説明

表面処理装置

[目的]処理ガスを均一な濃度および均一な流れで被処理体へ吹き付けて、均一に成膜する。
[構成]ガス室24の内側には、垂直方向に所定の間隔をおいて3つの仕切り板32,34,36が配設され、ほぼ同一の流路面積を有する3段のガス流制御室44,46,48が画成される。ガス供給管28,30よりガス導入室26内に導入されたWF6,N2 ガスおよびH2 ガスは、いっしょに最上段のガス流制御室44へ導かれここで均一に混合される。混合処理ガス(WF6,N2 ,H2 )は、中段のガス流制御室46に入り、この室46の底の第2の仕切り板34によって半径方向に均一な濃度および均一な流れのガス流に整流され、次に下段のガス流制御室48を比較的早い流速で通り抜けて、第3の仕切り板36の各通気孔36aよりきめ細かなガス流として半導体ウエハ12へ吹きつけられる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、被処理体に処理ガスを吹きつけて所定の表面処理を行う装置に関する。
【0002】
【従来の技術】CVD(化学気相堆積)は、所定の原料ガスを被処理体の表面に供給し、その分解または反応生成物を被処理体表面上に堆積させて成膜する技術である。CVDにおいて均一な成膜を行うには、原料ガスを被処理体表面の全面にわたって均一に分布させる必要がある。
【0003】一般の枚葉式CVD装置は、図5に示すように、処理容器100内の処理室102の中央下部に被処理体、たとえば半導体ウエハ104を配置して、この半導体ウエハ104をヒータ106によって裏側から加熱しながら、真上から多孔板108を介して原料ガスを半導体ウエハ104の表面に吹きつけるようにしている。
【0004】多孔板108は、半導体ウエハ104の径よりも幾らか大きな径の円板に多数の通気孔108aを設けたもので、処理室102から区画されたガス室110の下部のガス出口110aに取付されている。このガス室110の上部と連通するガス導入室112には、成膜の構成元素となるべき原料ガスがガス供給源(図示せず)よりガス供給管114,116を介して供給される。
【0005】たとえば、タングステン膜を成膜する場合、一方のガス供給管114からはキャリアガス(たとえばN2 ガス)で所定濃度に希釈されたWF6 ガスが所定の流量で供給され、他方のガス供給管116からは所定濃度のH2 ガスが所定の流量で供給される。
【0006】ガス供給管114,116から流路面積の比較的小さなガス導入室112に供給されたWF6,N2 ガスおよびH2 ガスは、そこから流路面積の大きなガス室110へ導かれ、その室内で互いに混合する。そして、ガス室出口110aの多孔板108の各通気孔108aより、混合した原料ガス(WF6,N2,H2 )が真下のウエハ104に向けて吹き出される。
【0007】なお、一般の枚葉式のプラズマエッチング装置においても、上記した枚葉式CVD装置のものと同様なガス室および多孔板を用いてCF4 等のエッチングガスを被処理体へ吹きつけるようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、従来の枚葉式CVD装置およびプラズマエッチング装置等においては、処理ガスを被処理体表面の全面にわたって均一に分布させるように、ガス室110から多孔板108を介して処理ガスの吹きつけを行っている。
【0009】しかしながら、従来装置では、多孔板108の各通気孔108aより処理ガスが均一な流れ(層流)で吹き出されずに、渦を発生するおそれがあった。また、CVDのように複数の処理ガスを用いる場合、従来装置では、それら複数の処理ガスがガス室110内でよく混合しないまま多孔板108の各通気孔108aより不均一な濃度で吹き出されることがあった。
【0010】従来装置では、処理ガスが流路面積の比較的小さなガス導入口112より流路面積の大きなガス室110へ入ると、そこで処理ガスの流れが水平方向へ拡散して乱れ、そのまま多孔板108の各通気孔108aより出るため、渦が発生するものと考えられる。また、処理ガスはガス供給管より相当の勢いでガス導入室に流入するが、従来装置では、ガス導入室112に流入した処理ガスはそのままの勢いで直ちに多孔板108より吹き出すので、このことも渦の発生の一因になっているものと考えられ、さらには、複数の処理ガスがよく混合されない原因になっているものと考えられる。
【0011】このように、従来装置においては、完全に混合された複数の処理ガスを被処理体表面の全面にわたって均一に吹き付けるのが難しく、ひいては均一に成膜するのが困難であった。
【0012】本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、処理ガスを均一な濃度および均一な流れで被処理体へ吹き付けて均一な成膜を行う処理装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の処理装置は、ガス供給管からの処理ガスを処理容器内で区画されたガス室に導き、前記ガス室の出口から前記処理ガスを被処理体へ向けて吹きつけるようにした処理装置において、前記ガス室内に、それぞれ多数の通気孔を設けた複数の仕切り板をガス流方向に所定の間隔をおいて配設してなる構成とした。
【0014】
【作用】本発明において、ガス供給管より流入した処理ガスは、ガス室の第1の仕切板でいったん塞き止められるようにしてから第2の仕切り板側へ抜ける。複数の処理ガスが供給される場合は、第1の仕切板によって画成される第1の室内でそれらの処理ガスが移動・衝突して互いに混合される。第2の仕切り板は、たとえばガス室が円筒状の場合には軸対象で半径方向に均一な密度のパターンの通気孔を有し、第1の仕切り板側からの処理ガスを半径方向に均一な流れ(層流)に整流する。これにより、第2の仕切り板より、処理ガスが均一な濃度および均一な流れで吹き出される。第2の仕切り板の下流側に、さらに小さな通気孔を高密度に設けた第3の仕切り板を配設することで、ガス流をきめ細かくして被処理体へ吹きつけることができる。
【0015】
【実施例】以下、図1〜図4を参照して本発明の実施例を説明する。図1は本発明の一実施例による枚葉式CVD装置の構成を示す縦断面図であり、図2〜図4は実施例のCVD装置における第1、第2および第3の仕切り板の通気孔パターンをそれぞれ示す平面図である。
【0016】図1において、この実施例の枚葉式CVD装置は、たとえばアルミニウムからなる円筒状の処理容器10を有し、この処理容器10の中央部に被処理体としてたとえば半導体ウエハ12を配置する。このCVD装置では、サセプタ(ウエハ載置台)として石英板14を用いる。この石英板14は下向き有底筒状の支持板16の円形開口16aに取付され、この石英板14上に半導体ウエハ12が載置される。石英板14の裏面は、処理容器10の底面中央部の円形開口10aに取付された石英板20を介して処理容器10の外に設置された加熱用ハロゲンランプ22と対向している。成膜処理時、ハロゲンランプ22からの光は、石英板20を通り、さらに石英板14を通って半導体ウエハ12の裏面に入射し、半導体ウエハ12を加熱する。
【0017】処理容器10の上面中央部に円形の開口10bが設けられ、この開口10bを閉塞するようにして下向き有底筒状のガス室24が垂直に取付される。このガス室24は、熱伝導率の高い材質、たとえば銅合金からなり、上端周縁部に環状の取付フランジ24aを有し、内部に冷却水を流すための環状の水路24bを設けており、処理容器10内において処理室11から区画されている。ガス室24の上面中央部にはガス導入用の大きな通気孔24cが設けられ、この通気孔24cの上にガス導入室26が連通して取付され、ガス導入室26内に2つのガス供給管28,30のガス吐出口が臨んでいる。
【0018】たとえば、このCVD装置において半導体ウエハ12上にタングステン膜を成膜する場合、一方のガス供給管28からはN2 ガスで所定の濃度に希釈されたWF6 ガスが所定の流量で供給され、他方のガス供給管30からはH2 ガスが所定の流量で供給される。
【0019】ガス室24の内側には、垂直方向に所定の間隔をおいて3つの仕切り板32,34,36がそれぞれ水平に取付されている。最上段の第1の仕切り板32は、たとえば20mmの板厚を有し、図2に示すようなパターンで板面に多数たとえば153穴で、円形状たとえば直径0.5mmの通気孔32aを設けたアルミニウム板で、ガス室24の内側上面からスペーサ38を介して、たとえば20mm下方の位置に配設される。中段の第2の仕切り板34は、たとえば10mmの板厚を有し、図3に示すようなパターンで板面に多数たとえば252穴で、円形状たとえば直径0.7mmの通気孔34aを設けたアルミニウム板で、第1の仕切り板32の下面からスペーサ40を介して、たとえば20mm下方の位置に配設される。最下段の第3の仕切り板36は、たとえば3mmの板厚を有し、図4に示すようなパターンで板面に多数たとえば1740穴で、円形状たとえば直径1.1mmの通気孔36aを設けたアルミニウム板で、第2の仕切り板34の下面から、たとえば20mm下方の位置でガス室24の下面に配設される。これら3段の仕切り板32,34,36およびスペーサ38,40により、ガス室24内には各々適当な流路面積を有する3段のガス流制御室44,46,48が画成されている。
【0020】なお、ガス室24の外側において、ガス室24と処理容器10の上面との間、およびガス室24の上面とガス導入室26との間には、それぞれ断熱性のスペーサ50,54が設けられている。
【0021】次に、かかる構成のCVD装置の作用を説明する。成膜処理時、石英サセプタ14上に載置された半導体ウエハ12に対して、下方のハロゲンランプ22より光エネルギによってウエハ12を加熱しながら、上方のガス室24より混合処理ガス(WF6,N2 ,H2 )をウエハ12に吹き付ける。成膜のプロセスで発生したガスや余った処理ガスは、処理容器10の底面に設けられた排気口56よりガス排気管を介して除去装置(図示せず)へ送られる。望ましくは、排気口56を4箇所以上設け、処理ガスがウエハ12の円周に均一に排気されるように構成する。
【0022】本CVD装置において、ガス供給管28,30よりガス導入室26内に導入されたWF6,N2 ガスおよびH2 ガスは、いっしょにガス導入室26よりガス室24の最上段のガス流制御室44へ導かれ、ここで均一に混合される。つまり、このガス流制御室44の底に設けられた第1の仕切り板32は、板厚が大きくて、開口率が小さいため、コンダクタンスが低く、ガス流制御室46との間に大きな差圧を生じさせる。これにより、ガス導入室26から勢いよく入ってきたWF6,N2 ガスおよびH2 ガスはガス流制御室44内でいったん塞き止められるようにして移動・衝突し、互いによく混じり合う。このように、最上段のガス流制御室44および第1の仕切り板32は、処理ガスを均一に混合するためのバッファ機能を奏する。なお、第1の仕切り板32の通気孔32aは図2に示すように格子状に分布しているので、各通気孔32aより単位面積当たりの流量および濃度が一定な混合処理ガス(WF6,N2 ,H2 )が中段のガス流制御室46側へ吐き出される。
【0023】中段のガス流制御室46に入った混合処理ガス(WF6,N2 ,H2 )は、この室46の底の第2の仕切り板34によって半径方向に均一な濃度および均一な流れのガス流に整流される。つまり、第2の仕切り板34の通気孔34aは、図3に示すように軸対象で半径方向に均一な密度で分布しているので、円筒状のガス室24における混合処理ガス(WF6,N2 ,H2 )の濃度および流れが軸対象に半径方向に均一化される。このように、中段のガス流制御室46および第2の仕切り板34は、ガス流整流機能を奏する。なお、第2の仕切り板34の板厚も比較的大きいので、ガス流制御室46でもある程度のバッファ効果があり、ここで混合処理ガス(WF6,N2 ,H2 )の混合度が一層強められる。
【0024】中段のガス流制御室46より出た混合処理ガス(WF6,N2 ,H2 )は、下段のガス流制御室48を比較的早い流速で通り抜け、第3の仕切り板36の各通気孔36aより一層均一な流れおよび一層均一な濃度で吐出され、真下の半導体ウエハ12の全表面にわたって均一に降り注ぐ。第3の仕切り板36は薄板で、かつ開口率が大きいため、コンダクタンスが大きく、そして通気孔36aが小孔で密度が大きいので、混合処理ガス(WF6,N2 ,H2 )のガス流がきめ細かくなる。このように、下段のガス流制御室48および第3の仕切り板36は、ガス流細分化機能を奏する。
【0025】もっとも、第2の仕切り板34の通気孔36aの径を小さくし密度を大きくすることで、第3の仕切り板36および下段のガス流制御室48を省略することも可能である。また、第1の仕切り板32を多孔質のセラミック板や金属粒子シート等で構成することも可能であり、第1の仕切り板32の通気孔パターンを第2の仕切り板34と同様な軸対象のパターンとすることも可能である。その他、必要に応じて、各仕切り板の通気孔パターンとして任意なパターンを選択することが可能であり、各仕切り板の板厚および取付間隔についても任意な厚さ、任意の間隔を選択することができる。また、通気孔の直径および個数も任意に選択することができる。また、ガス流制御室には、ビーズ球またはガラスウール等を充填してもよい。
【0026】また、上述した実施例では2つの処理ガスを導入するものであったが、1つの処理ガスを導入する場合でもよく、またCVD装置に限らず、プラズマエッチング装置等の他の表面処理装置にも適用可能である。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の処理装置によれば、ガス供給管からの処理ガスを受けるガス室内に、それぞれ多数の通気孔を設けた複数の仕切り板をガス流方向に所定の間隔をおいて配設することにより、処理ガスを均一な濃度および均一な流れで被処理体へ吹きつけることが可能であり、ひいては被処理体上に均一に成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による枚葉式CVD装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】実施例のCVD装置における第1の仕切り板の通気孔パターンを示す平面図である。
【図3】実施例のCVD装置における第2の仕切り板の通気孔パターンを示す平面図である。
【図4】実施例のCVD装置における第3の仕切り板の通気孔パターンを示す平面図である。
【図5】従来の典型的な枚葉式CVD装置の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10 処理容器
12 被処理体(半導体ウエハ)
24 ガス室
26 ガス導入室
28 ガス供給管
30 ガス供給管
32 第1の仕切り板
34 第2の仕切り板
36 第3の仕切り板
44 第1のガス流制御室
46 第2のガス流制御室
48 第3のガス流制御室

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガス供給管からの処理ガスを処理容器内で区画されたガス室に導き、前記ガス室の出口から前記処理ガスを被処理体へ向けて吹きつけるようにした表面処理装置において、前記ガス室内に、それぞれ多数の通気孔を設けた複数の仕切り板をガス流方向に所定の間隔をおいて配設してなることを特徴とする表面処理装置。

【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図1】
image rotate


【図5】
image rotate