説明

表面欠陥検出装置

【課題】構造物の被検査面に近づくことなく、被検査面の微細な開口欠陥を広範囲に渡って簡潔に検出することができる表面欠陥検出装置を提供すること。
【解決手段】本発明の表面欠陥検出装置50は、構造物30の被検査面30aに形成された開口欠陥10を検出するために用いられる。表面欠陥検出装置50は、検出装置本体21と、検出装置本体21に保持された一対のフィルム把持部4,5と、一対のフィルム把持部4,5に両端が把持されたフィルム1とを備えている。一対のフィルム把持部4,5の間には、フィルム1を構造物30の開口欠陥10に押圧して、フィルム1に開口欠陥10の形状を転写させる押圧部31が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査面に近づくことなく、被検査面の開口欠陥を検出することができる表面欠陥検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、直接接近できない構造物の表面状態を検査する場合、通常、TVカメラを用いた外観検査が行われている。しかしながら、外観検査による検査方法では、二次元的な映像によって構造物の表面形状を判断するため、表面についたこすれ痕や模様と、亀裂状欠陥との判別が困難な場合がある。
【0003】
また外観検査では確認することが難しい開口幅の微細な開口欠陥は、通常、液体浸透探傷試験によって検査される。しかしながら、構造物に直接接近することが困難な場合においては、この液体浸透探傷試験を用いることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような外観検査によって微細な表面欠陥を検出するためには、表面を詳細に観察することができる外観検査装置が必要である。また、液体浸透探傷試験を遠隔操作によって行うためには、液体浸透探傷試験を実施できる装置を遠隔操作で被検査面まで接近させる必要がある。このため、外観検査によって微細な表面欠陥を検出したり、液体浸透探傷試験を遠隔操作によって行ったりする場合には、かなり大掛かりな装置が必要となる。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、構造物の被検査面に近づくことなく、被検査面の微細な開口欠陥を広範囲に渡って簡潔に検出することができる表面欠陥検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、構造物の表面に形成された開口欠陥を検出する表面欠陥検出装置において、検出装置本体と、検出装置本体に保持された一対のフィルム把持部と、検出装置本体に支持されるとともに、一対のフィルム把持部に両端が把持されたフィルムと、一対のフィルム把持部の間に配置され、フィルムを構造物の開口欠陥に押圧して、フィルムに開口欠陥の形状を転写させる押圧部と、を備えたことを特徴とする表面欠陥検出装置である。
【0007】
本発明は、フィルムは、加熱することによってジェル状に変化する熱可塑性プラスチックからなり、押圧部は、開口欠陥に押圧されたフィルムを加熱しジェル状に変化させる加熱部を有することを特徴とする表面欠陥検出装置である。
【0008】
本発明は、押圧部は、検出装置本体に弾性体を介して支持され、構造物にフィルムを弾性的に押圧することを特徴とする表面欠陥検出装置である。
【0009】
本発明は、押圧部は、弾力性を有することを特徴とする表面欠陥検出装置である。
【0010】
本発明は、開口欠陥の形状が転写されたフィルムを観察するための立体視顕微鏡が設けられたことを特徴とする表面欠陥検出装置である。
【0011】
本発明は、一対のフィルム把持部のうち、一方のフィルム把持部は、巻き付けて把持したフィルムを巻き出す巻出ロールからなり、他方のフィルム把持部は、巻出ロールから巻き出されたフィルムを巻き取って把持する巻取ロールからなることを特徴とする表面欠陥検出装置である。
【0012】
本発明は、押圧部は、フィルムの動きに連動して回転可能な回転ローラを有することを特徴とする表面欠陥検出装置である。
【0013】
本発明は、フィルムは、開口欠陥の反対側のベースフィルムと、ベースフィルム上に設けられた開口欠陥側の熱可塑性プラスチックとからなることを特徴とする表面欠陥検出装置である。
【0014】
本発明は、検出装置本体に、構造物の表面と直交する方向における検出装置本体の動きを規制する規制部が設けられており、当該規制部は、構造物の表面に平行な方向に移動自在となっていることを特徴とする表面欠陥検出装置である。
【0015】
本発明は、規制部は、磁石、吸着盤、推進装置又は突っ張り部からなることを特徴とする表面欠陥検出装置である。
【0016】
本発明は、フィルムは、開口欠陥の反対側のベースフィルムと、ベースフィルム上に設けられ、構造物の表面に押圧されることによって潰れるマイクロフィルムを有する開口欠陥側のジェル状フィルムとからなり、マイクロフィルムは、ジェル状フィルムを硬化させる硬化剤を含有することを特徴とする表面欠陥検出装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、構造物の被検査面に近づくことなく、被検査面に形成された微細な開口欠陥を広範囲に渡って簡潔に検出することができる表面欠陥検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施の形態
以下、本発明に係る表面欠陥検出装置の一実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図4は本発明の実施の形態を示す図である。
【0019】
図1乃至図4に示すように、本発明の表面欠陥検出装置50は、構造物30の被検査面30aに形成された開口欠陥10を検出する装置である。
【0020】
図1に示すように、表面欠陥検出装置50は、検出装置本体21と、検出装置本体21に保持された巻出ロール4と、検出装置本体21に保持された巻取ロール5と、巻出ロール4及び巻取ロール5によって両端部が把持されたフィルム1とを備えている。このうち、巻出ロール4により、一方のフィルム把持部が構成され、巻取ロール5により、他方のフィルム把持部が構成される。
【0021】
また図1に示すように、巻出ロール4と巻取ロール5との間には、フィルム1を被検査面30aの開口欠陥10に押圧して、フィルム1に開口欠陥10の形状を転写させる押圧部31が配置されている。この押圧部31は、スプリング(弾性体)3を介して検出装置本体21に取り付けられている。このためフィルム1は、押圧部31によって弾性的に被検査面30aに押圧される。
【0022】
またフィルム1は、図3に示すように、熱によって軟化したり硬化したりしないベースフィルム11と、当該ベースフィルム11上にコーティングされ、加熱することによってジェル状に変化する熱可塑性プラスチック12とからなっている。このうちベースフィルム11は開口欠陥10の反対側に配置され、熱可塑性プラスチック12は開口欠陥10側に配置されている。
【0023】
図1に示すように、押圧部31は、フィルム1側の端部において、フィルム1の動きに連動して回転することができる回転ローラ2を有している。また回転ローラ2には、開口欠陥10に押圧されたフィルム1の熱可塑性プラスチック12を加熱してジェル状に変化させるヒータ(加熱部)25が内蔵されている。なお、回転ローラ2は、弾力性を有する素材から形成されている(図2参照)。
【0024】
また図1及び図4に示すように、表面欠陥検出装置50には、開口欠陥10の形状が転写されたフィルム1を観察するための立体視顕微鏡15が設けられている。
【0025】
また図1において、巻取ロール5は巻取モータ6によって回転駆動されてフィルム1を巻き取って把持し、巻出ロール4は、巻取ロール5に同期して回転し、巻き付けて把持したフィルム1を巻取ロール5方向へ巻き出すようになっている。
【0026】
また図1に示すように、検出装置本体21には、被検査面30aを移動するための車輪8と、当該車輪8を駆動する駆動モータ9とが設けられている。
【0027】
また図1に示すように、検出装置本体21には、被検査面30aから離れる方向(構造物30の表面と直交する方向)における検出装置本体21の動きを規制する吸盤(規制部)7が設けられている。この吸盤7には、摩擦係数の低い部材が使用されており、吸盤7は被検査面30aに平行な方向に移動自在となっている。
【0028】
このため、検出装置本体21が被検査面30aから離れる方向に対しては、吸盤7による反発力が発生して検出装置本体21の動きが規制される。これに対して、被検査面30aに平行な方向へ移動する際には抵抗力が発生せず、これにより検出装置本体21は、被検査面30aに平行な方向に自由に移動することができる。なお、吸盤7に摩擦係数の低い部材を使用する代わりに、ローラ(図示せず)を設けることもできる。
【0029】
なお図1において、構造物30が磁性体である場合には、規制部7として磁石を用いることができる。また、構造物30が水中にある場合には、規制部7としてスクリューなどを用いた推進装置を用いることができる。更に、被検査面30aを有する構造物30が狭隘間隙構造である場合には、この隙間に突っ張り部を設け、この突っ張り部を利用して検出装置本体21自体を構造物30に対して移動自在に保持してもよい。
【0030】
次に、このような構成からなる表面欠陥検出装置50を用いて、構造物30の被検査面30aの開口欠陥10を検査する方法について以下詳説する。
【0031】
まず、図1において、被検査面30aの開口欠陥10を検出する対象となる被検査面30a近傍に吸盤7によって表面欠陥検出装置50の検出装置本体21を配置する。このとき、回転ローラ2を有する押圧部31が、検出装置本体21に保持されたスプリング3によって被検査面30a方向に押圧され、被検査面30aと回転ローラ2との間に配置されているフィルム1が、被検査面30aに押しつけられる。なお、スプリング3の代わりにアクチュエータ(図示せず)を用いることができる。
【0032】
このとき図1に示すように、回転ローラ2にはヒータ25が内蔵されて加熱されるため、回転ローラ2によって被検査面30aに押し付けられたフィルム1の熱可塑性プラスチック12はジェル化して軟化する。このため被検査面30aの開口欠陥10に従ってフィルム1が変形し、被検査面30aの開口欠陥10がフィルム1側へ転写される。
【0033】
次に、表面欠陥検出装置50の駆動モータ9によって車輪8を回転させて、検出装置本体21を被検査面30a上で移動させる。このとき、巻取ロール5は、巻取モータ6によって検出装置本体21の移動と同期して回転してフィルム1を巻き取り、巻出ロール4は、巻取ロール5の回転と同期して回転しフィルム1を巻き出す。
【0034】
この場合、フィルム1は巻出ロール4から巻き出され、かつ巻取ロール5に巻き取られるが、この間、フィルム1は被検査面30aに対して相対的に停止することになる。このようにフィルム1は、被検査面30a上で滑ることがないので、被検査面30aの開口欠陥10をフィルム1に正確に転写することができる。
【0035】
このとき、表面欠陥検出装置50の検出装置本体21の移動に伴って回転ローラ2から離れたフィルム1は冷却され、フィルム1は被検査面30aの開口欠陥10を転写した状態で固まる。このため、フィルム1が巻取ロール5に巻き取られても、被検査面30aを転写したフィルム1の転写形状は変形することがない。
【0036】
このように、本発明の表面欠陥検出装置50によれば、フィルム1を連続して巻き取りながら、被検査面30aの形状をフィルム1に容易かつ確実に転写することができる。このため、巻取ロール4に巻き取られたフィルム1を巻き出し、そのフィルム1の転写形状を観察することによって、構造物30に近づくことなく、被検査面30aの微細な開口欠陥10を広範囲に渡って簡潔に検出することができる。
【0037】
また、回転ローラ2は弾力性を有する素材から形成されているため、被検査面30aの形状に合わせて変形することができる。このため、被検査面30aが大きくうねっている場合や、被検査面30aに溶接ビード20のような大きな凸部や凹部がある場合(図2参照)であっても、フィルム1を被検査面30aに接触させることができる。このため、被検査面30aに大きなうねりや、大きな凹凸がある場合でも、被検査面30aの開口欠陥10を正確に検査することができる。
【0038】
なお、被検査面30aの大きなうねりや、大きな凹凸は、形状の変化が大きいため、その形状はフィルム1の熱可塑性プラスチック12に転写しない。
【0039】
また図3に示すように、フィルム1は、熱によって軟化したり硬化したりしないベースフィルム11と、当該ベースフィルム11上にコーティングされた熱可塑性プラスチック12とから構成されている。このため、フィルム1は、被検査面30aへ押し付けられたり、表面欠陥検出装置50の移動に伴って引っ張られたりしても、切れることなく十分な強度を有することができる。
【0040】
図4に示すように、表面欠陥検出装置50には立体視顕微鏡15が設けられている。このため、この立体視顕微鏡15を用いて、被検査面30aの開口欠陥10が転写されたフィルム1を観察することができる。
【0041】
このため、転写された被検査面30aに形成された開口欠陥10の開口幅と深さの関係を検知でき、転写された開口欠陥10が、単なるこすれ痕か、ひびなどの有害欠陥であるかを判別することができる。なお、開口幅に対して深さが浅い場合には、転写された開口欠陥10は単なるこすれ痕であり、一方、開口幅に対して深さが深い場合には、転写された開口欠陥10は有害欠陥である。
【0042】
変形例
次に図5により上述した実施の形態の変形例について説明する。図5に示す変形例は、熱可塑性プラスチック12の代わりに、硬化剤23を含有するマイクロフィルム22を有するジェル状フィルム17を用いたものであり、他は図1乃至図4に示す上述した実施の形態と略同一である。なお、硬化剤23は、ジェル状フィルム17と混合することによって、ジェル状フィルム17を硬化させることができる。
【0043】
図5に示す変形例において、図1乃至図4に示す実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0044】
硬化剤23を含有するマイクロフィルム22は、フィルム1が被検査面30aに押し付けられることによって潰れる。このため、フィルム1が被検査面30aに押し付けられることによって、マイクロフィルム22内の硬化剤23がジェル状フィルム17に混合され、ジェル状フィルム17が硬化する。このため、加熱しなくても始めからジェル状になっているジェル状フィルム17を使用することができるので、フィルム1を加熱するヒータ25を回転ローラ2に内蔵する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による表面欠陥検出装置の実施の形態を示す概略断面図。
【図2】被検査面の溶接ビード上を通過する本発明による表面欠陥検出装置の回転ローラを示す概略断面図。
【図3】本発明による表面欠陥検出装置に用いるフィルムを示す概略断面図。
【図4】本発明による表面欠陥検出装置に設けられた立体視顕微鏡による観察状況を説明する概略断面図。
【図5】本発明による表面欠陥検出装置に用いるフィルムの変形例を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0046】
1 フィルム
2 回転ローラ
4 巻出ロール
5 巻取ロール
7 吸盤
8 車輪
10 開口欠陥
11 ベースフィルム
12 熱可塑性プラスチック
15 立体視顕微鏡
17 ジェル状フィルム
20 溶接ビード
21 検出装置本体
22 マイクロフィルム
23 硬化剤
25 ヒータ
30 構造物
30a 被検査面
31 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の表面に形成された開口欠陥を検出する表面欠陥検出装置において、
検出装置本体と、
検出装置本体に保持された一対のフィルム把持部と、
検出装置本体に支持されるとともに、一対のフィルム把持部に両端が把持されたフィルムと、
一対のフィルム把持部の間に配置され、フィルムを構造物の開口欠陥に押圧して、フィルムに開口欠陥の形状を転写させる押圧部と、
を備えたことを特徴とする表面欠陥検出装置。
【請求項2】
フィルムは、加熱することによってジェル状に変化する熱可塑性プラスチックからなり、
押圧部は、開口欠陥に押圧されたフィルムを加熱しジェル状に変化させる加熱部を有することを特徴とする請求項1記載の表面欠陥検出装置。
【請求項3】
押圧部は、検出装置本体に弾性体を介して支持され、構造物にフィルムを弾性的に押圧することを特徴とする請求項1記載の表面欠陥検出装置。
【請求項4】
押圧部は、弾力性を有することを特徴とする請求項1記載の表面欠陥検出装置。
【請求項5】
開口欠陥の形状が転写されたフィルムを観察するための立体視顕微鏡が設けられたことを特徴とする請求項1記載の表面欠陥検出装置。
【請求項6】
一対のフィルム把持部のうち、一方のフィルム把持部は、巻き付けて把持したフィルムを巻き出す巻出ロールからなり、
他方のフィルム把持部は、巻出ロールから巻き出されたフィルムを巻き取って把持する巻取ロールからなることを特徴とする請求項1記載の表面欠陥検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−163428(P2007−163428A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363670(P2005−363670)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】