説明

表面検査用光源およびそれを用いた表面検査装置

【課題】検査面の欠陥を見つけ易く、かつ、検査者が手で持つことのできる大きさでありながらも十分な照射面積を有する表面検査用光源を提供する。
【解決手段】表面検査用光源10を、高圧放電灯12と、内部に高圧放電灯12を収容保持する放電灯収容空間28が形成された放電灯保持部材14とで構成し、発光部16を臨む位置に出光用窓29を設けるとともに、放電灯収容空間28を、発光部16を収容する発光部収容空間30と、出光用窓29の中心および一対の電極24間を通る仮想線CLを中心軸とし、当該仮想線CLを含む断面において、母線BLと、一対の電極24間および母線BLの底面側端を結ぶ直線SLとが成す角度αが常に鈍角である角錐または円錐で形成された反射防止空間34とで構成することにより、上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電灯から放射される光を用いて、自動車の塗装表面等における欠陥の有無を検査するための表面検査用光源に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ディーラーや整備工場、あるいは塗装工場等において、自動車(もちろん、自動車に限られず、飛行機の機体や精密機械のパーツなど、表面欠陥の有無を検査する必要のあるすべてのものを含む。以下同じ。)の表面における欠陥(塗装ムラ、樹脂や金属パーツの成型歪み、傷による凹凸等。)の有無を検査するための光源として、従来から、白熱灯や蛍光灯が使用されている。
【0003】
白熱灯や蛍光灯から放射される光を検査面(例えば自動車の塗装表面)に照射すると、放射された光は、検査面で反射した後、人(例えば、検査者)の目に入ることにより、当該検査面が光って見える。このとき、図5に示すように、検査面に欠陥K(例えば、図示したようなV字状の凹み、もちろん、凹みに限らず、キズ、塗装ムラ、メタリック塗装における光輝材のムラ等も含まれる。)が存在すると、1つの点から放射された光Lが検査面で反射する角度(反射角)は、当該欠陥Kの前後の面(つまり、欠陥Kが存在しない「正常面S」)ではほぼ同じ反射角となって均一な明るさで人の目に映るが、欠陥Kでは、光Lが正常面Sで反射した光とは異なる角度で反射されることから、人の目には、「明るい部分B」中で当該欠陥Kが「暗い部分D」として感取される。
【0004】
このように、検査面に光を照射することにより、当該検査面に欠陥Kが存在すると、欠陥Kと正常面Sとの間で明暗の差(コントラスト)が生じることから、検査面の欠陥Kを見つけることができる。
【0005】
ところが、実際には、検査面の欠陥Kを見つけるのは容易ではなかった。なぜならば、白熱灯や蛍光灯は、線(フィラメント)あるいは面(蛍光面)で発光する発光体であることから、フィラメントや蛍光面上におけるすべての位置から放射された光が、欠陥Kおよびその周辺の正常面Sを照らす光となる。ある点から放射された光Lだけを考えれば、上述したように、十分なコントラストで欠陥Kを把握することができるものの、実際には、図6に示すように、別の点から放射され、先ほどの光Lと交差するような光L’により、欠陥Kおよびその周辺の正常面Sが異なる方向からも照らされるが、この光L’は、光Lとは異なる角度で反射するため、上述したような「暗い部分D」がほとんどなくなり、欠陥Kと正常面S(無欠陥部分)とのコントラストが小さくなってしまうからである。
【0006】
このことは、発光量を増加させて欠陥Kを見つけ易くするためにフィラメントや蛍光面をさらに大きくした場合も同様であり、大きくなったフィラメントや蛍光面上から放射される各光の角度差がさらに大きくなってしまうことから、欠陥Kとの正常面Sとの間のコントラストはさらに小さくなって「発光量を増加させたにも関わらず、欠陥Kが見つけやすくならない」という結果を生じさせていた。
【0007】
このような問題に対応するため、特許文献1では、平行光を使用することが提案されている。すなわち、特許文献1に記載された照明装置1は、図7に示すように、高輝度の発光ダイオード2と、当該発光ダイオード2から放射された光を平行光に変換する集光レンズ3とで構成されている。照明装置1から放射された平行光を検査面に照射することにより、「互いに交差し合う光が放射されて、これらの光が検査面においてそれぞれ異なる角度で反射する」おそれを回避し、欠陥Kと正常面S(無欠陥部分)とのコントラストを大きくすることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−58032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のように平行光を用いて検査面の欠陥Kを調べる場合には別の問題があった。すなわち、平行光を放射する照明装置1の場合、その照射面積は基本的に集光レンズ3と同一(平行光を検査面に直交させた場合)か、それよりもやや大きい程度(平行光を検査面に対して傾けた場合)にしかならない。このため、ある程度広い範囲を照らしたい場合、照明装置1が大きくなりすぎてしまうことから、「検査者が片手で照明装置1を少しずつ動かしながら欠陥を探す」という使用方法ができず、例えば、「大型の(=照射範囲の広い)照明装置1を固定し、検査者自身が少しずつ目線を移動しながら欠陥を探す」というような、検査者にとって負担が大きく、かつ、検査効率の悪い方法を採用せざるを得なかった。逆に、検査者が片手で持つことのできる程度の大きさで照明装置1を構成したときには、照射面積が小さい分、検査に多大な時間を要することになっていた。
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の主たる課題は、白熱灯や蛍光灯を用いた場合に比べて、検査面の欠陥を見つけ易く、かつ、平行光を放射する照明装置に比べて検査者が手で持つことのできる大きさでありながらも十分な広さの照射面積を有する表面検査用光源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載した発明は、
「対向して配置された一対の電極24を内部に有する発光部16を備える高圧放電灯12と、
その内部に前記高圧放電灯12を収容する放電灯収容空間28が形成された放電灯保持部材14とを備える表面検査用光源10であって、
前記放電灯保持部材14には、前記放電灯収容空間28に収容された前記高圧放電灯12の前記発光部16を臨む位置に出光用窓29が設けられており、
前記放電灯収容空間28は、前記発光部16を収容する発光部収容空間30と、前記発光部16を挟んで前記出光用窓29の反対側に形成された角錐状または円錐状の反射防止空間34とを有しており、
前記反射防止空間34を構成する角錐または円錐は、その底面が前記発光部収容空間30に開口するとともに、前記一対の電極24の中心を通る仮想線CLを中心軸とし、前記仮想線CLを含む断面において、当該角錐または円錐の母線BLと、前記一対の電極24の中心および前記母線BLの底面側端を結ぶ直線SLとが成す角度αが常に鈍角であることを特徴とする表面検査用光源10」である。
【0012】
本発明の表面検査用光源10では、高圧放電灯12が放電灯保持部材14内の放電灯収容空間28に収容されており、高圧放電灯12の電極24間に形成されたアークから放射される大量の光の内、出光用窓29を直接通過して外部空間に放出された光で検査面の欠陥Kを調査するものである。
【0013】
本発明の表面検査用光源10によれば、次に述べるように、高圧放電灯12から放射され、放電灯収容空間28を構成する内壁面で反射した後、出光用窓29から外部空間へ放射される光によって欠陥Kと正常面Sとのコントラストが低下するおそれを極小化することができる。
【0014】
この点について詳述すると、例えば図8に示すように、一般的なリフレクタ付き放電灯の場合、高圧放電灯12から放射され、出光方向(=図示しない検査面が存在する方向)と反対の方向に向かう光は、リフレクタX(あるいはリフレクタのように積極的に光を反射させる目的を有するものではないが、光を反射させる物体も含む。)で反射した後、出光方向に向かう光となって検査面を照らす光L’(=反射光L’)となる可能性がある。このような反射光L’が存在すると、当該反射光L’は、高圧放電灯12から直接検査面に向かう光L(=直接光L)に対して「交差する光」となり、折角、点光源から放射された光であるにもかかわらず、従来技術で述べたような白熱灯や蛍光灯と同様に検査面における欠陥Kと正常面Sとのコントラストを小さくする原因となって欠陥Kを見つけるのが困難になるおそれがある。
【0015】
この点、本発明の表面検査用光源10では、図9に示すように、出光方向(=出光用窓29の方向)と反対の方向に向かう光L’は、角錐状または円錐状の反射防止空間34に入光することになる。ここで、反射防止空間34を構成する角錐または円錐は、「その底面が発光部収容空間30に開口するとともに、一対の電極24の中心を通る仮想線CLを中心軸とし、仮想線CLを含む断面において、当該角錐または円錐の母線BLと、一対の電極24の中心および母線BLの底面側端を結ぶ直線SLとが成す角度αが常に鈍角となるように設定されている」ことから、反射防止空間34に入光した光L’は、その内壁面で反射防止空間34の奥(=角錐・円錐の頂点側)に向かって反射していくことになり、光L’が出光用窓29から表面検査用光源10の外部空間に漏れ出して上述のような「交差する光」となるおそれがほとんどなくなる。
【0016】
したがって、本発明の表面検査用光源10によれば、所定の検査面を照射する光を、高圧放電灯12から放射された後、出光用窓29を直接通過して外部空間に出光される光に限定することが可能となり、「点光源から放射された、互いに交差することのない光」のみで検査面を照射することができる。
【0017】
加えて、高圧放電灯12から放射される光は、白熱灯や蛍光灯とは異なり、非常に狭い一対の電極24間(電極間距離は数ミリメートルである)で形成された小さなアークから放射されたものであることから(つまり、高圧放電灯12は、白熱灯や蛍光灯と比べて「点光源」といえることから)、白熱灯や蛍光灯のように、別の点から放射された「交差する光L’」によって欠陥Kと正常面Sとのコントラストが小さくなってしまうおそれを極小化することができる。
【0018】
また、本発明の表面検査用光源10によれば、白熱灯や蛍光灯に比べて単位消費電力量当たりの光放射量が多い高圧放電灯12から放射され、出光用窓29から外部空間へ出射された大量の光で検査面を照らすことにより、十分なコントラストで欠陥Kを把握することができる。
【0019】
さらに、高圧放電灯12から放射される光は1点から拡散する拡散光であるから、出光用窓29の大きさを適宜設定することにより、検査面における照射範囲を大きく(=出光用窓29を大きくする)あるいは小さく(=出光用窓29を小さくする)することができる。
【0020】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した表面検査用光源10に関し、
「前記放電灯収容空間28を構成する内壁面は、光を減衰させる光減衰面である」ことを特徴とする。
【0021】
この表面検査用光源10によれば、高圧放電灯12から放射されて直接出光用窓29から外部空間へ出光されない光L’は、最初に到達した「放電灯収容空間28を構成する内壁面(=光減衰面)」で減衰されてしまい、表面検査用光源10の外部空間に漏れ出して上述のような「交差する光」となるおそれがほとんどない。
【0022】
とりわけ、反射防止空間34に入光した光L’は、当該反射防止空間34の頂点に向かって複数回その内壁面(=光減衰面)で反射して著しく減衰されるので、出光用窓29に向かう光として戻ってくるおそれが極小化される。
【0023】
なお、「光減衰面」には、内壁面に黒色(あるいは濃い色)塗装、目荒らし加工等の「反射低減処理」を施したものの他、放電灯保持部材14の材質が光を減衰させるような地色、あるいは地肌であり特別な「反射低減処理」を施す必要がない面も含まれる。
【0024】
請求項3に記載した発明は、
「前記放電灯保持部材14には、出光方向とは反対側の外部空間および前記放電灯収容空間28を互いに連通する通気孔36が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表面検査用光源10と、
冷却ファン104と、
前記表面検査用光源10を取り付けるための光源取付開口112および前記冷却ファン104を取り付けるための冷却ファン取付開口114が設けられた中空のケーシング102とを備える表面検査装置100」である。
【0025】
本発明の表面検査装置100によれば、表面検査用光源10を発光させたとき、冷却ファン104を用いてケーシング102の内部を負圧とすることにより、外部空間からの空気が表面検査用光源10の出光用窓29を通って放電灯保持部材14の放電灯収容空間28に入る。放電灯収容空間28に入った空気は、発光中の高圧放電灯12で生じた熱を受けて高温となり、然る後、通気孔36を通って出光方向とは反対側の外部空間(すなわち、ケーシング102の内部)に排出され、冷却ファン104によって表面検査装置100の外部空間へ放出される。
【0026】
このように、発光中の高圧放電灯12は、常に外部空間からの空気で冷却されるので、長時間連続的に発光させたとしても、高圧放電灯12が熱による損傷を受けることはない。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、「点光源から放射された、互いに交差することのない光」のみで検査面を照射することができることから、白熱灯や蛍光灯といった「互いに交差する光を出光する光源」を用いた場合に比べて検査面の欠陥を見つけ易く、かつ、平行光を放射する照明装置に比べ、出光用窓の大きさを適宜設定することにより、検査者が手で持つことのできる大きさでありながら十分な広さの照射範囲とすることのできる表面検査用光源を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にかかる表面検査用光源の分解斜視図である。
【図2】本発明にかかる表面検査用光源の断面図である。
【図3】放電灯保持部材の断面図である。
【図4】表面検査用光源を使用した表面検査装置の断面図である。
【図5】点光源から放射された光で検査面を照射したときの概念図。
【図6】白熱灯や蛍光灯から放射された光で検査面を照射したときの概念図。
【図7】平行光で検査面を照射したときの概念図。
【図8】リフレクタ付き放電灯における直接光と反射光との関係を示す図。
【図9】本発明の表面検査用光源における直接光と反射光との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明が適用された表面検査用光源10を、図示実施例に基づいて説明する。図1は、本実施例に係る表面検査用光源10の分解斜視図であり、図2は、同表面検査用光源10の断面図であり、図3は、放電灯保持部材14の断面図(参考のため、高圧放電灯12の輪郭を一点鎖線で描いている。)である。
【0030】
表面検査用光源10は、大略、高圧放電灯12と、放電灯保持部材14とで構成されている。
【0031】
高圧放電灯12は、内部空間16aを有する略球状の発光部16と、当該内部空間16aを封止する一対の円筒状の封止部18と、一対のマウント20とで構成されている(本実施例では、発光部16の両端を封止した両口タイプの高圧放電灯12が使用されているが、もちろん、発光部16の片方端のみを封止した片口タイプの高圧放電灯12を使用してもよい。この場合、一対のマウント20は、1つの封止部18にマウントされることになる。)。
【0032】
マウント20は、それぞれ、封止部18内に埋設された短冊状の金属箔22と、一端が金属箔22の一方端に対して溶接等の方法で電気的に接続され、他端が発光部16の内部空間16aに突設された電極24と、一端が金属箔22の他方端に対して電気的に接続され、他端が封止部18の端面から外部空間に突設された外部リード棒26とで構成されており、一対の電極24の他端は、発光部16の内部空間16aで互いに対向して配置されている。
【0033】
放電灯保持部材14は、その内部に高圧放電灯12を収容して保持するための放電灯収容空間28が形成された部材であり、当該放電灯収容空間28に収容された高圧放電灯12の発光部16を臨む位置に出光用窓29が設けられている。また、放電灯保持部材14は、高圧放電灯12が発光するのと同時に生じる大量の熱によって変形しないような耐熱性を有するとともに、当該熱を素早く外部空間へ放出できる高い熱伝導性を有する材料(例えば、アルミニウム等の金属材料)で形成されるのが好適である。もちろん、金属材料に比べて熱伝導性は劣るものの、高い耐熱性を有するセラミック等を使用することもできる。
【0034】
放電灯収容空間28は、高圧放電灯12の発光部16を収容する略球状の発光部収容空間30と、封止部18を収容する封止部収容空間32と、高圧放電灯12の発光部16を挟んで出光用窓29の反対側に形成された円錐状の反射防止空間34とで構成されており、反射防止空間34を構成する円錐は、図9に示すように、その底面が発光部収容空間30に開口するとともに、一対の電極24の中心を通る仮想線CLを中心軸とし、仮想線CLを含む断面において、当該円錐の母線BLと、一対の電極24の中心(つまり、点光源)および母線BLの底面側端を結ぶ直線SLとが成す角度αが鈍角となるように形成されている。
【0035】
また、放電灯収容空間28内で高圧放電灯12の位置を微調整できるように、発光部収容空間30は、高圧放電灯12の発光部16の大きさよりもやや大きく形成されており、また、封止部収容空間32も、高圧放電灯12の封止部18の大きさよりもやや大きく形成されている。
【0036】
なお、上記反射防止空間34を三角錐や四角錐等の角錐で構成してもよい。角錐の場合、「仮想線CLを含む断面において、当該角錐の母線BLと、一対の電極24の中心および母線BLの底面側端を結ぶ直線SLとが成す角度α」は、当該母線BLが角錐の底面の角(コーナー)を通る場合に最小となるが、この場合であっても、当該角度αは鈍角(90°よりも大きい角度)となるように角錐を設定する必要がある。
【0037】
本実施例では、放電灯収容空間28への高圧放電灯12の収容を容易にするため、放電灯保持部材14は、図1に示すように、3つの部材(ベッド部材38、メインカバー部材40、およびサイドカバー部材42)で構成されている(もちろん、放電灯保持部材14を1つの部材で形成してもよいし[この場合、高圧放電灯12を挿入できるように、封止部収容空間32の径を発光部16の外径よりも大きくする必要がある。]、2つ、あるいは4つ以上の部材に分けることもできる。)。
【0038】
ベッド部材38は、メインカバー部材40およびサイドカバー部材42が被せられる長方形状のベッド面44を有する鉄床状の部材である。当該ベッド面44の中央部には、高圧放電灯12の発光部16を受け入れる略半球状の発光部受入溝46が形成されており、この発光部受入溝46を中心として、ベッド面44の長手方向端にかけて、高圧放電灯12の一対の封止部18をそれぞれ受け入れる略半円柱状の封止部受入溝48が形成されている。
【0039】
発光部受入溝46の底部には、放電灯収容空間28の反射防止空間34を構成する円錐状の(この円錐は、上述のように、表面検査用光源10を組み立てたときに、「発光部16を挟んで出光用窓29の反対側に形成され、その底面が発光部収容空間30に開口するとともに、一対の電極24の中心を通る仮想線CLを中心軸とし、仮想線CLを含む断面において、当該円錐の母線BLと、一対の電極24の中心および母線BLの底面側端を結ぶ直線SLとが成す角度αが鈍角となる」ように形成されている。もちろん、角錐であってもよい。)反射防止穴50が形成されており、また、封止部受入溝48の底部からベッド部材38の底面38aにかけて通気孔36が形成されている(なお、反射防止穴50の頂部とベッド部材38の底面38aとを連通する通孔(図示せず)を設けてもよい。)。
【0040】
この通気孔36により、外部空間からの空気を、出光用窓29を通して発光部収容空間30に取り入れ、高圧放電灯12の発光部16からの熱を受けて高温となった当該空気を、封止部収容空間32を通じて、通気孔36から外部空間へ放出することができるようになり、放電灯収容空間28の温度および高圧放電灯12自身の温度を効率よく低下させることができる。なお、本実施例では、封止部収容空間32に通気孔36が接続されるようになっているが、発光部収容空間30あるいは反射防止空間34に通気孔36を接続してもよい。但し、封止部収容空間32に接続する方が、高圧放電灯12全体を冷却できる点で好適である。
【0041】
また、ベッド面44の長辺端から、封止部受入溝48における、高圧放電灯12の封止部18を受け入れたときに当該封止部18から突出した外部リード棒26に対応する位置にかけて、当該外部リード棒26に給電する給電線(図示せず)を挿通させるための給電線挿通溝52が形成されている(図1)。
【0042】
さらに、ベッド面44には、メインカバー部材40およびサイドカバー部材42を留めるための複数のネジ穴54が形成されているとともに、メインカバー部材40とベッド部材38との位置合わせのための突起である複数のホゾ56が形成されている。
【0043】
少なくとも、ベッド面44に形成された発光部受入溝46、封止部受入溝48、および反射防止穴50の内壁面には、反射低減処理が施されており、当該内壁面は光を減衰させる「光減衰面」となっている。この「反射低減処理」とは、反射した光を減衰させることのできるものであればどのようなものでもよいが、その一例として黒色(あるいは濃い色)塗装、目荒らし加工、アルマイト処理等が考えられる。
【0044】
なお、上記「光減衰面」には、「反射低減処理」を施したものの他、放電灯保持部材14の材質が光を減衰させるような地色、あるいは地肌であり特別な「反射低減処理」を施す必要がない面も含まれる。
【0045】
メインカバー部材40は、ベッド部材38のベッド面44に被せられ、ベッド部材38との間で放電灯収容空間28を構成する短冊状の部材であり、その一方の表面は、ベッド部材38のベッド面44に接する接触面58となっている。また、メインカバー部材40の長手方向寸法は、対応するベッド部材38の長手方向寸法よりも短く設定されており、メインカバー部材40の長手方向端に隣接してサイドカバー部材42を配置することにより、[メインカバー部材40]+[サイドカバー部材42]の長手方向寸法が、ベッド部材38の長手方向寸法とほぼ一致するように設定されている。
【0046】
メインカバー部材40の接触面58には、メインカバー部材40をベッド部材38に被せた状態でベッド部材38の発光部受入溝46と組み合わされることにより、略球状の発光部収容空間30を構成する発光部被覆溝60が形成されている。なお、上述のようにメインカバー部材40は、ベッド部材38に比べて、その長手方向寸法が短く設定されているので、発光部被覆溝60の位置は、接触面58の中央部からやや長手方向端寄りであって、メインカバー部材40とサイドカバー部材42とを組み合わせたとき、ベッド部材38のベッド面44における発光部受入溝46に対応する位置に形成されている。
【0047】
この発光部被覆溝60を中心として、接触面58の長手方向端にかけて、ベッド部材38の封止部受入溝48と組み合わされることにより封止部収容空間32を構成する封止部被覆溝62が形成されている。
【0048】
発光部被覆溝60の底部には、外部空間と放電灯収容空間28とを連通する出光用窓29が設けられており、放電灯収容空間28に収容された高圧放電灯12の発光部16における一対の電極24間に形成されたアークから放射された光が当該出光用窓29を通して放電灯収容空間28から外部空間へ出光する。この出光用窓29は、高圧放電灯12の一対の電極24を臨む位置(すなわち、電極24間に形成されアーク(発光点)を臨む位置)に設けられている。
【0049】
接触面58の長辺端から封止部被覆溝62にかけては、ベッド面44の給電線挿通溝52に対応する給電線被覆溝70が形成されている。
【0050】
接触面58には、メインカバー部材40をベッド部材38に留めるためのネジを挿通する複数のネジ挿通孔66がベッド面44のネジ穴54に対応する位置に設けられており、また、ベッド面44に形成されたホゾ56に対応する位置には、当該ホゾ56を受け入れる複数のホゾ穴68が形成されている。
【0051】
接触面58に形成された発光部被覆溝60および封止部被覆溝62の内壁面にも、上述の反射低減処理が施されている。
【0052】
サイドカバー部材42は、メインカバー部材40とともにベッド部材38のベッド面44に被せられ、ベッド部材38との間に封止部収容空間32を構成する短冊状の部材であり、その一方の表面がベッド部材38のベッド面44に接する接触面72となっている。
【0053】
サイドカバー部材42の接触面72には、当該サイドカバー部材42をベッド部材38に被せた状態でベッド部材38の封止部受入溝48と組み合わされることにより封止部収容空間32を構成する封止部被覆溝74が形成されている。この封止部被覆溝74にも、反射低減処理が施されている。
【0054】
また、接触面72の短辺端から封止部被覆溝74にかけて、ベッド部材38のベッド面44における給電線挿通溝52に対応する位置に給電線被覆溝76が形成されている。
【0055】
さらに、接触面72には、メインカバー部材40をベッド部材38に留めるためのネジを挿通する複数のネジ挿通孔78がベッド面44のネジ穴54に対応する位置に設けられている。
【0056】
次に、本実施例の表面検査用光源10を組み立てる手順について簡単に説明する。まず、放電灯保持部材14のベッド部材38をそのベッド面44が水平になるように置き、然る後、高圧放電灯12をベッド面44に形成された発光部受入溝46および封止部受入溝48に嵌め込む。高圧放電灯12を嵌め込んだ後、給電線(図示せず)を当該高圧放電灯12の両端から突設された一対の外部リード棒26にそれぞれ電気的に接続する。なお、給電線は、ベッド面44の給電線挿通溝52内に這わせておく。
【0057】
高圧放電灯12に給電線を接続した後、メインカバー部材40の接触面58をベッド部材38のベッド面44に被せ(このとき、ベッド面44に設けられたホゾ56を接触面58に設けられたホゾ穴68に嵌め込むことにより、メインカバー部材40をベッド部材38に対する所定の位置に正しく位置決めすることができる。)、メインカバー部材40をベッド部材38に対してネジ留めする(ネジ挿通孔66およびネジ穴54を利用する)。
【0058】
メインカバー部材40をベッド部材38にネジ留めした状態で、高圧放電灯12は、メインカバー部材40とベッド部材38との間に形成された放電灯収容空間28に収容されているが、メインカバー部材40の長手方向寸法は、ベッド部材38の長手方向寸法よりも短いことから高圧放電灯12における一方の封止部18は露出しており、当該一方の封止部18は、外部から触れることのできる状態になっている。この露出した一方の封止部18に触れて、メインカバー部材40に設けられた出光用窓29に対応する位置に高圧放電灯12の一対の電極24が位置するように放電灯収容空間28における高圧放電灯12の位置を調整した後、正しく調整できた状態で露出した封止部18とは反対の封止部18を収容する封止部収容空間32に接着剤80を注入し(図2)、放電灯収容空間28に対して高圧放電灯12を位置決めする。
【0059】
最後に、露出した封止部18を覆うようにして、サイドカバー部材42をベッド部材38にネジ留めした後、残る封止部収容空間32にも接着剤80を注入することにより、高圧放電灯12が放電灯保持部材14に確実に保持されて、表面検査用光源10が完成する。
【0060】
完成した表面検査用光源10の給電線に通電して高圧放電灯12の電極24間に電圧を印加すると、当該電極24間に形成されたアークから大量の光が放射される。この表面検査用光源10では、高圧放電灯12から放射された光の内、出光用窓29を直接通過して外部空間に放出された光で検査面の欠陥Kを調査するようになっている。
【0061】
この表面検査用光源10によれば、図9に示すように、出光方向(=出光用窓29の方向)と反対の方向に向かう光L’は、円錐状の反射防止空間34に入光することになる。ここで、反射防止空間34を構成する円錐(あるいは角錐)は、「その底面が発光部収容空間30に開口するとともに、一対の電極24の中心を通る仮想線CLを中心軸とし、仮想線CLを含む断面において、当該角錐または円錐の母線BLと、一対の電極24の中心および母線BLの底面側端を結ぶ直線SLとが成す角度αが常に鈍角となるように設定されている」ことから、反射防止空間34に入光した光L’は、その内壁面で反射防止空間34の奥(=円錐の頂点側)に向かって反射していくことになり、光L’が出光用窓29から表面検査用光源10の外部空間に漏れ出して上述のような「交差する光」となるおそれがほとんどなくなる。なお、上述のように、反射防止穴50の頂部とベッド部材38の底面38aとを連通する通孔(図示せず)を設けた場合、反射防止空間34に入光し、当該反射防止空間34の奥(=円錐の頂点側)に向かって反射していった光L’は、当該通孔を通って、表面検査用光源10の出光方向とは逆の、ベッド部材38の底面38aから放射されることになるので、光L’が上記「交差する光」となるおそれが無くなる点で好適である。
【0062】
このため、本実施例の表面検査用光源10によれば、所定の検査面を照射する光を、高圧放電灯12から出光用窓29を直接通過して外部空間に出光される光に限定することが可能となり、「点光源から放射された、互いに交差することのない光」のみで検査面を照射することができるので、白熱灯や蛍光灯といった「互いに交差する光を出光する光源」を用いた場合に比べて検査面の欠陥Kを見つけ易い。
【0063】
加えて、高圧放電灯12から放射される光は、白熱灯や蛍光灯とは異なり、非常に狭い一対の電極24間で形成された小さなアークから放射されたものであることから(つまり、高圧放電灯12は、白熱灯や蛍光灯と比べて「点光源」といえることから)、白熱灯や蛍光灯のように、別の点から放射された「交差する光」によって欠陥と正常面とのコントラスト差が小さくなってしまうおそれを極小化することができる。また、白熱灯や蛍光灯に比べて単位消費電力量当たりの光放射量が多い高圧放電灯12から放射され、出光用窓29から外部空間へ出射された大量の光で検査面を照らすことにより、十分なコントラスト差で欠陥Kを把握することができる。
【0064】
また、高圧放電灯12から放射される光は1点から拡散する拡散光であるから、出光用窓29の大きさを適宜設定することにより、検査面における照射範囲を大きく(=出光用窓29を大きくする)あるいは小さく(=出光用窓29を小さくする)することができるので、出光用窓29の大きさを適宜設定して、検査者が手で持つことのできる大きさでありながら、十分な広さの照射範囲とすることができる。
【0065】
次に、本実施例の表面検査用光源10を使用した表面検査装置100の一例について説明する。表面検査装置100は、図4に示すように、大略、上述の表面検査用光源10と、ケーシング102と、冷却ファン104と、高圧放電灯12を点灯させるためのバラスト106と、給電線108、109とを備えている。
【0066】
ケーシング102は、中空の箱体であり、その外面には、表面検査を行う作業者が持ちやすいように把手110が取り付けられている(もちろん、把手110の形状は図示されたものに限られず、作業者が持ちやすい形状であればどのようなものであってもよい。)。
【0067】
また、ケーシング102における1の面には、表面検査用光源10を取り付けるための光源取付開口112が設けられており、光源取付開口112が設けられた面に対向する面(もちろん、他の面でもよい。)には、冷却ファン104を取り付けるための冷却ファン取付開口114が設けられている。
【0068】
冷却ファン104およびバラスト106は、ともに公知のものが使用されており、バラスト106は、ケーシング102の内部に固定されている(もちろん、外部に固定してもよい。)。
【0069】
給電線108、109は、コンセントを介して、商用電力を冷却ファン104およびバラスト106に供給する(給電線108)とともに、高圧放電灯12の点灯用に最適化された電力を高圧放電灯12に供給する(給電線109)役割を有している。
【0070】
このような表面検査装置100によれば、表面検査用光源10を点灯すると同時に冷却ファン104が回転してケーシング102の内部が負圧となり、外部空間からの空気が表面検査用光源10の出光用窓29を通って放電灯保持部材14の発光部収容空間30に入る。発光部収容空間30に入った空気は、当該発光部収容空間30から封止部収容空間32へ移動する間に発光中の高圧放電灯12で生じた熱を受けて高温となり、然る後、通気孔36を通って表面検査用光源10からケーシング102の内部に排出され、冷却ファン104によって表面検査装置100の外部空間へ放出される。
【0071】
このように冷却ファン104がケーシング102の内部を負圧にし続けることにより、発光中の高圧放電灯12は、常に外部空間からの空気で冷却されるので、長時間連続的に発光させたとしても、高圧放電灯12が熱による損傷を受けることはない。
【符号の説明】
【0072】
10…表面検査用光源
12…高圧放電灯
14…放電灯保持部材
16…発光部
16a…内部空間
18…封止部
20…マウント
22…金属箔
24…電極
26…外部リード棒
28…放電灯収容空間
29…出光用窓
30…発光部収容空間
32…封止部収容空間
34…反射防止空間
36…通気孔
38…ベッド部材
40…メインカバー部材
42…サイドカバー部材
44…ベッド面
46…発光部受入溝
48…封止部受入溝
50…反射防止穴
52…給電線挿通溝
54…ネジ穴
56…ホゾ
58…接触面
60…発光部被覆溝
62…封止部被覆溝
66…ネジ挿通孔
68…ホゾ穴
70…給電線被覆溝
72…(サイドカバー部材の)接触面
74…(サイドカバー部材の)封止部被覆溝
76…(サイドカバー部材の)給電線被覆溝
78…(サイドカバー部材の)ネジ挿通孔
80…接着剤
100…表面検査装置
102…ケーシング
104…冷却ファン
106…バラスト
108、109…給電線
110…把手
112…光源取付開口
114…冷却ファン取付開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された一対の電極を内部に有する発光部を備える高圧放電灯と、
その内部に前記高圧放電灯を収容する放電灯収容空間が形成された放電灯保持部材とを備える表面検査用光源であって、
前記放電灯保持部材には、前記放電灯収容空間に収容された前記高圧放電灯の前記発光部を臨む位置に出光用窓が設けられており、
前記放電灯収容空間は、前記発光部を収容する発光部収容空間と、前記発光部を挟んで前記出光用窓の反対側に形成された角錐状または円錐状の反射防止空間とを有しており、
前記反射防止空間を構成する角錐または円錐は、その底面が前記発光部収容空間に開口するとともに、前記一対の電極の中心を通る仮想線を中心軸とし、前記仮想線を含む断面において、当該角錐または円錐の母線と、前記一対の電極の中心および前記母線の底面側端を結ぶ直線とが成す角度が常に鈍角であることを特徴とする表面検査用光源。
【請求項2】
前記放電灯収容空間を構成する内壁面は、光を減衰させる光減衰面であることを特徴とする請求項1に記載の表面検査用光源。
【請求項3】
前記放電灯保持部材には、出光方向とは反対側の外部空間および前記放電灯収容空間を互いに連通する通気孔が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表面検査用光源と、
冷却ファンと、
前記表面検査用光源を取り付けるための光源取付開口および前記冷却ファンを取り付けるための冷却ファン取付開口が設けられた中空のケーシングとを備える表面検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−163772(P2011−163772A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23295(P2010−23295)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(510138741)フェニックス電機株式会社 (19)
【出願人】(000153144)株式会社日本技術センター (7)
【Fターム(参考)】