説明

表面処理用自公転治具

【課題】 被処理物の一公転の間の自転回数を自在に変更可能で品位の高い表面処理を可能とし、かつ能率の良い表面処理を可能とすること。
【解決手段】 可動機枠1に直立状態で回転自在に配した公転軸2と、公転軸2の上部に着脱自在に配した公転用支持円板3と、公転軸2の昇降途中で離脱させた公転用支持円板3を、その位置とワーク着脱エリアとの間で移送可能に構成したコンベア装置10と、公転用支持円板3に公転軌道に沿って直立状態で自転可能に配した複数のワーク支持棒4、4…と、公転軸2を回転駆動すべく可動機枠1に配した公転軸用回転駆動機構5と、複数のワーク支持棒4、4…を自転動作させるべく可動機枠1に配したワーク支持棒用回転駆動機構6と、可動機枠1を昇降動作させるべくベース部7に配した昇降駆動機構8と、可動機枠1を昇降自在に支持するベース部7とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク(被処理物)をセットしてその表面に塗装等の表面処理を施すために使用する表面処理用自公転治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外観のデザインが重視され、高品位の塗装等の高品質の表面処理が求められるワークの表面処理用の治具には、回転処理方式(特許文献1)が採用されている。リング状に構成された回転治具にワークを吊り下げ、これを回転させながらスプレーガンによる塗装等の表面処理を行うものである。
【0003】
しかしながらこのような回転治具では、吊り下げられるワークは、該回転治具の一回転で同様に一回転するのみで、回転治具の、例えば、一回転動作中のワークの回転数を自由に変更するとか、必要に応じて回転を止めるとかは不可能である。そのため、以上の特許文献1のような回転処理方式では、ワークに、必ずしも処理の目的に応じた適切な塗装等の表面処理を行うことができない問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2004−330098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような従来技術の回転治具の問題点を解消し、ワークの一周回動作の間の自転回数を自在に変更可能とすることにより、品位の高い表面処理を可能とし、更に処理対象のワークの治具への装着及び取り外しを効率よく行えるようにすることにより、生産性を高め得るようにした表面処理用自公転治具を提供することを解決の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1は、可動機枠に回転自在に配した公転軸と、
該公転軸の上部に着脱自在に配した公転用支持部材であって、該公転軸の下降の際に、その途中で可動受台に載ることで該公転軸から離脱し、該公転軸の上昇の際にその途中で可動受台上受け取られることで該公転軸に結合し得るように構成した公転用支持部材と、
該公転用支持部材に自転可能に配した複数のワーク支持棒と、
前記公転軸を回転駆動すべくその全部又は一部を可動機枠に配した公転軸用回転駆動機構と、
前記複数のワーク支持棒を自転動作させるべくその全部又は一部を可動機枠に配したワーク支持棒用回転駆動機構であって、該ワーク支持棒への回転伝達機構の一部を離接可能に構成したワーク支持棒用回転駆動機構と、
前記可動機枠を昇降動作させるべくベース部に配した昇降駆動機構と、
前記可動機枠を昇降自在に支持する前記ベース部と、
前記可動機枠の昇降に伴って前記公転軸が昇降する際に、その昇降途中で、前記公転用支持部材を該公転軸に結合させるべく受け渡し、または該公転軸用支持部材を該公転軸から離脱させるべく受け取る、受け渡し・受け取りエリアを通過するように設置した前記可動受台であって、該受け渡し・受け取りエリアとワーク支持棒に配してある処理済みワークの取り外し及び未処理ワークの装着を行う1又は2のワーク着脱エリアとの間を循環又は交互移送する可動受台と、
で構成した表面処理用自公転治具である。
【0007】
本発明の2は、本発明の1の表面処理用自公転治具に於いて、前記複数のワーク支持棒を、前記公転用支持部材にその公転中心を中心とする仮装円環に沿って定角度間隔で配し、該公転用支持部材の下方に突出する該各ワーク支持棒の下端に従動車を取り付け、
他方、前記ワーク支持棒用回転駆動機構を、前記公転軸の周囲に回転自在に外装した外装回転部材と、該外装回転部材の上部に構成した前記複数のワーク支持棒の下端の従動車と離接自在に接してその回転を駆動する駆動車と、該外装回転部材の下部外周に配した駆動用電動機の出力軸に配した出力歯車と噛み合う入力歯車と、出力軸に前記出力歯車を備えた駆動用電動機とで構成し、
前記公転軸用回転駆動機構を、前記ワーク支持棒用回転駆動機構の外装回転部材の下端から突出する公転軸に配した入力歯車と、該入力歯車に噛み合う駆動歯車をその出力軸に配した駆動用電動機とで構成したものである。
【0008】
本発明の3は、本発明の1の表面処理用自公転治具に於いて、前記可動受台を、前記受け渡し・受け取りエリアと前記ワーク着脱エリアとの間を循環移動するコンベア装置で構成したものである。
【0009】
本発明の4は、本発明の1の表面処理用自公転治具に於いて、前記可動受台を、前記受け渡し・受け取りエリアと、その両側に配したワーク着脱エリアとの間を直線的に接続するコンベア装置であって、一方のワーク着脱エリアで未処理ワークを装荷した公転用支持部材の該受け渡し・受け取りエリアへの移送及び該受け渡し・受け取りエリアから処理済みワークを装荷した公転用支持部材の他方のワーク着脱エリアへの移送と、他方のワーク着脱エリアで未処理ワークを装荷した公転用支持部材の該受け渡し・受け取りエリアへの移送及び該受け渡し・受け取りエリアから処理済みワークを装着荷した公転用支持部材の一方のワーク着脱エリアへの移送とを交互に行うように動作するコンベア装置で構成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の1の表面処理用自公転治具によれば、前記公転用支持部材に配したワーク支持棒の上部にワークを装着し、この治具を動作させながらスプレーガン等によってワークに対する塗装等の表面処理操作を行うと、該ワーク支持棒は、自転しつつ公転軸周りに回る公転軌道に沿って公転し、ワークは、そのように自転しつつ公転するワーク支持棒の上端に取り付けてあるため、塗装等の表面処理を全体にわたって均一に行うことができる。このとき、ワーク支持棒の一公転当たりの自転数を種々にかつ自由に設定可能であるため、ワークの塗装等の表面処理はより適切に行うことが可能である。
【0011】
更に、ワークの塗装等の表面処理を完了した後にこの治具に於ける処理済みワークと未処理ワークの交換が極めて効率的に行え、この治具でのワークの表面処理が高効率に行える。
【0012】
即ち、前記昇降駆動機構の下降駆動動作で、可動機枠及びこれに配した公転軸を下降させ、その下降途中の受け渡し・受け取りエリアで、処理済みワークを装荷した公転用支持部材を可動受台に取り残し状態にすることで、前記下降する公転軸から離脱させ、次いで、該可動受台を動かして、まず、離脱させた処理済みワーク装荷の公転用支持部材をワーク着脱エリアに移送させ、続いて、ワーク着脱エリアで未処理ワークを装荷された他の公転用支持部材を受け渡し・受け取りエリアに移送する。そうした後、今度は、前記昇降駆動機構を上昇駆動動作させ、可動機枠及びこれに配した公転軸を上昇動作させ、その上昇途中の受け渡し・受け取りエリアで、該可動受台上の未処理ワークを装荷した他の公転用支持部材を該上昇する公転軸に結合装着させ、そのまま必要な高さまで上昇させ、その後は、再度表面処理動作を行うべく動作させるものである。
【0013】
以上の可動受台は、環状の移動ルートに沿った態様で、該環状の移動ルート上を循環移動するように構成し、前記受け渡し・受け取りエリアとワーク着脱エリアとは、該環状の移動ルート上で、一方から他方まで時計回りでも、反時計回りでも等間隔となるように相互の位置関係を設定したものとする。このようにすることにより、前記のように動作させることができる。
【0014】
或いは、前記可動受台を直線的な移動ルートに沿った態様で、該直線的な移動ルート上を往復移動するように構成し、前記受け渡し・受け取りエリアをその中心に位置させ、かつ二つのワーク着脱エリアを該受け渡し・受け取りエリアを中心として、その両側に等距離となるように配した構成とする。該可動受台を往復運動させ、両側のワーク着脱エリアはそれらを交互に利用することとすれば、前記のように動作させることができる。
【0015】
従って、本発明の1の表面処理用自公転治具によれば、予め、この治具の表面処理動作中に、ワーク着脱エリアに運ばれた公転用支持部材に装荷されている処理済みワークの取り外しを行い、次いで、未処理ワークを装荷しておくことが可能であり、これにより待ち時間を少なくして高能率でワークの表面処理を行うことができる。
【0016】
本発明の2の表面処理用自公転治具によれば、ワーク支持棒の配置を、その各々が、前記公転用支持部材の公転中心を中心とする仮装円環に沿った位置に定角度間隔で位置するように設定したものであるため、該ワーク支持棒の各々にワークを装着して塗装等の表面処理を行うと、それらのワークが該仮装円環に沿った公転軌道に沿って移動しながら自転し、スプレーガン等による塗装処理等の表面処理がより適切に行えることとなるものである。
【0017】
また本発明の2の表面処理用自公転治具によれば、ワーク支持棒を公転させる機構及び自転させる機構が、簡明で合理的な構成となっており、かつ一公転当たりの自転回数を種々に調整することも可能となっている。それ故、ワークの条件に応じて、その均一な塗装等の表面処理を容易に適切に行うことが可能となっている。
【0018】
本発明の3又は4の表面処理用自公転治具によれば、前記可動受台による処理済みワークを装荷した公転用支持部材と未処理ワークを装荷した公転用支持部材との移送・受け渡しが能率的にかつ確実に行い得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づき、図面を参照しながら説明する。
【0020】
この実施例の表面処理用自公転治具は、図1に示すように、可動機枠1に直立状態で回転自在に配した公転軸2と、該公転軸2の上部に着脱自在に配した公転用支持円板(公転用支持部材)3と、該公転用支持円板3に直立状態で自転可能に配した複数のワーク支持棒4、4…と、前記公転軸2を回転駆動すべく可動機枠1に配した公転軸用回転駆動機構5と、前記複数のワーク支持棒4、4…を自転動作させるべく可動機枠1に配したワーク支持棒用回転駆動機構6と、前記可動機枠1を昇降動作させるべくベース部7に配した昇降駆動機構8と、前記可動機枠1を昇降自在に支持する前記ベース部7と、前記可動機枠1の昇降に伴って昇降する公転軸2の昇降途中に位置する受け渡し・受け取りエリアA1を通過するように配したコンベア装置(可動受台)10と、で構成したものである。
【0021】
前記可動機枠1は、図1に示すように、前記公転軸2、該公転軸2を回転駆動する公転軸用回転駆動機構5及び前記ワーク支持棒4、4…を回転駆動するワーク支持棒用回転駆動機構6を支持する枠体であり、更に該公転軸2を介してこれに着脱自在に配した公転用支持円板3、及び該公転用支持円板3を介してこれに配した複数のワーク支持棒4、4…をも支持する。
【0022】
該可動機枠1は、以上のような各構成要素を不都合なく取り付け可能であり、かつ前記ベース部7に配した昇降駆動機構8の昇降駆動動作によりスムーズに昇降動作可能な構成であれば不都合はない。具体的には棒材で組み立てた箱状の枠体、或いは、同様に棒材で組み立てた板状の枠体等が採用可能である。勿論、前記の趣旨に合致する限り、これ以外の種々の構成も採用可能である。この実施例では、図1に概要を示してあるように、板状の枠体を採用した。必要な強度を備えた金属で構成したものである。
【0023】
前記公転軸2は、前記のように、前記可動機枠1に直立状態で回転自在に取り付けたものである。該可動機枠1に回転自在に取り付ける取り付け方は自由である。この実施例では、該公転軸2は以下のように取り付けたものである。図1には概要のみ記してあるが、該公転軸2は、一般の技法に従ってその下端には図示しないスラスト軸受が配してあり、これによって該下端が回転自在に支持されている。またその途中は前記ワーク支持棒用回転駆動機構6の一部を構成する回転管体(外装回転部材)6aに内装され、該回転管体6aに埋込状態に配してある軸受6b、6bによって回転自在に支持されている。なお、前記図示しないスラスト軸受は、前記可動機枠1に固設してあり、該回転管体6aは、後述するように、該可動機枠1に固設した他の軸受6c、6cに回転自在に支持されている。やはり図示しないスラスト軸受でも支持されている。
【0024】
該公転軸2の上端は、図1に示すように、前記回転管体6aから突出しており、その上端は、同図に示すように、円錐状結合部2aを構成してあり、その上方に位置する前記公転用支持円板3の裏面中心に形成してある円錐状結合凹部3cと着脱自在に結合してある。該公転軸2の上端の円錐状結合部2aと該公転用支持円板3の裏面中心の円錐状結合凹部3cとの結合は、前者が後者の中に進入して嵌り合い、前者の外面と後者の内面とが相互に圧接状態となることにより行われるものである。該公転軸2は、前記のように、前記公転軸用回転駆動機構5で回転駆動され、この回転力は、該公転軸2の円錐状結合部2aの外面と該公転用支持円板3の円錐状結合凹部3cの内面との相互の摩擦力により伝達され、該公転用支持円板3も該公転軸2の中心を中心として回転駆動されることになる。
【0025】
なお、該公転軸2の上端と公転用支持円板3の裏面中央との結合構造は、該公転軸2を下降させた場合に、該公転用支持円板3が、後述するように、前記コンベア装置10に取り残されることにより、離脱し、該公転軸2を上昇させると、該コンベア装置10に載っている該公転用支持円板3の裏面中央を該公転軸2の上端が突き上げることにより結合できるものであれば、その構成は自由であり、実施例として示した前記の構成に限定されるものではない。
【0026】
前記複数のワーク支持棒4、4…は、図1に示すように、前記公転用支持円板3に、その公転中心を中心とする仮装円環に沿って、定角度間隔で直立状態に配したものであり、それぞれ、図示しない軸受を介して回転自在に取り付けられている。この実施例では、該各ワーク支持棒4、4…は、同図に示すように、各下端が該公転用支持円板3の下方に突出しており、各々下端には下細りのテーパ状摩擦車4aが固設してあり、その外周を、前記回転管体6aの上部に構成した駆動用摩擦車6dの上細りのテーパ状外周に当接させてある。なお、該テーパ状摩擦車4aを歯車に変え、該駆動用摩擦車6dを歯車に変えても不都合ではない。これらは、相互間に回転力を伝達することができると共に、相互の離接が容易である種々の構成を自由に採用できる。
【0027】
この実施例では、ワーク支持棒4、4…を、前記のように配し、回転力の伝達機構を前記のように構成したものであり、それ故、該各ワーク支持棒4、4…は、前記公転軸2、そして公転用支持円板3の回転に伴って該公転軸2を中心として公転することとなり、それに伴って前記駆動用摩擦車6dのテーパ状外周に当接するテーパ状摩擦車4aの作用により、同時に自転することともなる。公転速度は、前記公転軸2の回転速度を種々に変更することで自由に変更可能であり、また自転速度は、前記駆動用摩擦車6dを停止させておけば、該公転軸2の回転速度が決まると所定の速度に決まり、該駆動用摩擦車6dを回転させれば、その回転速度を種々に変化させることで、停止状態から正逆回転、及びその回転速度を自在に変化させることが可能となる。
【0028】
なお、前記公転用支持円板3は、以上のようにワーク支持棒4、4…を取り付けた円板状部材であるが、その周縁から前記テーパ状摩擦車4a、4a…等を被覆すべく円筒状カバー部3aを垂下させ、かつその下端から内側に鍔状カバー部3bを張り出させたものである。塗装処理等を行う際に、塗料等が該テーパ状摩擦車4a、4a…等に付着しないようにする趣旨である。
【0029】
該各ワーク支持棒4、4…の上部は、表面処理、例えば、塗装対象となるワークを支持する部位であり、対象となるワークの態様に応じて種々の構成のそれを採用する。
【0030】
前記公転軸用回転駆動機構5は、その目的を達成できる種々の構成が採用可能であるが、この実施例では、図1に示すように、前記公転軸2の下部外周に固設した入力歯車5aと、該入力歯車5aに噛み合う駆動歯車5bと、該駆動歯車5bをその出力軸5cに固設した駆動用電動機5dとで構成したものである。該駆動用電動機5dは前記可動機枠1に固設する。また該駆動用電動機5dは、回転速度の制御が可能な種々のそれを自由に採用することができる。この実施例では、DCサーボモータを採用し、図示しない制御手段でその回転速度を自由に制御可能に構成した。
【0031】
こうして前記公転用支持円板3は、該公転軸用回転駆動機構5によって自由な回転速度で回転駆動可能になる。
【0032】
前記ワーク支持棒用回転駆動機構6は、これも、その目的を達成できる種々の構成を採用可能であるが、この実施例では、図1に示すように、前記公転軸2の周囲に回転自在に外装した回転管体6aと、該回転管体6aの上部を拡大させ、該拡大部の上部を更に上細りのテーパ状外周に構成してなる駆動用摩擦車6dと、該回転管体6aを前記可動機枠1に回転自在に支持する軸受6c、6cと、該回転管体6aをその内部に配した公転軸2に対して回転自在な外装状態にする軸受6b、6bと、該回転管体6aの外周に固設した入力歯車6eと、該入力歯車6eに噛み合う駆動歯車6fと、該駆動歯車6fをその出力軸6gに固設した駆動用電動機6hとで構成したものである。該駆動用電動機6hは可動機枠1に固設する。また該駆動用電動機6hとしては、回転速度の制御が可能な種々のそれを自由に採用可能であるが、この実施例では、DCサーボモータを採用し、図示しない制御手段でその回転速度を自由に制御できるように構成した。
【0033】
前記昇降駆動機構8は、これも又、目的を達成できる種々の構成を自由に採用可能であるが、この実施例では、図1に示すように、前記ベース部7から直立した2本のガイド棒8a、8aと、該ガイド棒8a、8aに各々昇降スライド自在に外装する従動パイプ8b、8b…と、前記ベース部7上に直立状態に配したシリンダ装置8cとで構成したものである。前記従動パイプ8b、8b…は、同図に示すように、対応するガイド棒8a、8a毎に縦向に並べた2個のそれを前記可動機枠1の対応する部位に固設したものである。また該シリンダ装置8cは、そのシリンダ部の下端を前記ベース部7に固設し、シリンダロッドの先端を該可動機枠1の下部に結合したものである。なお、ここで採用したシリンダ装置8cは油圧シリンダ装置であり、図示しない制御手段で伸縮制御するようになっている。
【0034】
前記ベース部7は、フロアに安定して配置するための金属の板状部材である。これもこの趣旨を満足できる種々の手段を自由に採用できる。
【0035】
前記コンベア装置10は、これも同様に、種々の構成が採用可能であるが、この実施例では、図2に示すように、受け渡し・受け取りエリアA1とワーク着脱エリアA2とを通過する、平面から見てほぼ楕円形の環状の移送ラインに沿って循環移送できるように設置したものである。同図に示すように、該受け渡し・受け取りエリアA1と該ワーク着脱エリアA2とは、前者から反時計回りでも時計回りでも後者までの間隔が等間隔となるように相互の位置関係を設定する。このコンベア装置10は、同図に示すように、多数のローラを配列して構成したものであり、図1及び図2に示すように、受け渡し・受け取りエリアA1内でのみ中央側を削除して2列に構成したものである。この実施例では、全ローラの内、3本に1本ずつが駆動ローラとなっており、これらによりその上に載った公転用支持円板3、3を所定方向に移送できるようになっている。なお、該受け渡し・受け取りエリアA1は、図1に示すように、前記可動機枠1及び公転軸2が最上昇状態のときの、前記公転用支持円板3の最下部である鍔状カバー部3bの直下付近であり、この部位を前記コンベア装置10が通過するようにしてある。
【0036】
この実施例の表面処理用自公転治具は、以上のように構成したものであり、従ってそのワーク支持棒4、4…の上部にワークを係止させて、この表面処理用自公転治具を動作させれば、容易にかつスピーディにワークに対する塗装等の表面処理を均一に行うことが可能となる(以下塗装処理を行うものとして説明する)。また処理済みワークをワーク支持棒4、4…から取り外し、未処理ワークを該ワーク支持棒4、4…に取り付けるのも能率的に行うことができる。
【0037】
まず、図2に示すように、ワーク着脱エリアA2で、コンベア装置10に載せてある公転用支持円板3に配してある複数のワーク支持棒4、4…に対象のワークをセットする。この間に、前記昇降駆動機構8を下降動作させ、前記可動機枠1を下降させて、その公転軸2の上部に相互の円錐状結合部2aと円錐状結合凹部3cとにより結合していた前記公転用支持円板3を受け渡し・受け取りエリアA1内のコンベア装置10上に取り残し状態に離脱載置する。
【0038】
この後、コンベア装置10を移送動作させ、図2中、矢印x1、x2に示すように、その循環路を半周させて停止させる。即ち、ワーク着脱エリアA2でワーク支持棒4、4…にワークをセットした公転用支持円板3は、受け渡し・受け取りエリアA1まで移動して停止し、他方、該受け渡し・受け取りエリアA1で離脱された公転用支持円板3はワーク着脱エリアA2まで移動して停止することになる。
【0039】
次いで、前記昇降駆動機構8を上昇動作させる。これによって可動機枠1と共に上昇する公転軸2は、受け渡し・受け取りエリアA1でコンベア装置10上に載っている公転用支持円板3を、前者の円錐状結合部2aを後者の円錐状結合凹部3cに突き上げ結合してそのまま最上部まで上昇する。
【0040】
なお、以上の昇降駆動機構8及びコンベア装置10の動作は、いずれも図示しない制御手段を対応するように設定しておくことにより、そのように動作する。
【0041】
前記昇降駆動機構8による前記公転用支持円板3の昇降動作は、以上のように、図示しない前記制御手段によって前記シリンダ装置8cを伸縮制御して行う。シリンダ装置8cが所定寸法だけ伸縮動作すると、可動機枠1がその伸縮動作に対応して昇降して、該可動機枠1に支持される全部材が昇降することになる。当然、その内の一つである公転用支持円板3も昇降することになる。そして下降する場合は、該公転用支持円板3は、途中の受け渡し・受け取りエリアA1で、公転軸3から離脱してコンベア装置10上に取り残し載置されることになる。上昇する場合は、途中の受け渡し・受け取りエリアA1で、コンベア装置10上に載置されていた公転用支持円板3は、公転軸3の上端と前記のように結合して最上部まで上昇することになる。なお、該可動機枠1の昇降は、前記ガイド棒8a、8a…によって案内されることにより、正確に鉛直方向に行われることになる。
【0042】
前記のように、最上部まで上昇した公転用支持円板3は、公転動作をすることになる。これは、そのワーク支持棒4、4…の上端に装着したワークの形状寸法に応じて、適切に塗装処理ができるように、制御手段を設定しておいて、その処理動作を開始させる。
【0043】
こうして制御手段に制御される前記公転軸2用の駆動用電動機5dの回転動作により、出力軸5c、駆動歯車5b及び入力歯車5aを介してその回転力が該公転軸2に伝達され、これが所定の回転速度で回転すると、云うまでもなく、その上端の円錐状結合部2aと円錐状結合凹部3cとを介して結合する公転用支持円板3が同様に回転し、これに伴って該公転用支持円板3に配されたワーク支持棒4、4…が前記公転軌道に沿って所定の速度で公転動作することになる。当然、該ワーク支持棒4、4…の上部に係止されたワークも同様に公転動作することになる。
【0044】
対象のワークとの関係からワーク支持棒用回転駆動機構6の駆動用電動機6hの動作を停止状態に制御した場合は、以上の公転動作に伴って、前記ワーク支持棒4、4…の各々の下部に配したテーパ状摩擦車4a、4a…は、停止している駆動用摩擦車6dにその外周が接して、該テーパ状摩擦車4aと該駆動用摩擦車6dの相互の周長比に反比例する回転速度で回転し、ワーク支持棒4、4…をその回転速度で自転動作させることになる。云うまでもなく、これらに係止されているワークは、その回転速度で自転動作することになる。
【0045】
従って、このとき、ワーク支持棒4、4…に係止されているワークは、該ワーク支持棒4、4…の公転速度で公転しながらその自転速度で自転することになる。この実施例では、側方に120度の角度間隔で配した3個の塗料噴射用のスプレーガン9、9、9から、図1に示すように、塗料を噴射してワークを塗装するものであり、ワークの以上のような公転及び自転によりその全体を均一に塗装可能になるものである。
【0046】
公転速度に対して自転速度を種々に変更したい場合は、図示しない制御手段の設定を必要に応じて変更して前記ワーク支持棒用回転駆動機構6を動作させる。
こうして制御手段によって前記駆動用電動機6hが所定の回転速度の正回転又は逆回転動作に制御され、これがその出力軸6g、出力歯車6f及び入力歯車6eを介して回転管体6aに伝達され、該回転管体6aを対応する回転速度で正回転又は逆回転動作させることになる。該回転管体6aの最上部の駆動用摩擦車6dは、当然、該回転管体6aと同様に回転し、これに伴って、その外周に接して公転するテーパ状摩擦車4a、4a…をその関係に応じた回転速度で自転させることになる。
【0047】
具体的には、該駆動用摩擦車6dが、テーパ状摩擦車4a、4a…の公転速度と同一速度で同一方向に回転する場合は、テーパ状摩擦車4a、4a…は、相互の関係では回転せず、結局、1公転で1自転ということになる。該駆動用摩擦車6dが公転速度より速い回転速度で公転方向と同一方向に回転する場合は、その速さにより、例えば、1周当たり、該テーパ状摩擦車4a、4a…の1周長分を越えない程度に速い場合は、該テーパ状摩擦車4a、4a…は、1公転で1自転より遅い速度での回転になり、1周当たり、該テーパ状摩擦車4a、4a…の1周長分だけ速くなれば、該テーパ状摩擦車4a、4a…は自転停止状態となる。該駆動用摩擦車6dが、その1周当たり、該テーパ状摩擦車4a、4a…の公転速度よりその1周長を越えて速くなれば、該テーパ状摩擦車4a、4a…は逆方向に自転するようになり、その方向での駆動用摩擦車6dの回転速度が速くなれば、それだけ逆方向の自転速度が高くなる。
【0048】
該駆動用摩擦車6dが、テーパ状摩擦車4a、4a…の公転方向と逆方向に回転する場合は、該テーパ状摩擦車4a、4a…は、より自転速度を高めることになる。当然、駆動用摩擦車6dのその方向の回転速度が高まれば、それに応じて自転速度を高めることになる。
【0049】
こうして前記ワーク支持棒用回転駆動機構6の駆動用電動機6hの正逆回転及び回転速度を種々に制御することにより、前記駆動用摩擦車6dの正逆回転及び回転速度を自由に制御し、これによって前記テーパ状摩擦車4a、4a…の自転方向及び自転速度を自由に制御することが可能になるものである。これが、ワーク支持棒4、4…の自転方向及び自転速度を自由に制御できることを意味するのは云うまでもない。
【0050】
従ってワークの形状その他に応じてワークの公転速度及び自転速度及び回転方向を自在に制御し得ることとなり、これにより各ワークの全体を均一に塗装可能とすることができる。
【0051】
こうしてワークの塗装処理が完了した後は、公転軸用回転駆動機構5及びワーク支持棒用回転駆動機構6の動作を停止させ、前記昇降駆動機構8を下降駆動させ、前記のように、可動機枠1及び公転軸2を下降動作させる。こうして該公転軸2の上端に円錐状結合部2a及び円錐状結合凹部3cを介して結合していた、塗装処理済みのワークを装荷した公転用支持円板3は、該公転軸2から分離し、受け渡し・受け取りエリアA1でコンベア装置10上に取り残し載置されることになる。
【0052】
この後は、図2に示し、先に説明したのと同様に、コンベア装置10を、半周分だけ周回動作させ、該受け渡し・受け取りエリアA1中でコンベア装置10上に載っていた処理済みワーク装荷の公転用支持円板3はワーク着脱エリアA2に移送し、ワーク着脱エリアA2で、前記ワークの塗装処理中に、未処理のワークをワーク支持棒4、4…にセットした公転用支持円板3を該受け渡し・受け取りエリアA1に移送する。こうして、先に述べたサイクルを繰り返し、多数のワークを能率的に塗装処理することができる。
【0053】
以上の実施例では、周回動作するコンベア装置10の例を示したが、以下には直線往復動作する他の例のコンベア装置20について説明する。治具の他の構成は全て全く同一である。
【0054】
このコンベア装置20は、図3に示すように、前記受け渡し・受け取りエリアA1と、その両側に等間隔で配した二つのワーク着脱エリアA3、A4との間を接続する二列のコンベアベルトで構成したものである。当然、一般の技法に従って構成され、その一端には、駆動車が配され、他端には従動車が配され、途中にも適宜間隔で中間車が配され、更にリターン側にはテンションプーリも配されている。キャリア側下部には、その下方を滑らかに支持するスライド支持板も配してある。また、当然、駆動車には回転伝達手段を介して電動機が連結され、電動機には制御手段が付設されている。
【0055】
このコンベア装置20は、前記制御手段によって、以下のように動作するように制御される。
前記受け渡し・受け取りエリアA1のコンベア装置20上に塗装処理の完了した処理済みワークを装荷した公転用支持円板3が下降し、公転軸2から分離して取り残し載置されると、該コンベア装置20は、二つのワーク着脱エリアA3、A4の内、処理済みワークが取り除かれ、かつ未処理ワークが装荷された公転用支持円板3が載置されている方の、例えば、ワーク着脱エリアA3から受け渡し・受け取りエリアA1方向に動くように制御され、一方のワーク着脱エリアA3の未処理ワークを装荷した公転用支持円板3が受け渡し・受け取りエリアA1に移送される。また同時に該受け渡し・受け取りエリアA1の処理済みワークを装荷した公転用支持円板3は、他方のワーク着脱エリアA4に移送される。即ち、図3中矢印x3、x4に沿った移送動作をする。
【0056】
この後は、前記したように、受け渡し・受け取りエリアA1では、そこに載っている公転用支持円板3が上昇させられ、装荷しているワークの塗装処理が行われてまた同じ位置に下降載置されることになり、他方、その間に、前記ワーク着脱エリアA4では、その上に載っている公転用支持円板3から処理済みのワークが採り除かれ、新たな未処理ワークがセットされることになる。
【0057】
以上のように両方の作業が完了すると、今度はコンベア装置20が逆方向に移送動作し、前記受け渡し・受け取りエリアA1のコンベア装置20上に処理が完了して載置された処理済みワークを装荷した公転用支持円板3は、反対側のワーク着脱エリアA3に移送され、同時に該ワーク着脱エリアA4の未処理ワークを装荷した公転用支持円板3は受け渡し・受け取りエリアA1に移送されることになる。即ち、図3中矢印x5、x6に沿った移送動作をする。
【0058】
この後は、受け渡し・受け取りエリアA1では、そこに載っている公転用支持円板3が上昇させられ、装荷しているワークの塗装処理が行われてまた同じ位置に下降載置されることになり、他方、その間に、前記ワーク着脱エリアA3では、その上に載っている公転用支持円板3から処理済みのワークが採り除かれ、新たな未処理ワークがセットされることになり、同様のサイクルが繰り返されることになる。
【0059】
従ってこのコンベア装置20を用いた場合も、コンベア装置10を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例の概略正面断面説明図。
【図2】一つの実施例のコンベア装置を示す概略平面図。
【図3】他の実施例のコンベア装置を示す概略平面図。
【符号の説明】
【0061】
1 可動機枠
2 公転軸
2a 円錐状結合部
3 公転用支持円板(公転用支持部材)
3a 円筒状カバー部
3b 鍔状カバー部
3c 円錐状結合凹部
4 ワーク支持棒
4a テーパ状摩擦車
5 公転軸用回転駆動機構
5a 昇降駆動機構の入力歯車
5b 昇降駆動機構の駆動歯車
5c 昇降駆動機構の駆動用電動機の出力軸
5d 駆動用電動機
6 ワーク支持棒用回転駆動機構
6a 回転管体(外装回転部材)6a
6b 回転管体内の公転軸用の軸受
6c 回転管体用の軸受
6d ワーク支持棒用回転駆動機構の駆動用摩擦車
6e 回転管体に固設した入力歯車
6f 回転管体の入力歯車に噛み合う駆動歯車
6g ワーク支持棒用回転駆動機構の駆動用電動機の出力軸
6h ワーク支持棒用回転駆動機構の駆動用電動機
7 ベース部
8 昇降駆動機構
8a ガイド棒
8b 従動パイプ
8c シリンダ装置
9 スプレーガン
10 コンベア装置
20 コンベア装置
x1、x2、x3、x4、x5、x6 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動機枠に回転自在に配した公転軸と、
該公転軸の上部に着脱自在に配した公転用支持部材であって、該公転軸の下降の際に、その途中で可動受台に載ることで該公転軸から離脱し、該公転軸の上昇の際にその途中で可動受台上受け取られることで該公転軸に結合し得るように構成した公転用支持部材と、
該公転用支持部材に自転可能に配した複数のワーク支持棒と、
前記公転軸を回転駆動すべくその全部又は一部を可動機枠に配した公転軸用回転駆動機構と、
前記複数のワーク支持棒を自転動作させるべくその全部又は一部を可動機枠に配したワーク支持棒用回転駆動機構であって、該ワーク支持棒への回転伝達機構の一部を離接可能に構成したワーク支持棒用回転駆動機構と、
前記可動機枠を昇降動作させるべくベース部に配した昇降駆動機構と、
前記可動機枠を昇降自在に支持する前記ベース部と、
前記可動機枠の昇降に伴って前記公転軸が昇降する際に、その昇降途中で、前記公転用支持部材を該公転軸に結合させるべく受け渡し、または該公転軸用支持部材を該公転軸から離脱させるべく受け取る、受け渡し・受け取りエリアを通過するように設置した前記可動受台であって、該受け渡し・受け取りエリアとワーク支持棒に配してある処理済みワークの取り外し及び未処理ワークの装着を行う1又は2のワーク着脱エリアとの間を循環又は交互移送する可動受台と、
で構成した表面処理用自公転治具。
【請求項2】
前記複数のワーク支持棒を、前記公転用支持部材にその公転中心を中心とする仮装円環に沿って定角度間隔で配し、該公転用支持部材の下方に突出する該各ワーク支持棒の下端に従動車を取り付け、
他方、前記ワーク支持棒用回転駆動機構を、前記公転軸の周囲に回転自在に外装した外装回転部材と、該外装回転部材の上部に構成した前記複数のワーク支持棒の下端の従動車と離接自在に接してその回転を駆動する駆動車と、該外装回転部材の下部外周に配した駆動用電動機の出力軸に配した出力歯車と噛み合う入力歯車と、出力軸に前記出力歯車を備えた駆動用電動機とで構成し、
前記公転軸用回転駆動機構を、前記ワーク支持棒用回転駆動機構の外装回転部材の下端から突出する公転軸に配した入力歯車と、該入力歯車に噛み合う駆動歯車をその出力軸に配した駆動用電動機とで構成した請求項1の表面処理用自公転治具。
【請求項3】
前記可動受台を、前記受け渡し・受け取りエリアと前記ワーク着脱エリアとの間を循環移動するコンベア装置で構成した請求項1の表面処理用自公転治具。
【請求項4】
前記可動受台を、前記受け渡し・受け取りエリアと、その両側に配したワーク着脱エリアとの間を直線的に接続するコンベア装置であって、一方のワーク着脱エリアで未処理ワークを装荷した公転用支持部材の該受け渡し・受け取りエリアへの移送及び該受け渡し・受け取りエリアから処理済みワークを装荷した公転用支持部材の他方のワーク着脱エリアへの移送と、他方のワーク着脱エリアで未処理ワークを装荷した公転用支持部材の該受け渡し・受け取りエリアへの移送及び該受け渡し・受け取りエリアから処理済みワークを装着荷した公転用支持部材の一方のワーク着脱エリアへの移送とを交互に行うように動作するコンベア装置で構成した請求項1の表面処理用自公転治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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