説明

表面滑り性を有する転写ラベル

【課題】
衣類の一部に滑り性、防汚性、デザイン性などの高い機能性を付与したり、または薄いシート基材に転写することで靴べらやマウスパッドなどの用途に適用可能である転写ラベルを提供する。
【解決手段】
ベースシート上に少なくとも表面スリップ層、図柄層および接着層を順次設けており、可撓性の被転写材へ熱転写すると、表面スリップ層および図柄層がベースシートから被転写材に融着されることにより、表面スリップ層の存在によって高い表面滑り性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被転写材へ熱転写した際に、表面スリップ層の存在によって表面滑り性が高くなる転写ラベルに関し、繊維製品の一部に滑り性、防汚性、デザイン性などの高い機能性を付与したり、または薄いシート基材に転写することで靴べらやマウスパッドなどの用途に適用可能である転写ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
転写ラベルは、ベースシート上に少なくとも図柄層および接着層を順次設けた層構造を有し、容器や衣類のような被転写材へ加熱・加圧で熱転写することにより、該図柄層をベースシートから被転写材に融着する。この種の転写ラベルは、既に数十年前から数多く製造され且つ販売されている。しかしながら、従来の転写ラベルにおいて、その表面にスリップ層を有するものは寡聞にして存在しないし、高い表面滑り性および防汚性を有する柔軟な転写ラベルは、未だに製造・販売されていない。
【0003】
高い表面滑り性を有する転写ラベルが製造できるならば、該転写ラベルは、その柔軟性も加味して、各種の既存商品と競合することになる。例えば、この転写ラベルは、直接、特開平10−1801号や特開2009−185423号に開示するような衣服保護シートまたは衿カバーとして適用可能である。また、この転写ラベルをシート基材に熱転写した態様の商品として、実開平6−9578号や実用新案登録第3154072号に開示するような靴べらまたはマウスパッドなどが例示できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−1801号公報
【特許文献2】特開2009−185423号公報
【特許文献3】実開平6−9578号公報
【特許文献4】実用新案登録第3154072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開平10−1801号に開示の衣服保護シートは、例えば、衣類の汚れやすい個所に装着することで該衣類の汚れと損傷を軽減し、特開2009−185423号に開示の衿カバーは、背広やジャケットの衿に取り付けることでその外観を向上させる。これらの保護シートまたは衿カバーは、一般的に洗濯適性が良くないので着脱可能に装着され、衣類に汚れが付着すると貼り替えることを要する。また、繰り返し洗濯が可能な保護シートや衿カバーであっても、通常、耐溶剤性が低いのでドライクリーニングできず且つ耐熱性が高くないのでアイロン作業が不可であるため、これらは衣類の洗濯のたびに剥がし、洗濯の後に再び取り付けることを要する。
【0006】
一方、靴べらである実開平6−9578号と実用新案登録第3154072号は、いずれも皮革製であるけれども、前者では、表示プレートを内部に挿入するために2枚合わせであり、後者は足当て部と位置固定部の2枚重ねである。それ故に、比較的柔軟性がある皮革製の靴べらであっても、皮革をなめし加工して皮革表面に艶が出ていても、その表面が特別滑りやすいわけではない。これらの靴べらは、衣類のポケットやバッグ類に入れた際に違和感が生じるうえに、皮革の2枚合わせであるので高価になってしまう。
【0007】
本発明は、従来には存在しない機能を有する転写ラベルを提案するものであり、表面スリップ層の存在によって高い表面滑り性を有する転写ラベルを提供することを目的としている。本発明の他の目的は、表面スリップ層の表面に細かい凹凸模様を設けることにより、表面の滑り性が高くてもべとつき感が少ない転写ラベルを提供することである。本発明の別の目的は、衣類表面の摩擦抵抗を低減し且つ防汚性を高めるうえに、洗濯時に剥がすことが不要な衣類保護シートとして用いる転写ラベルを提供することである。本発明のさらに別の目的は、薄いシート基材に熱転写することにより、多彩な図柄模様を施すことができる靴べらまたはマウスパッドの製造に用いる転写ラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る転写ラベルは、柔軟性を有することによって可撓性の被転写材への熱転写が可能である。この転写ラベルは、ベースシート上に少なくとも表面スリップ層、図柄層および接着層を順次設けており、可撓性の被転写材へ熱転写すると、表面スリップ層および図柄層がベースシートから被転写材に融着されることにより、表面スリップ層の存在によって高い表面滑り性を有する。
【0009】
本発明に係る転写ラベルは、ベースシート上に発泡ポリウレタン系樹脂を含む効果層および離型層を積層し、該効果層が適宜の平面模様を有するベースシートを用いてもよい。この転写ラベルは、ベースシート上に少なくとも表面スリップ層、図柄層および接着層を順次設けており、可撓性の被転写材へ熱転写する際に、効果層が発泡して盛り上がって表面スリップ層の表面に凹凸模様が生じるとともに、該表面スリップ層および図柄層がベースシートから被転写材に融着されることにより、凹凸模様が形成された表面スリップ層の存在によって表面滑り性を有する。
【0010】
本発明の転写ラベルにおいて、表面スリップ層は、フッ素系樹脂を機能成分として含有し、ベースシートの剥離層上に塗布することによって積層される。また、ベースシートと表面スリップ層との剥離性を抑制するために、ベースシートの離型層にシリコン変性アクリル溶液を含んでいると好ましい。さらに好ましくは、表面スリップ層およびベースシートの離型層には、イソシアネート樹脂およびシリカを含み、表面スリップ層およびベースシートの離型層には、さらに脂肪酸アマイドワックスをプレ膨潤させたペースト状の非水系塗料用ダレ・沈降防止剤を含む。
【0011】
本発明の衣類保護シートには、柔軟性を有することによって衣類への熱転写が可能であり、ベースシート上に少なくとも表面スリップ層、図柄層および接着層を順次設けた転写ラベルを用いる。この衣類保護シートは、衣類の所定個所へ熱転写すると、表面スリップ層および図柄層がベースシートから衣類の所定個所に融着されることにより、表面スリップ層の存在によって高い表面滑り性および防汚性を有する。
【0012】
本発明の靴べらには、柔軟性を有することによって柔軟なシート基材への熱転写が可能であり、ベースシート上に少なくとも表面スリップ層、図柄層および接着層を順次設けた転写ラベルを用いる。この靴べらは、該転写ラベルを柔軟で薄いシート基材の表面へ熱転写すると、表面スリップ層および図柄層がベースシートからシート基材に融着されることにより、表面スリップ層の存在によって高い表面滑り性を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る転写ラベルでは、熱転写の後に表面スリップ層が存在して表面の滑り性が高く、しかも柔軟性を有することによって衣類などの可撓性の被転写材へ熱転写することが可能である。本発明の転写ラベルは、少なくとも表面スリップ層、図柄層および接着層を有し、表面の滑り性が高いので通常の転写ラベルと異なる用途に展開できる。例えば、本発明の転写ラベルは、白い衣類保護シートとして用いたり、図柄層によって表面に多彩な模様を施こし、プロ野球やサッカーチームの防汚性マークをウェアに貼着したり、著名なサーフボードやスノーボートの図柄と一致させたマスコット靴べらなども提供でき、被転写材の使用者層を女性や若年層にまで拡大できる。
【0014】
また、本発明の転写ラベルは、衣類保護シートとして、スポーツウェアの裏地に着脱可能に装着することで、下着または肌との摩擦抵抗を小さくして運動機能を向上させることができる。この衣類保護シートは、ワイシャツの袖や衿に取り付けることで、その衣類に汚れが付きにくく、他部材と接触しやすい肘または膝を保護する機能を有する。この衣類保護シートは、熱転写によって衣類に融着されると、多数回の洗濯、アイロン掛け、ドライクリーニングも可能であるので、洗濯のたびに剥がす作業は不要であり、耐用期間が長いので経済的である。
【0015】
本発明の転写ラベルは、薄くて柔軟なシート基材に熱転写されるとその表面の滑り性が高く、例えば、得たシート基材を靴べらとして用いると、使用者の踵部が靴内へ滑り入れやすくなる。この際に、この靴べらは、一般に細長い平面形状に定めるから、使用者の足を靴の中へ入れやすい。この靴べらは、薄いシート基材が多数回復元可能な弾力性を有して柔軟であり、携帯電話機のマスコットパーツなどとして衣服のポケットやバッグ類に入れた際に、柔軟性が高いのでこれらの内部形状に沿って容易に変形でき、保管時に違和感が生じない。
【0016】
本発明の転写ラベルは、熱転写したシート基材の表面の滑り性が高い点に着目して、靴べらと異なる用途にも展開できる。例えば、携帯電話機の保護カバーとして、携帯電話機とほぼ同じ平面形状に裁断して該電話機に着脱可能に貼り付けてもよい。また、シート基材の裏面の密着性を高くすれば、該シート基材はマウスパッドとしても使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の転写ラベルの一例を示す概略断面図である。
【図2】転写ラベルの変形例を部分的に示す拡大概略断面図である。
【図3】転写ラベルの第2変形例を部分的に示す拡大概略断面図である。
【図4】転写ラベルの第3変形例を部分的に示す拡大概略断面図である。
【図5】転写ラベルの第4変形例を示す拡大概略断面図である。
【図6】応用例の衣類保護シートを貼着したワークシャツを示す正面図である。
【図7】本発明の他の応用例である靴べらの一例を示す斜視図である。
【図8】図7の靴べらの概略断面図である。
【図9】本発明の別の応用例であるマウスパッドを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を図面によって説明すると、図1に示す転写ラベル1は、ベースシート6においてフィルム2上に剥離層3を塗布・乾燥してから、少なくとも表面スリップ層5、単色または多色の図柄層8および接着層14を順次設けている。図柄層8と接着層14の間には、通常、バックアップ層10および/または中間層12が介在し、所望に応じて該図柄層の上に保護層7が存在する。表面スリップ層5は、図3や図4に例示するように、適宜の樹脂を追加して保護層を兼用してもよい。また、無地の透明模様の場合には、図5に示すように、保護層7、バックアップ層10または中間層12が図柄層を兼ねてもよい。
【0019】
表面スリップ層5は、ベースシート6の離型層3上に塗布され、ついで図柄層8および接着層14などを積層する。表面スリップ層5は、表面滑り性を高くするため、例えば、PTFEやPFAなどのフッ素系樹脂を機能成分として含有すればよい。表面スリップ層5は、表面滑り性が高いのでベースシート6から剥離しやすく、転写前にベースシート6が剥離するとラベル保管が困難になるために、ベースシート6の離型層3との剥離性を抑制することも必要である。
【0020】
ベースシート6において、一般に、離型層3はフィルム2上に全面ベタ塗りすればよく、基礎成分として、イソシアネート樹脂およびシリカを含む。離型層3は、表面スリップ層5との剥離性を抑制するために、例えば、シリコン変性アクリル溶液を含み、さらに脂肪酸アマイドワックスをプレ膨潤させたペースト状の非水系塗料用ダレ・沈降防止剤を含む。離型層3のスクリーン版メッシュは、転写ラベル15の剥離性に影響するので、効果層18の面積や平面形状に応じて最適のものを選択することを要する。ベースシート6には、例えば、ルミラーS10(商品名、東レ製)、東洋紡エステルフィルムE5000(商品名)、エンブレット SA(商品名、ユニチカ製)などのポリエステルフィルム2を用いる。
【0021】
一方、表面スリップ層5は、フッ素系樹脂を機能成分として添加し、基礎成分として、イソシアネート樹脂およびシリカを含有する。表面スリップ層5は、脂肪酸アマイドワックスをプレ膨潤させたペースト状の非水系塗料用ダレ・沈降防止剤も含んでいる。表面スリップ層5は、ベースシートの離型層3上に、スクリーン印刷などで塗布した後に乾燥して積層させる。
【0022】
保護層7は、所望に応じて形成し、比較的硬い透明または半透明の樹脂皮膜からなり、図柄層8の平面形状と同一またはその平面形状よりもわずかに大きい平面形状である。保護層7は、摩擦、衝撃などの物理的および化学的影響から図柄層8を保護する役目がある。保護層7は、厚みが3〜10μmであり、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系などの樹脂またはこれらを組み合わせ配合した樹脂からなり、一般に架橋樹脂を用いる。
【0023】
図柄層8は、白、赤、黒色などの単色でも、美麗な図柄模様を構成する模様、絵表示、文字、記号またはこれらの組み合わせでもよく、通常、スクリーン印刷やオフセット印刷による単色または多色刷りである。図柄層8の厚みは例えば8〜40μm程度であればよく、ポリウレタン系樹脂またはこれと同等のポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂などの軟質樹脂からなり、該樹脂は熱架橋性や経時架橋性のような反応性樹脂であると好ましい。ポリウレタン系樹脂は、一般に密度が小さいために伸び、耐磨耗性、反発弾性および圧縮疲労強さが優れており、繊維製品における使用時に層剥離や亀裂の発生が少ない。
【0024】
バックアップ層10は、主として白色または黒色であり、図柄層8の全体に必要であって、図柄模様の一部または全部を構成することもあり、通常、図柄層8の平面形状よりもわずかに小さい平面形状である。バックアップ層10の厚みは5〜30μmである。中間層12は、図柄層8の皮膜を補強し、その伸縮性および接着力を補う。中間層12の厚みは10〜30μmである。バックアップ層10および中間層12は、通常、図柄層8で用いる樹脂と同様のものを使用する。
【0025】
接着層14は、図柄層8や中間層12よりもわずかに大きい平面形状を有し、基本的にシート基材48の材質に適合したホットメルト樹脂から選択し、その樹脂は中間層12と同様のものが好ましい。接着層14は、シート基材48が柔軟であるので熱可塑性ポリウレタン系樹脂を含有し、接着性を高めるために熱可塑性ポリアミド樹脂を含むと好ましい。一般に、接着層14の厚みは10〜200μmである。
【0026】
図1に示す転写ラベル1は、表面が平坦で滑らかな標準タイプである。転写ラベルが安価な透明模様であるならば、例えば、図5に示すような転写ラベル66を使用してもよい。転写ラベル66では、剥離層3を積層したベースシート上に、スリップ層5、保護層7、中間層12(またはバックアップ層)、接着層14をそれぞれ積層し、保護層7や中間層12が図柄層を兼ねている。保護層7または中間層12を着色すれば、着色した透明模様も可能である。
【0027】
図1に示す転写ラベル1において、ラベル表面に細かい凹凸模様を形成してべたつき感を少なくするには、図2に示すように、ベースシートにおいて剥離層を形成する前に効果層18をスクリーン印刷などで積層すると好ましい。効果層18は、ベタ塗りまたはドット、水玉や梨地模様の平面形状であればよい。効果層18用の印刷インクとして、例えば、マイクロカプセルの発泡粉末を液状ポリウレタン系樹脂と配合し、熱転写時に効果層18が発泡して盛り上がることで細かい凹凸模様を形成する。
【0028】
この効果層は、図4に示すように2層以上形成することも可能である。効果層が2層である場合には、下側の第1効果層34をドット模様や水玉模様などの適宜の平面形状に定め、第2効果層36をベタ塗りすると好ましい。スクリーン印刷において、効果層18用のスクリーン版メッシュは、凹凸感や設定デザインの再現に影響するので、層素材などに応じて最適のものを選択する。
【0029】
転写ラベル1は、柔軟性を有することによって可撓性の被転写材への熱転写が可能であり、被転写材として一般的に衣類などの繊維製品、軟質プラスチック製品などが例示できる。転写ラベル1の用途は、例えば、白色ないし多色模様の衣類保護シート40,42(図6)、肘当てのような補強シート、リネン製品の防汚シート、各種ユニフォームや水着の転写マークなどである。
【0030】
この種の転写ラベルは、薄いシート基材48(図8)に熱転写されると、得たシート製品を靴べら46(図7)またはマウスパッド60(図9)などとして使用できる。シート基材48は、衣服のポケットやバッグ類に入れた際に違和感が少ない柔軟性を有する。シート基材48の平面形状は、靴べら用であるならば、例えば、面取りした長方形の平面形状、スノーボードの輪郭と相似の中くびれ平面形状、サーフボードの輪郭と相似の平面形状、小型マウスパッドと兼用可能なやや広幅の平面形状である。
【0031】
シート基材48の素材には、発泡プラスチック、熱可塑性プラスチック、繊維フェルトなどが例示でき、好ましくはポリウレタンシートまたはフェルトシートである。シート基材48として好適な圧縮ポリウレタンシートは、厚さが1〜2mmであることが望ましい。この圧縮ポリウレタンシートは、高硬度ポリエーテルウレタンからなり、JIS・K6400に基づいて硬さ400±50Nであるポリエーテルウレタンである。
【実施例1】
【0032】
次に、本発明を実施例に基づいて説明する。図1に示す転写ラベル1を製造するために、厚み100μmのポリエステルフィルム(商品名:ルミラーS10)2を用いる。フィルム2の表面の全体に、420メッシュのスクリーン版を用いて、離型剤をスクリーン印刷して離型層3を形成する。この離型剤は、スリップ層5との剥離性を抑制するために、水酸基含有シリコン変性アクリル溶液を添加し、さらにイソシアネート樹脂、シリカ、脂肪酸アマイドワックスをプレ膨潤させたペースト状の非水系塗料用ダレ・沈降防止剤を含有する。この結果、ポリエステルフィルム2の上に離型層3がベタ塗りされたベースシート6を得る。
【0033】
表面スリップ層5は、300メッシュのスクリーン版を用いて、ベースシート6の上に、所定の平面形状にスクリーン印刷される。スリップ層5は、フッ素系樹脂、イソシアネート樹脂、シリカ、脂肪酸アマイドワックスをプレ膨潤させたペースト状の非水系塗料用ダレ・沈降防止剤からなる。ついで、透明保護層7を180メッシュのスクリーン版によってスクリーン印刷してから、単色または多色の図柄層8をスクリーン印刷する。図柄層8は、例えば、各種の顔料、ポリウレタン系樹脂、イソシアネート樹脂、シリカからなり、1回または複数回に亘ってスクリーン印刷する。
【0034】
図柄層8を乾燥した後に、白色のバックアップ層10および中間層12を順次スクリーン印刷し、バックアップ層10は周囲が0.5mm小さいスクリーン版を用いた縮小ポジである。白色のバックアップ層10は、例えば、二酸化チタン、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、イソシアネート樹脂、シリカからなり、2回印刷で厚さが13μmである。バックアップ層10を乾燥した後に、中間層12をスクリーン版によって積層する。厚さ15μmの中間層12は、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、イソシアネート樹脂からなる。
【0035】
最後に、接着層14をスクリーン印刷して乾燥し、該接着層は周囲が0.5mm大きいスクリーン版を用いた拡大ポジである。接着層14は、2回印刷で厚さ96μmである。接着層14の樹脂ペーストは、例えば、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、熱可塑性ポリアミド系樹脂からなる。全てのスクリーン印刷の終了後にさらに乾燥して転写ラベル1を得る。転写ラベル1において、保護層7、図柄層8、バックアップ層10、中間層12、接着層14は、いずれもポリウレタン系樹脂を含有することにより、該転写ラベルは乾燥後に伸縮性を有する。
【実施例2】
【0036】
図2に示す転写ラベル15を製造するために、ベースシートとして、厚さ100μmのポリエステルフィルム16を用いる。フィルム16上に、70〜180メッシュのスクリーン版を用いて、効果層18をスクリーン印刷してベタ塗りする。効果層18用の印刷インクとして、マイクロカプセルの発泡粉末を液状ポリウレタン系樹脂と配合する。効果層18は、ベタ塗り以外にも、ドット模様や水玉模様の平面形状などでもよい。
【0037】
効果層18を乾燥した後に、180〜225メッシュのスクリーン版によって厚さ4μmの艶出し処理した離型層20を印刷して乾燥する。離型層20は、イソシアネート樹脂、シリカ、水酸基含有シリコン変性アクリル溶液、脂肪酸アマイドワックスをプレ膨潤させたペースト状の非水系塗料用ダレ・沈降防止剤からなる。離型層20のスクリーン版メッシュは、転写ラベル15の剥離性に影響するので、効果層18の面積や平面形状に応じて最適のものを選択する。
【0038】
スリップ層22は、300メッシュのスクリーン版を用いて、離型層20の上に、所定の平面形状にスクリーン印刷される。スリップ層22は、フッ素系樹脂、イソシアネート樹脂、シリカ、脂肪酸アマイドワックスをプレ膨潤させたペースト状の非水系塗料用ダレ・沈降防止剤からなる。ついで、透明保護層24を、180メッシュのスクリーン版によってスクリーン印刷する。以下、実施例1と実質的に同様に処理して、多色の図柄層8、白色のバックアップ層10、中間層12および接着層14を順次スクリーン印刷して乾燥する。
【実施例3】
【0039】
図3に示す転写ラベル26を製造するために、実施例2と同様に効果層18および離型層20を形成する。スリップ層28は、保護層を兼ねており、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、イソシアネート樹脂、シリカ、脂肪酸アマイドワックスをプレ膨潤させたペースト状の非水系塗料用ダレ・沈降防止剤からなる。スリップ層28は、180〜225メッシュのスクリーン版を用いて、乾燥した離型層20の上に、所定の平面形状にスクリーン印刷される。
【0040】
以下、実施例2と実質的に同様に処理して、多色の図柄層8、白色のバックアップ層10、中間層12および接着層14を順次スクリーン印刷して乾燥する。
【実施例4】
【0041】
図4に示す転写ラベル30を製造するために、厚さ100μmのポリエステルフィルム32上に、70〜180メッシュのスクリーン版を用いて、第1効果層34をスクリーン印刷して乾燥する。第1効果層34は、ドット模様や水玉模様の平面形状である。次に、180メッシュのスクリーン版を用いて、第2効果層36をスクリーン印刷によってベタ塗りする。第1および第2効果層34,36用の印刷インクは、マイクロカプセルの発泡粉末を液状ポリウレタン系樹脂と配合する。
【0042】
第2効果層36を乾燥した後に、180〜200メッシュのスクリーン版によって厚さ4μmの艶出し処理した離型層38を印刷して乾燥する。離型層38は、イソシアネート樹脂、シリカ、水酸基含有シリコン変性アクリル溶液、脂肪酸アマイドワックスをプレ膨潤させたペースト状の非水系塗料用ダレ・沈降防止剤からなる。
【0043】
以下、実施例3と実質的に同様に処理して、保護層兼用のスリップ層28、多色の図柄層8、白色のバックアップ層10、中間層12および接着層14を順次スクリーン印刷して乾燥する。
【0044】
(応用例1)
実施例1において、図柄層8に白色の顔料を加えて白色の転写ラベル1を製造し、該転写ラベルを細長い矩形平面に裁断して複数枚の衣類保護シート40,42(図6)を作製した。保護シート40,42は、図6に例示するように、裏返してワークシャツ44の袖口や衿裏などの所定の個所に載置し、加熱プレス機によって温度130〜160℃、圧力0.5〜1.0kgs/cmで10〜20秒間熱転写した。
【0045】
衣類保護シート40,42は、表面滑り性が高くて防汚性を有するので、これを貼着したシャツ44の袖口や衿裏が汚れにくくなり、仮に汚れても簡単に拭き取ることができる。衣類保護シート40,42は、摩擦抵抗性を有しているので、シャツ44の生地の補強にもなる。また、この衣類保護シートは、繰り返し洗濯が可能であり、衣類の洗濯のたびに剥がす必要がなく、ドライクリーニングおよび低温のアイロン作業も可能である。
【0046】
布地に熱転写した衣類保護シート40,42について、該布地単独と比較するために静摩擦係数および摩耗強さを試験した。静摩擦係数の測定は、JIS P 8147(傾斜法)に準拠しており、引張速度が10mm/分、水平板には共生地で同じ布地を使用した。摩耗強さの測定は、JIS L 1018B-1に準拠しており、ユニバーサル形法で研磨紙が日研P-400CW(商品名)であり、研磨紙は500回で交換した。
【0047】
静摩擦係数の試験結果
衣類保護シート 縦:0.326 横:0.403
布地単独 縦:0.538 横:0.711
摩耗強さの試験結果
衣類保護シート 1350回
布地単独 67回
【0048】
前記の試験結果から、布地に熱転写した衣類保護シートは、布地単独と比べて静摩擦係数が低くなり、表面滑り性が非常に高くなる。また、この衣類保護シートは、布地単独と比べて約20倍の摩擦強さを有し、該布地について衣類保護シートを熱転写することによって補強できる。
【0049】
(応用例2)
実施例2において、スクリーン印刷を複数回繰り返して多色の図柄層8を有する転写ラベル15を製造し、該転写ラベルを円形平面に裁断して野球チームのマーク(図示しない)を作製した。この転写ラベルは、裏返してユニフォームの胸部に載置し、加熱プレス機によって温度130〜160℃、圧力0.5〜1.0kgs/cmで10〜20秒間熱転写して表面平滑マークを得た。
【0050】
ユニフォームに熱転写された表面平滑マークについて、市販の転写マーク(冷却剥離タイプ)と比較するために汚れにくさおよび静摩擦係数を試験した。汚れにくさの測定は、JIS L 1919(滴下拭き取り法)に準拠しており、親油性汚染物質−3を使用した。静摩擦係数の測定は、JIS P 8147(傾斜法)に準拠しており、摩擦布にはJIS L 0803に規定の綿添付白布を使用した。
【0051】
汚れにくさの試験結果
表面平滑マーク 3.0級
市販の転写マーク 2.0級
静摩擦係数の試験結果
表面平滑マーク 縦横:0.25
市販の転写マーク 縦横:0.38
【0052】
前記の試験結果から、ユニフォームに熱転写された表面平滑マークは、市販の転写マークと比べて汚れにくく、しかも表面滑り性が高くなる。また、この表面平滑マークは、表面に細かい凹凸模様が全面に形成されるのでべたつき感が少なくなり、ユニフォームの着心地を低下させることがない。
【0053】
(応用例3)
図7と図8に示す靴べら46について、厚さが1.3mmであるポリエーテルウレタン100%の圧縮ポリウレタン(株式会社ファインモールド製)であるシート基材48を使用する。シート基材48の入荷サイズは500×900mmであり、これを3等分(300×500mm)して面取り状に裁断する。
【0054】
シート基材48の表面では、実施例1の転写ラベル1を使用し、その図柄層8に青色と白色顔料を添加し、図7に示すような所定の2色模様を形成する。転写ラベル1を裏返してシート基材48の上に載置し、熱板プレス機によって温度130〜160℃、圧力0.5〜1.0kgs/cmで10〜20秒間熱転写し、スリップ層5および2色模様50の図柄層8を有する平滑な表面のシート基材48を得る。
【0055】
次に、シート基材48の裏面では、実施例2の転写ラベル15を使用し、その効果層18は水玉模様の平面形状であり、図柄層8に銀色顔料を添加してベタ塗りする。転写ラベル15を裏返してシート基材48の裏面上に載置し、熱板プレス機によって温度150℃、圧力0.5〜1.0kg/cmで10秒間熱転写する。熱転写の際に、効果層18が発泡して盛り上がり、シート基材48の裏面に顕著な凹凸模様52が形成され、該転写ラベルが冷えた後にベースシートを効果層18とともにシート基材48の裏面から剥離する。この結果、シート基材48の裏面は、反転した水玉の凹凸模様52が銀色の光沢を有し、しかも滑り性が高い。
【0056】
得た靴べら46は、300×500mmである面取りした細長い矩形状平面であり、2色模様50を有する高滑り性の表面と、水玉の凹凸模様52を有する高滑り性の裏面とからなり、携帯用として好適である。靴べら46は、その後方のフックグリップ部54に貫通孔56を設け、該貫通孔にチェーンや紐(図示しない)を通して吊り下げ可能とし、ビジネスバッグやリュックサックに取り付けてもよい。靴べら46では、ブレード部58を靴の周壁カウンター内に差し込む際に、そのチェーンや紐を持つと靴べら46のフックグリップ機能が良くなる。靴べら46は、そのままポケットに入れておいても、適宜のストラップを取り付け、携帯電話機のマスコットパーツにしてもよい。
【0057】
(応用例4)
図9に示すマウスパッド60について、応用例3で用いたシート基材48を120×150mmに面取り状に裁断する。シート基材48の表面では、実施例1の転写ラベル1を使用し、その図柄層8に図示のような3色模様を形成する。転写ラベル1を裏返してシート基材48の上に熱転写すると、スリップ層および3色模様62の図柄層を有する高滑り性の表面のシート基材48を得る。
【0058】
次に、シート基材48の裏面では、プリント加工によって密着性の高いシリコン層(図示しない)を設け、該シート基材は裏面の密着性を高くする。マウスパッド60は、表面だけが滑り性が高く、パソコンを使用する際に机の上に載置すると、そこでマウス(図示しない)を正確にコントロールでき、該マウスパッド60は机上で静止している。
【符号の説明】
【0059】
1 転写ラベル
2 フィルム
3 離型層
5 スリップ層
6 ベースシート
7 保護層
8 図柄層
10 バックアップ層
12 中間層
14 接着層
18 効果層
34 第1効果層
36 第2効果層
40,42 衣類保護シート
46 靴べら
48 シート基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有することによって可撓性の被転写材への熱転写が可能である転写ラベルであって、ベースシート上に少なくとも表面スリップ層、図柄層および接着層を順次設けており、可撓性の被転写材へ熱転写すると、表面スリップ層および図柄層がベースシートから被転写材に融着されることにより、表面スリップ層の存在によって高い表面滑り性を有する転写ラベル。
【請求項2】
ベースシート上に発泡ポリウレタン系樹脂を含む効果層および離型層を積層し、該効果層が適宜の平面模様を有するベースシートを用い、該ベースシート上に少なくとも表面スリップ層、図柄層および接着層を順次設けており、可撓性の被転写材へ熱転写する際に、効果層が発泡して盛り上がって表面スリップ層の表面に凹凸模様が生じるとともに、該表面スリップ層および図柄層がベースシートから被転写材に融着されることにより、凹凸模様が形成された表面スリップ層の存在によって表面滑り性を有する転写ラベル。
【請求項3】
表面スリップ層は、フッ素系樹脂を機能成分として含有し、ベースシートの剥離層上に塗布することによって積層される請求項1または2記載の転写ラベル。
【請求項4】
表面スリップ層およびベースシートの離型層には、基礎成分として、イソシアネート樹脂およびシリカを含む請求項2または3記載の転写ラベル。
【請求項5】
ベースシートと表面スリップ層との剥離性を抑制するために、ベースシートの離型層にシリコン変性アクリル溶液を含んでいる請求項1または2記載の転写ラベル。
【請求項6】
表面スリップ層およびベースシートの離型層には、さらに脂肪酸アマイドワックスをプレ膨潤させたペースト状の非水系塗料用ダレ・沈降防止剤を含む請求項3または4記載の転写ラベル。
【請求項7】
柔軟性を有することによって衣類への熱転写が可能であり、ベースシート上に少なくとも表面スリップ層、図柄層および接着層を順次設けた転写ラベルを用い、衣類の所定個所へ熱転写すると、表面スリップ層および図柄層がベースシートから衣類の所定個所に融着されることにより、表面スリップ層の存在によって高い表面滑り性および防汚性を有する衣類保護シート。
【請求項8】
柔軟性を有することによって柔軟なシート基材への熱転写が可能であり、ベースシート上に少なくとも表面スリップ層、図柄層および接着層を順次設けた転写ラベルを用い、該転写ラベルを薄い矩形平面のシート基材の表面へ熱転写すると、表面スリップ層および図柄層がベースシートからシート基材に融着されることにより、表面スリップ層の存在によって高い表面滑り性を有する靴べら。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−194761(P2011−194761A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65519(P2010−65519)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(391002513)ジャパンポリマーク株式会社 (6)
【Fターム(参考)】