説明

表面処理された炭酸カルシウム粒子

この粒子は、炭酸カルシウムのコア及び該コアの表面の少なくとも一部を被覆しているコーティングを含み、該コーティングは少なくとも2つの異なる連続した工程で行われ、各工程は異なるコーティング剤を用いる。第一の工程で用いられるコーティング剤は、好ましくは脂肪酸であり、及び第二の工程で用いられるコーティング剤は、好ましくはジオール又はトリオールである。該粒子は、例えばプラスチゾル調合物における機能性充填剤として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、表面処理された炭酸カルシウム粒子、そのような粒子を得るための方法及び機能性充填剤としてのそれらの使用に関する。
【0002】
典型的な用途は、例えば、プラスチゾル、自動車のための底部封止材料、封止剤、接着剤、ポリマー、ゴム及び印刷インクにおける充填剤としてのそれらの使用である。ここで、該表面処理された炭酸カルシウム粒子は、材料の流動性及び硬化材料の機械的特性を制御することができる。従って、非常に異なる流動性を有する材料を、好適な表面処理された炭酸カルシウム粒子を用いることによって製造することができる。
【0003】
可塑剤混合物(SEB)のビンガム降伏値(Bingham yield value)は、通常、充填剤としての炭酸カルシウム粒子の性能特性の典型的な特性値として述べられる。意図される使用に依存して、非常に高い、中間又は低い降伏値が望まれることがある。降伏値を制御する表面処理された炭酸カルシウムの能力は、とりわけ表面処理によって影響される。さらに、表面処理された炭酸カルシウム粒子は、優れた分散性によって特徴づけられる。炭酸カルシウムの非常に微細な結晶は、一般的に凝集する傾向がある。これらの表面処理された炭酸カルシウム粒子の導入の際、これらの凝集物はできる限り粉砕されなければならず、これは表面処理によって実質的に簡素化される。
【0004】
微細に粉砕されたときでさえ、例えば方解石又は霰石(aragonite)として生じる天然の炭酸カルシウムは、それらの小さな表面積により、用途の範囲において不十分となる。
合成によって製造された炭酸カルシウムが、機能的な充填剤又は添加剤としてのその使用のための必要条件を実質的により良く満たす。
通常、合成炭酸カルシウムは、水酸化カルシウムと二酸化炭素を反応させることによって調製される。
沈降炭酸カルシウムの加工特性は、脂肪酸、ワックス、無機塩などでコーティングすることによって影響され得ることが知られている。
従って、コーティングによって例えば、封止剤の保存寿命が改善され得るか、又は材料への充填剤の導入に必要とされる有機マトリックスを有する炭酸カルシウムの湿潤性、又は降伏値又は分散性が影響され得る。
【0005】
炭酸カルシウム、特にチョークは、表面活性材料、例えば、合成又は天然脂肪酸、脂肪アルコール又はワックスなどの存在下で粉砕され、微細な炭酸カルシウム粒子のケーキング(凝集)を回避し得ることも知られている(独国特許第958839号明細書)。
欧州特許第1279433号明細書は、それ自体が公知のコーティング剤で複合的にコーティングすることにより、粒状材料、例えば過炭酸ナトリウムの特性を改善するための方法を開示している。ここで、粒子上のコーティング剤は、コーティングマトリックスを形成し、コーティング剤による粒子の完全な被覆が行われる。
【0006】
本発明の目的は、改善された特性を有する炭酸カルシウム粒子、特に改善された流動性及び改善された分散性を有する炭酸カルシウム粒子、及びその調製のための方法を提供することである。該目的は、請求の範囲で述べらている本発明によって達成される。
本発明の粒子は、炭酸カルシウムのコア及び該コアの表面の少なくとも一部を被覆しているコーティングを含み、該コーティングは少なくとも2つの異なる連続した工程で行われ、各工程は異なるコーティング剤を用いる。
【0007】
本発明の炭酸カルシウムは、天然又は合成炭酸カルシウムでよい。天然炭酸カルシウムは、天然方解石又は霰石でもよく、これらは例えばチョーク又は大理石として生じる。予め乾燥して粉砕するか、又は懸濁液にしてもよい。合成炭酸カルシウムが好ましい。
合成炭酸カルシウムは、任意の方法で得ることができる。これらの方法中では、石灰乳から出発する二酸化炭素による炭酸カルシウムの沈殿(炭酸塩化方法)又は石灰水から出発してアルカリ金属炭酸塩を加えることによる沈殿(苛性化(caustification)方法)又は塩化カルシウムを含有する溶液から出発してアルカリ金属炭酸塩の添加による沈殿が考慮され得る。
【0008】
本発明の情況内の好ましい方法では、炭酸カルシウムが、石灰乳の炭酸塩化によって沈殿される。
本発明の情況内のさらに好ましい方法では、炭酸カルシウムが二酸化炭素含有ガスによる石灰乳の炭酸塩化によって沈殿される。この好ましい方法では、石灰乳が一般的には生石灰を水で消化することによって得られ、及び二酸化炭素含有ガスが有利には濃厚なガス、特に石灰窯ガスである。
この方法で沈殿した炭酸カルシウムは、任意の公知な技術、例えば濾過、噴霧及び遠心分離によって調製媒体から任意に単離することができる。濾過及び遠心分離による技術が好ましい。
【0009】
炭酸カルシウムは、実質的にアモルファスであるか、又は実質的に結晶性であり得る。実質的にアモルファス又は結晶性であるとは、X線回折技術によって分析されたとき、50質量%よりも多くの炭酸カルシウムがアモルファス又は結晶性材料の形状であることを意味すると理解される。実質的に結晶性の炭酸カルシウムが好ましい。それは、方解石又は霰石又はこれら2種の結晶性相の混合物からなり得る。方解石相が好ましい。
【0010】
本発明の炭酸カルシウムの粒子は、任意のサイズであり得る。粒子サイズは、Lea及びNurseの方法(NF 11601/11602 標準)によって測定される粒子の平均直径として定義される。平均直径は、通常は1μm以下、好ましくは0.1μm以下及び最も好ましくは0.05μm以下である。該直径は、一般的には0.001μm以上、有利には0.010μm以上及び最も有利には0.015μm以上である。
本発明では、本発明の炭酸カルシウムの比表面積が、通常は2m2/g以上、好ましくは10m2/g以上及びさらに好ましくは50m2/g以上である。70m2/g以上の比表面積が特に推奨される。炭酸カルシウムの粒子の比表面積は、一般的には300m2/g以下、有利には150m2/g以下である。100m2/g以下の比表面積の値が、特に好ましい。比表面積は、標準的なBET方法(ISO 9277 標準)によって測定される。
【0011】
本発明の炭酸カルシウムの粒子は、種々の形態を示し得る。それらは針状、偏三角面体、菱面体、球体、小板又はプリズムの形状を有し得る。擬似的な立方体又は擬似的な球体となり得る菱面体形状が好ましい。
本発明の炭酸カルシウムの粒子は、特許出願WO 03004414に記載及び請求されている方法を用いて得られる種々のナノスケールの構造-ナノファゴット、ナノロザリオ及びナノアコーディオン-を示し得る。ナノファゴット、ナノロザリオ及びナノアコーディオンの定義は、文献WO 03004414の5頁33行目〜7頁9行目に与えられており、及び参照としてここに組み込まれる。
【0012】
粒子はまた、微小球体、場合によっては噴霧によって得ることができる中空体として結合され得る。
本発明の第一のコーティング剤は、アルキルスルフェート、スルホン酸、カルボン酸、それらの塩及びそれらのエステル、脂肪アルコール、多価アルコール又はそれらの混合物から選択することができる。
本発明の第一の実施態様では、第一のコーティング剤が、カルボン酸、それらの塩及びそれらのエステルから選択される。
カルボン酸は、脂肪族又は芳香族でよい。脂肪族カルボン酸が好ましい。
【0013】
脂肪族カルボン酸は、任意の直鎖又は分枝又は環式、置換又は非置換、飽和又は不飽和のカルボン酸でよい。脂肪族カルボン酸は、通常は4以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上及び最も好ましくは14以上の炭素原子の数を有する。脂肪族カルボン酸は、一般的には32以下、有利には28以下、さらに有利には24以下及び最も有利には22以下の炭素原子の数を有する。
【0014】
第一の変形では、脂肪族カルボン酸は、置換、非置換、飽和及び不飽和脂肪酸又はそれらの混合物の群から選択される。さらに好ましくは、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソ-ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、ペトロセライジン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノールエライジン酸、リノール酸、リノーレンエライジン酸、a-エレオステアリン酸、b-エレオステアリン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エルカ酸、ブラッシジン酸及びクルパノドン酸、それらの混合物又はそこから誘導される塩からなる群から選択される。主にパルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸を含有する混合物がさらに好ましい。約30-40質量%のステアリン酸、約40-50質量%のパルミチン酸及び13-19質量%のオレイン酸からなる混合物が特に好ましい。ステアリン酸が最も好ましい。
【0015】
第二の変形では、カルボン酸はロジン酸である。ロジン酸は、好ましくはレボピマル酸、ネオアビエチン酸、パルストリン酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、それらの混合物又はそこから誘導される塩からなる群から選択される。
第三の変形では、第一のコーティング剤が脂肪族カルボン酸の塩であり、これはカルボン酸のカルシウム塩でもよい。しかし、第一のコーティング剤はまた、例えば脂肪族カルボン酸のナトリウム、カリウム又はアンモニウムの塩の形状で存在してもよい。
第四の変形では、第一のコーティング剤が、脂肪族カルボン酸のエステルであり、以下の化学式R1COOR2を有する。R1及びR2は同じでも異なっていてもよく、及び任意の脂肪族又は芳香族、直鎖又は分枝又は環式、置換又は非置換、飽和又は不飽和の炭化水素基を意味する。炭化水素基は、通常は6以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上及び最も好ましくは14以上の炭素原子の数を有する。炭化水素基は、一般的には32以下、有利には28以下、さらに有利には24以下及び最も有利には22以下の炭素原子の数を有する。
【0016】
本発明の第二の実施態様では、第一のコーティング剤が脂肪アルコールである。脂肪アルコールにより、任意の第一級又は第二級、直鎖又は分枝、置換又は非置換、飽和又は不飽和の1価アルコールを意味することを意図し、これは通常6以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上及び最も好ましくは12以上の炭素原子の数を有する。炭素原子のその数は、一般的には22以下、好ましくは20以下及び最も好ましくは18以下である。
【0017】
本発明の第三の実施態様では、第一のコーティング剤が多価アルコールである。多価アルコールにより、任意の脂肪族又は芳香族、直鎖又は分枝又は環式、置換又は非置換、飽和又は不飽和の有機分子であり、少なくとも2つの一重の炭素-ヒドロキシル(C-OH)結合を含有する分子を意味することを意図する。該分子におけるC-OH結合の数は、通常10以下、好ましくは8以下及び最も好ましくは6以下である。該分子における炭素原子の数は、一般的には2以上及び好ましくは3以上である。炭素原子のこの数は、通常20以下、好ましくは16以下及び最も好ましくは10以下である。該分子は、C-OH結合などの酸素原子以外のヘテロ原子、酸素、フッ素及び窒素も含んでもよい。炭素-ヒドロキシル基から生じるヘテロ原子以外のヘテロ原子を含有しない多価アルコールが好ましい。ジオール及びトリオールがさらに好ましい。同じ数の炭素原子及びC-OH結合を含有するジオール及びトリオールが、さらに好ましい。1,2-エタンジオール及びグリセロールがより一層好ましく、及びグリセロールが最も好ましい。グリセロールは天然又は合成でよい。
【0018】
ステアリン酸及びその塩が、最も好ましい第一のコーティング剤である。
コーティングされた炭酸カルシウム粒子上の第一のコーティング剤の量は、一般的には0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上及びさらに特に1質量%以上である。この含有量は、通常20質量%以下及びさらに特に15質量%以下である。5質量%以下の含有量が特に好適である。
【0019】
本発明の第二のコーティング剤は、多価アルコール、カルボン酸のエステル、又はそれらの混合物から選択され得る。
多価アルコールは、上記のように定義される。グリセロール及び1,2-エタンジオールが好ましく、及びグリセロールが最も好ましい。
カルボン酸のエステルは、脂肪族又は芳香族カルボン酸のエステルにすることができる。芳香族カルボン酸のエステルが好ましく、及びフタル酸のエステルが最も好ましい。フタル酸は、オルト-、メタ-及びパラ-異性体又はそれらの混合物の任意の1つでよい。フタル酸のエステルは、モノ-及びジ-アルキルフタレート及びそれらの混合物から選択される。ジアルキルフタレートが好ましい。“アルキル”により炭化水素鎖を意味することを意図し、これは、直鎖又は分枝又は環式、飽和又は不飽和、置換又は非置換であり、通常1以上、好ましくは4以上、さらに好ましくは6以上及び最も好ましくは8以上の炭素原子の数を含む。炭素原子のその数は、一般的には24以下、有利には20以下、さらに有利には18以下及び最も有利には14以下である。ジ-n-オクチル-イソフタレートが特に最も好ましいエステルである。
【0020】
コーティングされた炭酸カルシウム粒子上の第二のコーティング剤の量は、一般的には0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上及びさらに特に5質量%以上である。この含有量は、通常20質量%以下及びさらに特に15質量%以下である。10質量%以下の含有量が特に好適である。
何らかの理論で確定されている訳ではないが、第一のコーティング後に残っているCaCO3表面上の何もない領域は、第二のコーティング剤で被覆されると信じられている。
本発明に関連して、第一及び第二のコーティング剤は、同じ材料であると同様に異なる材料からなってもよい。第一及び第二のコーティング剤は異なるのが好ましい。
【0021】
特に好ましい実施態様では、炭酸カルシウム粒子がまずステアリン酸又はステアリン酸の塩で被覆され、及び続いて第二のコーティング剤としてのグリセロールによる第二のコーティングが、すでにコーティングされている炭酸カルシウム粒子に適用される。
【0022】
本発明は、表面処理された炭酸カルシウム粒子を調製するための方法にも関する。
炭酸カルシウム粒子の表面処理のための本発明の方法では、コーティング剤が炭酸カルシウム粒子に適用され、まず炭酸カルシウム粒子を第一のコーティング剤と接触させ、及び続いて第二のコーティング剤を適用すると考えられる。
炭酸カルシウム粒子は、例えばミリングプロセス中及び/又は沈殿後に、それ自体公知の手法により液体又は固体形態の第一のコーティング剤と接触され、該コーティング剤は、炭酸カルシウム粒子の表面上に保持される。
【0023】
第一の実施態様では、第一のコーティング剤による炭酸カルシウム粒子の処理を、水系における乳化形態で行う。さらに詳細には、例えば米国特許第6,342,100号明細書を参照することができ、ここに参照として完全に組み込まれる。
第二の実施態様では、第一のコーティング剤による炭酸カルシウム粒子の処理を、水系又は有機系に溶解したコーティング剤で行う。
第三の実施態様では、第一のコーティング剤による炭酸カルシウム粒子の処理を、固体、液体又は気体形態の純粋なコーティング剤で行う。
【0024】
第一のコーティング剤による炭酸カルシウム粒子の処理を、水系における乳化形態で行うのが好ましい。
コーティングされた炭酸カルシウム粒子は、上記のように液体、溶解、固体又は気体形態の第二のコーティング剤と本質的に公知の手法で再び接触され、第二のコーティング剤は、炭酸カルシウムの表面上に保持される。
溶解形態で第二のコーティング剤を用いるのが好ましい。
【0025】
本発明はまた、機能性充填剤としての表面処理された炭酸カルシウム粒子の使用にも関する。
本発明の表面処理された炭酸カルシウム粒子は、優れた分散性を有することが見出された。それらは、凝集体を形成する低い傾向を示す。存在する表面処理された炭酸カルシウム粒子の全ての凝集体は、材料への導入に際してより良く分散する。
【0026】
第二のコーティングの結果として、降伏値は非常に広い範囲で変化し得、従って第二のコーティングの添加無しでは達成不可能な高い値を確立することができる。コーティングされた炭酸カルシウム粒子のいくつかの意図された使用にとって、多価アルコールのみによるコーティングは、それ自体で消費者に望まれる特性を達成するのに十分であり得る。しかし、本発明の表面処理された炭酸カルシウム粒子は、降伏値、粘度及び分散性のさらに広い範囲を示す。
脂肪酸でコーティングされたCaCO3の降伏値は、例えば30Pa〜350Paの範囲で制御可能である。多価アルコール又は置換されている多価アルコールによる追加のコーティングの結果として、降伏値の増加が達成され得る。降伏値は、一般的には100Pa以上、好ましくは200Pa以上、さらに好ましくは600Pa以上である。1000Pa以上の値が最も好ましい。
【0027】
さらに、第一のコーティング後の降伏値の修正が可能である。第一のコーティング後、測定された降伏値が所望の値に一致しない場合、この所望の値はその後に標的とされる追加のコーティングによって確立することができる。
使用者のための利点は、第一に降伏値の定常的な増加にある。第二のコーティングの結果として、使用者が一定の処方で作業するのを可能にする非常に一定な質を製造することができる。調合された材料の流動学的な挙動のその後の調整は、不必要である。さらに、分散プロセスは促進されて、一方では使用者の処理能力を増加させるが、他方で材料のより良い表面の平滑も達成される。さらに、非常に高い降伏値を有する表面処理された炭酸カルシウム粒子の使用により、封止剤における炭酸カルシウムの割合が減少され得、これは材料の密度に関してプラスの効果を有する。特に自動車産業部門では、低密度を有する封止剤、底部封止材料及び接着剤が好ましい。
【0028】
以下の例は本発明をさらに説明するが、その範囲を限定するとして解釈されることはない。
【0029】
流動学的性質
炭酸カルシウム粒子を含有する可塑剤混合物の流動学的性質は、以下の手順に従って得られた。以下の調合物は、35gの可塑剤(例えば、ジ-オクチルフタレート、ジ-イソノニルフタレート、アジペート、セバケート)、25gのポリビニルクロライドポリマー(例えば、Vestolit、Vinolit)、4gの溶媒(例えば、炭化水素の誘導体)、16.2gの天然炭酸カルシウム、0.5gのヒュームドシリカ、2.3gの乾燥剤(例えば、CaO)、1gの促進剤(例えば、ポリアミン、ポリアミド)及び16gのコーティングされた炭酸カルシウム粒子を、溶解用ディスク攪拌器(直径80mm)を備えたINOX-ビーカー(直径120mm、高さ85mm)で混合することによって調製した。該混合物は、1分間で250rpm及び10分間で800rpmでディスクを回転させることによって均質化した。生じた混合物の底部を流動学的測定に用いた。
【0030】
例2から得られた種々の調合物の流動学的性質を、ISO 3219規格に従って調査した。測定は、PHYSICA MC 120 Z 4 DIN型レオメーターで行った。このレオメーターは、課せられた速度勺配(剪断速度)の関数として剪断力及び粘度の進行を測定する。全ての測定は以下の手順に従い25℃で行った:
・熱平衡に到達するまでプローブを5分間25℃に保つ、
・2分にわたって0〜100s-1に速め、120のデータポイントを測定する、
・100s-1で1分保ち、20のデータポイントを測定する、
・2分にわたって100〜0s-1に遅らせ、120のデータポイントを測定する。
【0031】
評価のために、レオグラムの下降したブランチのみを用い、ビンガムの法則に従って曲線を外挿する(直線外挿)。直線外挿は、剪断速度の77〜100s-1の値の間の全てのポイントを用いて作られる。降伏値は、外挿曲線とy軸の交点として得られた。粘度は、100s-1における剪断応力から決定した。
【0032】
例1:沈降炭酸カルシウムの調製(本発明による)
150g/Lの濃度の水酸化カルシウムを有する石灰乳を、反応器において18℃まで加熱した。この出発温度に到達した後、CO2含有ガスを反応器に通し、CO2供給を一定に保った。
CO2/空気混合物 : 30:70
ガス供給 : 1m3/時間(10Lの石灰乳に基づく)
沈殿時間 : 100分
【0033】
例2:第一のコーティング剤の調製(本発明による)
1035gの水を75℃まで加熱し、及び122gのステアリン酸を加えた。この混合物を、15分間加熱した。60mLの25質量%アンモニウム溶液を攪拌しながら加え、及び該混合物を30分間均質化した。淡い色の均質なエマルジョンは、10質量%のステアリン酸を含んでいた。
【0034】
例3:第一のコーティング手順(本発明による)
例2で調製したコーティング剤を、例1で調製した20Lの炭酸カルシウム懸濁液に入れ、及び該混合物を75℃で1時間攪拌した。
コーティングされた炭酸カルシウムを分離し、乾燥し及び粉砕した。この手法でコーティングした炭酸カルシウムは、3質量%のステアレートのコーティングを含んでいた。
【0035】
例4:第二のコーティング手順(本発明による)
グリセロールを1:3の比で水に溶解させ、及び沈降炭酸カルシウム粒子(コーティングされていないもの及びコーティングされたもの)上に噴霧した。
サンプルを50℃で乾燥し、及び続いてピン止めされたディスクミルにおいて18000rpmで粉砕した。
【0036】
例5:(本発明によらない)
例1で沈降炭酸カルシウムを、異なる量のグリセロールでコーティングし、及び流動性を決定した。

【0037】
例6:(本発明による)
沈降炭酸カルシウム(例1)を、例3と同じようにして、炭酸カルシウム100g当たり2gのステアリン酸でコーティングした。異なる量のグリセロールを第二のコーティングとして適用し、及び流動性を決定した。

【0038】
例7:(本発明による)
沈降炭酸カルシウム(例1)を、例3と同じようにして、炭酸カルシウム100g当たり3gのステアリン酸でコーティングした。異なる量のグリセロールを第二のコーティングとして適用し、及び流動性を決定した。

【0039】
例8:CaCO3粒子の分散性を、レーザー光散乱によって決定した。

この結果は、降伏値、粘度及び分散性を、本発明の第二のコーティングによって制御することができることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カルシウムのコア及び該コアの表面の少なくとも一部を被覆しているコーティングを含む粒子であって、該コーティングは少なくとも2種の異なる連続した工程で行われ、各工程は異なるコーティング剤を用いる、粒子。
【請求項2】
第一の工程で用いられるアルキルスルフェート、スルホン酸、カルボン酸、それらの塩及びそれらのエステル、脂肪アルコール、多価アルコール又はそれらの混合物から選択される第一のコーティング剤、及び第二の工程で用いられる多価アルコール、カルボン酸のエステル、又はそれらの混合物から選択される第二のコーティング剤を含む、請求項1記載の粒子。
【請求項3】
カルボン酸が脂肪酸であり、及び多価アルコールがジオール又はトリオールである、請求項2記載の粒子。
【請求項4】
カルボン酸がステアリン酸であり、及び多価アルコールが1,2-エタンジオール又はグリセロールである、請求項2記載の粒子。
【請求項5】
第一のコーティング剤として用いられるカルボン酸が脂肪酸であり、及び第二のコーティング剤として用いられるカルボン酸のエステルがフタル酸エステルである、請求項2記載の粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の粒子の調製方法であって、該粒子をまず第一のコーティング剤と接触させ、及び続いて第二のコーティング剤を該粒子に適用する、方法。
【請求項7】
第二のコーティング剤が、液体、溶解、固体又は気体形態で適用される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
充填剤としての、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粒子の使用。
【請求項9】
ゴム、インク、プラスチゾル、シーラント、紙、塗料、コーティング、医薬品、食品及び化粧品における、請求項8記載の使用。

【公表番号】特表2007−520599(P2007−520599A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550169(P2006−550169)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050232
【国際公開番号】WO2005/071003
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ (252)
【Fターム(参考)】