
また、本発明の表面修飾シリコン粒子では、シリコン粒子表面の水酸基をシランカップリング剤で処理する。このため、表面修飾シリコン粒子表面には、電解液中のエチレンカーボネートやプロピレンカーボネートと反応する水酸基が非常にわずかしか存在しないか、あるいは全く存在しない。このため、表面修飾シリコン粒子表面でエチレンカーボネートやプロピレンカーボネートとの反応を抑制・防止できるため、不特定の反応生成物(例えば、酸化還元劣化有機物)の生成を抑制・防止でき、電解液の消費量を有効に低減できる。上記利点に加えて、本発明に係る有機シラン層は、電解液と電極表面の安定界面(Solid Electrolyte Interface:SEI)を形成し、Liイオン等のイオンを容易に取り込むことができる。ゆえに、本発明の表面修飾シリコン粒子は、リチウムイオン二次電池の負極活物質に好適に使用でき、本発明の表面修飾シリコン粒子を負極活物質として用いたリチウムイオン二次電池は、耐久性(電池寿命)及び発電性能(充放電時の高容量化)に優れる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0022】
上述したように、本発明の表面修飾シリコン粒子は、大きな体積変化を受けても、表面に形成された被膜の破壊を有効に抑制・防止できる。また、本発明の表面修飾シリコン粒子は、カーボンや金属と、π−π相互作用やローンペア電子−π相互作用により、強固に結合するため、当該粒子の体積変化時であっても、粒子の脱落を有効に抑制・防止できる。
【0023】
本発明の表面修飾シリコン粒子は、いずれの用途に使用されてもよいが、上記したような利点を考慮すると、電池に好適に使用できる。
【0024】
この際、電池の種類は、特に制限されないが、例えば、非水電解質電池である。また、非水電解質電池の構造・形態で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など特に制限されず、従来公知のいずれの構造にも適用されうる。
【0025】
同様に非水電解質電池の電解質の形態で区別した場合にも、特に制限はない。例えば、非水電解液をセパレータに含浸させた液体電解質型電池、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用されうる。高分子ゲル電解質および固体高分子電解質に関しては、これらを単独で使用することもできるし、これら高分子ゲル電解質や固体高分子電解質をセパレータに含浸させて使用することもできる。
【0026】
すなわち、本発明の表面修飾シリコン粒子は、リチウムイオン二次電池、特にリチウムイオン二次電池の負極材として好適に用いられる。すなわち、本発明は、本発明の表面修飾シリコン粒子を負極材として用いる、リチウムイオン二次電池をも提供する。
【0027】
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の表面修飾シリコン粒子を負極材として用いてなるため、十分な充放電時の容量を確保しつつ、充放電に伴う体積変化の繰り返しを受けても、粒子が導電助剤または集電体からの脱落及び表面に形成された被膜の破壊を有効に防止できる。ゆえに、本発明のリチウムイオン二次電池は、電池性能及び耐久性に優れる。
【0028】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の表面修飾シリコン粒子の一実施形態、並びにこれを使用したリチウムイオン二次電池の一実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。なお、各図面は説明の便宜上誇張されて表現されており、各図面における各構成要素の寸法比率が実際とは異なる場合がある。また、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明した場合では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0029】
(リチウムイオン二次電池の構成)
[電池の全体構造]
<積層型電池>
図1は、扁平型(積層型)のリチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の一実施形態の基本構成を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態の積層型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体であるラミネートシート29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、負極集電体11の両面に負極活物質層13が配置された負極と、電解質層17と、正極集電体12の両面に正極活物質層15が配置された正極とを積層した構成を有している。具体的には、1つの負極活物質層13とこれに隣接する正極活物質層15とが、電解質層17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。
【0030】
これにより、隣接する負極、電解質層および正極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、本実施形態の積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層負極集電体には、いずれも片面のみに負極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層正極集電体が位置するようにし、該最外層正極集電体の片面または両面に正極活物質層が配置されているようにしてもよい。
【0031】
負極集電体11および正極集電体12は、各電極(負極および正極)と導通される負極集電板25および正極集電板27がそれぞれ取り付けられ、ラミネートシート29の端部に挟まれるようにしてラミネートシート29の外部に導出される構造を有している。負極集電板25および正極集電板27はそれぞれ、必要に応じて負極リードおよび正極リード(図示せず)を介して、各電極の負極集電体11および正極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
【0032】
[活物質層]
<負極(負極活物質層)>
負極活物質層は、本発明の表面修飾シリコン粒子を負極材(負極活物質)として必須に含むことが好ましい。このように本発明の表面修飾シリコン粒子を負極材(負極活物質)として含むリチウムイオン二次電池は、高い容量を有し、耐久性に優れる。
【0033】
以下では、本発明の表面修飾シリコン粒子について説明する。
【0034】
(表面修飾シリコン粒子)
本発明の表面修飾シリコン粒子は、シリコン粒子、および前記シリコン粒子表面をシランカップリング剤で処理することにより形成される有機シラン層を有する。本発明の表面修飾シリコン粒子は、上記構成を有することから以下の作用効果を有する。即ち、シリコン粒子表面の水酸基とシランカップリング剤とが反応して、有機シラン層を形成する。例えば、式(1)中、Yがアルコキシ基であり、nが3である、シランカップリング剤を用いる場合には、表面修飾シリコン粒子は下記の構造を有する。なお、下記構造において、Siの一本の結合子の先の置換基が規定されていないが、ここには、シランカップリング剤由来の置換基「Y」が結合しうる、あるいはY中の酸素原子(O)を介して隣接するシランカップリング剤の置換基「Y」と結合しうる。
【0035】
【化2】

【0036】
上記に示されるように、有機シラン層がシリコン粒子に緩くかつエラスティックに結合している。このため、充放電時のシリコン粒子の体積変化(特に膨脹)下であっても、この体積変化に柔軟に追随でき、また、有機シラン層のシリコン粒子からの剥離が有効に抑制・防止できる。また、Rがπ電子を有する有機基またはローンペア電子を有する元素を含む有機基である。有機シラン層は、R中のπ電子またはローンペア電子と導電助剤や集電体のπ電子との間のπ−π相互作用やローンペア電子−π相互作用により、導電助剤や集電体と、強力に結合・吸着する。ゆえに、表面修飾シリコン粒子は、導電助剤や集電体との密着性に優れ、充放電時のシリコン粒子の体積変化(特に膨脹)下にあっても、導電助剤または集電体からの脱落が有効に抑制・防止できる。
【0037】
本発明において、核となるシリコン粒子は、容量がおよそ4000mAh/gと、シリコン酸化物(SiOx)の400〜1000mAh/gに比して、非常に大きな容量を有する。このため、本発明の表面修飾シリコン粒子を用いた負極材は、高い充放電容量を発揮できる。
【0038】
ここで、シリコン粒子は、充放電によりリチウムを吸蔵放出可能なものであればよい。このため、シリコン粒子は、シリコンのみからなる粒子以外にも、表層に酸化物層が形成されたシリコン粒子、あるいは水素を表面に付加(水素終端処理)したシリコン粒子を用いていてもよい。表層に酸化物層が形成されたシリコン粒子の形態としては、特に制限されない。例えば、シリコン粒子を空気中にしばらく放置すると、表層が予め空気中の酸素や水分と反応して形成される酸化物で被覆される場合、別途シリコン粒子表面を酸化物で被覆される場合などの形態がある。ここで、酸化物層の厚みは、特に制限されないが、通常、0.2〜1nm程度である。このような厚みであれば、Liイオンを吸蔵する部分を十分確保して、十分な充放電容量を発揮できる。また、「水素を表面に付加したシリコン粒子(水素終端処理シリコン粒子)」とは、表面に出ている(最表面)シリコン原子のシリコン原子と接続していない結合手に水素を結合させたシリコン粒子である。このような水素終端処理シリコン粒子は、特に制限されないが、例えば、RCA洗浄処理と水素化処理の組合わせなど、公知の方法により製造することができる。より具体的には、まず、下記2段階からなるRCA洗浄処理を行なう。すなわち、第一段階として、シリコン粒子を、約70℃の温度に加熱された過酸化水素、水酸化アンモニウム及び水の混合物で処理する。次に、第二段階として、上記シリコン粒子を、約70℃の温度に加熱された過酸化水素、塩酸及び水の混合物で処理する。一般的に、シリコン粒子表面には、通常、10Åの厚みの酸化膜とさらにその上に数Åの有機汚染層が存在している。当該RCA洗浄処理は、このような微粒子及び金属不純物等のパーティクル除去を目的としている。上記RCA洗浄処理後、水素化処理を行う。すなわち、上記RCA洗浄処理されたシリコン粒子を、全有機炭素量(TOC)が50ppb以下の超純水で希釈した1%のフッ酸で処理して、表面の酸化膜を除去し、表面を水素終端処理する。上記シリコン粒子のうち、表層に酸化物層が形成されたシリコン粒子、あるいは水素終端処理したシリコン粒子は、表面にシラノール基をあまり持たない。しかし、このようなシリコン粒子を使用する場合であっても、下記に詳述されるようなシラノール基生成工程を行うことにより、シリコン粒子表面にシラノール基を生成することができる。
【0039】
シリコン粒子は、粒状であるが、その大きさは特に制限されない。通常、シリコン粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μmを超え50μm以下、より好ましくは45μmメッシュをパスするものであり、特に30μm以下である。なお、本発明における「シリコン粒子の平均粒子径」は、粒度分布計(例えば、ベックマン・コールター(Beckman−Coulter)社製の型番LS200またはLS230など)により測定できる。
【0040】
本発明では、上記シリコン粒子表面を下記式(1):
【0041】
【化3】

【0042】
で示されるシランカップリング剤で処理する。上記式(1)中、Rは、π電子を有する有機基またはローンペア電子を有する元素を含む有機基を表わす。このようなRを有するシランカップリング剤で表面処理された表面修飾シリコン粒子は、導電助剤や集電体とのπ−π相互作用やローンペア電子とπ相互作用による結合・吸着が期待でき、その結果として粒子の導電助剤や集電体からの脱落が起こりにくくなる。ここで、Rが複数個存在する(nが1または2である)時は、当該複数のRは、それぞれ同じあってもあるいは異なるものであってもよい。
【0043】
Rとしての、π電子を有する有機基またはローンペア電子を有する元素を含む有機基は、上述したように、導電助剤や集電体のπ電子と相互作用できるものであれば特に制限されない。好ましくは、Rは、下記式(イ)または(ロ)で示される基である。なお、下記式(イ)または(ロ)の基は、π電子及びローンペア電子の少なくとも一方を有するものである。このため、下記式のRは、置換基の種類よってはπ電子及びローンペア電子双方を有する場合がある。
【0044】
【化4】

【0045】
上記式(イ)中、Rは、無置換もしくは置換基を有するアリール基、無置換もしくは置換基を有する複素環基またはメルカプト基(−SH)を表わす。ここで、無置換のアリール基としては、特に制限されないが、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などが挙げられる。置換基を有するアリール基としては、特に制限されないが、例えば、上記アリール基の水素原子の一部又は全部を、炭素原子数2〜5のアルキリデン基、炭素原子数2〜5のアルキリジン基、ハロゲン原子(塩素、フッ素、臭素原子等)、シアノ基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、エポキシ基などの官能基で置換したものがある。より具体的には、ベンジル基(CCH−)、スチリル基(CCH=CH−)、ベンゼニル基(CC≡C−)、フェネチル基(CCHCH−)、シンナミル基(CCH=CHCH−)、o−,m−若しくはp−トリル基、2,3−若しくは2,4−キシリル基、メシチル基などが挙げられる。また、無置換の複素環基としては、特に制限されないが、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジニル基、ピペリジノ基、ピラジノイル基、ピペラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、モルホリニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、フラザニル基、フラニル基、ピラニル基などが挙げられる。置換基を有する複素環基としては、特に制限されないが、例えば、上記複素環基の水素原子の一部又は全部を、炭素原子数2〜5のアルキリデン基、炭素原子数2〜5のアルキリジン基、ハロゲン原子(塩素、フッ素、臭素原子等)、シアノ基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、エポキシ基などの官能基で置換したものがある。これらのうち、Rは、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、スチリル基、ベンゼニル基、フェネチル基、シンナミル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジニル基、ピペリジノ基、ピラジノイル基、ピペラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、モルホリニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、フラザニル基、フラニル基、ピラニル基、またはメルカプト基(−SH)を表わすことが好ましい。より好ましくは、Rは、フェニル基、ナフチル基、ピペラジニル基、メルカプト基(−SH)を表わす。
【0046】
また、上記式(イ)中、pは、0〜10、より好ましくは0〜5の整数であり、特に好ましくは0〜3である。qは、0または1である。
【0047】
上記式(ロ)中、Xは、エステル結合(−C=OO−)または炭素原子数1〜10のアルキレン基(−(CH−;rは、1〜10の整数である)を表わす。好ましくは、Xは、エステル結合(−C(=O)O−)または炭素原子数1〜3のアルキレン基(−(CH−;rは、1〜3の整数である)を表わす。また、R〜Rは、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基または無置換もしくは置換基を有するアリール基を表わす。ここで、R〜Rは、それぞれ同じであってもあるいは異なるものであってもよい。炭素原子数1〜10のアルキル基としては、特に制限されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル及び2−エチルヘキシル等の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基;ならびにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基などがある。また、無置換もしくは置換基を有するアリール基は、特に制限されず、上記式(イ)における定義と同様でありうる。好ましくは、R〜Rは、水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基を表わし、より好ましくは水素原子、メチル、エチル、プロピルを表わし、特に好ましくは水素原子、メチルを表わす。
【0048】
また、上記式(1)中、Yは、一価の加水分解性基を表わす。なお、Yが複数個存在する(nが2または3である)時は、当該複数のYは、それぞれ同じあってもあるいは異なるものであってもよい。ここで、Yとしては、一価の加水分解性であれば特に制限されない。具体的には、Yは、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1,2−ジメチル−プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、3−メチルペンタン−2−イルオキシ基、3−メチルペンタン−3−イルオキシ基、4−メチルペントキシ基、4−メチルペンタン−2−イルオキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、1−イソプロピルプロポキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、3,3−ジメチルブタン−2−イルオキシ基、2−メチルヘキサン−2−イルオキシ基、2,4−ジメチルペンタン−3−イルオキシ基、1,1−ジメチルペンタン−1−イルオキシ基、2,2−ジメチルヘキサン−3−イルオキシ基、2,3−ジメチルヘキサン−2−イルオキシ基、2,5−ジメチルヘキサン−2−イルオキシ基、2,5−ジメチルヘキサン−3−イルオキシ基、3,4−ジメチルヘキサン−3−イルオキシ基、3,5−ジメチルヘキサン−3−イルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、2−メチルヘプトキシ基、2−メチルヘプタン−2−イルオキシ基、3−メチルヘプタン−3−イルオキシ基、4−メチルヘプタン−3−イルオキシ基、4−メチルヘプタン−4−イルオキシ基、2−メチルオクタン−3−イルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、4−エチルシクロヘキシルオキシ基、2−n−プロピルシクロヘキルオキシ基、4−t−ブチルシクロヘキルオキシ基等の、炭素原子数1〜20個、より好ましくは1〜12個、特に好ましくは炭素原子数1〜8個の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ベンジルアミノ基及びフェニルアミノ基等の第1級アミン;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジベンジルアミノ基及びジフェニルアミノ基等の第2級アミン;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;ジメチルケトオキシミノ基、ジエチルケトオキシミノ基、メチルエチルケトオキシミノ基、ジプロピルケトオキシミノ基等のオキシミノ基;ジメチルアミノオキシ基、ジエチルアミノオキシ基、メチルエチルアミノオキシ基、ジプロピルアミノオキシ基等の、アミノオキシ基;カルボキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のエステル基;アクリロイル基、メタアクリロイル基(イソプロペニルオキシ基)等のアルケニルオキシ基;−CHCOOCH、−CH(CH)COOCHなどが挙げられる。これらのうち、Yは、メトキシ基(−OCH)、エトキシ基(−OCHCH)等のアルコキシ基;ジメチルアミノ基(−N(CH)等の第2級アミノ基;塩素原子(−Cl);メチルエチルケトオキシミノ基(−ON=C(CH)CHCH)等のオキシミノ基;(−ON(CH)などのアミノオキシ基;アセトキシ基(−OCOCH)等のエステル基;メタクリロイル基(−OC(CH)=CH)等のアルケニルオキシ基;−CHCOOCH、−CH(CH)COOCHであることが好ましい。より好ましくは、Yは、メトキシ基、エトキシ基、メチルエチルケトオキシミノ基、アセトキシ基、メタクリロイル基である。
【0049】
上記式(1)中、nは、1〜3の整数であり、好ましくは2または3、特に好ましくは3である。
【0050】
ゆえに、上記式(1)のシランカップリング剤の好ましい具体例としては、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ピペラジノプロピルトリメトキシシラン、3−ピペラジノプロピルトリエトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシミノ)シラン、フェニルトリス(ジメチルケトオキシミノ)シラン、フェニルトリス(ジエチルケトオキシミノ)シラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジアセトキシジフェニルシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルトリエメトキシシランなどが挙げられる。これらのうち、ベンジルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ピペラジノプロピルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシミノ)シラン、を挙げることができる。上記シランカップリング剤は、1種を単独で使用してもよいし、または2種以上の混合物の形態で使用してもよい。ここで、上記シランカップリング剤のうち、上記式(1)のRがπ電子を有する有機基であるシランカップリング剤としては、ベンジルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシミノ)シランがある。また、上記式(1)のRがローンペア電子を有する元素を含む有機基であるシランカップリング剤としては、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ピペラジノプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリアセトキシシランがある。また、上記シランカップリング剤を、部分的に縮合してオリゴマー化したものでもよい。
【0051】
本発明において、シランカップリング剤でシリコン粒子表面を処理する方法は、特に限定されず、公知のシランカップリング剤による処理方法が使用できる。好ましくは、本発明の表面修飾シリコン粒子の製造方法は、シリコン粒子の表面にシラノール基を生成させ、シラノール基含有シリコン粒子を得るシラノール基生成工程;および前記シラノール基含有シリコン粒子表面をシランカップリング剤で処理するシランカップリング剤処理工程を有し、前記シラノール基生成工程は、前記シランカップリング剤処理工程の前に行なうか、または前記シランカップリング剤処理工程と同時に行なう。
【0052】
以下、本発明に係るシランカップリング剤によるシリコン粒子表面の処理方法の好ましい態様を説明する。ただし、本発明は、下記の態様に限定されるものではない。
【0053】
シラノール基生成工程では、シリコン粒子の表面にシランカップリング剤と結合するシラノール基を生成させる工程である。このようにシリコン粒子表面に十分量のシラノール基(Si−OH)が存在すると、シランカップリング剤が、シリコン粒子表面の水酸基と反応して、効率よくシリコン粒子表面が修飾できる。このため、シラノール基生成工程を、シランカップリング剤処理工程と同時か、その前に実施することが好ましい。また、当該シラノール基生成工程は、シリコン粒子表面に十分なシラノール基(水酸基)が存在する場合には、省略できる。特に表層に酸化物層が形成されたシリコン粒子あるいは水素終端処理シリコン粒子の場合には、当該シラノール基生成工程を行うことが好ましい。
【0054】
シラノール基生成工程の具体的な方法は、シリコン粒子表面にシラノール基(水酸基)が生成する限り、特に制限されない。例えば、シリコン粒子を水やアルコール等の溶媒に含浸する方法などが使用できる。ここで、水としては、特に制限されず、水道水、イオン交換水、脱イオン水、蒸留水など、いずれも使用できる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、などが使用できる。シリコン粒子の溶媒への添加量は、シリコン粒子表面にシラノール基(ケイ素に結合した水酸基)が生成する限り、特に制限されない。好ましくは、シリコン粒子を、溶媒100質量部に対して、0.1〜40質量部、より好ましくは1〜20質量部の量、加える。シラノール基生成工程の具体的な条件は、シリコン粒子表面にシラノール基(水酸基)が生成する限り、特に制限されない。例えば、シリコン粒子を上記溶媒中に、室温(23℃)で、少なくとも数分間、浸漬することが好ましい。
【0055】
また、この際、水やアルコールに加えて、加水分解を促進する触媒を触媒量添加してもよい。このような触媒としては、特に制限されないが、酢酸(CHCOOH)、NH、テトライソプロポキシチタン、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル酸錫などが挙げられる。または、シランカップリング剤を予め比較的濃い水溶液に調製し、その水溶液を上記水やアルコールなどの有機溶剤に添加した処理液を調製し、この処理液にシリコン粒子を添加して混合し、その後、濾過、乾燥する方法を用いることも可能である。乾燥にあたっては、任意の方法で乾燥してよいが、大きな凝集を避けるために、凍結乾燥(フリーズドライ)、噴霧乾燥(スプレードライ)などの手法を用いることが好ましい。
【0056】
次に、シランカップリング剤処理工程において、上記で得られたシラノール基含有シリコン粒子表面をシランカップリング剤で処理する。シランカップリング剤処理工程は、特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、下記方法が使用できるが、本発明は、当該方法に限定されない。すなわち、シランカップリング剤を水性溶剤に溶解して、予め希薄な溶液を調製する。次に、この溶液に、シリコン粒子または上記シラノール基生成工程で得られたシラノール基含有シリコン粒子を添加して、混合する。その後、濾過、乾燥する方法を用いることができる。上記方法において、水性溶剤としては、シランカップリング剤を溶解できるものであれば特に制限されない。具体的には、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールなどが挙げられる。また、シラノール基含有シリコン粒子は、そのままの形態で溶液に添加されてもよいが、予め別の溶媒に分散した状態で添加してもよい。後者の方法で使用できる別の溶媒としては、特に制限されないが、シランカップリング剤を溶解する水性溶剤との調和を考慮すると、上記水性溶剤と同様の溶媒が使用できる。なお、水性溶剤と別の溶媒は、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。また、シランカップリング剤と、シラノール基含有シリコン粒子との混合比は、シリコン粒子表面が所定のレベルに表面処理できる割合であれば特に制限されない。具体的には、シランカップリング剤を、シラノール基含有シリコン粒子100質量部に対して、0.01〜40質量部、より好ましくは5〜20質量部の量で添加されるような量であることが好ましい。このような範囲であれば、シラノール基含有シリコン粒子は、シランカップリング剤で十分表面処理されうる。
【0057】
シランカップリング剤処理工程において、表面処理条件は、シラノール基含有シリコン粒子表面をシランカップリング剤で処理できる条件であれば特に制限されない。例えば、処理温度は、好ましくは10〜40℃、より好ましくは室温(23℃)付近である。また、処理時間は、好ましくは2〜24時間、より好ましくは4〜16時間である。このような処理条件であれば、シラノール基含有シリコン粒子表面をシランカップリング剤で効率よく処理(修飾)できる。
【0058】
上記シランカップリング剤処理工程後に、未反応のシランカップリング剤、遊離の未反応オリゴマー、水性溶剤などを除去する工程(精製工程)を行ってもよい。このような工程は、特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、シランカップリング剤処理工程後の反応液を透析膜に入れて、水に一晩漬ける方法などが使用できる。
【0059】
また、上記シランカップリング剤処理工程後あるいは上記精製工程後に、溶媒や水性溶剤などを除去することによって、本発明の表面修飾シリコン粒子が固体として得られる。ここで、溶媒や水性溶剤などの除去方法は、特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、反応液を液体窒素で冷却して凍らせたり、凍結乾燥にて溶媒を除去する方法などが使用できる。
【0060】
本発明の表面修飾シリコン粒子は空気雰囲気中にて600℃まで加熱したときの重量減少率が修飾したシリコン粒子の重量を100質量%としたときに、その0.01〜40質量%であることが好ましい。より好ましい重量減少率は、5〜20質量%である。このような範囲であれば、シリコン粒子表面がほぼ被覆された状態でありうる。なお、本明細書において、「空気雰囲気中にて600℃まで加熱したときの重量減少率」は、熱分析(示差熱熱重量同時測定装置:TG/DTA)によって下記条件で測定された際の重量の減少率(%)である。すなわち、30mgの表面修飾シリコン粒子サンプルを、熱分析装置[島津製作所製、DTG−60A(商品名)]を用いて、室温(23℃)から20℃/分の昇温速度で600℃まで測定される際の、室温(23℃)時と600℃時でのサンプル重量の減少率(%)である。
【0061】
(他の負極活物質)
上述したように、負極活物質層は、本発明の表面修飾シリコン粒子を負極材(負極活物質)として必須に含むことが好ましく、負極材(負極活物質)が本発明の表面修飾シリコン粒子のみから構成されることがより好ましい。ただし、負極活物質層は、他の負極活物質を含んでもよい。他の負極活物質を含む場合の本発明の表面修飾シリコン粒子の含有量は、上記効果が達成できる量であれば特に制限されない。好ましくは、本発明の表面修飾シリコン粒子の含有量は、全負極活物質に対して、30〜95質量%である。他の負極活物質としては、特に制限されず、リチウムと合金化しうる元素を含有する負極活物質(ただし、グラファイトを除く)が挙げられる。ここで、リチウムと合金化しうる元素としては、特に制限されないが、例えば、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アルミニウム、インジウム、コバルト、および亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。かような元素を含む活物質を負極活物質として用いることで、電池の高容量化が可能となる。なかでも、コバルトまたはスズが負極活物質に含まれることがより好ましい。
【0062】
上述した合金系負極活物質の具体的な例としては、特に制限されないが、例えば、金属化合物、金属酸化物、リチウム金属化合物、リチウム金属酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物を含む)などが挙げられる。金属化合物の形態の負極活物質としては、LiAl、LiSi、Li4.4Pb、LiSn等が挙げられる。また、金属酸化物の形態の負極活物質としては、SnO、SnO、GeO、GeO、InO、In、PbO、PbO、Pb、Pb、SiO、ZnO、Co等が挙げられる。なお、これらの負極活物質は1種のみが負極活物質層に含まれてもよいし、2種以上が負極活物質層に含まれてもよい。なかでも、LiSi、LiSn、SnO、SnO、SiO、Coが負極活物質として好ましく用いられ、特に好ましくはSnO、Coが用いられる。なお、負極活物質としてグラファイトを用いた場合、アルミニウム上の酸化被膜がグラファイトの不純物との反応およびグラファイトの触媒作用によって分解され、0V付近においてリチウムとの合金化反応が進行する。
【0063】
負極活物質層中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)やイオン伝導性を考慮して調整されうる。
【0064】
また、負極活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、0.1〜100μmであることが好ましい。当該平均粒子径は、より好ましくは0.1〜10μmであり、さらに好ましくは0.1〜1μmである。
【0065】
<正極(正極活物質層)>
正極活物質層は正極活物質を含む。正極活物質層に含まれる成分の配合比および正極活物質層の厚さについても特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0066】
正極活物質は、特にリチウムの吸蔵放出が可能な材料(リチウムを含有する化合物)であれば特に限定されず、リチウムイオン二次電池に通常用いられる正極活物質が利用されうる。具体的には、リチウム−遷移金属複合酸化物が好ましく、例えば、LiMnなどのLi−Mn系複合酸化物、LiNiOなどのLi−Ni系複合酸化物、LiNi0.5Mn0.5などのLi−Ni−Mn系複合酸化物、層状岩塩構造(αNaFcO構造)を持つコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、スピネル構造を持つマンガン酸リチウムが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。
【0067】
正極活物質層中に含まれる成分の配合比も、特に限定されない。配合比は、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)やイオン伝導性を考慮して調整されうる。
【0068】
正極活物質の平均粒子径は、0.1〜100μmであることが好ましい。当該平均粒子径は、より好ましくは0.1〜10μmであり、さらに好ましくは0.1〜1μmである。本明細書において、「平均粒子径」は、レーザー回折法により測定した平均粒子径D50の値を採用するものとする。
【0069】
[集電体]
集電体は、活物質層と外部とを電気的に接合するための部材であって、導電性の材料から構成される。
【0070】
本発明において、集電体の材質(集電体材料)は、特に限定されないが、具体的な例としては、例えば、鉄、クロム、ニッケル、マンガン、チタン、モリブデン、バナジウム、ニオブ、アルミニウム、銅、銀、金、白金およびカーボンなどが挙げられる。これらの集電体材料は、1種単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物あるいは合金の形態で使用されてもよい。好ましくは、アルミニウム、チタン、銅、ニッケル、銀、またはステンレス(SUS)よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種類の集電体材料が使用される。特に好ましくは、アルミニウム箔、ニッケル箔、銅箔、ステンレス(SUS)箔などが集電体の材料の例として使用できる。集電体は、単層構造(例えば、箔の形態)で用いてもよいし、異なる種類の層で構成された多層構造で用いてもよいし、これらで被覆されたクラッド材(例えば、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材)を用いてもよい。あるいは、これらの集電体材料の組み合わせのめっき材なども好ましく使える。また、上記集電体材料である金属(アルミニウムを除く)表面に、他の集電体材料であるアルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の上記集電体材料である金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。上述の材質は、耐食性、導電性、または加工性などに優れる。集電体の厚みは、特に制限されないが、集電体の一般的な厚さは、1〜50μm、5〜30μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。大型の電池に用いられる大型の電極を作製するのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。小型の電極を作製するのであれば、面積の小さな集電体が用いられる。
【0071】
<導電助剤>
活物質層には導電助剤が含まれる。本明細書において、「活物質層」とは、正極活物質層及び負極活物質層を総称したものである。また、明細書中、「導電助剤」とは、活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
【0072】
導電助剤の例としては、特に制限されないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンファイバ、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、活性炭、グラファイトなどの炭素材料、チタン酸カリウム、炭化チタン、二酸化チタン、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化錫、および酸化インジウムなどが挙げられる。好ましくは、黒鉛、カーボンブラック、カーボンファイバ、アセチレンブラック、チタン酸カリウム、炭化チタン、二酸化チタン、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化錫、および酸化インジウムが使用される。
【0073】
導電助剤の平均粒子径は、特に制限されず、公知の平均粒子径と同様でありうる。
【0074】
前記導電助剤の含有量は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。好ましくは、導電助剤の含有量は、活物質100質量部に対して、3〜150質量部、より好ましくは40〜100質量部である。導電助剤の含有量が下限を下回ると、活物質の導電性が不足する場合がある。また、導電助剤の含有量が上限を超えると、エネルギー密度が低くなる場合がある。
【0075】
<バインダ(結着剤)>
さらに、前記活物質層には、バインダが含まれうる。バインダは、活物質と導電助剤とを結着させる役割を果たす添加剤である。前記バインダは、活物質と導電助剤とを結着でき、使用する非水性電解質や正極や負極での電位に対する耐性を有するものであれば特に制限されない。具体的な例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルプロピナール、ポリビニルブチラール、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のヒドロキシル基含有化合物、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム等が挙げられる。これらのバインダは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0076】
活物質層中に含まれるバインダ量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは活物質100質量部に対して、0.1〜100重量部、より好ましくは3〜15質量部である。
【0077】
活物質層に含まれうるその他の添加剤としては、例えば、非水性電解質(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。
【0078】
本発明のリチウムイオン二次電池に用いられる非水性電解質は、リチウムイオンを伝導させるためのものであり、例えばリチウム塩を高誘電率の媒体に溶解させた非水性電解質液、高分子固体電解質、無機固体電解質などが挙げられる。リチウム塩の例を挙げれば、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiSbF、LiAsF、LiAlCl、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiCSO、Li(CSONなどである。好ましくは、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSOを電解質塩(リチウム塩)として使用できる。高誘電率の有機溶剤は、リチウム塩を溶解して電気伝導性を与え、使用する電極剤に対して安定なものであれば特に限定されないが、例を挙げれば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、スルホラン、γ−ブチロラクトンなどがあり、単一の溶剤を用いてもよいし、2種類以上の溶剤を混合してもよい。高誘電率の高分子としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリホスファゼン、ポリエチレンオキシドイソシアナート架橋体、ポリ(メトキシエトキシエトキシドホスファゼン)、メチルシロキサン−エチレンオキシド共重合体、ポリ(β−プロピオラクトン)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸オリゴエチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)=グラフト=ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(フッ化ビニリデン)などが例示される。これらは単一の高分子を用いてもよいし、2種類以上の高分子を混合してもよい。相溶性の悪い高分子を混合する際、相溶化剤を添加することは任意とされる。更に、クラウンエーテル、ポリ(エチレングリコール)、プロピレンカーボネートのような高誘電率の化合物を添加してもよい。無機固体電解質としてはLiN、LiIなどが例示される。
【0079】
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
【0080】
正極活物質層および負極活物質層中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、非水溶媒二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。各活物質層の厚さについても特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各活物質層の厚さは、2〜100μm程度である。
【0081】
[電解質層]
電解質層を構成する電解質としては、特に制限されないが、例えば、液体電解質またはポリマー電解質が用いられうる。
【0082】
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられうる有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルが例示される。上記有機溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、支持塩(リチウム塩)としては、LiPF、LiBETI等の上記電極の活物質層に添加されうるリチウム塩が同様に採用されうる。
【0083】
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない真性ポリマー電解質に分類される。
【0084】
ゲル電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。マトリックスポリマーとして用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリテトラフルオロエチレン(PVdF)、およびこれらの共重合体などが挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系ポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
【0085】
なお、電極の接触を防止し、非水性電解質を保持し、リチウムイオンを通過できる機能を有するセパレータを用いることができる。特に電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いることが好ましい。セパレータの材質は特に限定されないが、例を挙げれば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂などである。セパレータの構造は特に限定されないが、例を挙げれば、多孔質フィルム、微多孔膜、不織布、織布などである。高分子ゲル電解質を用いれば、電池からの液漏れの虞がほとんどなくなり、電池の信頼性が向上しうる。セパレータの厚さは、特に限定されないが、10〜200μmが好ましく、20〜50μmがより好ましい。セパレータは、シャットダウン機構を有するものが安全性の点から見て好ましい。
【0086】
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が真性ポリマー電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
【0087】
ゲル電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0088】
[最外層集電体]
最外層集電体の材質としては、例えば、金属や導電性高分子が採用されうる。電気の取り出しやすさの観点からは、好適には金属材料が用いられる。具体的には、例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅などの金属材料が挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性、電池作動電位という観点からは、アルミニウム、銅が好ましい。
【0089】
[タブおよびリード]
電池外部に電流を取り出す目的で、タブを用いてもよい。タブは最外層集電体や集電板に電気的に接続され、電池外装材であるラミネートシートの外部に取り出される。
【0090】
タブを構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用のタブとして従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。タブの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい。なお、正極タブと負極タブとでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。
【0091】
正極端子リードおよび負極端子リードに関しても、必要に応じて使用する。正極端子リードおよび負極端子リードの材料は、公知のリチウムイオン二次電池で用いられる端子リードを用いることができる。なお、電池外装材から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
【0092】
[電池外装材]
電池外装材としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素(電池要素)を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。
【0093】
[絶縁部]
絶縁部は、電解質層からの電解液の漏れによる液絡を防止する。また、絶縁部は、電池内で隣り合う集電体どうしが接触したり、発電要素における単電池層の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。
【0094】
絶縁部を構成する材料としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよい。例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴムなどが用いられうる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁部の構成材料として好ましく用いられる。
【0095】
[リチウムイオン二次電池の外観構成]
図2は、本発明の電池の代表的な実施形態であるリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【0096】
図2に示すように、リチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素(電池要素)57は、リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素(電池要素)57は、正極タブ58および負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素(電池要素)57は、先に説明した図1に示す積層型のリチウムイオン二次電池10の発電要素(電池要素)21に相当するものであり、正極(正極活物質層)13、電解質層17および負極(負極活物質層)15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
【0097】
なお、上記リチウムイオン二次電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではなく、巻回型のリチウムイオン二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素(電池要素)がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
【0098】
また、図2に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではなく、正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図2に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン二次電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
【0099】
上記リチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0100】
[組電池]
組電池は、上記リチウムイオン二次電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
【0101】
図3は、組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図3Aは組電池の平面図であり、図3Bは組電池の正面図であり、図3Cは組電池の側面図である。
【0102】
図3に示すように、本実施形態の組電池300は、リチウムイオン二次電池が複数、直列に又は並列に接続して装脱着可能な小型の組電池250を形成する。この装脱着可能な小型の組電池250をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池300を形成することもできる。図3Aは、組電池の平面図、図3Bは正面図、図3Cは側面図を示しているが、作成した装脱着可能な小型の組電池250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、この組電池250は接続治具310を用いて複数段積層される。何個のリチウムイオン二次電池を接続して組電池250を作製するか、また、何段の組電池250を積層して組電池300を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0103】
[車両]
本実施形態の車両は、上記リチウムイオン二次電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を搭載したことを特徴とするものである。長期信頼性および出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。言い換えれば、リチウムイオン二次電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池は、車両の駆動用電源として用いられうる。リチウムイオン二次電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【0104】
図4は、組電池を搭載した車両の概念図である。
【0105】
図4に示したように、組電池300を電気自動車400のような車両に搭載するには、電気自動車400の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池300を用いた電気自動車400は高い耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0107】
実施例1
平均粒子径が0.5μmのシリコン粒子[高純度化学製、SIE20PB(商品名)]2.5gをイオン交換水50gに分散させ、ベンジルトリエトキシシラン1gを加えたイソプロピルアルコール10gを滴下して、室温(23℃)で、一晩攪拌した。その後、反応液を透析膜に入れて、水に一晩漬けて未反応のベンジルトリエトキシシラン及び遊離の未反応オリゴマーをイソプロピルアルコールと共に除去した。次に反応液を液体窒素で冷却して凍らせ凍結乾燥にて溶媒を除去し、表面処理したシリコン粒子1を2.7g得た。
【0108】
実施例2
実施例1において、シランカップリング剤をベンジルトリエトキシシランから3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランに変更する以外は、実施例1と同様にして、シリコン粒子2を2.6g得た。
【0109】
実施例3
実施例1において、シランカップリング剤をベンジルトリエトキシシランから3−ピペラジノプロピルトリメトキシシランに変更する以外は、実施例1と同様にして、シリコン粒子シリコン粒子3を2.7g得た。
【0110】
実施例4
実施例1において、シランカップリング剤をベンジルトリエトキシシランからナフチルトリメトキシシランに変更する以外は、実施例1と同様にして、シリコン粒子4を2.6g得た。
【0111】
実施例5
実施例1において、シランカップリング剤をベンジルトリエトキシシランからアクリロキシプロピルトリメトキシシランに変更する以外は同様にしてシリコン粒子5を2.7g得た。
【0112】
実施例6
実施例1において、シランカップリング剤をベンジルトリエトキシシランからアリルトリメトキシシランに変更する以外は、実施例1と同様にして、シリコン粒子6を2.6g得た。
【0113】
実施例7
実施例1において、シランカップリング剤をベンジルトリエトキシシランからメルカプトプロピルトリメトキシシランに変更する以外は、実施例1と同様にして、シリコン粒子7を2.6g得た。
【0114】
実施例8
実施例1において、シランカップリング剤をベンジルトリエトキシシランからフェニルトリアセトキシシランに変更する以外は、実施例1と同様にして、シリコン粒子8を2.7g得た。
【0115】
実施例9
実施例1において、シランカップリング剤をベンジルトリエトキシシランからフェニルトリス(メチルエチルケトオキシミノ)シランに変更する以外は、実施例1と同様にして、シリコン粒子10を2.7g得た。
【0116】
実施例10
実施例1において、ベンジルトリエトキシシランを0.2gにする以外は、実施例1と同様にして、シリコン粒子10を2.6g得た。
【0117】
実施例11
実施例1において、ベンジルトリエトキシシランの添加量を2gとし、かつ反応時間を三晩にする以外は、実施例1と同様にして、シリコン粒子11を2.9g得た。
【0118】
実施例12
本実施例では、シリコン粒子として、水素終端処理シリコン粒子を使用した。なお、水素終端処理シリコン粒子は、下記方法によって製造した。すなわち、平均粒子径が0.5μmのシリコン粒子2.5gを、約70℃の温度に加熱されたアンモニア水(NHOH、30%濃度)20mLと過酸化水素水(H、30%濃度)30mLとの混合水溶液で洗浄した。その後、金属不純物除去を目的として、上記洗浄後のシリコン粒子を、約70℃の温度に加熱された塩酸(HCl、35%濃度)25mLと過酸化水素水(H、30%濃度)25mLとの混合水溶液で洗浄した。さらに、上記洗浄後のシリコン粒子を、全有機炭素量(TOC)が50ppb以下の超純水で希釈した1%のフッ酸50mLで処理することによって、水素終端処理シリコン粒子を得た。
【0119】
次に、このようにして得られた水素終端処理シリコン粒子をシリコン粒子として使用する以外は、実施例1と同様にして、シリコン粒子12を2.2g得た。
【0120】
比較例A
シランカップリング剤による表面処理を実施しない粒子、即ち、実施例1の平均粒子径が0.5μmのシリコン粒子[高純度化学製、SIE20PB(商品名)]を比較用のシリコン粒子Aとした。
【0121】
比較例B
実施例1において、シランカップリング剤をベンジルトリエトキシシランからエチルトリメトキシシランを用いる以外は同様にしてシリコン粒子Bを2.6g得た。
【0122】
比較例C
シリコン粒子に変えてケイ素酸化物SiO(Xの範囲が0.8〜1.9)とする以外は実施例1と同様にして比較用のケイ素酸化物Cを2.6g得た。
【0123】
上記実施例1〜12で得られたシリコン粒子1〜12、および比較例A〜Cで得られた比較用のシリコン粒子A〜Cについて、それぞれ、空気雰囲気中にて600℃まで加熱したときの重量減少率(%)を測定し、結果を下記表に示す。
【0124】
<リチウム充放電特性の評価>
(電池の作製)
次に、上記実施例1〜12で得られたシリコン粒子1〜12、および比較例A〜Cで得られた比較用のシリコン粒子A〜Cについて、以下のようにして電池を作製した。上記シリコン粒子サンプルを、それぞれ、40重量部と、導電助剤としてアセチレンブラック40重量部、バインダ(結着剤)としてポリフッ化ビニリデン20重量部とN−メチルピロリドンを混練した。これを銅箔(厚み:30μm)に塗布圧着し、真空乾燥機で80℃で一晩乾燥し、銅箔上に厚みが5μmの負極活物質層が形成された電極1〜12および比較用電極A〜Cを、それぞれ、得た。
【0125】
ここで、得られた各電極について、以下のようにしてリチウム充放電特性を評価した。対極にリチウム箔を使用した。非水性電解質として六フッ化リンリチウム(LiPF)をエチレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンの1/1混合液に1モル/Lの濃度で溶解した非水性電解質溶液を用いた。また、セパレータに厚さ20μmのポリプロピレン製微多孔質フィルムを用いた。上記したような構成を有する評価用リチウムイオン二次電池1〜12および比較用リチウムイオン二次電池A〜Cを、それぞれ、作製した。
【0126】
これらの評価用リチウムイオン二次電池1〜12および比較用リチウムイオン二次電池A〜Cについて、充放電試験を行なった。ここで、評価に用いた充放電試験は以下の様に実施した。
【0127】
充放電試験は、充放電レートを0.1Cとし、充電時に初期電圧から0.01VまでCCCV法で負極(作用極)にリチウムを吸蔵させ、放電時に2VまでCC法で負極(作用極)からリチウムを放出させることにより行った。初回放電容量は最初の放電時の容量である。またサイクル特性(%)は次の式(1)より算出した。
【0128】
【数2】

【0129】
サイクル特性(%)=(5サイクル目の放電容量/初回放電容量)×100…(1)
シリコン粒子1gあたりの容量に換算したものを、結果として表1に示す。
【0130】
【表1】

【0131】
表1から明らかなように、初回放電容量は比較例Cでは1450mAh/gと小さいのに対し、実施例1〜12では、2421〜3349mAh/gと高いことが分かる。また、サイクル特性は、比較例A、Bでは21〜24%と低かったのに対し、実施例1〜12では29〜40%と高いことが分かる。これから、本発明の表面修飾シリコン粒子を負極材として用いた電池は、初回放電容量、リサイクル特性ともに優れている。
【符号の説明】
【0132】
10 積層型リチウムイオン二次電池、
11 負極集電体、
12 正極集電体、
13 負極活物質層(負極)、
15 正極活物質層(正極)、
17 電解質層、
19 単電池層(単セル)、
21 発電要素、
25 負極集電板、
27 正極集電板、
29 電池外装材(ラミネートシート)、
50 リチウムイオン二次電池、
52 電池外装材、
58 正極タブ、
59 負極タブ、
250 小型の組電池、
300 組電池、
310 接続治具、
400 電気自動車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン粒子、および前記シリコン粒子表面をシランカップリング剤で処理することにより形成される有機シラン層を有し、
前記シランカップリング剤は、下記式(1):
【化1】

ただし、Rは、それぞれ独立して、π電子を有する有機基またはローンペア電子を有する元素を含む有機基を表わし;Yは、一価の加水分解性基を表わし;nは、1〜3の整数である、
で示される、
表面修飾シリコン粒子。
【請求項2】
前記式(1)中、Rは、下記式(イ)または(ロ):
【化2】

ただし、Rは、無置換もしくは置換基を有するアリール基、無置換もしくは置換基を有する複素環基またはメルカプト基(−SH)を表わし;Xは、エステル結合(−C=OO−)または炭素原子数1〜10のアルキレン基(−(CH−;rは、1〜10の整数である)を表わし;R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基または無置換もしくは置換基を有するアリール基を表わし;pは、0〜10の整数であり;qは、0または1である、
のいずれかで示される、請求項1記載の表面修飾シリコン粒子。
【請求項3】
前記式(イ)中、Rは、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、スチリル基、ベンゼニル基、フェネチル基、シンナミル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジニル基、ピペリジノ基、ピラジノイル基、ピペラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、モルホリニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、フラザニル基、フラニル基、ピラニル基、またはメルカプト基(−SH)を表わし;pは、0〜5の整数であり;qは、0または1であり、
前記式(ロ)中、Xは、エステル結合(−COO−)または炭素原子数1〜3のアルキレン基(−(CH−;rは、1〜3の整数である)を表わし;R〜Rは、それぞれ、独立して、水素原子、または炭素原子数1〜3のアルキル基を表わす、
請求項2記載の表面修飾シリコン粒子。
【請求項4】
空気雰囲気中にて600℃まで加熱したときの重量減少率が2〜40質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面修飾シリコン粒子。
【請求項5】
シリコン粒子の表面にシラノール基を生成させ、シラノール基含有シリコン粒子を得るシラノール基生成工程、および前記シラノール基含有シリコン粒子表面をシランカップリング剤で処理するシランカップリング剤処理工程を有し、
前記シラノール基生成工程は、前記シランカップリング剤処理工程の前に行なうか、または前記シランカップリング剤処理工程と同時に行なう、表面修飾シリコン粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面修飾シリコン粒子または請求項5に記載の方法によって製造される表面修飾シリコン粒子を負極材として用いる、リチウムイオン二次電池。
【請求項7】
請求項6に記載のリチウムイオン二次電池を用いた組電池。
【請求項8】
請求項6に記載のリチウムイオン二次電池、または請求項7に記載の組電池をモータ駆動用電源として搭載した車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−11928(P2011−11928A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155616(P2009−155616)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発 要素技術開発 高容量電池の研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】