説明

表面光沢度及び反射率が優れた反射板用ポリアミド樹脂組成物及び成形品

【課題】本発明は、反射板用ポリアミド樹脂組成物及びその成形品に関するものであって、優れた表面反射率及び優れた表面光沢度を有すると共に、インサート物又はLED封止用樹脂に対する密着性に優れ、高い機械的強度を備えたLED用反射板に用いられるポリアミド樹脂組成物及びその成形品を提供する。
【解決手段】反射板用ポリアミド樹脂組成物は、ガラス転移温度が50℃〜100℃である結晶形ポリアミド樹脂(A);ガラス転移温度が110℃〜160℃である結晶形ポリアミド樹脂(B);無機充填材(C);白色顔料(D);及び光安定剤(E)を含み、ポリアミド樹脂組成物は、60°角度での表面光沢度が85%以上であり、85℃/85%恒温恒湿槽内で460nmの波長を有するLED光源に120時間露出した後、440nm波長の光に対する表面反射率が70%〜100%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射板用ポリアミド樹脂組成物及び成形品に関するものであって、より具体的には、高い表面光沢を有し、表面反射率に優れた反射板用ポリアミド樹脂組成物及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低電力、長寿命等の長所を有することから、LED(Light Emitting Diode)及びOLED(Organic Light Emitting Diode)等の新規な光源は、照明表示素子として、その需要が連続的に拡大している。特に、LEDは、携帯電話等の移動通信機器、ディスプレー、自動車コンソールパネル、信号機、その他の家電製品用品などの様々な用途の電気、電子機器製品に用いられている。このような製品に備えられたLEDの光を効率的に用いるため、反射板に関する研究が様々な分野で進められている。
【0003】
LEDに用いられる反射板においては、機械的強度だけでなく、例えば、PCB(Printed circuit board)基板などへの表面実装における耐熱性が良好である材料が求められている。さらに、こうした材料が用いられるデバイスの小型化を図るため、精密に成形することができる材料が要求されている。また、反射板には、光を反射する機能上、安定した高い反射率を得ることが要求され、特にLEDの組立及びリフローソルダリング工程における加熱に起因する反射率の低下を抑制することが必要である。また、高反射率の反射板を得るために特殊なインサート成形も行われており、そのような用途に用いることができる樹脂組成物が求められている。
【0004】
そして、反射板の分野では、従来のLCP(Liquid Crystal Polymer,液晶ポリマー)や、ポリアミド樹脂が用いられてきた。LCPは耐熱性、耐光性及び成形時の流動性に優れているが、反射板に発光ダイオードを設けた後にLEDチップを封止するための封止用樹脂(例えば、エポキシ樹脂等)との密着性が悪く、樹脂の白色度が低いため、反射板としての十分な反射率が得られないという問題がある。一方、ポリアミド樹脂として従来広く用いられている、優れた強度特性及び射出成形性を有する脂肪族ポリアミド(PA6、PA66、PA11、PA12)は、耐熱性及び吸水性が十分ではなく、リフローソルダリング工程の温度に耐えることができず、また、加熱時に変色することにより、反射率が低下するという問題がある。したがって、十分な反射率及び表面光沢を備えた反射板を形成することができる材料が求められている。
【0005】
特許文献1及び特許文献2には、1,9−ジアミノノナンからなるポリアミド樹脂に無機充填材を配合してなる反射板用樹脂組成物が開示されている。しかし、特許文献1及び特許文献2に開示されたポリアミド樹脂は、密封用樹脂との接着性が良好でないという問題点を有する。また、その他に、特許文献3には、チタン酸カリウム繊維及び/又は珪灰石を添加したポリアミド樹脂が開示されている。しかし、特許文献3に開示されたポリアミド樹脂は、成形時に十分な剛性を得ることができず、インサート成形時に成形品表面において剥離現象が生じ、成形時の加工性が低下するという問題点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第03/085029号パンフレット
【特許文献2】特開平7−228776号公報
【特許文献3】特開2002−294070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、優れた表面反射率及び優れた表面光沢度を有するポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、前記反射板用ポリアミド樹脂組成物によって製造された成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、下記構成を採ることにより本発明の目的が達成されることを見出した。
【0010】
1.ガラス転移温度が50℃〜100℃である結晶形ポリアミド樹脂(A);ガラス転移温度が110℃〜160℃である結晶形ポリアミド樹脂(B);無機充填材(C);白色顔料(D);及び光安定剤(E)を含むポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂組成物は、60°角度での表面光沢度が85%以上であり、85℃/85%恒温恒湿槽内で460nmの波長を有するLED光源に120時間露出した後、440nm波長の光に対する表面反射率が70%〜100%である、反射板用ポリアミド樹脂組成物;
2.前記ポリアミド樹脂組成物は、85℃/85%恒温恒湿槽内で460nmの波長を有するLED光源に120時間露出した後の黄色度が10以下である、1.に記載の反射板用ポリアミド樹脂組成物;
3.前記結晶形ポリアミド樹脂(B)は、ガラス転移温度が120℃〜160℃である、1.または2.に記載の反射板用ポリアミド樹脂組成物;
4.前記無機充填材(C)は、ガラス繊維を含み、該ガラス繊維は、平均長さが0.1〜20mmであり、径に対する長さの比が10〜2000である、1.〜3.のいずれかに記載の反射板用ポリアミド樹脂組成物;
5.前記白色顔料(D)は、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウムよりなる群から選択された少なくとも一つを含む、1.〜4.のいずれかに記載の反射板用ポリアミド樹脂組成物;
6.前記光安定剤(E)は、ヒンダードアミン構造を有する化合物である、1.〜5.のいずれかに記載の反射板用ポリアミド樹脂組成物;
7.前記ポリアミド樹脂組成物は、ガラス転移温度が50℃〜100℃である結晶形ポリアミド樹脂(A)10〜70質量%;ガラス転移温度が110℃〜160℃である結晶形ポリアミド樹脂(B)10〜70質量%;無機充填材(C)10〜60質量%;及び白色顔料(D)10〜50質量%;を含み、前記結晶形ポリアミド樹脂(A)、結晶形ポリアミド樹脂(B)、無機充填材(C)及び白色顔料(D)100質量%に対して、光安定剤(E)を0.05〜2質量%さらに含む、1.〜6.のいずれかに記載の反射板用ポリアミド樹脂組成物;
8.1.〜7.のいずれかに記載の反射板用ポリアミド樹脂組成物により形成された成形品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた表面反射率及び優れた表面光沢度を有する反射板用ポリアミド樹脂組成物及び成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明の権利範囲は、以下で説明する好ましい実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で定義された本発明の基本概念を利用した、当業者による多様な変形及び改良形態もまた、本発明の権利範囲に属するものである。
【0013】
本明細書において「〜」で示される数値範囲は、「〜」の前に記載された数値以上であり、且つ「〜」の後に記載された数値以下であることを示す。
【0014】
本明細書において「これらの組み合わせ」とは、別途の定義がない限り、反射板用ポリアミド樹脂組成物(ポリアミド樹脂)に複数の部分構造が含まれる場合において、当該複数の部分構造が互いに異なる構造であってもよいことを意味する。
【0015】
以下、一実施形態によるポリアミド樹脂組成物について説明するため、まず、主要構成要素である結晶形ポリアミド樹脂(A)及び(B)について説明する。
【0016】
ポリアミド樹脂(A)及び(B)は、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体/共重合体である。本明細書において、「脂肪族ポリアミド樹脂」とは、主鎖が、アミド結合(−NHCO−)および脂肪族鎖(脂肪族基(アルキレン基))から構成される重合体/共重合体を意味する。また、「芳香族ポリアミド樹脂」は、全芳香族ポリアミド樹脂とも称され、主鎖が、アミド結合(−NHCO−)および芳香族鎖(芳香族基)から構成される重合体/共重合体を意味する。「半芳香族ポリアミド樹脂」とは、主鎖としての脂肪族ポリアミド分子骨格中に一部芳香族基(芳香族ポリアミド)が導入された重合体/共重合体を意味する。
【0017】
なお、ポリアミド樹脂は一般的な溶媒に溶けにくいため、GPC等を用いた重量平均分子量の測定を行うことができなかった。
【0018】
≪ガラス転移温度(Tg)が50〜100℃以下の結晶形ポリアミド樹脂(A)≫
本発明で用いる結晶形ポリアミド樹脂(A)(以下、単にポリアミド樹脂(A)と記載する)は、脂肪族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、半芳香族ポリアミド樹脂のいずれであってもよいが、ジカルボン酸成分単位(a−1)とジアミン成分単位(a−2)とからなるポリアミド樹脂であって、DSCで測定したガラス転移温度(Tg)が50〜100℃である。本明細書において「ガラス転移温度(glass transition temperature:Tg)」とは、ポリアミド樹脂の温度を上昇または下降させながら吸熱や発熱を測定することにより求めた値であり、特に、DSC(示差走査熱量測定)で測定することにより得られた値を指すものである。
【0019】
[ジカルボン酸成分単位(a−1)]
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)を構成するジカルボン酸成分単位(a−1)は、脂肪族および芳香族ジカルボン酸を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸の例として、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ジグリコール酸等が挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸の例として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、等が挙げられる。なお、これらのジカルボン酸は、単独で使用されてもあるいは2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0020】
また、脂肪族ジカルボン酸成分単位において、炭素原子数は特別に制限されるものではないが、炭素原子数は4〜20、好ましくは6〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導される。このような脂肪族ジカルボン酸としては、例えばアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸などを挙げることができる。これらの中でも特にアジピン酸が好ましい。
【0021】
さらに、芳香族ジカルボン酸成分単位を構成する芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びこれらの組み合わせが好ましい。
【0022】
また、本発明において、ジカルボン酸成分単位の量比は、ジカルボン酸成分単位を100モル%とする時、テレフタル酸成分単位は30〜100モル%、好ましくは40〜100モル%、さらに好ましくは40〜80モル%の量で含有され、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位は0〜70モル%、好ましくは0〜60モル%、さらに好ましくは20〜60モル%の量で含有され、及び/又は炭素原子数4〜20、好ましくは6〜12の脂肪族ジカルボン酸成分単位は0〜70モル%、好ましくは0〜60モル%、さらに好ましくは20〜60モル%の量で含有されると好ましい。
【0023】
また、本発明において、ジカルボン酸成分単位(a−1)として、前記のような構成単位と共に、少量、例えば10モル%以下程度の量の多価カルボン酸成分単位(ただし、ジカルボン酸成分単位を除く)が含まれても良い。このような多価カルボン酸成分単位として具体的にはトリメリット酸などのような三塩基酸及びピロメリット酸などのような多塩基酸を挙げることができる。
【0024】
[ジアミン成分単位(a−2)]
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)を構成するジアミン成分単位(a−2)は、直鎖及び/又は側鎖を有する炭素原子数4〜20、好ましくは6〜12の脂肪族ジアミンが好ましい。
【0025】
直鎖脂肪族ジアミン成分単位の具体的な例としては、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカンなどを挙げることができる。これらの中でも1,6−ジアミノヘキサンを50〜100モル%含むのが好ましい。
【0026】
また、側鎖を有する分岐状脂肪族ジアミン成分単位の具体的な例としては、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,6−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,7−ジアミノヘプタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン、2−メチル−1,9−ジアミノノナン、2−メチル−1,10−ジアミノデカン、2−メチル−1,11−ジアミノウンデカンなどを挙げることができる。このうち、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,7−ジアミノヘプタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン、2−メチル−1,9−ジアミノノナンなどが好ましい。
【0027】
なお、これらのジアミンは、単独で使用されてもあるいは2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0028】
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は公知の方法で製造可能であり、ジカルボン酸成分とジアミン成分との重縮合によって製造することができる。例えば、前記ジカルボン酸成分とジアミン成分を特許文献1に記載されているように、リン酸、その塩及びリン酸エステル化合物等の触媒の存在下で200〜290℃で反応させることにより低次縮合物を得て、続いて該低次縮合物の溶融物にニーダー等を用いて剪断応力を付与することにより重縮合して製造することができる。
【0029】
本発明で用いられるポリアミド樹脂(A)は、温度25℃、96.5%硫酸の中で測定した極限粘度[η]が0.3〜0.9[dL/g]であり、好ましくは0.5〜0.9[dL/g]、さらに好ましくは0.6〜0.9[dL/g]である。極限粘度[η]このような範囲にある場合、成形時の流動性に優れるため、加工性がよくなる。また、ポリアミド樹脂(A)は、DSCで測定した融点が、260〜350℃、特に290〜335℃であると好ましく、ガラス転移温度(Tg)は50〜100℃である。ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度が50〜100℃の範囲を外れる場合は、LED反射板に要求される耐熱性、機械的強度及び射出加工性が低下するという不都合が生じる。
【0030】
また、ポリアミド樹脂(A)は、ポリアミド樹脂(A)、以下で説明するポリアミド樹脂(B)、無機充填材(C)及び白色顔料(D)をすべて合わせた全量(合計量)を100質量%としたとき、10〜70質量%、好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは20〜40質量%の比率で含有される。
【0031】
≪ガラス転移温度(Tg)が110〜160℃の結晶形ポリアミド樹脂(B)≫
本発明の反射板用ポリアミド樹脂組成物は、前記結晶形ポリアミド樹脂(A)だけでなく、さらに前記結晶形ポリアミド樹脂(A)とガラス転移温度が異なる結晶形ポリアミド樹脂(B)(以下、単にポリアミド樹脂(B)と記載する)を含んでいる。
【0032】
前記ポリアミド樹脂(B)は、ポリアミド樹脂(A)と基本的に類似のモノマーから製造されてなるポリアミド樹脂であるため、各モノマーの説明は省略する。また、ポリアミド樹脂(B)は、DSCで測定したガラス転移温度(Tg)が110〜160℃である樹脂であり、さらに好ましくは120〜160℃である。ガラス転移温度が上記範囲を外れる場合、すなわち、ポリアミド樹脂(B)のガラス転移温度が110℃未満であったり、160℃を超えたりするような場合には、射出成形時に剥離性が悪化する(すなわち、剥離しやすくなり、成形品表面において剥離現象が発生しやすくなる)ため、好ましくない。一方、ポリアミド樹脂(B)のガラス転移温度が120〜160℃であると、反射板用ポリアミド樹脂組成物の剥離性がきわめて良好となる(剥離しにくくなる)ため、加工性が良好になる。また、ポリアミド樹脂(B)のガラス転移温度が上記範囲外である時には、インサート物又はLED封止材用樹脂に対する密着性が低下する。
【0033】
また、ポリアミド樹脂(B)は、ポリアミド樹脂(A)、ポリアミド樹脂(B)、以下で説明する無機充填材(C)及び白色顔料(D)をすべて合わせた全量(合計量)を100質量%としたとき、10〜70質量%、好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは20〜40質量%の比率で含有される。
【0034】
≪無機充填材(C)≫
本発明の反射板用ポリアミド樹脂組成物に含まれる無機充填材(C)は、ポリアミド樹脂(A)及びポリアミド樹脂(B)の混合物に添加されることにより、樹脂の強度を向上させることができる。この無機充填材として、繊維状、粉末状、立状、板状、針状、クロス状、マット状等の形状を有する様々な無機補強材を用いることができる。さらに詳しくは、ガラス繊維、金属被覆ガラス繊維、セラミックス繊維、炭素繊維、金属炭化物繊維、金属硬化物繊維、アスベスト繊維及びホウ素繊維等の無機繊維を挙げることができる。このような繊維状の充填材としては、特にガラス繊維が好ましい。ガラス繊維を用いることにより、反射板用ポリアミド樹脂組成物の成形性が向上すると共に、樹脂組成物から形成される成形体の引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率等の機械的特性及び熱変形温度等の耐熱特性を向上させることができる。
【0035】
本発明で用いることができる無機充填材の中で特に好適に用いられるガラス繊維は、平均長さが0.1〜20mm、好ましくは0.3〜6mmの範囲である。つまり、無機充填材として使用されるガラス繊維は、アスペクト比(aspect ratio)、すなわち、L(繊維の平均長さ)/D(繊維の平均径)が10〜2000、好ましくは30〜600の範囲にあると好適である。前記無機充填材(C)は、ポリアミド樹脂(A)、ポリアミド樹脂(B)、無機充填材(C)及び白色顔料(D)をすべて合わせた全量(合計量)を100質量%としたとき、10〜60質量%、好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは10〜25質量%、最も好ましくは10〜15質量%の比率で含有される。
【0036】
≪白色顔料(D)≫
本発明の反射板用ポリアミド樹脂組成物に含まれる白色材料(D)は、ポリアミド樹脂(A)及びポリアミド樹脂(B)の混合物に添加されることにより、樹脂の表面光沢や表面反射率を向上させることができる。
【0037】
本発明で用いる白色顔料(D)としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム等を1種又は2種以上用いることができる。このような材料からなる白色顔料を用いると、特に表面反射率、表面光沢度を向上させることができるため好ましい。また、これら白色顔料は、シランカップリング剤又はチタンカップリング剤等で表面処理したものを用いることができる。例えば、ビニルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のシラン系化合物で表面処理されたものが挙げられる。白色顔料としては特に酸化チタンが好ましく、酸化チタンを用いることにより反射率等の光学特性が向上する。また、酸化チタンはルチル型が好ましい。また、酸化チタンの粒子径は0.05〜2.0μm、好ましくは0.05〜0.7μmである。前記白色顔料(D)は、ポリアミド樹脂(A)、ポリアミド樹脂(B)、無機充填材(C)及び白色顔料(D)をすべて合わせた全量(合計量)を100質量%としたとき、10〜50質量%、好ましくは20〜40質量%、さらに好ましくは25〜30質量%の比率で含有される。
【0038】
≪光安定剤(E)≫
本発明の反射板用ポリアミド樹脂組成物は、光安定剤を含むことにより、変色が防止され、光反射率の低下が抑制される。できる。光安定剤としては、ベンゾフェノン系化合物、サリチラート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、アクリロニトリル系化合物、その他の共役系化合物等の紫外線吸収効果のある化合物、ヒンダードアミン構造を有する化合物(すなわち、ヒンダードアミン系化合物)、ヒンダードアミン構造を有する化合物(すなわち、ヒンダードフェノール系化合物)等のラジカル捕捉能力のある化合物、又はこれらの2以上の混合物等を例示することができる。なお、「ヒンダード」とは、立体障害の大きい、すなわち嵩高い化合物を指すものであり、ヒンダードアミン系化合物は主として光熱安定剤、ヒンダードフェノール系化合物は主として酸化防止剤として作用する。ヒンダードアミン系化合物は、通常、構造中に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、ならびに2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基または1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基を有している化合物であり、その例としては、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−N−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−アルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルアルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスアルキレン脂肪酸アミド類、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]が挙げられる。また、ヒンダードフェノール系化合物の例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられる。これらの中でも、ポリアミド樹脂(A)及びポリアミド樹脂(B)への溶解性が高く、耐熱性が優れるものであって、分子内にアミド結合を有する化合物が好ましい。また、紫外線吸収効果のある化合物とラジカル捕捉能力のある化合物とを併用すると、より耐光性を向上させることができる。前記光安定剤(E)は、ポリアミド樹脂組成物の変色防止と光反射率の低下を抑制する效果を考慮して、ポリアミド樹脂(A)、ポリアミド樹脂(B)、無機充填材(C)及び白色顔料(D)をすべて合わせた全量(合計量)を100質量%としたとき、0.05〜2質量%、好ましくは0.1〜2質量%、更に好ましくは0.3〜0.5質量%の比率で含有される。光安定剤(E)の含有量比を、上記範囲内とすることにより、光に長時間曝された場合であっても、表面反射率、表面光沢度が低下し、黄色度が上昇することを特に抑制することができる。
【0039】
≪添加剤(F)≫
本発明では、本発明の效果を損なわない範囲内において、用途に応じて、反射板用ポリアミド樹脂組成物に以下の添加剤、即ち、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、硫黄類、リン類等)、熱安定剤(ラクトン化合物、ハイドロキノン類、ハロゲン化銅、ヨード化合物等)、難燃剤(臭素系、塩素系、リン系、アンチモン系、無機系等)、蛍光増白剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、離型剤、顔料、核形成剤等をさらに添加してもよい。また、必要に応じてオレフィン類、変性ポリオレフィン類、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、ポリスチレン、フッ素樹脂、シリコン樹脂、LCP等をさらに添加してもよい。
【0040】
本発明の反射板用ポリアミド樹脂組成物は、前記各成分を公知の方法、例えば、ヘンセルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合する方法、又は混合後に一軸圧出機、多軸圧出機、ニーダー、バンバリーミキサー等でさらに溶融混練した後、アセンブリングあるいは粉砕する方法によって製造することができる。前記製造方法によって製造される本発明の反射板用ポリアミド樹脂組成物は、当該組成物を構成する各成分の含有量を前記で規定した範囲とすると、光の反射率、耐熱性、エポキシ樹脂等の密封用樹脂との密着性が、従来技術のものと比較して極めて向上する。そして、特に当該樹脂組成物をLED駆動素子の反射板として使用する際、反射率の低下を抑制することが可能となるため、反射率の高い反射板を提供することができる。
【0041】
また、LED素子用反射板は、通常、ポリアミド樹脂、又はポリアミド樹脂と無機充填材を含む樹脂組成物を射出成形(フープ成形等の金属のインサート成形)、溶融成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形等の加熱成形によって、所望の形状に成形される。そして、ポリアミド樹脂組成物によって形成されたLED素子用反射板は、通常LED素子とそれ以外の部品と、密封用樹脂によって密封、接合、接着等が行われるが、本発明の反射板用ポリアミド樹脂組成物もまた、同様に加工される。
【0042】
さらに、本発明の反射板用ポリアミド樹脂組成物及びその成形品(反射板)はLED用途だけでなく、それ以外の光線を反射する用途にも適用することができる。具体的な例としては、各種電気電子部品、室内照明、天井照明、室外照明、自動車照明、表示機器、ヘッドライト等の発光装置用反射板として用いることができる。
【0043】
反射板の成形は、本発明の反射板用ポリアミド樹脂組成物を加熱溶融した後、所望の形状の金型で成形して、冷却することにより製造することができる。具体的には、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法等の公知の方法で反射板を成形することができる。
本発明は、反射率及び表面光沢が優れた反射板用ポリアミド樹脂組成物だけでなく、これを用いて形成された成形品を提供することができ、その一例として反射板、特に発光ダイオード素子用反射板を挙げることができる。当該反射板(成形品)は、測定角度を60°としたときの表面光沢度が85%以上であると好適である。また、当該反射板に対し、内部温度を85℃且つ内部湿度を85%とした恒温恒湿槽中、LED光源(最大波長460nm)で120時間、光を照射した後、波長440nmの測定光の表面反射率及び黄色度を測定した時、反射率が70〜100%、好ましくは80〜90%、さらに好ましくは85〜90%であり、黄色度は10以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下である。
【実施例】
【0044】
本発明の実施例及び比較例で用いた各成分の仕様を以下に示す。
【0045】
≪ポリアミド樹脂(A)、(B−1)、(B−2)の評価方法≫
本発明の反射板用ポリアミド樹脂組成物の実施例及び比較例に含有されるポリアミド樹脂(A)、(B−1)、(B−2)の物性について、以下のように評価した。
【0046】
[極限粘度[η]]
ポリアミド樹脂(A)0.5gを96.5%硫酸溶液50mLに溶解させ、ウベローデ粘度計を用いて25℃±0.05℃の条件下で試料溶液の落下秒数を測定し、以下の式に基づいて算出した。
【0047】
【数1】

【0048】
【数2】

【0049】
このとき、[η]:極限粘度[dL/g]、ηSP:非粘度、C:試料濃度(g/dL)、t:試料溶液の落下秒数(秒)、t0:ブランク硫酸の落下秒数(秒)。
【0050】
[融点(Tm)]
ポリアミド樹脂(A)、(B−1)、(B−2)について、PerkinElemer社製のDSC7を用いて、330℃で5分間維持し、続いて10℃/分の速度で23℃まで温度を下げた後、10℃/分で昇温した。この時の熱挙動に基づいて吸熱ピークを融点とした。
【0051】
[ガラス転移温度(Tg)]
ポリアミド樹脂(A)、(B−1)、(B−2)について、PerkinElemer社製のDSC7を用いて、330℃で5分間維持し、続いて10℃/分の速度で23℃まで温度を下げた後、10℃/分で昇温し、融点以前(融点以下)の吸熱ピークをガラス転移温度とした。
【0052】
≪ポリアミド樹脂(A)、(B−1)、(B−2)の物性≫
上記の評価方法によって評価したポリアミド樹脂(A)、(B−1)、(B−2)の物性を以下に示す。
【0053】
[ポリアミド樹脂(A)]
本発明の実施例及び比較例で用いたポリアミド樹脂(A)は、温度25℃、96.5%硫酸の中で測定した極限粘度[η]が0.6[dL/g]であり、DSCで測定した融点は320℃、ガラス転移温度は90℃である日本三井化学株式会社製のC3200を用いた。このポリアミド樹脂の組成について、ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジアミン成分は1,6−ジアミノヘキサンである。
【0054】
[ポリアミド樹脂(B−1)]
本発明の実施例及び比較例で用いたポリアミド樹脂(B−1)は、DSCで測定した融点は300℃、同じくDSCで測定したガラス転移温度が138℃である米国デュポン株式会社製のHTN501を用いた。このポリアミド樹脂の組成について、ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジアミン成分は1,6−ジアミノヘキサン及び2−メチル−1,5−ジアミノペンタンである。
【0055】
[ポリアミド樹脂(B−2)]
本発明の比較例で用いたポリアミド樹脂(B−2)は、DSCで測定した融点は240℃、同じくDSCで測定したガラス転移温度が170℃であるポリアミド樹脂を用いた。このポリアミド樹脂の組成について、ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジアミン成分は1,6−ジアミノヘキサン及び2−メチル−1,5−ジアミノペンタンである。
【0056】
[無機充填材(C)]
本発明の実施例及び比較例で用いられる無機充填材はOCV Reinforcements社(USA)製のCS910を用いた。なお、この無機充填材は、上記のアスペクト比(L/D)が230〜250である。
【0057】
[白色顔料(D)]
本発明で用いられる白色顔料はKRONOS社(USA)製のTiO 2233(有機表面修飾:ポリシロキサン化合物)を用いた。なお、このTiOはルチル型である。
【0058】
[光安定剤(E)]
本発明で用いられる光安定剤はBASF社(GERMANY)製のCHIMASSORB(登録商標)944(ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}])を用いた。
【0059】
≪実施例1〜3及び比較例1〜4の測定試片≫
上記の各構成成分と酸化防止剤、光安定剤、離型剤を添加して通常の混合機で混合し、スクリュ軸長に対する軸径の比が35、直径45mmの二軸押出機を用いて押出した後、押出物をペレット形状としてしてから、10oz射出機を用いて射出温度320〜340℃で板状の試片(長さ90mm、幅49mm、厚さ2.5mm)を製造した。そして、これら試片を23℃、相対湿度50%の条件下で48時間放置した後、下記のように物性を測定した。
【0060】
≪反射板用ポリアミド樹脂組成物の物成測定方法≫
反射板用ポリアミド樹脂組成物の実施例及び比較例の物性について、以下のように評価した。
【0061】
[反射率]
反射板用ポリアミド樹脂組成物の反射率を評価するため、シリンダー温度335℃、金型温度130℃の射出条件で射出成形した試片(長さ90mm、幅49mm、厚さ2.5mm)を用いて、入射光(測定光)の波長を440nmとして反射率を測定した。測定は、まず、各試片について反射率を測定し、その後、内部温度が85℃、且つ内部湿度が85%の恒温恒湿オーブン中で460nmの波長を有するLED光源を用いて120時間、試片表面に対して垂直に光を照射した後、再び反射率を測定した。なお、反射率測定機として、コニカミノルタホールディングス株式会社製のCM3500dを用いた。
【0062】
[黄色度](Yellow Index)
反射板用ポリアミド樹脂組成物の変色の程度を評価するため、ASTM(米国材料試験教会)規格D1925に従って、上記形状(長さ90mm、幅49mm、厚さ2.5mm)の試片について、黄色度を測定した。なお、本明細書中、「黄色度」はASTM規格D1925に従って測定された黄色度を指すものである。測定は、まず、各試片について黄色度を測定し、その後、内部温度が85℃、且つ内部湿度が85%の恒温恒湿オーブン中で460nmの波長を有するLED光源を用いて120時間、試片表面に対して垂直に光を照射した後、再び黄色度を測定した。なお、色度計として、Minolta 3600D CIE Lab.色差計を用いて測定した。
【0063】
[光沢度(表面光沢度)](Gloss)
反射板用ポリアミド樹脂組成物の光沢を評価するため、上記形状(長さ90mm、幅49mm、厚さ2.5mm)の試片について、測定角度(測定項の入射角度)を60°として表面光沢度を測定した。なお、光沢度計として、スガ試験機株式会社製のUGV−6Pを用いた。
【0064】
[剥離性評価]
反射板用ポリアミド樹脂組成物の射出成形時における剥離性(ポリアミド樹脂を射出成型した際の、成形品表面における剥離現象の防止効果)を評価するため、以下のような試験を行なった。
【0065】
長さ3mm、幅2.5mm、高さ2mmのカップ状の成形品をフープ成形し、成形品を170℃オーブンで3時間放置した。放置前/後のフープ材とカップ状の成形品との接触部位に水性インクを流し、毛細管現象による水性インクのカップ状の成形品とフープ材との接触面への侵入の有無を目視により評価した。なお、表中の各記号について、染み込みなし:○、少量の染み込みあり:△、大量の染み込みあり:×で表記した。
【0066】
【表1】

【0067】
前記表1に表したように、実施例1〜3は表面光沢度が非常に優れていることが分かる。これに対し、ポリアミド樹脂(A)を単独で用いた場合(比較例1)、ポリアミド樹脂(B−1)を単独で用いた場合(比較例2)は表面光沢度が急激に減少することが分かる。したがって、ガラス転移温度が上記範囲内である二つのポリアミド樹脂を組み合わせることにより、表面光沢度を向上させることができることが示された。
【0068】
また、ポリアミド樹脂(A)とガラス転移温度が170℃のポリアミド樹脂(B−2)を用いた場合(比較例4)、表面光沢度が低下し、剥離性が悪化し(つまり、密着性が低く、剥離しやすくなり)、さらに黄色度が急激に増加することが分かる。
【0069】
また、実施例1〜3は、初期、及び120時間経過後の反射率はいずれも85%以上であり、良好な反射率を保持することが可能であることがわかる。これに対し、比較例1〜4では、いずれも初期の反射率は85%以上であり良好であるものの、120時間後はいずれも反射率が低下することが示されている。特に、光安定剤(E)を含有していないものは、120時間経過後の反射率が極端に低下していることもまた、示されている(比較例3)。したがって換言すると、光安定剤(E)を添加することにより、反射率を良好に保持することができることが示された。なお、白色顔料(D)が添加されることによってもまた、本発明の反射板用ポリアミド樹脂組成物は、高い反射率を備えることができると推察される。
【0070】
さらに、実施例1〜3は初期、及び170℃恒温オーブンで3時間放置した後で評価した結果、水性インクの染み込み現象がないことが分かる。つまり、剥離が起こりにくいといえる。しかし、ポリアミド樹脂(A)を単独で用いた場合(比較例1)、ポリアミド樹脂(B−1)を単独で用いた場合(比較例2)及びガラス転移温度が160℃を超過するポリアミド樹脂(B−2)とポリアミド樹脂(A)を混合したものを用いた場合(比較例4)、初期及び170℃恒温オーブンで3時間放置後に評価した結果、水性インクの染み込み現象が発生することが分かる。つまり、剥離が起こりやすいといえる。
【0071】
また、ポリアミド樹脂(A)及びポリアミド樹脂(B−1)を含むものであっても、光安定剤(E)を含有していない場合(比較例3)は、光安定剤(E)を含有している場合(実施例2)と比較して、120時間経過後の黄色度が増大し、着色しやすいことが示されている。
【0072】
さらに、実施例1〜3の中でも、特に表面光沢度及び反射率が高く、黄色度が低いと共に、剥離が起こりにくい(すなわち、密着性が高く、剥離性が良好である)のは、実施例1の試片であった。したがって、ポリアミド樹脂(A)及び(B)がいずれも30質量%、無機充填材(C)が15質量%、白色顔料(D)が25質量%、光安定剤(E)が0.5質量%のとき、最も良い成績のポリアミド樹脂組成物を得ることができることが示された。
【0073】
以上で説明した本発明の単純な変形及び変更は、この分野の通常の知識を有する者によって容易になされるものであり、このような変形や変更は全て本発明の範囲に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が50℃〜100℃である結晶形ポリアミド樹脂(A);
ガラス転移温度が110℃〜160℃である結晶形ポリアミド樹脂(B);
無機充填材(C);
白色顔料(D);及び
光安定剤(E)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記ポリアミド樹脂組成物は、60°角度での表面光沢度が85%以上であり、85℃/85%恒温恒湿槽内で460nmの波長を有するLED光源に120時間露出した後、440nm波長の光に対する表面反射率が70%〜100%である、反射板用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂組成物は、85℃/85%恒温恒湿槽内で460nmの波長を有するLED光源に120時間露出した後の黄色度が10以下である、請求項1に記載の反射板用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記結晶形ポリアミド樹脂(B)は、ガラス転移温度が120℃〜160℃である、請求項1または2に記載の反射板用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機充填材(C)は、ガラス繊維を含み、
該ガラス繊維は、平均長さが0.1〜20mmであり、径に対する長さの比が10〜2000である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の反射板用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記白色顔料(D)は、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウムよりなる群から選択された少なくとも一つを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の反射板用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
前記光安定剤(E)は、ヒンダードアミン構造を有する化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の反射板用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリアミド樹脂組成物は、
ガラス転移温度が50℃〜100℃である結晶形ポリアミド樹脂(A)10〜70質量%;
ガラス転移温度が110℃〜160℃である結晶形ポリアミド樹脂(B)10〜70質量%;
無機充填材(C)10〜60質量%;及び
白色顔料(D)10〜50質量%;
を含み、
前記結晶形ポリアミド樹脂(A)、結晶形ポリアミド樹脂(B)、無機充填材(C)及び白色顔料(D)100質量%に対して、光安定剤(E)を0.05〜2質量%さらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の反射板用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の反射板用ポリアミド樹脂組成物により形成された成形品。

【公開番号】特開2012−140619(P2012−140619A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−286841(P2011−286841)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】