説明

表面金固定化触媒によるラクトンの製造方法

【課題】 簡易な操作で添加剤を必要とせず、酸素または空気中という穏和な反応条件下でジオールから対応するラクトンを高収率で製造する方法を提供する。
【解決手段】 本発明のラクトンの製造方法は、担体表面に0価のAuを粒子として固定化してなる表面金固定化触媒の存在下でジオールを酸化することにより、対応するラクトンを得ることを特徴としている。表面に0価のAuが粒子として固定される前記担体としては、ハイドロタルサイトが好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体表面に、0価のAuを粒子として固定化してなる表面金固定化触媒を用いて、ジオールを酸化して対応するラクトンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イリジウム触媒、またはルテニウム触媒を用いて、アセトンを酸化剤としてジオールからラクトンを合成する方法が知られているが、分子状酸素を酸化剤とした報告例は少なく、例えばPd(OAc)2−ピリジン−MS4A触媒を用いて、酸素雰囲気下で酸化させることが報告されている(非特許文献1参照)。しかし、この方法は触媒の活性が低く、添加剤を必要とする。さらに、この方法は、反応速度や収率において満足するものではなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J.Org.Chem.1999(第6750頁),Uemuraら
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、添加剤を必要とせず、酸素または空気中という穏和な反応条件下でジオールから対応するラクトンを高収率で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、担体表面に、Auを固定化した表面金固定化触媒を用いると、ジオールから対応するラクトンを高い収率で効率良く製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明は、担体表面に0価のAuを固定化した表面金固定化触媒の存在下、ジオールを酸化して対応するラクトンを製造することを特徴とするラクトン製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のラクトンの製造方法によれば、簡易な操作により効率よくジオールを酸化して対応するラクトンを高い収率で得ることができる。
さらに本発明によれば、添加剤を必要とせず、酸素または空気中で穏和な反応条件下でジオールの酸化反応が進み、対応するラクトンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[表面金固定化触媒]
本発明で用いる表面金固定化触媒は、担体表面に0価のAuが粒子として固定化されている。前記担体としては、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどを用いることができ、なかでもハイドロタルサイトが好適に用いられる。
【0009】
表面金固定化触媒として、ハイドロタルサイト表面に0価のAuが粒子として固定された表面金固定化ハイドロタルサイト(以下、Au/HTと称する場合がある。)が挙げられる。上記ハイドロタルサイトとしては、天然に産出されたハイドロタルサイトを使用してもよく、また、合成ハイドロタルサイト又は合成ハイドロタルサイト様化合物を使用してもよく、特に制限されない。
【0010】
上記ハイドロタルサイトは、例えば、下記式(1)
II8-XIIIX(OH)16A・nH2O (1)
(式中、MIIは、Mg2+、Fe2+、Zn2+、Ca2+、Li2+、Ni2+、Co2+、Cu2+、Mn2+から選択された少なくとも1種の二価の金属であり、MIIIはAl3+、Fe3+、Mn3+、Ru3+から選択された少なくとも1種の三価の金属である。xは1〜7の整数を示す。Aは二価のアニオンを示し、nは0〜30の数を示す。)
又は下記式(2)
[Mg2+1-yAl3+y(OH)2]y+[(Ds-y/s・mH2O]y- (2)
(式中、yは0.20≦y≦0.33を満たす数を示し、Ds-はs価のアニオンを示す。mは0〜30の整数を示す。)
で表される天然又は合成ハイドロタルサイトを使用することができる。上記式(1)においてMIIとしてMg2+、MIIIとしてAl3+、AとしてCO32-を含むものを好ましく使用できる。本発明において、ハイドロタルサイトとしては、具体的には、例えば、Mg6Al2(OH)16CO3で表されるハイドロタルサイトを好適に使用することができる。
【0011】
ハイドロタルサイトとしては市販品も好適に使用でき、例えば、商品名AD−500(富田製薬株式会社製)等が挙げられる。
【0012】
表面金固定化触媒として、酸化マグネシウム表面に0価のAuが粒子として固定された表面金固定化酸化マグネシウム(以下、Au/MgOと称する場合がある。)が挙げられる。酸化マグネシウムとしては市販品も好適に使用できる。
【0013】
また、表面金固定化触媒として酸化アルミニウム表面に0価のAuが粒子として固定された表面金固定化酸化アルミニウム(以下、Au/Al23と称する場合がある。)が挙げられる。上記酸化アルミニウムとしては、天然に産出された酸化アルミニウムを使用してもよく、また、合成酸化アルミニウム又は合成酸化アルミニウム様化合物を使用してもよく、特に制限されない。酸化アルミニウムとしては市販品も好適に使用できる。
【0014】
ハイドロタルサイト等の担体表面に0価のAuを固定化する方法は特に制限されず、例えば、Au化合物の溶液とハイドロタルサイトとを混合し、撹拌することによりハイドロタルサイト表面にAuイオンを固定化した後、該Auイオンを、適宜な方法により還元することにより行う方法等が挙げられる。Auを含む化合物としては、塩化金酸などが挙げられる。
【0015】
溶媒としては、使用するAu化合物を溶解できればよく、特に制限されないが、例えば、水、アセトン、アルコール類等を例示することができる。Auの固定化処理を行う際のAu化合物の溶液の濃度は特に制限されず、例えば、0.1〜1000mMの範囲から選択することができる。撹拌時の温度は、例えば20〜80℃の範囲から選択することができるが、通常室温で行うことができる。表面金固定化触媒のAu含有率は特に制限されないが、例えば、ハイドロタルサイト等の担体1gに対して0.01〜3mmol、好ましくは0.045〜0.1mmolの範囲から選択することができる。撹拌時間は撹拌時の温度によっても異なるが、例えば6〜24時間、好ましくは8〜12時間の範囲から選択することができる。撹拌終了後は、必要に応じて水や有機溶媒等で洗浄し、真空乾燥などにより乾燥してもよい。
【0016】
還元処理を施す還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)又は水素化ホウ素カリウム(KBH4)等の水素化ホウ素錯化合物、ヒドラジン、水素(H2)、ジメチルフェニルシラン等のシラン化合物、ヒドロキシ化合物などが挙げられる。ヒドロキシ化合物としては第1級アルコール、第2級アルコール等のアルコール化合物が含まれる。また、ヒドロキシ化合物は、複数のヒドロキシル基を有していてもよく、1価アルコール、2価アルコール、多価アルコール等の何れであってもよい。
【0017】
本発明に用いられる還元剤としては、なかでも水素化ホウ素錯化合物が好ましく、特に水素化ホウ素カリウム(KBH4)が好ましい。水素化ホウ素カリウム(KBH4)で還元することにより得られた表面金固定化触媒は、固定化したAu粒子の平均粒径がより小さくなる傾向があり、それにより、比表面積を増大することができ、触媒活性を著しく向上させることができる。
【0018】
本発明における表面金固定化触媒が触媒活性を有する反応としては、例えば、ジオールを酸化して対応するラクトンを得る反応等が挙げられる。
【0019】
[ラクトンの製造]
本発明に係るラクトンの製造方法は、上述のハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、及び酸化アルミニウム等の担体の表面にAuを固定化した表面金固定化触媒の存在下、ジオールを酸化して対応するラクトンを製造することを特徴とする。本発明の方法によって、ジオールを酸化して対応するラクトンを高収率で製造することができる。
【0020】
本発明におけるジオールは、例えば、下記式(3)で表される。
【化1】

(上記式中、Rは2価の有機基を示す)
【0021】
上記式(3)で表されるジオールを酸化する場合には、上記式(4)で表されるラクトンが得られる。
【化2】

(上記式中、Rは前記と同様である)
【0022】
本発明において、ジオールを酸化してラクトンを得る反応は下記式(5)で表される反応機構に従って進行すると考えられる。
【化3】

【0023】
前記2価の有機基としては、本反応を阻害しないような基であればよく、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、及びこれらが2以上、1又は2以上の連結基を介して又は介することなく結合した基などが挙げられる。
【0024】
2価の炭化水素基としては、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、1−メチルテトラメチレン、2−メチルテトラメチレン基などの炭素数3〜20(好ましくは3〜10、さらに好ましくは3〜6)程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基;プロペニレン、ブテニレン基などの炭素数3〜20(好ましくは3〜10、さらに好ましくは3〜6)程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基などが挙げられる。
【0025】
連結基としては、2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の複素環式基などが挙げられる。
【0026】
前記連結基としては、酸素原子(−O−)、アミノ基(−NZ−)などが挙げられる。ここで、Zは炭化水素基である。
【0027】
2価の芳香族炭化水素基としては、1,2−フェニレンなどのアリレン基(arylene)などが挙げられる。
【0028】
2価の脂環式炭化水素基としては、1,2−シクロブチレン基、1,2−シクロへキシレン基などの4〜20員(好ましくは4〜8員、さらに好ましくは4〜6員)程度のシクロアルキレン基などが挙げられる。
【0029】
上記アルキレン基、アルケニレン基、連結基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、複素環式基などを有していてもよい。
【0030】
前記置換基としての複素環式基としては、窒素原子などから選択されたヘテロ原子を含む5〜10員程度の複素環式基(好ましくは5〜6員複素環式基)などが挙げられる。
【0031】
連結基としての2価の複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。
【0032】
本発明におけるジオールの代表的な例としては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサン−1,2−ジメタノール、ベンゼン−1、2−ジメタノール、2−ブテン−1,4−ジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、2,4−ジエチルペンタン−1、5−ジオール、ペンタン−1,4−ジオール、2−メチルブタン−1,4−ジオール等を挙げることができる。
【0033】
上記ジオールを表面金固定化触媒の存在下、酸化することにより対応するラクトンを製造することができる。酸化剤としては、酸素、空気などの酸素含有ガス等を用いることができる。酸化反応のための酸素の使用量としては、例えば、ジオール1モルに対して酸素1モル以上、好ましくは2モル以上程度である。酸素を大過剰量使用してもよい。
【0034】
本発明におけるジオールの酸化反応は、例えば、上記ジオールと表面金固定化触媒を酸素の存在下で混合撹拌することにより行うことができる。表面金固定化ハイドロタルサイトの使用量は、使用するジオールの種類等に応じて適宜選択することができ、特に制限されないが、例えば、ジオール1molに対して、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、及び酸化アルミニウムなどの担体表面に固定化したAuとして0.0006〜0.05mol、好ましくは0.001〜0.02mol、特に好ましくは0.004〜0.01molとなるような範囲から選択することができる。反応は、液相で行ってもよく、気相で行うこともできる。
【0035】
反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。溶媒としては反応を阻害しないものであれば特に制限されず、公知慣用の溶媒から適宜選択して使用することができる。例えば、水;トリフルオロトルエン、フルオロベンゼン、フルオロヘキサンなどのフッ素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;1,2−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等のエーテル類;アセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル;これらの混合物等が挙げられる。
【0036】
反応は常圧、又は加圧下において行うことができる。反応温度は、使用するジオールの種類や溶媒の種類に応じて選択することができ、特に制限されないが、例えば、0〜200℃、好ましくは10〜150℃の範囲から選択することができる。
【0037】
反応時間は、使用されるジオールの種類や溶媒の種類、反応温度等に応じて適宜選択することができ特に制限されないが、例えば0.1〜48時間、好ましくは0.2〜24時間の範囲から選択することができる。反応は、回分式、半回分式、連続式等の慣用の方式で行うことができる。反応終了後、反応生成物は、例えば、ろ過、濃縮、蒸溜、抽出、晶析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段やこれらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0038】
本発明の表面金固定化触媒を用いたラクトンの製造方法によれば、ジオールを穏和な反応条件下で酸化することができ、触媒活性が低下することなく、高い収率で対応するラクトンを製造することができる。また、触媒の回収も容易であり、回収した触媒は再使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0040】
製造例1
50mLのナスフラスコ中に塩化金酸(HAuCl4)(0.1mmol)とイオン交換水(50mL)を加え、その溶液にハイドロタルサイト(商品名:AD−500、富田製薬株式会社製)1.0gを加え、2分後に10%のアンモニア水溶液を0.09mL加えた。その後、空気雰囲気下、室温で12時間撹拌した。撹拌後、吸引濾過し、脱イオン水(1L)で洗浄し、24時間真空乾燥させて黄色い粉末のAu(III)/HT(Au:3価)(Au:0.045mol%)を得た。
50mLのナスフラスコ中でKBH4(0.9mmol)に水(50mL)を加えて溶解し、そこに得られたAu(III)/HT(Au:3価)(0.9g)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で1時間撹拌した。撹拌後、吸引濾過し、脱イオン水(1L)で洗浄し、24時間真空乾燥させて紫色の粉末のAu/HT(Au:0価)(担体1gに対するAuの担持量:0.045mmol/g)を得た。
【0041】
実施例1
ガラス製耐圧反応管に、製造例1で得られたAu/HT(Au:1,4−ブタンジオールに対して0.45mol%)、トルエン(5mL)、1,4−ブタンジオール(1mmol)を加え、酸素雰囲気下、80℃で2時間撹拌した。転化率99%、収率99%、選択率100%で、γ−ブチロラクトンを得た。
【0042】
製造例2
RuCl3・xH2O(0.049g)をイオン交換水(150mL)に溶解して得た溶液に、ハイドロキシアパタイト(商品名:りん酸三カルシウム、和光純薬工業株式会社製)(2.0g)を加え、室温で1時間撹拌後、脱イオン水で洗浄し、さらに真空中、室温で12時間乾燥することにより、ハイドロキシアパタイト表面にRuが固定化された金属カチオン触媒(以下、RuHAPと称する場合がある。)(Ru:3価)(担体1gに対するRuの担持量:0.10mmol/g)を得た。
【0043】
比較例1
触媒として製造例2で得られたRuHAP(Ru:1,4−ブタンジオールに対して1mol%)を用い、反応時間を8時間に変えたこと以外は実施例1と同様にして、酸化反応を行った。転化率23%、収率4%、選択率18%で、γ−ブチロラクトンを得た。
【0044】
製造例3
RuCl3・xH2O(0.049g)、ハイドロタルサイト(2.0g)を用いたこと以外は、製造例2と同様にして、ハイドロタルサイト表面にRuが固定化された触媒(Ru:3価)(以下、Ru/HTと称する場合がある。)(担体1gに対するRuの担持量:0.10mmol/g)を得た。
【0045】
比較例2
触媒として製造例3で得られたRu/HT(Ru:1,4−ブタンジオールに対して1mol%)を用い、反応時間を8時間に変えたこと以外は実施例1と同様にして、酸化反応を行った。転化率24%、γ−ブチロラクトンの収量は微量であり基準値以下であった。
【0046】
製造例4
硝酸銀(0.17g)を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、ハイドロタルサイト表面にAgが固定化された触媒(Ag:0価)(以下、Ag/HTと称する場合がある。)(担体1gに対するAgの担持量:0.14mmol/g)を得た。
【0047】
比較例3
触媒として製造例4で得られたAg/HT(Ag:1,4−ブタンジオールに対して4mol%)を用い、反応温度を110℃、反応時間を8時間に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、酸化反応を行った。転化率23%、収率14%、選択率61%でγ−ブチロラクトンを得た。
【0048】
製造例5
ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(0.015g)をアセトン(150mL)に溶解して得た溶液に、ハイドロキシアパタイト(商品名:りん酸三カルシウム、和光純薬工業株式会社製)(2.0g)を加え、室温で3時間撹拌後、アセトンで洗浄し、さらに真空中、室温で12時間乾燥することにより、ハイドロキシアパタイト表面にPdが固定化された金属カチオン触媒(以下、PdHAPと称する場合がある。)(Pd:2価)(担体1gに対するPdの担持量:0.02mmol/g)を得た。
【0049】
比較例4
触媒としてPdHAP(Pd:1,4−ブタンジオールに対して0.2mol%)を用い、反応温度を110℃、反応時間を24時間に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、酸化反応を行った。転化率73%、収率28%、選択率38%でγ−ブチロラクトンを得た。
【0050】
製造例6
塩化パラジウム(0.035g)と塩化ナトリウム(0.013g)を用いたこと以外は製造例1と同様にして、ハイドロタルサイト表面にPdが固定化された触媒(以下、Pd/HTと称する場合がある。)(Pd:0価)(担体1gに対するPdの担持量:0.10mmol/g)を得た。
【0051】
比較例5
触媒として製造例6で得られたPd/HT(Pd:1,4−ブタンジオールに対して1mol%)を用い、反応温度を110℃に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、酸化反応を行った。転化率93%、収率58%、選択率62%でγ−ブチロラクトンを得た。
【0052】
製造例7
塩化金酸(HAuCl4)(0.1mmol)を用い、担体として酸化マグネシウムを用いたこと以外は製造例1と同様にして、酸化マグネシウム表面にAuが固定化された触媒(以下、Au/MgOと称する場合がある)(Au:0価)(担体1gに対するAuの担持量:0.052mmol/g)を得た。
【0053】
実施例2
触媒として製造例7で得られたAu/MgO(Au:1,4−ブタンジオールに対して0.45mol%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして酸化反応を行った。収率75%でγ−ブチロラクロンを得た。
【0054】
製造例8
塩化金酸(HAuCl4)(0.1mmol)を用い、担体として酸化アルミニウム(アルミナ)を用いたこと以外は製造例1と同様にして、酸化アルミニウム表面にAuが固定化された触媒(以下、Au/Al23と称する場合がある)(Au:0価)(担体1gに対するAuの担持量:0.076mmol/g)を得た。
【0055】
実施例3
触媒として製造例8で得られたAu/Al23(Au:1,4−ブタンジオールに対して0.45mol%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして酸化反応を行った。収率51%でγ−ブチロラクロンを得た。
【0056】
製造例9
塩化金酸(HAuCl4)(0.1mmol)を用い、担体として酸化チタンを用いたこと以外は、製造例1と同様にして、酸化チタンの表面にAuが固定化された触媒(以下、Au/TiO2と称する場合がある)(Au:0価)(担体1gに対するAuの担持量:0.091mmol/gを得た。
【0057】
実施例4
触媒として製造例9で得られたAu/TiO2(Au:1,4−ブタンジオールに対して0.45mol%)と、炭酸ナトリウム(0.32g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして酸化反応を行った。収率64%でγ−ブチロラクトンを得た。
【0058】
実施例5〜24
用いるジオール、該ジオールの使用量、混合溶媒、反応温度、及び反応時間を表1の通りに変えて実施例1と同様にして実施例5〜24を行った。実施例5〜24の転化率及び収率を下記表1にまとめて示す。
【表1】

【0059】
実施例1では、高い転化率及び収率でγ−ブチロラクトンを得ることができた。実施例2〜4では、酸化マグネシウムなどの極めて入手容易な担体を用いても、良好な収率でγ−ブチロラクトンを得ることができた。比較例1及び2では転化率は低く、またγ−ブチロラクトンはほとんど得られなかった。比較例3では、転化率及び収率は低いものであった。比較例4及び5では比較的高い転化率が得られたが、γ−ブチロラクトンの選択率は低下し、収率も低いものであった。
実施例5〜24では、何れの場合においても高い転化率及び収率で対応するラクトンが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体表面に、0価のAuを粒子として固定化してなる表面金固定化触媒の存在下、ジオールを酸化して対応するラクトンを製造することを特徴とするラクトンの製造方法。

【公開番号】特開2010−208968(P2010−208968A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54894(P2009−54894)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】