説明

表面処理装置のコンベア

【課題】第1に、基板材の垂れ等が防止され、第2に、巻付き等も防止され、第3に、適切な挟み圧で精度高く搬送されるようになり、もってこれらにより、基板材の安定搬送が実現される、表面処理装置のコンベアを提案する。
【解決手段】この表面処理装置1は、処理液Bで満たされた液槽5と、液槽5内に配設された液中搬送用のコンベア3と、液槽5内に配設され処理液Bを液中噴射するスプレーノズル4と、を有している。コンベア3は、基板材Aの両側端面Eのみを挟んで送る挟みローラー8,9が、列設されており、挟みローラー8,9は、外周に溝17,19が形成されている。そして下段の挟みローラー9は、溝17間にワイヤー18が掛け渡され、上段の挟みローラー8は、溝19にリング20が嵌挿されると共に、付設された重し手段21の押下力に基づき、ロール圧が調整され、下段の挟みローラー9に圧接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理装置のコンベアに関する。すなわち、基板の製造工程で使用され、基板材を処理液にて表面処理する表面処理装置のコンベアに、関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
電子機器に用いられる回路用の基板は、小型軽量化,極薄化,フレキシブル化の進展がめざましく、形成される回路も微細化,高密度化が著しい。
そして、このような基板の製造工程では、表面処理装置が用いられており、基板材は、薬液や洗浄液等の処理液にて表面処理される。
【0003】
《従来技術》
さて、この種の表面処理装置では、基板材が、コンベアのストレートローラーやホイール製の上下の搬送ローラーにて水平搬送されつつ、スプレーノズルから処理液が噴射され、もって表面処理が順次施されて、回路が形成され基板が製造されている。
そして多くの場合、コンベアやスプレーノズルは、雰囲気中・空中に配設されており、基板材は、雰囲気中・空中で噴射された処理液にて、表面処理されていた。
これに対し、コンベアやスプレーノズルを処理液中に配設して、表面処理する表面処理装置も、開発されている。すなわち、処理液で満たされた液槽中にコンベアやスプレーノズルを配設し、もって、極薄で柔軟な基板材を、液中噴射された処理液にて表面処理する表面処理装置も出現している。
【0004】
《先行技術文献情報》
このような表面処理装置としては、例えば、次の特許文献1,2中に示されたものが挙げられる。特許文献1は、空中噴射方式のものに関し、特許文献2は、液中噴射方式のものに関する。
【0005】
【特許文献1】特開2002−68435号公報
【特許文献2】特開平10−079565号公報
【0006】
《特願2006−264189について》
なお、本発明者および出願人は、液中噴射方式の表面処理装置について、更に研究開発を進め、平成18年9月28日に特願2006−264189を特許出願した。
この特許出願は、表面処理装置のコンベアについて、基板材の回路形成面には無接触で両側端面のみを送る挟みローラーを、搬送ローラーとして採用したことを要旨とする。
そして、極薄で柔軟な基板材に関し、空中噴射方式について指摘されていた噴射薬液による乱流,液溜まりや、その圧や重量による撓み事故等が解消されると共に、液中噴射方式について指摘されていた回路形成面の損傷も防止される、という優れた効果が期待されている(本発明は、この特許出願の改良発明である)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような従来例の表面処理装置については、次の点が課題とされていた。
《第1の課題》
第1に、搬送される基板材が、搬送ローラー間で垂れる事故が発生し易く、基板材が安定搬送されないという指摘があった。
すなわち、この種の基板材は、極薄化が著しく腰が弱く軟らかいが、このような基板材が、コンベアの搬送ローラー間の間隔隙間において、噴射された薬液の圧や重量に起因して垂れ下がり易かった。もって、基板材が安定搬送されなくなり、基板材の撓み,湾曲,腰折れ,しわ,めくれ,落下等の搬送トラブル発生の原因ともなっていた。
【0008】
《第2の課題》
第2に、搬送される基板材が、搬送ローラーに巻付く事故が発生し易く、この面からも、基板材が安定搬送されないという指摘があった。
すなわち、腰が弱く軟らかい上に処理液で濡らされた基板材が、コンベアの特に上段の搬送ローラーに付着して、巻付き易かった。もって、この面からも、基板材の安定搬送に支障が生じ、各種の搬送トラブル発生の原因ともなっていた。
【0009】
《第3の課題》
第3に、上下の搬送ローラー間に、基板材が、適切な挟み圧で確実に挟まれないことが多々あり、この面からも、基板材が安定搬送されないという指摘があった。
すなわち、表面処理装置における基板材の搬送は、数m〜数10mに及ぶこともあり、その間、コンベアの各搬送ローラーが、極薄の基板材をそれぞれ適切,均等な挟み圧で送るべく設定することは、容易でなかった。搬送ローラーによっては、表面処理装置内各所の微妙な上下高さレベル差等に起因して、上下間の挟み圧に過不足が生じ易く、もって搬送精度が保てず、この面からも安定搬送に支障が生じ、各種の搬送トラブル発生の原因ともなっていた。
【0010】
《本発明について》
本発明の表面処理装置のコンベアは、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべく、発明者の鋭意研究努力の結果なされたものである。
そして本発明は、第1に、基板材の垂れ等が防止され、第2に、巻付き等も防止され、第3に、適切な挟み圧での精度高い搬送が実現される、表面処理装置のコンベアを提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。
請求項1の表面処理装置のコンベアは、基板の製造工程で使用される。該表面処理装置は、処理液で満たされた液槽と、該液槽内に配設され該基板材を液中搬送する該コンベアと、該液槽内に配設され該処理液を液中噴射するスプレーノズルと、を有している。
該コンベアは、該基板材の回路形成面には無接触で両側端面のみを挟んで送る挟みローラーが、搬送方向に列設されている。そして該挟みローラーは、外周に溝が形成されると共に、該溝を利用して該基板材の安定搬送手段が設けられていること、を特徴とする。
請求項2については次のとおり。請求項2のコンベアでは、請求項1において、該コンベアは、該基板材を水平搬送し、該挟みローラーは、上下対をなすと共に左右に配されており、該基板材の左右両側端面を上下から挟んで送ること、を特徴とする。
【0012】
請求項3については次のとおり。請求項3のコンベアでは、請求項2において、下段の各該挟みローラーは、相互の該溝間に線材が、該基板材の垂れ等防止用の該安定搬送手段として、通しで掛け渡されていること、を特徴とする。
請求項4については次のとおり。請求項4のコンベアでは、請求項3において、該線材は、ワイヤーよりなると共に、その径が該溝幅より小さいものが使用されていること、を特徴とする。
請求項5については次のとおり。請求項5のコンベアでは、請求項2において、上段の該挟みローラーは、該溝にリングが、該基板材の巻付き等防止用の該安定搬送手段として、嵌挿されていること、を特徴とする。
請求項6については次のとおり。請求項6のコンベアでは、請求項5において、該リングは、該溝に不動に固定されると共に、部分的に該溝外に出ていること、を特徴とする。
請求項7については次のとおり。請求項7のコンベアでは、請求項2において、下段の該挟みローラーは、上下高さレベルが一定に保持されている。そして上段の該挟みローラーは、上下高さレベルが変更可能に保持されると共に、付設された重し手段の押下力に基づき、下段の該挟みローラーに圧接されつつ該基板材を挟んで送ること、を特徴とする。
請求項8については次のとおり。請求項8のコンベアでは、請求項7において、該重し手段は、上段の該挟みローラーの軸に対し、クッション材や軸受メタルを介して載せられていること、を特徴とする。
【0013】
請求項9については次のとおり。請求項9のコンベアでは、請求項1,3,5,又は7において、該コンベアは、該表面処理装置と該表面処理装置との間の間隔空間について、該基板材を搬送するためにも使用されること、を特徴とする。
請求項10については次のとおり。請求項10のコンベアでは、請求項1,3,5,又は7において、該表面処理装置は、基板の製造工程の現像工程,エッチング工程,剥離工程,又は洗浄工程で使用される。該処理液は、現像液,エッチング液,剥離液,又は洗浄液よりなる。該基板材は、フレレキシブル基板材,その他極薄の軟性基板材よりなること、を特徴とする。
【0014】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)この表面処理装置は、基板の製造工程で使用され、極薄で柔軟な基板材を表面処理する。
(2)そして、噴射される処理液と同じ処理液で満たされた液槽中に、コンベアとスプレーノズルが配設されている。
(3)又、コンベアは、挟みローラーが基板材の両側端面を挟んで送る。
(4)さて、この表面処理装置のコンベアによると、次のようになる。まず、下段の挟みローラーの溝間に、ワイヤー等の線材が掛け渡されているので、基板材が挟みローラー間の間隔隙間にて垂れ下がる事故は防止される。
(5)又、上段の挟みローラーの溝にリングが嵌挿され、部分的に溝外に出ているので、基板材の挟みローラーへの巻付きが防止される。
(6)更に、上段の挟みローラーは、重し手段の押下力に基づき、過不足のない適切,均等な挟み圧に調整されて、下段の挟みローラー上に圧接される。
(7)なお、このコンベアは、表面処理装置間の間隔空間について、基板材を搬送するためにも使用される。そして特に、前記(5)の巻付き防止の点は、この間隔空間において有効である。
【発明の効果】
【0015】
《第1の効果》
第1に、搬送される基板材の垂れ等が防止され、基板材の安定搬送が実現される。すなわち、本発明の表面処理装置のコンベアでは、下段の挟みローラー間にワイヤー等の線材が掛け渡されている。
そこで基板材は、ローラー間において、前述したこの種従来例のように垂れることなく安定搬送され、もって、基板材の撓み,湾曲,腰折れ,しわ,めくれ,落下等の搬送トラブル発生も、防止される。
【0016】
《第2の効果》
第2に、搬送される基板材のローラーへの巻付き等が防止され、この面からも、基板材の安定搬送が実現される。
すなわち、本発明の表面処理装置のコンベアでは、上段の挟みローラーの溝にリングが嵌挿されている。そこで基板材は、前述したこの種従来例のようにローラーに巻付くことなく、安定搬送され、この面からも、各種の搬送トラブル発生が防止される。
【0017】
《第3の効果》
第3に、基板材が適切な挟み圧で搬送され、この面からも、基板材の安定搬送が実現される
すなわち、本発明の表面処理装置のコンベアでは、上段の挟みローラーは、重し手段にて下段の挟みローラーに圧接せしめられている。そこで基板材は、精度高く確実に挟まれて搬送され、この面からも、前述したこの種従来例に比し、より正確に安定搬送され、各種の搬送トラブル発生が防止される。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
《図面について》
以下、本発明の表面処理装置のコンベアを、図面に示した発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。
図1〜図4は、本発明を実施するための最良の形態の説明に供する。そして、図1の(1)図は、要部の側面図、(2)図は、要部の正面図、(3)図は、上段の挟みローラーの側面図である。図2は、正断面図、図3は、間隔空間等の側断面説明図、図4は、側断面説明図である。
【0019】
《基板について》
本発明の表面処理装置1は、基板の製造工程で使用される。そこで、まず基板について説明しておく。
電子機器に使用されるプリント配線基板等の回路基板は、小型軽量化,極薄化,微細回路化,高密度回路化,多層化等の進展がめざましい。回路基板の硬軟についても、従来よりのリジット基板等の硬性基板に比し、フレキシブル基板その他極薄で柔軟な軟性基板の進展,増加が著しく、半導体部品が回路と一体的に組み込まれた半導体パッケージ基板の普及も急速である。
そこで、最近の基板要求度としては、板厚が50μm〜25μm程度、回路幅Lや回路間スペースSが30μm〜20μm程度まで、極薄化,微細化されてきている。
そして、このような基板は、例えば次の製造工程を辿って製造される。すなわち、銅張り積層板よりなる基板材Aの外表面に、→感光性レジストを塗布又は張り付けてから、→回路のネガフィルムを当てて露光した後、→回路形成部分以外のレジストを、現像により溶解除去し、→回路形成部分以外の銅箔を、エッチングにより溶解除去してから、→回路形成部分のレジストを、剥膜除去することにより、→基板材Aの外表面に、銅箔にて回路が形成され、→もって、基板が製造される。
基板は、このようになっている。
【0020】
《表面処理装置1について》
表面処理装置1は、このような基板の製造工程で使用され、基板材Aを処理液Bにて表面処理する。表面処理装置1について、図4等を参照して更に詳述する。
表面処理装置1は、基板の製造工程中、例えば現像工程,エッチング工程,剥離工程,又は洗浄工程において、現像装置,エッチング装置,剥離装置,又は洗浄装置として使用される。そして、その処理室2内において、コンベア3で搬送される基板材Aに対し、スプレーノズル4から例えば現像液,エッチング液,剥離液,又は洗浄液等の処理液Bが噴射され、もって基板材Aが薬液処理や洗浄処理等、表面処理される。
そして表面処理装置1は、その処理室2内に、液槽5,コンベア3,スプレーノズル4,貯槽6、等を有している。
液槽5は、処理液Bで満たされている。すなわち液槽5は、処理室2上部に形成されており、コンベアフレームとしても兼用されているフレーム区画壁7を使用して形成されると共に、スプレーノズル4から噴射される処理液Bと同じ処理液Bで満たされている。
コンベア3は、液槽5の処理液B内に配設されており、基板材Aを搬送方向Cに液中搬送し、多数の挟みローラー8,9を備えている。スプレーノズル4は、液槽5の処理液B内に多数配設されており、搬送される基板材Aの回路形成面Dに対向位置して、処理液Bを液中噴射する。
処理液Bは、処理室2下部の貯槽6から、ポンプ10や配管11を介し各スプレーノズル4に圧送されて、基板材Aに噴射される。そして、基板材Aから反射され,跳ね返った処理液Bは、液槽5中の処理液B中に吸収されるが、その結果、液槽5からオーバーフローした処理液Bが、貯槽6に回収されて貯蔵され、事後再び循環使用される。
なお、図示したスプレーノズル4は、基板材Aの表裏両面に向け対向配設されているが、基板材Aが、回路形成面Dが片面のみの片面基板の場合は、その片面に向けてのみ対向配設されるケースも考えられる。
表面処理装置1は、このようになっている。
【0021】
《コンベア3の概要について》
以下、このような表面処理装置1のコンベア3について、まず、図2,図4を参照して説明する。
コンベア3は、基板材Aの回路形成面Dには無接触で、基板材Aの両側端面Eのみを挟んで送る多数の挟みローラー8,9が、液槽5内において搬送方向Cに沿って列設されてなる。すなわち基板材Aは、中央部の回路形成面Dと、その外周縁の前後端面や左右両側端面Eと、から構成されており、前後端面や両側端面Eは、みみ部とも称され非回路形成面となっている。
そして、上段側の挟みローラー8と下段側の挟みローラー9とが、このような基板材Aの左右両側端面Eを、上下から挟んで送るべく上下で対をなすと共に、左右に列設されている。なお図示例のコンベア3は、このように基板材Aを水平搬送する方式よりなるが、挟みローラー8,9が左右で対をなしたり傾斜して対をなし、もって基板材Aを垂直搬送したり傾斜搬送する方式も可能である。
又、挟みローラー8,9は、回転駆動される駆動ローラーよりなり、軸12,13,伝達ギヤ14,駆動ギヤ15,駆動シャフト16等を介し、モータ等の駆動機構(図示せず)に接続されている。
コンベア3は、概略このようになっている。
【0022】
《下段の挟みローラー9の溝17やワイヤー18等について》
次に、下段の挟みローラー9の溝17やワイヤー18等について、図1の(1)図,(2)図,図2等を参照して、説明する。
下段の挟みローラー9は、外周に溝17が形成されると共に、この溝17を利用して、基板材Aの安定搬送手段が設けられている。すなわち、このコンベア3の下段の左右の各挟みローラー9は、それぞれ、前後相互の溝17間にワイヤー18等の線材が、基板材Aの垂れ等防止用の安定搬送手段として、通しで掛け渡されている。
図示例では、このような線材としてワイヤー18が使用されているが、ワイヤー18以外のその他各種の線材も使用可能である。又、このワイヤー18等の線材は、その径が溝17の幅より小さいものが使用されており、もって、回転駆動される挟みローラー9の負担になることはない。
挟みローラー9の溝17やワイヤー18等は、このようになっている。
【0023】
《上段の挟みローラー8の溝19やリング20について》
次に、上段の挟みローラー8の溝19やリング20について、図1,図2等を参照して、説明する。
上段の挟みローラー8は、外周に溝19が形成されると共に、この溝19を利用して、基板材Aの安定搬送手段が設けられている。すなわち、このコンベア3の上段の挟みローラー8は、それぞれその溝19にリング20が、基板材Aの巻付き等防止用の安定搬送手段として、嵌挿されている。
そして、このリング20は、溝19に不動に固定嵌挿されると共に、部分的に溝19外に出ている。例えば、溝19の幅とほぼ同径の楕円形をなす金属製のリング20が、溝19内に潰し加工しつつ嵌挿されると共に、楕円の径大部分が溝19外へと突出露出せしめられており、このようなリング20が、挟みローラー8と一体的に回転するようになっている。
挟みローラー8の溝19やリング20は、このようになっている。
【0024】
《上段の挟みローラー8の重し手段21について》
次に、上段の挟みローラー8の重し手段21について、図2を参照して、説明する。
このコンベア3では、下段の挟みローラー9は、上下高さレベルが一定に保持されている。これに対し、上段の挟みローラー8は、上下高さレベルが変更可能に保持されると共に、付設された重し手段21の押下力に基づき、下段の挟みローラー9上に圧接されつつ、基板材Aを挟んで送るようになっている。
すなわち、下段の挟みローラー9は、その軸13が、フレーム区画壁7等に穿設された遊挿用の略同径の軸穴等により、上下位置と左右位置とが共に不動に保持されている。これに対し、上段の挟みローラー8は、その軸12が、フレーム区画壁7等に設けられた遊挿用の縦長穴等により、上下位置可動で左右位置不動に保持されている。
これと共に重し手段21が、上段の挟みローラー8の軸12に対し、クッション材22や軸受メタル23を介して、載せられている。重し手段21としては例えば押え金属片が使用され、各挟みローラー8毎に単独で、又は複数の挟みローラー8共通用に連続板状をなして、置かれている。軸受メタル22は、軸12が遊貫挿されると共に、軸12のみにて保持されている。
挟みローラー8の重し手段21は、このようになっている。
【0025】
《作用等》
本発明の表面処理装置1のコンベア3は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)この表面処理装置1は、基板の製造工程で使用され、基板材Aを処理液Bにて表面処理する。すなわち、フレキシブル基板,その他極薄の軟性基板の製造工程で使用され、もって、極薄で柔軟な基板材Aをコンベア3にて液中搬送しつつ、スプレーノズル4から処理液Bを噴射して、回路形成用に表面処理する。
【0026】
(2)そして、この表面処理装置1は、噴射される処理液Bと同じ処理液Bで満たされた液槽5中に、コンベア3とスプレーノズル4が配設されている。
スプレーノズル4から噴射された処理液Bは、液槽5の処理液B中を直進した後、基板材Aの回路形成面Dを直射して表面処理する。そして、回路形成面Dを流れることなく反射されて、液槽5の処理液B中に吸収されるので、回路形成面Dに乱流,液溜まり,滞留等は形成されない。
【0027】
(3)又、この表面処理装置1では、コンベア3の挟みローラー8,9が、基板材Aの非回路形成面である両側端面Eを挟んで送るので、回路形成面Dが、搬送中に接触,損傷することもない。
【0028】
(4)さてそこで、この表面処理装置1のコンベア3によると、次のようになる。まず、このコンベア3では、下段の各挟みローラー9の各溝17間に、ワイヤー18等の線材が通しで掛け渡されている。
すなわち、搬送される基板材Aは、極薄化され腰が弱く軟らかいが、このようにワイヤー18等にて、両側端面Eが下から支えられている。そこで、噴射された処理液Bや液槽5中の処理液Bに起因して、挟みローラー9間の間隔隙間において、基板材Aが垂れ下がる事故は防止され、更に、基板材Aの挟みローラー9への巻付き事故も防止される。
【0029】
(5)又、このコンベア3では、上段の各挟みローラー8の溝19について、リング20が嵌挿されており、リング20は部分的に溝19外に出ている。
そこで、搬送される基板材Aは、極薄化され腰が弱く軟らかく、しかも処理液Bにて濡らされているものの、このようなリング20の存在により、挟みローラー8への巻付きが防止される。吸付き,巻付き,付着せんとする基板材Aは、リング20の突出露出部分にて剥がされる。
【0030】
(6)更に、このコンベア3では、上段の各挟みローラー8は、重し手段21の重量に基づく押下力により、クッション材22,軸受メタル23,軸12等を介して、調整された過不足のない適切,均等な挟み圧にて、対応する下段の挟みローラー9上に、圧接されている。
すなわち、表面処理装置1の処理室2は、数m〜数10mに及ぶこともあり、厳密には各所で微妙な上下高さレベル差等が存するが、重し手段21の押下力に基づき、その箇所の挟みローラー8にとって最適な挟み圧に自動調整されて、下段の挟みローラー9上に圧接される。基板材Aは、微妙な高低差に対応した均等な挟み圧にて、搬送される。
【0031】
(7)なお、このコンベア3は、表面処理装置1と表面処理装置1との間の間隔空間Fにおいて、基板材Aを搬送するためにも使用される。
すなわち図3に示したように、このコンベア3は、表面処理装置1の処理室2の液槽5内つまり液中搬送用だけではなく、表面処理装置1の処理室2間の間隔空間Fつまり液外搬送用にも使用され、もって、前記(4),(5),(6)の作用を発揮する。特に、前記(5)のリング20による巻付き防止作用は、巻付きが発生し易いこの液外において、極めて効果的である。
【0032】
(8)又、コンベア3の上下の挟みローラー8,9について、外周面を傾斜勾配付としておくことも、考えられる。この場合は、基板材Aが一段と確実に安定搬送されるようになる。
すなわち、基板材Aの両側端面Eを上下から挟んで送る上下の挟みローラー8,9について、それぞれその外周面に、上下対応する傾斜勾配を付加形成しておくと、このような傾斜勾配にて、挟みローラー8,9の外周面内側と外周面外側とで、回転速度が僅かに相違するようになり、もって、両側端面Eを挟まれて送られる基板材Aが、左右に引張られて安定搬送されるようになる。
基板材Aは、極薄で柔軟であると共に液中搬送されるので、搬送中に揺れ,撓み,うねり等が発生し易い。しかも、液中搬送は数m〜数10mに及ぶこともあり、各挟みローラー8,9間の挟み圧をすべて均等にすることは、前述したように容易でなく、この面からも、揺れ,撓み,うねり等が発生し易い。これに対し、傾斜勾配にて左右への引張力を付加しておくことにより、上下間の挟み圧がバランス良く補正され、もって基板材Aが、左右共に上下の挟みローラー8,9間に確りと挟まれ確実に保持されて、揺れ,撓み,うねり等なく安定搬送されるようになる。
この外周面の傾斜勾配は、例えば、上段の挟みローラー8については、その径を内側ほど大で外側ほど小とすることにより形成され、逆に、これと絡み合わされる下段の挟みローラー9については、その径を内側ほど小で外側ほど大とすることにより形成される。もって、上下で面一に接する、上下対応した傾斜勾配とされる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る表面処理装置のコンベアについて、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、(1)図は、要部の側面図、(2)図は、要部の正面図、(3)図は、上段の挟みローラーの側面図である。
【図2】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、正断面図である。
【図3】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、間隔空間等の側断面説明図である。
【図4】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、側断面説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 表面処理装置
2 処理室
3 コンベア
4 スプレーノズル
5 液槽
6 貯槽
7 フレーム区画壁
8 挟みローラー(上段)
9 挟みローラー(下段)
10 ポンプ
11 配管
12 軸(上段)
13 軸(下段)
14 伝達ギヤ
15 駆動ギヤ
16 駆動シャフト
17 溝(下段)
18 ワイヤー
19 溝(上段)
20 リング
21 重し手段
22 クッション材
23 軸受メタル
A 基板材
B 処理液
C 搬送方向
D 回路形成面
E 両側端面
F 間隔空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の製造工程で使用される、基板材の表面処理装置のコンベアであって、該表面処理装置は、処理液で満たされた液槽と、該液槽内に配設され該基板材を液中搬送する該コンベアと、該液槽内に配設され該処理液を液中噴射するスプレーノズルと、を有しており、
該コンベアは、該基板材の回路形成面には無接触で両側端面のみを挟んで送る挟みローラーが、搬送方向に列設されてなり、
該挟みローラーは、外周に溝が形成されると共に、該溝を利用して該基板材の安定搬送手段が設けられていること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項2】
請求項1に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、該コンベアは、該基板材を水平搬送し、該挟みローラーは、上下対をなすと共に左右に配されており、該基板材の左右両側端面を上下から挟んで送ること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項3】
請求項2に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、下段の各該挟みローラーは、相互の該溝間に線材が、該基板材の垂れ等防止用の該安定搬送手段として、通しで掛け渡されていること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項4】
請求項3に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、該線材は、ワイヤーよりなると共に、その径が該溝幅より小さいものが使用されていること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項5】
請求項2に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、上段の該挟みローラーは、該溝にリングが、該基板材の巻付き等防止用の該安定搬送手段として、嵌挿されていること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項6】
請求項5に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、該リングは、該溝に不動に固定されると共に、部分的に該溝外に出ていること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項7】
請求項2に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、下段の該挟みローラーは、上下高さレベルが一定に保持されており、
上段の該挟みローラーは、上下高さレベルが変更可能に保持されると共に、付設された重し手段の押下力に基づき、下段の該挟みローラーに圧接されつつ該基板材を挟んで送ること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項8】
請求項7に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、該重し手段は、上段の該挟みローラーの軸に対し、クッション材や軸受メタルを介して載せられていること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項9】
請求項1,3,5,又は7に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、該コンベアは、該表面処理装置と該表面処理装置との間の間隔空間について、該基板材を搬送するためにも使用されること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項10】
請求項1,3,5,又は7に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、該表面処理装置は、基板の製造工程の現像工程,エッチング工程,剥離工程,又は洗浄工程で使用され、該処理液は、現像液,エッチング液,剥離液,又は洗浄液よりなり、該基板材は、フレレキシブル基板材,その他極薄の軟性基板材よりなること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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