説明

表面被覆配線付きプリント配線基板およびその製造方法

【課題】本発明は、銅イオンのマイグレーションが抑制され、配線間の絶縁信頼性に優れたプリント配線基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基板と、基板上に配置される銅配線または銅合金配線と、基板上に配置され銅配線または銅合金配線の一部が露出するように銅配線および銅合金配線を覆う絶縁層とを有するプリント配線基板と、1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む処理液とを接触させ、その後プリント配線基板を溶剤で洗浄して、露出した銅配線または銅合金配線表面上に1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層を形成する層形成工程を備える、表面被覆配線付きプリント配線基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面被覆配線付きプリント配線基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、高密度実装化等が進んでおり、これらに使用されるプリント配線基板等も小型化かつ高密度化が進んでいる。このような状況下、プリント配線基板中の配線の間隔はより狭小化しており、特に露出した銅または銅合金の配線の配線間の短絡を防止するためにも、配線間の絶縁信頼性のより一層の向上が要求されている。
【0003】
銅または銅合金の配線間の絶縁性を阻害する要因の一つとしては、いわゆる銅イオンのマイグレーションが知られている。これは、配線回路間などで電位差が生じると水分の存在により配線を構成する銅がイオン化し、溶出した銅イオンが隣接する配線に移動する現象である。このような現象によって、溶出した銅イオンが時間と共に還元されて銅化合物となってデンドライト(樹枝状晶)状に成長し、結果として配線間を短絡してしまう。
【0004】
このようなマイグレーションを防止する方法として、銅または銅合金の配線表面上に錫などのめっき層を形成する方法(特許文献1)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−45917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、上述したように、近年、配線の微細化が急激に進んでおり、配線間の絶縁信頼性についてより一層の向上が要求されている。特に、高温多湿といったより厳しい環境下においても、優れた配線間の絶縁信頼性を示すことが要求されている。
本発明者らは、特許文献1に記載される銅イオンのマイグレーション抑制手法について検討を行ったところ、銅のデンドライトの連結が確認され、そのマイグレーション抑制効果は昨今要求されるレベルを満たしておらず、さらなる改良が必要であった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、銅イオンのマイグレーションが抑制され、配線間の絶縁信頼性に優れたプリント配線基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
(1) 基板と、前記基板上に配置される銅配線または銅合金配線と、前記基板上に配置され前記銅配線または銅合金配線の一部が露出するように前記銅配線および銅合金配線を覆う絶縁層とを有するプリント配線基板と、1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む処理液とを接触させ、
その後前記プリント配線基板を溶剤で洗浄して、露出した前記銅配線または銅合金配線表面上に1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層を形成する層形成工程を備える、表面被覆配線付きプリント配線基板の製造方法。
【0010】
(2) 前記層形成工程の前に、前記プリント配線基板の露出した前記銅配線または銅合金配線表面上に銅以外の金属のめっき層を形成するめっき工程を備える、(1)に記載の表面被覆配線付きプリント配線基板の製造方法。
(3) 前記層形成工程の後に、前記層形成工程で得られたプリント配線基板を加熱乾燥する工程を備える、(1)または(2)に記載の表面被覆配線付きプリント配線基板の製造方法。
【0011】
(4) 基板と、前記基板上に配置される銅配線または銅合金配線と、前記銅配線または銅合金配線の一部の表面上に形成された1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層と、前記基板上に配置され前記銅配線または銅合金配線の残部の表面を覆う絶縁層と、を有する、表面被覆配線付きプリント配線基板。
【0012】
(5) 基板と、前記基板上に配置される銅配線または銅合金配線と、前記銅配線または銅合金配線の一部の表面上に形成された、1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層、および、銅以外の他の金属のめっき層と、前記基板上に配置され前記銅配線または銅合金配線の残部の表面を覆う絶縁層と、を有する、表面被覆配線付きプリント配線基板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、銅イオンのマイグレーションが抑制され、配線間の絶縁信頼性に優れたプリント配線基板およびその製造方法を提供することを目的とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明で使用されるプリント配線基板の一部の斜視断面図である。
【図2】本発明の表面被覆配線付きプリント配線基板の製造方法の第1の実施態様における、各工程を順に示す銅配線が露出した基板から皮膜形成するまでの模式的断面図である。(A)は、図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の表面被覆配線付きプリント配線基板の第1の実施態様の一部の斜視断面図である。
【図4】本発明の表面被覆配線付きプリント配線基板の製造方法の第2の実施態様における、各工程を順に示す銅配線が露出した基板から皮膜形成するまでの模式的断面図である。
【図5】本発明の表面被覆配線付きプリント配線基板の第2の実施態様の一部の斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の表面被覆配線付きプリント配線基板(表面被覆配線付きプリント配線基板)およびその製造方法について説明する。
本発明の特徴点としては、1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールなどのアゾール化合物を含む処理液と、露出した銅配線または銅合金配線を有するプリント配線基板とを接触させた後、さらに洗浄を行う点が挙げられる。該処理を行うことにより、銅配線または銅合金配線間の基板上にあるアゾール化合物を除去されると共に、銅配線または銅合金配線上に該アゾール化合物を含む銅イオン拡散抑制層が形成され、銅イオンのマイグレーションが抑制される。なお、露出した銅配線または銅合金配線以外の表面にアゾール化合物が残存していると、その後の実装工程においてはんだ接続不良といった悪影響が生じる。
また、上記アゾール化合物以外のベンゾトリアゾール等の他のアゾール化合物を接触させた後に洗浄を行うと、銅配線または銅合金配線上の他のアゾール化合物も同時に除去されてしまい、所望の効果が発現されない。さらに、エッチング剤等の銅を溶解する成分を含んだ処理液を使用して、アゾール化合物と銅配線または銅合金配線とを接触させると、配線上にアゾール化合物と銅イオンとの錯体を含む皮膜が出来てしまい、マイグレーションを抑制する効果を発現できない。
【0016】
また、本発明の他の特徴としては、露出した銅配線または銅合金配線上に銅以外の他の金属のめっき層を形成するようにめっき処理を行った後、上記アゾール化合物を用いた処理を行う点が挙げられる。該処理を行うことにより、まず、露出した銅配線または銅合金配線上に銅以外の他の金属のめっき層が形成される。一方、銅配線または銅合金配線と基板との境界部分などではめっき層が生成しにくく、かつ、めっき層自体にピンホールが生じやすいため、銅配線または銅合金配線が空気に露出する部分が生じる。そこで、上記アゾール化合物を用いた処理を行うことにより、めっき層の未被覆部を銅イオン拡散抑制層で被覆して、銅イオンのマイグレーションをより抑制することができる。
【0017】
[第1の実施態様]
本発明の表面被覆配線付きプリント配線基板の製造方法の第1の実施態様は、層形成工程と乾燥工程とをこの順で実施する製造方法である。
以下に、図面を参照して、各工程で使用される材料、および、工程の手順について説明する。
【0018】
[層形成工程]
該工程では、まず、基板と、基板上に配置される銅配線または銅合金配線と、基板上に配置され銅配線または銅合金配線の一部が露出するように銅配線および銅合金配線を覆う絶縁層とを有するプリント配線基板と、1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む処理液とを接触させる(接触工程)。その後、プリント配線基板を溶剤(洗浄溶剤)で洗浄して、銅配線または銅合金配線表面上に1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層を形成する(洗浄工程)。
該工程によって、銅配線または銅合金配線の表面を覆うように、銅イオン拡散抑制層が形成され、銅のマイグレーションが抑制される。
まず、層形成工程で使用される材料(プリント配線基板、処理液など)について説明し、その後層形成工程の手順について説明する。
【0019】
(プリント配線基板)
本工程で使用されるプリント配線基板は、基板と、基板上に配置される銅配線または銅合金配線(以後、単に配線とも称する)と、基板上に配置され銅配線または銅合金配線の一部が露出するように銅配線および銅合金配線を覆う絶縁層とを有する。図1中、プリント配線基板10は、基板12と、銅配線または銅合金配線14(以後、単に配線14とも称する)と、絶縁層16とを備える。配線14は、露出した銅配線または銅合金配線(以後、単に配線14aとも称する)と、絶縁層16で被覆された銅配線または銅合金配線(以後、単に配線14bとも称する)とから構成される。
なお、図1において、露出した配線14aは、基板12上に支持されているが、その一部が基板12外に延在していてもよい。
【0020】
基板は配線を支持できるものであれば特に制限されないが、通常、絶縁基板である。絶縁基板としては、例えば、有機基板、薄いガラスエポキシ基板などを使用することができる。有機基板などの基板を使用することにより、いわゆるフレキシブルプリント配線基板を得ることができる。また、ガラスエポキシ基板からなるリジットな基板を用いることにより、いわゆるリジットプリント配線基板を得ることもできる。
有機基板の材料としては樹脂が挙げられ、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。
なお、使用される基板は、その内部に配線回路を有していてもよく、いわゆる多層配線基板を本発明の基板として用いてもよい。
【0021】
配線は、銅または銅合金で構成される。配線が銅合金で構成される場合、銅以外の含有される金属としては、例えば、銀、錫、パラジウム、金、ニッケル、クロムなどが挙げられる。
基板上への配線の形成方法は特に制限されず、公知の方法が採用できる。代表的には、エッチング処理を利用したサブトラクティブ法や、電解めっきを利用したセミアディティブ法が挙げられる。
【0022】
配線の幅は特に制限されないが、プリント配線基板の高集積化の点から、1〜1000μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。
配線間の間隔は特に制限されないが、プリント配線基板の高集積化の点から、1〜1000μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。
また、配線のパターン形状は特に制限されず、任意のパターンであってよい。例えば、直線状、曲線状、矩形状、円状などが挙げられる。
配線の厚みは特に制限されないが、プリント配線基板の高集積化の点から、10〜100μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。
【0023】
絶縁層は、銅配線または銅合金配線の一部が露出するように、銅配線または銅合金配線を覆う層である。銅配線または銅合金配線を覆う割合は特に制限されず、基板上に実装される電子部品(例えば、半導体素子)などと電気的に接続できる銅配線または銅合金配線部が残存していればよい。
絶縁層は配線を保護できるものであれば特に制限されないが、通常、絶縁材料である。絶縁材料としては、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
また、絶縁層として、スクリーン印刷インクや感光性カバーレイを用いてもよい。
【0024】
また、基板中にスルーホールが形成されていてもよい。基板の片面または両面に電子部品が設けられる場合は、例えば、該ビアホール内に金属(例えば、銅または銅合金)が充填されることにより、配線と片面または両面の電子部品が導通されていてもよい。
【0025】
なお、プリント配線基板の製造方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、まず、銅箔付き基板に対してサブトラクティブ法またはセミアディティブ法を適用し、銅配線を有する基板を製造する。次に、該基板上に絶縁フィルムをラミネートし、銅配線の一部を覆った絶縁層を形成する。
【0026】
(処理液)
本工程で使用される処理液は、1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾール(以後、両者の総称としてアゾール化合物とも称する)を含む液である。
【0027】
処理液は、1,2,3−トリアゾールまたは1,2,4−トリアゾールをそれぞれ単独で含んでいてもよく、両方を含んでいてもよい。なお、本発明においては、上記アゾール化合物を使用することにより所定の効果が得られており、例えば、アミノトリアゾールを代わりに使用した場合は所望の効果が得られない。
処理液中におけるアゾール化合物の総含有量は特に制限されないが、銅イオン拡散抑制層の形成のしやすさ、および、銅イオン拡散抑制層の付着量制御の点から、処理液全量に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.25〜5質量%が特に好ましい。アゾール化合物の総含有量が多すぎると、銅イオン拡散抑制層の堆積量の制御が困難となる。アゾール化合物の総含有量が少なすぎると、所望の銅イオン拡散抑制層の堆積量になるまで時間がかかり、生産性が悪い。
【0028】
処理液には溶剤が含まれていてもよい。使用される溶剤は特に制限されず、例えば、水、アルコール系溶剤(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、ケトン系溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、アミド系溶剤(例えば、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン)、ニトリル系溶剤(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル)、エステル系溶剤(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル)、カーボネート系溶剤(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート)、エーテル系溶剤、ハロゲン系溶剤などが挙げられる。これらの溶剤を、2種以上混合して使用してもよい。
なかでも、プリント配線基板の製造における安全性の点で、水、アルコール系溶剤が好ましい。特に、溶剤として水を使用すると、基板と処理液を接触させる際に浸漬法を採用する場合に、特異的にアゾール化合物が銅配線または銅合金配線表面に自己堆積しやすいことから、好ましい。
処理液中における溶剤の含有量は特に制限されないが、処理液全量に対して、90〜99.99質量%が好ましく、95〜99.9質量%がより好ましく、95〜99.75質量%が特に好ましい。
【0029】
一方、プリント配線基板中の配線間の絶縁信頼性を高める点で、処理液には銅イオンが実質的に含まれていないことが好ましい。過剰量の銅イオンが含まれていると、銅イオン拡散抑制層を形成する際に該層中に銅イオンが含まれることになり、銅イオンのマイグレーションを抑制する効果が薄れ、配線間の絶縁信頼性が損なわれることがある。
なお、銅イオンが実質的に含まれないとは、処理液中における銅イオンの含有量が、1μmol/l以下であることを指し、0.1μmol/l以下であることがより好ましい。最も好ましくは0mol/lである。
【0030】
また、プリント配線基板中の配線間の絶縁信頼性を高める点で、処理液には銅または銅合金のエッチング剤が実質的に含まれていないことが好ましい。処理液中にエッチング剤が含まれていると、プリント配線基板と処理液とを接触させる際に、銅配線または銅合金配線がエッチングされ、処理液中に銅イオンが溶出することがある。そのため結果として、銅イオン拡散抑制層中に銅イオンが含まれることになり、銅イオンのマイグレーションを抑制する効果が薄れ、配線間の絶縁信頼性が損なわれることがある。
エッチング剤としては、例えば、有機酸(例えば、硫酸、硝酸、塩酸、酢酸、ギ酸、ふっ酸)、酸化剤(例えば、過酸化水素、濃硫酸)、キレート剤(例えば、イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミン4酢酸、エチレンジアミン、エタノールアミン、アミノプロパノール)、チオール化合物などが挙げられる。また、エッチング剤としては、イミダゾールや、イミダゾール誘導体化合物などのように自身が銅のエッチング作用を持つものも含まれる。
なお、エッチング剤が実質的に含まれないとは、処理液中におけるエッチング剤の含有量が、処理液全量に対して、0.01質量%以下であることを指し、配線間の絶縁信頼性をより高める点で、0.001質量%以下であることがより好ましい。最も好ましくは0質量%である。
【0031】
処理液のpHは特に規定されないが、銅イオン拡散抑制層の形成性の点から、5〜12を示すことが好ましい。なかでも、プリント配線基板中の配線間の絶縁信頼性がより優れる点から、pHは5〜9であることが好ましく、6〜8であることがより好ましい。
処理液のpHが5未満であると、銅配線または銅合金配線から銅イオンの溶出が促進され、銅イオン拡散抑制層に銅イオンが多量に含まれることになり、結果として銅イオンのマイグレーションを抑制する効果が低下する場合がある。処理液のpHが12超であると、水酸化銅が析出し、酸化溶解しやすくなり、結果として銅イオンのマイグレーションを抑制する効果が低下する場合がある。
なお、pHの調整は、公知の酸(例えば、塩酸、硫酸)や、塩基(例えば、水酸化ナトリウム)を用いて行うことができる。また、pHの測定は、公知の測定手段(例えば、pHメーター(水溶媒の場合))を用いて実施できる。
【0032】
なお、上記処理液には、他の添加剤(例えば、pH調整剤、界面活性剤、防腐剤、析出防止剤など)が含まれていてもよい。
【0033】
(溶剤(洗浄溶剤))
プリント配線基板を洗浄する洗浄工程で使用される溶剤(洗浄溶剤)は、銅配線または銅合金表面以外の表面に堆積した余分なアゾール化合物などを除去することができれば、特に制限されない。
溶剤としては、例えば、水、アルコール系溶剤(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)、ケトン系溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、アミド系溶剤(例えば、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン)、ニトリル系溶剤(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル)、エステル系溶剤(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル)、カーボネート系溶剤(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート)、エーテル系溶剤、ハロゲン系溶剤などが挙げられる。これらの溶剤を、2種以上混合して使用してもよい。
なかでも、微細配線間への液浸透性の点から、水、アルコール系溶剤、およびメチルエチルケトンからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む溶剤であることが好ましく、アルコール系溶剤と水の混合液であることがより好ましい。
【0034】
使用される溶剤の沸点(25℃、1気圧)は特に制限されないが、安全性の観点で、75〜100℃が好ましく、80〜100℃がより好ましい。
【0035】
使用される溶剤の表面張力(25℃)は特に制限されないが、配線間の洗浄性がより優れ、配線間の絶縁信頼性がより向上する点から、10〜80mN/mであることが好ましく、15〜60mN/mであることがより好ましい。
【0036】
[層形成工程の手順]
層形成工程を、接触工程および洗浄工程の2つの工程に分けて説明する。
【0037】
(接触工程)
接触工程は、基板と、基板上に配置される銅配線または銅合金配線と、基板上に配置され銅配線または銅合金配線の一部が露出するように銅配線および銅合金配線を覆う絶縁層とを有するプリント配線基板と、1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む処理液とを接触させる工程である。具体的には、まず、図1(A)に示すように、基板12と露出した銅配線または銅合金配線14a(以後、単に配線14aとも称する)を備えるプリント配線基板を用意し、該プリント配線基板と、上記処理液とを接触させることにより、図1(B)に示すように、基板12および露出した配線14a上にアゾール化合物を含む層16が形成される。該膜16は、基板12上、配線14a上、および絶縁層(図示しない)上に形成される。
【0038】
アゾール化合物を含む層には、アゾール化合物が含有される。その含有量などは、後述する銅イオン拡散抑制層中の含有量と同義である。また、その付着量は特に制限されず、後述する洗浄工程を経て、所望の付着量の銅イオン拡散抑制層を得ることができるような付着量であることが好ましい。
プリント配線基板と上記処理液との接触方法は特に制限されず、公知の方法を採用することができる。例えば、ディップ浸漬、シャワー噴霧、スプレー塗布、スピンコートなどが挙げられ、処理の簡便さ、処理時間の調整の容易さから、ディップ浸漬、シャワー噴霧、スプレー塗布が好ましい。また、微小領域への処理液の浸透性を向上させる点で、ディップ浸漬時に超音波処理を行うことがより好ましい。
特に、露出した銅配線または銅合金が基板に支持されている場合は、ディップ浸漬、シャワー噴霧、スプレー塗布が好ましく、露出した銅配線または銅合金の一部が基板に支持されていない場合は、配線の水圧耐性の観点からディップ浸漬が好ましい。
【0039】
また、接触の際の処理液の液温としては、銅イオン拡散抑制層の付着量制御の点で、5〜60℃の範囲が好ましく、15〜50℃の範囲がより好ましく、20〜40℃の範囲がさらに好ましい。
また、接触時間としては、生産性、および銅イオン拡散抑制層の付着量制御の点で、10秒〜30分の範囲が好ましく、15秒〜10分の範囲がより好ましく、30秒〜5分の範囲がさらに好ましい。
【0040】
(洗浄工程)
洗浄工程は、接触工程で得られたプリント配線基板を溶剤で洗浄して、銅配線または銅合金配線表面上に1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層を形成する工程である。
具体的には、図2(B)で得られたアゾール化合物を含む膜16が設けられたプリント配線基板を上記洗浄溶剤で洗浄することにより、図2(C)に示すように、配線14a間のアゾール化合物を含む層16などの余分なアゾール化合物が除去され、配線14a上に銅イオン拡散抑制層18が形成される。なお、配線14a間のアゾール化合物を含む層16が除去されると同時に、絶縁層(図示しない)上のアゾール化合物を含む層16も除去される。
【0041】
洗浄方法は特に制限されず、公知の方法を採用することができる。例えば、接触工程を経たプリント配線基板上に洗浄溶剤を塗布する方法、洗浄溶剤中に接触工程を経たプリント配線基板を浸漬する方法などが挙げられる。また、微小領域への洗浄液の浸透性を向上させる点で、ディップ浸漬時に超音波処理を行うことがより好ましい。
特に、露出した銅配線または銅合金が基板に支持されている場合は、ディップ洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄が好ましく、露出した銅配線または銅合金の一部が基板に支持されていない場合は、配線の水圧耐性の観点からディップ洗浄が好ましい。
また、洗浄溶剤の液温としては、銅イオン拡散抑制層の付着量制御の点で、5〜60℃の範囲が好ましく、15〜30℃の範囲がより好ましい。
また、プリント配線基板と洗浄溶剤との接触時間としては、生産性、および銅イオン拡散抑制層の付着量制御の点で、10秒〜10分の範囲が好ましく、15秒〜5分の範囲がより好ましい。
【0042】
(銅イオン拡散抑制層)
上記工程を経ることにより、露出した銅配線または銅合金配線表面上に、1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層を形成することができる。なお、図2(C)に示すように、露出した配線14a表面以外の面上において、アゾール化合物を含む膜は実質的に除去されていることが好ましい。つまり、実質的に、露出した配線14a表面上にのみ銅イオン拡散抑制層18が形成されていることが好ましい。なお、配線14a表面とは、図2(C)に示すように、基板12と接する下面以外の上面および側面を意味する。
【0043】
本発明においては、上記の溶剤の洗浄を施した後であっても、銅イオンのマイグレーションを抑制することができる十分な付着量の銅イオン拡散抑制層を得ることができる。例えば、ベンゾトリアゾールなどを代わりに使用した場合は、上記溶剤による洗浄によって、大半のベンゾトリアゾールが洗い流されてしまい、所望の効果が得られない。エッチング剤を処理液に含んだベンゾトリアゾールやエッチング能を持つイミダゾール化合物では、形成有機皮膜中に銅イオンを含んでしまい、銅イオン拡散抑制能は無く、所望の効果が得られない。
【0044】
銅イオン拡散抑制層中におけるアゾール化合物の含有量は、銅イオンのマイグレーションをより抑制できる点から、0.1〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%であることがより好ましく、50〜90質量%であることがさらに好ましい。特に、銅イオン拡散抑制層は、実質的にアゾール化合物で構成されていることが好ましい。アゾール化合物の含有量の少なすぎると、銅イオンのマイグレーション抑制効果が低くなる。
【0045】
銅イオン拡散抑制層中には、銅イオンまたは金属銅が実質的に含まれていないことが好ましい。銅イオン拡散抑制層に所定量以上の銅イオンまたは金属銅が含まれていると、本発明の効果に劣る場合がある。
【0046】
露出した銅配線または銅合金配線表面上における1,2,3−トリアゾールおよび1,2,4−トリアゾールの付着量は、銅イオンのマイグレーションをより抑制できる点から、露出した銅配線または銅合金配線の全表面積に対して、5×10-9g/mm2以上であることが好ましく、1×10-8g/mm2以上であることがより好ましい。上記範囲以上であると、銅イオンのマイグレーション効果がより優れる。なお、上限については特に制限されないが、製造上の観点から、1×10-6g/mm2以下であることが好ましい。
なお、付着量は、公知の方法(例えば、吸光度法)によって測定することができる。具体的には、まず水で配線間に存在する銅イオン拡散抑制層を洗浄する(水による抽出法)。その後、有機酸(例えば、硫酸)により銅配線または銅合金配線上の銅イオン拡散抑制層を抽出し、吸光度を測定して、液量と塗布面積から付着量を算出する。
【0047】
なお、上述したように、配線間にはアゾール化合物を含む膜は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で一部アゾール化合物を含む膜が残存していてもよい。
【0048】
[乾燥工程]
該工程では、銅イオン拡散抑制層が設けられたプリント配線基板を加熱乾燥する。プリント配線基板上に水分が残存していると、銅イオンのマイグレーションの促進させるおそれがあるため、該工程を設けることにより水分を除去することが好ましい。なお、本工程は任意の工程であり、層形成工程で使用される溶媒が揮発性に優れる溶媒である場合などは、本工程は実施しなくてもよい。
【0049】
加熱乾燥条件としては、銅配線または銅合金配線の酸化を抑制する点で、70〜120℃(好ましくは、80℃〜110℃)で、15秒〜10分間(好ましくは、30秒〜5分)実施することが好ましい。乾燥温度が低すぎる、または、乾燥時間が短すぎると、水分の除去が十分でない場合があり、乾燥温度が高すぎる、または、乾燥時間が長すぎると、酸化銅が形成されるおそれがある。
乾燥に使用する装置は特に限定されず、恒温層、ヒーターなど公知の加熱装置を使用することができる。
【0050】
(表面被覆配線付きプリント配線基板)
上記製造方法を経ることによって、基板と、基板上に配置される銅配線または銅合金配線と、銅配線または銅合金配線の一部の表面上に形成された1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層と、基板上に配置され銅配線または銅合金配線の残部の表面を覆う絶縁層とを有する表面被覆配線付きプリント配線基板が得られる。言い換えると、銅配線または銅合金配線の一部が絶縁層で覆われ、絶縁層で覆われていない銅配線または銅合金配線の表面が1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層で被覆されている、表面被覆配線付きプリント配線基板である。
より具体的には、図3に示すように、基板12と、基板12上に配置される配線14と、基板12上に配置され配線14の一部を被覆する絶縁膜16と、絶縁膜16が設けられていない配線14aの表面上を被覆する銅イオン拡散抑制層18とを有する表面被覆配線付きプリント配線基板100が得られる。
【0051】
得られた表面被覆配線付きプリント配線基板は、種々の用途に使用することができ、例えば、COF(Chip on Film)基板用、またはTAB(Tape Automated Bonding)基板用の基板として使用することができる。
【0052】
[第2の実施態様]
本発明の表面被覆配線付きプリント配線基板の製造方法の第2の態様は、めっき工程と、層形成工程と、乾燥工程とをこの順で実施する製造方法である。
以下に、図面を参照して、各工程で使用される材料、および、工程の手順について説明する。
【0053】
(めっき工程)
めっき工程は、上記プリント配線基板の露出した銅配線または銅合金配線上に銅以外の金属のめっき層を形成する工程である。該工程を実施することにより、銅配線または銅合金配線表面上が銅以外の他の金属のめっき層で被覆され、銅配線の酸化が防止されると共に、銅イオンのマイグレーションが抑制される。具体的には、図4(A)に示すように、露出した配線14a上にめっき層20が形成される。なお、図4(A)に示すように、通常、製造上の制約から、露出した配線14aの表面の一部にはめっき層20が形成されない部分が存在する。特に、基板12と露出した配線14aとの境界部分においては、めっき層20が被覆されない領域が生じやすい。
【0054】
めっき層の材料としては、銅以外の他の金属を使用することができる。例えば、銅イオンのマイグレーションをより抑制できる点で、ニッケル、錫、金、銀などが挙げられる。なお、めっき層は多層構造であってもよく、例えば、ニッケル層と金層との2層構造であってもよい。また、めっき層は、銅以外の2種以上の金属からなる合金層であってもよい。
【0055】
形成されるめっき層の厚みは特に制限されないが、銅イオンのマイグレーション抑制の点から、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。なお、上限は特に制限されないが、経済性の点から、10μm以下であることが好ましい。
【0056】
(工程の手順)
めっき処理の方法は特に制限されず、公知の方法(例えば、無電解めっき処理、電解めっき処理)を採用することができる。得られる金属めっき膜の膜厚の制御のしやすさの点から、電解めっき(電気めっき)処理が好ましい。
例えば、Niめっき層を作製する場合は、NDF(上村工業製)を使用する態様が挙げられ、Auめっき層を作製する場合は、オーロテックDC10(Atotech)を使用する態様が挙げられる。
【0057】
(層形成工程)
上記めっき工程の後に、層形成工程を実施する。めっき工程では、露出した銅配線または銅合金配線の表面上の一部にめっき層が形成されない部分が生じる。そこで、該層形成工程を実施することにより、めっき層が形成されなかった部分(領域)に、銅イオン拡散抑制層が形成され、銅配線または銅合金配線の表面上が満遍なく被覆される。結果として、銅イオンのマイグレーションがより抑制され、金属デンドライトの発生や、配線間の短絡が抑制される。
【0058】
より具体的には、上記接触工程を実施することにより、図4(B)に示すように、基板ン12およびめっき層20の上にアゾール化合物を含む層16が形成される。その後、上記洗浄工程を実施することにより、図4(A)でめっき層20が形成されなかった配線14a上の領域に、銅イオン拡散抑制層18が形成される。なお、図4(B)に示すように、銅イオン拡散抑制層18は、通常、配線14a上にのみ形成され、めっき層20上には形成されない。
【0059】
層形成工程の実施手順は、第1の実施態様で説明した手順と同じである。特に、溶媒により洗浄を行うことにより、配線上以外の場所にあるアゾール化合物を含む層を除去することができる。
なお、形成される銅イオン拡散抑制層の態様(例えば、アゾール化合物の含有量など)も、第1の実施態様で説明した銅イオン拡散抑制層の態様と同じである。
【0060】
(乾燥工程)
層形成工程の後に、必要に応じて乾燥工程が実施される。乾燥工程の実施手順は、第1の実施態様で説明した手順と同じである。
【0061】
(表面被覆配線付きプリント配線基板)
上記製造方法を経ることによって、基板と、基板上に配置される銅配線または銅合金配線と、銅配線または銅合金配線の一部の表面上に形成された、1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層、および、銅以外の他の金属のめっき層と、基板上に配置され前記銅配線または銅合金配線の残部の表面を覆う絶縁層とを有する表面被覆配線付きプリント配線基板が得られる。言い換えると、銅配線または銅合金配線の一部が絶縁層で覆われ、絶縁層で覆われていない銅配線または銅合金配線の表面が、1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層およびめっき層の2種の層で被覆されている、表面被覆配線付きプリント配線基板が得られる。
より具体的には、図4に示すように、基板12と、基板12上に配置される配線14と、基板12上に配置され配線14の一部を被覆する絶縁膜16と、絶縁膜16が設けられていない配線14aの表面上を被覆するめっき層20および銅イオン拡散抑制層18とを有する、表面被覆配線付きプリント配線基板200が得られる。
【0062】
本発明の表面被覆配線付きプリント配線基板の第2の実施態様では、めっき層の被覆不良個所やピンホール箇所を、銅イオン拡散抑制層で被覆することにより、銅配線または銅合金配線の表面を隙間なく被覆することができる。
【0063】
また、本発明の表面被覆配線付きプリント配線基板上に、半導体チップを実装して、プリント回路板(例えば、フレキシブルプリント回路板)として使用してもよい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製 カプトンフィルム)を用いて、L/S=100μm/100μmの櫛型銅配線および絶縁層を備えるプリント配線基板を形成した。プリント配線基板は以下の方法により作製した。
【0066】
ポリイミドフィルム上に銅箔テープを接着剤(日立化成社製 N4)で貼りあわせた。ここで使用される接着剤は、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤等ならびにそれらを併用したものが用いられ、その厚みは好適には数μm〜100μmの範囲内に設定される。また、上記接着剤は耐熱性の優れたものがよく、材料の耐熱温度100℃以上が好ましいが、特に規定しない。
銅箔テープにフォトレジスト(日立化成工業社製 フォテックH−W425)を100℃で、4kgf/cm2の条件でラミネートし、フォトマスクを介して80mJ/cm2の条件で露光し、現像してエッチングレジストパターンを形成した。
【0067】
その後、エッチングレジストに覆われていない銅箔を、塩化第二鉄エッチング溶液で選択的にエッチング除去し、エッチングレジストを剥離して、L/S=100μm/100μmの銅配線を得た。
さらに、その後、得られた基板上の約半分に絶縁膜(日立化成社製 FZ2500)をラミネートし、その後露光、ベークを行って、プリント配線基板を得た。なお、得られたプリント配線基板上の銅配線の約半分が絶縁層で被覆された。
【0068】
次に、得られたプリント配線基板を、1,2,3−トリアゾールを含む水溶液(溶媒:水、1,2,3−トリアゾールの含有量:水溶液全量に対して2.5質量%、液温:25℃、pH:7)に5分浸漬した。その後、エタノールを用いて得られたプリント配線基板を洗浄(接触時間:2分、液温度:25℃)し、フレキシブルプリント配線基板を得た。さらに、その後、フレキシブルプリント配線基板を100℃で2分間乾燥処理した。
【0069】
反射率測定を行うことにより、銅配線上に1,2,3−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層が形成されていることを確認した。吸光度測定により該アゾール化合物の付着量は7.0×10-8g/mm2であった。
【0070】
なお、銅配線間の基板表面においては、水による配線間抽出液の吸光度測定により、銅イオン拡散抑制層は確認できず、エタノール洗浄により除去されていることが確認された。
【0071】
(水滴滴下試験による基板寿命測定)
得られたフレキシブルプリント配線基板を用いて、伝導度0.05μS/cm2、30mLの純水中にて、印加電圧1.2Vの条件で、5分後の配線間の陽極から陰極にわたって発生したデンドライトの有無について、光学顕微鏡下(オリンパス社製 BX−51)で計測した。
実施例1で得られたフレキシブルプリント配線基板の結果を、表1に示す。
【0072】
(実施例2)
実施例1で使用した1,2,3−トリアゾールを含む水溶液の代わりに、1,2,4−トリアゾールの含有量が水溶液全量に対して2.5質量%である1,2,4−トリアゾールを含む水溶液(溶媒:水、液温:25℃、pH:6)を使用し、3分浸漬させた以外は、実施例1と同様の手順に従って、フレキシブルプリント配線基板を製造した。その後、得られたフレキシブルプリント配線基板を用いて、実施例1で行った水滴滴下試験を実施した。表1に結果を示す。
なお、実施例1に記載の反射率測定を行うことにより、銅配線上に1,2,4−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層が形成されていることを確認した。
【0073】
(実施例3)
実施例1で使用した1,2,3−トリアゾールを含む水溶液の代わりに、1,2,3−トリアゾールおよび1,2,4−トリアゾールを含む水溶液(溶媒:水、液温:25℃、pH:6)を使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って、フレキシブルプリント配線基板を製造した。その後、得られたフレキシブルプリント配線基板を用いて、実施例1で行った水滴滴下試験を実施した。表1に結果をまとめて示す。
なお、処理液中における1,2,3−トリアゾールの含有量は、処理液全量に対して、2.5質量%であり、1,2,4−トリアゾールの含有量は、処理液全量に対して、2.5質量%であった。
また、実施例1に記載の反射率測定を行うことにより、銅配線上に1,2,3−トリアゾールおよび1,2,4−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層が形成されていることを確認した。
【0074】
(実施例4)
実施例1で使用した浸漬法の代わりに、3分間のシャワー皮膜形成をさせた以外は、実施例1と同様の手順に従って、フレキシブルプリント配線基板を製造した。その後、得られたフレキシブルプリント配線基板を用いて、実施例1で行った水滴滴下試験を実施した。表1に結果を示す。
【0075】
(比較例1)
実施例1で実施した1,2,3−トリアゾールを含む水溶液の処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の手順に従って、フレキシブルプリント配線基板を製造した。その後、得られたフレキシブルプリント配線基板を用いて、実施例1で行った水滴滴下試験を実施した。表1に結果をまとめて示す。
【0076】
(比較例2)
実施例1で使用した1,2,3−トリアゾールを含む水溶液の代わりに、pH6の市販防錆剤(イミダゾール化合物 四国化成製 タフエース)を含む水溶液(溶媒:水、液温:40℃)を使用し、1分浸漬させた以外は、実施例1と同様の手順に従って、フレキシブルプリント基板を製造した。その後、得られたフレキシブルプリント配線基板を用いて、実施例1で行った水滴滴下試験を実施した。表1に結果をまとめて示す。
【0077】
【表1】

【0078】
上記表1に示されるように、本願発明の製造方法によって得られたフレキシブルプリント配線基板は、優れたデンドライト発生抑制効果を示し、配線間のマイグレーション抑制効果に優れていることが確認された。
一方、銅イオン拡散抑制層を形成しなかった比較例1、および、1,2,3−トリアゾールおよび1,2,4−トリアゾールが含まれない市販防錆剤を使用した比較例2を使用した場合、デンドライトの発生が確認された。
【0079】
(実施例5)
銅イオン銅拡散抑制層を形成する前に、プリント配線基板中の露出している銅配線上に錫めっき層を形成させ、その後、実施例1と同様の手順に従って、フレキシブルプリント配線基板を製造した。
錫めっき層の形成方法は、無電解めっき法を用い、銅表面に錫めっきを0.4μmの厚さにめっきした後、2時間以内に125℃、60分の条件で熱処理を行い、錫めっき層を形成した。熱処理により銅表面上に形成された銅酸化膜を、ソフトエッチング処理により除去した。
なお、得られたフレキシブルプリント配線基板中の銅配線は、錫めっき層と1,2,3−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層で被覆されていた。
その後、得られたフレキシブルプリント配線基板を用いて、実施例1で行った水滴滴下試験を実施した。表2に結果を示す。
【0080】
(比較例3)
実施例5で使用した1,2,3−トリアゾールを含む水溶液の浸漬を行わなかった以外、実施例5と同様の手順に従って、プリント配線基板の製造を行った。その後、得られたフレキシブルプリント配線基板を用いて、実施例1で行った水滴滴下試験を実施した。表2に結果をまとめて示す。
【0081】
【表2】

【0082】
上記表2に示されるように、本願発明の製造方法によって得られたフレキシブルプリント配線基板は、錫めっき処理を実施した場合も、優れたデンドライト発生抑制効果を示し、配線間のマイグレーション抑制効果に優れていることが確認された。
一方、銅拡散抑制層を形成させなかった比較例3においては、配線間のマイグレーション抑制効果に劣っていた。
【符号の説明】
【0083】
10:プリント配線基板
12:基板
14:銅配線または銅合金配線
14a:露出した銅配線または銅合金配線
14b:絶縁層で被覆された銅配線または銅合金配線
16:アゾール化合物を含む膜
18:銅イオン拡散抑制層
20:めっき層
100、200:表面被覆配線付きプリント配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に配置される銅配線または銅合金配線と、前記基板上に配置され前記銅配線または銅合金配線の一部が露出するように前記銅配線および銅合金配線を覆う絶縁層とを有するプリント配線基板と、1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む処理液とを接触させ、
その後前記プリント配線基板を溶剤で洗浄して、露出した前記銅配線または銅合金配線表面上に1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層を形成する層形成工程を備える、表面被覆配線付きプリント配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記層形成工程の前に、前記プリント配線基板の露出した前記銅配線または銅合金配線表面上に銅以外の金属のめっき層を形成するめっき工程を備える、請求項1に記載の表面被覆配線付きプリント配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記層形成工程の後に、前記層形成工程で得られたプリント配線基板を加熱乾燥する工程を備える、請求項1または2に記載の表面被覆配線付きプリント配線基板の製造方法。
【請求項4】
基板と、
前記基板上に配置される銅配線または銅合金配線と、
前記銅配線または銅合金配線の一部の表面上に形成された1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層と、
前記基板上に配置され前記銅配線または銅合金配線の残部の表面を覆う絶縁層と、を有する、表面被覆配線付きプリント配線基板。
【請求項5】
基板と、
前記基板上に配置される銅配線または銅合金配線と、
前記銅配線または銅合金配線の一部の表面上に形成された、1,2,3−トリアゾールおよび/または1,2,4−トリアゾールを含む銅イオン拡散抑制層、および、銅以外の他の金属のめっき層と、
前記基板上に配置され前記銅配線または銅合金配線の残部の表面を覆う絶縁層と、を有する、表面被覆配線付きプリント配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−231033(P2012−231033A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98781(P2011−98781)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】