説明

袋開口機構

【課題】容器の内面にフィルム状の内袋を装着するために、偏平に折りたたまれた筒状の帯状フィルムから一端が開口可能なフィルム袋を切り出す袋装着装置に具備され、前記切り出されたフィルム袋の一端を確実に開口させることのできる袋開口機構を提供する。
【解決手段】前方に配置されたフィルム袋Fの側面を吸着可能な吸着パッド30を有するヘッド部19と、前記ヘッド部の後部を、所定方向に回動自在なリンク部材17を介して保持し、前記ヘッド部を前記リンク部材によりフィルム袋の側面に沿って基準位置から移動可能なブロック部材15,16と、前記ヘッド部が前記フィルム袋の側面に沿って移動した際に、前記ヘッド部に当接することにより、該ヘッド部の移動位置を規制する第1の位置規制部材32と、前記ヘッド部の移動状態を保持可能な保持手段23と、前記ブロック部材を前記フィルム袋に対し進退可能に支持する進退手段6,7,8,10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱などの容器に、偏平に折り畳まれた筒状の帯状フィルムから切り出したフィルム袋を装着するために、前記フィルム袋を開口させる袋開口機構に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の集配などでは、例えば、段ボール箱、発泡スチロール箱、プラスチックコンテナ等の容器の内面に、フィルム状の内袋を装着し、食品等の収容物が容器内面に直接触れないようにしている。
そのようにすれば、容器内面を汚すことなく、顧客には袋ごと収容物を渡すことができ、容器は殆ど汚れのない状態で回収することができる。
【0003】
前記のように容器にフィルム状の内袋を装着するには、人手によることもできるが、作業として手間を要するため、これを自動的に行う袋装着装置が従来から提案されている。
例えば、特許文献1には、図9に示すような袋装着装置50が開示されている。
この袋装着装置50においては、偏平に折り畳まれた筒状の帯状フィルム51をフィルムロール52から送り出し、シールカット機構53によりシールカットして搬送方向前方が開口可能なフィルム袋51aを形成する。
次いで、図10(a)に示すように、対向配置された対の吸着パッド54によりフィルム袋51aの両側面を吸着し、対をなす吸着パッド54を互いに引き離すことによりフィルム袋を拡開する。
【0004】
また、図10(b)に示すように開口された開口部を、クランプ爪55によりさらに拡開しながらフィルム袋を箱状の容器60に被せる。
そして、図10(c)に示すようにフィルム袋51aの後側をエアブロー56により容器60内に押し込むことで、フィルム袋51aはその開口側外周縁部を容器60の外側に折り返した状態で容器60内に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−251324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように特許文献1に開示された袋装着装置50は、フィルム袋51aの両側面側を吸着パッド54により吸着し、対をなす吸着パッド54を引き離してフィルム袋51aを開口させるものである。
しかしながら、前記構成にあっては、フィルムに発生する静電気等により、フィルム袋51aの開口部において重なるフィルム同士が強固に密着し、対をなす吸着パッド54を互いに引き離してもフィルム袋を開口できないことがあった。
即ち、フィルム袋51aが開口できない場合には、当然、フィルム袋51aを容器60に装着できないという課題があった。
【0007】
本発明は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであり、容器の内面にフィルム状の内袋を装着するために、偏平に折りたたまれた筒状の帯状フィルムから一端が開口可能なフィルム袋を切り出す袋装着装置に具備され、前記切り出されたフィルム袋の一端を確実に開口させることのできる袋開口機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明に係る袋開口機構は、容器の内面にフィルム状の内袋を装着するために、偏平に折りたたまれた筒状の帯状フィルムから一端が開口可能なフィルム袋を切り出す袋装着装置に具備され、前記切り出されたフィルム袋の一端を開口させる袋開口機構であって、前方に配置された前記フィルム袋の側面を吸着可能な吸着パッドを有するヘッド部と、前記ヘッド部の後部を、所定方向に回動自在なリンク部材を介して保持し、前記ヘッド部を前記リンク部材によりフィルム袋の側面に沿って基準位置から移動可能なブロック部材と、前記ヘッド部が前記フィルム袋の側面に沿って移動した際に、前記ヘッド部に当接することにより、該ヘッド部の移動位置を規制する第1の位置規制部材と、前記ヘッド部の移動状態を保持可能な保持手段と、前記ブロック部材を前記フィルム袋に対し進退可能に支持する進退手段とを備え、前記進退手段が前記ブロック部材を前進させることにより、前記ヘッド部の吸着パッドがフィルム袋の側面に当接して吸着し、さらに前記ブロック部材が前記フィルム袋の側面に向けて押圧されることにより、前記リンク部材が回動して前記ヘッド部が前記第1の位置規制部材に当接するまで前記フィルム袋の側面に沿って移動され、前記ヘッド部の移動状態が、前記保持手段により保持されることに特徴を有する。
このように構成することにより、ヘッド部の移動によって、密着していたフィルムをずらしてフィルム間に空気を進入させ、保持手段によって、その状態を保持してヘッド部(吸着パッド)を後退させることができ、容易かつ確実にフィルム袋を開口させることができる。
【0009】
また、前記進退手段は、前記ブロック部材を支持すると共に、前記ブロック部材に対し該ブロック部材の進退方向に沿って所定距離を進退自在に設けられた架台と、前記架台を前記フィルム袋に対し進退移動させる架台移動手段と、前記架台に設けられ、カム面が形成された先端部が前記ヘッド部の側方まで延びる移動補助手段とを備え、前記架台移動手段が前記架台を前進させることにより、前記ヘッド部の吸着パッドがフィルム袋の側面を押圧すると共に、前記架台は前記ブロック部材に対し前進し、前記移動補助手段のカム面が前記ヘッド部を所定方向に押圧し、前記ヘッド部が前記基準位置から前記第1の位置規制部材に当接するまで移動されることが望ましい。
このように構成することにより、前記ブロック部材の前進に伴いヘッド部を移動方向に押圧し、リンク部材を回動させて、ヘッド部を容易に移動させることができる。
【0010】
また、前記進退手段が設けられた基台と、前記基台に設けられ、カム面が形成された先端部が前記ヘッド部の側方まで延びる移動解除補助手段と、前記ヘッド部が前記移動位置から基準位置に戻る際に、前記ヘッド部に当接することにより該ヘッド部の位置を基準位置とする第2の位置規制部材とを備え、前記架台移動手段が前記架台を後退させることにより、前記架台は前記ブロック部材を後退させ、前記補助解除手段のカム面が前記ヘッド部を前記基準位置の方向に押圧し、前記ヘッド部が前記移動位置から前記第2の位置規制部材に当接するまで移動されることが望ましい。
このように構成することにより、前記ブロック部材の後退に伴いヘッド部を基準位置の方向に押圧し、リンク部材を回動させて、ヘッド部を容易に基準位置に戻すことができる。
【0011】
また、前記保持手段は、前記ヘッド部と前記ブロック部材との間に張架された引張りバネであって、前記ヘッド部が前記基準位置から前記第1の位置規制部材に当接するまで移動することにより、前記引張りバネが前記ヘッド部の進退方向に対し傾斜して伸長し、該引張りバネの引張力により、前記ヘッド部の移動状態が保持されることが望ましい。
或いは、前記保持手段は、前記ヘッド部に設けられた溝または突起からなる被係止部と、前記ブロック部材に設けられた回動軸を軸に回動自在に設けられ、回動することによって前記被係止部に係止可能な係止部とを有する構成でもよい。
このように保持部材を構成することにより、ヘッド部が移動した状態を保持することができる。
【0012】
また、前記フィルム袋の両側面を挟んで、それぞれ少なくとも2つの前記ヘッド部と前記ブロック部材と前記保持手段と前記進退手段とが対向して配置され、相対向する一対の前記ヘッド部の移動方向は互いに逆方向であることが望ましい。
このようにフィルム袋を挟んでヘッド部(吸着パッド)を相対向して対配置することにより、ヘッド部が移動した際に、フィルム間のずれ量がより大きくなり、フィルム間に多量の空気を進入させて、フィルム間の密着状態を容易に解除することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容器の内面にフィルム状の内袋を装着するために、偏平に折りたたまれた筒状の帯状フィルムから一端が開口可能なフィルム袋を切り出す袋装着装置において、前記フィルム袋の一端を確実に開口させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明に係る袋開口機構の実施の形態を示す平面図である。
【図2】図2は、図1の袋開口機構の側面図(一部を断面で示す)である。
【図3】図3は、図1の袋開口機構の背面図である。
【図4】図4は、図1の袋開口機構を一部拡大した平面図である。
【図5】図5は、図1の袋開口機構が動作する状態遷移を示す断面図である。
【図6】図6は、図1の袋開口機構が動作する状態遷移を示す断面図である。
【図7】図7(a)は、図1の袋開口機構の変形例を示す側面図であり、図7(b)は、その平面図である。
【図8】図8(a)、図8(b)は、それぞれ図1の袋開口機構の他の変形例を示す平面図である。
【図9】図9は、従来の袋装着装置の構成を示す断面図である。
【図10】図10は、図9の袋装着装置により容器に袋が装着される動作を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る袋開口機構の実施の形態について図面に基づき説明する。図1は、本発明に係る袋開口機構の実施の形態を示す平面図であり、図2は図1の袋開口機構の側面図(一部を断面で示す)、図3は図1の袋開口機構の背面図である。また、図4に、図1を一部拡大した平面図を示す。
尚、以下の説明においては、図1のX軸を前後方向として、X軸左方向を前側とし、X軸右方向を後側とする。また、図1のY軸を左右方向として、Y軸上方向を右側とし、Y軸下方向を左側とする。
【0016】
図示する袋開口機構1は、図9に示した袋装着装置50の吸着パッド機構として用いることができる。
具体的には、図1〜図3に示す機構が、前方に送り出されたフィルム袋を挟んで相対向して配置され、その先端の吸着パッド30によりフィルム袋(の開口部側)の両側面を吸着するように用いられる。この場合、対向配置された図1〜図3に示す機構を一組とすると、好ましくはフィルム袋の左右両側にそれぞれ一組ずつ(即ち二組)設けられる。
【0017】
各袋開口機構1の構成を詳しく説明すると、袋開口機構1は、図2,図3に示すように、水平方向(Y方向)に延びる角フレーム2の上面に、板状のアダプタ3を介して基台4が固定されている。この基台4は、角フレーム2の延設方向に直交してX方向前方に延びる板状に形成されている。
【0018】
基台4上には、支持部材5を介してシリンダ部6が支持されている。また、このシリンダ部6内を摺動可能なピストン7が、X方向に沿って(即ち前後方向に)進退自在に設けられている。
前記シリンダ部6は、例えば複動式のエアシリンダであり、ポート6aからシリンダ内にエア供給されることによりピストン7が前進し、ポート6bからシリンダ内にエア供給されることによりピストン7が後退するようになっている。
【0019】
また、基台4上であって、ピストン7の下方には、図2に示すように、ピストン7の進退方向(X方向)に沿ってレール部材8が敷設されている。
前記レール部材8上には、スライダ9が摺動自在に設けられ、さらにスライダ9上には、板状の架台10が固定されている。また、架台10は、連結部材11を介してピストン7の先端部と連結されている。
これにより、シリンダ6に対しピストン7が進退動作すると、スライダ9がレール部材8に沿って摺動し、架台10が前後方向(X方向)に進退動作するようになされている。
尚、前記シリンダ部6とピストン7とレール部材8とにより架台移動手段が構成されている。
【0020】
また、架台10は、その前端部が上方に向けて立設され、図1に示すように、その立設面10aにおける左右両側には、前後方向(X方向)に進退可能なシャフト13をそれぞれ支持する一対の軸支持部12が設けられている。
各軸支持部12は、その前後両端が開口した筒状に形成され、その中をシャフト13が摺動自在に設けられる。シャフト13の前端には、第1ブロック部材15が固定されて設けられている。また、シャフト13の後端には、シャフト軸が拡径してシャフトヘッド13aが設けられ、これが軸支持部12の後端面に係止可能となされている。
【0021】
また、第1ブロック部材15と軸支持部12との間において、シャフト13の周りには圧縮スプリング14が巻装され、軸支持部12をシャフトヘッド13aに向けて付勢する構成となっている。このため、通常時はスプリング14の付勢力により、軸支持部12の後端面がシャフトヘッド13aに係止した状態となされる。
この構成により、シリンダ6を駆動し架台10を前進させた際、先端の吸着パッド30がフィルム袋Fの側面に当接し、第1ブロック部材15のX軸上の移動が停止されても、シャフト13に沿って軸支持部12が前進するため、さらに架台10を第1ブロック部材15側に対し前進移動させることができる。
【0022】
また、前記第1ブロック部材15の前部は、第2ブロック部材16が一体的に固定され連結されている(このため、第1ブロック部材15と第2ブロック部材16とによりブロック部材が構成される)。
第2ブロック部材16の前面側には、図4に拡大して示すように左右(Y方向)に延びる溝部19aが形成され、この溝部19a内の左右両側に一対の棒状のリンク部材17の後端がそれぞれピンP1,P2によって回動自在に支持されている。また、前記一対のリンク部材17の前端は、袋開口機構1の先端に設けられたヘッド部19に、それぞれピンP3,P4によって連結されている。このようにヘッド部19は、一対のリンク部材17によって支持されると共に、リンク部材17の回動によって、第2ブロック部材16に対し右方向に移動可能となされている。
尚、ヘッド部19が、リンク部材17の回動によって右方向に回動した際には、ヘッド部19は位置規制部材32(第1の位置規制部材)に当接し、その移動位置が所定位置に規制されるようになっている。
また、リンク部材17には、ねじりコイルバネ20が装着され、左方向に付勢力が与えられている。これにより、通常時においてヘッド部19は位置規制部材31(第2の位置規制部材)に当接し、その位置が基準位置となされている。
【0023】
また、図2に示すように第1ブロック部材15の下面側とヘッド部19の下面側には、それぞれピン部材P5,P6が下方に突出して設けられ、それら先端部(下端部)の間に引張りコイルバネ23(保持手段)が張架されている。
この引張りコイルバネ23は、ヘッド部19が右方向に移動した状態を保持するために設けられている。
即ち、第1ブロック部材15及び第2ブロック部材16に対しヘッド部19が右方向に移動した際、引張りコイルバネ23のバネ軸がヘッド部19に進退方向に対し傾斜する。
これにより、ピン部材P5,P6間の距離が長くなり、引張りコイルバネ23が伸長して付勢力(引張力)が生じ、その引張力によりヘッド部19が位置規制部材32に当接する状態が維持される。
【0024】
また、前記ヘッド部19の後側(第2ブロック部材16に臨む側)においては、その左右両端にそれぞれ鉛直方向(Z方向)を軸として回転自在なローラ24,25が設けられている。
また、基台4上の右側前部には、前方に延びるリセット用カムプレート26(移動解除補助手段)が設置されている。このリセット用カムプレート26の先端には、Y方向右側に移動したヘッド部19を元の位置に戻す(リセットする)際、前記ローラ25と接触可能なカム傾斜部26a(カム面)が形成され、このカム傾斜部26aの後側にはカム平坦部26bが続けて形成されている。
【0025】
一方、架台10上の左側前部には、前方に延びるセット用カムプレート27(移動補助手段)が設置されている。このセット用カムプレート27の先端には、前記ヘッド部19をY方向右側に移動させる(セットする)際、前記ローラ24と接触可能なカム傾斜部27a(カム面)が形成され、このカム傾斜部27aの後側にはカム平坦部27bが続けて形成されている。
尚、前記架台10と架台移動手段(シリンダ部6とピストン7とレール部材8)と移動補助手段とにより進退手段が構成されている。
【0026】
また、ヘッド部19の前面には、吸着パッド30が設けられ、ヘッド部19の下面には吸着パッド30に連通する吸引孔19aが設けられている。即ち、吸着パッド30がフィルム袋の側面に接する状態で吸引孔19aから吸引動作を行うことにより、吸着パッド30にフィルム袋が吸着されるようになっている。
【0027】
続いて、このように構成された袋開口機構1の動作について図5、図6の状態遷移を示す断面図に沿って説明する。尚、以下に説明する実施形態にあっては、フィルム袋Fを挟んで、図1〜図3に示した構成が相対向するように配置され、それぞれ同じタイミングで動作するものとする。また、以下の説明では、フィルム袋Fを挟んだ一組のうち、一方の動作について図5,図6に示しながら説明する。
【0028】
先ず、図5(a)に示すようにヘッド部19の前方に、偏平に折り畳まれたフィルム袋Fの先端部(開口部側)が配置されると、シリンダ部6の駆動によりピストン7が前進される。これによりヘッド部19の吸着パッド30も前進する。
そして、図5(b)に示すように吸着パッド30がフィルム袋Fの側面に接触する。このとき、フィルム袋Fを挟んで相対向する吸着パッド30同士が、互いによって係止した状態となされる。
また、吸着パッド30がフィルム袋Fに接すると、吸引ポンプなどの吸引手段(図示せず)により吸引孔19aから吸引動作がなされ、吸着パッド30がフィルム袋Fを吸着する状態となされる。
【0029】
さらにシリンダ部6によりピストン7が前進されると、架台10に設けられた軸支持部12は、圧縮コイルバネ14の付勢力に抗しシャフト13に沿って前方に移動される。
また同時に、架台10に設けられたセット用カムプレート27が前進し、図5(c)に示すように、セット用カムプレート27の先端のカム傾斜面27aにヘッド部19のローラ24が乗り上げる。
これにより、ヘッド部19は右方に押され、リンク部材17が、ねじりコイルバネ20の付勢方向に抗して回動し、ヘッド部19は右方へ移動する。また、ヘッド部19が右方へ移動すると、ヘッド部19は位置規制部材32に当接し、その移動位置が規制される(相対向するヘッド部19は、逆方向に移動する)。
ここで、フィルム袋Fの両側面は、吸着パッド30に吸着されているため、重なった2枚のフィルム間にずれが生じ、フィルム間に空気が進入して、密着していた開口部の一部が隙間程度開口する。
【0030】
次いで、シリンダ部6の駆動によりピストン7が後方に移動されると、図6(a)に示すように、先ず、軸支持部12がシャフト13に沿って後方に移動し、その後端面がシャフトヘッド13aに当接する。
ここで、セット用カムプレート27からヘッド部19のローラ24は離れるが、ヘッド部19が右方に移動したことによって、引張りコイルバネ23のバネ軸がヘッド部19の進退方向に対して傾斜し、ピン部材P5,P6間の距離が通常時より長くなる。このため、引張りコイルバネ23が伸長して付勢力(引張力)が生じ、その引張力によりヘッド部19が位置規制部材32に当接する状態が維持される(即ち、フィルム間に空気が進入して隙間程度開口した状態が維持される)。
そして、吸着パッド30はフィルム袋Fの側面を吸着しているため、対をなす吸着パッド30が引き離されることによって、フィルム袋Fが拡開される。
【0031】
このように袋開口機構1によってフィルム袋Fが開口すると、吸引孔19aからの吸引が停止され、フィルム袋Fは吸着パッド30から引き離される。また、そのフィルム袋Fは袋装着装置(図示せず)のクランプ爪等によりさらに拡開され、箱状の容器(図示せず)に被せられることとなる。
【0032】
また、袋開口機構1は、図6(b)に示すようにシリンダ部6の駆動によりピストン7をさらに後退させる。これにより、(位置固定された)基台4に対してヘッド部19が後退する。この後退により、基台4に設けられたリセット用カムプレート26に対しヘッド部19が接近し、ヘッド部19側のローラ25がリセット用カムプレート26先端の傾斜部26aから平坦部26bに乗り上げる。
これによりヘッド部19は左方へ押されて移動し、位置規制部材31に当接することによって戻り位置が規制され、基準位置(スタンバイ状態の位置)に戻される。また、ヘッド部19の進退方向に対し傾斜していた引張りコイルバネ23のバネ軸は、ヘッド部19の進退方向と平行に戻される。
【0033】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、ヘッド部19の吸着パッド30がフィルム袋Fの側面に当接し吸着した状態から、ブロック部材(第1ブロック部材15、第2ブロック部材16)がフィルム袋Fに向けて押圧される。
これにより、リンク部材17が回動し、前記ヘッド部19が位置規制部材32に当接するまで、フィルム袋Fの側面に沿って、基準位置から右方に移動される。
また、ヘッド部19が右方に移動することによって、引張りコイルバネ23のバネ軸がヘッド部19の進退方向に対して傾斜して伸長し、それにより生じた付勢力(引張力)により、ヘッド部19の移動状態(位置規制部材32に当接した状態)が維持される。
したがって、ヘッド部19を基準位置から右方に移動させた状態で後退させることができ、それにより、フィルム袋Fの重なるフィルム間がずれたままとなり(即ち、フィルム間に空気が進入したままとなり)、フィルム袋Fを容易かつ確実に開口させることができる。
【0034】
尚、前記実施の形態においては、フィルム袋Fを挟んで図1〜図3に示す機構が相対向して配置されるものとしたが、その構成に限定されるものではない。
例えば、袋開口機構1に対し、フィルム袋Fを挟んで反対側の側面は、前記吸着パッド30がフィルム袋Fの側面を吸着している間、単に吸着手段(図示せず)により吸着する構成であってもよい。
【0035】
また、前記実施の形態においては、ヘッド部19の移動状態を保持する保持手段として、ヘッド部19と第1ブロック部材15との間に引張りコイルバネ23を張架し、その付勢力を利用するものとした。
しかしながら、本発明に係る袋開口機構に用いる保持手段あっては、その形態に限定されるものではなく、例えば、図7(a)、図7(b)に示す構成を保持手段として用いてもよい。尚、図7(a)は、図1の袋開口機構の変形例を示す側面図であり、図7(b)は、その平面図である。
【0036】
図7(a)、図7(b)に示す構成にあっては、引張りコイルバネ23、及びピン部材P5,P6に代えて、保持手段40が設けられる。
保持手段40は、ヘッド部19に設けられた突起(溝でもよい)からなる係止部41と、先端に形成された係止爪43aが前記係止部41に係止可能な係止棒43とを備える。
前記係止棒43は、第2ブロック部材16に設けられた回動軸42を軸に回動可能であって、ヘッド部19が右方に移動された状態で、前記ヘッド部19に向けて回動することにより、係止爪43aが前記係止部41に係止するように構成されている。
【0037】
さらに、保持手段40は、前記係止棒43の後端側に設けられ、係止棒43がヘッド部19に向けて回動する方向に付勢力を与える圧縮バネ44と、圧縮バネ44を押さえつけ、その付勢力に抗することにより前記係止棒の前記係止部への係止を解除可能な解除手段45とを備える。X軸方向に延びる解除手段45は、その先端にカム傾斜面45aが形成されていると共に、X軸方向の位置は固定されている。
【0038】
この構成において、図7(a)、図7(b)に示す状態(ヘッド部19は右方へ移動していない状態)から吸着パッド30がフィルム袋Fの側面に当接し、さらに第2ブロック部材16が前方に向けて押圧されると、リンク部材17が回動してヘッド部19がフィルム袋Fの側面に沿って右方へ移動する。
ここで、リンク部材17の回動により第2ブロック部材16は所定距離だけ前進し、それにより上部に設けられた係止棒43も前進する。そして、係止棒43は解除手段45から引き離され、回動軸42を軸に回動して係止爪43aがヘッド部19の係止部41に係止する。これにより、ヘッド部19が右方に移動した状態が保持される。
即ち、その後、第2ブロック部材16が後退されても、ヘッド部19の右方へ移動した状態を係止棒43の係止により保持することができる。
【0039】
尚、ヘッド部19の右方への移動状態を解除するには(基準位置へ戻すには)、さらに第2ブロック部材16を後退させればよい。即ち、係止棒43が後退することによって、その後端側に設けられた圧縮コイルバネ44の頭部が解除手段45のカム傾斜面45aで押さえつけられるため、係止棒43の係止爪43aが上方に回動する。それにより、係止爪43aの係止部41への係合が解除され、リンク部材17に設けられたねじりコイルバネ20(図1参照)の付勢力によってリンク部材17を反対方向に回動させ、ヘッド部19を基準位置に戻すことができる。
【0040】
また、本発明に係る袋開口機構の前記保持手段として、図7に示した構成以外にも、ヘッド部19の移動した状態を、例えば、図8(a)に示すようなエアシリンダを用いたアクチュエータ35により保持する構成であってもよい。或いは、図8(b)に示すような電磁マグネット36にヘッド部19を吸着させてヘッド部19を保持する構成、若しくは、リンク部材17の軸の回転をモータにより駆動制御する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 袋開口装置
2 角フレーム
3 アダプタ
4 基台
5 支持部材
6 シリンダ部(進退手段)
7 ピストン部材(進退手段)
8 レール部材(進退手段)
9 スライダ(進退手段)
10 架台(進退手段)
11 連結部材
12 軸支持部
13 シャフト
13a シャフトヘッド
14 圧縮コイルバネ
15 第1ブロック部材(ブロック部材)
16 第2ブロック部材(ブロック部材)
16a 溝部
17 リンク部材
19 ヘッド部
19a 吸気孔
20 ねじりコイルバネ
23 引張りコイルバネ(引張りバネ、保持手段)
24 ローラ
25 ローラ
26 リセット用カムプレート(移動解除補助手段)
26a カム傾斜面(カム面)
26b カム平坦面
27 セット用カムプレート(移動補助手段)
27a カム傾斜面
27b カム平坦面
30 吸着パッド
31 位置規制部材(第2の位置規制部材)
32 位置規制部材(第1の位置規制部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内面にフィルム状の内袋を装着するために、偏平に折りたたまれた筒状の帯状フィルムから一端が開口可能なフィルム袋を切り出す袋装着装置に具備され、前記切り出されたフィルム袋の一端を開口させる袋開口機構であって、
前方に配置された前記フィルム袋の側面を吸着可能な吸着パッドを有するヘッド部と、前記ヘッド部の後部を、所定方向に回動自在なリンク部材を介して保持し、前記ヘッド部を前記リンク部材によりフィルム袋の側面に沿って基準位置から移動可能なブロック部材と、前記ヘッド部が前記フィルム袋の側面に沿って移動した際に、前記ヘッド部に当接することにより、該ヘッド部の移動位置を規制する第1の位置規制部材と、前記ヘッド部の移動状態を保持可能な保持手段と、前記ブロック部材を前記フィルム袋に対し進退可能に支持する進退手段とを備え、
前記進退手段が前記ブロック部材を前進させることにより、前記ヘッド部の吸着パッドがフィルム袋の側面に当接して吸着し、
さらに前記ブロック部材が前記フィルム袋の側面に向けて押圧されることにより、前記リンク部材が回動して前記ヘッド部が前記第1の位置規制部材に当接するまで前記フィルム袋の側面に沿って移動され、
前記ヘッド部の移動状態が、前記保持手段により保持されることを特徴とする袋開口機構。
【請求項2】
前記進退手段は、前記ブロック部材を支持すると共に、前記ブロック部材に対し該ブロック部材の進退方向に沿って所定距離を進退自在に設けられた架台と、前記架台を前記フィルム袋に対し進退移動させる架台移動手段と、前記架台に設けられ、カム面が形成された先端部が前記ヘッド部の側方まで延びる移動補助手段とを備え、
前記架台移動手段が前記架台を前進させることにより、前記ヘッド部の吸着パッドがフィルム袋の側面を押圧すると共に、前記架台は前記ブロック部材に対し前進し、
前記移動補助手段のカム面が前記ヘッド部を所定方向に押圧し、前記ヘッド部が前記基準位置から前記第1の位置規制部材に当接するまで移動されることを特徴とする請求項1に記載された袋開口機構。
【請求項3】
前記進退手段が設けられた基台と、
前記基台に設けられ、カム面が形成された先端部が前記ヘッド部の側方まで延びる移動解除補助手段と、
前記ヘッド部が前記移動位置から基準位置に戻る際に、前記ヘッド部に当接することにより該ヘッド部の位置を基準位置とする第2の位置規制部材とを備え、
前記架台移動手段が前記架台を後退させることにより、前記架台は前記ブロック部材を後退させ、
前記補助解除手段のカム面が前記ヘッド部を前記基準位置の方向に押圧し、前記ヘッド部が前記移動位置から前記第2の位置規制部材に当接するまで移動されることを特徴とする請求項2に記載された袋開口機構。
【請求項4】
前記保持手段は、前記ヘッド部と前記ブロック部材との間に張架された引張りバネであって、
前記ヘッド部が前記基準位置から前記第1の位置規制部材に当接するまで移動することにより、前記引張りバネが前記ヘッド部の進退方向に対し傾斜して伸長し、該引張りバネの引張力により、前記ヘッド部の移動状態が保持されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された袋開口機構。
【請求項5】
前記保持手段は、
前記ヘッド部に設けられた溝または突起からなる被係止部と、
前記ブロック部材に設けられた回動軸を軸に回動自在に設けられ、回動することによって前記被係止部に係止可能な係止部とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された袋開口機構。
【請求項6】
前記フィルム袋の両側面を挟んで、それぞれ少なくとも2つの前記ヘッド部と前記ブロック部材と前記保持手段と前記進退手段とが対向して配置され、
相対向する一対の前記ヘッド部の移動方向は互いに逆方向であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された袋開口機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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