説明

表面異物除去装置

【課題】 本発明は不均質現象及び再固着現象の発生を防止できる、繊維シートの表面異物除去装置を提供すること。
【解決手段】 長尺状の繊維シートBに付着した異物を除去する装置であって、繊維シートBの表側に付着する異物を除去するための表側除去部31と、繊維シートBの裏側に付着する異物を除去するための裏側除去部32とからなる異物除去機3を備え、前記表側除去部31及び前記裏側除去部32は、自立的に駆動する駆動ローラー3Aと、該駆動ローラー3Aの側方から接触する粘着ローラー(3B1,3B2)とからなり、前記繊維シートBが前記駆動ローラー3Aと前記粘着ローラー(3B1,3B2)との間を通過することにより異物を除去するものである表面異物除去装置A。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状の繊維シートの表面の汚れ除去装置に関し、更に詳しくは、長尺状の繊維シートの表面に付着した汚れ(異物等)に、粘着材が付与されたローラーを接触させることにより除去する表面異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ある部材の表面の汚れを除去する場合、繊維シートを使って、付着したゴミや塵等の異物を拭き取る方法が採用されている。
繊維シートは屈曲性がよく、繊維の目に異物が入り込み、捕捉し易く細かい異物を除去するには極めて有効である。
【0003】
特に、半導体分野では、半導体基板の表面に付着した異物を除去するには、長尺状の繊維シートが使われている。
使用後の繊維シートには半導体基板の汚れである異物が繊維の間隙に入り込んで固着してしまうため、再使用はできず、廃棄されていた。
【0004】
しかし最近、リサイクルの観点から、繊維シートに付着する異物を除去する試みが行われている。
ところで、繊維シートから付着物を取り除く表面異物除去装置の一つとして、粘着ローラーを使ったものが開発されており、その装置は上下一対の粘着ローラーを備え、その間に繊維シートを通すことで、その両側の表面に付着する異物を粘着ローラーに受け取らせて除去するものである。
【0005】
図7は、従来の表面異物除去装置の異物除去原理の一例を模式的に示す概略図である。
従来の表面異物除去装置は、自立的に駆動可能であり、且つその表面に粘着材が付与された駆動ローラー100と、該駆動ローラー100の垂直上方から接触するように設置され、表面に粘着材が付与された粘着ローラー101とからなる。
【0006】
この装置では、繊維シートBが駆動ローラー100と粘着ローラー101との間を通過すると、駆動ローラー100及び粘着ローラー101が繊維シートBに所定の接触圧を加え、駆動ローラー100及び粘着ローラー101が繊維シートに付着する異物を受け取り、繊維シートBから異物を除去する。
【0007】
ところが、下方の駆動ローラー100は駆動しているため、繊維シートBの表面に対して、該繊維シートBを積極的に先方に引っ張る張力を加える。
一方、上方の粘着ローラー101は自立的に駆動しないため、繊維シートBの表面に対して、該繊維シートBを先方に引っ張る張力を加えない。
【0008】
下方の駆動ローラー100により生じる張力は、繊維シートの表面に皺等を発生させる原因となる。
そのため、従来の表面異物除去装置を用いると、異物を除去した後の繊維シートの表面の状態が、一方側と他方側とで均質にならずに異なる現象(不均質現象)が生じ、異物除去後の繊維シートの品質が大きく落ちる問題があった。
【0009】
このようなことから、繊維シートの一方側と他方側の表面を、順次別々に粘着ローラーに接触させる方法が開発されている(図8参照)。
すなわち、粘着材が付与されていない駆動ローラー100と粘着ローラー101との間に、繊維シートBを通過させることで、先ず一方側の表面に付着する異物のみを除去し、次に、直前に配置された駆動ローラー及び粘着ローラーとは上下逆に配置された下流側の駆動ローラー100と粘着ローラー101とで、繊維シートの他方側の異物を除去する方法である(例えば、特許文献1参照)。
この方法を用いると、不均質現象が発生する問題は一応解決できる。
【特許文献1】特開平6−296945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上流側に設置された粘着ローラー101が異物を全て除去仕切れなかった場合、それらの除去されなかった異物は、上記粘着ローラー101の粘着材を表面に僅かに付着させた状態で、下流に設置された駆動ローラー100と粘着ローラー101との間を通過することになる。
そして、異物は下流に設置された上記二つのローラー間を通過する際、駆動ローラー100によって繊維シートBに押し付けられ、繊維シートB表面に粘着材を介して固着する(以下、「再固着現象」という)場合がある。
【0011】
再固着現象が発生すると、異物は粘着材によって強固に繊維シートに固着するので、その異物を繊維シートから除去することは非常に困難である。
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものである。
すなわち、本発明は不均質現象及び再固着現象の発生を防止できる、繊維シートの表面異物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かくして本発明者は、このような課題背景に対して鋭意研究を重ねた結果、少なくとも自立的に駆動する駆動ローラーの側方から接触するように、粘着ローラーを配置させることで、上記課題を解決できることを見出し、その知見に基づき本発明を完成させたものである。
【0014】
すなわち、本発明は、(1)、長尺状の繊維シートに付着した異物を除去する装置であって、繊維シートの表側に付着する異物を除去するための表側除去部と、繊維シートの裏側に付着する異物を除去するための裏側除去部とからなる異物除去機を備え、前記表側除去部及び前記裏側除去部は、自立的に駆動する駆動ローラーと、該駆動ローラーの側方から接触する粘着ローラーとからなり、前記繊維シートが前記駆動ローラーと前記粘着ローラーとの間を通過することにより、前記繊維シートから前記異物が除去される表面異物除去装置に存する。
【0015】
また、本発明は、(2)、前記表側除去部及び前記裏側除去部が、前記駆動ローラーに対向する二つの粘着ローラーを備える上記(1)記載の表面異物除去装置に存する。
【0016】
また、本発明は、(3)、前記粘着ローラーが前記駆動ローラーに対して近接自在である上記(1)記載の表面異物除去装置に存する。
【0017】
また、発明は、(4)、前記表側除去部又は裏側除去部が、前記粘着ローラーに付着した異物を除去するための再粘着ローラーを更に備える上記(1)記載の表面異物除去装置に存する。
【0018】
また、本発明は、(5)、前記表側除去部及び前記裏側除去部が、前記再粘着ローラーを前記粘着ローラーに常に押圧する状態を作るための押圧手段を更に備える上記(4)記載の表面異物除去装置に存する。
【0019】
また、本発明は、(6)、前記表側除去部及び前記裏側除去部を複数対備える上記(1)記載の表面異物除去装置に存する。
【0020】
また、本発明は、(7)、表側除去部及び裏側除去部を二対備え、該二対の表側除去部及び裏側除去部を二段二列に配置させる上記(6)記載の表面異物除去装置に存する。
【0021】
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)〜(7)に記載された発明を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の表面異物除去装置は、自立的に駆動し、且つ粘着材が付与されていない駆動ローラーと、表面に粘着材が付与され、駆動ローラーの側方から接触するように設置される粘着ローラーとを備えた表側除去部及び裏側除去部を有するので、不均質現象を発生させることなく、繊維シート表面の異物を除去することができる。
【0023】
また、本発明の表面異物除去装置は、駆動ローラーに対向する二本の粘着ローラーを有する表側除去部及び裏側除去を備えることで、再固着現象を発生させることなく、繊維シートの異物を除去することができる。
【0024】
すなわち、表側除去部又は裏側除去部において、この装置の上流側に設置された一本目の粘着ローラーが先ず異物の除去を行い、該粘着ローラーが除去仕切れなかった異物を、下流側に設置された二本目の粘着ローラーが連続して除去を行う。
【0025】
これにより、一本目の粘着ローラーが除去仕切れなかった異物を、別の駆動ローラーによって繊維シートに固着させられる前に除去することができ、再固着現象が発生することを防ぐことができる。
【0026】
また、粘着ローラーは駆動ローラーの側方から接触するように配置されるので、構造的に粘着ローラーの荷重を軽減でき、粘着ローラーは繊維シートに対して、異物を除去するうえで必要最小限の接触圧しか加えない。
その結果、粘着ローラーは異物を繊維シート内に深く埋没させることなく、繊維シートから異物を除去することができる。
【0027】
また、粘着ローラーは駆動ローラーに対して近接自在であるので、繊維シートの厚さに関係なく、粘着ローラーは繊維シートに対して、異物を除去するのに最低限必要な接触圧しか加えない。
そのため、本発明の表面異物除去装置は、繊維シートの厚さに関係なく、異物を繊維シート内に埋没させることなく除去することができる。
【0028】
また、本発明の表面異物除去装置は、粘着ローラーに付着した異物を除去するための再粘着ローラーを備えるので、粘着ローラーの表面の状態を常に異物が付着していない状態に保つことができる。
それにより、本発明に係る表面異物除去装置は異物除去能力を低下させること無く、長時間に渡って稼働し続けることができる。
【0029】
また、本発明の表面異物除去装置は、表側除去部及び裏側除去部を複数対備えることで、表側除去部及び裏側除去部を一対だけ備える場合よりも確実に、繊維シートから異物を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
〔第1の実施形態〕
本発明の一実施形態を、図面を用いて説明する。
また特に断らない限り、文中に記載されている「上流」、「下流」とは装置内での位置関係を示し、「上流」に位置する装置は「下流」に位置する装置よりも先に処理を行う。
【0031】
図1は、本実施形態に係る表面異物除去装置を模式的に示す説明図である。
図1に示すように、本実施形態に係る表面異物除去装置Aは、送り出しローラー1と、巻き取りローラー2と、異物除去機3とを備え、これらは送り出しローラー1、異物除去機3、巻き取りローラー2の順序で流れ方向に直列に配置される。
【0032】
送り出しローラー1は、異物が除去される前の繊維シートBを巻き付けておくためのローラーである。
【0033】
巻き取りローラー2は、異物除去機3を通過し、表面の異物が除去された後の繊維シートBを巻き取るためのローラーである。
【0034】
異物除去機3は、通過する繊維シートBの表面に付着する異物を除去するための装置である。
【0035】
そして、異物除去機3は繊維シートBの表側に付着した異物を除去するための表側除去部31と、繊維シートBの裏側に付着した異物を除去するための裏側除去部32とを備え、繊維シートBの表側の異物と裏側の異物とを順次別々に除去する。
そのため、後述するように、不均質現象を発生させない。
【0036】
図2は、表側除去部(及び裏側除去部)を模式的に示した説明図である。
図2に示すように、表側除去部31(及び裏側除去部32)は、駆動ローラー3A、粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2を備える。
裏側除去部32は表側除去部31と構造的には同じであり、表側除去部31が備えるのと同様な粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2を、繊維シートBの裏側に接触するように配置させることで、裏側除去部32となる。
なお裏側除去部32は、表側除去部31と機能的にも同じなので以下表側除去部31のみについて述べる。
【0037】
繊維シートBは、始めに駆動ローラー3Aと粘着ローラー3B1との間を通過し、その後、駆動ローラー3Aと粘着ローラー3B2との間を通過するように、表側除去部31にセットされる。
なお、これらの各ローラーは図示しない基枠に共通に設置されている。
【0038】
駆動ローラー3Aは、モーター等の図示しない駆動手段を備えており、自立的に回転する。
駆動ローラー3Aが回転することにより、繊維シートBは下流方向に送られる。
駆動ローラー3Aには粘着材が付与されていないので、先述した従来の表面異物除去装置のように、駆動ローラー3Aは繊維シートBの表面を先方に引っ張るような大きな張力を発生させない。
そのため、本実施形態に係る表面異物除去装置Aは従来のような不均質現象を、発生させることなく繊維シートBに付着する異物を除去することができる。
【0039】
なお、表側除去部31の駆動ローラーの回転数と、裏側除去部32の駆動ローラーの回転数とは同期させておけば、繊維シートBは異物除去機3内を、常に弛まない状態で移動することができる。
もっとも、途中でテンションローラー等の別のロ−ラーを配置することで、繊維シートBを緊張状態にさせることも、当然可能である。
【0040】
粘着ローラー3B1の垂直上方(すなわち下流側に)に粘着ローラー3B2は配置され、それぞれの軸の位置は一直線上に乗る。
粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2は、駆動ローラー3Aに対して、近接自在(接離脱自在)に移動可能であり、駆動ローラー3Aに対向して接触するように配置される。このとき、粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2は一体となって平行移動する。
【0041】
粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2の表面には粘着材が付与されており、それぞれの粘着ローラーは繊維シートBに対して所定の大きさの接触圧を加えた際に、繊維シートBの表面から異物を受け取って除去する。
そして、表側除去部31(及び裏側除去部32)において、粘着ローラー3B1と粘着ローラー3B2とが対となって、繊維シートBの一方側の表面の異物除去を順次、連続的に行うことで、再固着現象の発生を防ぐことができる。
【0042】
すなわち、次の位置に配置される裏側除去部32にて繊維シートBが駆動ローラー3Aに押し潰される前に、粘着ローラー3B1が除去仕切れなかった異物を、粘着ローラー3B1より下流に設置される粘着ローラー3B2が速やかに除去することで、再固着現象の発生を防ぐことができる。
【0043】
さらに、粘着ローラー3B1と粘着ローラー3B2とが順次連続且つ近接して設置されることで、繊維シートBの内部に埋没する異物も除去することができる。
【0044】
具体的には、粘着ローラー3B1は、繊維シートBの表層の異物Xを除去すると共に、繊維シートBの内部に埋没していた異物Yを繊維シートBの表層に引き出す(図3A参照)。
【0045】
すなわち、粘着ローラー3B1は繊維シートBを構成する繊維同士の絡み合いを一部解くことで、絡み合った繊維の内部に入り込んでいた異物Yを繊維シートBの表層に移動させたり、表層から露出させたりする。
【0046】
そして、粘着ローラー3B1よりも下流側に設置された粘着ローラー3B2が、表層に引き出された異物Yを受け取って除去することで、繊維シートBの表面に付着していた異物だけでなく、内部に埋没していた異物も除去されるのである(図3B参照)。
【0047】
前述したように粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2は、駆動ローラー3Aに対して近接自在であるので、それぞれの粘着ローラーが繊維シートBに対して加える接触圧の大きさは駆動ローラーと粘着ローラーとの間に形成させる隙間の大きさで調節される。
例えば、繊維シートBの厚さの70%〜50%程度の大きさの隙間を形成することが好ましい。
隙間の大きさが繊維シートの厚さの50%よりも小さいと、接触圧が大きくなりすぎ、異物を繊維シート内に押し込んでしまう。
隙間の大きさが繊維シートの70%よりも大きいと、異物の除去に最低限必要な大きさの接触圧を確保することができない。
【0048】
必要最小限の接触圧だけが繊維シートBに対して加わることで、粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2が与える接触圧によって、異物が繊維シートBの内部に埋没することが防止される。
【0049】
なお、駆動ローラー3Aの材質は繊維シートBとの間の摩擦力の観点から金属が好ましく、更に防錆性の点からステンレスがより好ましい。
【0050】
粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2の表面に付与される粘着材の材質は、それぞれの粘着ローラーが繊維シートBから異物を受け取ることができるだけの粘着力を有する限り、特に限定されない。
特殊アルコールなどの専用クリーナーにより清掃が容易である利点があることより、粘着材の材質は粘着多孔質のブチルゴムであることが好ましい。
また、粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2の全体が、粘着材質で形成されていてもよい。
【0051】
〔第2の実施形態〕
図4は、再粘着ローラーを備えた表側除去部及び裏側除去部を模式的に示した説明図である。
再粘着ローラー3Cは、粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2に対して、近接自在であり、通常、図4に示すように、再粘着ローラー3Cは、粘着ローラー3B1と粘着ローラー3B2の両方に共通に接触した状態で設置される。
【0052】
再粘着ローラー3Cの表面には、粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2に付与された粘着材よりも強力な粘着材が付与されているため、粘着ローラー3B1或いは粘着ローラー3B2が繊維シートBから一旦受け取った異物は、再度再粘着ローラー3Cに転移して受け取られる。
すなわち、再粘着ローラー3Cは、粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2から異物を受け取って除去する機能を持つ。
【0053】
再粘着ローラー3Cが、粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2から異物を除去することで、粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2の表面は、常に異物がほとんど付着していない状態に保たれる。
【0054】
その結果、これら二つの粘着ローラーの異物除去能力の低下は防止され、本実施形態に係る表面異物除去装置Aは、安定した除去能力を維持したまま稼働し続けることができる。
【0055】
再粘着ローラー3Cが粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2に、共通に接触した状態で設置されることで、再粘着ローラー3Cが粘着ローラー3B1と粘着ローラー3B2との間に閉鎖した空間Sが形成される。
この空間Sは再粘着ローラー3C、粘着ローラー3B1、粘着ローラー3B2の周囲から隔離しているために室内に存在する粉塵(空調等による乱流を受けている)の影響を受けない。
そのため絡み合った繊維の内部に入り込んでいた異物Yが、繊維シートBの表層から露出した状態を乱すことがなく、前述したような粘着ローラー3B2への異物Yの転移が支障なく遂行されるのである。
【0056】
再粘着ローラー3Cの表面に付与される粘着材の材質は、粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2よりも強力な粘着力を有するものであれば、特に限定されるものではない。なお、再粘着ローラー3Cの全体が、粘着材質で形成されていてもよい。
【0057】
ところで、本実施形態に係る表側除去部31及び裏側除去部32において、粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2に押し付ける押圧手段3Eを再粘着ローラー3Cの軸に取り付けることで、粘着ローラーの異物除去能力を低下させることなく、長時間に渡って稼働させることができる。
【0058】
〔第3の実施形態〕
図5は、再粘着ローラーが押圧手段を備えた状態を示す模式図である。
押圧手段3Eはエアシリンダ等のように、一方向に力を加え続けることができる装置で、図5に示すように、押圧手段3Eは再粘着ローラー3Cの軸を、粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2側に常に押圧するように取り付けられる。
【0059】
押圧手段3Eが再粘着ローラー3Cに備わることで、本実施形態に係る表面異物除去装置Aの稼働に伴い、再粘着ローラー3Cの表面が消耗し、縮径した場合でも、再粘着ローラー3Cは常に粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2に接触することができる。
【0060】
〔第4の実施形態〕
図6は、本発明を具体化した表面異物除去装置を説明する図である。
この例では、表側除去部及び裏側除去部を、複数対、すなわち二対備えたものとなっている。
図6に示すように、本実施形態に係る表面異物除去装置Aの異物除去機3は、表側除去部31及び裏側除去部32を二対備え、且つ上流方向から、第一表側除去部31A、第一裏側除去部32A、第二裏側除去部32B、第二表側除去部31Bの順序で配置される。
【0061】
さらに、表側除去部31及び裏側除去部32は二段二列に配置される。
表側除去部31及び裏側除去部32がこのように上下左右に要領よく配置されることで、異物除去機3の占める領域を極力小さくすることができ、それに伴い表面異物除去装置A全体の容積も極力小さくすることができる。
【0062】
第一表側除去部31A、第二表側除去部31B、第一裏側除去部32A及び第二裏側除去部32Bが備える各駆動ローラー3Aは、基枠Fに取り付けられた基台3Dの上に完全に固定された状態で設置される。
粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2の軸を支えるための図示しない軸受け台は、基台3Dに形成されたレール3D1に案内されて移動する。
これにより、粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2は駆動ローラー3Aに対して共に揃って近接自在となる。
また、上記軸受け台は、粘着ローラー3B1の軸と粘着ローラー3B2の軸とを共通に支えているので、粘着ローラー3B1と粘着ローラー3B2とは一体となって基台3D上を平行移動する。
【0063】
再粘着ローラー3Cの軸受けも同様にレール3D1に案内されて移動する。
従って、粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2と、再粘着ローラー3Cとは別個に独立して基台3D上を移動することができる。
【0064】
基枠Fには、キャスターGが設けられ、本表面異物除去装置A全体として移動可能である。
また、押圧手段3Eである図示しないエアシリンダは、粘着ローラー3B1と再粘着ローラー3Cとの間に設置され、再粘着ローラー3Cの軸受け台に対して、粘着ローラー3B1側に引き寄せる方向に力を加える。
【0065】
次に、本発明の実施形態に係る表面異物除去装置Aにおける、異物除去の工程について述べる。
先ず、先端に、一定の長さの布体、いわゆる導布が接合されている繊維シートBを、送り出しローラー1に取り付ける。
次に、各表側除去部31の粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2を、駆動ローラー3Aから所定の距離だけ移動させ、駆動ローラー3Aと二つの粘着ローラーとが離隔した、いわゆる開放状態を作る。同様の操作を、各裏側除去部32についても行う。
【0066】
全ての表側除去部と裏側除去部とを開放状態にしたら、まず、案内用の導布(繊維シートBの先端に取り付けられている)を送り出しローラー1から引き出し、案内ローラーHに巻回させ、第一表側除去部31Aの駆動ローラー3Aと上記二つの粘着ローラーとの間に通過させる。
【0067】
そして、上述した第一表側除去部31Aについて行った操作と同様の操作を、第一裏側除去部32A、第二裏側除去部32B、第二表側除去部31Bの順序で、順次行い、最後にその導布を巻き取りローラー2に取り付ける。
【0068】
導布を巻き取りローラー2に取り付けた後、各除去部の粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2を、繊維シートBに接触するまで駆動ローラー3Aに近づける。
このとき、粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2の粘着力や繊維シートBに付着する異物の種類等によって、粘着ローラー3B1及び粘着ローラー3B2が繊維シートBに加える接触圧を調節する。
以上により、繊維シートBは異物除去機3及び巻き取りローラー2にセットされる。
【0069】
次に、異物除去機3を稼働させる。
異物除去機3の稼働により、各除去部の駆動ローラー3Aが回転を始め、繊維シートBは順次下流方向に移動する。
この場合、繊維シートBは最初に第一表側除去部31Aに送られる。
【0070】
第一表側除去部31Aに送られた繊維シートBに付着している表側の異物の大部分は、粘着ローラー3B1によって除去される。
また、同時に繊維シートBの表側表面から一定の深さに存在していた異物も、粘着ローラー3B1によって表側表面まで引き出される。
【0071】
そして、粘着ローラー3B1の直後に設置された粘着ローラー3B2よって、粘着ローラー3B1が除去仕切れなかった異物、及び粘着ローラー3B1によって表側表面に引き出された異物が、除去される。
【0072】
第一表側除去部31Aを通過した繊維シートBは、次に、第一表側除去部31Aの上方に設置された、第一裏側除去部32Aに送られる。
第一裏側除去部32Aに設置された粘着ローラー3B1は、第一表側除去部31Aに設置された粘着ローラー3B1と同様に、繊維シートBの裏側に付着する異物の除去を行い、また繊維シートBの内部に存在していた異物を裏側表面まで引き出す。
【0073】
そして、第一裏側除去部32Aに設置された粘着ローラー3B2も、第一表側除去部31Aに設置された粘着ローラー3B2と同様に、第一裏側除去部32Aが除去し切れなかった異物及び裏側表面に引き出された異物の除去を行う。
【0074】
第一裏側除去部32Aを通過した繊維シートBは、次に、第一裏側除去部32Aの側方に設置された第二裏側除去部32Bへ送られる。
第二裏側除去部32Bは、第一裏側除去部32Aで除去し切れなかった、繊維シートBの裏側に付着する僅かな異物の除去を行う。
その除去方法は、第一裏側除去部32Aと同じである。
【0075】
第二裏側除去部32Bを通過した繊維シートBは、次に、繊維シートBの弛み防止のためのテンションローラーTを介して第二表側除去部31Bに送られる。
第二表側除去部31Bは、第一表側除去部31Aが除去し切れなかった繊維シートBの表側に付着する僅かな異物の除去を行う。
異物の除去方法は、第一表側除去部31Aの除去方法と同じである。
第二表側除去部31Bを通過した繊維シートBは、巻き取りローラー2によって巻き取られる。
【0076】
このように、表側除去部及び裏側除去部を二対備えることで、本実施形態に係る表面異物除去装置において、上流側に設置された表側除去部(または裏側除去部)が除去できずに、下流に流れてしまった異物があった場合でも、下流側に設置された表側除去部(または裏側除去部)がそれらの異物を除去することができる。
【0077】
以上、本発明を説明してきたが、本発明は上記の実施の形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。
例えば、本発明に係る表面異物除去装置がクリーンルーム等の無塵空間内に設置されることで、繊維シートが巻き取りローラーに巻き取られる際に、新たに塵や埃等の異物が付着するのを防止することができる。
【0078】
また、送り出しローラーと異物除去機との間に、前もって除電バーやイオナイザー等の除電手段を設けることができる。
これにより予め繊維シートに付着する特別な異物を除いた状態で繊維シートを異物除去機に送ることができるので、本発明の異物除去装置の除去能力はさらに高まる。
また、案内のためのテンションローラーや補助ローラーは、必要に応じて設置することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、本実施形態に係る表面異物除去装置を模式的に示す説明図である。
【図2】図2は、表側除去部(及び裏側除去部)を模式的に示した説明図である。
【図3】図3は、粘着ローラーが繊維シート内部の異物を除去する過程を示した説明図である。
【図4】図4は、再粘着ローラーを備えた表側除去部及び裏側除去部を模式的に示した説明図である。
【図5】図5は、再粘着ローラーが押圧手段を備えた状態を示す模式図である。
【図6】図6は、本発明を具体化した表面異物除去装置Aを説明する図である
【図7】図7は、従来の表面異物除去装置の異物除去原理の一例を模式的に示す概略図である。
【図8】図8は、従来の表面異物除去装置の異物除去方法の一例を模式的に示す概略図である。
【符号の説明】
【0080】
A…異物除去装置
B…繊維シート
F…基枠
G…キャスター
H…案内ローラー
S…間隙
T…テンションローラー
1…送り出しローラー
2…巻取りローラー
3…異物除去機
3A…駆動ローラー
3B1…粘着ローラー
3B2…粘着ローラー
3C…再粘着ローラー
3D…基台
3D1…レール
3E…押圧手段
31…表側除去部
31A…第一表側除去部
31B…第二表側除去部
32…裏側除去部
32A…第一表側除去部
32B…第二表側除去部
100…駆動ローラー
101…粘着ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の繊維シートに付着した異物を除去する装置であって、
繊維シートの表側に付着する異物を除去するための表側除去部と、
繊維シートの裏側に付着する異物を除去するための裏側除去部と、
からなる異物除去機を備え、
前記表側除去部及び前記裏側除去部は、自立的に駆動する駆動ローラーと、
該駆動ローラーの側方から接触する粘着ローラーとからなり、
前記繊維シートが前記駆動ローラーと前記粘着ローラーとの間を通過することにより、前記繊維シートから前記異物が除去されることを特徴とする表面異物除去装置。
【請求項2】
前記表側除去部及び前記裏側除去部が、前記駆動ローラーに対向する二つの粘着ローラーを備えることを特徴とする請求項1記載の表面異物除去装置。
【請求項3】
前記粘着ローラーが前記駆動ローラーに対して近接自在であることを特徴とする請求項1記載の表面異物除去装置。
【請求項4】
前記表側除去部又は裏側除去部が、前記粘着ローラーに付着した異物を除去するための再粘着ローラーを更に備えることを特徴とする請求項1記載の表面異物除去装置。
【請求項5】
前記表側除去部及び前記裏側除去部が、前記再粘着ローラーを前記粘着ローラーに常に押圧する状態を作るための押圧手段を更に備えることを特徴とする請求項4記載の表面異物除去装置。
【請求項6】
前記表側除去部及び前記裏側除去部を複数対備えることを特徴とする請求項1記載の表面異物除去装置。
【請求項7】
表側除去部及び裏側除去部を二対備え、該二対の表側除去部及び裏側除去部を二段二列に配置させることを特徴とする請求項6記載の表面異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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