説明

表面改質装置および表面改質方法

【課題】表面改質ガス中の、改質化合物の混合比率を容易に制御できる表面改質装置および表面改質方法を提供する。
【解決手段】本発明の表面改質装置10は、金属原子、半金属原子、または非金属原子、及び有機基を有し固体物質Sの表面を改質する改質化合物を収容するとともに、改質化合物を液体状態から気体状態に気化する気化室12と、液体状態の改質化合物が含まれる気化室12の液相13中に、燃焼性のガスをバブリングして導入するガス導入部16と、気体状態の改質化合物と燃焼性のガスとを含む表面改質ガス、及び酸素を含むガスを混合して燃料ガスとする混合室18と、気化室12から表面改質ガスを混合室18に移送する移送部17と、混合室18に接続され燃料ガスの火炎を固体物質Sの表面に吹付ける噴射部19と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料、金属、セラミック等の固体物質の表面を改質する表面改質装置および表面改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンゴムやポリエチレン樹脂等の高分子、金属、セラミック等を材料とする固体物質の表面は、他の部材の接着、塗料の塗装、印刷などの表面処理が困難な場合がある。
そこで、従来から、固体物質の表面を改質して、接着、塗装、印刷などの表面処理を容易なものとする表面改質装置が検討されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1には、固体物質の表面を改質する改質剤化合物を貯蔵する貯蔵室と、貯蔵室とは別途設けられた改質剤化合物を気体状態とする気化室と、気体状態の改質剤化合物と空気とを含む燃料ガスを噴射する噴射部と、を備える表面改質装置が提案されている。
【0004】
この表面改質装置においては、気化室の気相中に空気を導入して、当該空気と気体状態の改質剤化合物とを混合して表面改質ガスとし、この表面改質ガスを含む燃料ガスを噴射部から噴射することにより固体物質の表面の改質が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−50629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されているように、気化室の気相中に空気を導入して空気と気体状態の改質剤化合物を混合すると、改質剤化合物の温度変化により気化量が変化した場合や、改質剤化合物の温度が一定であっても注入する空気の量が変化した場合には、表面改質ガス中の改質剤化合物の比率が変化する。表面改質ガス中の改質剤化合物の比率が変化すると、表面改質ガスの燃焼効率が悪化して、均等で安定した表面改質処理が行えなくなる。
従って、上記のような構成の装置では、表面改質ガスの燃焼効率を向上させるために、表面改質ガス中の改質剤化合物の比率を常に調整する必要があった。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、表面改質ガス中の、固体物質の表面を改質する化合物の混合比率を容易に制御できる表面改質装置および表面改質方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するものとして、本発明は、金属原子、半金属原子、または非金属原子、及び有機基を有し固体表面を改質する改質化合物を収容するとともに、前記改質化合物を液体状態から気体状態に気化する気化室と、液体状態の前記改質化合物が含まれる液相中に、燃焼性のガスをバブリングして導入するガス導入部と、気体状態の前記改質化合物と前記燃焼性のガスとを含む表面改質ガス、及び酸素を含むガスを混合して燃料ガスとする混合室と、前記気化室から前記表面改質ガスを前記混合室に移送する移送部と、前記混合室に接続され前記燃料ガスの火炎を固体物質の表面に吹付ける噴射部と、を備える表面改質装置である。
【0009】
また、本発明は、金属原子、半金属原子、または非金属原子、及び有機基を有し固体物質の表面を改質する改質化合物を液体状態から気体状態に気化する気化室の液相中に、燃焼性のガスをバブリングして導入するバブリング工程と、気体状態の改質化合物と燃焼性のガスとを含む表面改質ガス、および酸素を含むガスを混合して得られる燃料ガスの火炎を固体物質の表面に吹付ける処理工程と、を経る表面改質方法である。
【0010】
本発明においては、燃焼性のガスが、気化室の液相にバブリングにより導入される。つまり、本発明では、燃焼性のガスをバブリングすることにより液体状態の改質化合物が撹拌されて、液相からの改質化合物の気化が促進されるので、気体状態の改質化合物を、常に飽和蒸気圧状態に近づけることができる。また、本発明では、燃焼性のガスと気体状態の改質化合物とを混合するから、気体状態の改質化合物と燃焼性のガスとの混合割合を予め定めた割合とすることができる。その結果、本発明によれば、燃料ガス中の改質化合物の混合比率の制御を容易に行うことができる。
【0011】
本発明は以下の構成であってもよい。
前記気化室における前記燃焼性のガスの濃度を調整する第2のガス導入部を設けてもよい。このような構成とすると、燃焼性のガスと気体状の改質化合物との混合割合を容易に変えることができる。
【0012】
前記気化室に、前記改質化合物が液体状態から気体状態に気化するのを促進する加熱装置を設けてもよい。
本発明ではバブリングにより改質化合物の気化が促進されるため、加熱装置は必須のものではないが、改質化合物として気化しにくいものを使用する場合に、上記のような構成とすると、改質化合物の気化が促進されるので好適である。
【0013】
前記燃料ガスに酸素を供給する酸素供給部を設けてもよい。このような構成とすると、例えば、燃焼効率の悪い改質化合物を用いた場合でも、燃料ガスの燃焼効率を向上させることができる。
【0014】
前記燃料ガスには燃焼調整用の助燃ガスを混合してもよい。このような構成とすると、燃焼効率を調整することができる。
【0015】
前記噴射部は、前記燃料ガスを噴射する第1の噴射部と、燃焼調整用の助燃ガスを噴射する第2の噴射部とが、交互に配されて多重構造をなし、前記第1の噴射部の周縁には前記第2の噴射部が配されていてもよい。
【0016】
このような構成とすると、燃料ガスを噴射する第1の噴射部の周縁に助燃ガスを噴射する第2の噴射部が配されるので、燃料ガスを完全に燃焼することができる。なお、周縁には内周縁および外周縁が含まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、表面改質ガス中の、固体物質の表面を改質する化合物の混合比率を容易に制御できる表面改質装置および表面改質方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1の表面改質装置を説明する模式図
【図2】実施形態2の表面改質装置を説明する模式図
【図3】実施形態3の表面改質装置を説明する模式図
【図4】実施形態4の表面改質装置を説明する模式図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1によって説明する。
本実施形態の表面改質装置10は、図1に示すように、改質化合物を収容・気化する気化室12と、気体状態の改質化合物と燃焼性のガスとを含む表面改質ガスを気化室12から移送する移送部17と、表面改質ガスと酸素を含むガスとを混合して燃料ガスとする混合室18と、燃料ガスの火炎を固体物質Sの表面に吹付ける噴射部19と、を備える。
【0020】
気化室12に収容される改質化合物は、固体物質Sの表面を改質して、塗装、印刷、接着などの処理を行いやすくする作用を有する化合物である。
改質化合物としては、常温(5〜35℃)で液体状のもの、または沸点が200℃以下の低沸点のものを用いるのが好ましく、具体的には、金属原子、半金属原子、または非金属原子に、1以上の有機基が結合した化合物等が用いられる。
【0021】
改質化合物に含まれる金属原子としては、アルミニウム、ハフニウム、インジウム、イリジウム、鉄、ニッケル、ニオブ、鉛、ルテニウム、タンタル、スズ、チタン、バナジウム、ジルコニウム、ベリリウム、カドミウム、クロム、コバルト、金、水銀、レニウム、タリウム、および亜鉛などが挙げられる。改質化合物に含まれる半金属原子としては、ヒ素、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモン、およびシリコン等が挙げられ、改質化合物に含まれる非金属原子としては、リンなどが挙げられる。
【0022】
改質化合物に含まれる有機基としては、カルボニル基(C=O)、アシル基、アルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルフェニル基、アルキルアミノ基、ポリフルオロアルキル基などが挙げられる。本発明で用いる改質化合物には、これらの有機基のうち一種または2種以上のものが含まれている。なお、改質化合物は、これらの有機基以外に、一酸化炭素、ハロゲン、リン化合物、イオウ化合物等の配位子を有していてもよい。
【0023】
アシル基としては、アセチル基、アセチルアセト基などがあげられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、secブトキシ基、tertブトキシ基、等が挙げられる。アルキル基としては、炭素数が1〜6の直鎖、分岐、環状のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。アルケニル基としては、アリル基、プロペニル基、シクロペンタジエニル基等が挙げられる。アルキルフェニル基としてはメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基などがあげられ、フェニル基に結合したアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。アルキルアミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などがあげられる。ポリフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基(−CF)などのアルキル基の水素の一部又は全部をフッ素に置き換えたものが挙げられる。
【0024】
本実施形態で用いられる改質化合物の具体例としては、Al(O−secC、(CHAl、(CAl、(CBe、As(O−C、B(O−CH、B(O−C、B(O−iC、(n−CB(OH)、トリシクロヘキシルボロン[(C13B]、(CBe、(CCd、Cr(C−C、Ge(O−C、Ge(O−nC、Ge(O−tertC、Hf(O−tertC、In(O−CH、エチルシクロペンタジエニル(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム[Ir(C)(C12)]、Fe(CO)、Ni(CO)、Nb(O−C、Nb(O−secC、PO(O−CH、PO(O−C、PO(O−secC、P(O−CH、P(O−secC、Pb(O−iC、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム[Ru(C、Sb(O−nC、Ta(O−C、ジアセチルアセト−ジブトキシスズ[Sn(OC(C]、Ti(O−iC、Ti(O−secC、Ti[N(CH、VO(O−C、Zr(O−tertC等が挙げられる。
これらの改質化合物のうち、PO(O−Cが好ましい。
【0025】
本実施形態においては、改質化合物に、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコールを添加してもよい。アルコールを添加することにより炎色を変えることができ燃焼の良否判定の点で好ましい。アルコールの添加量は、改質化合物とアルコールの合計質量に対して5〜10質量%であるのが好ましい。
【0026】
気化室12には、燃焼性のガスを導入するガス導入部16と、気体状態の改質化合物と燃焼性のガスとを含む表面改質ガスを混合室18へ移送する移送部17と、が取り付けられている。
【0027】
燃焼性のガスを導入するガス導入部16は、燃焼性のガスが収容されている図示左側の第1のガスタンク15から、気化室12内の液体状の改質化合物が含まれる液相13内に至るように設けられている。これにより、燃焼性のガスは、第1のガスタンク15からガス導入部16を経て液相13中にバブリングされるようになっている。燃焼性のガスの導入量は、第1のガスタンク15と気化室12との間に設けた第1の弁15Aを操作することにより制御可能とされる。
【0028】
燃焼性のガスとしては、水素ガス、硫化水素ガス、一酸化炭素、メタン、アセチレン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ジエチルエ−テル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼンなどの炭化水素ガス、およびジボランなどのホウ素化合物などを用いることができる。これらの燃焼性のガスのうち、プロパンガスが好ましい。
【0029】
移送部17は、気化室12の気相14から混合室18まで設けられている。移送部17により混合室18に移送される表面改質ガスの量は、気化室12と混合室18との間に設けた第2の弁17Aにより制御できるようになっている。
【0030】
混合室18には、酸素を含むガスを供給するガス供給部21と、表面改質ガスと酸素を含むガスとを混合してなる燃料ガスを噴射部19に移送する移送管22とが設けられている。
【0031】
ガス供給部21により供給される酸素を含むガスは、図示右側の第2のガスタンク20に収容されており、この第2のガスタンク20と混合室18との間に設けた第3の弁20Aにより供給量が制御されるようになっている。
【0032】
酸素を含むガスとしては、空気や酸素など、酸素を含むものを用いることができる。酸素を含むガス中の酸素濃度は、使用する改質化合物の燃焼効率等を考慮して、設定することが好ましい。
【0033】
噴射部19は混合室18に設けた移送管22の先端に設けられており、この噴射部19で燃焼された燃料ガスの火炎が固体物質Sの表面に吹付けられるようになっている。
【0034】
燃料ガスが吹付けられる固体物質Sを構成する材料としては、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴムなどのゴム類、各種ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂等の高分子材料、アルミニウム、マグネシウム、ステンレス、ニッケル、クロム、タングステン、金、銅、鉄、銀、亜鉛、スズ、鉛等の金属材料、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、石灰、ゼオライト、金、銀、銅、亜鉛、ニッケル、スズ、鉛、半田、ガラス、セラミック等の材料等が挙げられる。固体物質Sは、一種の材料から構成されていてもよいし、二種以上の材料から構成されていてもよい。
【0035】
燃料ガスの吹付けにより改質処理される固体物質Sの形態は、例えば、板状、シート状、フィルム状、テープ状、短冊状、パネル状、紐状などの平面構造を有するものであってもよく、筒状、柱状、球状、ブロック状、チューブ状、パイプ状、凹凸状、膜状、繊維状、織物状、束状等の三次元構造を有するものであってもよく、これらに限定されない。
【0036】
また、固体物質Sの形態は、上記に例示した構造のものと、金属部品、セラミック部品、ガラス部品、紙部品、木部品等とを組み合わせた複合構造体であってもよい。
【0037】
次に本実施形態の表面改質装置10を用いた改質方法について説明する。
まず、第1のガスタンク15に貯蔵された燃焼性のガスを気化室12に導入する。燃焼性のガスは第1のガスタンク15から、ガス導入部16を通って気化室12の液相13中にバブリングにより導入される(バブリング工程)。液相13中に含まれる改質化合物は、燃焼性のガスがバブリングされていないときでも、液体状態から気体状態に変化(気化)するが、燃焼性のガスが気化室12の液相13中でバブリングされることにより、液体状態の改質化合物が撹拌されて気化が促進される。
【0038】
液体状態から気体状態に気化した改質化合物と、バブリングにより導入された燃焼性のガスは、気化室12の気相14に移動する。気化室12の気相14に移動した気体状態の改質化合物および燃焼性のガスは、気化室12の上部に取り付けられた移送部17を通って混合室18の方向へ移送される。
【0039】
混合室18では、第2のガスタンク20からガス供給部21を経て供給された酸素を含むガスと、気体状態の改質化合物および燃焼性のガスを含む表面改質ガスとが混合されて燃料ガスとされる。
【0040】
この燃料ガスは、混合室18に設けた移送管22を通って噴射部19へ移送される。噴射部19では、燃料ガスの燃焼により生じる火炎が固体物質Sの表面に吹付けられて、改質処理が行われる(処理工程)。
【0041】
本実施形態の表面改質装置10により改質処理を施した固体物質Sには、従来は接着に問題のあった異種材料との接着性を向上する効果、濡れ性(親水性)を向上する効果、帯電防止効果などが付与される。すなわち、本実施形態の表面改質装置10により改質処理を行うことにより、固体物質Sを改質し、接着、塗装、印刷などの表面処理を容易なものとすることができるのである。
【0042】
次に本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、燃焼性のガスをバブリングすることにより液体状態の改質化合物が撹拌されて、液相13からの改質化合物の気化が促進されるので、気体状態の改質化合物を、常に飽和蒸気圧状態に近づけることができる。
【0043】
また、本実施形態においては、燃焼性のガスと気体状態の改質化合物とを混合するから、気体状態の改質化合物と燃焼性のガスとの混合割合を予め定めた割合とすることができる。その結果、本実施形態によれば、燃料ガス中の改質化合物の混合比率の制御を容易に行うことができる。
【0044】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図2によって説明する。実施形態1と同じ名称の部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
本実施形態の表面改質装置10では、燃焼性のガスを導入するガス導入部16に加えて、このガス導入部16(第1のガス導入部16)とは別途、第2のガス導入部30が、第1のガスタンク15から気化室12の気相14に至って設けられている。すなわち、第2のガス導入部30の下端は気化室12の液相13の界面よりも上に位置する。
【0045】
第2のガス導入部30においては、第1のガスタンク15と気化室12との間に第4の弁30Aが設けられている。この第4の弁30Aにより第2のガス導入部30から導入される燃焼性のガスの量が制御され、これにより気化室12における燃焼性のガスの濃度を容易に調整することができる。
【0046】
上記以外の構成は実施形態1と同様である。本実施形態によれば、実施形態1と同様の効果に加えて、以下の効果が発揮される。
本実施形態によれば、燃焼性のガスと気体状の改質化合物との混合割合を容易に変えることができる。
【0047】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図3によって説明する。実施形態1と同じ名称の部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
本実施形態の表面改質装置10では、酸素を含むガスを供給するガス供給部21に加え、このガス供給部21とは別途、燃料ガスに酸素を供給する酸素供給部40と、燃焼量を調整する助燃ガスを供給する助燃ガス供給部41とが設けられている。
【0048】
助燃ガス供給部41は、助燃ガスを収容する第3のガスタンク42から噴射部19に至って設けられており、助燃ガス供給部41には第3のガスタンク42から供給される助燃ガスの量を制御する第5の弁41Aが設けられている。助燃ガス供給部41と酸素供給部40とは、第5の弁41Aと噴射部19との間で合流している。なお、酸素供給部40に供給される酸素は第4のガスタンク43に貯蔵されており、酸素の量は第6の弁43Aにより制御される。
助燃ガスとしては、例えばメタン、エタン、ブタンなどの炭化水素ガスなどが挙げられる。
【0049】
また、本実施形態においては、噴射部19として、円形の第1の噴射部44と、第1の噴射部44の外周を包囲する円環状の第2の噴射部45とから構成される多重構造のものを用いている。
【0050】
第1の噴射部44は混合室18から連なる燃料ガスを移送する移送管22に連なっており、その先端から燃料ガスが噴射されるようになっている。第2の噴射部45は、助燃ガス供給部41から供給される助燃ガスと、酸素供給部40から供給された酸素とを含むガスが噴射されるようになっている。
【0051】
上記以外の構成は実施形態1と同様である。本実施形態は、実施形態1と同様の効果に加えて、以下の効果を有する。
本実施形態では、燃料ガスに酸素を供給する酸素供給部40を設けたから、例えば、燃焼効率の悪い改質化合物を用いた場合でも、燃料ガスの燃焼効率を向上させることができる。また、本実施形態によれば、噴射部19は、燃料ガスを噴射する第1の噴射部44と、助燃ガスを噴射する第2の噴射部45とが、その外周を包囲するように交互に配されて多重構造をなしているから、燃料ガスを完全に燃焼することができる。
【0052】
<実施形態4>
次に、本発明の実施形態4を図4によって説明する。実施形態1と同じ名称の部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
本実施形態の表面改質装置10では、酸素を含むガスを供給するガス供給部21に加え、このガス供給部21とは別途、助燃ガスを供給する助燃ガス供給部41が設けられている。
【0053】
助燃ガス供給部41は混合室18と噴射部19との間に設けられた燃料ガスを移送する移送管22と合流するように設けられている。助燃ガス供給部41には第3のガスタンク42から供給される助燃ガスの量を制御する第5の弁41Aが設けられている。
また、本実施形態では、気化室12の底面に気化室12の液相13を暖めるヒーター50(加熱装置に相当)が設けられている。
【0054】
上記以外の構成は実施形態1と同様である。本実施形態は、実施形態1と同様の効果に加えて、以下の効果を有する。
本実施形態によれば、燃料ガスに燃焼調整用の助燃ガスを混合したから、燃焼効率を調整することができる。
ところで、本発明においては、バブリングにより改質化合物の気化が促進されるため、加熱装置は必須のものではないが、改質化合物として気化しにくいものを使用する場合もある。
本実施形態によれば、気化室12にヒーター50が設けられているから、気化し難い改質化合物を用いた場合にも気化が促進される。
【0055】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、表面改質装置として、第2のガス導入部を備えるもの、多重構造の噴射部を備えるもの、ヒーターと助燃ガス導入部を備えるもの、これらを備えないものをそれぞれ示したが、本発明は、これに限定されない。表面改質装置は、第2のガス導入部、多重構造の噴射部、ヒーター、および助燃ガス導入部の全てを備えていてもよいし、これらのうち二種以上のものを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…表面改質装置
12…気化室
13…液相
14…気相
16…ガス導入部
17…移送部
18…混合室
19…噴射部
S…固体物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属原子、半金属原子、または非金属原子、及び有機基を有し固体物質の表面を改質する改質化合物を収容するとともに、前記改質化合物を液体状態から気体状態に気化する気化室と、
液体状態の前記改質化合物が含まれる液相中に、燃焼性のガスをバブリングして導入するガス導入部と、
気体状態の前記改質化合物と前記燃焼性のガスとを含む表面改質ガス、及び酸素を含むガスを混合して燃料ガスとする混合室と、
前記気化室から前記表面改質ガスを前記混合室に移送する移送部と、
前記混合室に接続され前記燃料ガスの火炎を前記固体物質の表面に吹付ける噴射部と、を備える表面改質装置。
【請求項2】
前記気化室における前記燃焼性のガスの濃度を調整する第2のガス導入部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の表面改質装置。
【請求項3】
前記気化室に、前記改質化合物が液体状態から気体状態に気化するのを促進する加熱装置を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面改質装置。
【請求項4】
前記燃料ガスに酸素を供給する酸素供給部を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の表面改質装置。
【請求項5】
前記燃料ガスに、燃焼調整用の助燃ガスを混合することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の表面改質装置。
【請求項6】
前記噴射部は、前記燃料ガスを噴射する第1の噴射部と、燃焼調整用の助燃ガスを噴射する第2の噴射部とが、交互に配されて多重構造をなし、
前記第1の噴射部の周縁には前記第2の噴射部が配されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の表面改質装置。
【請求項7】
金属原子、半金属原子、または非金属原子、及び有機基を有し固体物質の表面を改質する改質化合物を液体状態から気体状態に気化する気化室の液相中に、燃焼性のガスをバブリングして導入するバブリング工程と、
気体状態の改質化合物と燃焼性のガスとを含む表面改質ガス、および酸素を含むガスを混合して得られる燃料ガスの火炎を固体物質の表面に吹付ける処理工程と、を経る表面改質方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−275601(P2010−275601A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130292(P2009−130292)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(507198071)タイムオートマシン株式会社 (4)
【出願人】(593102921)ミズショー株式会社 (8)
【Fターム(参考)】