説明

表面修飾効果顔料

本発明は、基材が単独のまたは硫酸塩、りん酸塩および/またはほう酸塩と混合した、1つまたは複数のか焼された酸化物の層、および有機被覆物で被覆されていることを
特徴とする、前記基材をベースとして向上した被覆性を有する表面修飾効果顔料に関し、さらにそれらの製造方法および使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材が、単独のまたは硫酸塩、りん酸塩および/またはほう酸塩と混合された1つまたは複数のか焼した酸化物層、および有機被覆物で被覆されていることを特
徴とする、前記基材をベースとして改善された使用特性を有する、表面を修飾された効果顔料に関し、さらにそれらの製造方法、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
戸外使用のためのプラスチックパーツや表面被覆層は、往々にして非常にきびしい気候条件や、長期間にわたって永く続く光の強い露出を受け、結果として材料の老化が生じる。このことは変色とか脆化および機械的、化学的安定性の減少から明らかである。それらの原因はバインダーの酸化または光分解であったり、または液体状または水蒸気状の水の作用による分解であったりする。さらに、使用する顔料、特に酸化チタン層を含む真珠光沢顔料では、使用媒体の光および風化作用の影響に対する抵抗力を損うこともある。この理由は、使用媒体の有機成分の光分解を加速させる二酸化チタン層の光活性にある。
【0003】
これらの老化進行を抑制するため、安定剤、例えばUV光吸収物質が戸外使用のための組成物に加えられる。さらに、顔料は別の無機物層を備えることもできる。
【0004】
たとえば、EP0644242は、1つまたは複数のSiO2層およびAl23層で被覆してか焼した二酸化チタンで被覆された雲母粒子を含むポリオレフィン組成物を
記載している。さらに、この組成物は黄変を防止するため酸化防止剤を含んでいる。
【0005】
光安定性のほかに、効果顔料の使用については別の使用上の不都合がある。たとえば、未処理の真珠光沢顔料は、ある使用媒体中では極めて僅かしか分散できないか、もしくは凝集や堆積物を形成しがちである。この凝集物は困難を伴ってはじめて再分散可能であり、必要な剪断力は潜在的に薄いフレークの破壊をもたらしかねない。表面被覆層に酸化物の真珠光沢顔料を使用する場合のさらなる問題は、凝縮に対する抵抗性の低下である。表面被覆層の有機相中に埋め込まれた真珠光沢顔料は極性の酸化物表面を有し、その上に水分子が付加することができる。このタイプの層中に拡散する水蒸気は相の境界に蓄積して境界層の膨潤をもたらす。粒子とバインダーマトリックスとの間の粘着性の喪失がそれから起り、表面被覆層の離脱が生じ得る。
【0006】
分散性を向上させるため、顔料を表面修飾剤で被覆することができる。例としてWO99/57204は、表面被覆物中で良好な配向と分布を示す顔料の製造用に反応性の表面修正剤の使用を記載している。しかしながら、この方法で得られる顔料は光安定性について有利でないことがわかった。
【0007】
WO98/13426は、真珠光沢顔料上に新しく晶出(析出)した酸化物の表面層と特定のシランとの反応について記載している。あと被覆の条件は、新しく晶出した酸化物水和物が常にオルガノシランと反応するか、または金属酸化物水和物とオルガノシランとの共沈さえも起るように選ばれる。水酸化物または酸化物水和物で被覆された顔料の場合、プラスチックの加工中に水が遊離して望ましくないポリマー鎖の分解を起す可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故、本発明の目的は、凝縮と光に対し高い耐性を有する基材をベースとする表面修飾効果顔料を見出すことであった。同時に、この顔料はプラスチックパーツやフィルム中に使用するのに適したものであり、さらに水性および非水性媒体中の両者に容易に分散できるものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本発明にしたがって、基材が単独の、または硫酸塩、りん酸塩および/またはほう酸塩と混合された1つまたは複数のか焼した酸化物層、および有機被覆物で
被覆されているその基材をベースとする表面修飾効果顔料によって達成される。
【0010】
本発明用に適当な基材は、例えば、合成または天然のマイカ(雲母)、ガラスフレーク、金属フレーク、フレーク状のSiO2、TiO2、Al23、またはフレーク状酸化鉄などの既知のすべてのフレーク状支持体である。金属フレークは、なかんずくアルミニウム、チタン、青銅、鋼または銀、好ましくはアルミニウムおよび/またはチタンからなることができる。金属フレークはこの場合適宜な処理により不動態化されていてもよい。好ましい実施態様では、支持体は、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属弗化物、金属窒化物、金属オキシニトリドまたはこれら物質の混合物を含む1つまたは複数の透明、半透明および/または不透明な層で被覆されてもよい。金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属弗化物、金属窒化物、金属オキシニトリドの層またはそれらの混合物は低屈折率(屈折率<1.8)または高屈折率(屈折率1.8)を有することができる。適当な金属酸化物および金属酸化物水和物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、酸化シリコン、酸化シリコン水和物、酸化鉄、酸化錫、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化チタン、特に二酸化チタン、酸化チタン水和物、および例えばイルメナイトまたは擬板チタン石などのこれらの混合物など当業者が既知の金属酸化物または金属酸化物水和物のすべてである。使用できる金属亜酸化物は例えば亜酸化チタンである。適当な金属は、例えば、クロム、アルミニウム、ニッケル、銀、金、チタン、銅または合金であり、また適当な金属弗化物は、例えば弗化マグネシウムである。使用できる金属窒化物または金属オキシニトリドは、例えば金属のチタン、ジルコニウムおよび/またはタンタルの窒化物またはオキシニトリドである。金属酸化物、金属、金属弗化物および/または金属酸化物水和物の層を支持体に被覆するのが好ましく、金属酸化物および/または金属酸化物水和物の層が特に非常に好ましい。さらに、高屈折率および低屈折率の金属酸化物、金属酸化物水和物、金属または金属弗化物の層を含む多層構造(好ましくは高屈折率層と低屈折率層が交互)が存在してもよい。高屈折率層と低屈折率層を含む層のパッケージが特に好ましく、1つまたは複数のこれらのパッケージ層を支持体に被覆することが可能である。高屈折率層と低屈折率層の順序は、多層構造中に支持体を含めるため、この支持体に合わせることができる。さらに別の実施態様では、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属弗化物、金属窒化物、金属オキシニトリドの層を混合すること、あるいは着色剤または他のエレメントでドープすることができる。適当な着色剤または他のエレメントは、例えば着色金属酸化物、例えばマグネタイト、酸化クロム、または例えばベルリンブルー、群青、バナジン酸ビスマス、テナルド(Thenard’s)ブルー、または代りになるべきものとして、例えばインジゴ、アゾ顔料、フタロシアニンまたは代りとしてカルミンレッド(Carmine Red)などの有機または無機の着色顔料または例えばイットリウムまたはアンチモニーなどの元素である。これらの層を含む効果顔料はそれらの全体の色合いに関して広範に変化する色を示し、多くの場合干渉による角度に依存する色の変化(カラーフロップ:colour flop)を示すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
好ましい実施態様において、支持体上の外側層は高屈折率金属酸化物である。この外側層は前述のパッケージ層上にさらにあってもよいし、または高屈折率支持体中のあるパッケージ層の一部分であってもよく、そして例えばTiO2、亜酸化チタン、Fe23、SnO2、ZnO、ZrO2、Ce23、CoO、Co34、V25、Cr23、および/またはそれらの混合物、例えばイルメナイトまたは擬板チタン石などからなることができる。TiO2が特に好ましい。
【0012】
上述の物質および顔料構成の実施例と実施態様が、例えばResearch Disclosures RD 471001およびRD 472005にも示されており、その開示内容を参考文献として本明細書中に取り入れる。
【0013】
金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属弗化物、金属窒化物、金属オキシニトリドの層またはそれらの混合物の厚さは通常3〜300nmであり、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属弗化物、金属窒化物、金属オキシニトリドの層またはそれらの混合物の場合は好ましくは20〜200nmである。金属層の厚さは好ましくは4〜50nmである。
【0014】
さらに、本発明にしたがうあと被覆において、上述の層で被覆できる、例えば球状粒子または針状の形をした基材などの他の基材も使用できる。
【0015】
基材に被覆する単一または複数の酸化物層として、Al、Si、Zr、Ce、Zn、Feの酸化物および/またはそれらの混合物が適しており、Al23、Ce23、ZnO、ZrO2および/またはSiO2の使用が望ましい。これら酸化物の層は透明性が高いこと、固有の色がないかまたは薄いこと、および高い光沢が特徴であり、これは基材の色彩に関する性質が変らないことを意味している。さらに、これらの物質はか
焼後水分のない化学的に不活性な表面を提供する。
【0016】
さらに、酸化物と硫酸塩、りん酸塩および/またはほう酸塩との混合物も単独で被覆される酸化物とは別に使用できる。硫酸塩の例はZnSO4、CaSO4、りん酸塩の例はAlPO4、CePO4、ほう酸塩の例はAlBO4である。
【0017】
か焼した酸化物層に被覆された有機被覆物はカップリング剤として作用し、次の一般
式のオルガノシラン、オルガノアルミネート、オルガノチタネート、および/またはオルガノジルコネートからなることができる:
4-n-mZ−Rn(−B−Y)m
式中、X=OH、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ;
Z=Si、Al、Ti、Zr;
R=アルキル、フェニルまたは水素;
B=有機の、少くとも二官能性基(アルキレン、アルキレンオキシアルキレン);
Y=アミノ、置換アミノ、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、シロキサン、アセトキシ、イソシアネート、ビニル、アクリロイル、エポキシド、エポキシプロピルオキシ、イミダゾールまたはウレィド基;
n、m=0、1、2、3,但しn+m
カップリング剤は、表面に結合する固定基(anchor group)(X4-n-mZ),少くとも1つの疎水基(R、B)および1つまたは複数の官能基(Y)からなる。カップリング剤は好ましくはZ=Siの化合物である。固定基は、加水分解反応条件によって該当するヒドロキシル基に転化できるアルコキシシランからなるのが好ましい。後者はか焼
した金属酸化物表面に結合することができ、酸素ブリッジによって固定(アンカリング)を果たす。さらに、各種のカップリング剤の混合物を使用することも可能であり、混合物としてまたは個々に使用できる。
【0018】
有機被覆物は適当な官能基を選ぶことにより使用媒体に適合させることができる。さらに、カップリング剤により、官能基と使用媒体中の相当する官能基との反応によって顔料と媒体間に別の結合を形成できる。ある特定の実施形態では、本発明にしたがう顔料の表面は使用媒体に適合する有機官能性の組合せによって修飾(変性)される。またこの目的に適当なのは有機被覆物内に各種カップリング剤の混合物を使用することである。顔料表面の疎水性を、例えばアルキルシランなどのアルキル含有カップリング剤を組込むことによって適合させることができる。オルガノシランのほかに、有機被覆物として同様に単独でまたはシラン、ジルコネート、アルミネート、ジルコアルミネートおよび/またはカルボキシジルコアルミネートとの組合せで使用できる、加水分解物や均一または不均一オリゴマーおよび/またはそれらのポリマーを使用することも好ましい。各種カップリング剤の混合物、特にある特定範囲の使用を可能にする、互いに異なる官能基Yを有する有機被覆物が特に好ましい。
【0019】
オルガノシランの例は、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、i−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、好ましくはn−オクチルトリメトキシシランおよびn−オクチルトリエトキシシランである。
【0020】
適当なオリゴマー性、アルコールフリーのオルガノシラン加水分解物は、なかんずく、例えばDynasylan HS 2926、Dynasylan HS 2909、Dynasylan HS 2907、Dynasylan HS 2781、Dynasylan HS 2776、Dynasylan HS 2627などの商標名“Dynasylan”(登録商標)でSiventoから市販されている製品である。さらに、オリゴマー性ビニルシランやアミノシラン加水分解物も有機被覆物として適当である。機能化されたオルガノシランは、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、1−3−ビス(3−グリシドオキシプロピル)−1−1,3,3,−テトラメチルジシロキサン、ウレィドプロピルトリエトキシシラン、好ましくは3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシランである。重合したシラン系の例はWO98/13426に記載されており、例えば商標名Hydrosil(登録商標)でSiventoから市販されている。
【0021】
有機被覆物の量は、顔料基準で0.2〜5重量%、好ましくは0.5〜2重量%である。
【0022】
本発明の目的はさらに、フレーク状の基材に単独のまたは硫酸塩、りん酸塩および/またはほう酸塩と混合された1つまたは複数の酸化物層を被覆し、続いてか焼して有機
被覆物を被覆することを特徴とする、表面修飾効果顔料の製造方法によって達成される。
【0023】
1つまたは複数の酸化物の層による被覆は、湿式化学法およびゾル−ゲル法のどちらででも実施できるが、結晶の晶出は好ましくは湿式化学法によって行われる。湿式化学法による被覆の場合は、相当する酸化物、水酸化物および/または酸化物水和物による被覆が起る。この目的のため、フレーク状の基材を溶媒、好ましくは水に懸濁させて金属塩の溶液を加える。このとき酸化物、水酸化物および/または酸化物水和物が基材の上に沈殿する。適当な出発化合物は相当するハロゲン化物、硝酸塩、および/または硫酸塩であり、相当するハロゲン化物および/または硝酸塩の使用が望ましい。それぞれの物質の沈殿に必要なpHは当業者既知の方法によって設定、最適化される。硫酸塩、りん酸塩および/またはほう酸塩は、適当な金属塩および相当する硫酸塩、りん酸塩またはほう酸塩のソースから酸化物、水酸化物および/または酸化物水和物と一緒に共沈(共晶出)できる。適当な硫酸塩ソースは硫酸、および例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウムまたは硫酸リチウムなどのすべての可溶な硫酸塩;適当なりん酸塩ソースはりん酸または例えばりん酸ナトリウム、りん酸水素二ナトリウムまたはりん酸カリウムなどのすべての可溶なりん酸塩;適当なほう酸塩ソースは例えばほう酸ナトリウムまたは二ほう酸ナトリウムなどのすべての可溶なほう酸塩である。
【0024】
硫酸塩、りん酸塩および/またはほう酸塩の量、および例えばpHまたは温度などの沈殿条件は、当業者に公知の方法で最適化できる。沈殿層の厚さは0.5〜20nm、好ましくは1〜10nmである。
【0025】
この方法で得られた顔料は続いてか焼される。か焼は250〜900℃、好ましくは
600〜900℃の温度で行うことができる。か焼によって、沈殿した酸化物、水酸化
物および/または酸化物水和物は脱水され、相当する酸化物に転化され、そしてコンパクト化される。
【0026】
か焼後、有機被覆物を被覆する。カップリング剤を60℃超、好ましくは70℃を超
える温度で溶液で使用する。適当な溶媒は有機溶媒、水またはそれらの混合物であり、好ましくは水が使用される。有機被覆物の被覆に必要な反応時間は少くとも5分間であり、好ましくは10〜90分行われるが、所望により延長することもできる。得られた顔料を混ぜ合せて当業者周知の方法、例えば濾過、乾燥および篩分によって分離する。
【0027】
本発明の表面修飾効果顔料は、従来技術のものと較べて被覆性の向上が顕著である。か焼により酸化物層が脱水してコンパクトになり、顔料表面の多孔度の低下をもたらす
。コンパクトな表面では吸収できる水の量が少く、したがって境界層で吸着した水の不都合な影響を表面被覆物で減少させることができる。か焼はまた水酸化物または酸化物
水和物の形で化学的に結合した水も除去する。これは、例えばポリエステル中など、熱可塑性ポリマー中に存在する水が高温度でポリマーの加水分解的分解を生じさせるので、本顔料をプラスチックに使用するに際して好都合である。水酸化物または酸化物水和物で被覆された顔料の場合は、プラスチック加工中に水の遊離が起り、ポリマー鎖の望ましくない分解を引き起す。本発明の顔料の場合は、酸化物層のか焼はプラスチック中
の顔料加工中に水が逃げられないことを意味し、この使用分野に対して特に適したものとなっている。有機被覆物はか焼した酸化物層の表面性質に決定的な影響を有する。有
機被覆物であと被覆した表面は疎水性が高く、未処理の酸化物表面よりも極性が少なく、したがってバインダーおよび有機溶媒によってよりよく濡らすことができる。これが本発明の顔料と被覆に使用するバインダーシステムとの合い性を向上させることになる。さらに、有機被覆物は、顔料表面のその立体的スクリーニングのため、顔料粒子の凝集を妨げてそれらの分散性を向上させる。
【0028】
意外にも、本発明にしたがう顔料は、他の点では化学的に耐性な酸化物表面に対して有機被覆物の付着性がよいことを示す。このことは、米国特許US5,759,255がシランカップリング剤は新しく沈殿した酸化物水和物層、例えば水和したAl23層に対してのみ結合可能であると教示しているので、予想もしないことであった。これに対して無機のあと被覆物のか焼が特に勧められる。
【0029】
被覆性が改善されたため、ここに記載の表面修飾効果顔料はさまざまな使用に適している。本発明はしたがって、さらに本発明にしたがう表面修飾効果顔料の化粧品、ペンキ、コーティング、印刷インク、プラスチック、フィルムなどの着色用への使用、防犯分野における使用、レーザーマーキングへの使用、熱保護(thermal protection)への使用、または着色核(coloring seed)としての使用に関する。本顔料は、当業者周知のあらゆる方法によってそれぞれの使用媒体中に混合できる。
【0030】
本発明にしたがう顔料を含む印刷インクは、例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビヤ印刷またはオフセット印刷などのすべての既知印刷方法に適している。本発明にしたがう顔料は例えば自動車塗料または耐水塗料などの塗料中に用いるのが好ましく、これらは顔料が特に安定なため、すべての室内および戸外使用に適している。当業者に既知のすべてのプラスチックやフィルムは、本発明の顔料で好都合に着色でき、その場合顔料の結合は、単に物理的に混合することによってもまたは化学的に有機被覆物中の相当する官能基とプラスチックとの反応によっても起り得る。
【0031】
本発明の効果顔料は、その上例えば透明および不透明な白色顔料、着色および黒色の顔料などの有機染料および/または顔料とのブレンド;およびフレーク状の酸化鉄、有機顔料、ホログラフ顔料、LCP(液晶ポリマー)および雲母、ガラス、Al23、Fe23、SiO2などをベースとする金属酸化物被覆フレークをベースとする慣用の透明、着色および黒色光沢顔料とのブレンドに使用するのにも適している。本発明の効果顔料は市販の顔料および充填剤と任意の比率で混合することができる。
【0032】
名をあげることのできる充填剤は、例えば天然または合成の雲母、ナイロン粉末、純粋または充填メラミン樹脂、タルク、ガラス、カオリン、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛の酸化物または水酸化物;BiOCl、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボン;およびこれら物質の物理的または化学的組合せ物である。充填剤の粒子形に関しては何らの制限もない。充填剤は、必要に応じて、例えばフレーク状、球形または針状形とすることができる。
【0033】
以下の実施例は本発明をより詳細に説明するが、発明を限定するものではない。
【実施例】
【0034】
実施例1
粒子径10〜50μmの雲母フレーク100gを1lの水中に懸濁させて攪拌しながら75℃に加熱した。55gのTiCl4の42%水溶液を3時間かけてこの懸濁液中に計量供給し、その間水酸化ナトリウムの稀薄水溶液の添加によってpHを2.2に保持する。この混合物を続いてさらに30分間攪拌する。得られた中間体は、雲母の部分をベースとして二酸化チタン(水和物として)を約29%含む。
【0035】
この懸濁液を仕上げて所望のベース(基本)顔料、すなわち、洗浄、乾燥、600〜900℃でのか焼後篩分したものを得ることができる。この顔料を次いで水に再懸濁さ
せ、攪拌しながら上述の温度に加熱する。代りの方法として、懸濁母液中で無機のあと被覆部分を直接被覆できる。
【0036】
上述の懸濁液、すなわち1.3Lの水中に129gのか焼したベース顔料を含む懸濁
液を激しく攪拌しながら75℃に加熱し、NaOHを使用してpHを6.0に調節し、122mLの塩化アルミニウム・6H2O溶液(10g/L)を2時間かけて計量しながら添加する。この操作中、水酸化ナトリウム水溶液を使用してpHを一定に保つ。続いてこの混合物を少くともさらに30分間攪拌する。
【0037】
あと被覆した顔料を上澄液から濾過によって分離除去して洗浄する。100〜150℃で乾燥後、この顔料を750℃で30分間か焼し、所望の粒子サイズにしたがって篩
分する。得られた銀色の顔料は2%の酸化アルミニウムを含む被覆物を含む。
【0038】
有機物あと処理:
前処理した顔料100gを1Lの水に懸濁させ、このバッチを75℃に加熱し、塩酸または水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを8.0に調節する。シランDynasylan(登録商標)AMMO,MEMOおよびGLYMOの各2gを10〜20分かけて加え、続いてこのバッチをさらに60分攪拌する。あと被覆した顔料を上澄液から濾過によって分離除去して洗浄する。120〜160℃で乾燥後、顔料を40μm未満の粒径に篩分する。
【0039】
実施例2
10〜50μmの粒子サイズを有する雲母フレーク100gを1Lの水中に懸濁させ、攪拌しながら75℃に加熱する。3.35gのSnCl4の10%水溶液を1時間かけて懸濁液中に計量添加し、その間水酸化ナトリウム稀薄水溶液を添加してpHを1.8に保持する。30分のあと攪拌時間後、237gのTiCl4の42%水溶液を12時間かけて計量投入し、その間稀薄水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを1.8に保持する。続いてこの混合物をさらに30分間攪拌する。得られた中間体は雲母の部分をベースとして酸化チタン約2%および二酸化チタン(水和物として)100%を含む。
【0040】
この懸濁液を仕上げて所望のベース顔料、すなわち、洗浄、乾燥、600〜900℃でか焼し、続いて篩分したものを得ることができる。次いでこの顔料を水に再懸濁させ
、攪拌しながら上述の温度に加熱する。別の方法として、無機物のあと被覆部分を懸濁母液中で直接被覆することができる。
【0041】
上述の懸濁液すなわち2.2Lの水中に200gのか焼したベース顔料を含む懸濁液
を攪拌しながら75℃に加熱し、水酸化ナトリウム水溶液または塩酸を使用してpHを3.0に調節する。2.3gのCeCl3・7H2Oおよび18.9gのAlCl3・6H2Oの10%溶液を30分かけて連続的に計量添加する。この操作中、水酸化ナトリウム水溶液を使用してpHを一定に保つ。30分間のあと攪拌後、60分かけてpHを5に調節し、次いで攪拌をさらに30分続行する。
【0042】
あと被覆した顔料を上澄液から濾過によって分離除去して洗浄する。100〜150℃で乾燥後、顔料を750℃で45分間か焼し、所望の粒子サイズにしたがって篩分す
る。得られた顔料は酸化セリウム被覆物0.5%および酸化アルミニウム被覆物2%を含む。
【0043】
有機物あと処理:
前処理した顔料100gを1Lの水に懸濁させ、このバッチを75℃に加熱し、塩酸または水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを8.0に調節する。シランDynasylan(登録商標)AMMO,MEMOおよびGLYMOの各2gを10〜20分かけて加え、この混合物を続いてさらに60分間攪拌する。あと被覆した顔料を濾過によって上澄液から分離除去して洗浄する。120〜160℃で乾燥後、顔料を40μm未満の粒子サイズに篩分する。
【0044】
実施例3
実施例2にしたがって調製した懸濁液、すなわち2.2Lの水に200gのか焼した
ベース顔料を含むものを攪拌しながら75℃に加熱し、水酸化ナトリウム溶液または塩酸を使用してpHを3.0に調節する。15.7gのZrOCl2・8H2Oの10%溶液を激しく攪拌しながら2時間かけて計量添加し、その間水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを一定に保持する。続いて60分かけてpHを5.0に調節し、次いでさらに30分間攪拌を続ける。
【0045】
あと被覆した顔料を濾過により上澄液から分離除去して洗浄する。100〜150℃で乾燥後、顔料を75℃で45分間か焼して、所望の粒子サイズにしたがって篩分する
。得られた顔料は3%の酸化ジルコニウム被覆物を含んでいる。
【0046】
有機物あと処理:
前処理した顔料100gを1Lの水に懸濁させ、このバッチを75℃に加熱後、塩酸または水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを3.0に調節する。Dynasylan(登録商標)HS2929の20%溶液20mLを10〜20分かけて添加し、この混合物を続いてさらに30分間攪拌する。続いて水酸化ナトリウム溶液を使用して60分間かけてpHを7.0に調節する。あと被覆した顔料を上澄液から濾過により分離除去して洗浄する。120〜160℃で乾燥後、顔料を40μm未満の粒子サイズに篩分する。
【0047】
実施例4
100gの金紅石(ルチル)を被覆した二酸化シリコン薄片[Colorstream(登録商標)Viola Fantasy]を1Lの水中で攪拌しながら75℃に加熱し、塩酸を使用してpHを4.5に調節する。26.1gのAl2(SO43・18H2Oの10%溶液を激しく攪拌しながら2時間で計量添加し、その間水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを一定に保持する。続いてpHを30分かけて6.5に調節し、攪拌をさらに30分間継続する。
【0048】
あと被覆した顔料を濾過によって上澄液から分離除去し、洗浄する。100〜150℃で乾燥後、この顔料を750℃で45分間か焼し、所望の粒子サイズにしたがって篩
分する。得られた顔料は酸化アルミニウム被覆物3%を含む。
【0049】
有機物あと処理:
前処理した顔料500gを加熱できる混合器中でDynasylan(登録商標)HS2926の10%溶液50mLで均質に湿らせる。この混合物を続いて混合しながら80℃に2時間加温する。室温に冷却後、あと被覆した顔料を40μm未満の粒子サイズに篩分する。
【0050】
実施例5
100gの金紅石被覆酸化アルミニウム薄片[Xirallic(登録商標)Sunbeam Gold]を1Lの水中で攪拌しながら75℃に加熱し、塩酸を用いてpHを2.0に調節後、9.5gのAlCl3・6H2Oを懸濁液中に溶解させる。7gのTEOS(テトラエトキシシラン)を10分かけて添加し、この混合物をさらに30分間攪拌し、次いでpHを60分かけて6.5に調節する。
【0051】
30分間のあと攪拌後、あと被覆した顔料を上澄液から濾過により分離除去して洗浄する。100〜150℃で乾燥後、この顔料を750℃で45分間か焼し、所望の粒子
サイズにしたがって篩分する。得られた顔料は二酸化シリコン被覆物2%および酸化アルミニウムの被覆物2%を含む。
【0052】
有機物あと処理:
前処理した顔料100gを1Lの水に懸濁させ、このバッチを75℃に加熱し、塩酸または水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを8.0に調節する。シランDynasylan(登録商標)AMMO,MEMO、GLYMOの各1.5gを10〜20分かけて加える。最初の30分のあと攪拌時間後、0.5gのn−オクチルトリメトキシシランを加え、攪拌をさらに30分間続ける。あと被覆した顔料を濾過により上澄液から分離除去して洗浄する。120〜160℃で乾燥後、顔料を40μm未満の粒子サイズに篩分する。
【0053】
実施例6
基材の厚さが1μm未満で、顔料ベースで金紅石含量が20%の新たに金紅石を被覆した100gのガラスフレークを約1.5Lの水中で攪拌しながら75℃に加熱し、次いで水酸化ナトリウムを用いてpHを9.0に調節する。けい酸含量が5%のナトリウム水ガラス100mLを2時間かけて加え、その間pHを2.5%硫酸によって一定に保持する。この混合物を続いてさらに30分間攪拌した後、硫酸を用いて30分かけてpHを7.5に調節する。
【0054】
30分間のあと攪拌後、あと被覆した顔料を上澄液から濾過により分離除去して洗浄する。100〜150℃で乾燥後、顔料を700℃で45分間か焼し、所望の粒子サイ
ズにしたがって篩分する。
【0055】
得られた顔料は5%の二酸化シリコン被覆物を含む。
【0056】
有機物あと処理:
前処理した顔料100gを1Lの水に懸濁させ、このバッチを75℃に加熱し、塩酸または水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを8.0に調節する。シランDynasylan(登録商標)AMMOおよびGLYMOの各2gを10〜20分かけて添加し、攪拌をさらに30分間続ける。2gのManchem C(Rhone−Poulenc Chemicals社のカルボキシジルコニウムアルミネート)を続いて添加し、攪拌を30分続ける。あと被覆した顔料を上澄液から濾過により分離除去して洗浄する。120〜160℃で乾燥後、顔料を40μm未満の粒子サイズに篩分する。
【0057】
比較例1
酸化アルミニウム被覆をしない実施例1記載の未か焼のベース顔料100gを1Lの
水に懸濁させ、このバッチを75℃に加熱して塩酸または水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを8.0に調節する。シランDynasylan(登録商標)AMMO,MEMOおよびGLYMOの各2gを10〜20分かけて添加し、続いて攪拌を60分間続ける。あと被覆した顔料を上澄液から濾過により分離除去して洗浄する。120〜160℃で乾燥後、この顔料を40μm未満の粒子サイズに篩分する。
【0058】
比較例2:[EcKart WO 99/57204 実施例10]
100gのIriodin(登録商標)103をエタノール500mL中で10分間攪拌する。この懸濁液を80℃に加温し、1Nの水酸化カリウム水溶液26mLを加える。さらに5分後、この混合物に1gの3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)を加える。30分後、2gのトリメチロールプロパントリメタクリレートを混合物に加え、直ちに続いて30mgのα,α’−アゾイソブチロニトリルを加える。次いでこのバッチ全体を80℃でさらに4時間攪拌する。この混合物を次いで自然冷却させ、すでに被覆した顔料を吸引により濾別する。最後に、このフィルターケーキを減圧下90℃で乾燥させる。
【0059】
本発明による顔料および比較例の顔料を次の試験方法により検討した:
(光活性):
顔料サンプルをプラスチックマトリックス中に混合し、Pb2+のPbへの還元程度を視覚的に測定する。灰色着色の評価はISO 105−Part A 02(DIN 54001に相当)にしたがって行う。試験の尺度(scale)は5(非常に良好)から1(非常に劣る)とする。
(凝縮水試験):
顔料サンプルを水ベースの被覆系中に混合し、スプレー被覆によって試験サンプルを製造する。
【0060】
試験はDIN 50 017(凝縮水環境)にしたがって曝らし状態終了後1時間と4時間行った。試験パラメータは付着性{クロスハッチ、試験尺度は0(非常に良好)から5(非常に劣る)まで}および画像鮮明度{DOI、試験尺度は10(非常に良好)から0(非常に劣る)まで}である。
(光安定性および凝縮水テストの結果):
光安定性および凝縮水テストの結果を次の表に示す:
【0061】
【表1】

【0062】
実施例1、C1、およびC2は、二酸化チタン含量が比較的少ない銀色顔料である。これらの顔料は、特別なあと処理をしなくても、金紅石含量の高い干渉顔料(サンプル2、3および5)と較べて光活性が低い。無機物のあと被覆が、達成しようとする光活性の低下を可能にすることははっきり明らかである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単独の、または硫酸塩、りん酸塩および/またはほう酸塩と混合した、1つまたは複数のか焼した酸化物層、および有機被覆物が基材に被覆されていることを特徴とする、
該基材をベースとする表面修飾効果顔料。
【請求項2】
前記か焼した酸化物の層が、Al、Si、Zr、Zn、Ce、Feの酸化物、または
それらの混合物からなる、請求項1記載の表面修飾効果顔料。
【請求項3】
前記有機被覆物がオルガノ−シラン、オルガノ−アルミネート、オルガノ−チタネート、オルガノ−ジルコネート、および/またはそれらの混合物からなる、請求項1または2記載の表面修飾効果顔料。
【請求項4】
前記基材がフレーク状の支持体および/または、1つまたは複数の金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属弗化物、金属窒化物、金属オキシニトリドの層で被覆されたフレーク状の支持体である、請求項1記載の表面修飾効果顔料。
【請求項5】
あと被覆のか焼した酸化物層の平均厚さが0.5〜20nmである、請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の表面修飾効果顔料。
【請求項6】
単独のまたは硫酸塩、りん酸塩および/またはほう酸塩と混合した1つまたは複数の酸化物層を基材に被覆し、続いてか焼し、次いで有機被覆物を被覆することを特徴とす
る、請求項1記載の表面修飾効果顔料の製造方法。
【請求項7】
前記基材がフレーク状支持体、および/または1つまたは複数の金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属弗化物、金属窒化物、金属オキシニトリドの層で被覆されたフレーク状支持体である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記酸化物の層が湿式化学法、および/またはゾル−ゲル法により被覆される、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記か焼が250〜900℃の温度で実施される、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記有機被覆物が、オルガノ−シラン、オルガノ−アルミネート、オルガノ−チタネート、オルガノ−ジルコネート、および/またはそれらの混合物からなる、請求項6記載の方法。
【請求項11】
請求項1記載の表面修飾効果顔料を、ペンキ、コーティング、印刷インク、プラスチック、フィルム中に、防犯分野用に、レーザーマーキング用、熱保護用または着色核用に使用すること。

【公表番号】特表2006−523734(P2006−523734A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504783(P2006−504783)
【出願日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002976
【国際公開番号】WO2004/092284
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】