説明

表面修飾充填剤を含有する歯科組成物

【課題】 表面変性されてポリ酸を包含する充填剤を含有する、安定なGI及びRMGI組成物を包含する硬化性歯科組成物を提供する。
【解決手段】 本発明は、ポリ酸で表面変性された充填剤を含有するアイオノマー組成物を特徴とする。組成物は、例えば、接着剤、セメント、修復材、コーティング、及びシーラントのような様々な歯科及び歯科矯正用途において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性歯科組成物に関する。より具体的には、本発明は、ポリ酸で表面変性された少なくとも1つの充填剤を含有するアイオノマー及び樹脂変性アイオノマー組成物に関する。組成物は、例えば、接着剤、セメント、修復材、コーティング、及びシーラントのような様々な用途において使用できる。
【背景技術】
【0002】
虫歯、う触象牙質又はう触エナメル質を包含するう触歯科構造の復元は、関連の歯科構造に、歯科接着剤、次に歯科材料(例えば、修復材料)を順次適用することにより、達成されることが多い。歯科構造に歯科矯正装具(一般に、歯科矯正接着剤を利用する)を固着するために、同様な組成物が使用される。象牙質又はエナメル質への接着剤の固着を促進するためには、様々な前処理プロセスが使用されることが多い。典型的に、こうした前処理工程は、例えば、無機酸又は有機酸にてエッチング処理した後、歯牙構造と覆う接着剤との間の固着を改善するよう、下塗りをすることを包含する。
【0003】
様々な歯科及び歯科矯正接着剤、セメント、並びに修復材が、現在入手可能である。フルオロアルミノシリケートガラス充填剤(ガラスアイオノマー又は「GI」組成物としても既知)を包含する組成物は、歯科材料で最も広く使用されている種類の1つである。これらの組成物は、う蝕病変の充填及び修復;例えば、クラウン、インレイ、ブリッジ、又は歯科矯正バンドの接合;空洞のライニング;コア構造;並びに小窩裂溝封鎖のような広範囲の用途を有する。
【0004】
現在、2つの主要な部類のガラスアイオノマーがある。従来のガラスアイオノマーとして既知の第一部類は、一般に主成分として、α,β−不飽和カルボン酸のホモポリマー又はコポリマー、フルオロアルミノシリケート(「FAS」)ガラス、水、及び所望により酒石酸のようなキレート化剤を含有する。これらの従来のガラスアイオノマーは、典型的に使用直前に混合される粉末/液体処方で供給される。ポリカルボン酸の酸性反復単位と塩基性ガラスから浸出するカチオンとの間におけるイオン性酸塩基反応に起因して、混合物は、暗所で自己硬化する。
【0005】
ガラスアイオノマーの第二の主要な部類は、ハイブリッドガラスアイオノマー又は樹脂変性ガラスアイオノマー(「RMGI」)として既知である。従来のガラスアイオノマーのように、RMGIはFASガラスを採用する。RMGIもまた、α,β−不飽和カルボン酸のホモポリマー又はコポリマー、FASガラス、及び水を含有する;しかし、RMGIの有機部分は異なる。1つの種類のRMGIにおいては、いくつかの酸性反復単位をペンダント硬化性基で置換又はエンドキャップするために、ポリ酸を変性し、第二の硬化機構を提供するために、光開始剤を添加する。ペンダント硬化性基としては、アクリレート又はメタクリレート基が典型的に採用される。別の種類のRMGIにおいては、組成物は、ポリカルボン酸、アクリレート又はメタクリレート官能性モノマー又はポリマー、及び光開始剤を包含する。いくつかの酸性反復単位をペンダント硬化性基で置換又はエンドキャップするために、所望により、ポリ酸を変性してよい。光開始剤系の代わりに、又は光開始剤系に加えて、酸化還元又は他の化学的硬化系を使用してよい。RMGI組成物は、通常、粉末/液体又はペースト/ペースト系として処方され、混合及び適用される水を含有する。これらは、ポリカルボン酸の酸性反復単位とガラスから浸出するカチオンとの間のイオン反応に起因して、ある程度に又は完全に、暗所で硬化されてもよく、歯科硬化ランプからの光にセメントを曝露することにより、商業用RMGI製品も、典型的に硬化する。
【0006】
ガラスアイオノマー組成物によって提供される多くの重要な利益がある。例えば、ガラスアイオノマーから解放されるフッ化物は、金属酸化物セメント、コンポマーセメント、又はフッ素添加複合物のような他の部類の歯科組成物から解放されるフッ化物よりも多い傾向があるので、ガラスアイオノマーは、増強された抗う触性保護を提供すると考えられている。ガラスアイオノマー材料の別の有利点は、こうしたセメントの歯牙構造へ非常に良好な臨床的接着を有し、これにより、非常に保持力のある修復を提供することである。従来のガラスアイオノマーは、外的硬化開始モードを必要としないので、一般にこれらを、層化の必要なしで、深い修復における充填材料としてバルクに設置することができる。
【0007】
従来のガラスアイオノマーの欠点の1つは、これらの組成物を、手で混合することが、いくぶん繊細な技術であることである。これらは、典型的に粉末構成要素及び液体構成要素から調製されるので、適用前に、計量及び混合作業を必要とする。こうした作業の正確さは、操作者の技術と能力に一部依存する。手で混合する際、通常、粉末構成要素及び液体構成要素は、紙上でスパチュラにて混合される。混合作業は、短期間で実行されなければならず、材料が望ましい特徴を完全に示すためには、熟練した技術が必要である(すなわち、セメントの性能は、混合比並びに混合の方法及び完全さに依存し得る)。或いは、これらの不便さと技術感度のいくつかは、適切な割合の粉末と液体構成要素を含有する系を分配する粉末液体カプセルの利用によって改善されてきた。カプセルは、適切な割合の粉末と液体構成要素を提供するが、これらはまだ、2つの構成要素を結合するためのカプセル活性化工程と、それに続く歯科粉砕器内での機械的混合を必要とする。
【0008】
これらの比較的低い曲げ強度によって示されるように、従来のガラスアイオノマーは非常に脆性である可能性がある。従って、従来のガラスアイオノマーから作製される修復は、耐荷重指示において、より破砕しやすい傾向がある。加えて、ガラスアイオノマーは、高い視覚的不透明度(すなわち、くもり)を特徴とすることが多く、特に硬化の初期段階で水に接触するとき、審美性が比較的劣る。
【0009】
硬化されたRMGIは、典型的に向上した強度特性(例えば、曲げ強度)を有し、従来のガラスアイオノマーよりも機械的破壊が劣る傾向があり、適切な歯接着のために、典型的にプライマー又はコンディショナーを必要とする。加えて、RMGIは、典型的に反応性希釈剤として2−ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)を包含し、これは、相溶剤として機能する。HEMAは、水と、RMGI組成物に存在するGDMA(グリセロールジメタクリレート)、UDMA(ジウレタンジメタクリレート)等のような反応性(メタ)アクリレートとを混合することを可能にする。従って、混合後、GI塩マトリックスと樹脂マトリックスが分離せずに、硬化する単相系を得ることが可能である。しかし、HEMAの使用は、RMGIのいくらかの顕著な不都合を導く。例えば、HEMAは、材料の変色を引き起こし有り、その結果、その審美的特性を低減することが周知である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、表面変性されてポリ酸を包含する充填剤を含有する、安定なGI及びRMGI組成物を包含する硬化性歯科組成物を提供する。このポリ酸は充填剤に付着し、相溶剤として機能するので、例えば、HEMAの存在を必要としないRMGI組成物の構築を可能とする。一実施形態では、本発明は、重合性構成要素と、第一ポリ酸で表面変性された充填剤とを含む硬化性歯科組成物を特徴とする。一般に、重合性構成要素は、エチレン性不飽和化合物であり、所望により酸官能性を有する。加えて、組成物は、典型的に第二ポリ酸、酸反応性充填剤、及び水を包含する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の組成物は、第一ポリ酸で表面変性された少なくとも1つの充填剤を包含する。第一ポリ酸は、共有結合により充填剤表面に固着することが好ましいが、他の方法で、例えばイオン結合を介して、充填剤に付着してもよい。ポリ酸は、充填剤の表面に直接付着してよく、又は充填剤の表面に直接付着する連結基に付着してよい。好適な連結基としては、シラン原子が充填剤表面に直接付着し(例えば、共有結合で)、及びアミノ部分がポリ酸に直接付着する(例えば、アミド連鎖で)アミノアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。
【0012】
充填剤に付着できる好適なポリ酸としては、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸のホモポリマー又はコポリマー、例えば、アクリル酸及び別のα,β−不飽和カルボン酸、例えばマレイン酸又はイタコン酸のコポリマーが挙げられる。他の特に好適なポリ酸としては、例えば、メタクリル酸等、あるいは重合性基が実質的にない、又は複数個の重合性基を含むポリ酸(例えば、ビトレボンド(VITREBOND)コポリマー)が挙げられる。
【0013】
組成物の第二ポリ酸構成要素は、典型的に複数個の酸性反復基を有するポリマーを含む。酸性反復基は、炭素の酸(例えば、カルボン酸)、イオウの酸(例えば、硫酸及びスルホン酸)、リンの酸(例えば、リン酸及びホスホン酸)、又はこれらの組み合わせであることができる。特定の実施形態では、酸性反復基は、カルボン酸である。典型的な実施形態は、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、及びメタクリル酸のポリマー及びコポリマーを包含する。ポリマーは、重合性基が実質的になくてもよく、或いは複数個の重合性基を含んでもよい。第二ポリ酸とエチレン性不飽和化合物は、同一であることができる。
【0014】
第一ポリ酸と第二ポリ酸は、同一であることができる。第二ポリ酸とエチレン性不飽和化合物は、同一であることができる。第一ポリ酸、第二ポリ酸、及びエチレン性不飽和化合物は、全て同一であることができる。
【0015】
組成物の酸反応性充填剤構成要素は、一般に金属酸化物、ガラス、金属塩、及びこれらの組み合わせから選択される。典型的に、酸反応性充填剤は、FASガラスを含む。本発明の特定の実施形態の利点の1つは、硬化性組成物が、以前のGI及びRMGI組成物より少ない酸反応性充填剤で調製されてよいことである。それ故に、一実施形態では、本発明の組成物は、50重量%未満の酸反応性充填剤、典型的にFASガラスを含む。
【0016】
本発明の別の実施形態では、酸反応性充填剤は、オキシフッ化物材料を含み、これは典型的にナノ構造であり、例えば、ナノ粒子の形態で提供される。一般に、酸反応性オキシフッ化物材料は、非融合であり、少なくとも1つの三価金属(例えば、アルミニウム、ランタン等)、酸素、フッ素、及び少なくとも1つのアルカリ土類金属(例えばストロンチウム、カルシウム、バリウム等)を包含する。オキシフッ化物材料は、金属酸化物粒子(例えば、シリカ)のような粒子又はナノ粒子上のコーティングの形態であってよい。
【0017】
本発明において使用される充填剤は、例えば、酸反応性又は酸非反応性のいずれであってもよいナノ充填剤であってよい。典型的に、ナノ充填剤は、シリカ;ジルコニア;チタン、アルミニウム、セリウム、スズ、イットリウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、亜鉛、イッテルビウム、ビスマス、鉄、及びアンチモンの酸化物;並びにこれらの組み合わせから選択されるナノ粒子を含む。ナノ充填剤の表面の一部は、1以上の所望の物理的特性を提供するために、シラン処理される、ないしは別の方法で化学的に処理されることが多い。
【0018】
また本発明の組成物は、例えば、他の充填剤、発熱性充填剤、フッ化物供給源、増白剤、抗カリエス剤(例えば、キシリトール)、ミネラル補給剤(例えば、リン酸カルシウム化合物)、酵素、息清涼剤、麻酔剤、凝固剤、酸中和剤、化学療法剤、免疫反応変性剤、薬剤、指示薬、染料、顔料、湿潤剤、酒石酸、キレート化剤、界面活性剤、緩衝剤、粘度調整剤、揺変剤、ポリオール、抗菌剤、抗炎症剤、抗真菌、安定剤、口腔乾燥症の治療剤、減感剤、及びこれらの組み合わせのような1以上の任意の添加剤を包含してもよい。
【0019】
また本発明の組成物は、光開始剤系及び/又は酸化還元硬化系を更に包含してもよい。
【0020】
さらに、組成物は、様々な構成要素が2つ以上の別個の部分に分離される、多数部系の形態で提供されてよい。典型的に、組成物は、ペースト−ペースト組成物、ペースト−液体組成物、ペースト−粉末組成物、又は粉末−液体組成物のような二部系である。
【0021】
上記のように、本発明の特定の実施形態の特徴の1つは、従来のガラスアイオノマーよりも少ない酸反応性充填剤を使用して硬化性アイオノマー組成物を提供することである。これは、例えば、粉末−液体系と比較して、こうした系の混合及び分配が容易であるため、一般に望ましい二部ペースト−ペースト組成物の調製を促進する。
【0022】
本発明の組成物は、歯科修復材、歯科接着剤、歯科セメント、空洞ライナー、歯科矯正接着剤、歯科シーラント、及び歯科コーティングを包含する様々な歯科及び歯科矯正用途において、有用である。組成物を硬化して、例えば、歯科ミルブランク、歯科クラウン、歯科充填剤、歯科補綴物、及び歯科矯正装置を形成することにより、歯科物品を調製するために使用してよい。
【0023】
本発明のアイオノマー組成物は、一般に、機械的強度、例えば、曲げ、直径引張及び圧縮強度、並びに歯牙構造への良好な接着強度を包含する良好な審美的、低い視覚的不透明度、良好な着用特性、良好な物理的特性を示す。加えて、本発明は、ペースト−ペースト組成物の処方により可能になる容易な混合及び便利な分配オプションに備える。
【0024】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の発明を実施するための最良の形態及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0025】
定義
「硬化性」とは、加熱、化学的架橋、放射線誘発重合又は架橋等により、組成物が硬化され得る、あるいは、固化され得ることを意味する。
【0026】
「充填剤」とは、口内環境に使用するのに適した粒子状物質を意味する。一般に、歯科充填剤は、最大100マイクロメートルの平均粒子サイズを有する。
【0027】
「ナノ充填剤」とは、最大200ナノメートルの平均一次粒径を有する充填剤を意味する。ナノ充填剤構成要素は、単一のナノ充填剤であってよく、又はナノ充填剤の組み合わせであってよい。典型的にナノ充填剤は、非発熱性ナノ粒子又はナノクラスターを含む。
【0028】
「ペースト」とは、液体に分散した固体の柔らかく粘稠な塊を意味する。
【0029】
「酸反応性充填剤」とは、酸性構成要素の存在により、化学的に反応する充填剤を意味する。
【0030】
「オキシフッ化物」とは、酸素及びフッ素の原子が、同一原子(例えば、アルミニウムオキシフッ化物中のアルミニウム)に結合する材料を意味する。一般に、少なくとも50%のフッ素原子が、オキシフッ化物材料中の酸素原子を持つ原子に結合する。
【0031】
「ナノ構造化」とは、少なくとも1つの寸法が、平均で、最大200ナノメートルである形態の材料(例えば、ナノサイズの粒子)を意味する。従って、ナノ構造化材料とは、例えば、本明細書において以下のように定義されるナノ粒子を包含する材料を意味する;ナノ粒子の集合体;粒子上にコーティングされた材料、ここでコーティングは、最大200ナノメートルの平均厚さを有する;粒子の集合体上にコーティングされた材料、ここでコーティングは、最大200ナノメートルの平均厚さを有する;最大200ナノメートルの平均孔径を有する多孔質構造に侵潤された材料;及びこれらの組み合わせ。多孔質構造は、例えば、多孔質粒子、粒子の多孔質集合体、多孔質コーティング、及びこれらの組み合わせを包含する。
【0032】
本明細書で使用するとき「ナノ粒子」は、「ナノサイズの粒子」と同意語として使用され、最大200ナノメートルの平均サイズを有する粒子を指す。本明細書で使用するとき、球状粒子において、「サイズ」とは粒子の直径を指す。本明細書にて使用するとき、非球状粒子において、「サイズ」とは、粒子の最長の寸法を指す。「ナノクラスター」とは、それらを塊、すなわち集合体にする比較的弱い分子間力によって共に引き出されるナノ粒子の会合を意味する。典型的に、ナノクラスターは、最大10マイクロメートルの平均サイズを有する。
【0033】
用語「酸官能性を有するエチレン性不飽和化合物」とは、エチレン性不飽和並びに酸及び/又は酸前駆体官能性を有するモノマー、オリゴマー、及びポリマーが包含されることを意味する。酸前駆体官能性としては、例えば、無水物、酸ハロゲン化物、及びピロリン酸塩が挙げられる。
【0034】
「歯科組成物及び歯科物品」とは、歯科矯正組成物(例えば、歯科矯正接着剤)並びに歯科矯正装置(例えば、リテーナ、ナイトガード、ブラケット、バッカルチューブ、バンド、クリート、ボタン、舌側リテーナ、咬合オープナー、ポジショナー、及び同種のもののような歯科矯正装具)を包含することを意味する。
【0035】
本明細書にて使用するとき、「(メタ)アクリレート」基は、アクリレート基(すなわち、CH2=CHC(O)O−)及びメタクリレート基(すなわち、CH2=C(CH3)C(O)O−)の両方を指す短縮語である。
【0036】
端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包括される全ての数が包含される(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を包含する)。
【0037】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。従って、例えば「化合物(a compound)」を含有する組成物の言及は、2つ以上の化合物の混合物を包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、用語「又は」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、一般に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0038】
特に指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分量、例えばコントラスト比のような性質の測定値を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という語句によって修正されるものとして理解されるべきである。従って、特に異議を唱えない限り、先の明細書及び添付の特許請求の範囲に記述されている数値パラメータは、当業者により本発明の技術を利用して獲得しようとされてきた所望の性質に応じて変化しうる概算である。最低限でも、特許請求の範囲への同等物の原則の適用を限定する試みとしてではなく、少なくとも各数値的パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、通常の四捨五入の適用によって解釈されなければならない。本発明の広範囲で示す数値的範囲及びパラメータは、近似値であるが、具体例に記載の数値は可能な限り正確に報告する。しかしながら、いずれの数値もそれらの各試験測定値において見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本来含有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明は、歯科組成物、特にアイオノマー組成物、例えば、ポリ酸で表面変性された充填剤構成要素を含有するガラスアイオノマー組成物を対象とする。典型的にこれらの硬化性組成物は、充填剤に付着しない追加のポリ酸構成要素;重合性構成要素;FASガラスのような酸反応性充填剤;及び水を更に含む。ポリ酸で表面変性された充填剤の組成物への組み込みは、HEMAを必要としない安定なRMGI組成物を形成する能力を包含する改善された特性を提供し、歯科組成物にHEMAを使用することに関する欠点(例えば、審美的特性の低減)を排除する。
【0040】
重合性構成要素
上記のように、本発明の硬化性歯科組成物は、典型的に重合性構成要素を包含する。重合性構成要素は、所望により、酸官能性を有する又は有さないエチレン性不飽和化合物であることができる。
【0041】
本発明の重合性構成要素は、硬化性樹脂の一部であることができる。これらの樹脂は、一般に、硬化されて、例えば、アクリレート官能性材料、メタクリレート官能性材料、エポキシ官能性材料、ビニル官能性材料、及びこれらの混合物を包含するポリマー網状組織を形成し得る熱硬化性材料である。典型的に、硬化性樹脂は、1以上のマトリックス形成オリゴマー、モノマー、ポリマー、又はこれらのブレンドから作製される。
【0042】
本出願にて開示された歯科組成物が歯科複合物である特定の実施形態では、使用するのに適した重合性材料としては、それを口内環境において使用するのに適した状態にするために、十分な強度、加水分解安定性、及び非毒性を有する硬化性有機材料が挙げられる。こうした材料の例としては、アクリレート、メタクリレート、ウレタン、カルバモイルイソシアヌレート、エポキシ、並びにこれらの混合物及び誘導体の混合物が挙げられる。
【0043】
好ましい硬化性材料の1つの部類としては、フリーラジカル的に活性な官能基を有する重合性構成要素を有する材料が挙げられる。こうした材料の例としては、1以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー、1以上のエチレン性不飽和基を有するオリゴマー、1以上のエチレン性不飽和基を有するポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
フリーラジカル的に活性な官能基を有する硬化性樹脂の部類では、本発明において使用するのに適した重合性構成要素は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含有し、付加重合されることが可能である。こうしたフリーラジカルエチレン性不飽和化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビス[l−(2−アクリロキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[l−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、及びトリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレートのようなモノ−、ジ−又はポリ−(メタ)アクリレート(すなわち、アクリレート及びメタクリレート);(メタ)アクリルアミドメチレンビス−(メタ)アクリルアミド、及びジアセトン(メタ)アクリルアミドのような(メタ)アクリルアミド(すなわち、アクリルアミド及びメタ);ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(好ましくは分子量200−500)のビス−(メタ)アクリレート;米国特許第4,652、274号(ボエッチャー(Boettcher)ら)のもののようなアクリレート化モノマーの共重合性混合物;米国特特許第4,642,126号(ザドー(Zador)ら)のもののようなアクリレート化オリゴマー;並びにスチレン、ジアリルフタレート、ジビニルサクシネート、ジビニルアジパート、及びジビニルブタレートのようなビニル化合物が挙げられる。他の好適なフリーラジカル的に重合性化合物としては、例えば、PCT国際公開特許WO00/38619(グーゲンベーガー(Guggenberger)ら)、PCT国際公開特許WO01/92271(ウェインマン(Weinmann)ら)、PCT国際公開特許WO01/07444(グーゲンベーガーら)、PCT国際公開特許WO00/42092(グーゲンベーガーら)に開示されているようなシロキサン官能(メタ)アクリレート、並びに、例えば、米国特許第5,076,844号(フォック(Fock)ら)、米国特許第4,356,296号(グリフス(Griffith)ら)、EP0373384(ワゲンネクト(Wagenknecht)ら)、EP0201031(レイナーズ(Reiners)ら)、及びEP0201778(レイナーズ(Reiners)ら)に開示されているようなフルオロポリマー官能(メタ)アクリレートが挙げられる。必要であれば、2つ以上のフリーラジカル重合性化合物の混合物を使用することができる。
【0045】
また重合性構成要素は、ヒドロキシル基及びフリーラジカル的に活性な官能基を単一分子内に含有してもよい。こうした物質の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリセロールモノ−又はジ−(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンモノ−又はジ−(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールモノ−、ジ−、及びトリ−(メタ)アクリレート;ソルビトールモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、又はペンタ−(メタ)アクリレート;及び2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−エタアクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(ビスGMA)が挙げられる。また好適なエチレン性不飽和化合物は、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)(ミズーリ州セントルイス(St.Louis))のような多種多様な商業的供給源から入手することもできる。必要であれば、エチレン性不飽和化合物の混合物を使用できる。
【0046】
本発明の組成物は、エチレン性不飽和化合物を、非充填組成物の全重量を基準として、典型的には少なくとも5重量%、より典型的には少なくとも10重量%、最も典型的には少なくとも15重量%包含する。本発明の組成物は、エチレン性不飽和化合物を、非充填組成物の全重量を基準として、典型的には最大95重量%、より典型的には最大90重量%、最も典型的には最大80重量%包含する。
【0047】
本発明の組成物は、非充填組成物の全重量を基準にして、典型的には少なくとも5重量%、より典型的には少なくとも10重量%、最も典型的には少なくとも15重量%の酸性官能基を持たないエチレン系不飽和化合物を包含する。本発明の組成物は、非充填組成物の全重量を基準として、典型的には最大95重量%、より典型的には最大90重量%、最も典型的には最大80重量%の酸官能性を有さないエチレン性不飽和化合物を包含する。
【0048】
酸官能性を有する重合性構成要素
存在する場合、重合性構成要素は、所望により、酸官能性を有するエチレン性不飽和化合物を含む。酸官能性は、炭素、イオウ、リン、又はホウ素の酸素酸(すなわち、酸素含有酸)を包含することが好ましい。
【0049】
こうした化合物としては、例えば、グリセロールホスフェートモノメタクリレート、グリセロールホスフェートジメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートホスフェート、クエン酸ジ−又はトリ−メタクリレート、ポリ(メタ)アクリレート化オリゴマレイン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリマレイン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリカルボキシル−ポリホスホン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリクロロホスホン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリスルホン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリホウ酸、及び同種のもののようなα,β−不飽和酸性化合物が挙げられ、硬化性樹脂系の構成要素として使用してよい。
【0050】
特定のこれらの化合物は、例えば、イソシアネートアルキル(メタ)アクリレートとカルボン酸との反応生成物として得られる。酸官能性及びエチレン性不飽和構成要素を有するこの種類のさらなる化合物は、米国特許第4,872,936号(エンゲルブレクト(Engelbrecht))及び同第5,130,347号(ミトラ(Mitra))に記載されている。エチレン性不飽和及び酸部分の両方を含有する多種多様なこうした化合物を使用することができる。必要であれば、こうした化合物の混合物を使用することができる。
【0051】
酸官能性を有するさらなるエチレン性不飽和化合物としては、例えば、米国特許出願10/729,497に開示された重合性ビスホスホン酸;例えば、米国特許第5,130,347号(ミトラ(Mitra))の実施例11に記載されるように、AA:ITAコポリマーと十分な2−イソシアネートエチルメタクリレートを反応させ、コポリマーの酸基の一部をペンダントメタクリレート基に変換することにより、作製される、AA:ITA:IEM(ペンダントメタクリレートを有するアクリル酸:イタコン酸のコポリマー;並びに米国特許第4,259,075号(山内(Yamauchi)ら)、同第4,499,251号(大村(Omura)ら)、同第4,537,940号(大村(Omura)ら)、同第4,539,382号(大村(Omura)ら)、同第5,530,038号(山本(Yamamoto)ら)、同第6,458,868号(岡田(Okada)ら)、並びに欧州特許712,622(European Pat. Application Publication Nos. EP 712,622)(トクヤマ社(Tokuyama Corp.))及び欧州特許1,051,961(EP 1,051,961)(クラレ社(Kuraray Co., Ltd.))に列挙されたものが挙げられる。
【0052】
酸官能性を有するエチレン性不飽和化合物が存在するとき、本発明の組成物は、非充填組成物の全重量を基準として、酸官能性を有するエチレン性不飽和化合物を、典型的には少なくとも1重量%、より典型的には少なくとも3重量%、最も典型的には少なくとも5重量%包含する。本発明の組成物は、非充填組成物の全重量を基準として、酸官能性を有するエチレン性不飽和化合物を、典型的には最大50重量%、より典型的には最大40重量%、最も典型的には最大30重量%包含する。
【0053】
酸反応性充填剤/ポリ酸反応(すなわち、酸塩基反応)を通して、組成物の部分的な又は完全な硬化が、起こる可能性がある。特定の実施形態では、また組成物は、化学線の照射に際し、組成物の重合(又は硬化)を開始する光開始剤系も含有する。こうした光重合性組成物は、フリーラジカル重合性であることができる。
【0054】
反応開始系
フリーラジカル重合(例えば、硬化)においては、反応開始系は、放射線、熱、又は酸化還元/自動硬化化学反応を介して、重合を開始する系から、選択されることができる。フリーラジカル的に活性な官能基の重合を開始することが可能な反応開始剤の部類としては、所望により光増感剤又は促進剤と組み合わせられる、フリーラジカル的に生成する光開始剤が挙げられる。こうした反応開始剤は、典型的に、波長200〜800nmの光エネルギーへの曝露に際し、付加重合するためのフリーラジカルを生成することが可能なものであり得る。
【0055】
フリーラジカル的に光重合性組成物を重合するために好適な光反応開始剤(すなわち、1以上の化合物を包含する光反応開始剤系)としては、二要素系及び三要素系が挙げられる。典型的な三要素光開始剤は、米国特許第5,545,676号(パラゾット(Palazzotto)ら)に記載されるようにヨードニウム塩、光増感剤、及び電子供与体化合物を包含する。好ましいヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩、及びトリクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。好ましい光増感剤は、約400nm〜520nm(好ましくは、450nm〜500nm)の範囲内のいくらかの光を吸収するモノケトン及びジケトンである。より好ましい化合物は、400nm〜520nm(さらにより好ましくは、450〜500nm)の範囲内のいくらかの光を吸収するα−ジケトンである。好ましい化合物は、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン及び他の1−アリール−2−アルキル−1,2−エタンジオン、並びに環状α−ジケトンである。最も好ましいのは、カンファーキノンである。好ましい電子供与体化合物としては、置換アミン、例えば、エチルジメチルアミノベンゾエートが挙げられる。カチオン重合性樹脂を光重合するために有用な他の好適な三要素光開始剤系は、例えば、米国公開特許出願2003/0166737(デデ(Dede)ら)及びPCT国際公開特許WO2005/051332(オキシマン(Oxman)ら)に記載されている。
【0056】
フリーラジカル光重合性組成物を重合するために好適な他の光反応開始剤としては、典型的に380nm〜1200nmの機能的波長範囲を有するホスフィンオキシドの部類が挙げられる。好ましいホスフィンオキシドフリーラジカル反応開始剤は、380nm〜450nmの機能的波長範囲を有し、米国特許第4,298,738号(レッケン(Lechtken)ら)、同第4,324,744号(レッケンら)、同第4,385,109号(レッケンら)、同第4,710,523号(レッケンら)、及び同第4,737,593号(エルリッチ(Ellrich)ら)、同第6,251,963号(コーラ−(Kohler)ら);及びEP特許出願0173567A2(イング(Ying))に記載されているもののようなアシル及びビスアシルホスフィンオキシドである。
【0057】
380nm〜450nm超過の範囲の波長を照射するとき、フリーラジカル反応開始が可能な市販のホスフィンオキシド光開始剤としては、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)(ニューヨーク州、タリタウン(Tarrytown))から取引名称イルガキュア(IRGACURE)819として入手可能なビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から取引名称CGI403として入手可能なビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から取引名称イルガキュア(IRGACURE)1700として入手可能な、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの、重量で25:75の混合物;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から取引名称ダロキュア(DAROCUR)4265として入手可能な、ビス(2,4,6−トリメチルベンソイル)フェニルホスフィンオキシド及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの、重量で1:1の混合物;並びにBASF社(BASF Corp.)(ノースカロライナ州、シャーロット(Charlotte))から取引名称ルシリン(LUCIRIN)LR8893Xとして入手可能なエチル2,4,6−トリメチルベンジルフェニルホスフィネートが挙げられる。
【0058】
典型的に、ホスフィンオキシド反応開始剤は、組成物の全重量を基準として0.1重量%〜5重量%のような、触媒的に有効な量で、光重合性組成物に存在する。
【0059】
アシルホスフィンオキシドと組み合わせて、三級アミン還元剤を使用してもよい。本発明において有用である実例となる三級アミンとしては、エチル4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエート及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。存在する場合、アミン還元剤は、光重合性組成物中に、組成物の全重量を基準として0.1重量%〜5重量%の量で存在する。他の反応開始剤の有用な量は、当技術者に周知である。
【0060】
本発明の歯科材料において、代わりに使用できる別のフリーラジカル反応開始剤系としては、ボレートアニオン及び相補的なカチオン性染料を包含するイオン性染料−対イオン錯体反応開始剤の部類が挙げられる。ホウ酸塩光開始剤は、例えば、米国特許第4,772,530号(ゴットスカルク(Gottschalk)ら)、同第4,954,414号(アダイラ(Adair)ら)、同第4,874,450号(ゴットスカルク(Gottschalk))、同第5,055,372号(シャンクリン(Shanklin)ら)、及び同第5,057,393号(シャンクリン(Shanklin)ら)に記載されている。
【0061】
本発明の硬化性樹脂は、重合性構成要素(例えば、エチレン性不飽和の重合性構成要素)と、酸化剤及び還元剤を包含する酸化還元剤とを包含する酸化還元硬化系を包含することができる。本発明において有用である好適な重合性構成要素及び酸化還元剤は、米国公開特許出願2003/0166740(ミトラ(Mitra)ら)及び米国公開特許出願2003/0195273(ミトラ(Mitra)ら)に記載されている。
【0062】
樹脂系の重合を開始することが可能なフリーラジカル(例えば、エチレン性不飽和構成要素)を製造するために、還元剤及び酸化剤は、互いに反応するか、ないしは別の方法で協同すべきである。この種類の硬化は、光の存在に依存せず、光が存在しなくても進行することができる、暗反応である。好ましくは、還元剤及び酸化剤は、十分に貯蔵安定性があり、不快な着色がなく、典型的な歯科条件下においての保存及び使用を可能にする。これらは、重合性組成物の他の構成要素に容易に溶解する(及び、硬化性組成物の他の構成要素からの分離を阻止する)ことを可能にするために、樹脂系と十分に混和性(及び好ましくは水溶性)があるべきである。
【0063】
有用な還元剤としては、例えば、米国特許第5,501,727号(ワング(Wang)ら)に記載されているようなアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及び金属錯体アスコルビン酸化合物;アミン、特に4−tert−ブチルジメチルアニリンのような三級アミン;p−トルエンスルフィン酸塩及びベンゼンスルフィン酸塩のような芳香族スルフィン酸塩;1−エチル−2−チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1−ジブチルチオ尿素、及び1,3−ジブチルチオ尿素のようなチオ尿素;並びにこれらの混合物が挙げられる。他の二次還元剤は、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン(酸化剤の選択に依存する)、ジチオン酸又は亜硫酸アニオンの塩、及びこれらの組み合わせを包含してもよい。還元剤はアミンであることが好ましい。
【0064】
また好適な酸化剤は、当業者に馴染みがあり、例えば、過硫酸、並びにナトリウム、カリウム、アンモニウム、セシウム、及びアルキルアンモニウム塩のようなその塩が挙げられる。さらなる酸化剤としては、例えば、過酸化ベンゾイルのような過酸化物、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、及びアミルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシド、並びに塩化コバルト(III)及び塩化第二鉄、硫酸セリウム(IV)のような遷移金属の塩、過ホウ酸及びその塩、過マンガン酸及びその塩、過リン酸及びその塩、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
1超過の酸化剤又は1超過の還元剤を使用することが望ましい可能性がある。また、酸化還元硬化の速度を促進するために、少量の遷移金属化合物を添加してもよい。ある実施形態では、例えば米国公開特許出願2003/0195273(ミトラ(Mitra)ら)に記載されているように、硬化性組成物の安定性を増強するために、二次イオン性塩を包含することが好ましい可能性がある。
【0066】
還元剤及び酸化剤は、適当なフリーラジカル反応速度を可能にするために十分な量で存在する。これは、充填剤以外の、硬化性組成物の全成分を組み合わせ、硬化された塊が得られるかどうかを観察することにより評価できる。
【0067】
還元剤は、硬化性組成物の構成要素の全重量(水を包含する)を基準として、好ましくは少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.10重量%の量で存在する。還元剤は、重合性組成物の構成要素の全重量(水を包含する)を基準として、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量で存在する。
【0068】
酸化剤は、重合性組成物の構成要素の全重量(水を包含する)を基準として、好ましくは少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.10重量%の量で存在する。酸化剤は、硬化性組成物の構成要素の全重量(水を包含する)を基準として、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量で存在する。
【0069】
還元剤又は酸化剤は、例えば米国特許第5,154,762号(ミトラ(Mitra)ら)に記載されているように、マイクロカプセル化され得る。これは、一般に、重合性組成物の貯蔵安定性を増強し、必要であれば、還元剤又は酸化剤を共に包装することを許容するであろう。例えば、カプセルの材料(encapsulant)の適切な選択を通して、酸化剤及び還元剤は、酸官能性構成要素及び任意の充填剤と組み合わせて、保存安定性状態を維持することができる。同様に、非水溶性カプセル材料の適切な選択を通して、還元剤及び酸化剤は、FASガラス及び水と組み合わせられることができ、保存安定状態で維持されることができる。
【0070】
更なる代替案において、フリーラジカル的に活性な基の硬化又は重合を開始するために、熱を使用してよい。本発明の歯科材料において好適な熱供給源の例としては、誘導、対流、及び放射が挙げられる。熱供給源は、標準状態又は高圧下において、少なくとも40℃、最大150℃の温度を生成可能であるべきである。この手順は、口内環境外で起こる材料の重合を開始するのに好ましい。
【0071】
硬化性樹脂におけるフリーラジカル的に活性な官能基の重合を開始できる反応開始剤における更に別の代わりの部類は、フリーラジカル的に生成する熱反応開始剤を包含するものである。例としては、過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル及び過酸化ラウリル)及びアゾ化合物(例えば、2,2−アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN))が挙げられる。
【0072】
光開始剤化合物は、樹脂系の硬化(cure又はhardening)の速度を開始する又は増大するために有効な量で、本出願に開示される歯科組成物において提供されることが好ましい。有用な光重合性組成物は、安全な光条件下において、上記の構成要素を単に混合することにより、調製される。必要であれば、この混合物を調製するときに、好適な不活性溶媒を使用してもよい。本発明の組成物の構成要素と評価可能に反応しない任意の溶媒を使用してよい。好適な溶媒の例としては、例えば、アセトン、ジクロロメタン、及びアセトニトリルが挙げられる。
【0073】
ポリ酸
本発明の組成物は、非硬化性又は非重合性ポリ酸、あるいは硬化性又は重合性ポリ酸(例えば、樹脂変性ポリ酸)であってよい少なくとも1つのポリ酸を包含する。典型的に、ポリ酸は、複数個の酸性反復単位及び/又は複数個の重合性基を有するポリマーである。他の実施形態では、ポリ酸は、重合性基が実質的になくてよい。ポリ酸は、完全に水溶性である必要はないが、他の水性構成要素と組み合わせられるとき、実質的に沈殿しないように、典型的に少なくとも十分に水混和性である。好適なポリ酸は、米国特許第4,209,434号(ウィルソン(Wilson)ら)、2欄62行〜3欄6行に列記されている。ポリ酸は、良好な保存、取り扱い、及び混合特性を提供するのに十分な分子量を有するべきである。典型的な重量平均分子量は、5,000〜100,000であり、ゲル透過クロマトグラフィーを使用するポリスチレン標準又はポリアクリル酸ナトリウム塩標準に対して上昇している。
【0074】
一実施形態では、ポリ酸は、硬化性又は重合性樹脂である;すなわち少なくとも1つのエチレン性不飽和基を含有する。好適なエチレン性不飽和ポリ酸は、米国特許第4,872,936号(エンゲルブレクト(Engelbrecht))、例えば、3欄及び4欄、並びに、EP323120B1(ミトラ(Mitra))、例えば、3頁55行〜5頁8行に記載されている。典型的に、酸性基及びエチレン性不飽和基の数は、歯科組成物において特性の適切なバランスを提供するように調節される。酸基の10%〜70%がエチレン性不飽和基で置換されたポリ酸が好ましい。
【0075】
他の実施形態では、ポリ酸は、例えば、酸反応性充填剤及び水の存在下で硬化性であるが、エチレン性不飽和基を含有しない;すなわち、不飽和酸のオリゴマー又はポリマーである。典型的に、不飽和酸は、炭素、イオウ、リン、又はホウ素の酸素酸(すなわち、酸素含有酸)である。より典型的に、これは、炭素の酸素酸である。こうしたポリ酸としては、例えば、不飽和モノ−、ジ−、又はトリカルボン酸のホモポリマー及びコポリマーのようなポリアルケン酸が挙げられる。ポリアルケン酸は、不飽和脂肪族カルボン酸、例えば、アクリル酸、2−クロロアクリル酸、3−クロロアクリル酸、2−ブロモアクリル酸、3−ブロモアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、グルタコン酸、アコニット酸、シトラコン酸、メサコン酸、フマル酸、及びチグリン酸の単独重合及び共重合により、調製できる。不飽和脂肪族カルボン酸と共重合できる好適なモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化アリル、酢酸ビニル、及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートのような不飽和脂肪族化合物が挙げられる。必要であれば、ターポリマー及び高次ポリマー(higher polymer)を使用してよい。特に好ましいのは、アクリル酸のホモポリマー及びコポリマーである。ポリアルケン酸は、非重合モノマーが実質的にないべきである。別の実施形態では、ポリ酸は、アクリル酸とα−β不飽和カルボン酸、例えばマレイン酸又はイタコン酸とのコポリマーである。さらに別の実施形態では、ホスホン酸、リン酸又はスルホン酸を持つポリマー又はコポリマーを使用することができる。
【0076】
ポリ酸の量は、酸反応性充填剤と反応して、望ましい硬化特性を有するアイオノマー組成物を提供するのに十分でなければならない。ポリ酸は、非充填組成物の全重量を基準として、典型的に少なくとも1重量%、より典型的に少なくとも3重量%、最も典型的に少なくとも5重量%を示す。ポリ酸は、非充填組成物の全重量を基準として、典型的に最大90重量%、より典型的に最大60重量%、最も典型的に最大30重量%を示す。
【0077】
ポリ酸で表面変性された充填剤
ポリ酸構成要素に加えて、本発明の組成物は、ポリ酸で表面変性された充填剤、すなわちポリ酸が付着した充填剤も包含する。ポリ酸の典型的な分子量は、1000〜500,000の範囲であり、5,000〜150,000が一般に好ましい。ポリ酸は、統計コポリマー又はブロックコポリマー、あるいは交互コポリマーであってよい。直鎖状ポリマー又は分枝状ポリマー、例えば、星型ポリマーでさえあってもよい。典型的に、充填剤の表面が、最初に連結基で修飾され、続いてポリ酸がこの連結基に連結する。官能化アルコキシシランは、水酸化アルミニウム、クリストバライト(cristoballit)、ガラス繊維を含有するガラス、カオリン、沈殿又は発熱性シリカ石英、石英ガラス、及び珪灰石を包含する様々な無機充填剤の表面に付着できる。雲母、ケイ酸塩(例えば、長石)、水酸化マグネシウム、タルク、酸化ニッケル、及び同種のものに加えて、他の好適な無機酸化物を使用してよい。加えて、低金属含量のFASガラス、C−OH基を含有する有機又はポリマー充填剤、表面上の基は、本発明の組成物において使用するのに好適な充填剤である。
【0078】
酸反応性充填剤
好適な酸反応性充填剤としては、金属酸化物、ガラス、及び金属塩が挙げられる。典型的な金属酸化物としては、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、及び酸化亜鉛が挙げられる。典型的なガラスとしては、ホウ酸ガラス、リン酸ガラス、及びフルオロアルミノシリケート(「FAS」)ガラスが挙げられる。FASガラスが、特に好ましい。ガラスが硬化性組成物の構成要素と混合されるとき、硬化された歯科組成物が形成されるように、FASガラスは、典型的に十分な溶出性カチオンを含有する。また、ガラスは、典型的に十分な溶出性フッ化物イオンを含有するので、硬化された組成物は抗う触性を有するであろう。ガラスは、FASガラス製造技術において当業者に馴染みが深い技術を使用して、フッ化物、アルミナ、及び他のガラス形成成分を含有する溶融物から、製造することができる。FASガラスは、典型的に十分に超微粒子状の粒子の形態であるので、他のセメント構成要素と都合よく混合され得て、その結果得られる混合物が口内に使用されるとき、十分に機能するであろう。
【0079】
一般に、前記FASガラスの平均粒径(典型的には直径)は、例えば、沈殿分析器を使用して測定した場合、約12ミクロン以下、典型的には10ミクロン以下、より典型的には5ミクロン以下である。好適なFASガラスは、当業者に馴染み深いであろうし、多種多様な商業的供給源から入手可能であり、多くは、ビトレマー(VITREMER)、ビトレボンド(VITREBOND)、レリーXルーティング・セメント(RELY X LUTING CEMENT)、レリー・X・ルーティング・プラス・セメント(RELY X LUTING PLUS CEMENT)、フォトタック−フィルクイック(PHOTAC-FIL QUICK)、ケタック−モラー(KETAC-MOLAR)、及びケタック−フィルプラス(KETAC-FIL PLUS)(3M ESPEデンタル・プロダクツ(3M ESPE Dental Products)(ミネソタ州セントポール(St.Paul))、フジII LC(FUJI II LC)及びフジIX(FUJI IX)(G−Cデンタル・インダストリアル社(G-C Dental Industrial Corp.)、日本、東京)、並びにケムフィル・スペリオール(CHEMFIL Superior)(デンツプライ・インターナショナル(Dentsply International)、ペンシルペニア州ヨーク(York))の取引名称にて市販されているもののような、現在入手可能なガラスアイオノマーセメントに見ることができる。必要であれば、充填剤の混合物を使用することができる。
【0080】
所望により、FASガラスを表面処置することができる。好適な表面処理としては、酸洗浄(例えば、リン酸による処理)、ホスフェートによる処理、酒石酸のようなキレート化剤による処理、及びシランあるいは酸性又は塩基性シラノール溶液による処理が挙げられるが、これらに限定されない。処理溶液又は処理されたガラスのpHを中性又はほぼ中性に合わせることが望ましく、このことは、硬化性組成物の保存安定性を上昇できる。
別の実施形態では、酸反応性充填剤は、非融合オキシフッ化物材料を含む。オキシフッ化物材料は、三価金属、酸素、フッ素、及びアルカリ土類金属を包含してよい。三価金属は、アルミニウム、ランタン、イットリウム、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。より好ましくは三価金属は、アルミニウムである。アルカリ土類金属は、ストロンチウム、カルシウム、バリウム、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。本発明のある実施形態では、オキシフッ化物材料は、さらにケイ素及び/又は重金属(例えば、ジルコニウム、ランタン、ニオビウム、イットリウム、又はタンタル)、又はより具体的には、そのオキシド、フッ化物及び/又はオキシフッ化物を更に包含してもよい。
【0081】
本発明のある実施形態では、少なくとも一部のオキシフッ化物材料は、ナノ構造化されている。こうしたナノ構造化材料は、例えば、ナノ粒子、粒子上のコーティング、粒子の集合体上のコーティング、多孔質構造への侵潤、及びこれらの組み合わせの形態のオキシフッ化物材料を包含する。好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%のオキシフッ化物材料がナノ構造化している。
【0082】
好適なオキシフッ化物材料、及びこれらの歯科組成物における使用の記載が、米国特許出願10/847,805(ブッダ(Budd)ら)に提供されている。酸反応性充填剤の量は、硬化前に望ましい混合及び取り扱い特性を有し、並びに硬化後に良好な物理的及び光学的特性を有するアイオノマー組成物を提供するのに十分であるべきである。一般に、反応性充填剤は、組成物の全重量の約85%未満を示す。典型的に、酸反応性充填剤は、組成物の全重量を基準として、少なくとも10重量%、より典型的に少なくとも20重量%を示す。典型的に、酸反応性充填剤は、組成物の全重量を基準として、最大75重量%、より典型的に最大50重量%を示す。
【0083】
他の充填剤
本発明の組成物は、酸反応性充填剤に加えて、所望により1以上の他の充填剤も包含することができる。こうした充填剤は、歯科及び/又は歯科矯正組成物において使用するのに適した多種多様な材料の1以上から選択されてよい。
【0084】
他の充填剤は、無機材料であることができる。またこれは、組成物の樹脂構成要素に不溶の架橋された有機材料であることができ、所望により無機充填剤で充填されてもよい。充填剤は、いずれにしても非毒性であるべきであり、口内に使用するのに適しているべきである。充填剤は、放射線不透過性又は放射線半透過性であることができる。典型的に充填剤は、実質的に水において不溶性である。
【0085】
好適な無機充填剤の例は、天然起源の又は合成の材料であり:石英;窒化物(例えば、窒化ケイ素);例えば、Zr、Sr、Ce、Sb、Sn、Ba、Zn、及びAlに由来するガラス;長石;ボロシリケートガラス;カオリン;タルク;チタニア;米国特許第4,695,251号(ランドクレブ(Randklev))に記載されるもののようなモース硬度の低い充填剤;並びにシリカ粒子(例えば、デグサ(Degussa)AG、(ドイツ、ハナウ(Hanau))からの「OX50」、「130」、「150」、及び「200」シリカを包含する取引名称アエロジル(AEROSIL)、並びにキャボット・コーポレーション(Cabot Corp.)、(イリノイ州、タスコラ(Tuscola))からのCAB−O−SIL M5シリカとして入手可能なもののようなサブミクロン発熱性シリカ)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な有機充填剤粒子の例としては、充填又は非充填粉砕ポリカーボネート、ポリエポキシド等が挙げられる。
【0086】
好適な酸非反応性充填剤粒子は、石英、サブミクロンシリカ、及び米国特許第4,503,169号(ランドクルブ(Randklev))に記載された種類の非ガラス質微小粒子である。また、これらの酸非反応性充填剤の混合物、並びに有機材料及び無機材料から製造された混合充填剤も意図される。
【0087】
また、充填剤と樹脂との間の結合を増強するために、充填剤粒子の表面を、連結剤で処理することもできる。好適な連結剤の使用としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。有用なシランカップリング剤の例は、クロンプトン・コーポレーション(Crompton Corporation)(コネチカット州ノガタック(Naugatuck))から、シルクエスト(SILQUEST)A−174及びシルクエストA−1230として入手可能なものである。
【0088】
他の充填剤を包含する本発明のある実施形態(例えば、歯科修復材組成物)において、組成物は、組成物の全重量を基準として、少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも2重量%、最も好ましくは少なくとも5重量%の他の充填剤を包含してよい。こうした実施形態において、本発明の組成物は、組成物の全重量を基準として、好ましくは最大40重量%、より好ましくは最大20重量%、最も好ましくは最大15重量%の他の充填剤を包含する。
【0089】
本発明の組成物は、所望により、酸反応性又は酸非反応性であってよい1以上のナノ充填剤を含有してよい。加えて又は代わりに、ポリ酸で表面変性された充填剤は、所望によりナノ充填剤であってよい。
【0090】
こうしたナノ充填剤は、典型的に最大200ナノメートル、より典型的に最大100ナノメートルの平均粒子サイズを有する。こうしたナノ充填剤は、典型的に少なくとも2ナノメートル、より典型的に少なくとも5ナノメートルの平均粒子サイズを有する。典型的に、ナノ充填剤は、シリカ;ジルコニア;チタン、アルミニウム、セリウム、スズ、イットリウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、亜鉛、イッテルビウム、ビスマス、鉄、及びアンチモンの酸化物;並びにこれらの組み合わせから選択されるナノ粒子を含む。より典型的に、ナノ充填剤は、シリカ;ジルコニア;チタンの酸化物;及びこれらの組み合わせから選択されるナノ粒子を含む。ある実施形態では、ナノ充填剤は、ナノクラスターの形態であり、典型的に少なくとも80重量%ナノクラスターである。より典型的にナノクラスターは、シリカクラスター、シリカ-ジルコニアクラスター、及びこれらの組み合わせを包含する。他の実施形態では、ナノ充填剤は、ナノ粒子及びナノクラスターの組み合わせの形態である。1以上の望ましい物理的特性を提供するために、ナノ充填剤の表面の一部は、シラン処理ないしは別の方法で化学的処理されることが多い。
【0091】
好適なナノ充填剤は、米国特許第6,387,981号(ジャング(Zhang)ら)及び同第6,572,693号(ウー(Wu)ら)、並びにPCT国際公開特許WO01/30305(ジャングら)、PCT国際公開特許WO01/30306(ウィンディッシュ(Windisch)ら)、PCT国際公開特許WO01/30307(ジャングら)、及びPCT国際公開特許WO03/063804(ウーら)に開示されている。これらの参考文献に記載された充填剤構成要素としては、ナノサイズのシリカ粒子、ナノサイズの金属酸化物粒子、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ナノ充填剤は、米国特許出願10/847,781(カンガス(Kangas)ら);同10/847,782(コルブ(Kolb)ら);及び同10/847,803(クライグ(Craig)ら)にも記載されている。典型的に、ナノ充填剤は、非発熱性充填剤であるが、歯科組成物に任意の添加剤として発熱性充填剤を添加することができる。
【0092】
少なくとも部分的にナノ構造化された上記の酸反応性非融合オキシフッ化物材料を、本発明において、ナノ充填剤として使用することができる。
【0093】
ナノ充填剤の量は、硬化前に望ましい混合及び取り扱い特性を有し、硬化後に良好な物理的及び光学的特性を有するアイオノマー組成物を提供するのに十分であるべきである。ナノ充填剤は、組成物の全重量を基準として、典型的に少なくとも0.1重量%、より典型的に少なくとも10重量%、最も典型的に少なくとも20重量%を示す。ナノ充填剤は、組成物の全重量を基準として、典型的に最大80重量%、より典型的に最大70重量%、最も典型的に最大60重量%を示す。
【0094】

本発明の組成物は、水を含有する。水は、蒸留水、脱イオン水、又は味のない(plain)水道水であることができる。典型的に、脱イオン水を使用する。
【0095】
水の量は、適した取り扱い及び混合特性を提供するため、並びに特に充填剤−酸反応において、イオンの輸送を許容するために、十分であるべきである。水は、組成物を形成するのに使用される成分の全重量の、好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも5重量%を示す。水は、組成物を形成するのに使用される成分の全重量の、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下を示す。
【0096】
他の添加剤
所望により、硬化性組成物は、他の溶媒、共溶媒(例えば、アルコール)又は希釈剤を含有してよい。必要であれば、本発明の硬化性組成物は、指示薬、染料、顔料、阻害物質、促進剤、粘度調整剤、湿潤剤、酒石酸、キレート化剤、界面活性剤、緩衝剤、安定剤、及び当業者に明らかであろう他の同様な成分のような添加剤を含有することができる。さらに、薬剤又は他の治療用物質を、所望により歯科組成物に添加することができる。例としては、歯科組成物に使用されることが多い種類の、フッ化物供給源、増白剤、抗カリエス剤(例えば、キシリトール)、ミネラル補給剤(例えば、リン酸カルシウム化合物)、酵素、息清涼剤、麻酔剤、凝固剤、酸中和剤、化学療法剤、免疫反応変性剤、チキソトロープ剤、ポリオール、抗炎症剤、抗菌剤、抗真菌剤、口腔乾燥症の治療剤、減感剤等が挙げられるが、これらに限定されない。また、上記の添加剤の任意の組み合わせを採用してもよい。いずれか1つのこうした添加剤の選択及び量は、任意の結果を達成するために、過度の実験をせずに、当技術者により選択され得る。
【0097】
組成物の調製及び使用
本発明の硬化性歯科組成物は、全ての様々な構成要素を、従来の混合技術を使用して組み合わせることにより、調製され得る。上記のように、組成物は、酸反応性充填剤とポリ酸の間のイオン反応により、ある程度に又は完全に硬化されてよい。所望により、組成物は、重合性構成要素及び光開始剤を含有して、光反応開始により硬化されてよく、あるいは、組成物は、例えば酸化剤及び還元剤を包含するフリーラジカル反応開始剤系を含有する酸化還元硬化系のような化学重合により、ある程度に又は完全に硬化されてよい。或いは、硬化性組成物は、組成物が、イオン硬化性組成物であることに加え、光重合性及び化学重合性の組成物であることができるように、異なる反応開始剤系を含有してよい。
【0098】
本発明の硬化性組成物は、一部系及び多部系、例えば、2部粉末/液体、ペースト/液体、ペースト/粉末、及びペースト/ペースト系を包含する様々な形態で提供されることができる。また、それぞれ粉末、液体、ゲル、又はペーストの形態である多部組み合わせ(すなわち、2つ以上の部の組み合わせ)を採用する他の形態も可能である。組成物の様々な構成要素は、要求されるいかなる方法においても、別個の部分に分割されてよい;しかし、これらの任意の2つが、他の構成要素の任意の組み合わせと共に同一の部に集められてもよいが、ポリ酸、酸反応性充填剤、及び水は、一般に全て同一の部に存在するであろう。更に、酸化還元多数部系において、一部は、典型的に酸化剤を含有し、もう一部は、典型的に還元剤を含有する。しかし、構成要素が、例えばマイクロカプセルの使用により、分離が保たれれば、還元剤及び酸化剤を、系の同一の部において組み合わせることができる。
【0099】
一実施形態では、本発明の組成物は、二部ペースト−ペースト系として提供される。第一部のペーストAは、典型的に、光硬化触媒、FASガラス、エチレン性不飽和構成要素(単数又は複数)、並びに所望により顔料、レオロジー変性剤、及びフッ化物供給源を含有する。第二部のペーストBは、典型的に、ポリ酸、ポリ酸で表面処理された充填剤、シランで表面処理された充填剤、任意のエチレン性不飽和構成要素、水、並びに所望により顔料、レオロジー変性剤、及びフッ化物供給源を含有する。典型的に、ペーストAもペーストBも、HEMAを含有しない。一般に、ペーストA及びペーストBにおける成分のこの組み合わせは、プライマーなしで象牙質及びエナメル質へ接着する安定なRMGI組成物を提供する。こうした組成物は、便利な一段階簡単混合直接修復方法による、歯修復のバルク充填のために特に有用である。
【0100】
ある実施形態では、本発明の二部歯科組成物を、第一バレル及び第二バレルを有する二重バレル注射器内に準備することができ、ここでA部は第一バレルに存在し、及びB部は第二バレルに存在する。他の実施形態では、本発明の二部歯科組成物を、1回用量カプセル内に準備することができる。ある実施形態では、静的ミキサーを使用して、多数部歯科系の各部を混合することができる。
【0101】
硬化性組成物の構成要素は、キットに包含されることが可能であり、そこで、組成物の内容物は、それらが必要とされるまで、構成要素の保存が可能となるように包装される。
【0102】
歯科組成物として使用されるとき、硬化性組成物の構成要素は、混合され、従来の技術を使用して臨床的に適用され得る。光重合性組成物の反応開始のためには、一般に硬化用光が必要である。組成物は、象牙質及び/又はエナメル質に非常に良好に接着する複合物又は修復剤の形態であることができる。所望により、硬化性組成物が使用される歯組織上に、プライマー層を使用することができる。例えば、FASガラス、又は他のフッ化物放出材料を含有する組成物は、非常に良好に長期間フッ化物を放出することができる。本発明のいくつかの実施形態は、光又は他の外的硬化エネルギーを適用せずに、バルク内で硬化され得たり、前処理を必要とせずに、改善された曲げ強度を包含する改善された物理的特性を有し、抗う触性効果のための高いフッ化物解放を有する、ガラスアイオノマーセメント又は接着剤を提供する可能性がある。
【0103】
本発明の硬化性歯科組成物は、多種多様な歯科材料の形態における使用に特によく適合する。これらは、典型的に充填組成物(好ましくは、約25重量%超過の充填剤、約60重量%以下の充填剤を含有する)である義歯セメントにおいて使用できる。これは、充填材料のような、典型的に歯に隣接して配置された後に重合される充填組成物(好ましくは約10重量%超過の充填剤、及び約85重量%以下の充填剤を含有する)である複合物を包含する修復材においても使用することができる。また、これらは、歯に隣接して配置される前に、最終用途(例えば、クラウン、ブリッジ、ベニヤ、インレイ、オンレイ等として)のために形成される又は硬化される補綴物において、使用されることもできる。こうした事前成形物品は、歯医者又は他のユーザーによって、研がれる(ground)ことができるか、ないしは別の方法で慣例に合った形状に形成されることができる。硬化性歯科組成物は、任意の多種多様な材料であることができるが、組成物は、表面前処理材料(例えば、エッチング液、プライマー、結合剤)でないことが好ましい。それどころか、硬化性歯科組成物は、修復材(例えば、複合物、充填材料、又は補綴)、セメント、シーラント、コーティング、あるいは歯科矯正接着剤であることが好ましい。
【0104】
本発明の特徴及び利点は、次の実施例により、さらに説明されるが、これにより制限されることを決して意図しない。これらの実施例において列挙されるその特定の材料及び量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を過度に制限しないと解釈されるべきである。指示がない限り、全ての部及びパーセントは重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。
【実施例】
【0105】
試験方法
SEM(走査型電子顕微鏡)試験方法
硬化組成物の断裂試験試料を調べるために、SEMを使用した。日立(Hitachi)S510走査型電子顕微鏡にて、測定を行なった。調べられた試料は、破壊した標本(長さ25mm×幅2mm×厚さ2mm)であった。走査前に、表面を金パラジウム合金にて電流50mA下で180秒間スパッタ処理した。標本を低圧(0.02Pa(2×10-4mbar))下で走査し、加速電圧25kVを使用した。
【0106】
曲げ強度(FS)試験方法
イソ(ISO)標準9917−2(1998)に従って、ズウィック万能試験機(Zwick universal tester)(ズウィック社(Zwick GmbH & Co.KG)、ドイツ、ウルム(Ulm))をクロスヘッド速度1ミリメートル/分(mm/min)にて稼動させて使用し、曲げ強度を決定した。結果を6複製の平均で報告した。試験試料ペーストをスパチュラで混合し、混合したペーストを長方形型金型(長さ25mm×幅2mm×厚さ2mm)へ移動し、エリパートリライト(ELIPAR TRILIGHT)硬化光(3M ESPE、ドイツ、シーフェルド(Seefeld))を使用して40秒間光硬化することにより、標本を調製した。
【0107】
象牙質への接着の試験方法
ウシ歯群を使用して、以下の試験手順に従って、接着試験を行なった。各試験において、採取後に冷凍された5つのウシ歯群を解凍し、残留する歯肉を除去するように洗浄し、ダイヤモンドソーで切ることにより根元から分離した。残留するパルプをパルプ針を使用して除去した後、歯群を水ですすいだ。水冷ダイアモンド研磨ディスク上で歯群を唇研磨(labial sanding)し、最終的に細かいシリコーンカーバイド紙やすりで処理することにより、平面象牙質を得た。その後、歯群を、湿りを維持する研磨表面が上方を向くような方法で、シリコーンに埋め込んだ。その後、直径6mm(試験領域)高さ2mmの丸い切り抜きを有する小さなワックスプレートから成る型を各歯上に置いた。この試験領域を平面様式にて試験試料で充填する。型に充填した直後、エリパートリライト硬化光(ELIPAR TRILIGHT curing light)(3M ESPE)を使用して、試料を40秒間光硬化した。硬化後、小さいワックスプレートを除去し、ネジを硬化された試料に歯の表面に直角に接着的に固着した。その後、系を試験装置のセットアップに付着するために、ネジを使用した。歯群を36℃及び相対湿度>95%で24時間保存した。ズウィック(Zwick)UPM1455試験機(ズウィック社(Zwick GmbH & Co. KG))における、除去速度1mm/分の除去試験において、接着を測定した。接着をMPa単位で計算し、5複製の平均として報告した。
【0108】
特に明記しない限り、接着試験は、GCフジコンディショナー(GC Fuji Conditioner)(GC社(GC Corp.)、日本)のようなコンディショナー、ビトリマー(VITRIMER)プライマー(3M ESPE)のようなプライマー、又は固着系の形態で、いかなる前処理もせずに行なわれた。従来のガラスアイオノマー修復材においては、接着が、コンディショナーを使用して改善されるのが現況技術である。同様に、特定の樹脂変性ガラスアイオノマー修復材において、プライマーを使用することにより、接着が得られる。使用するとき、使用のための製造業者の指示に記載されるように、コンディショナー又はプライマー製品を使用した。
【0109】
【表A】

【0110】
ポリ酸A
ポリ(アクリル)酸
アクリル酸の水溶液(インターオルガノ社(Interorgana GmbH & Co.)KG、50668、ドイツ、ケルン(Koeln))及び過硫酸アンモニウム(ペルオキシドケミー社(Peroxid Chemie GmbH)、82049、ドイツ、プラク(Pullach)、99%)(500:1モル比)を80℃で4時間加熱した。室温に冷却後、溶液を膜濾過によって精製し、スプレー乾燥によって単離し、平均分子量(MW)50,000〜60,000g/molのポリ(アクリル)酸であることを特徴とする粉末を得た。
【0111】
充填剤B
ポリ酸Aにより表面変性された石英充填剤
石英充填剤(200g)、APS(10g)、及びDMF(1000 g)を、丸底フラスコ内で混合し、攪拌しながら120℃まで加熱した後、DMF(400mL)を減圧下でロータリーエバポレーターで17時間除去した。得られた濃縮スラリーにポリ酸A(84g)を添加し、得られた混合物を130℃で13時間加熱した。残りのDMFを真空ロータリーエバポレーターで除去し、残留物を水で4回処理し、遠心分離した。水性抽出物を除去した後、得られた固体を90℃真空下で一晩乾燥した。固体を乳鉢にて挽き、ふるい(メッシュ42μm)、指定された充填剤Bである白色粉末を得た。収量は、190.1gであった。
【0112】
(実施例1)
HEMAなしのRMGI組成物
ペーストA1(表1に列記されたような組み合わされた成分)と、ペーストB1(表2に列記されたような組み合わされた成分)とを、ペーストA1/ペーストB1=1.0:1.0の重量比で組み合わせることにより、RMGI組成物を調製した。ペーストは、容易に混合され、得られるペースト組成物(実施例1)は良好な稠度を有した。組成物を、エリパートリライト(ELIPAR TRILIGHT)硬化光を使用して、40秒間光硬化し、本明細書に記載された試験方法に従って曲げ強度を評価した、硬化された材料を得た。結果は、以下の通りであった:
曲げ強度:63±5MPa(5複製の平均及びSD)
【0113】
本明細書に記載された試験方法に従ってSEMにより、硬化された材料(断裂試料)を評価したが、図1及び2に示すように、GI塩マトリックス及び樹脂マトリックスの分離は観察されなかった。
【0114】
非硬化ペースト(A1及びB1)は、少なくとも6ヶ月の期間にわたって、室温(23℃、>95%相対湿度)で保存の間、構成要素分離のいかなる可視徴候も示さなかった。
【0115】
【表B】

【0116】
【表C】

【0117】
(実施例2)
HEMAなしのRMGI組成物
ペーストA1(表1に列記されたような組み合わされた成分)と、ペーストB2(表2に列記されたような組み合わされた成分)とを、ペーストA1/ペーストB2=1.0:1.0の重量比で組み合わせることにより、RMGI組成物を調製した。ペーストは、容易に混合され、得られるペースト組成物(実施例2)は良好な稠度を有した。組成物を、エリパートリライト(ELIPAR TRILIGHT)硬化光を使用して、40秒間光硬化し、本明細書に記載された試験方法に従って曲げ強度を評価した、硬化された材料を得た。結果は、以下のとおりであった:
曲げ強度:62±8MPa(5複製の平均)
【0118】
非硬化ペースト(A1及びB2)は、少なくとも6ヶ月の期間にわたって、室温(23℃、>95%相対湿度)で保存の間、構成要素分離のいかなる可視徴候も示さなかった。
【0119】
(実施例3)
HEMAなしのRMGI組成物
ペーストA1(表1に列記されたような組み合わされた成分)と、ペーストB3(表2に列記されたような組み合わされた成分)とを、ペーストA1/ペーストB3=1.0:1.0の重量比で組み合わせることにより、RMGI組成物を調製した。ペーストは、容易に混合され、得られるペースト組成物(実施例3)は良好な稠度を有した。組成物を、エリパートリライト(ELIPAR TRILIGHT)硬化光を使用して、40秒間光硬化し、本明細書に記載された試験方法に従って曲げ強度及び象牙質への接着を評価した、硬化された材料を得た。結果は、以下のとおりであった:
曲げ強度:65±9MPa(5複製の平均及びSD)
象牙質への接着(化学的前処理なし):0.3±0.4MPa
象牙質への接着(プロンプト−L−ポップ(Prompt−L−Pop)(3M ESPE)にて前処理):3.7±2.0MPa
【0120】
非硬化ペースト(A1及びB3)は、少なくとも6ヶ月の期間にわたって、室温(23℃、>95%相対湿度)で保存の間、構成要素分離のいかなる可視徴候も示さなかった。
【0121】
(実施例4)
比較研究
HEMAなしのRMGI組成物(実施例3)を、以下の市販製品(全てHEMA構成要素を含有する)と比較し、製造業者の指示に従って、混合及び硬化した:フォタック−フィル・クイック・アプリキャップ光硬化ガラスアイオノマー修復材料(PHOTAC-FIL QUICK APLICAP Light-Curing Glass Ionomer Restorative Material)(3M ESPE)、ビトレマー光硬化及び自己硬化ガラスアイオノマー修復材料(VITREMER Light-Curing and Self-Curing Glass Ionomer Restorative Material)(3M ESPE)、GCフジIILC(GC FUJI II LC )(ハンド混合;GC社(GC Corp.))、及びGCフジIILC(GC FUJI II LC )(カプセル混合;GC社(GCCorp.))。本明細書にて提供された試験方法による、これらの材料の評価の結果を、表3に示す。
【表D】

【0122】
本明細書中に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、その全体が参考として組み込まれる。本発明の範囲及び精神を逸脱しない本発明の様々な修正や変更は、当分野の技術者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で説明する例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に説明する特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。
【0123】
本発明は、様々な修正及び代替形態が可能であるが、その具体例を一例として図面に示し、詳細に説明する。しかし、本発明が、記載された特定の実施形態に限定されないことを理解すべきである。それどころか、本発明は、本発明の精神及び範囲内にある全ての修正形態、等価形態、及び代替形態を包含することを意図する。
【0124】
添付図面と関連して以下の本発明の様々な実施形態の「発明を実施するための最良の形態」を検討することにより、本発明は、より完全に理解される可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】実施例1において以下に記載の硬化組成物の損傷した標本のSEM像である。像は、倍率200である。像は、いかなる有機構成要素又は無機構成要素の分離も観察できない均質相を示す。
【図2】実施例1において以下に記載の硬化組成物の損傷した標本の別のSEM像である。像は、倍率1000である。像は、いかなる有機構成要素又は無機構成要素の分離も観察できない均質相を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む硬化性歯科組成物:
(a)重合性構成要素;及び
(b)充填剤の表面に付着する第一ポリ酸。
【請求項2】
更に以下を含む請求項1に記載の硬化性歯科組成物;
(c)第二ポリ酸;
(d)酸反応性充填剤;及び
(e)水。
【請求項3】
第一ポリ酸が、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸、及びこれらの組み合わせのホモポリマー及びコポリマーから成る群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
第二ポリ酸が、カルボン酸、硫酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸及びこれらの組み合わせから成る群から選択される複数個の酸性反復単位を有するポリマーを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
重合性構成要素が、エチレン性不飽和化合物を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
重合性構成要素が、酸官能性を有するエチレン性不飽和化合物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
第二ポリ酸が、複数個の酸性反復基を有するが重合性基を実質的に持たないポリマーを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
第一ポリ酸及び第二ポリ酸が同一である、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
第一ポリ酸及び/又は第二ポリ酸並びに酸官能性を有するエチレン性不飽和化合物が同一である、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
酸反応性充填剤が、金属酸化物、ガラス、ガラスセラミックス、金属塩、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
酸反応性充填剤が、フルオロアルミノシリケート(FAS)ガラスを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
酸反応性充填剤が、オキシフッ化物材料を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項13】
組成物が、混合後、相分離を示さず均質ペーストになる樹脂変性ガラスアイオノマーであり、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)が実質的にない、請求項2に記載の組成物。
【請求項14】
第一ポリ酸が、連結基を介して充填剤に付着する、請求項2に記載の組成物。
【請求項15】
連結基が、アミノアルキルトリアルコキシシランから成る群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
アミノアルキルトリアルコキシシラン連結基が、アミド部分を介してポリ酸に付着し、シラン原子を介して充填剤に付着する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
酸化還元硬化系を更に含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項18】
光開始剤系を更に含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項19】
他の充填剤、発熱性充填剤、フッ化物供給源、増白剤、抗カリエス剤、抗歯石剤、ミネラル補給剤、酵素、息清涼剤、麻酔剤、凝固剤、酸中和剤、化学療法剤、免疫反応変性剤、薬剤、指示薬、染料、顔料、湿潤剤、酒石酸、キレート化剤、界面活性剤、緩衝剤、粘度調整剤、揺変剤、ポリオール、抗菌剤、抗炎症剤、抗真菌剤、安定剤、口腔乾燥症の治療剤、減感剤、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの添加剤を更に含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項20】
組成物が、歯科修復材、歯科接着剤、歯科セメント、空洞ライナー、歯科矯正接着剤、歯科シーラント、及び歯科コーティングから成る群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項21】
組成物が第一部及び第二部を含む多部組成物を含み、各部が、液体、ペースト、ゲル、及び粉末から成る群から独立して選択され得る、請求項2に記載の組成物。
【請求項22】
多部組成物が、複数の組み合わせを包含するペースト−ペースト組成物、ペースト−液体組成物、ペースト−粉末組成物、及び粉末−液体組成物から成る群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項23】
以下を含む多部硬化性歯科組成物:
(a)第一ポリ酸を含む第一部;
(b)酸反応性充填剤を含む第二部;
(c)充填剤に付着する第二ポリ酸、該第二ポリ酸は第一部に存在する;
(d)第一部、第二部、又は両方の部に存在する重合性構成要素;及び
(e)第一部に存在する水。
【請求項24】
第一部がペーストを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
第二部がペーストを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
第一部及び第二部がそれぞれペーストを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
酸性構成要素がその表面に付着した粒子を含む充填剤を含む硬化性歯科組成物であり、該粒子が、ケイ素、チタン、アルミニウム、セリウム、スズ、イットリウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、亜鉛、イッテルビウム、ビスマス、鉄、アンチモン、又はこれらの組み合わせの酸化物を含む、歯科組成物。
【請求項28】
充填剤がシリカ粒子を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
酸性構成要素がポリ酸である、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
組成物が樹脂変性ガラスアイオノマー組成物である、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれかに記載の組成物を含む歯科接着剤。
【請求項32】
請求項1〜30のいずれかに記載の組成物を含む歯科修復材。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−503002(P2009−503002A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524415(P2008−524415)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007557
【国際公開番号】WO2007/017152
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(504169278)スリーエム イーエスピーイー アーゲー (43)
【Fターム(参考)】