説明

表面吸引清掃装置

【課題】回転する負圧シール部材を備えた「表面吸引清掃装置」において走行機能を向上する。
【解決手段】流体を吸引するための負圧生成手段に連結された装置本体と、装置本体に回転自在に装着され回転体と、回転体を回転駆動する回転駆動源と、回転体に装着された負圧シール部材と、装置本体を物体表面に沿って移動させるための移動手段、とを具備する表面吸引清掃装置において、該移動手段を利用して装置をその場で旋回させる場合において、装置を旋回させたい方向と反対方向に負圧シール部材が回転駆動するように構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に負圧が生成されることによって物体表面に吸着し且つ該物体表面に沿って移動する装置において、
例えば船体、貯油タンク、橋梁、配管などの鋼構造物、あるいはビルディング、水槽、道路などのコンクリート構造物、あるいは樹脂、木材、繊維を素材とする床面など、各種の物体表面に付着した汚れ、錆、劣化したコーティングあるいは水棲生物などの異物を除去し且つ吸引回収するなど、このような物体表面の清掃作業を行う表面吸引清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の公知技術としては、本発明の発明者が提案している、日本特許第2689127号公報に記載の「壁面に吸着し且つそれに沿って移動可能な装置」や
日本特許第2805614号公報に記載の「壁面に吸着し且つそれに沿って移動可能な装置」が知られている。
かかる装置は、
装置本体と、該装置本体に装着された移動手段としての車輪と、該装置本体に連結されその自由端部が物体表面に接触せしめられる負圧シール部材であって且つ該物体表面に垂直な回転軸を軸線として回転する負圧シール部材と、該装置本体、該物体表面及び該負圧シール部材によって規定された減圧領域の内部の流体を外部に排出するための負圧生成手段と、該減圧領域の内部の負圧が任意の圧力以上の値に大きくなれば包囲流体を該減圧領域の内部に流入せしめて該負圧を該任意の値に維持するための真空破壊弁、すなわち一般的にはバキュームブレーカーと呼称されている真空圧力を一定に維持するためのリリーフ弁を備えている。
なお、該リリーフ弁は必ずしも該装置本体に直接に装着されなければならないものではなく、該装置本体と該負圧生成手段とを連結するサクションホースにおいて、該サクションホースの該装置本体に近接した部分に装着される場合もある。
かかる装置においては、負圧生成手段が付勢されると減圧領域の内部の流体が外部に排出され、減圧領域内外の流体圧力差に起因して装置本体に作用する流体圧力は車輪を介して物体表面に伝達され、かかる流体圧力によって装置が物体表面に吸着される。また、かかる吸着状態において電動モ−タの如き駆動手段によって車輪を回転駆動せしめると、上記車輪の作用によって装置は物体表面に沿って移動する。
また、例えば研磨布などの研磨部材が装着された負圧シール部材を回転せしめると、物体表面を研磨清掃することができ、且つ、該研磨清掃作業の際に発生する粉塵は該負圧生成手段の作用により全て吸引回収される。
なお、かかる装置においては、物体表面と負圧シール部材との接触圧力が比較的小さい圧力に調節されるように、該負圧シール部材に設けられた圧力調整空間と、該装置本体に装着された圧力調整弁と、該圧力調整空間と該圧力調整弁とを連通するスイベルジョイント機構から成る、該圧力調整空間の圧力調整手段を備えている。
かかる装置においては、物体表面上における種々の清掃作業を、粉塵を発生させること無く、リモートコントロールにて安全にかつ効率的に行うことができる。
【特許文献1】日本特許第2689127号公報
【特許文献2】日本特許第2805614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した日本特許第2689127号公報及び日本特許第2805614号公報に開示された「壁面に吸着し且つそれに沿って移動可能な装置」においては次の通りの解決すべき問題が存在する。
すなわち、かかる「壁面に吸着し且つそれに沿って移動可能な装置」においては、装置本体に具備された圧力調整手段と回転する圧力調整空間とを、日本特許第2805614号公報に記載のようにスイベルジョイント機構を介して連通させる方策を取ると、該方策を実現する機構が非常に複雑になって故障の要因が増加し、且つ製作コストも増加する。
なお、かかる「壁面に吸着し且つそれに沿って移動可能な装置」においては、物体表面と負圧シール部材との接触圧力が比較的小さい圧力に調節されるように、圧力調整空間の圧力を調整する手段を備えているが、もし、該圧力調整手段を備えておらず、而して物体表面と負圧シール部材との接触圧力が大きくなると、該負圧シール部材が装置本体を回転させようとするトルクが大きくなるので、而して装置が物体表面に沿って移動する際の旋回機能が阻害される、といった問題が発生する。
従って、第1の発明が解決しようとする課題は、「壁面に吸着し且つそれに沿って移動可能な装置」において、圧力調整手段と圧力調整空間とをスイベルジョイント機構を介すること無く連通させる手段を提供することである。
また、第2の発明が解決しようとする課題は、「壁面に吸着し且つそれに沿って移動可能な装置」において、装置が物体表面に沿って移動する際の旋回機能が阻害されない手段として、負圧シール部材の回転方向を制御する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために、第1の発明によれば、
流体を吸引するための負圧生成手段に連結された装置本体と;
該装置本体に回転自在に装着され、その回転軸が物体表面と交差している回転体と;
該回転体を回転駆動する回転駆動源と;
二つの開口部を備え全体の形状が環状を成した負圧シール部材において、
一方の開口部には該回転体に装着される固定部が形成され、他方の開口部には該物体表面に最初に接触する接触部と該接触部から更にその外側に延びた延長部が形成され、また、該一方の開口部と該他方の開口部との間には両開口部を連結する連結部が形成されており、而して該装置本体、該回転体及び該物体表面と協働して第1の減圧領域を規定する負圧シール部材と;
二つの開口部を備え全体の形状が環状を成した補助シール部材において、
一方の開口部は該回転体に固定され、他方の開口部は該負圧シール部材の該延長部と密着しており、また、該一方の開口部と該他方の開口部との間には両開口部を連結する連結部が形成されており、而して該回転体及び該負圧シール部材と協働して第2の減圧領域を規定する補助シール部材と;
該第2の減圧領域の圧力を、該物体表面を包囲する流体の圧力よりも低い圧力に維持し、且つ、該第2の減圧領域の圧力を、該第1の減圧領域の圧力よりも高い圧力に維持する圧力調整手段と;
該装置本体と該物体表面との距離を任意の距離に維持し、かつ該装置本体を該物体表面に沿って移動させるための移動手段、とを具備する表面吸引清掃装置において;
該圧力調整手段として、圧力調整弁を該回転体に具備している、ことを特徴とする表面吸引清掃装置が提供される。
【0005】
上記の課題を達成するために、第2の発明によれば、
流体を吸引するための負圧生成手段に連結された装置本体と;
該装置本体に回転自在に装着され、その回転軸が物体表面と交差している回転体と;
該回転体を回転駆動する回転駆動源と;
二つの開口部を備え全体の形状が環状を成した負圧シール部材において、
一方の開口部には該回転体に装着される固定部が形成され、他方の開口部には該物体表面に最初に接触する接触部と該接触部から更にその外側に延びた延長部が形成され、また、該一方の開口部と該他方の開口部との間には両開口部を連結する連結部が形成されており、而して該装置本体、該回転体及び該物体表面と協働して減圧領域を規定する負圧シール部材と;
該装置本体と該物体表面との距離を任意の距離に維持し、かつ該装置本体を該物体表面に沿って移動させるための移動手段、とを具備する表面吸引清掃装置において;
該移動手段を利用して装置をその場で旋回させる場合において、装置を旋回させたい方向と反対方向に負圧シール部材が回転駆動するように構成した、ことを特徴とする表面吸引清掃装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、下記の効果をもたらすものである。
第1の発明の装置においては、装置本体に具備された圧力調整手段と回転する圧力調整空間とをスイベルジョイント機構を介して連通させる必要が無いので、而して機構が非常に簡単になって故障の要因が減少し、且つ製作コストも減少する。
また、第2の発明の装置においては、装置を旋回させたい方向と反対方向に負圧シール部材が回転駆動するように構成するといった簡単な手段により、装置が物体表面に沿って移動する際の旋回機能が阻害されることを阻止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明すなわち第1の発明と第2の発明に従って構成された装置の好適実施例について、添付図を参照して更に詳細に説明する。
なお、第1の発明に従って構成された装置に具備された補助シール部材7、圧力調整手段17および第2の減圧領域22は、第2の発明に従って構成された装置には具備されても、また具備されなくとも良い。
【実施例】
【0008】
図1乃至図7を参照して説明すると、図示の装置は装置本体2を具備しており、装置本体2は剛性材料を素材とし、物体表面1の方向が開口した円筒箱の形状をした円筒箱部材201と、円筒箱部材201の底部に溶着された、物体表面1の方向が開口した四角箱の形状をした四角箱部材202と、四角箱部材202の底部に溶着された、両側が開口した円筒部材203から形成されている。
装置本体2の円筒部材203には、物体表面1の方向が開口した円筒箱の形状をした回転ホース継手部材33が、物体表面1とほぼ垂直に交差している軸線を中心軸として回転自在に装着されており、回転ホース継手部材3の円筒側面にはサクションホース継手301が溶着されており、サクションホース継手301はサクションホース(図示せず)を介して真空ポンプの如き負圧生成手段(図示せず)に接続されている。
サクションホース継手301の軸線は、物体表面1とほぼ平行な位置に配置されているが、その利点を述べると、例えば装置が垂直な物体表面1に吸着して該物体表面1に沿って移動する際に、サクションホースは装置の重心を通って重力が作用する方向に常に垂れ下がるので、而して装置は質量が比較的重いサクションホースからその移動を阻害されること無く、而して装置は上下左右且つ斜め方向に自在に移動することが出来る。
なお、回転ホース継手部材3には、停電などに起因して真空ポンプが停止した際に装置が落下するのを防止するための落下防止用ロープが装着される落下防止金具302も溶着されている。
装置本体2の円筒箱部材201の開口部の外周縁部には1個の玉軸受4の内輪部が固定されている。
なお玉軸受4の軸線は物体表面1と交差している。
玉軸受4の外輪部には回転体5が固定されている。
回転体5は、玉軸受4の軸線に直交する環状の回転円板部材501と、玉軸受4の外輪部を固定する円筒部材502と、スプロケット部材503から形成されている。
回転体5の回転円板部材501の内周縁部には、例えばポリウレタン、合成ゴム等の比較的柔軟な材料を素材とする負圧シール部材6が固定されている。
負圧シール部材6は二つの開口部を備え全体の形状が環状を成している。
負圧シール部材6の一方の開口部には回転体5に装着される固定部601が形成され、他方の開口部には物体表面1に最初に接触する接触部603と接触部603から更にその外側に延びた延長部604が形成され、また、該一方の開口部と該他方の開口部との間には両開口部を連結する連結部602が形成されており、而して負圧シール部材6は、装置本体2、回転体5及び物体表面1と協働して第1の減圧領域21を規定している。
回転体5の回転円板部材501の外周縁部には、例えばポリウレタン、合成ゴム等の比較的柔軟な材料を素材とする補助シール部材7が固定されている。
補助シール部材7は二つの開口部を備え全体の形状が環状を成している。
補助シール部材7の一方の開口部は回転円板部材501の外周縁部に固定され、他方の開口部は負圧シール部材6の延長部604の端部と密着している。
また、該一方の開口部と該他方の開口部との間には両開口部を連結する連結部602が形成されており、而して補助シール部材7は、回転体5及び負圧シール部材6と協働して第2の減圧領域22を規定している。
負圧シール部材6の延長部604には、研磨部材、ブラシ部材、繊維部材などの物体表面1を清掃するための材料605が、ワンタッチ密着手段であるベルクロテープ606を介して装着されている。
なお、補助シール部材7の端部と負圧シール部材6の延長部604の端部とが密着する部分は融着されて一体化されてもよい。しかし、該一体化されると該端部の強度が増大し、而して該端部のフレキシブル性が阻害されるので、物体表面1に凹凸形状が有る場合においては一体化されない方が望ましい。
【0009】
装置本体2の円筒箱部材201の底部が延長された部分には、回転体5を回転駆動する回転駆動源としての減速機付エアモータ8が固定されており、減速機付エアモータ8の出力軸にはスプロケット9が固定されており、スプロケット部材503とスプロケット9との間にはローラチェーン10が懸架されている。
装置本体2の円筒箱部材201の底部には、1式あたり2個の駆動車輪11から成る駆動車輪群が2式、合計4個の駆動車輪11が2本の固定軸12に回転自在に装着されている。
図3において、上下方向が装置の移動方向であるが、該走行方向の上方と下方に、該走行方向に直交する2本の固定軸12が、円筒箱部材201の底部に溶着された2個のブラケット204に固定されている。
各々の駆動車輪11にはスプロケット13が固定されている。
装置本体2の四角箱部材202の両側面にはそれぞれ減速機付電動モータ14が固定されており、各々の減速機付電動モータ14の出力軸にはスプロケット15が固定されている。
図3において、左側の2個の駆動車輪11は、1式の駆動車輪群として、図1において右側の減速機付電動モータ14によりローラチェーン16を介して回転駆動され、
図3において、右側の2個の駆動車輪11は、1式の駆動車輪群として、図1において左側の減速機付電動モータ14によりローラチェーン16を介して回転駆動される。
【0010】
回転体5の回転円板部材501には、弁穴504が設けられ、弁穴504と、弁穴504を塞ぐ弁板171と、回転円板部材501から離れる方向と接近する方向に出入りする弁板171に溶着されたロッド172と、ロッド172を摺動自在に保持するロッドガイド173と、弁板171とロッドガイド173の間に配置されたことにより弁板171を回転円板部材501の方向に押しつける圧縮コイルバネ174、から構成された圧力調整手段17が具備されている。
また、負圧シール部材6には第1の減圧領域21と第2の減圧領域22とを連通する小孔607が設けられている。なお、小孔607も圧力調整手段17いわゆる圧力調整弁を構成する要素である。
弁穴504と小孔607の面積及びバネ定数などの圧縮コイルバネ174の仕様については、第2の減圧領域22の圧力を、物体表面1を包囲する流体の圧力よりも低い圧力に維持し、且つ、第2の減圧領域22の圧力を、第1の減圧領域21の圧力よりも高い圧力に維持する目的に沿って、且つ負圧シール部材6のサイズや負圧生成手段の仕様を勘案しながら適宜決定されるものである。
【0011】
以下に、上述した装置の作用効果について説明する。
負圧生成手段(図示せず)を付勢すると、第1の減圧領域21の内部の大気の如き流体がサクションホース継手301及びサクションホース(図2において18)を通って外部に排出され、第1の減圧領域21が所要の通り減圧される。
かく第1の減圧領域21が減圧されると、第1の減圧領域21の内外の流体圧力差に起因して装置本体2に作用する大気の如き包囲流体の圧力が2式の駆動車輪11を介して物体表面1に伝達され、かくしてかかる包囲流体圧力によって装置が物体表面1に吸着する。
第1の減圧領域21の内部の圧力が所望の圧力に維持されている時、負圧シール部材6は第1の減圧領域21の内外の圧力差に起因して物体表面1に強く接触せしめられ、よって第1の減圧領域21の外部の流体がその内部に流入するのを極力阻止する。
【0012】
かく第1の減圧領域21が減圧されると、第2の減圧領域22の内部の空気の如き流体は、負圧シール部材6に設けられた小孔607を通って第1の減圧領域21へ流入し、よって第2の減圧領域22の圧力は減圧されるが、第2の減圧領域22の圧力が予め設定された任意の圧力を超えて減圧されると、物体表面1を包囲している空気の如き外部流体の圧力が圧縮コイルバネ174の力に打ち勝って弁板171を押し開き、而して小孔607を通って第1の減圧領域21へ流入する流体よりもはるかに流量が多い外部流体が第2の減圧領域22へ流入する。
かく外部流体が第2の減圧領域22へ流入すると、今度は第2の減圧領域22の圧力は増圧されるが、第2の減圧領域22の圧力が予め設定された任意の圧力を超えて増圧されると、圧縮コイルバネ174の力が物体表面1を包囲している空気の如き外部流体の圧力に打ち勝って弁板171を閉じ、而して外部流体の第2の減圧領域22への流入は阻止される。
かくして第2の減圧領域22の圧力は、上記に記載の如く圧力調整手段17の作用により、物体表面1を包囲する流体の圧力よりも低い圧力に維持され、且つ、第1の減圧領域21の圧力よりも高い圧力に維持される。
かく第2の減圧領域22の圧力が、物体表面1を包囲する流体の圧力よりも低い圧力に維持されると、負圧シール部材6と物体表面1との接地圧力が減少するので、而して負圧シール部材6と物体表面1との間の摩擦力が減少される。
なお、第2の減圧領域22の圧力が物体表面1を包囲する流体の圧力と同等であった場合においては、負圧シール部材6と物体表面1との接地圧力が増大するので、而して負圧シール部材6と物体表面1との間の摩擦力が増大され、該摩擦力の増大に起因して装置の走行機能が阻害されるが、該走行機能に係る作用の説明の項で該阻害の内容について詳述する。
【0013】
図3において、減速機付電動モータ14を作動せしめて2式の駆動車輪11を同方向に回転駆動すると、装置は物体表面1に沿って直進(上昇または下降)する。
また、2式の駆動車輪11を逆方向に回転駆動させると、装置は旋回(左旋回または右旋回)する。
図1において、装置が物体表面1に負圧吸着している状態において、左側の減速機付電動モータ14と右側の減速機付電動モータ14を、図1の左方向から見て反時計方向に回転駆動すると、装置は直進上昇する。
また、左側の減速機付電動モータ14と右側の減速機付電動モータ14を、図1の左方向から見て時計方向に回転駆動すると、装置は直進下降する。
また、左側の減速機付電動モータ14を、図1の左方向から見て反時計方向に回転駆動し、右側の減速機付電動モータ14を、図1の左方向から見て時計方向に回転駆動すると、装置は上昇も下降もせず、その場で時計方向に旋回して装置が走行する方向を変えることができる。
また、左側の減速機付電動モータ14を、図1の左方向から見て時計方向に回転駆動し、右側の減速機付電動モータ14を、図1の左方向から見て反時計方向に回転駆動すると、装置は上昇も下降もせず、その場で反時計方向に旋回して装置が走行する方向を変えることができる。
また、左側の減速機付電動モータ14を、図1の左方向から見て反時計方向に遅い速度で回転駆動し、右側の減速機付電動モータ14を、図1の左方向から見て反時計方向に早い速度で回転駆動すると、装置は左に曲がりながら上昇し、即ち装置が走行する方向を変えることができる。
また、左側の減速機付電動モータ14を、図1の左方向から見て反時計方向に早い速度で回転駆動し、右側の減速機付電動モータ14を、図1の左方向から見て反時計方向に遅い速度で回転駆動すると、装置は右に曲がりながら上昇し、即ち装置が走行する方向を変えることができる。
また、左側の減速機付電動モータ14を、図1の左方向から見て時計方向に遅い速度で回転駆動し、右側の減速機付電動モータ14を、図1の左方向から見て時計方向に早い速度で回転駆動すると、装置は左に曲がりながら下降し、即ち装置が走行する方向を変えることができる。
また、左側の減速機付電動モータ14を、図1の左方向から見て時計方向に早い速度で回転駆動し、右側の減速機付電動モータ14を、図1の左方向から見て時計方向に遅い速度で回転駆動すると、装置は右に曲がりながら下降し、即ち装置が走行する方向を変えることができる。
【0014】
吸着状態において減速機付エアモータ8を付勢すると、負圧シール部材6と物体表面1との間の摩擦力が駆動車輪11と物体表面1との間の摩擦力がより大きい故に、装置本体2は回転すること無く、回転体5、負圧シール部材6及び補助シール部材7が所要の通り回転する。
かくすると、負圧シール部材6の延長部604に装着された研磨部材などの物体表面1を清掃するための材料605が物体表面1に接触しながら回転し、かかる清掃材料の作用によって物体表面1がクリーニングされる。
また研磨部材などの清掃材料と物体表面1との間の僅かな隙間を通して外部の流体が第1の減圧空間に流入する故に、かかる流体の流れによってクリーニング時に発生する粉塵等を第1の減圧空間の内部に吸引回収することができる。
【0015】
第2の減圧領域22の圧力が物体表面1を包囲する流体の圧力と同等であった場合においては、負圧シール部材6と物体表面1との接地圧力が増大するので、而して負圧シール部材6と物体表面1との間の摩擦力が増大され、該摩擦力の増大に起因して装置の走行機能が阻害されるが、図1を参照しながら以下に説明する。
即ち、装置の走行方向を変える手段として上述の如く2つの手段があるが、先ず、2式の駆動車輪11を互いに逆方向に回転駆動させて装置をその場で旋回させる手段を使用する場合において、
負圧シール部材6が例えば時計方向に回転している時において、装置本体2に対して反時計方向に回転させようとするトルクが該摩擦力の増大に起因して強く作用するので、装置は時計方向に旋回するのが大変困難となる。
次に、2式の駆動車輪11を同方向かつ回転速度を違えて回転駆動させて装置をカーブさせる手段を使用する場合において、
負圧シール部材6が例えば時計方向に回転している時において、装置本体2に対して反時計方向に回転させようとするトルクが該摩擦力の増大に起因して強く作用するので、装置は走行方向に向かって右方向にカーブしながら走行するのが大変困難となる。
【0016】
上記に記述のように、第2の減圧領域22の圧力が物体表面1を包囲する流体の圧力と同等であった場合においては、負圧シール部材6と物体表面1との接地圧力が増大するので、而して負圧シール部材6と物体表面1との間の摩擦力が増大され、該摩擦力の増大に起因して装置の走行機能が阻害される。
しかしながら、第1の発明の装置において、第2の減圧領域22の圧力が、物体表面1を包囲する流体の圧力よりも低い圧力に維持されると、負圧シール部材6と物体表面1との接地圧力が減少するので、而して負圧シール部材6と物体表面1との間の摩擦力が減少され、かくして該装置の走行機能が阻害されることを阻止できる。
【0017】
上記に記述のように、第2の減圧領域22の圧力が物体表面1を包囲する流体の圧力と同等であった場合においては、負圧シール部材6と物体表面1との接地圧力が増大するので、而して負圧シール部材6と物体表面1との間の摩擦力が増大され、該摩擦力の増大に起因して装置の走行機能が阻害される。
しかしながら、第2の発明の装置をその場で旋回させる場合において、該旋回させたい方向と反対方向に負圧シール部材6が回転駆動するように構成すれば、該装置の走行機能すなわち旋回機能が阻害されることはない。
また、第2の発明の装置をカーブ走行させる場合において、該装置の走行方向に向かって左方向にカーブさせる場合には、図1において負圧シール部材6を時計方向に回転駆動させ、該装置の走行方向に向かって右方向にカーブさせる場合には、図1において負圧シール部材6を反時計方向に回転駆動させるように構成すれば、該装置の走行機能すなわちカーブ走行機能が阻害されることはない。
【0018】
以上に本発明の装置の好適実施例について説明したが、本発明の装置は該好適実施例の他にも特許請求の範囲に従って種々実施例を考えることができる。
なお、以上の本発明の装置の好適実施例についての説明は、本発明の装置が大気中の物体表面上に在るものとして説明を行ったが、本発明の装置は水中においても適用されることができる。かかる場合の負圧生成手段については、真空ポンプに代えて水ポンプや水駆動エゼクタを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
かくの通りの表面吸引清掃装置は、物体表面に負圧を利用して吸着し、且つ物体表面に沿って移動しながら、物体表面に付着した汚れ、錆、劣化したコーティングあるいは水棲生物などの異物を除去し、且つ該除去された異物を吸引回収するなどの作業を行う、吸引機能を備える清掃装置として好都合に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に従って構成された装置の好適実施例を示す平面図。
【図2】図1に示す装置における右側面図。
【図3】図1に示す装置を物体表面の方向から見た背面図。
【図4】図1に示す装置におけるA−Aの断面図。
【図5】図4に示す装置におけるB−Bの拡大部分断面図。
【図6】図1に示す装置におけるC−Cの断面図。
【図7】図4に示す装置におけるD部の拡大断面図。
【符号の説明】
【0021】
物体表面1
装置本体2
円筒箱部材201
四角箱部材202
円筒部材203
ブラケット204
回転ホース継手部材3
サクションホース継手301
落下防止金具302
玉軸受4
回転体5
回転円板部材501
円筒部材502
スプロケット部材503
弁穴504
負圧シール部材6
固定部601
連結部602
接触部603
延長部604
清掃するための材料605
ベルクロテープ606
小孔107
補助シール部材7
減速機付エアモータ8
スプロケット9
ローラチェーン10
駆動車輪11
玉軸受111
固定軸12
スプロケット13
減速機付電動モータ14
スプロケット15
ローラチェーン16
圧力調整手段17
サクションホース18
弁板171
ロッド172
ロッドガイド173
圧縮コイルバネ174
第1の減圧領域21
第2の減圧領域22

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を吸引するための負圧生成手段に連結された装置本体と;
該装置本体に回転自在に装着され、その回転軸が物体表面と交差している回転体と;該回転体を回転駆動する回転駆動源と;二つの開口部を備え全体の形状が環状を成した負圧シール部材において、一方の開口部には該回転体に装着される固定部が形成され、他方の開口部には該物体表面に最初に接触する接触部と該接触部から更にその外側に延びた延長部が形成され、また、該一方の開口部と該他方の開口部との間には両開口部を連結する連結部が形成されており、而して該装置本体、該回転体及び該物体表面と協働して第1の減圧領域を規定する負圧シール部材と;二つの開口部を備え全体の形状が環状を成した補助シール部材において、一方の開口部は該回転体に固定され、他方の開口部は該負圧シール部材の該延長部と密着しており、また、該一方の開口部と該他方の開口部との間には両開口部を連結する連結部が形成されており、而して該回転体及び該負圧シール部材と協働して第2の減圧領域を規定する補助シール部材と;該第2の減圧領域の圧力を、該物体表面を包囲する流体の圧力よりも低い圧力に維持し、且つ、該第2の減圧領域の圧力を、該第1の減圧領域の圧力よりも高い圧力に維持する圧力調整手段と;該装置本体と該物体表面との距離を任意の距離に維持し、かつ該装置本体を該物体表面に沿って移動させるための移動手段、とを具備する表面吸引清掃装置において;
該圧力調整手段として、圧力調整弁を該回転体に具備している、ことを特徴とする表面吸引清掃装置。
【請求項2】
該第1の減圧領域の内部に該移動手段を具備しており、
該移動手段は、1式あたり少なくとも2個の駆動車輪から成る2式の駆動車輪群、もしくは2式の無端軌条から構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
該負圧シール部材において、該他方の開口部に研磨部材、ブラシ部材、繊維部材などの該物体表面を清掃するための材料が装着されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の装置。
【請求項4】
該補助シール部材において、該他方の開口部が該負圧シール部材の該延長部と密着する部分は融着されて一体化されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の装置。
【請求項5】
該装置本体に回転自在に装着され、その回転軸が物体表面とほぼ垂直に交差しているサクションホース継手部材を具備している、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の装置。
【請求項6】
流体を吸引するための負圧生成手段に連結された装置本体と;
該装置本体に回転自在に装着され、その回転軸が物体表面と交差している回転体と;該回転体を回転駆動する回転駆動源と;二つの開口部を備え全体の形状が環状を成した負圧シール部材において、一方の開口部には該回転体に装着される固定部が形成され、他方の開口部には該物体表面に最初に接触する接触部と該接触部から更にその外側に延びた延長部が形成され、また、該一方の開口部と該他方の開口部との間には両開口部を連結する連結部が形成されており、而して該装置本体、該回転体及び該物体表面と協働して減圧領域を規定する負圧シール部材と;該装置本体と該物体表面との距離を任意の距離に維持し、かつ該装置本体を該物体表面に沿って移動させるための移動手段、とを具備する表面吸引清掃装置において;
該移動手段を利用して装置をその場で旋回させる場合において、装置を旋回させたい方向と反対方向に負圧シール部材が回転駆動するように構成した、ことを特徴とする表面吸引清掃装置。
【請求項7】
該移動手段を利用して装置をカーブ移動させる場合において、装置の走行方向に向かって左方向にカーブさせる場合には負圧シール部材を、物体表面から離れた位置から装置を見て時計方向に回転駆動させ、装置の走行方向に向かって右方向にカーブさせる場合には負圧シール部材を、物体表面から離れた位置から装置を見て反時計方向に回転駆動させるように構成した、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
該減圧領域の内部に該移動手段を具備しており、
該移動手段は、1式あたり少なくとも2個の駆動車輪から成る2式の駆動車輪群、もしくは2式の無端軌条から構成されている、ことを特徴とする請求項6乃至請求項7に記載の装置。
【請求項9】
該負圧シール部材において、該他方の開口部に研磨部材、ブラシ部材、繊維部材などの該物体表面を清掃するための材料が装着されている、ことを特徴とする請求項6乃至請求項8に記載の装置。
【請求項10】
該装置本体に回転自在に装着され、その回転軸が物体表面とほぼ垂直に交差しているサクションホース継手部材を具備している、ことを特徴とする請求項6乃至請求項9に記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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