説明

表面弾性波を用いて動作するトランスバーサルフィルタ

圧電基板と、該基板上に配置され、第1のトランスデューサ1および第2のトランスデューサ2が配置された音響トラックとを有する、表面弾性波を用いて動作するトランスバーサルフィルタが記載される。各トランスデューサ1、2は電極フィンガを有する。関数9は、第2のトランスデューサ2内の異なる極性の電極フィンガの重なり長さの重み付けを特徴付け、1つのハーフメインローブ23と少なくとも1つのサイドローブ24、25を有する。ローブ23、24、25の振幅は第1のトランスデューサに向かう方向において単調に減少する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
トランスバーサルフィルタは、例として特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】米国特許第5,808,524号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
達成すべきひとつの目的は、チップエリアが縮小されたトランスバーサルフィルタを記載することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
表面弾性波を用いて動作するトランスバーサルフィルタが記載される。トランスバーサルフィルタは圧電基板と、該基板上に配置され、第1のトランスデューサおよび第2のトランスデューサが配置された音響トラックとを有するSAWチップ内に実装される。SAWは表面弾性波(Surface Acoustic Wave)の省略形である。各トランスデューサは電極フィンガを有する。第2のトランスデューサ内の異なる極性の電極フィンガの重なる長さの重み付けを特徴付ける関数が、カットオフメインローブと少なくとも1つのサイドローブを有する。ローブの振幅は、第1のトランスデューサに向かう方向において単調に減少する。カットオフメインローブは好ましくは対称メインローブの半分に相当する。
【0005】
例として、第2のトランスデューサは、インパルス応答が対称である重み付けされたトランスデューサを半分にすることにより得ることができる。波が損失なしで反射する場合、例えばチップエッジ上では、このことにより同様に、ハーフトランスデューサに対称なインパルス応答をもたらす。
【0006】
それゆえ、反射器上の波の反射の結果として、重み付けされたトランスデューサの長さが半分にされ、したがってチップ領域の著しい減少を達成することを可能にすることが判明している。さらに、フィルタのパスバンドにおける挿入損失を約3dB減少させることができる。
【0007】
基本的にチップエッジ上の損失なしで反射されてもよいタイプの波が、トランスバーサルフィルタで用いられる。例として、剪断波の場合が挙げられる。
【0008】
さらなる特徴によれば、圧電基板と、該基板上に配置され、第1のトランスデューサおよび第2のトランスデューサが配置された音響トラックとを有する、表面弾性波によって動作するトランスバーサルフィルタが記載される。第2のトランスデューサは横断方向において少なくとも2つのサブトランスデューサに分かれている。少なくとも1つのサブトランスデューサは、少なくとも1つの他のサブトランスデューサに対して横方向に(すなわち、長手方向に)ずれている。長手方向とは、音響トラックにおいて励起される波が伝播する方向である。横断方向とは、長手方向に直角な方向である。
【0009】
対称なインパルス応答を有するフィルタが、対称な重み付けをされたトランスデューサまたは半分の重み付けをされたトランスデューサにより生成されてもよい。しかしながら、例えば、群遅延時間歪または非対称増幅形を達成することを可能にするように、多くの応用例が非対称インパルス応答を必要とする。このことは、チップエッジ反射を使用した構成要素においてもまた達成されうる。この目的のために、重み付けされたトランスデューサが、横断方向において、少なくとも1つの同相サブトランスデューサと、少なくとも1つの直角位相サブトランスデューサとに分かれている。同相サブトランスデューサは、このトランスデューサにおいて励起されて反射器において反射される波が2πnの位相のずれを有する、サブトランスデューサである。直角位相サブトランスデューサは、このトランスデューサにおいて励起されて反射器において反射される波が(2n+1)πの位相のずれを有する、サブトランスデューサである。2つのサブトランスデューサは互いに対して波長の4分の1、正確には、λ/4+nλ(n=0、1、2・・・)だけずれている。
【0010】
反射器として提供されるチップエッジは、すべての変形例において、横断方向に延伸する適切な深さの穴(trench)に置き換えることができる。好ましくは、穴の深さは波長の少なくとも半分である。
【0011】
好ましくは、第1のトランスデューサは、第2のトランスデューサと、光沢のある材料からなるくさびによって形成された整合負荷(独語でWellensumpf)、すなわち音響減衰領域との間に配置される。光沢のある材料からなるくさびによって形成された整合負荷は、斜めのチップエッジまたは他の適切な手段に置き換えるか、それらで補完することができる。
【0012】
好ましくは、第2のトランスデューサが入力トランスデューサとして、第1のトランスデューサが出力トランスデューサとして提供されるか、またはその逆に、第1のトランスデューサが入力トランスデューサとして、第2のトランスデューサが出力トランスデューサとして提供される。入力トランスデューサ内で生成された弾性波のある部分は出力トランスデューサの方向へと進み、その中で、フィルタの所定の伝達関数に対応するインパルス応答を生成する。インパルス応答は時間信号であり、すなわちパルスシーケンスである。
【0013】
インパルス応答は入力トランスデューサ(すなわち第2のトランスデューサ)内で生成される波形に影響される。波形は入力トランスデューサ内の重なり関数の適切な重み付けによって調整されてもよい。重なり関数は長手方向座標の関数として、隣接する異なる極性の電極フィンガの間の重なる長さを示す。各トランスデューサ内の最大の重なる長さはこのトランスデューサの開口としてみなされる。
【0014】
半分にされた第2のトランスデューサの場合、インパルス応答のある部分は第2のトランスデューサ内に物理的に存在する重なり関数に影響され、インパルス応答の他の部分は「反射器のミラーリング」の結果として仮想的に存在する重なり関数に影響される。このことは、一方ではインパルス応答の実数成分に、他方ではインパルス応答の虚数成分にあてはまる。
【0015】
それゆえ、反射器は、重なり重み関数の対称的な、または反対称的な仮想的連続に役立つ。第2のトランスデューサと反射器の間の距離、すなわち励起波と反射波の行路差が、今や、対称的なインパルス応答か反対称的なインパルス応答のいずれが達成されるかを決定する。
【0016】
好ましくは、トランスバーサルフィルタは、定常波が形成される反響領域を全く有さない。
【0017】
好ましくは、各トランスデューサは、交代するシーケンス内に配置された異なる極性の電極フィンガを有する。第1のトランスデューサの各電極フィンガの幅は、基本的に波長の4分の1である。第2のトランスデューサの各電極フィンガは、スプリットフィンガの形態である。
【0018】
好ましくは、第2のトランスデューサは第1のトランスデューサとは反対の側で音響反射器に隣接する。フィルタの通過周波数で反射器の方向に第2のトランスデューサを通る弾性波が、反射器で基本的に全体的に内側へ反射するように、反射器と第2のトランスデューサは互いに対して位置合わせされる。
【0019】
対称インパルス応答を生成するように、第2のトランスデューサにおいて励起された波と比較して適切に選ばれた行路差によって、反射した弾性波が位相ずれしていないか、または2πの整数倍の位相ずれをするような一変形例が与えられる。反射器と、第2のトランスデューサの端部において反射器に面するフィンガとの間の最小距離は、この場合d/2+nλ/2であり、ここでdは第2のトランスデューサの各スプリットフィンガの2つのサブフィンガの間の最小距離であり、nは整数であり、λはトランスバーサルフィルタのパスバンドの周波数における波長である。例として、第2のトランスデューサにおけるメタライゼーション比、すなわちメタライゼーションされた表面積の割合が0.5の場合、dはλ/8となる。
【0020】
相互に面する2つのフィンガの縁の間の距離は、これらのフィンガの間の最小距離とみなされる。このことはまた、第2のトランスデューサの端部フィンガに、およびチップエッジに対応するように当てはまる。
【0021】
中心において、例えばスプリットフィンガの2つのサブフィンガの間で、対称重み関数を有するようにトランスデューサを切ることによって、第2のトランスデューサが生成される。この変形例において反射器に面する第2のトランスデューサの端部におけるフィンガは、スプリットフィンガのサブフィンガに相当する。その際、このスプリットフィンガの他のサブフィンガは仮想的に存在するのみである。
【0022】
別の方法として、トランスデューサは対称重み付け関数を有するように2つのスプリットフィンガの間で切られてもよい。この変形例において反射器に面する第2のトランスデューサの端部におけるフィンガは、現実に存在するスプリットフィンガのサブフィンガに相当する。
【0023】
1つの変形例において、反対称インパルス応答は、第2のトランスデューサにおいて励起される波と比較して適切に選ばれた行路差により、πまたは(2n−1)πの位相ずれを有する反射された弾性波によって生成される。反射器と第2のトランスデューサの端部において反射器に面するフィンガとの間の距離は、この場合約d/2+(2n−1)λ/4である。
【0024】
例として、基板の縁によって、または基板内に形成され比較的急勾配の側壁を有する溝によって、反射器が形成されてもよい。好ましくは、基板または溝の縁は、第2のトランスデューサの電極フィンガに基本的に平行に延びる。
【0025】
例として、基板の表面の溝はドライエッチング製法により生成されてもよい。チップの表面で急勾配の縁を有する十分深い穴での反射が、チップエッジでの反射の代わりに用いられる場合、長方形ではないチップもまた基板として用いることができる。エッチングにより反射位置を定めることは、位置がリソグラフィ処理の正確さによって決定されるという利点を有する。この場合には、入力トランスデューサの負荷での多数の反射によって再生成される波のみが、出力トランスデューサを通って再び出力されるため、光沢のある材料からなるくさびで形成された整合負荷に対する要件が著しく緩和される。
【0026】
一変形例では、第2のトランスデューサにおける電極フィンガの重み付けは、基本的に関数sin(x)/xの正の要素に従う。
【0027】
有利な一変形例では、第2のトランスデューサは少なくとも2つのサブトランスデューサへと横断方向で分かれる。少なくとも1つのサブトランスデューサは少なくとも1つの他のサブトランスデューサに対して長手方向でずれる。好ましくは、サブトランスデューサの間の長手方向のずれは、基本的に波長の4分の1である。
【0028】
一変形例では、第2のトランスデューサは第1のサブトランスデューサおよび2つの第2のサブトランスデューサに横断方向で分かれ、第1のサブトランスデューサは第2のサブトランスデューサの間に配置される。第1のサブトランスデューサは、位相ジャンプ(独語でPhasensprung)が基本的に全くない内部全反射が反射器上で発生するように、反射器に対して位置合わせされる。各第2のサブトランスデューサは、基本的に(2n−1)πの位相ジャンプを伴う内部全反射があたかも反射器上で発生するかのように、反射器に対して位置合わせされる。
【0029】
一変形例では、第3のトランスデューサが提供され、それは第1の音響トラックに対して斜め方向に位置合わせされる。好ましくは、第3のトランスデューサはまた、反射器として提供される基板の縁に合わさるように、反射器に隣接する。
【0030】
第3のトランスデューサ内で励起される波は、第1のトランスデューサ内に到達するように基板の縁で屈折する。
【0031】
一変形例では、第3のトランスデューサによって伝えられ反射器によって屈折する波が、第2のトランスデューサ内で生成され所定の時間ウインドウの外側へと続く信号を少なくとも部分的に打ち消すように、第3のトランスデューサが位置合わせされる。
【0032】
屈折の効果を補償するために、第2のトランスデューサ内で生成される波の波形を、入力トランスデューサである第2のトランスデューサによって修正することができる。この目的のために、第2のトランスデューサは複数の、好ましくは個別のサブトランスデューサへと分かれてもよく、それらサブトランスデューサは互いに伝導的に接続される。各場合において、2つのサブトランスデューサは長手方向に互いに平行に配置されてもよい。各場合において、2つのサブトランスデューサは横断方向に互いに平行に配置されてもよい。それらはまた、電気的に直列に接続されてもよい。あるいは、電気的に並列に接続されてもよい。これに関連して、独国特許第19922124号明細書が参照される。
【0033】
好ましくは、トランスバーサルフィルタ内のすべてのトランスデューサは内部反射がなく、すなわちトランスデューサのフィンガ上での弾性波の反射がない。このトランスデューサの電極上に配置された、例えば電気的絶縁層により、通常のフィンガトランスデューサの場合には特に、無反射が達成される。この目的のためにはSiO層が特に好ましい。各トランスデューサ内のスプリットフィンガの使用もまた無反射につながる。
【0034】
特定のフィルタおよびその有利な改良が、原寸通りではない概略図を参考にして以下の文において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】対称なインパルス応答を有するトランスバーサルフィルタを示す図である。
【図2】反対称なインパルス応答を有するトランスバーサルフィルタを示す図である。
【図3】長手方向にずれた2つのサブトランスデューサを含む、重み付けされたトランスデューサを有するトランスバーサルフィルタを示す図である。
【図4】さらに、斜めに延びるトランスデューサを有する、図3に示されたトランスバーサルフィルタを示す図である。
【図5】反射器として提供される溝を有するトランスバーサルフィルタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
トランスバーサルフィルタの一例が図1において説明される。フィルタは圧電基板6を有する。音響トラックは基板6上に配置される。第1のトランスデューサ1および第2のトランスデューサ2がトラック内に配置される。トラックは、光沢のある材料からなるくさびによって形成された整合負荷の形態の領域4によって、第1のトランスデューサの側と隣接する。第1のトランスデューサ1は、第2のトランスデューサ2と、光沢のある材料からなるくさびによって形成された整合負荷の形態の領域4との間に配置される。
【0037】
音響トラックは音響反射器61によって第2のトランスデューサ2の側と隣接する。図1に示された変形例においては、反射器61は基板6の縁によって形成され、図5に示された変形例においては、反射器61は基板6に形成された溝の形態である。
【0038】
図5を参照すると、第1のトランスデューサは互いに係合する第1および第2の電極フィンガ11、12を有する。好ましくは、第1のトランスデューサは通常のフィンガトランスデューサの形態である。このことは、極性が異なる電極フィンガの間で一方のフィンガの中心から他方の中心まで測定した距離が、フィルタの通過周波数における波長の半分であり、フィンガの幅が基本的に波長の4分の1であることを意味する。
【0039】
図5に示された変形例では、第2のトランスデューサはスプリットフィンガを有する。この場合、各場合の各スプリットフィンガは同じ極性の2つの隣接するサブフィンガ81、82を有するか、1つのスプリットフィンガを一緒に形成する同じ極性のサブフィンガ81、82を有する。
【0040】
第2のトランスデューサに重なり関数が重み付けされる。重なり重み関数9は1つのハーフメインローブ23、複数のサイドローブ24、25を有し、ハーフメインローブのカットオフ側は反射器のほうに、または基板の縁61へと向く。
【0041】
第2のトランスデューサ2内で励起される弾性波の一部分は第1のトランスデューサ1の方向に進む。弾性波の他の部分は正反対の方向、すなわち反射器61の方向に進み、この反射器上で反射される。
【0042】
各スプリットフィンガのサブフィンガ81、82の間の距離dは、これらのサブフィンガの相互に向かい合う縁の間で測定される。第2のトランスデューサ2の端部電極フィンガ83と反射器61の間の距離7は、一変形例ではd/2である。反射器61上で反射した波は、本来の励起された波に対して0°の位相のずれを有する。このことは対称なインパルス応答をもたらす。この変形例は図1に概略的に記載されている。
【0043】
第2のトランスデューサ2の端部電極フィンガ83と反射器61との間の距離7は、さらなる一変形例ではd/2+λ/4である。反射器61上で反射された波は、本来の励起された波に対して180°の位相のずれを有する。このことは反対称なインパルス応答をもたらす。この変形例は図2に概略的に記載されている。
【0044】
図3は、第2のトランスデューサ2が横断方向に2つのサブトランスデューサ21、22に分かれている、トランスバーサルフィルタの変形例を示す。第1のサブトランスデューサ21は、基本的に図1で説明された第2のトランスデューサ2と同様の方法で実装され、すなわち重み付けされ、対称なインパルス応答を生成するように構成される。第2のサブトランスデューサ22は、基本的に図2で説明された第2のトランスデューサ2と同様の方法で実装され、すなわち重み付けされ、反対称なインパルス応答を生成するように構成される。第2のサブトランスデューサ22は第1のサブトランスデューサ21と比較して、長手方向に波長の4分の1だけずれている。
【0045】
分かれた第2のトランスデューサ2は、上のトラック内に、対称なインパルス応答を生成する成分を有し、下のトラック内に、チップエッジに対してλ/4だけずれているために反対称なインパルス応答を生成する成分を有する。フィルタの設計の間、互いに独立してフィルタの伝達関数の振幅および位相を設定することが、それゆえ可能である。2つの音響トラックの使用の結果としてもたらされる重み付けの損失を最小化するために、所定の位相の伝達関数が得られるまで上のトラックの開口成分が増大させられる。
【0046】
一変形例では、第2のトランスデューサ2は3つのサブトランスデューサに分けられてもよい。対称なインパルス応答を生成するのに適したサブトランスデューサは好ましくは中央のトラックに実装され、反対称なインパルス応答を生成するのに適したサブトランスデューサは好ましくは2つの端のトラックそれぞれに実装される。
【0047】
図4は、波が反射器61に反射するときの回折の影響を補償することができるトランスバーサルフィルタを示す。
【0048】
チップエッジ上での反射後にのみ第1のトランスデューサ1に波が届く、少なくとも1つのさらなるトランスデューサが、この目的には特に有利である。このことは、トランスデューサ1、2の音響トラックの外に配置され、基板の縁に対して所定の角度で波を発する、例えば第3のトランスデューサ3により達成されうる。
【0049】
この場合、図3に示されたトランスデューサ装置に加えて、フィルタは第3のトランスデューサ3も有する。第3のトランスデューサ3上の音響トラックは基板の縁に対して斜め向きであり、第1および第2のトランスデューサ1、2が配置される音響トラックに対して斜め向きである。第3のトランスデューサ3の適切な配置構造によって、特に第1のトランスデューサ1の方向にそれをずらすことで、遅延信号の機能を果たす再生の影響をトランスバーサルフィルタにおいて補償することが可能となる。遅延信号とみなされる信号は基板上に物理的に存在する重なり重み関数には対応せず、仮想的に存在する重なり重み関数に対応する。遅延信号はそれゆえ、重なり重み関数の適切な配置によって損失が補償されうるタイムウインドウの外側に位置する。それにもかかわらず、これらの望ましくない影響は出力トランスデューサ1の方向に第3のトランスデューサ3の位置をずらすことによって補償される。特にこのことにより、電源インピーダンスに関する電気信号の反射によって発生し遅延信号をもたらす再生の影響を補償することが可能となる。
【0050】
例として、第3のトランスデューサ3は標準のフィンガトランスデューサまたはスプリットフィンガトランスデューサである。
【0051】
回折の影響は、並列にまたは直列に電気接続された好ましくは個別の複数のトランスデューサに、重み付けされたトランスデューサ2を分けることにより補償されうる。基板エッジ上での損失は小さく、第3のトランスデューサ3の必要はない。
【符号の説明】
【0052】
1 第1のトランスデューサ
11、12 第1のトランスデューサの電極フィンガ
2 第2のトランスデューサ
21 第2のトランスデューサの第1のサブトランスデューサ
22 第2のトランスデューサの第2のサブトランスデューサ
23 メインローブ
24、25 サイドローブ
3 第3のトランスデューサ
4 音響減衰領域
6 圧電基板
61 音響反射器
7 距離
81、82 第2のトランスデューサのスプリットフィンガのサブフィンガ
83 第2のトランスデューサの端部の電極フィンガ
9 重み関数
d 各スプリットフィンガのサブフィンガ81、82間の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板(6)と、該基板上に配置され、第1のトランスデューサ(1)および第2のトランスデューサ(2)が配置された音響トラックとを有し、
各トランスデューサ(1、2)が電極フィンガを有し、
第2のトランスデューサが、異なる極性を有する電極フィンガの重なる長さの重み付けを特徴付ける重み関数(9)によって重み付けされ、
重み関数がカットオフメインローブ(23)と少なくとも1つのサイドローブ(24、25)とを有し、
ローブ(23、24、25)の振幅が第1のトランスデューサに向かう方向において単調に減少する、
表面弾性波を用いて動作するトランスバーサルフィルタ。
【請求項2】
各トランスデューサ(1、2)が交互に配置された異なる極性の電極フィンガを有し、
第1のトランスデューサ(1)内の各電極フィンガの幅が、基本的に波長の4分の1であり、
第2のトランスデューサ(2)内の各電極フィンガが、スプリットフィンガの形態である、
請求項1に記載のトランスバーサルフィルタ。
【請求項3】
第2のトランスデューサ(2)が第1のトランスデューサ(1)とは反対の側で音響反射器(61)に隣接する、
請求項1または2に記載のトランスバーサルフィルタ。
【請求項4】
反射器(61)および第2のトランスデューサが、フィルタの通過周波数で反射器の方向に第2のトランスデューサを通過する弾性波が、反射器(61)上で基本的に内部全反射するように、位置合わせされる、
請求項3に記載のトランスバーサルフィルタ。
【請求項5】
第2のトランスデューサ(2)および反射器(61)が、対称なインパルス応答がフィルタ内で達成されるように、互いに対して位置合わせされる、
請求項3または4に記載のトランスバーサルフィルタ。
【請求項6】
第2のトランスデューサ(2)および反射器(61)が、反対称なインパルス応答がフィルタ内で達成されるように、互いに対して位置合わせされる、
請求項3または4に記載のトランスバーサルフィルタ。
【請求項7】
反射器(61)と、第2のトランスデューサ(2)の端部で該反射器に面するフィンガとの間の距離がd/2+nλ/2であり、
dが第2のトランスデューサの各スプリットフィンガの2つのサブフィンガ(81、82)の互いに向き合う縁の間の距離であり、nが整数であり、λがトランスバーサルフィルタのパスバンドの周波数における波長である、
請求項3から5のいずれか一項に記載のトランスバーサルフィルタ。
【請求項8】
反射器(61)と、第2のトランスデューサの端部で該反射器に面するフィンガとの間の距離がd/2+(2n−1)λ/4であり、
dが第2のトランスデューサ(2)の各スプリットフィンガの2つのサブフィンガの間の最小距離であり、nが整数であり、λがトランスバーサルフィルタのパスバンドの周波数における波長である、
請求項3、4、6のいずれか一項に記載のトランスバーサルフィルタ。
【請求項9】
反射器(61)が基板の縁によって形成され、該縁が第2のトランスデューサ(2)の電極フィンガに基本的に平行に延びる、
請求項3から8のいずれか一項に記載のトランスバーサルフィルタ。
【請求項10】
反射器(61)が溝によって形成され、該溝が基板(6)内に形成されて第2のトランスデューサ(2)の電極フィンガに基本的に平行に延びる、
請求項3から8のいずれか一項に記載のトランスバーサルフィルタ。
【請求項11】
第2のトランスデューサ内の電極フィンガ(81、82)の重み関数が、基本的に関数sin(x)/xの正の要素に従う、
請求項1から10のいずれか一項に記載のトランスバーサルフィルタ。
【請求項12】
第1のトランスデューサ(1)が第2のトランスデューサ(2)と音響減衰領域(4)との間に配置された、
請求項1から11のいずれか一項に記載のトランスバーサルフィルタ。
【請求項13】
第2のトランスデューサ(2)が、横断方向で少なくとも2つのサブトランスデューサ(21、22)に分かれ、
少なくとも1つのサブトランスデューサ(22)が、少なくとも1つの他のサブトランスデューサ(21)に対して長手方向でずれている、
請求項1から12のいずれか一項に記載のトランスバーサルフィルタ。
【請求項14】
サブトランスデューサ(21、22)の間の長手方向のずれが、基本的に波長の4分の1である、
請求項13に記載のトランスバーサルフィルタ。
【請求項15】
第2のトランスデューサが第1のサブトランスデューサと2つの第2のサブトランスデューサとに横断方向で分かれ、
第1のサブトランスデューサが第2のサブトランスデューサの間に位置し、
位相ジャンプが基本的に全くない内部全反射が反射器(61)上で発生するように、第1のサブトランスデューサが反射器(61)に対して位置合わせされ、
基本的に180°の位相ジャンプを伴う内部全反射が反射器(61)上で発生するように、各第2のサブトランスデューサが反射器(61)に対して位置合わせされる、
請求項13に記載のトランスバーサルフィルタ。
【請求項16】
第1の音響トラックに対して斜め方向に位置合わせされた第3のトランスデューサ(3)を有し、
第3のトランスデューサ(3)が反射器(61)に隣接し、
第3のトランスデューサ(3)内で励起される波が、第1のトランスデューサ(1)内に到達するように反射器(61)上で屈折する、
請求項13から15のいずれか一項に記載のトランスバーサルフィルタ。
【請求項17】
第3のトランスデューサ(3)によって伝えられ反射器(61)上で屈折する波が、第2のトランスデューサ(2)内で生成され所定のタイムウインドウの外側へと続く信号を少なくとも部分的に打ち消すように、該第3のトランスデューサ(3)が位置合わせされる、
請求項16に記載のトランスバーサルフィルタ。
【請求項18】
圧電基板(6)と、該基板上に配置され、第1のトランスデューサ(1)および第2のトランスデューサ(2)が配置された音響トラックとを有し、
第2のトランスデューサ(2)が横断方向に少なくとも2つのサブトランスデューサ(21、22)に分かれ、
少なくとも1つのサブトランスデューサ(22)が、少なくとも1つの他のサブトランスデューサ(21)に対して横方向にずれている、
表面弾性波を用いて動作するトランスバーサルフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−530687(P2010−530687A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512657(P2010−512657)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057504
【国際公開番号】WO2008/155298
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS  AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】